説明

クチナシ青色素の製造方法

【課題】糖衣が施される食品または医薬品を着色した場合に生じる変色を抑制し得るクチナシ青色素を製造する方法を提供する。
【解決手段】アカネ科クチナシの果実から抽出して得られるイリドイド配糖体(例えば、ゲニポシドなど)をタンパク質加水分解物(例えば、カゼインタンパク質加水分解物)の存在下でβ−グルコシダーゼ処理して得られる処理液に対して、分画分子量3000以上の膜(例えば、限外ろ過膜)を用いて低分子化合物を除去する膜分離処理を行うことを特徴とするクチナシ青色素の製造方法。糖衣されている食品又は医薬品(例えば、糖衣錠、糖衣チューインガムなど)であって、糖衣層が上述した製造方法により得られるクチナシ青色素により着色されている食品又は医薬品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クチナシ青色素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品に対する青色着色料としてクチナシ青色素が広く使用されている。クチナシ青色素は、一般に、クチナシ果実抽出物等に含まれるイリドイド配糖体を、タンパク質分解物の存在下でβ−グルコシダーゼにより酵素処理することにより製造される。
【0003】
クチナシ青色素に関する技術としては、クチナシのイリドイド配糖体もしくはその含有物質とβ−グルコキシダーゼもしくはその含有物質とを、第一級アミノ基含有物質の存在下に好気的条件下で作用させて、クチナシのイリドイド配糖体のβ−グルコキシダーゼ発色青色系色素を形成せしめるに際し、該配糖体もしくはその含有物質と該β−グルコキシダーゼもしくはその含有物質とを、予め微好気的条件下に充分に作用させたのち、攪拌条件下に更に作用させることを特徴とする明色化された天然青色系色素の製法(特許文献1参照)、アカネ科クチナシの果実より抽出して得られたイリドイド配糖体を大豆タンパク分解物の存在下(但し、タウリン含有物質の共存を除く)でβ−グルコシダーゼ処理して調製されるクチナシ青色素に、酵素処理イソクエルシトリンを配合して得られる色調が改善されたクチナシ青色素の色素製剤(特許文献2参照)などが知られている。
【0004】
一方、食品や医薬品の製造では、吸湿や酸化、光分解などの品質低下の軽減、或いはこれらの苦味、臭い、刺激などの緩和を目的として、食品や医薬品を含有する芯剤の表面に糖質層の被膜を施すこと(即ち、糖衣)が広く行われている。そして、このような食品等を青色に着色するために、糖質層の被膜にクチナシ青色素を配合する場合がある。しかし、このようにして着色された食品等は、製造直後は鮮やかな青色を有していても、保存中にくすんだ青色に変色し易いため、この問題の解決が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−92792号公報
【特許文献2】特許第4374494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、糖衣が施される食品または医薬品を着色した場合に生じる変色が抑制されたクチナシ青色素を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、イリドイド配糖体をタンパク質加水分解物の存在下でβ−グルコシダーゼ処理して得られる処理液に対して、一定の分画分子量を有する膜を用いて低分子化合物を分離・除去する処理を行うことによって、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)イリドイド配糖体をタンパク質加水分解物の存在下でβ−グルコシダーゼ処理して得られる処理液に対して、分画分子量3000以上の膜を用いて低分子化合物を除去する膜分離処理を行うことを特徴とするクチナシ青色素の製造方法、
(2)膜分離処理が限外ろ過膜処理である前記(1)に記載のクチナシ青色素の製造方法、
(3)糖衣されている食品又は医薬品であって、糖衣層が前記(1)又は(2)の製造方法により得られるクチナシ青色素により着色されている食品又は医薬品、
(4)糖衣層を形成する糖衣成分が、蔗糖、グルコース、パラチノース、還元パラチノース、還元乳糖、エリスリトール、キシリトール、マルチトール及びマンニトールのうちのいずれか1種又は2種以上である前記(3)に記載の食品又は医薬品、
からなっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法により得られるクチナシ青色素により着色された糖衣錠は、保存中に生じる変色が抑制されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のクチナシ青色素は、イリドイド配糖体をタンパク質加水分解物の存在下でβ−グルコシダーゼ処理して得られる処理液に対して、分画分子量3000以上の膜を用いて低分子化合物を除去する膜分離処理を行うことにより製造される。
【0011】
本発明に用いられるイリドイド配糖体としては、アカネ科クチナシ(Gardenia augusta MERRIL var. grandiflora HORT.,Gardenia jasminoides ELLIS)の果実から抽出して得られるイリドイド配糖体であれば特に制限されないが、例えばゲニポシドが好ましく用いられる。
【0012】
上記クチナシの果実からゲニポシドを抽出する方法に制限はなく、例えば、クチナシの乾燥果実を粉砕し、水、アルコールまたはそれらの混合液を用いて抽出するなどの公知の方法が用いられる。抽出条件は、例えば水・アルコール混合液(1:1)を用いる場合、室温(約0〜30℃)〜50℃で約1〜18時間が好ましく、約30〜40℃で約2〜4時間がより好ましい。乾燥果実の粉砕物からのゲニポシドの抽出率をより高めるため、抽出操作は通常複数回繰り返される。ゲニポシドを含む抽出液は自体公知の方法により濃縮され、通常、濃縮液として冷蔵或いは冷凍保存される。
【0013】
この濃縮液は、通常、黄色素成分であるクロシンその他のゲニポシド以外の成分を除去するため、吸着剤処理される。吸着樹脂処理は、例えば、下記の方法により行われる。
【0014】
初めに、上記濃縮液を適当な濃度に希釈し、吸着樹脂を充填したカラムに希釈液を供給する。吸着樹脂としては、アンバーライトXAD−4、アンバーライトXAD−7(製品名;オルガノ社製)、ダイヤイオンHP−20、HP−21、HP−40(製品名;三菱化学社製)等の多孔性樹脂が挙げられ、アンバーライトXAD−7が好ましく用いられる。
【0015】
次に、水または低濃度のアルコール(例えば、エタノール等)と水の混合液をカラムに通液し、その非吸着及び溶出画分を回収することにより、ゲニポシドを含む画分が得られる。この画分は自体公知の方法により濃縮され、通常、濃縮液として冷蔵或いは冷凍保存される。
【0016】
本発明に用いられるタンパク質加水分解物は、例えば大豆や小麦などの植物由来のタンパク質、カゼインやゼラチンなどの動物由来のタンパク質または酵母などの微生物に由来するタンパク質の加水分解物である。本発明に用いられるタンパク質加水分解物としては、例えばハイニュートR(商品名;不二製油社製;大豆由来)、EPS−C(商品名;播州調味料社製;トウモロコシ由来)、プロエキスG2(商品名;播州調味料社製;トウモロコシ由来)、CPOP(商品名;森永乳業社製;カゼイン由来)、CU2500(商品名;森永乳業社製;カゼイン由来)、ラクトアミノサン(商品名;コスモ食品社製;カゼイン由来)、FCP−A(商品名;ニッピ社製;ゼラチン由来)、酵母エキスFR(商品名;キリンフードテック社製;酵母由来)、酵母エキスSL−W(商品名;キリンフードテック社製;酵母由来)などが商業的に生産・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0017】
本発明に用いられるβ−グルコシダーゼは、β−グルコシダーゼ活性を有する酵素であれば特に制限はなく、例えば、Aspergillus niger、Trichoderma reesei、Trichoderma viride、アーモンド等に由来するものが挙げられる。例えばβ−グルコシダーゼとして、スミチームC6000、スミチームAC、スミチームC、スミチームX、スミチームBGT、スミチームBGA(商品名;新日本化学工業社製)、セルロシンAC40、セルロシンT3、セルロシンAL(商品名;エイチビイアイ社製)オノズカ3S、Y−NC(商品名;ヤクルト薬品工業社製)、セルラーゼA「アマノ」3、セルラーゼT「アマノ」4(商品名;天野エンザイム社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0018】
β−グルコシダーゼ処理は、クチナシ青色素を生成可能な処理方法であれば特に制限されないが、例えばイリドイド配糖体、タンパク質加水分解物および水を混合して得た水溶液に、β−グルコシダーゼを添加して、撹拌若しくは振盪処理する方法を挙げることができる。
【0019】
また、上記処理は、温度条件が通常約20〜70℃、好ましくは約40〜60℃であり、pH条件が通常pH4〜6、好ましくはpH4.5〜5.5であり、反応時間が通常約30分〜50時間、好ましくは約15〜30時間の範囲内で行うことができる。
【0020】
また、上記処理におけるpH条件の調整のため、上記水溶液にβ−グルコシダーゼを添加する前に、該水溶液に適量のアルカリ剤(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムなど)を加えることが好ましく行われる。
【0021】
また、上記処理は好気条件で行うことが好ましく、該好気条件は、例えば撹拌や振盪等の機械的方法のほか、空気などの分子状酸素含有ガスを吹き込むことによって設定することができる。
【0022】
β−グルコシダーゼの添加方法に特に制限はないが、β−グルコシダーゼをそのまま一度に添加する方法、或いはβ−グルコシダーゼの水溶液を調製し、該水溶液を一度に又は2〜50回に分けて添加する方法が挙げられる。
【0023】
上記処理の行われる水溶液100質量%中、イリドイド配糖体が約1〜20質量%、好ましくは約4〜15質量%、タンパク質加水分解物が約1〜25質量%、好ましくは約4〜15質量%、となるように調整するのが好ましい。β−グルコシダーゼの添加量は、イリドイド配糖体1gに対し、0.01〜1.0gとすることが好ましい。
【0024】
上記処理により得られる処理液を約70〜100℃、好ましくは約80〜95℃で約10分〜3時間、好ましくは約10分〜2時間加熱して酵素を失活させた後、水で約2倍〜20倍に希釈し、分画分子量3000以上の膜に供給して膜分離処理を行う。分画分子量3000以上の膜を用いることにより、グルコース、アミノ酸、ペプチドなどの低分子化合物を効率的に除去することができる。分画分子量が150000を超えると低分子化合物に加えて色素成分も除去されてしまうため、分画分子量の上限は通常150000程度である。
【0025】
該膜分離処理に用いられる膜材料としては、天然、合成の別を問わず、例えばセルロース、セルロース・ジアセテート、セルロース・トリアセテート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0026】
膜分離処理としては、限外ろ過(UF)膜処理、逆浸透膜(ナノフィルトレーション膜)処理などの機能性高分子膜を用いたろ過処理を挙げることができるが、工業的には限外ろ過膜処理が好ましい。
【0027】
限外ろ過膜処理に用いられる膜としては、例えばマイクローザSEP−3013(商品名;旭化成ケミカルズ社製;分画分子量3000)、マイクローザSLP−3053(商品名;旭化成ケミカルズ社製;分画分子量10000)、マイクローザAHP−3013(商品名;旭化成ケミカルズ社製;分画分子量50000)、FUY03A1(商品名;ダイセンメンブレンシステムズ社製;分画分子量30000)、FUS1582(商品名;ダイセンメンブレンシステムズ社製;分画分子量150000)などが商業的に生産・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0028】
このようにして得られるクチナシ青色素は、水溶液の形態のまま色素製剤として提供することもできるが、該製剤を自体公知の方法により乾燥し、粉末状の色素製剤としても良い。乾燥方法としては、例えば真空凍結乾燥、通風乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥、ベルト乾燥、棚乾燥、ドラム乾燥等が挙げられるが、真空凍結乾燥が好ましく行われる。得られる粉末状の色素製剤の乾燥減量は通常約5質量%以下、好ましくは約1〜3質量%である。
【0029】
本発明により得られるクチナシ青色素は、食品又は医薬品の着色に用いることができる。着色の対象となる食品に特に制限はなく、例えばアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓などの冷菓類、乳飲料、乳酸菌飲料、清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、スポーツ飲料、粉末飲料、アルコール飲料、コーヒー飲料、茶飲料などの飲料類、プリン、ゼリー、ヨーグルトなどのデザート類、チューインガム、チョコレート、ドロップ、キャンディ、クッキー、せんべい、グミなどの菓子類、ジャム類、スープ類、漬物類、ドレッシング、たれなどの調味料、ハム、ソーセージなどの畜肉加工品、魚肉ソーセージ、かまぼこなどの水産練り製品などが挙げられる。また、着色の対象となる医薬品に特に限定はなく、例えば解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、交感神経興奮剤、副交感神経遮断剤、中枢興奮薬、H2ブロッカー、制酸剤、消炎酵素剤、抗炎症剤、気管支拡張剤、抗菌剤、鎮咳剤、去痰剤、抗コリン剤、止しゃ剤、催眠鎮静薬、利胆薬、血圧降下剤、骨格筋弛緩薬、乗り物酔い予防・治療薬等、ビタミン類、生薬類などが挙げられる。
【0030】
さらに、本発明により得られるクチナシ青色素は、糖衣が施される食品又は医薬品(例えば糖衣錠、糖衣チューインガムなど)を着色した場合に生じる変色の抑制に優れた効果を奏するものであるため、自体公知の方法により該食品又は医薬品の糖衣層に配合して好適に利用することができる。
【0031】
糖衣層を形成する糖衣成分としては、蔗糖、グルコース、パラチノース、還元パラチノース、還元乳糖、エリスリトール、キシリトール、マルチトール及びマンニトールのうちのいずれか1種又は2種以上が好ましく用いられる。
【実施例】
【0032】
以下に本発明を製造例、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
[製造例]ゲニポシド液の調製
粉砕したクチナシの乾燥果実1800gに40vol%エタノール・水混合液7200mlを加え、室温で3時間攪拌した後吸引ろ過した。抽出残に40vol%エタノール・水混合液3300mlを加え、室温で30分間攪拌した後吸引ろ過する操作を2回繰り返し、ろ液として計10500mlの抽出液を得た。この抽出液を、ロータリーエバポレーターを用いて60℃、4kPaの条件で濃縮し、ゲニポシドを含む濃縮液約500mlを得た。
得られた濃縮液に水を加えて1000mlとし、アンバーライトXAD−7(製品名;オルガノ社製)3000mlを充填したカラムに流速SV=0.5で通液した。その後、カラムに流速SV=0.5で24000mlの水を通液し、排出液を回収した。回収した液を、ロータリーエバポレーターを用いて、60℃、4kPaの条件で濃縮し、ゲニポシドを47.1%含む濃縮液90gを得た。
【0034】
[実施例1]
(1)クチナシ青色素の製造
製造例で得た濃縮液9.14g、大豆タンパク質加水分解物(商品名:ハイニュートR;不二製油社製)6.9gおよび水33.4gを混合して得た水溶液を、水酸化ナトリウムでpH5.5に調整した。得られた水溶液にβ−グルコシダーゼ(商品名:スミチームC6000;新日本化学工業社製)0.3gを添加して、撹拌下、50℃で24時間β−グルコシダーゼ処理した後、90℃で15分間加熱して酵素を失活、ろ過により不溶物を除去し、反応液50gを得た。
得られた反応液50gを水250gで希釈した液を分画分子量3000の限外ろ過膜(商品名:マイクローザSEP−0013;旭化成ケミカルズ社製)に供給して0.7kg/cm,35℃で処理し、膜より透過する低分子画分を除去した。一方、膜の非透過画分を凍結乾燥機(型式:DC500;ヤマト科学社製)を用いて、−30℃で24時間予備凍結した後、真空度10Paの条件下、棚温30℃で約70〜72時間かけて凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物を0.5mmのスクリーンを有するピンミルを用いて粉砕し、粉末状のクチナシ青色素7.0gを得た。得られたクチナシ青色素の乾燥減量は2.5質量%であった。
(2)着色された糖衣錠の製造
先に製造したクチナシ青色素0.02gおよびマルチトール(商品名:レシス;三菱フードテック社製)68gを水32gに溶解し、液温50℃のコーティング溶液約100gを調製した。次に、乳糖模擬錠(平均直径8mm)を芯材として用い、用意した乳糖模擬錠300g分をパン型造粒機(装置名:PZ−01R;アズワン社製)に入れ、連続的に25rpmで回転している小型糖衣機内の芯材に対し、調製したコーティング溶液を一度に4.0g塗布し、小型糖衣機内の芯材に空気流を断続的に送って芯材表面を乾燥させ、これを繰返し実施して、糖衣率50%になるまでコーティング操作を行った。これにより、クチナシ青色素により着色された糖衣錠(実施例品1)を得た。
【0035】
[実施例2]
実施例1で使用した分画分子量3000の限外ろ過膜(商品名:マイクローザSEP−0013;旭化成ケミカルズ社製)に替えて、分画分子量6000の限外ろ過膜(商品名:マイクローザSIP−0013;旭化成ケミカルズ社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様に実施し、クチナシ青色素により着色された糖衣錠(実施例品2)を得た。
【0036】
[比較例1]
実施例1の(2)のクチナシ青色素0.02gに替えて、実施例1の(1)の方法で調製した反応液0.13gを使用したこと以外は、実施例1の(2)と同様に実施し、クチナシ青色素により着色された糖衣錠(比較例品1)を得た。
【0037】
[比較例2]
実施例1の(1)の方法で調製した反応液5gを水100gで希釈し、該希釈液を逆浸透膜(商品名:NTR−7410;食塩阻止率10%;日東電工社製)に供給して20kg/cm、25℃で処理し、膜より透過する低分子画分を除去した。一方、膜の非透過画分を凍結乾燥機(型式:DC500;ヤマト科学社製)を用いて、−30℃で24時間予備凍結した後、真空度10Paの条件下、棚温30℃で約70〜72時間かけて凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物を0.5mmのスクリーンを有するピンミルを用いて粉砕し、粉末状のクチナシ青色素1.3gを得た。得られたクチナシ青色素の乾燥減量は2.0質量%であった。次に、クチナシ青色素0.02gに替えてクチナシ青色素0.03gを使用したこと以外は、実施例1の(2)と同様に実施し、クチナシ青色素により着色された糖衣錠(比較例品2)を得た。
【0038】
[評価]
実施例および比較例で得た糖衣錠(実施例品1及び2並びに比較例品1及び2)について、製造直後及び保存後の糖衣錠の色調を目視により評価した。保存は、糖衣錠を密封可能な袋(ポリエチレン/アルミニウム/エチレンメタクリル酸共重合樹脂製)に収納して密封し、40℃で1年間行った。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1の結果から、本発明の製造方法により製造されたクチナシ青色素により着色された糖衣錠は、比較例のものに比べて変色が抑制されていることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イリドイド配糖体をタンパク質加水分解物の存在下でβ−グルコシダーゼ処理して得られる処理液に対して、分画分子量3000以上の膜を用いて低分子化合物を除去する膜分離処理を行うことを特徴とするクチナシ青色素の製造方法。
【請求項2】
膜分離処理が限外ろ過膜処理である請求項1に記載のクチナシ青色素の製造方法。
【請求項3】
糖衣されている食品又は医薬品であって、糖衣層が請求項1又は2の製造方法により得られるクチナシ青色素により着色されている食品又は医薬品。
【請求項4】
糖衣層を形成する糖衣成分が、蔗糖、グルコース、パラチノース、還元パラチノース、還元乳糖、エリスリトール、キシリトール、マルチトール及びマンニトールのうちのいずれか1種又は2種以上である請求項3に記載の食品又は医薬品。

【公開番号】特開2012−67241(P2012−67241A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214854(P2010−214854)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(390010674)理研ビタミン株式会社 (236)
【Fターム(参考)】