説明

ギャップ量監視装置

【課題】ガスタービン発電装置の失火を事前に察知することができるギャップ量監視装置を提供する。
【解決手段】2次燃料制御部に備えられたGCV14の弁棒と、この弁棒と別体に構成され弁棒を駆動する駆動棒との境界に存在するギャップ量を監視するギャップ量監視装置26は、SRV11の開度量を測定するSRV開度量測定手段10と、GCV14の開度量を測定するGCV開度量測定手段13と、SRV開度量測定手段10及びGCV開度量測定手段13の測定量に基づいて、ギャップ量が正常か否かを判定するギャップ量監視部15と、ギャップ量監視部15がギャップ量が異常であると判定した場合、GCV14の開度を増加するように調整する圧力制御部19と、を備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギャップ量監視装置に関し、さらに詳しくは、ガスタービン発電装置の2次燃料制御部に備えられた燃料流量調節弁(GCV)のギャップ量が、正常か否かを判定するギャップ量監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインド発電設備におけるガスタービン運転時に、2次燃料流量調節弁(以下、F2−GCVと呼ぶ)の弁棒と弁体、及びスプリングシートと弁体の磨耗により、弁棒と該弁棒を駆動する駆動棒との間に存在するカップリングギャップが拡大して、指令により駆動した駆動棒の移動量に対するF2−GCVの実際の開度が減少して、ガスタービンに燃料の供給が不足して燃焼器が失火するといった問題がある。
このような場合、従来では制御装置側で空気量を減少したり、或いはF1−GCV(1次燃料流量調節弁)、F2−GCVの比率を変更していた。それでも度々失火を繰り返すことがあれば運転を停止して、燃料弁本体を点検することにより、初めてギャップが規定量以上に拡大していることが判明する。このように、ガスタービン運転中には、ギャップ拡大を発見することが困難であり、その結果、無駄な対応が多く発生していた。
尚、従来技術として特許文献1には、ガスタービン燃焼器の失火を防止するために、ガスタービンへ供給する燃料の条件変化をガスタービン制御信号として取り込み、この信号に基づいてガスタービンに送り込まれる燃料の発熱量が一定となるように自動制御するガスタービン失火防止方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−88631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術は、ガスタービン制御信号として、少なくとも熱量、温度等のガス燃料条件の変化を検知する必要があり、且つ検知した条件に基づいて発熱量が一定となるように制御しなければならず、装置が大型化するといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、F2−GCVの弁棒と、該弁棒と別体に構成され該弁棒を駆動する駆動棒との境界に存在するギャップ量を監視するギャップ量監視装置に、燃料遮断弁(SRV)の開度量を測定するSRV開度量測定手段と、F2−GCVの開度量を測定するGCV開度量測定手段とを備え、これらの測定量に基づいて、ギャップ量が正常か否かを判定することにより、ガスタービン発電装置の失火を事前に察知することができるギャップ量監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、ガス燃料系統の遮断回路に組み込まれる燃料遮断弁(SRV)、及び制御回路に組み込まれてガス燃料の流量を調節する燃料流量調節弁(GCV)を夫々備える1次燃料制御部(F1)、及び2次燃料制御部(F2)を備え、前記1次燃料制御部、及び前記2次燃料制御部の夫々の前記燃料流量調節弁の入り口圧力が一定となるように前記燃料遮断弁の開度量を制御して、ガスタービンを駆動して発電するガスタービン発電装置であって、前記2次燃料制御部に備えられた前記燃料流量調節弁の弁棒は、弾性部材によって前記燃料ガスの流入路を閉止する方向に付勢されると共に、駆動棒によって押圧されることによって該流入路を開放する方向へ付勢される構成を備え、前記弁棒と前記駆動棒との間のギャップ量を監視するギャップ量監視装置は、前記燃料遮断弁の開度量を測定するSRV開度量測定手段と、前記燃料流量調節弁の開度量を測定するGCV開度量測定手段と、前記SRV開度量測定手段及び前記GCV開度量測定手段の測定量に基づいて、前記ギャップ量が正常か否かを判定するギャップ量監視部と、を備えたことを特徴とする。
ガスタービン発電装置には、SRVとGCVを夫々備えた1次燃料制御部、及び2次燃料制御部がある。そして、GCVの入り口圧力を一定になるようにSRVの開度量を制御してガスタービンを一定速度に駆動して発電している。しかし、経年変化により、GCVの弁棒と、これを駆動する駆動棒との境界に存在するギャップ量が増加して、駆動棒の移動量と実際のGCVの開度量が一致しなくなり、燃焼器が失火するといった問題がある。そこで本発明では、SRVとGCVの弁棒の移動量を検知する手段を備え、これらの移動量からギャップ量が正常か否かを判定する。これにより、ガスタービン発電装置が稼働中であっても、ギャップ量が正常か否かを判定することができる。
【0006】
請求項2は、前記ギャップ量監視部は、前記SRV開度量測定手段の測定量と前記GCV開度量測定手段の測定量との比が下降傾向で、且つ所定の管理値以下である場合に、前記ギャップ量が異常であると判定することを特徴とする。
SRVはGCVの入り口圧力を一定にするため、入り口圧力が高くなるとSRVの弁を閉止する方向に働く。また、逆に入り口圧力が低くなるとSRVの弁を開放する方向に働く。ここで、GCVの弁が閉止する方向に働くと、入り口圧力が高くなるため、SRVを閉止する方向に働く。その結果、そのような状態が続くと、SRVとGCVの比は下降する傾向を示すようになる。本発明では、SRVとGCVの比が下降傾向で、且つ所定の管理値以下になった場合に、ギャップ量が異常であると判定する。これにより、スポット的な異常値を見ずに、下降傾向での異常値を正確に判定することができる。
【0007】
請求項3は、前記ギャップ量監視部が前記ギャップ量が異常であると判定した場合、前記燃料流量調節弁の開度を増加するように調整する圧力制御部を備えたことを特徴とする。
ギャップ量が異常であると判定した場合、警報だけを出してもよいが、外部より一時的に圧力を調整できれば、装置を停止せずに一定時間稼動を延ばすことができる。そこで本発明では、ギャップ量が異常であると判定した場合、GCVの開度を増加するように調整する。これにより、GCVの入り口圧力を低下させることができるので、SRVとGCVの比を高くすることができる。
請求項4は、前記ギャップ量監視部が前記ギャップ量が異常であると判定した場合、該判定結果を前記圧力制御部に報知する報知手段を備えたことを特徴とする。
最初のギャップ量の異常が判定された場合、GCVの開度を増加するように調整する必要がある。それには、判定結果を操作者に分かるように報知(例えば、音、光等)しなければならない。これにより、異常状態を即座に認識して対処することができる。
【0008】
請求項5は、前記SRV開度量測定手段及び前記GCV開度量測定手段は、夫々に備えられた前記燃料遮断弁及び前記燃料流量調節弁の開度量を夫々電気信号に変換する差動変圧器により構成されていることを特徴とする。
SRVとGCVの弁の移動量は、弁棒の移動量として検知する必要がある。また、移動方向が両方向であるため、どちら側に移動したかも判断できなければならない。そこで本発明では、弁棒の移動方向により、異なる電圧が発生する差動変圧器を使用する。これにより、電圧変化と極性を検知することにより、精度良く確実に弁棒の移動量を検知することができる。
【0009】
請求項6は、前記ギャップ量監視部による前記ギャップ量が異常であるとの判定に基づいて、前記圧力制御部が前記燃料流量調節弁の開度量を増加するように調整した後に、前記SRV開度量測定手段の測定量と前記GCV開度量測定手段の測定量との比が再び下降傾向を示した場合、前記燃料流量調節弁のギャップを点検する旨を該圧力制御部に報知することを特徴とする。
最初のギャップ量を検出した場合は、GCVの開度量を調整することにより、ある程度回復することができる。しかし、調整後に再びギャップ量の異常が発生した場合は、GCVの開度量を調整するだけでは根本的な解決にはならない。そこで本発明では、SRVとGCVの比が再び下降傾向を示した場合、GCVのギャップを点検する旨を圧力制御部に報知する。これにより、定期点検の時期を事前に察知することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、SRVとGCVの弁棒の移動量を検知する手段を備え、これらの移動量からギャップ量が正常か否かを判定するので、ガスタービン発電装置が稼働中であっても、ギャップ量が正常か否かを判定することができる。
また、SRVとGCVの比が下降傾向で、且つ所定の管理値以下になった場合に、ギャップ量が異常であると判定するので、スポット的な異常値を見ずに、下降傾向での異常値を正確に判定することができる。
また、ギャップ量が異常であると判定した場合、GCVの開度を増加するように調整するので、GCVの入り口圧力を低下させることができるので、SRVとGCVの比を高くすることができる。
また、最初のギャップ量の異常が判定された場合、判定結果を操作者に分かるように報知(例えば、音、光等)するので、異常状態を即座に認識して対処することができる。
また、弁棒の移動方向により、異なる電圧が発生する差動変圧器を使用するので、電圧変化と極性を検知することにより、精度良く確実に弁棒の移動量を検知することができる。
また、SRVとGCVの比が再び下降傾向を示した場合、GCVのギャップを点検する旨を圧力制御部に報知するので、定期点検の時期を事前に察知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のガスタービン発電装置に係るギャップ量監視装置の構成を模式化して示す構成図である。
【図2】(a)はSRV開度量測定手段、及びGCV開度量測定手段の実施形態の一例を示す構成図であり、(b)はその電気的特性を示す図である。
【図3】本発明のSRVとGCVの弁の概略構成を示す断面図である。
【図4】本発明のギャップ量監視装置25の動作を説明するフローチャートである。
【図5】SRV/GCV比率推移をグラフ化した図であり、(a)は1−3軸の推移グラフを表し、(b)は1−6軸の推移グラフを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明のガスタービン発電装置に係るギャップ量監視装置の構成を模式化して示す構成図である。このガスタービン発電装置100は、LNG燃料配管と、1次燃料制御部(F1)2と、2次燃料制御部(F2)9と、F1燃料ノズル7とF2燃料ノズル17から噴射される燃料を燃焼させる燃焼器8と、ガスタービン(GT)18と、を備えて構成される。即ち、ガス燃料系統の遮断回路に組み込まれる燃料遮断弁(以下、SRV:Stop speed Ratio Valveと呼ぶ)3、11、及び制御回路に組み込まれてガス燃料の流量を調節する燃料流量調節弁(以下、GCV:Gas Control Valveと呼ぶ)5、14をそれぞれ備える1次燃料制御部(F1)2、及び2次燃料制御部(F2)9を備え、1次燃料制御部2、及び2次燃料制御部9の夫々のGCV5、14の入り口圧力が一定となるようにSRV11の開度量を制御して、ガスタービンを一定速度に駆動して発電するガスタービン発電装置100であって、2次燃料制御部9に備えられたGCV14の弁棒は、弾性部材によって燃料ガスの流入路を閉止する方向に付勢されると共に、駆動棒によって押圧されることによって流入路を開放する方向へ付勢される構成を備え、弁棒と駆動棒との間のギャップ量を監視するギャップ量監視装置は、SRV11の開度量を測定するSRV開度量測定手段10と、GCV14の開度量を測定するGCV開度量測定手段13と、SRV開度量測定手段10及びGCV開度量測定手段13の測定量に基づいて、ギャップ量が正常か否かを判定するギャップ量監視部15と、ギャップ量監視部15がギャップ量が異常であると判定した場合、GCV14の開度を増加するように調整する圧力制御部19と、を備えて構成されている。尚、圧力制御部19には、F2内の圧力発信機(Px)12の信号に基づいて図示しない油圧器を制御してSRV11及びGCV14の弁の開度量を調整する。
【0013】
ガスタービン発電装置100には、SRV11とGCV14を夫々備えた1次燃料制御部、及び2次燃料制御部がある。そして、GCV14の入り口圧力を一定になるようにSRV11の開度量を制御してガスタービンを一定速度に駆動して発電している。しかし、経年変化により、GCV14の弁棒と、これを駆動する駆動棒との境界に存在するギャップ量が増加して、駆動棒の移動量と実際のGCV14の開度量が一致しなくなり、燃焼器8が失火するといった問題がある。そこで本実施形態では、SRV11とGCV14の弁棒の移動量を検知するギャップ量監視部15を備え、これらの移動量からギャップ量が正常か否かを判定する。これにより、ガスタービン発電装置100が稼働中であっても、ギャップ量が正常か否かを判定することができる。
【0014】
また、ギャップ量監視部15は、SRV開度量測定手段10の測定量とGCV開度量測定手段13の測定量との比が下降傾向で、且つ所定の管理値以下である場合に、ギャップ量が異常であると判定する。即ち、SRV11はGCV14の入り口圧力を一定にするため、入り口圧力が高くなるとSRV11の弁を閉止する方向に働く。また、逆に入り口圧力が低くなるとSRV11の弁を開放する方向に働く。ここで、GCV14の弁が閉止する方向に働くと、入り口圧力が高くなるため、SRV11を閉止する方向に働く。その結果、そのような状態が続くと、SRV11とGCV14の比は下降する傾向を示すようになる。本実施形態では、SRV11とGCV14の比が下降傾向で、且つ所定の管理値以下になった場合に、ギャップ量が異常であると判定する。これにより、スポット的な異常値を見ずに、下降傾向での異常値を正確に判定することができる。
【0015】
また、ギャップ量監視部15がギャップ量が異常であると判定した場合、GCV14の開度を増加するように調整する圧力制御部19を備えた。即ち、ギャップ量が異常であると判定した場合、警報だけを出してもよいが、外部より一時的に圧力を調整できれば、装置を停止せずに一定時間稼動を延ばすことができる。そこで本実施形態では、ギャップ量が異常であると判定した場合、GCV14の開度を増加するように調整する。これにより、GCV14の入り口圧力を低下させることができるので、SRV11とGCV14の比を高くすることができる。
また、ギャップ量監視部15がギャップ量が異常であると判定した場合、この判定結果を圧力制御部19に報知する図示しない報知手段を備えた。即ち、最初のギャップ量の異常が判定された場合、GCV14の開度を増加するように調整する必要がある。それには、判定結果を操作者に分かるように報知(例えば、音、光等)しなければならない。これにより、異常状態を即座に認識して対処することができる。
【0016】
図2(a)はSRV開度量測定手段、及びGCV開度量測定手段の実施形態の一例を示す構成図であり、図2(b)はその電気的特性を示す図である。図2(a)のように2次側巻線23、24を2個直列に巻線方向を逆に取り付ける。鉄心(本発明の弁棒)21が中央にいるときに、c−d端の1次側電圧(Ei)を励磁すると、2次巻線23、24にそれぞれA(E1)、B(E2)の電圧が誘起される。このときのa−b端の出力電圧(E0)は、A、Bの巻線が逆であるため、打ち消されて0Vとなる。ここで、図2(b)に示すように、鉄心がA側に動くと、A側電圧(E1)が上昇し、B側電圧(E2)が減少することで、出力電圧(E0)が変動する。この原理を利用したものが差動変圧器である。
即ち、SRV11とGCV14の弁の移動量は、弁棒の移動量として検知する必要がある。また、移動方向が両方向であるため、どちら側に移動したかも判断できなければならない。そこで本実施形態では、弁棒の移動方向により、異なる電圧が発生する差動変圧器20を使用する。これにより、電圧変化と極性を検知することにより、精度良く確実に弁棒の移動量を検知することができる。
【0017】
図3は本発明のSRVとGCVの弁の概略構成を示す断面図である。この図では、主な部分のみを記載して、且つ部分的に構造を模式化して図示している。即ち、SRV11とGCV14が図示しない筐体に一体的に、且つ並列に取り付けられている。ここで、SRV11とGCV14の構造は同じであるので、GCV14の構造のみを説明する。図3は、弁が閉止して燃料ガスが遮断されている状態を表す。GCV14は、スプリング31の付勢力を与えるスプリングシート25の凹部と嵌合するように設けられたバルブプラグ(弁体)30があり、バルブプラグ30が上下することでバルブシート33との接触面に間隙を設けて、燃料ガスを通過させる。従って、バルブプラグ30は、下部がテーパ形状の円形であり、バルブステム(弁棒)32により上下されることにより、テーパ部分から燃料ガスが通過、又は閉止される。また、バルブステム32は、棒状に形成され、Vパッキング35により支持されて、油圧器38の駆動棒37とカップリングギャップ36を介して接触するように構成されている。また、バルブステム32は、上下の移動量を電気的な信号に変換する図2で説明した差動変圧器(LVDT:Linear Variable Differential Transformer)13を備えている。
【0018】
次にSRV11とGCV14の動作について説明する。尚、SRV11の同じ構成要素にはGCV14と同じ参照番号を付して説明する。SRV11はGCV14に供給する燃料ガスの圧力が、常に一定の圧力となるように圧力制御部19により制御されている。従って、SRV11の油圧器38は、その圧力になるように、圧力制御部19により圧力発信機(Px)12の信号を監視して制御される。その結果、燃料ガス入口39から流入した燃料ガスは、SRV11のバルブプラグ30とバルブシート33の間隙から矢印の方向に流れる。また、GCV14は、圧力制御部19の指令により油圧器38が駆動して、駆動棒37を上部に押し上げる。その結果、カップリングギャップ36を介してバルブステム32が上部に押し上げられ、バルブプラグ30がスプリング31の付勢力に抗して上部に移動する。その結果、バルブプラグ30とバルブシート33の接触面に間隙が生じて、一定の圧力に制御された燃料ガスがその間を通過して、矢印のルートで流れ、燃料ガス出口34からF2燃料ノズル17を介して燃焼器8に供給される。
【0019】
以上がSRV11とGCV14の基本的な動作であるが、SRV11とGCV14のバルブプラグ30の開度量は、バルブステム32とバルブプラグ30が一体的に動作することを前提に制御される。しかし、スプリングシート25とバルブプラグ30は別体であるため、その接触面が経年変化により磨耗する。また、バルブプラグ30とバルブステム32は別体であるため、その接触面が経年変化により磨耗する。その結果、圧力制御部19がGCV14の開度量を、例えば100%開放する指令を油圧器38に与えても、上記の各部分の磨耗により、カップリングギャップ36のギャップが拡大して100%の移動量が実際には80%の移動量としてバルブステム32に伝達され、指令と実際の燃料供給量がずれてしまい、燃焼器8が失火するといった現象が発生した。本発明では、失火に至る過程を事前に察知して、失火を防止するために、2次燃料制御部9のSRV11とGCV14を図1のように構成するものである。
【0020】
図4は本発明のギャップ量監視装置25の動作を説明するフローチャートである。尚、ここでは、タービンの起動時の詳細な動作については省略する。タービン18が起動すると(S1)、F1燃料ノズル7から燃料が噴射され(S2)、続いてF2噴射ノズル17から燃料が噴射される(S3)。そして、タービン18が定格回転数に達すると(S4でY)、ギャップ量監視部15は、SRV11の弁開度量(Ps)を測定する(S5)。次にGCV14の弁開度量(Pg)を測定する(S6)。そして、Ps/Pgを計算してその結果を記憶する(S7)。ここで、Ps/Pgの初期値(例えば80%)から下降しているか否かをチェックする(S8)。チェックの方法は、例えば、比率の計算結果を2〜3日おきに比較して、最初の値に対して3日後の値が低下していれば下降していると判断する。ステップS8で下降していると判断した場合(S8でY)、下降値の最終の値が管理値(例えば、77.5%)を下回ったか否かをチェックして(S9)、下回らなければ(S9でN)、ステップS5に戻って繰り返す。ステップS9で値が下回った場合(S9でY)、警報を発して(S10)、圧力制御部19は、GCV14の開度量を開放するように調整して、Pgを低下させる。それによりPsが規定値より低下するので、圧力制御部19は規定値になるようにPsを高くするように制御して、その結果、Ps/Pgの値が高くなって初期値に近づく(S11)。
【0021】
図5はSRV/GCV比率推移をグラフ化した図であり、図5(a)は1−3軸の推移グラフを表し、図5(b)は1−6軸の推移グラフを表す。縦軸がSRV/GCV比率(%)を表し、横軸が時間である。図5(a)から、SRV/GCV比率は初期値では80.0%を示し、所定の時間変化がないが、ある時点から低下し始めて領域Aの部分で77%ぐらいまで低下する特性50を示している。ここで、領域Aでギャップ量監視部15が比率の低下傾向を検知して、管理値77.5%を低下したことでGCV14の開度量を調整して79%ぐらいまで上昇させ、その後、再び低下傾向を示す特性51が表されている。
また、図5(b)から、SRV/GCV比率は略79%を示し、ある時点から急激に低下し始めて領域Bの部分で77%ぐらいまで低下する特性52を示している。ここで、領域Bでギャップ量監視部15が比率の低下傾向を検知して、管理値77.5%を低下したことでGCV14の開度量を調整して78%ぐらいまで上昇させるが、その後、再び低下傾向を示す特性53が表されている。
【0022】
このように、本発明では、SRV/GCV比率を常時監視することにより、燃焼器8の失火を予測することが可能となり、外部(圧力制御部19)からある程度の対策を打つことができる。即ち、ギャップ量監視部15がギャップ量が異常であると判定して、圧力制御部19によりGCV14の開度量を増加するように調整した後に、SRV開度量測定手段10の測定量とGCV開度量測定手段13の測定量との比が再び下降傾向を示した場合、GCV14のギャップを点検する旨を圧力制御部19に報知する。
最初のギャップ量を検出した場合は、GCV14の開度量を調整することにより、ある程度回復することができる(図5のA領域とB領域)。しかし、調整後に再びギャップ量の異常が発生した場合は、GCV14の開度量を調整するだけでは根本的な解決にはならない。そこで本発明では、SRV11とGCV14の比が再び下降傾向を示した場合、GCV14のギャップを点検する旨を圧力制御部19に報知する。これにより、定期点検の時期を事前に察知することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 LNG燃料配管、2 1次燃料制御部、3 F1−SRV、4 F1−Px、5 F1−GCV、6 1次出力配管、7 F1燃料ノズル、8 燃焼器、9 2次燃料制御部、10 SRV開度量測定手段、11 F2−SRV、12 F2−Px、13 GCV開度量測定手段、14 F2−GCV、15 ギャップ量監視部、16 2次出力配管、17 F2燃料ノズル、18 ガスタービン(GT)、19 圧力制御部、20 差動変圧器回路、21 鉄心、22 1次巻線、23、24 2次巻線、25 スプリングシート、26 ギャップ量監視装置、30 バルブプラグ、31 スプリング、32 バルブステム、33 バルブシート、34 燃料ガス出口、35 Vパッキン、36 カップリングギャップ、37 駆動棒、38 油圧器、39 燃料ガス入口、40 ボディ、100 ガスタービン発電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス燃料系統の遮断回路に組み込まれる燃料遮断弁、及び制御回路に組み込まれてガス燃料の流量を調節する燃料流量調節弁を夫々備える1次燃料制御部、及び2次燃料制御部を備え、前記1次燃料制御部、及び前記2次燃料制御部の夫々の前記燃料流量調節弁の入り口圧力が一定となるように前記燃料遮断弁の開度量を制御して、ガスタービンを駆動して発電するガスタービン発電装置であって、
前記2次燃料制御部に備えられた前記燃料流量調節弁の弁棒は、弾性部材によって前記燃料ガスの流入路を閉止する方向に付勢されると共に、駆動棒によって押圧されることによって該流入路を開放する方向へ付勢される構成を備え、
前記弁棒と前記駆動棒との間のギャップ量を監視するギャップ量監視装置は、前記燃料遮断弁の開度量を測定するSRV開度量測定手段と、前記燃料流量調節弁の開度量を測定するGCV開度量測定手段と、前記SRV開度量測定手段及び前記GCV開度量測定手段の測定量に基づいて、前記ギャップ量が正常か否かを判定するギャップ量監視部と、を備えたことを特徴とするギャップ量監視装置。
【請求項2】
前記ギャップ量監視部は、前記SRV開度量測定手段の測定量と前記GCV開度量測定手段の測定量との比が下降傾向であり、且つ所定の管理値以下である場合に、前記ギャップ量が異常であると判定することを特徴とする請求項1に記載のギャップ量監視装置。
【請求項3】
前記ギャップ量監視部が前記ギャップ量が異常であると判定した場合、前記燃料流量調節弁の開度を増加するように調整する圧力制御部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のギャップ量監視装置。
【請求項4】
前記ギャップ量監視部が前記ギャップ量が異常であると判定した場合、該判定結果を前記圧力制御部に報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のギャップ量監視装置。
【請求項5】
前記SRV開度量測定手段及び前記GCV開度量測定手段は、夫々に備えられた前記燃料遮断弁及び前記燃料流量調節弁の開度量を夫々電気信号に変換する差動変圧器により構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のギャップ量監視装置。
【請求項6】
前記ギャップ量監視部による前記ギャップ量が異常であるとの判定に基づいて、前記圧力制御部が前記燃料流量調節弁の開度量を増加するように調整した後に、前記SRV開度量測定手段の測定量と前記GCV開度量測定手段の測定量との比が再び下降傾向を示した場合、前記燃料流量調節弁のギャップを点検する旨を該圧力制御部に報知することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のギャップ量監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−127250(P2012−127250A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279063(P2010−279063)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】