説明

クッションシートのサスペンション構造及びその製造方法

【課題】 自動車などの車両の座席の着座部の内部構造であるサスペンション構造を簡単な組み立て式に構成し、新興国の工場で未熟練工による製造を可能にし、もってコスト削減を図ることを目的とする。
【解決手段】 サスペンションワイヤ12,14,16,18と、これに係合される結合バー24,26と、これらを係合させるクリップ28と、結合バー同士を結合するプラスチックリンク30と、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の座席の着座部の内部構造であるサスペンション構造、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両の座席の着座部においては、搭乗者の体重を支持すると共に、適度な弾力性を備えて、快適な着座感を与えるために、鋼製ワイヤを一般的に波形の形状に成形して、二次元的な広がりをもたせたものが、前部座席フレームと後部座席フレームとの間において、複数張設されている。
【0003】
このような鋼製ワイヤは、搭乗者の体重を支持できる剛性と、快適さのための適度な弾力性という相反する性質が求められるため、通常は適当な弾性を有する直径数mm程度のバネ鋼棒材から形成されている。そのようなバネ鋼棒材は、矩形波形状やS字形形状の波形形状に屈曲されるが、その後、この被成形形状を安定的に維持するために、内部残留応力を除去すべく、焼鈍処理が施される。
【0004】
ところが、このような焼鈍処理を施した鋼製ワイヤは、屈曲に伴って発生した内部残留応力の大きさが鋼製ワイヤの各所において異なるために、たとえ鋼製ワイヤ全体の加熱及び冷却が均一に行われたとしても、場所毎に残留応力除去効果に差異が生じることになる。この結果、焼鈍処理後の鋼製ワイヤは、平坦面を構成せず、すなわち、鋼製ワイヤを平坦な地面上に置いたとすれば、鋼製ワイヤは全体として地面に均一に接触せず、地面と接触する部分と地面から浮き上がった部分とが生じることになる。
【0005】
このように形成された鋼製ワイヤは、一般に、クッションのサスペンション構造を構成すべく、射出成形金型の内部に配置されてプラスチック材料によって射出成形される。射出成形された鋼製ワイヤは、プラスチック樹脂によって互いに一体的に成形されることで、平面状態を回復する。その結果、複数の鋼製ワイヤと、これらを連結するプラスチック樹脂とによって、サスペンション構造が提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、焼鈍処理後の非平面状態である鋼製ワイヤを、射出成形のために、概略平面状に形成された射出成形金型の中に適切に挿入することは、困難な作業であった。例えば、いったん鋼製ワイヤを金型に沿わせるように手で押し付けたとしても、鋼製ワイヤがバネ様の性質を有しているために、手を解放すれば、元の非平面形状に戻ってしまい、金型を閉じることができない。また、金型と共に適当な治具を併用して、鋼製ワイヤを金型に従わせようとしても、鋼製ワイヤが平面から逸脱している量は、個別の鋼製ワイヤの各部毎に相違しており、すべての鋼製ワイヤに適用可能な治具を準備することは不可能である。
【0007】
このような物品の射出成形は、一般的に、比較的困難な作業であって、工業先進国の熟練工員によれば、何とか短時間に適切に行うことができるけれども、技術的レベルの低い工員の多い新興国での製造は不可能である。
【0008】
さらに、このような射出成形金型は、複雑な構造を有し、従って、高価である。
【0009】
また、クッションの弾性特性を、例えば、自動車が使用される地域に適応させるためには、鋼製ワイヤの材質及び/又は線径を調整する必要があるが、この場合、金型における樹脂形成部分の形状を変更しなければならなくなり、そのための、金型修正は困難である。従って、新たな射出成形金型を作らなければならない。
【0010】
上述した各理由の結果、サスペンション構造は高価になり、もってシート全体のコストを高騰させる。
【0011】
従って、本発明は、非平面状態である鋼製ワイヤを用いつつ、射出成形の一体的成形によることなく、複数の部品を組み立てることで構成される、実質的に平坦な二次元空間に広がるサスペンション構造とその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明の1つの実施形態によって提供される、車両用のクッションシートに使用されるサスペンション構造は、クッションシートの前部部分と後部部分との間の二次元空間に広がるように延在されてなる複数のサスペンションワイヤと、複数のサスペンションワイヤに係合される複数の結合バーと、サスペンションワイヤと結合バーとを係合させるクリップと、複数の結合バー同士を結合する複数のプラスチックリンクと、を備えている。
【0013】
この実施形態によるサスペンション構造においては、結合バーとクリップとによってサスペンションワイヤ同士を結合し、それにより、サスペンション構造を組み立てる。クッションシートの前部部分と後部部分との間の二次元空間に広がるように延在した複数のサスペンションワイヤによって、搭乗者の体重は支持される。複数のサスペンションワイヤは、クリップを介して、複数の結合バーに係合されて、クッション面を構成する。それぞれの結合バーはプラスチックリンクによって結合されることで構造全体が補強される。
【0014】
この実施形態によれば、射出成形工程を使用することがなく、すなわち、複雑で高価な射出成形金型を必要とせずに製造できるので、サスペンション構造の製造コストを低下させることができる。
【0015】
本発明の1つの実施形態によるサスペンション構造においては、サスペンションワイヤは、概略真っ直ぐな金属製ワイヤを方形波形状に折り曲げて形成され、その2本を一対として方形波形状が鏡像関係になるように配置し、この複数組がシートの幅方向に配置される。
【0016】
この実施形態によるサスペンション構造においては、サスペンションワイヤは、方形波状に折り曲げられる。すなわち、サスペンションワイヤは、車両の進行方向に対して、長手方向を向くセクションと、これと直角をなす横方向のセクションとのそれぞれ真っ直ぐなセクションを交互させて構成されることになる。従って、サスペンションワイヤにおけるこれらの真っ直ぐなセクションに沿わせて、結合バーを密着させ、クリップで互いに係止できる。
【0017】
この結果、サスペンションワイヤの屈曲に伴う望ましくないその変形が効果的に矯正される。そして、このように概略平坦に形成されたサスペンションワイヤの組をシートの幅方向に配置することで、クッション全面にわたるサスペンション構造が得られる。
【0018】
本発明の1つの実施形態によるサスペンション構造においては、結合バーは、車両の長手方向に対して幅方向に配置されている。
【0019】
この実施形態によるサスペンション構造においては、幅方向に配置された結合バーは、方形波形状に形成されたサスペンションワイヤにおける車両の進行方向に対して直角をなす横方向のセクションについて、特に良好に非直線的な変形を真っ直ぐに矯正する。
【0020】
この結果、シートの幅方向の形状を特に平坦化できる。従って、車両が曲線路を走って、搭乗者の体重が車両の幅方向に移動する事例において、シートの快適性を改善することができる。
【0021】
本発明の1つの実施形態によるサスペンション構造においては結合バーは、車両の長手方向に対して縦方向に配置されている。
【0022】
この実施形態によるサスペンション構造においては、長手方向に配置された結合バーは、方形波形状に形成されたサスペンションワイヤにおける車両の進行方向に配置された長手方向のセクションについて、特に良好に非直線的な変形を真っ直ぐに矯正する。
【0023】
この結果、シートの長手方向の形状を特に平坦化できる。従って、車両が走行と停止を繰り返して、搭乗者の体重が車両の前後方向に移動する事例において、シートの快適性を改善することができる。
【0024】
本発明の1つの実施形態によるサスペンション構造においては、プラスチックリンクに、車両のワイヤハーネス、電気コネクタ、又はセンサのうち、少なくともいずれかが取り付けられる。
【0025】
この実施形態によるサスペンション構造においては、車両のシート内に通される電気的要素、例えば、ワイヤハーネス、電気コネクタ、又はセンサなどが、結合バー同士の間に延設されたプラスチックリンクに取り付けられるので、これらが、シート内の他の部材、例えば、サスペンションワイヤ又は結合バーと接触して損傷することが防止される。従って、車両の電気系の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、従来技術によって提供されるサスペンション構造に比べて、安価なサスペンション構造が提供される。すなわち、サスペンション構造を構築するために、従来技術のように焼鈍処理で変形したサスペンションワイヤを射出成形金型中でプラスチック材料と共に一体的に成形する代わりに、本発明の所定の部材を組み立てることで、簡単にサスペンション構造を提供することができる。従って、工賃の安い新興国においてもサスペンション構造を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態によるサスペンション構造を示した上部平面図である。
【図2】図1のサスペンション構造を示した立面図である。
【図2A】図1のサスペンション構造を自動車の床面に固定する側板を示した立面図である。
【図3】図1の線3−3に沿った拡大断面図である。
【図4】図1のサスペンション構造を車両の床面に取り付けた状態を示した斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態によるサスペンション構造を示した上部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0028】
車両のクッションシートに対してサスペンション構造を適用する場合を例として、以下に説明する。
図1、図2、及び図4を参照すると、本発明の第1の実施形態によるサスペンション構造10が示されている。図において、紙面下方は車両の前方、紙面上方は車両の後方である。サスペンションワイヤ12は、サスペンション構造10の前部フレーム20と逆U字形に形成された後部フレーム22との間に基線BL1に沿って横たわるように配置され、その長手方向の略中間部分には、基線BL1からシートの内方へ向けて方形波形状を形成するように複数の矩形状屈曲部12aが設けられている。これにより、シートの長手方向に沿って、矩形状屈曲部12aが列設されて、シートの前部フレーム20と後部フレーム22との間に搭乗者の体重の支持体の一部分が提供されることになる。
【0029】
本発明のこの実施形態においては、サスペンション構造10は、サスペンションワイヤ14を備え、これは、サスペンションワイヤ12と実質的に同一になっている。すなわち、サスペンションワイヤ14は、サスペンション構造10の前部フレーム20と後部フレーム22との間に基線BL2に沿って横たわるように配置され、その長手方向の略中間部分には、基線BL2からシートの側方へ向けて方形波形状を形成するように複数の矩形状屈曲部14aが設けられている。これにより、シートの長手方向に沿って、矩形状屈曲部14aが列設されて、シートの前部フレーム20と後部フレーム22との間に搭乗者の体重の支持体の一部分が提供されることになる。
【0030】
ここで、サスペンションワイヤ12とサスペンションワイヤ14とは、対になっており、それらの方形波形状が鏡像関係になるように配置されて第1の組を構成していることに留意されたい。より詳しくは、シートに座った搭乗者の体重の略半分は、彼の左足太股部が、サスペンション構造10の幅w1の中に納まることで支持される。そして、サスペンションワイヤ12,14と同様に構成された、サスペンションワイヤ16とサスペンションワイヤ18とが第2の組を構成し、搭乗者の右足太股部を支持し、ここで、第1の組12,14と第2の組16,18とは、シートの中心線CLの左右に、幅方向に対称的に配置されている。なお、w1は好ましくは150〜200mm、より好ましくは180mmであり、w2は好ましくは80〜100mm、より好ましくは100mmである。
【0031】
ところで、このようにサスペンションワイヤ12,14,16,18(この段落において、以下、サスペンションワイヤ12と記す。)を方形波形状に折り曲げると、従来技術による他の形状、例えば、S字形形状に形成する事例と比較して、矩形状屈曲部12aを形成している直線部と角部との間において、内部残留応力に大きな差異が引き起こされる。そこで、このサスペンションワイヤ12は、前述した矩形状屈曲部12aを形成するように折り曲げられた後、所定の温度パターンに従って焼鈍処理に曝される。サスペンションワイヤ12は、鋼材、例えば、SWB又はSWCなどから作られており、焼鈍処理の後には、内部残留応力が実質的に均一化される。しかしながら、このように焼鈍処理されたサスペンションワイヤは、屈曲角部が上下するように変形して、全体として単一平面内に納まらない傾向がある。
【0032】
図1、図2、及び図4を参照すると、本発明の第1の実施形態によるサスペンション構造10は、複数の結合バー24,26を具備し、これらは、車両の幅方向に延在され、そのうち一方24は、シートの略前方に、他方26は、シートの略後方に配置されている。両方の結合バー24,26とも、サスペンションワイヤ12,14,16,18の矩形波形状における、車両のシートに対して横方向を向くように折り曲げられたセクションに沿って、サスペンションワイヤ12,14,16,18の下方に整列され、詳しくは後述する結合クリップ28を介して、サスペンションワイヤに結合されている。
【0033】
次に、図1及び図3を参照して、本発明のこの実施形態における結合クリップ28について説明する。図3は、図1の線3−3に沿った拡大断面図である。本発明のこの実施形態による結合クリップ28は、金属材料、例えば、バネ鋼、ステンレス鋼などを、概略H字形状に成形して構成され、基部29と、基部29から延びる4本の脚部31とを具備しており、4本の脚部31は、一対ずつ基部29から反対方向に延びる。たとえば、基部29をサスペンションワイヤ12の上部に、サスペンションワイヤ12に沿って配置して、4本の脚部31それぞれをサスペンションワイヤ12およびその下方に位置する対応する結合バー24をいっしょにかしめるように下方に変形させるようにする。より詳細には、図3に示すように、一対の脚部31の下端同士を結合バー24の下部で当たるように、脚部を変形させる。これにより、結合バー24をサスペンションワイヤ12の延び方向に整列した状態で、サスペンションワイヤ12にしっかりと固定することが可能である。
【0034】
再び、図1、図2、及び図4を参照すると、本発明のこの実施形態によるサスペンション構造10は、結合バー24と結合バー26との間に延在された、PP又はPOMなどのプラスチック材料から形成された、複数のプラスチックリンク30を具備し、これは、クッションのマット面(図示せず)との連結部30aを備えている。また、プラスチックリンク30は、ベルト状に形成されており、サスペンションワイヤ12,14,16,18の直径に比べて大きな幅を有しているので、搭乗者の太股から加わる体重の実質的部分を支持できる。なお、プラスチックリンク30は、射出成形によって、結合バー24,26と一緒に一体的に成形されるか、又は、プラスチックリンク30に成形された孔に結合バー24,26が挿通される。また、車両の幅方向に列設された3本のプラスチックリンク30のうち、中央のものは、車両の後方へ向けて延長部32を備えており、その端部には、車両のワイヤハーネス、電気コネクタ、又はセンサのうち少なくとも1つが取り付けられる。従って、これらの要素がシート内の他の部材、例えば、サスペンションワイヤ又は結合バーと接触して損傷することが防止され、もって、車両の電気系の信頼性を高めることができる。
【0035】
このように構成されたサスペンション構造10は、フレーム構造37に取り付けられ、フレーム構造37は、図示しない既知のスライド機構を介して車両の前後方向にスライド可能とされ、スライド機構は、図示しない既知のブラケットレッグを介して車両の床面FLに取り付けられる。より詳細には、フレーム構造37は、それぞれ車両の前後方向に延び、互いに車両の幅方向に間隔を隔てた一対の側板38と、車両前部側で一対の側板38の内面同士を連結する前フレーム39aと、車両後部側で一対の側板38の内面同士を連結する後フレーム39bとを有し、全体として矩形の枠状に構成され、各々のサスペンションワイヤの、車両後部側の湾曲部を構成する後部フレーム22および車両前部側の屈曲部を構成する前部フレーム20をそれぞれ、後フレーム39bおよび前フレーム39aに載置することにより、サスペンション構造10をフレーム構造37に取り付けている。
【0036】
本発明の1つの実施形態によって提供される、車両用のクッションシートに使用されるサスペンション構造の製造方法は、搭乗者の体重を実質的に支持すると共に搭乗者に快適さを与える弾力性を有してなる、複数のサスペンションワイヤを準備する段階と、複数のサスペンションワイヤに結合される、複数の結合バーを提供する段階と、サスペンションワイヤと結合バーとを結合するための複数のクリップを提供する段階と、を備え、複数の結合バー同士の間には、プラスチックリンクが延びている。
【0037】
本発明の1つの実施形態による方法においては、サスペンションワイヤを準備する段階は、金属製ワイヤを方形波形状に折り曲げる段階と、その後、成形された金属製ワイヤを焼鈍する段階とを備えている。
【0038】
この実施形態による方法においては、金属製ワイヤが方形波形状に折り曲げられるため、他の形状、例えばS字形形状に形成する事例と比較して、方形波形状の直線部と角部との間において、内部残留応力に大きな差異が生じる。そこで、焼鈍処理することで、サスペンションワイヤの内部残留応力を均一化して、方形波形状を安定して維持しようとする。
【0039】
ところが、このように焼鈍処理されたサスペンションワイヤは、屈曲角部が上下するように変形して、全体として単一平面内に納まらない傾向がある。従って、従来技術のパラグラフにおいて説明したように、そのような焼鈍処理されたサスペンションワイヤは、従来の射出成形金型の中に挿入して、一体的なサスペンション構造を製造することはできない。
【0040】
そこで、他の実施形態による方法においては、焼鈍処理されたサスペンションワイヤは、クリップを介して結合バーと共に組み立てられたとき、全体として平坦平面を構成する。
【0041】
この実施形態による方法においては、サスペンションワイヤは、方形波状に折り曲げられる。すなわち、サスペンションワイヤは、車両の進行方向に対して、長手方向を向くセクションと、これと直角をなす横方向のセクションとのそれぞれ真っ直ぐな短いセクションを交互させて構成されることになる。従って、サスペンションワイヤにおけるこれらの真っ直ぐなセクションに沿わせて、結合バーを密着させ、クリップで係止できる。
【0042】
本発明の1つの実施形態による方法においては、サスペンションワイヤの2本を一対として方形波形状が鏡像関係になるように配置し、この複数組をシートの幅方向に配置する段階とを備えている。
【0043】
この実施形態による方法によれば、方形波形状の鏡像関係の構成のために、サスペンションワイヤの変形が対称的に配置され、結合バーによって、サスペンションワイヤの望ましくない変形が効果的に矯正される。そして、そのような対の複数組をシートの幅方向に配置することで、クッションの全面にわたるサスペンション構造が得られる。
【0044】
本発明の1つの実施形態による方法においては、結合バーを提供する段階は、車両の長手方向に対して幅方向に結合バーを提供する段階を備えている。
【0045】
この実施形態による方法においては、幅方向に配置された結合バーは、方形波形状に形成されたサスペンションワイヤにおける車両の進行方向に対して直角をなす横方向のセクションについて、特に良好に非直線的な変形を真っ直ぐに矯正する。
【0046】
この結果、シートの幅方向を特に平坦化できる。従って、車両が曲線路を走って、搭乗者の体重が車両の幅方向に移動する事例において、シートの快適性を改善することができる。
【0047】
本発明の1つの実施形態による方法においては、結合バーを提供する段階は、車両の長手方向に対して縦方向に結合バーを提供する段階を備えている。
【0048】
この実施形態による方法においては、長手方向に配置された結合バーは、方形波形状に形成されたサスペンションワイヤにおける車両の進行方向に配置された長手方向のセクションについて、特に良好に非直線的な変形を真っ直ぐに矯正する。
【0049】
この結果、シートの長手方向を特に平坦化できる。従って、車両が走行と停止を繰り返して、搭乗者の体重が車両の前後方向に移動する事例において、シートの快適性を改善することができる。

【実施例2】
【0050】
次に、図5を参照して、本発明の第2の実施形態によるサスペンション構造100を説明する。すべての図面を通して、同一の要素には同一の参照符号を付している。本発明の第2の実施形態が前述した第1の実施形態と相違する主要な点は、第1の実施形態のサスペンション構造10においては、結合バー24,26がシートの横方向に配置されていたのに対し、第2の実施形態のサスペンション構造100においては、第1の結合バー124,124と第2の結合バー126,126とがシートの長手方向に取り付けられていることである。すなわち、第1の結合バー124,124は、シートの左右において、それぞれ、サスペンションワイヤ12,18における、基線BL1,BL4からシートの内方へ形成された方形波形状の直線状のセクションに、それぞれ3個の結合クリップ28を介して結合されている。また、第2の結合バー126,126は、それぞれ、基線BL2,BL3に沿って、サスペンションワイヤ14,16の基線BL2,BL3と一致する直線状のセクションに、それぞれ2個の結合クリップ28を介して結合されている。
【0051】
引き続き図5を参照すると、本発明の第2の実施形態によるサスペンション構造100は、プラスチックリンク130を具備し、これらは、第1の結合バー124と第2の結合バー126との間に延在し、それらは適切な間隔を隔ててそれぞれの結合バー124,126に結合されている。これらのプラスチックリンク130は、シートの左右に対称的に構成される。また、シートの概略中央部分には、基線BL2,BL3に沿って配置された第2の結合バー126同士の間に、3つのプラスチックリンク134が適当な間隔を隔てて配置されている。シートの最も後方に配置されたプラスチックリンク134には、車両の前方へ向けて延長部132を備えており、その端部には、車両のワイヤハーネス、電気コネクタ、又はセンサのうち少なくとも1つが取り付けられる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、自動車のシートに適用できるほか、列車や飛行機などのシートにも適用できる。また、本発明による構造は、シートの背もたれにも適用できる。
【符号の説明】
【0053】
10 サスペンション構造
100 サスペンション構造
12 サスペンションワイヤ
14 サスペンションワイヤ
16 サスペンションワイヤ
18 サスペンションワイヤ
24 結合バー
26 結合バー
28 結合クリップ
29 基部
30 プラスチックリンク
31 脚部
38 側板
39 前フレーム、後フレーム
124 結合バー
126 結合バー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のクッションシートに使用されるサスペンション構造であって、
前記クッションシートの前部部分と後部部分との間に広がるように延在されてなる複数のサスペンションワイヤと、
前記複数のサスペンションワイヤに係合される複数の結合バーと、
前記サスペンションワイヤと前記結合バーとを係合させるクリップと、
前記複数の結合バー同士を結合する複数のプラスチックリンクと、
を備えていることを特徴とするサスペンション構造。
【請求項2】
サスペンションワイヤは、概略真っ直ぐな金属製ワイヤを方形波形状に折り曲げて形成され、その2本を一対として前記方形波形状が鏡像関係になるように配置し、この複数組がシートの幅方向に配置されることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション構造。
【請求項3】
結合バーは、車両の長手方向に対して幅方向に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のサスペンション構造。
【請求項4】
結合バーは、車両の長手方向に対して縦方向に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のサスペンション構造。
【請求項5】
前記プラスチックリンクに、車両のワイヤハーネス、電気コネクタ、又はセンサのうち、少なくともいずれかが取り付けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のサスペンション構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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