説明

ギヤカップリングの寿命測定装置

【課題】 経験豊かな作業員を必要とせずにギヤカップリングの寿命を自動的に測定することができるギヤカップリングの寿命測定装置を提供する。
【解決手段】 ギヤカップリング1のギヤ継手部のバックラッシュ量を測定するバックラッシュ量測定手段30,32と、このバックラッシュ量測定手段の測定結果に基づいてバックラッシュ量の増加分を演算し、増加分に基づいてギヤ継手部の現在の摩耗量を演算し、この現在の摩耗量と限界摩耗量とを比較してギヤカップリングが寿命であるか否かを判断する寿命判定手段34と、この寿命判定手段が判断した結果を表示する表示手段36とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の軸継手に用いられているギヤカップリングの寿命測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ギヤカップリングは、種々の生産ラインにおける回転軸の軸継手として多く使用されている。
図3は、ギヤカップリング1の構造を示すものであり、内周に形成したスプライン2aを介して駆動軸Sinの外周に連結される駆動側カップリングハブ2と、内周に形成したスプライン4aを介して従動軸Soutに連結される従動側カップリングハブ4と、駆動側ギヤ継手部6を介して駆動側カップリングハブ2の外周に係合している駆動側カップリングカバー8と、従動側ギヤ継手部10を介して従動側カップリングハブ4の外周に係合している従動側カップリングカバー12と、駆動側及び従動側カップリングカバー8,12のフランジ部8a、12a同士を一体に連結するリーマボルト14及びナット16とを備えている。
【0003】
駆動側ギヤ継手部6は、図4に示すように、駆動側カップリングハブ2の外周に形成されている外歯20と、駆動側カップリングカバー8の内周に形成されて前記外歯20に噛み合っている内歯22とで構成されている。また、従動側ギヤ継手部10は、従動側カップリングハブ4の外周に形成されている外歯24と、従動側カップリングカバー12の内周に形成されて前記外歯24に噛み合っている内歯26とで構成されている。
【0004】
そして、駆動軸Sinの回転が駆動側カップリングハブ2に伝達され、駆動側カップリングハブ2から駆動側ギヤ継手部6を介して駆動側カップリングカバー8に伝達され、駆動側カップリングカバー8から、フランジ8a、12aを介して従動側カップリングカバー12に伝達される。そして、従動側カップリングカバー12の回転が、従動側ギヤ継手部10を介して従動側カップリングハブ4に伝達され、さらに従動軸Soutに伝達される。このような回転伝達時において、図4に示すように、駆動側ギヤ継手部6及び従動側ギヤ継手部10には、外歯20、24と内歯22、26との間にはバックラッシュCが形成されている。
【0005】
ところで、ギヤカップリングの駆動側ギヤ継手部6及び従動側ギヤ継手部10が破損してしまうと、即、生産ラインの停止という事態を招いてしまう。このような事態を未然に防止するため、駆動側ギヤ継手部6及び従動側ギヤ継手部10の摩耗状態は定期的に検査されている。
ギヤカップリングを分解し、駆動側ギヤ継手部6及び従動側ギヤ継手部10の摩耗状態を目視で検査する方法は、多くの手間と時間を要してしまうので、例えば特許文献1の装置のように、ギヤカップリングを分解せず、駆動側ギヤ継手部6及び従動側ギヤ継手部10のバックラッシュを直接に機械的に検出して記録することで、駆動側ギヤ継手部6及び従動側ギヤ継手部10の摩耗状態を検査する装置が知られている。
【特許文献1】特開平5−280905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の装置は、駆動側ギヤ継手部6及び従動側ギヤ継手部10の摩耗状態を検査するだけの装置であり、摩耗状態の程度を確認してギヤカップリングの寿命を判断することはできない。そのため、ギヤカップリングの交換が必要か、或いは、摩耗状態の程度が軽度なので現時点のギヤカップリングの交換は不要である、と判断するのは経験豊かな作業員が行なっており、ギヤカップリングの寿命測定に多くの労力が費やされているのが現状である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、経験豊かな作業員を必要とせずにギヤカップリングの寿命を自動的に測定することができるギヤカップリングの寿命測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係るギヤカップリングの寿命測定装置は、ギヤカップリングのギヤ継手部のバックラッシュ量を測定するバックラッシュ量測定手段と、このバックラッシュ量測定手段の測定結果に基づいて前記バックラッシュ量の増加分を演算する増加分演算手段と、前記増加分に基づいて前記ギヤ継手部の現在の摩耗量を演算する現在摩耗量演算手段と、この現在摩耗量演算手段の演算結果と限界摩耗量とを比較し、前記ギヤカップリングが寿命であるか否かを判断する寿命判定手段と、この寿命判定手段が判断した結果を表示する表示手段とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のギヤカップリングの寿命測定装置によると、バックラッシュ量測定手段がギヤカップリングのギヤ継手部のバックラッシュ量を測定し、増加分演算手段が、バックラッシュ量測定手段の測定結果に基づいてバックラッシュ量の増加分を演算し、現在摩耗量演算手段が、増加分に基づいてギヤ継手部の現在の摩耗量を演算し、寿命判定手段が、現在摩耗量演算手段の演算結果と限界摩耗量とを比較してギヤカップリングが寿命であるか否かを判断し、表示手段が寿命判定手段が判断した結果を表示するようにしているので、経験豊かな作業員を必要とせずに、ギヤカップリングの寿命を自動的に測定することができる。また、ギヤカップリングを分解せずに寿命を測定することができるので、寿命測定作業の大幅な省力化と時間短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。なお、図3から図4で示したギヤカップリング1の構成と同一構成部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
図1は、本発明に係るギヤカップリングの寿命測定装置の1実施形態であり、従動軸Soutの外周に固定されているレーザ投光器30と、従動側カップリングカバー12の外周に固定され、レーザ投光器30からレーザを受光するレーザ受光器32と、レーザ受光器32から入力する信号に基づいて演算を行なう演算装置34と、演算装置34の演算結果に基づいてギヤカップリング1の寿命結果を表示する表示装置36とを備えている。
【0010】
レーザ投光器30からレーザ受光器32にレーザを出射するタイミングは、ギヤカップリング1が回転軸の軸継手を中断しているときに行なわれる。そして、レーザ投光器30からレーザ受光器32に向けて所定周波数のレーザを出射したときに、ギヤカップリング1の駆動側カップリングカバー8及び従動側カップリングカバー12を、駆動側カップリングハブ2及び従動側カップリングハブ4に対して正方向及び逆方向に回転させ、その回転角変化によりレーザ受光器32に入力するレーザが変化するようになっている。
【0011】
演算装置34は、レーザ受光器32に入力したレーザに基づいて、駆動側ギヤ継手部6及び従動側ギヤ継手部10の外歯20、24と内歯22、26との間に形成されているバックラッシュCの増分変化を演算する。また、演算装置34は、バックラッシュCの増分変化に基づいて現在の摩耗量Wを演算するとともに、現在の摩耗量Wの度合いによって表示装置36にギヤカップリング1の寿命程度を表示させる。
【0012】
次に、定期的に行なうギヤカップリング1の寿命測定手順について図2を参照しながら説明する。なお、比較・演算処理は、演算装置34で行なうものとする。
ここで、交換した直後の新品のギヤカップリング1は、レーザ投光器30からレーザ受光器32に向けて所定周波数のレーザを出射し、ギヤカップリング1の駆動側カップリングカバー8及び従動側カップリングカバー12を、駆動側カップリングハブ2及び従動側カップリングハブ4に対して正方向及び逆方向に回転させることにより、駆動側ギヤ継手部6及び従動側ギヤ継手部10が摩耗していない初期のバックラッシュ量C0を測定して演算装置34に入力しておくものとする。
【0013】
先ずステップS2では、駆動側ギヤ継手部6及び従動側ギヤ継手部10の現在のバックラッシュ量Cnを測定する。具体的には、回転が停止したギヤカップリング1のギヤカップリング1の駆動側カップリングカバー8及び従動側カップリングカバー12を、駆動側カップリングハブ2及び従動側カップリングハブ4に対して正方向及び逆方向に回転させながら、レーザ投光器30からレーザ受光器32に向けて所定周波数のレーザを出射する。
次いで、ステップS4では、現在のバックラッシュ量Cn及び初期のバックラッシュ量C0の差からバックラッシュ量Cの増分を演算する。
次いで、ステップS6では、バックラッシュ量Cの増分に基づいて、駆動側ギヤ継手部6及び従動側ギヤ継手部10の現在の摩耗量Wを演算する。
【0014】
次いで、ステップS8では、演算した現在の摩耗量Wと限界摩耗量WLとを比較する。ここで、限界摩耗量WLとは、ギヤの歯厚が薄くなって駆動側ギヤ継手部6、或いは従動側ギヤ継手部10が破損しやすい限界の摩耗量である。そして、現在の摩耗量Wが限界摩耗量WL以上の場合には(W≧WL)、ステップS10に移行して「ギヤカップリングは寿命である」ことを表示させる表示信号を表示装置36に送る。また、現在の摩耗量Wが限界摩耗量WLを下回っていれば(W<WL)、ステップS12に移行して「ギヤカップリングは使用可能である」ことを表示させる表示信号を表示装置36に送る。
【0015】
なお、レーザ投光器30及びレーザ受光器32が本発明のバックラッシュ量測定手段に相当し、また、図2の演算装置34で行なうステップS4が本発明の増加分演算手段に相当し、ステップS6が本発明の現在摩耗量演算手段に相当し、ステップS8、ステップS10及びステップS12が本発明の寿命判定手段に相当し、表示装置36が本発明の表示手段に相当している。
【0016】
したがって、上述した寿命測定作業を定期的に行なうと、経験豊かな作業員を必要とせずに、ギヤカップリング1の寿命を自動的に測定することができる。
また、ギヤカップリング1を分解せずに寿命を測定することができるので、寿命測定作業の大幅な省力化と時間短縮を図ることができる。
さらに、駆動側ギヤ継手部6及び従動側ギヤ継手部10のバックラッシュ量を測定する手段は、非接触式のレーザ投光器30及びレーザ受光器32で構成されているので、簡便な装置構成としながら高精度のバックラッシュ量を測定することができる。
【0017】
なお、本実施形態では、従動軸Soutの外周にレーザ投光器30を固定し、従動側カップリングカバー12の外周にレーザ受光器32を固定しているが、レーザ投光器30を駆動軸Sinの外周に固定し、レーザ受光器32を駆動側カップリングカバー8の外周に固定してもよい。
なお、本実施形態で使用する表示装置36は、ディスプレイ装置、プリンター装置、音声発生装置等が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るギヤカップリングの寿命測定装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の装置を使用して定期的に行なわれるギヤカップリングの寿命測定手順について示したフローチャートである。
【図3】ギヤカップリングの構造を示す図である。
【図4】ギヤカップリングのバックラッシュを設けたギヤ継手部を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
1 ギヤカップリング
2 駆動側カップリングハブ
4 従動側カップリングハブ
6 駆動側ギヤ部
8 駆動側カップリングカバー
10 従動側ギヤ部
12 従動側カップリングカバー
20 外歯
22 内歯
24 外歯
26 内歯
30 レーザ投光器
32 レーザ受光器
34 演算装置
36 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤカップリングのギヤ継手部のバックラッシュ量を測定するバックラッシュ量測定手段と、このバックラッシュ量測定手段の測定結果に基づいて前記バックラッシュ量の増加分を演算する増加分演算手段と、前記増加分に基づいて前記ギヤ継手部の現在の摩耗量を演算する現在摩耗量演算手段と、この現在摩耗量演算手段の演算結果と限界摩耗量とを比較し、前記ギヤカップリングが寿命であるか否かを判断する寿命判定手段と、この寿命判定手段が判断した結果を表示する表示手段とを備えていることを特徴とするギヤカップリングの寿命測定装置。
【請求項2】
前記バックラッシュ量測定手段は、前記ギヤカップリングに連結している駆動軸、或いは従動軸の一方と、前記ギヤカップリングを構成している駆動側カップリングカバー、或いは従動側カップリングカバーの一方とに配置されて互いの相対回転量を測定する非接触式の計測手段であることを特徴とする請求項1記載のギヤカップリングの寿命測定装置。
【請求項3】
前記バックラッシュ量測定手段は、前記駆動軸、或いは前記従動軸の外周に固定されているレーザ投光器及びレーザ受光器の一方と、前記駆動側カップリングカバー、或いは前記従動側カップリングカバーの前記一方に対向する位置に固定されている前記レーザ投光器及び前記レーザ受光器の他方とで構成されていることを特徴とする請求項2記載のギヤカップリングの寿命測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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