説明

クッキー及びその製造方法

【課題】 トランス脂肪酸を含有するバター、マーガリン類及びショートニング類等の油中水型油脂類を使用することなく、従来と同様なショートネス感やしっとり感のある食感をもったクッキー及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 小麦粉、油中水型油脂類、卵、砂糖類及びベーキングパウダーよりなる主成分原料と、風味原料と、を用いてクッキーを製造する方法において、油中水型油脂類の代わりに水中油型乳化物を使用することを特徴とするクッキーの製造方法;並びに前記方法により製造されるクッキーを提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッキー及びその製造方法に関し、詳しくは従来から使用された油中水型油脂類の代わりに水中油型乳化物を使用するクッキーと、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
クッキーは、小麦粉、油中水型油脂類、卵、砂糖類及びベーキングパウダーを主成分原料とするもので、これらにより生地を調製し、更に必要に応じて乾燥果物、ナッツ類、酒類、果汁類及び香料・香辛料等の風味原料を加えた後、焼成することにより製造されている。
ここで、油中水型油脂類とは、バター、マーガリン類及びショートニング類等のような油中水型の油脂類を指し、固体脂が比較的多く含有されている。
広義の意味では、クッキーは焼き菓子であるビスケット類の範疇に入るが、ビスケット類に比べて比較的油脂含量が多く、食感として重要なショートネス感に加えて適度なしっとり感を持っていることが特徴である。
【0003】
このようにクッキーのボディは、小麦粉、油中水型油脂類、卵、砂糖類及びベーキングパウダーから形成されるが、焼き上げ時にベーキングパウダーより発生する炭酸ガスが生地から逃げることにより、小さな鬆の入った構造を形成する。また、油中水型油脂類は主に口中でのショートネス感やしっとり感といった好ましい食感を付与するのに役立っている。
ここで、ショートネス感とは、口中での咀嚼の際、ぽろぽろと崩れる食感のことであるが、更に強くなるとパサパサ感を呈するようになる。この様なパサパサ感は好ましくない食感である。
更に、砂糖類や、必要に応じて添加される乾燥果物、ナッツ類、酒類、果汁類及び香料・香辛料等は、調味料や風味原料としての役割がある。
【0004】
しかしながら、バター、マーガリン類及びショートニング類等のような油中水型油脂類に含有される固体脂中には、トランス脂肪酸が比較的多く含有されており、これらは冠動脈心疾患のリスクを高めるLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増加させることから、近年問題視されている。
米国では、コレステロールと同様にトランス脂肪酸についても、2006年1月から食品への含量表示が義務付けられている。
日本国内では、トランス脂肪酸の表示義務は未だ無いが、食品中のトランス脂肪酸の低減化の動きは、近年、活発化している状況である。
【0005】
上記したように、クッキーに使用される油中水型油脂類は固体脂を含有するが、これらがショートネス感やしっとり感を発現するのに役立っている。
しかしながら、これら固体脂中にはトランス脂肪酸が比較的多く含有されるといった問題点がある。
トランス脂肪酸とは、二重結合部分でトランス型の構造をとる脂肪酸の総称であるが、代表的なものとして、C18:1脂肪酸では、エライジン酸が挙げられる。
次に、C18:2の脂肪酸では2つの二重結合がある為に、トランス−トランス型、トランス−シス型及びシス−トランス型の幾何異性体である3種類のトランス脂肪酸が存在する。
また、C18:3の脂肪酸では、3つの二重結合がある為、更に複雑なトランス脂肪酸の異性体が存在する。
【0006】
液状油に水素を部分的に添加すること、即ち、水素添加により、脂肪酸の二重結合を減らし、飽和脂肪酸を増加させ、これによって融点の高い固体脂を製造する工程を油脂の硬化という。油脂の硬化では、ニッケル触媒などを使用し、油脂を高温下にて高圧の水素で処理するため、不可避的にトランス脂肪酸が生成する。なお、トランス脂肪酸では、炭素鎖が直鎖となる為、シス脂肪酸とは異なり、飽和脂肪酸と同様な固体脂的な性質を示す傾向がある。
このように硬化によって得られた固体脂を原料とするマーガリン類及びショートニング類には、トランス脂肪酸が比較的多く含有され、総脂肪酸中のトランス脂肪酸含量は2〜45%であることが報告されている。
【0007】
一方、自然界でもトランス脂肪酸は生じるが、例えば、牛などの反芻動物の消化管内では、細菌の作用により、不飽和脂肪酸のトランス化が起こり、乳脂や牛脂には2〜5%のトランス脂肪酸が含有されていることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
このようにクッキーにおいても、トランス脂肪酸を含有するバター、マーガリン類及びショートニング類等の油中水型油脂類に代わって、トランス脂肪酸含量の低い油脂類が強く求められている状況にある。
しかしながら、吸湿によるクッキーの劣化抑制を目的として、使用する砂糖類を糖アルコールに代替した技術やクッキーの食感や保存性を改善するために水溶性のヘミセルロースを添加する技術は開示されているものの、クッキーに使用される油中水型油脂類をトランス脂肪酸の少ない他の油脂類に代替した技術は殆ど知られていない(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0009】
【非特許文献1】月刊フードケミカル 2005−11、P.78
【特許文献1】特開2004−33109号公報
【特許文献2】特開平5−7449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記従来の問題点を解決し、トランス脂肪酸を含有するバター、マーガリン類及びショートニング類等の油中水型油脂類を使用することなく、従来と同様なショートネス感やしっとり感のある良好な食感を持ったクッキー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、トランス脂肪酸を含有するバター、マーガリン類及びショートニング類等の油中水型油脂類を使用することなく、従来と同様なショートネス感やしっとり感のある良好な食感を持ったクッキー及びその製造方法を開発すべく、クッキーを構成する原料、並びに、その配合割合について検討を重ねた結果、驚くべきことに、油中水型油脂類の代わりに、マヨネーズやドレッシング類等の水中油型乳化物を使用することによって、従来と同様なショートネス感やしっとり感を持ったクッキーが得られることを見い出し、かかる知見に基いて本発明を完成するに至った。
なお、本発明によるクッキー及びその製造方法については、これまでのところ全く知られていない。
【0012】
即ち、請求項1に係る本発明は、小麦粉、油中水型油脂類、卵、砂糖類及びベーキングパウダーよりなる主成分原料と、風味原料と、を用いてクッキーを製造する方法において、油中水型油脂類の代わりに水中油型乳化物を使用することを特徴とするクッキーの製造方法を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、水中油型乳化物の添加量が15〜25質量%である、請求項1記載のクッキーの製造方法を提供するものである。
請求項3に係る本発明は、水中油型乳化物が、日本農林規格に適合するマヨネーズである、請求項1又は2記載のクッキーの製造方法を提供するものである。
請求項4に係る本発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載した方法により製造されるクッキーを提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来の様にトランス脂肪酸を含有するバター、マーガリン類及びショートニング類等の油中水型油脂類を使用することなく、従来と同様なショートネス感やしっとり感のある食感をもったクッキーとその製造方法とが提供される。
本発明のクッキーは、バター、マーガリン類及びショートニング類等の油中水型油脂類を使用する代わりに水中油型乳化物を使用している為に、油中水型油脂類に多く含有されるトランス脂肪酸が添加されることがなく、また、従来と同様なショートネス感やしっとり感のある食感が付与されているものである。
この為、本発明のクッキーは、冠動脈心疾患等、トランス脂肪酸に起因する疾患を懸念する消費者にとって有効に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、請求項1に係る本発明について、詳細に説明する。
請求項1に係る本発明は、クッキーの製造方法に関し、小麦粉、油中水型油脂類、卵、砂糖類及びベーキングパウダーよりなる主成分原料と、風味原料と、を用いてクッキーを製造する方法において、油中水型油脂類の代わりに水中油型乳化物を使用することを特徴とするものである。
請求項1に係る本発明では、従来、クッキーの製造方法において使用されているバター、マーガリン類及びショートニング類の様な油中水型油脂類の代わりに、水中油型乳化物を使用することを最大の特徴としている。
【0015】
請求項1に係る本発明で使用される水中油型乳化物とは、主にマヨネーズや半固体状のドレッシング類を指すが、これらは卵黄の乳化力を利用して調製される安定な水中油型乳化食品である。
日本農林規格(以下、JASと略記する。)では、これらは、次のように定義されている。
即ち、JASでは、「食用植物油(香味油を除く)及び食酢若しくは、かんきつ類の果汁(必須原材料)に食塩、砂糖類、香辛料等を加えて調製し、水中油型に乳化した半固体状で粘度が30Pa・s以上のものを半固体状ドレッシングという。半固体状ドレッシングのうち、卵黄又は全卵を使用し、かつ必須原材料、卵黄、卵白、たん白加水分解物、食塩、砂糖類、香辛料及び調味料(アミノ酸等)以外の原材料を使用していないものをマヨネーズという。」と定義している。
請求項1に係る本発明で使用される、半固体状ドレッシングやマヨネーズなどのような水中油型乳化物は、トランス脂肪酸を1%以下含有している。
【0016】
請求項1に係る本発明で使用される水中油型乳化物としては、50%以上の油分含量を有するもの(つまり、50%以上の油分含量を有する半固体状ドレッシング類やマヨネーズ)が好ましく、65%以上の油分含量を有するものがより好ましい。即ち、後述するように、油分含量の多い水中油型乳化物の方が好ましいためである。
【0017】
水中油型乳化物の添加量としては、請求項2に係記載したように、15〜25質量%が好ましく、17〜24質量%がより好ましい。
ここで水中油型乳化物の添加量が15質量%未満であると、パサパサ感が強く、しっとり感が弱くなり、一方、水中油型乳化物の添加量が25質量%を超えると、ショートネス感が弱く、油っぽくなるため、いずれも食感上、好ましくない。
【0018】
なお、水中油型乳化物としては、請求項3に記載したように、JASに適合するマヨネーズがより好ましい。
【0019】
請求項1に係る本発明は、小麦粉、油中水型油脂類、卵、砂糖類及びベーキングパウダーよりなる主成分原料と、風味原料と、を用いてクッキーを製造する方法において、油中水型油脂類の代わりに上記した水中油型乳化物を使用することを特徴としている。
即ち、請求項1に係る本発明においては、主成分原料として、小麦粉、油中水型油脂類の代わりの水中油型乳化物、卵、砂糖類及びベーキングパウダーを用いている。
【0020】
請求項1に係る本発明で使用される小麦粉は、中力粉又は薄力粉が適している。中力粉又は薄力粉は、グルテン含量が比較的低いことから、ショートネス感をより付与し易いことによる。一方、グルテン含量の多い強力粉では、弾力性が出てくる為、ショートネス感が減少するので好ましくない。
請求項1に係る本発明で使用される小麦粉の添加量は、42〜52質量%が好ましく、45〜50質量%がより好ましい。この小麦粉としては、上記したように、中力粉又は薄力粉が適している。
ここで小麦粉の添加量が42質量%未満では、得られるクッキーが軟らかめになり、ショートネス感が減少したりするため、一方、52質量%を超えるとクッキーが硬めとなり、パサパサ感が強くなるため、いずれも食感上、好ましくない。
【0021】
次に、請求項1に係る本発明で使用される卵としては、通常、鶏卵の全卵が使用される。卵の添加量としては、10〜15質量%が好ましく、11〜14質量%がより好ましい。
卵の添加量が10質量%未満では、得られるクッキーが硬めになり、一方、15質量%を超えると、得られるクッキーが軟らかめになり食感上好ましくなくなる為、いずれも好ましくない。
なお、卵は鶏卵を割卵して得られた生卵、特に生全卵が一般的であるが、乾燥全卵や凍結加糖全卵等も使用することができる。乾燥全卵は水で戻し、生全卵と同様の固形分濃度で使用される。
【0022】
また、請求項1に係る本発明で使用される砂糖類としては、砂糖が一般的であるが、各種の砂糖類を使用することができる。砂糖類の添加量としては、15〜22質量%が好ましく、17〜20質量%がより好ましい。
砂糖類の添加量が、15質量%未満では、得られるクッキーの甘味が弱く、コク味が乏しくなり、一方、22質量%を超えると、得られるクッキーの甘味が強くなり過ぎて、味のバランスを損なったりするため、いずれも好ましくない。
なお、砂糖類としては、砂糖以外に、ブドウ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖及び高果糖液糖等を使用することができ、これらの甘味度により、添加量が決定される。砂糖類としては、これらの1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0023】
さらに、請求項1に係る本発明で使用されるベーキングパウダーとは、膨張剤の一種であり、炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムを主成分とするものである。この他に、炭酸水素アンモニウムや炭酸アンモニウムを主成分とする膨張剤も使用することができる。
ベーキングパウダーの添加量としては、0.5〜1.5質量%が好ましく、0.6〜1.2質量%がより好ましい。
ベーキングパウダーの添加量が、0.5質量%未満では、クッキーに鬆が十分に入らないために、食感として硬くなり、一方、1.5質量%を超えると鬆が入りすぎて、食感としてパサパサ感が強くなるため、いずれも好ましくない。
【0024】
主成分原料としては、基本的に上記したものが用いられるが、必要に応じて、少量の水や牛乳等も用いることができる。
【0025】
請求項1に係る本発明においては、以上に挙げた主成分原料の他に、風味原料が用いられる。
風味原料としては、例えばレーズン、ベリー類、アプリコット、バナナ、パイナップル、パパイヤ、メロン、イチゴ、イチジク等の乾燥果物;レモンやオレンジ等のかんきつ類の皮等;アーモンド、クルミ、ピーナッツ、ピーカンナッツ等のナッツ類;ラム酒、ブランデー、キルシュ等の酒類;オレンジ果汁、レモン果汁等の果汁;及びバニラ、シナモン、キャラウエイ、クローブ、オールスパイス等の香料・香辛料が挙げられ、これらの1種類又は2種類以上を混合して使用される。
【0026】
風味原料の添加量としては、好ましい風味や食感を呈する添加量が設定されるが、上記した主成分原料の配合を100質量%とした場合、それらの上積として、0.2〜30質量%が好ましく、0.5〜28質量%がより好ましい。
風味原料の添加量が、主成分原料100質量%に対して0.2質量%未満の比率であると、得られるクッキーに十分な風味を付与することが出来ず、一方、主成分原料100質量%に対する比率が30質量%を超えると、風味原料の風味や食感がクッキーのそれを上回ったりして、風味上のバランスを損なうなどする為、いずれも好ましくない。
【0027】
請求項1に係る本発明におけるクッキーの製造方法の概要について、以下に例示する。但し、以下の説明はあくまでも例示であって、これに限定されるものではない。
【0028】
[クッキーの製造方法]
水中油型乳化物(例えば、マヨネーズ)及び砂糖を十分に混合した後、全卵を2〜3回に分けて添加し十分に混合する。次に、これに小麦粉(中力粉又は薄力粉)とベーキングパウダー及び必要に応じて風味原料を添加して十分に混和させた後、冷蔵庫で15〜30分程休ませてクッキー生地が得られる。
得られたクッキー生地を約4mm厚に延ばし、クッキー型で抜いた後、生地の表面に黄身を塗り、160〜180℃で10〜25分間焼成して、クッキーが調製される。
なお、以上の説明はあくまでも例示であって、これに限定されるものではない。
【0029】
このようにして請求項1〜3に係る本発明の方法により、目的とするクッキーを製造することができる。このようにして得られたクッキーを提供するのが、請求項4に係る本発明である。
即ち、請求項4に係る本発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載した方法により製造されるクッキーである。
【0030】
このようにして製造されたクッキーは、トランス脂肪酸を含有するバター、マーガリン類及びショートニング類等の油中水型油脂類の代わりに水中油型乳化物を使用している為、トランス脂肪酸含量が低く、固体脂を使用していないにも係らず、良好なショートネス感やしっとり感のある食感を得ることができる。
バター、マーガリン類及びショートニング類等の油中水型油脂類の代わりに、水中油型乳化物を使用することによって、従来の好ましいクッキーと同様の良好な食感が得られる理由については、必ずしも明らかではないが、水中油型乳化物中の油滴粒子が油中水型油脂類中の固体脂と同様な役割を果たすのではないかと推測される。
【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例等により詳しく説明するが、本発明の範囲は、これら実施例等により限定されるものではない。
【0032】
実施例1〜4
(1)水中油型乳化物(マヨネーズ)の調製
表1に示す配合組成の原料を水中油型に乳化し、水中油型乳化物(マヨネーズ)を調製した。
即ち、水相原料である全卵、食酢(15%酸度)、水飴、食塩、グルタミン酸ソーダ、芥子粉及び水を混合溶解して水相を調製した。
調製された水相に油相原料として菜種油を加え、ホバルトミキサー(ホバルト社製)にて予備乳化した。次いで、コロイドミル(クリアランス:5/1000、回転数:3,000rpm)により、仕上げ乳化を行なって、水中油型乳化物(マヨネーズ)を調製した。
【0033】
【表1】

【0034】
(2)クッキーの調製
上記(1)で調製した水中油型乳化物(マヨネーズ)を用い、表2の配合組成にて、各2kgのクッキーを調製した。
なお、実施例1〜4の配合組成は、水中油型乳化物(マヨネーズ)を除く、主要成分原料である小麦粉(中力粉)、全卵、砂糖及びベーキングパウダーの組成比率は一定とし、水中油型乳化物(マヨネーズ)の添加量を変化させたものである。
【0035】
即ち、所定量の水中油型乳化物(マヨネーズ)に砂糖を加え、ホバルト・ミキサーにて十分に攪拌混合した後、全卵を2〜3回に分けて十分に混合した。次に、小麦粉(中力粉)、ベーキングパウダー及び風味原料であるバニラエッセンスとキャラウエイシードを添加して、十分に混和させた後、混和物をミキサーより取り出し、冷蔵庫(5℃)で20分間休ませて、クッキー生地を得た。
次に、得られたクッキー生地を平板上で、4mm厚に延ばし、クッキー型で抜いた後、生地の表面に卵黄を塗った。最後に、170℃にて15分間焼成した後、室温まで冷却してクッキーを得た。
【0036】
(3)クッキーの食感評価
上記(2)で得られたクッキーについて、次の3段階で食感を評価した。
なお、評価は経験豊かな5名のパネラーによる、味覚評価の平均値で示した。
結果を、表2に示す。
【0037】
[食感の評価]
・良好:ショートネス感及びしっとり感のいずれも良好である。
・やや不良:ショートネス感又はしっとり感のいずれかが劣っている。
・不良:ショートネス感及びしっとり感のいずれも劣っている。
【0038】
比較例1
実施例3において、水中油型乳化物(マヨネーズ)を使用せず、その代わりに水を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、クッキーを調製し、更に実施例1〜4と同様にして、クッキーの食感を評価した。
結果を、表3に示す。
【0039】
比較例2
実施例3において、水中油型乳化物(マヨネーズ)を使用せず、その代わりに菜種油を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、クッキーを調製し、更に実施例1〜4と同様にして、クッキーの食感を評価した。
結果を、表3に示す。
【0040】
比較例3
実施例3において、水中油型乳化物(マヨネーズ)を使用せず、他の配合原料の比率は同様にしたクッキーを実施例3と同様にして調製し、更に実施例1〜4と同様にして、クッキーの食感を評価した。
結果を、表3に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
表2、3から、以下のようなことが分かる。
表2の結果から明らかなように、水中油型乳化物(マヨネーズ)が15〜25質量%添加された実施例1〜4のクッキーでは、いずれも良好なショートネス感及びしっとり感が感じられ、良好な食感を示した。
これらの結果から、クッキーに対し、従来のバター、マーガリン類及びショートニング類のような油中水型油脂類の代わりに、水中油型乳化物(マヨネーズ)を使用しても、良好なショートネス感やしっとり感がクッキーに付与されていることが分る。
【0044】
これに対し、表3の結果からは、まず比較例1に示すように、水中油型乳化物(マヨネーズ)を使用せずに、その代わりに水を使用したクッキーでは、口中でのパサパサ感が強く、また、しっとり感も劣っていた。
また、同様に水中油型乳化物(マヨネーズ)を使用せずに、その代わりに液状油である菜種油を使用した比較例2のクッキーでは、ショートネス感はあるものの、しっとり感が劣っていた。
更に、水中油型乳化物(マヨネーズ)を全く使用しない比較例3のクッキーでは、パサパサ感が強く、しっとり感も劣っていた。
【0045】
実施例及び比較例の結果から考察すると、比較例2の結果から、単に液状油を使用しても良好な食感が得られないことが分る。一方、水中油型乳化物(マヨネーズ)を使用した実施例1〜4では、良好な食感が得られていることから、水中油型乳化物(マヨネーズ)中の油滴が、従来から使用されてきた油中水型油脂類中の固体脂と同様な効果があるのではないかと確信される。
【0046】
これらの結果より、従来のバター、マーガリン類及びショートニング類のような油中水型油脂類の代わりに、水中油型乳化物(マヨネーズ)を使用しても、良好な食感を持つクッキーが調製できることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
請求項1〜4に係る本発明によれば、トランス脂肪酸を含有するバター、マーガリン類及びショートニング類等の油中水型油脂類を使用することなく、その代わりに水中油型乳化物を使用することにより、従来と同様なショートネス感及びしっとり感のある良好な食感を持ったクッキー及びその製造方法が提供される。
よって、本発明は、食品工業分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉、油中水型油脂類、卵、砂糖類及びベーキングパウダーよりなる主成分原料と、風味原料と、を用いてクッキーを製造する方法において、油中水型油脂類の代わりに水中油型乳化物を使用することを特徴とするクッキーの製造方法。
【請求項2】
水中油型乳化物の添加量が15〜25質量%である、請求項1記載のクッキーの製造方法。
【請求項3】
水中油型乳化物が、日本農林規格に適合するマヨネーズである、請求項1又は2記載のクッキーの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載した方法により製造されるクッキー。

【公開番号】特開2007−222011(P2007−222011A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43352(P2006−43352)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(591101504)クノール食品株式会社 (29)
【Fターム(参考)】