説明

ククルビツリル誘導体を含むナノ粒子、該ナノ粒子を含む薬剤組成物、及びそれらの製造方法

ククルビツリル誘導体の凝集によって形成された、1ないし1,000nmの粒子径を有するナノ粒子、前記ナノ粒子に薬理活性物質が担持された薬剤組成物、及びこれらの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ククルビツリル誘導体を含むナノ粒子に係る。さらに詳細には、本発明は、ククルビツリル誘導体の凝集によって形成されたナノ粒子、該ナノ粒子を含む薬剤組成物、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
21世紀を迎え、ヒトゲノムプロジェクトの完成によってかなりの量の遺伝子情報が得られ、多様な疾病に対する診断と予防についての研究が活発になされている。このような状況下で、新薬及びこのための薬物送達システムの開発は、バイオテクノロジー産業の多くの研究の中でも重要な課題である。新薬の開発は、高付加価値産業であるにもかかわらず、大きい危険が生じ、莫大な経済的バックアップが必要である。さらに、商品化を達成するためには、新薬の開発後、複雑な臨床試験が必要であるため、新薬の開発は時間がかかる。これに対し、薬物送達システムの開発は、新薬開発に必要な時間と費用とに比べ、三分の一ほどに低減され、かつ成功率も非常に高い。新しい薬物送達システムの開発は、多くの国内外の大学研究所、企業研究所及び政府出資研究所などで活発に進められている。新たに開発され、現在、国内で商品化された薬物送達システムの例としては、ハンミ薬品(韓国)がノバルティスに輸出した免疫抑制剤として用いられるシクロスポリン(商品名:インプランタ)製剤がある。また、他の例として、ケトトップ(太平洋製薬、韓国)の開発が挙げられる。開発された薬物送達システムの商品化の成功に基づいて、国内のさまざまな大学の化学科、化学工学科、薬学科、医学科など、各製薬会社の研究所、政府出資研究所、および各企業の化学関連研究所で薬物送達システムについての広範囲の研究がなされている。さらに、遺伝子、蛋白質、および有機化合物のためのさまざまな薬物送達システム、経口投与、経皮投与、経鼻投与のような多様な投与方法、ならびに脳、腎臓、および肝臓のような特定器官を標的とした薬物送達システムの研究がなされている。外国では、ほぼあらゆる主要大学に薬物送達システムに関する研究室が設けられており、薬物送達システムに関する研究を導くおもな外国の企業としては、Alza Corp.、Elan Corporation,Plc.、Dura Pharmaceuticals Inc.、Andrx Corp.、Vivus Inc.などが挙げられる。
【0003】
薬物送達システムの発展は、薬物担体と製剤を必要とする。このような薬物担体として用いられる多種の高分子合成が重点的に研究されている。代表的な合成高分子としては、生分解性高分子物質があり、特にポリラクチド(PLA)、ラクチド−グリコリド共重合体(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびポリ(アルキルシアノアクリレート)のような生体内で無毒の生分解性高分子物質が薬物送達システムのために活発に研究されている。
【0004】
薬物送達システムの開発においては、以下の重要な要請;副作用が少ないこと;薬物と薬物送達システムとが安定した結合体を形成し、薬物の損失や変性がおきずに安定な薬物送達を確実にすること;および標的器官または細胞への安定な薬物送達;が満たされなければならない。
【0005】
上述の要請を満足する多種の薬物送達システムが継続的に開発されねばならない。しかしながら、現在まで、熱可塑性、生体適合性、生体分解性、生産性、加工性などがいずれも優秀な薬物送達システムはあまり開発されておらず、有望な新しい薬物送達システムの開発が必要である。さらに、さまざまな薬物送達システムの開発に関する世界的な研究に歩調を合わせるためには、新薬開発の重要な技術である薬物送達システムの開発への活発な参加が要求される。
【0006】
ククルビツリルは、1905年にベーレンド(R.Behrend)、マイヤー(E.Meyer)、ラスチェ(F.Rusche)によって最初に報告された(Liebigs Ann.Chem.1905,339,1)。彼らの報告によれば、グリコールウリルと過剰のホルムアルデヒドとを塩酸(HCl)存在下で縮合させて非晶質の固体を得て、この非晶質の固体を熱い濃硫酸に溶かして得られた溶液を水で希釈すれば、結晶状の物質を得ることができる。しかし、彼らは、この物質がC1011・2HOであると誤って推定し、この物質の構造は明らかにすることができなかった。
【0007】
1981年にモック(W.Mock)とその共同研究者らはこの物質を再発見し、前記物質が6量体の巨大な環化合物であり、C36362412の化学式を有することを正しく示し、X線結晶構造解析により確認した(J.Am.Chem.Soc.1981,103,7367)。モックらは、この化合物をククルビト[6]ウリルと命名した。その後、ククルビト[6]ウリルの改善された合成方法が開示された(DE 196 03 377 A1公報)。
【0008】
2000年に、金キムン(Kimoon Kim)とその共同研究者らは、既知のククルビト[6]ウリルおよびその同族体であるククルビト[n]ウリル(n=5,7,8)の合成ならびに分離の改善を報告し、それぞれのX線結晶構造を同定した(J.Am.Chem.Soc.2000,122,540)。
【0009】
一方、国際公開第00/68232号パンフレットには、下記参考図1のような化学式のククルビツリル[n]が開示されている:
【0010】
【化1】

【0011】
前記化学式で、nは、4ないし12の整数である。
【0012】
上述のククルビツリル誘導体は、非置換のグリコールウリル単量体単位を含む化合物である。
【0013】
一方、置換グリコールウリル単量体単位を含むククルビツリル誘導体が報告された(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1992,31,1475)。この文献によれば、ジメチルグリコールウリルとホルムアルデヒドとの縮合によって5個のジメタノジメチルグリコールウリル単量体単位を含むデカメチルククルビト[5]ウリルが合成された。
【0014】
ククルビツリルは、巨大環分子化合物であり、親油性の空洞を有し、2つの親水性の入口を上部および下部に有している。従って、ククルビツリルは、空洞内では親油性の相互作用が生じ、6個のカルボニル基を有する2つの入口では、水素結合、極性−極性相互作用、および正電荷−極性相互作用が生じる。従って、ククルビツリルは、多種の化合物との非常に安定した非共有結合によって、これらの化合物の保持性能を示す(表1)。
【0015】
【表1】

【0016】
前記表1から分かるように、ククルビツリルは、特にアミノ基またはカルボキシル基を有する化合物と非常に安定した非共有結合によって複合体を形成し、かかる特性を利用して多様な分野でのククルビツリルの適用に関する研究が継続的に行われている。
【0017】
本発明者らは、最近FDA(Food and Drug Administration)で認証された抗ガン剤であるオキサリプラチン(Oxaliplatin)と薬物送達システムとして使われるククルビツリルとの間の安定した非共有結合を介した複合体の形成を報告した(PCT/KR02/01755)。また、本発明者らは、ククルビツリルを含む擬似ロタキサン(pseudo−rotaxane)によってDNAの結合能力が向上すること、およびククルビツリル系デンドリマーの遺伝子送達システムとしての使用を報告した(KR01−7169公報、Angew.Chem.Int.Ed.,2000、Angew.Chem.Int.Ed.,2001)。
【0018】
また、本発明者らは、金表面上に形成されたククルビツリルの自己組織化単分子層が、リゾチームおよびグルコースオキシダーゼ(GOD)などの蛋白質と再現性のある安定した非共有結合能力を有することを見出した。
【0019】
従って、ククルビツリルは、アミン基、アンモニウム基、またはカルボキシル基を有する単分子薬物だけでなく、蛋白質またはポリペプチドの薬物のための薬物送達システムに用いられうると期待される。しかし、ククルビツリルは、溶解度が低く、多様な置換基で簡単に置換できる活性官能基を有しておらず、そのため、その用途が非常に限られている。従って、ククルビツリルは、既存の有望な薬物送達システムであるシクロデキストリンに対して補完的であり、ククルビツリルの非常にすぐれた保持性能にもかかわらず、ククルビツリルの薬物送達システムとしての使用に関する広範囲の研究がなされないでいた。
【0020】
最近、本発明者らは、前記のような薬物送達システムとしてのククルビツリルの使用の限界を克服する解決手段を研究し、用途が制限されていたククルビツリルに活性置換基を導入した結果、12個のヒドロキシル基を有するヒドロキシククルビツリルと、2つのアミノフェニル基を有するジアミノフェニルククルビツリルとを開発した(参考図2)(韓国特許出願2003−0008453号、PCT/KR02/02213)。
【0021】
【化2】

【0022】
上記のヒドロキシククルビツリルは、多様な置換基の導入が容易であるので、多種のククルビツリル誘導体の合成が可能である。
【0023】
これにより、本発明者らは、新しい薬物送達システムの開発の必要性の下、上述のククルビツリルの非共有結合特性と、ククルビツリル誘導体への多様な置換基の導入可能性に基づき、本発明を完成させた。
【発明の開示】
【0024】
発明の詳細な説明
発明が解決しようとする課題
本発明は、ククルビツリル誘導体を含むナノ粒子を提供する。
【0025】
本発明はまた、前記ナノ粒子に薬物が担持された薬剤組成物を提供する。
【0026】
本発明はまた、前記ナノ粒子の調製方法を提供する。
【0027】
本発明はまた、前記薬剤組成物の調製方法を提供する。
【0028】
発明の開示
本発明の一実施形態によれば、下記化学式1のククルビツリル誘導体の凝集によって形成された、1ないし1,000nmの粒径を有するナノ粒子が提供される:
【0029】
【化3】

【0030】
前記化学式1で、XはO、SまたはNHであり、
及びAは、それぞれORおよびOR、SRおよびSR、またはNHRおよびNHRであり、
前記R及びRは、それぞれ独立して水素、置換または非置換のC〜C30のアルキル、置換または非置換のC〜C30のアルケニル、置換または非置換のC〜C30のアルキニル、置換または非置換のC〜C30のカルボニルアルキル、置換または非置換のC〜C30のチオアルキル、置換または非置換のC〜C30のアルキルチオール、置換または非置換のC〜C30のアルコキシ、置換または非置換のC〜C30のヒドロキシアルキル、置換または非置換のC〜C30のアルキルシリル、置換または非置換のC〜C30のアミノアルキル、置換または非置換のC〜C30のアミノアルキルチオアルキル、置換または非置換のC〜C30のシクロアルキル、置換または非置換のC〜C30のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のC〜C30のアリール、置換または非置換のC〜C20のアリールアルキル、置換または非置換のC〜C30のヘテロアリール、及び置換または非置換のC〜C20のヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、
nは、4ないし20の整数である。
【0031】
本発明の他の実施形態によれば、前記化学式1のククルビツリル誘導体の凝集によって形成されたナノ粒子に薬理活性物質がゲスト分子として担持された薬剤組成物が提供される。
【0032】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記化学式1のククルビツリル誘導体を有機溶媒に溶かして反応溶液を得る工程と、前記反応溶液に水を加えた後、分散させる工程と、前記分散された溶液を、前記有機溶媒の沸点から100℃の温度範囲で蒸留することによって有機溶媒を除去する工程と、得られた溶液を室温に冷却する工程とを含む、ククルビツリル誘導体の凝集によるナノ粒子の調製方法が提供される。
【0033】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記化学式1のククルビツリル誘導体と薬理活性物質とを有機溶媒に溶かして反応溶液を得る工程と、前記反応溶液に水を加えた後、分散させる工程と、前記分散された溶液を、前記有機溶媒の沸点から100℃の温度範囲で蒸留することによって有機溶媒を除去する工程と、得られた溶液を室温に冷却させる工程とを含む、前記ナノ粒子にゲスト分子として薬理活性物質がゲスト分子として上述のように調製されたナノ粒子に担持された薬剤組成物の調製方法が提供される。
【0034】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0035】
本発明は、下記化学式1のククルビツリル誘導体の凝集によって形成された空洞のある、1ないし1,000nmの粒径を有するナノ粒子を提供する:
【0036】
【化4】

【0037】
前記化学式1で、XはO、SまたはNHであり、
及びAは、それぞれORおよびOR、SRおよびSR、またはNHRおよびNHRであり、
前記R及びRは、それぞれ独立して水素、置換または非置換のC〜C30のアルキル、置換または非置換のC〜C30のアルケニル、置換または非置換のC〜C30のアルキニル、置換または非置換のC〜C30のカルボニルアルキル、置換または非置換のC〜C30のチオアルキル、置換または非置換のC〜C30のアルキルチオール、置換または非置換のC〜C30のアルコキシ、置換または非置換のC〜C30のヒドロキシアルキル、置換または非置換のC〜C30のアルキルシリル、置換または非置換のC〜C30のアミノアルキル、置換または非置換のC〜C30のアミノアルキルチオアルキル、置換または非置換のC〜C30のシクロアルキル、置換または非置換のC〜C30のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のC〜C30のアリール、置換または非置換のC〜C20のアリールアルキル、置換または非置換のC〜C30のヘテロアリール、及び置換または非置換のC〜C20のヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、
nは、4ないし20の整数である。
【0038】
前記ナノ粒子は、ククルビツリル誘導体に加えて生分解性高分子の凝集によって形成されうる。生分解性高分子をさらに用いることにより、悪影響なしにククルビツリル誘導体の含有量を低減させ、人体での潜在的な副作用を最小にする。前記生分解性高分子の例としては、ラクチド−グリコリド共重合体(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、ポリ−ε−カプロラクトン、セルロース誘導体、アルブミン、ゼラチン、アルギン酸塩、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
一方、前記ククルビツリル誘導体の凝集によって得られるナノ粒子は、薬物の担体として用いられうる。薬理活性物質が前記ナノ粒子の空洞にゲスト分子として担持されうる。
【0040】
前記薬理活性物質は、有機化合物、蛋白質、または遺伝子でありうる。
【0041】
前記有機化合物の例としては、ヒドロコルチソン、プレドニソロン、スピロノラクトン、テストステロン、酢酸メゲステロール、ダナゾール、プロゲステロン、インドメタシン、アンホテリシンB、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
前記蛋白質としては、ヒト成長ホルモン、G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子:Granulocyte Colony−Stimulating Factor)、GM−CSF(顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子:Granulocyte−Macrophage Colony−Stimulating Factor)、エリスロポイエチン、ワクチン、抗体、インスリン、グルカゴン、カルシトニン、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン:Adreno Cortico Tropic Hormone)、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ソマトメジン、副甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモン、視床下部分泌物質、プロラクチン、エンドルフィン、VEGF(新規血管新生因子:Vascular Endothelial Growth Factor)、エンケファリン、バソプレシン、神経成長促進因子、非自然発生的オピオイド、インターフェロン、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
前記ナノ粒子を調製する方法は、前記化学式1のククルビツリル誘導体を有機溶媒に溶かして反応溶液を得る工程と、前記反応溶液に水を加えた後、分散させる工程と、前記分散された溶液を、前記有機溶媒の沸点から100℃の温度範囲で蒸留することによって有機溶媒を除去する工程と、得られた溶液を室温に冷却する工程とを含む。
【0044】
前記ナノ粒子に薬理活性物質がゲスト分子として担持された薬剤組成物を調製する方法は、前記化学式1のククルビツリル誘導体と薬理活性物質とを有機溶媒に溶かして反応溶液を得る工程と、前記反応溶液に水を加えた後、分散させる工程と、前記分散された溶液を、前記有機溶媒の沸点から100℃の温度範囲で蒸留することによって有機溶媒を除去する工程と、得られた溶液を室温に冷却する工程とを含む。
【0045】
前記ナノ粒子及び前記薬剤組成物の調製方法において、生分解性高分子をククルビツリル誘導体と共に有機溶媒に溶かして反応溶液を得てもよい。前記生分解性高分子は、PLGA、PEG、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、ポリ−ε−カプロラクトン、セルロース誘導体、アルブミン、ゼラチン、アルギン酸塩、またはこれらの混合物でありうるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
前記有機溶媒は、ククルビツリル誘導体を溶解できる溶媒であり、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランまたはこれらの混合物でありうるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
ククルビツリル誘導体を含む反応溶液に水を加え、その後分散させる工程で、水は反応溶液に比べて多い量を加えねばならず、反応溶液の体積の約10倍以上の量の水を用いることが望ましい。水を加えた後には、反応溶液は水に均質に分散されなければならず、望ましくは、ソニケータを使用して超音波で均質に分散させる。
【0048】
ククルビツリル誘導体を含む反応溶液を水に分散させた後、有機溶媒の沸点を越えて加熱して蒸留することによって有機溶媒を除去する。有機溶媒を除去した後、反応温度を室温に下げればエマルジョンが生成される。光学顕微鏡、走査電子顕微鏡、または透過電子顕微鏡などで観察すれば、1ないし1,000nmの粒径のナノ粒子を観察できる。
【0049】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。それら実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定すると解釈されることがあってはならない。
【0050】
発明の効果
上述したように、本発明は、ククルビツリル誘導体の凝集によって形成されたナノ粒子、前記ナノ粒子に薬物が担持された薬剤組成物、およびこれらの調製方法を提供する。
【0051】
図面の簡単な説明
図1は、オクタンスルファニルプロピルオキシククルビト[12]ウリルを利用し、本発明の方法に従って調製したナノ粒子の走査電子顕微鏡写真である。
【実施例】
【0052】
実施例1:ナノ粒子の調製
1mgのオクタンスルファニルプロピルオキシククルビト[12]ウリルを0.1mLのテトラヒドロフラン(THF)に完全に溶かした後、10mLの蒸溜水を加え、反応溶液をソニケータで10分間超音波で分散させた。その後、ソニケータの温度を60℃に設定し、THFを完全に除去した。完全にTHFを除去した後、得られた溶液を室温に冷却し、エマルジョンを得た。走査電子顕微鏡(SEM)写真によって、10から200nmの粒径の球状粒子を観察した。
【0053】
SEM写真を図1に示す。
【0054】
実施例2:ナノ粒子の調製
1mgのオクタンスルファニルプロピルオキシククルビト[12]ウリルと10mgのポリ乳酸(PLA)とを0.1mLのTHFに完全に溶かし、10mLの蒸溜水を加え、反応溶液をソニケータで30分間超音波で分散させた。その後、ソニケータの温度を60℃に設定し、THFを完全に除去した。THFを完全に除去した後、得られた溶液を室温に冷却し、エマルジョンを得た。
【0055】
実施例3:アルブミンが担持されたナノ粒子
1mgのオクタンスルファニルプロピルオキシククルビト[12]ウリル、5mgのPLA、及び5mgのアルブミンを0.1mLのTHFに完全に溶かし、10mLの蒸溜水を加え、反応溶液をソニケータで30分間超音波で分散させた。その後、ソニケータの温度を60℃に設定し、THFを完全に除去した。THFを完全に除去した後、得られた溶液を室温に冷却し、エマルジョンを得た。エマルジョンを3,500rpmで遠心分離して乾燥させた。
【0056】
実施例4:ヒドロコルチソンが担持されたナノ粒子
1mgのオクタンスルファニルプロピルオキシククルビト[12]ウリル、10mgのPLA、及び1mgのヒドロコルチソンを0.1mLのTHFに完全に溶かし、10mLの蒸溜水を加え、反応溶液をソニケータで30分間超音波で分散させた。その後、ソニケータの温度を60℃に設定し、THFを完全に除去した。THFを完全に除去した後、得られた溶液を室温に冷却し、エマルジョンを得た。エマルジョンを3,500rpmで遠心分離して乾燥させた。
【0057】
実施例5:インスリンが担持されたナノ粒子
1mgのオクタンスルファニルプロピルオキシククルビト[12]ウリル、10mgのPLA、及び1mgのインスリンを0.1mLのTHFに完全に溶かし、10mLの蒸溜水を加え、反応溶液をソニケータで60分間超音波で分散させた。その後、ソニケータの温度を60℃に設定し、THFを完全に除去した。THFを完全に除去した後、得られた溶液を室温に冷却し、エマルジョンを得た。エマルジョンを4,000rpmで遠心分離して乾燥させた。
【0058】
実施例6:カルシトニンが担持されたナノ粒子
1mgのオクタンスルファニルプロピルオキシククルビト[12]ウリル、10mgのPLA、及び2mgのカルシトニンを0.1mLのTHFに完全に溶かし、10mLの蒸溜水を加え、反応溶液をソニケータで30分間超音波で分散させた。その後、ソニケータの温度を60℃に設定し、THFを完全に除去した。THFを完全に除去した後、得られた溶液を室温に冷却し、エマルジョンを得た。エマルジョンを3,500rpmで遠心分離して乾燥させた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】オクタンスルファニルプロピルオキシククルビト[12]ウリルを利用し、本発明の方法に従って調製したナノ粒子の走査電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1のククルビツリル誘導体の凝集によって形成された、1ないし1,000nmの粒径を有するナノ粒子:
【化1】

前記化学式1で、XはO、SまたはNHであり、
及びAは、それぞれORおよびOR、SRおよびSR、またはNHRおよびNHRであり、
前記R及びRは、それぞれ独立して水素、置換または非置換のC〜C30のアルキル、置換または非置換のC〜C30のアルケニル、置換または非置換のC〜C30のアルキニル、置換または非置換のC〜C30のカルボニルアルキル、置換または非置換のC〜C30のチオアルキル、置換または非置換のC〜C30のアルキルチオール、置換または非置換のC〜C30のアルコキシ、置換または非置換のC〜C30のヒドロキシアルキル、置換または非置換のC〜C30のアルキルシリル、置換または非置換のC〜C30のアミノアルキル、置換または非置換のC〜C30のアミノアルキルチオアルキル、置換または非置換のC〜C30のシクロアルキル、置換または非置換のC〜C30のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のC〜C30のアリール、置換または非置換のC〜C20のアリールアルキル、置換または非置換のC〜C30のヘテロアリール、及び置換または非置換のC〜C20のヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、
nは、4ないし20の整数である。
【請求項2】
ククルビツリル誘導体に加えて生分解性高分子の凝集によって形成された、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記生分解性高分子は、ラクチド−グリコリド共重合体(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、ポリ−ε−カプロラクトン、セルロース誘導体、アルブミン、ゼラチン、アルギン酸塩、またはこれらの混合物である、請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のナノ粒子に薬理活性物質がゲスト分子として担持された薬剤組成物。
【請求項5】
前記薬理活性物質は、有機化合物、蛋白質、または遺伝子である、請求項4に記載の薬剤組成物。
【請求項6】
前記有機化合物は、ヒドロコルチソン、プレドニソロン、スピロノラクトン、テストステロン、酢酸メゲステロール、ダナゾール、プロゲステロン、インドメタシン、アンホテリシンB、またはこれらの混合物である、請求項5に記載の薬剤組成物。
【請求項7】
前記蛋白質は、ヒト成長ホルモン、G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)、GM−CSF(顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子)、エリスロポイエチン、ワクチン、抗体、インスリン、グルカゴン、カルシトニン、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ソマトメジン、副甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモン、視床下部分泌物質、プロラクチン、エンドルフィン、VEGF(新規血管新生因子)、エンケファリン、バソプレシン、神経成長促進因子、非自然発生的オピオイド、インターフェロン、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、またはこれらの混合物である、請求項5に記載の薬剤組成物。
【請求項8】
下記化学式1のククルビツリル誘導体を有機溶媒に溶かして反応溶液を得る工程と、
前記反応溶液に水を加えた後、分散させる工程と、
前記分散された溶液を、前記有機溶媒の沸点から100℃の温度範囲で蒸留することによって有機溶媒を除去する工程と、
得られた溶液を室温に冷却する工程と、
を含む請求項1に記載のナノ粒子の製造方法:
【化2】

前記化学式1で、XはO、SまたはNHであり、
及びAは、それぞれORおよびOR、SRおよびSR、またはNHRおよびNHRであり、
前記R及びRは、それぞれ独立して水素、置換または非置換のC〜C30のアルキル、置換または非置換のC〜C30のアルケニル、置換または非置換のC〜C30のアルキニル、置換または非置換のC〜C30のカルボニルアルキル、置換または非置換のC〜C30のチオアルキル、置換または非置換のC〜C30のアルキルチオール、置換または非置換のC〜C30のアルコキシ、置換または非置換のC〜C30のヒドロキシアルキル、置換または非置換のC〜C30のアルキルシリル、置換または非置換のC〜C30のアミノアルキル、置換または非置換のC〜C30のアミノアルキルチオアルキル、置換または非置換のC〜C30のシクロアルキル、置換または非置換のC〜C30のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のC〜C30のアリール、置換または非置換のC〜C20のアリールアルキル、置換または非置換のC〜C30のヘテロアリール、及び置換または非置換のC〜C20のヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、
nは、4ないし20の整数である。
【請求項9】
下記化学式1のククルビツリル誘導体と薬理活性物質とを有機溶媒に溶かして反応溶液を得る工程と、
前記反応溶液に水を加えた後、分散させる工程と、
前記分散された溶液を、前記有機溶媒の沸点から100℃の温度範囲で蒸留することによって有機溶媒を除去する工程と、
得られた溶液を室温に冷却する工程と、
を含む請求項4に記載の薬剤組成物の製造方法:
【化3】

前記化学式1で、XはO、SまたはNHであり、
及びAは、それぞれORおよびOR、SRおよびSR、またはNHRおよびNHRであり、
前記R及びRは、それぞれ独立して水素、置換または非置換のC〜C30のアルキル、置換または非置換のC〜C30のアルケニル、置換または非置換のC〜C30のアルキニル、置換または非置換のC〜C30のカルボニルアルキル、置換または非置換のC〜C30のチオアルキル、置換または非置換のC〜C30のアルキルチオール、置換または非置換のC〜C30のアルコキシ、置換または非置換のC〜C30のヒドロキシアルキル、置換または非置換のC〜C30のアルキルシリル、置換または非置換のC〜C30のアミノアルキル、置換または非置換のC〜C30のアミノアルキルチオアルキル、置換または非置換のC〜C30のシクロアルキル、置換または非置換のC〜C30のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のC〜C30のアリール、置換または非置換のC〜C20のアリールアルキル、置換または非置換のC〜C30のヘテロアリール、及び置換または非置換のC〜C20のヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、
nは、4ないし20の整数である。
【請求項10】
前記ククルビツリル誘導体を有機溶媒に溶かして反応溶液を製造する工程で、生分解性高分子を有機溶媒にさらに溶かす、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記有機溶媒は、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、またはこれらの混合物である、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記分散させる工程は、ソニケータを使用して超音波で行われる、請求項8または請求項9に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−500185(P2007−500185A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521785(P2006−521785)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001874
【国際公開番号】WO2005/010004
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(500345478)ポステック・ファウンデーション (25)
【Fターム(参考)】