説明

クッションシート付ウエハ収納容器

【課題】半導体ウエハを常に平坦な状態に保って、搬送中の衝撃等や繰り返しの状態変化による半導体ウエハの破損発生を防止することができ、しかも半導体ウエハを取り出す際には半導体ウエハを破損することなく安全かつ容易に取り出すことができるウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器を提供すること。
【解決手段】ウエハ載置クッションシートの表面に、半導体ウエハWを着脱自在に吸着する自己吸着部および半導体ウエハWを吸着することなく分離した状態を保つ非吸着部を形成し、半導体ウエハの中心部を吸着するウエハ載置クッションシートの自己吸着部の面積密度を大きくし、半導体ウエハの外周部を吸着するウエハ載置クッションシートの自己吸着部の面積密度を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハを搬送あるいは保管するために用いられるウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程において、薄い半導体ウエハを各工程間あるいは各々の工程内で搬送あるいは保管する際に半導体ウエハを破損したり汚損したりするおそれのないよう、半導体ウエハはウエハ収納容器内に収納される。そのようなウエハ収納容器として、半導体ウエハを一枚一枚独立して安全に収納することができるように、複数のウエハ載置トレイを重ね合わせて、二つのウエハ載置トレイの間に形成される内側空間内に半導体ウエハを一枚ずつ個別に収納するように構成したものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、近年のように極薄化が進んで(たとえば、半導体ウエハの厚みが200ミクロンメートル以下の)脆弱になった半導体ウエハを安全に収納するために、二つのウエハ載置トレイの間に形成される内側空間内で一枚の半導体ウエハを二枚のクッションシートの間に挟み込んだクッションシート付ウエハ収納容器が提案されている。半導体ウエハを二枚のクッションシートの間に挟み込むことにより、半導体ウエハが振動や衝撃等の外力によって破損することが防止される(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−168731
【特許文献2】特開2005−191419
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体ウエハは、重ね合わされた二つのウエハ載置トレイの間において二枚のクッションシートの間に挟み込まれた状態では平坦な状態になっているが、ウエハ載置トレイが上下で分離されて半導体ウエハがクッションシートの間に挟み込まれていない状態になると、半導体ウエハがその内部応力の存在等により反った状態になり、このような状態変化が数多く繰り返されると半導体ウエハが破損するおそれが生じる場合がある。そこで、半導体ウエハをその下側のクッションシートに粘着させて半導体ウエハが常に平坦な状態を保つようにすることが考えられるが、半導体ウエハが極薄になってくると、クッションシートから剥離させて取り出す際にその吸着力が強すぎることにより半導体ウエハが破損してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、搬送中の衝撃等による半導体ウエハの破損を防止することができるだけでなく、半導体ウエハを平坦な状態と反った状態とが繰り返されない平坦な状態に常に保って状態変化による半導体ウエハの破損発生を防止することができ、しかも半導体ウエハを取り出す際には半導体ウエハを破損することなく安全かつ容易に取り出すことができるクッションシート付ウエハ収納容器を提供することを目的とする。
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明のクッションシート付ウエハ収納容器は、半導体ウエハを一枚ずつ載せて保持するための複数のウエハ載置トレイが重ね合わされて、各ウエハ載置トレイに載せられた半導体ウエハがそのウエハ載置トレイとその上側に隣接して重ね合わされたウエハ載置トレイとの間に形成される内側空間内に収納された状態になり、各ウエハ載置トレイ上面の半導体ウエハ載置位置に弾力性のあるウエハ載置クッションシートが配置されたクッションシート付ウエハ収納容器において、ウエハ載置クッションシートの表面に、半導体ウエハを着脱自在に吸着する自己吸着部および半導体ウエハを吸着することなく分離した状態を保つ非吸着部が形成されているものである。半導体ウエハを吸着する自己吸着部の面積密度を可変することにより、ウエハ載置クッションシートによる半導体ウエハの吸着力をウエハ載置クッションシートの場所により調整する。特に、ウエハ中心部を吸着するウエハ載置クッションシートの中心部の自己吸着部の面積密度が、ウエハ外周部を吸着するウエハ載置クッションシートの外周部の自己吸着部の面積密度より高くなっている。自己吸着部の面積密度を可変する方法として、その領域における自己吸着部の面積と非吸着部の面積の割合を変化させる方法がある。
【0007】
また、自己吸着部が多数の微細吸盤により形成されていて、微細吸盤を半導体ウエハに押し付けることにより微細吸盤と半導体ウエハとが吸着固定された状態になるようにしてもよく、このような自己吸着部が、弾力性を有する発泡エラストマー系高分子材料、発泡ゴム系高分子材料、又は発泡ウレタン系高分子材料により形成されていてもよい。
【0008】
また、ウエハ載置クッションシートがウエハ載置トレイに対し着脱可能に設けられていてもよく、半導体ウエハをウエハ載置クッションシートに対して押し付けるための弾力性のあるウエハ押付クッションシートがウエハ載置トレイの裏面側に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ウエハ載置クッションシートの表面に、半導体ウエハに対して着脱自在に吸着される自己吸着部が形成されていることにより、搬送中の衝撃等による半導体ウエハの破損を防止することができるだけでなく、半導体ウエハを平坦な状態と反った状態とが繰り返されない平坦な状態に常に保って、状態変化による半導体ウエハの破損発生を防止することができる。しかも、ウエハ載置クッションシートの表面に、前記半導体ウエハを着脱自在に吸着する自己吸着部および前記半導体ウエハを吸着することなく分離した状態を保つ非吸着部が形成されていて、吸着力の調整を吸着材の吸盤径だけで調整するのではなく、クッションシートの自己吸着部が前記半導体ウエハを吸着する吸着力が自己吸着部の面積密度により調整されているので、吸着力のコントロールが容易であり、さらに、クッションシート内で吸着力を場所により変えることも容易となる。
【0010】
たとえば、半導体ウエハの外周部を吸着するウエハ載置クッションシートの自己吸着部の面積密度を、半導体ウエハの中心部を吸着するウエハ載置クッションシートの自己吸着部の面積密度より小さくすることにより、半導体ウエハの外周部を吸着するウエハ載置クッションシートの吸着力を半導体ウエハの中心部を吸着するウエハ載置クッションシートの吸着力より小さくできる。この結果、半導体ウエハの外縁部分から容易にウエハ載置クッションシートを剥がすことが可能となり、半導体ウエハを破損することなく安全かつ容易に取り出すことができる。たとえば、半導体ウエハを自己吸着部から剥がす際にはその外縁部分から自己吸着部に空気が入って吸着状態が解除され、中心部に向かって半導体ウエハが剥がれていくに従い、中心部に向かって自己吸着部に空気が入って吸着状態が解除されていくので、半導体ウエハを破損することなく安全かつ容易に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図2はクッションシート付ウエハ収納容器の全体構成を示しており、円板状に形成された極薄の半導体ウエハWを載せて保持するための複数のウエハ載置トレイ1が、水平な状態で上下に重ね合わされて配置されている。なお図2には、複数重ね合わされたウエハ載置トレイ1の一部を途中で分離した状態が図示されている。重ね合わされた複数のウエハ載置トレイ1の上下両端に取り付けられたベーストレイ2には、図示されていない機械的インターフェイス装置と結合させるための結合溝3が形成されている。
【0013】
各ウエハ載置トレイ1は、例えばポリカーボネート樹脂等のようなプラスチック材で形成されていて、複数のウエハ載置トレイ1が重ね合わされることにより、ウエハ載置トレイ1に載せられた半導体ウエハWが、各ウエハ載置トレイ1とその上側に隣接して重ね合わされたウエハ載置トレイ1との間に形成される内側空間内に収納された状態になる。その際、半導体ウエハWはウエハ載置トレイ1の上面に取り付けられたウエハ載置クッションシート(以下、「載置クッション」と略称する)25に載せられた状態になる。
【0014】
載置クッション25には、半導体ウエハWに対して着脱自在に吸着する自己吸着部と、半導体ウエハWに対して吸着されることなく分離した状態を保つ非吸着部とが形成されていて、自己吸着部の面積密度が大きい領域25Aおよび自己吸着部の面積密度の小さい領域25Bが形成されているが、その詳細については後述する。6は、載置クッション25の周囲をそれより外側位置で全周にわたって囲む状態に配置された弾力性のある部材からなる環状シール部材である。7は、ウエハ載置トレイ1を個別に機械装置で持つことができるように、各ウエハ載置トレイ1の外縁部の180°対称位置に形成された把持部である。
【0015】
各ウエハ載置トレイ1の上面側には、環状シール部材6より外縁寄りの位置に、そのウエハ載置トレイ1の上側に位置するウエハ載置トレイ1と結合させるための結合孔8が例えば4箇所に形成されている。それに対応して、各結合孔8と係脱自在に係合する結合フック9が、各ウエハ載置トレイ1の裏面から下方に向けて4箇所に突出形成されている。このように、複数のウエハ載置トレイ1を互いに重ね合わされた状態で任意の重ね合わせ位置において解除自在に結合するためのトレイ結合機構が、結合孔8と結合フック9とで構成されている。結合孔8と結合フック9との係合の解除は、ウエハ載置トレイ1の側面に形成されたキー差し込み孔10から図示されていないフック外しキー等を差し込んで、結合フック9を弾性変形させることにより行うことができる。
【0016】
図3は、ウエハ載置トレイ1の一つに半導体ウエハWが載せられた状態を示している。ただし、結合フック9等の断面を一つの図面に図示するために、異なる断面位置の図を複合して示してある。環状シール部材6は、各ウエハ載置トレイ1の上面の外縁より少し内側位置に形成された環状溝内に、下半部が嵌め込まれた状態に配置されている。そして、各ウエハ載置トレイ1は、環状シール部材6より内側に位置する部分が上下両面共に下方に落ち込んだ皿状に形成されて、その底面13に載置クッション25が配置されている。
【0017】
載置クッション25は、全ての部分において半導体ウエハWに対し化学的悪影響を及ぼさない材料、例えば不純物ガスの発生が規定値以下であるような材料により、半導体ウエハWの略全面を載せられる大きさの円板状に形成されている。
【0018】
図3に示す載置クッション25は、二層タイプの載置クッションである。すなわち、載置クッション25の裏面(ウエハ載置トレイ1の底面13に面する側の面)側は例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等の材料からなる基材シート25Cで形成されていて、表面(半導体ウエハWに面する側の面)側は、図4にも示されるように自己吸着部の面積密度の大きい領域25Aの周囲を自己吸着部の面積密度の小さい領域25Bが全周にわたって囲んでいて、表面側と裏面側の二層が積層一体化された構成になっている。
【0019】
図3に示されるように、この実施の形態では、基材シート25Cがウエハ載置トレイ1の底面13に接着されている。ただし、ウエハ載置トレイ1の底面13に対して着脱自在な枠体やピン等に基材シート25Cを固着(又は着脱自在に取り付け)することにより、載置クッション25をウエハ載置トレイ1の底面13に対し任意に着脱できるように構成することができる。或いは、載置クッション25を三層構造にして、表面側の自己吸着部の面積密度の大きい領域25Aおよび自己吸着部の面積密度の小さい領域25Bからなる円板状のシート(または、層)と同様の層を基材シート25Cの裏面側に積層一体化することによっても、載置クッション25をウエハ載置トレイ1に対し着脱自在に構成して、容易に洗浄したり交換したりすることができる。なお、その場合には、ウエハ載置トレイ1に対する吸着力を半導体ウエハWに対する吸着力より大きく設定する必要がある。たとえば、基材シート25Cの表面側の層における自己吸着部の面積密度(表面の全面積に対する自己吸着部の占める面積の割合)が、基材シート25Cの裏面側の層における自己吸着部の面積密度(裏面の全面積に対する自己吸着部の占める面積の割合)より小さくすれば良い。
【0020】
本発明において記載する自己吸着部とは、材料自体が半導体ウエハ等の平面板などを吸着する部分を意味する。たとえば、図10は、本発明のウエハ載置クッションシートにおける吸着機能層の構造を示す図であるが、図10に示すように発泡体からなる層41(これを吸着機能層と呼ぶ)に多数形成された気泡5hのうち、吸着機能層の表面位置において外気に向かって開口する気泡5h’は、その各々が微細吸盤として機能する。すなわち、吸着機能層41に接して配置された半導体ウエハ等の平面板1などを吸着機能層41に押し付けることにより、外気に向かって開口した気泡5h’が収縮する。(気泡のない部分を5nとする。)その後で半導体ウエハ等を押し付けていた力がなくなったり弱まったりして気泡が元の状態かそれに近い程度まで回復したときに、気泡内部が減圧状態になり半導体ウエハ等1を吸着する。従って、自己吸着部とは、載置クッションの表面位置において外気に向かって開口する気泡を含む吸着機能層41の領域である。尚、自己吸着部に吸着された半導体ウエハ等を剥がす外力(たとえば、半導体ウエハ等を上方へ持ち上げる力)がかかったときに、気泡のない部分5nには半導体ウエハ等は吸着されていないので、その部分から気泡へ向かって外気が入り、気泡5h’内の減圧状態が解消し、半導体ウエハ等が自己吸着部から離れる。
【0021】
本発明において記載する非吸着部とは、材料自体は(吸着機能層ではなく)半導体ウエハ等の平面板などを吸着せず分離した状態を保つ部分であり、自己吸着部ではない部分、すなわち吸着機能層を持たない領域である。
【0022】
本発明の載置クッションの表面は、半導体ウエハ等を着脱自在に吸着する自己吸着部および半導体ウエハを吸着することなく分離した状態を保つ非吸着部を有している。従って、載置クッションが半導体ウエハ等を吸着する吸着力は、半導体ウエハと載置クッションの重なる領域における自己吸着部の面積と非吸着部の面積との割合によって決定される。半導体ウエハと載置クッションの重なる領域の面積をS、そのうちの自己吸着部の面積をSA、非吸着部の面積をSBとすると、自己吸着部の有する面積の割合(これを自己吸着部の面積密度と呼ぶ)は、SA/(SA+SB)=SA/Sとなり、載置クッションが半導体ウエハ等を吸着する吸着力は、SA/Sに依存する。すなわち、SA/Sが大きければ吸着力が大きく、SA/Sが小さければ吸着力が小さい。自己吸着部の面積密度を大きくするには、自己吸着部の面積を多くし非自己吸着部の面積を少なくすれば良い。逆に自己吸着部の面積密度を小さくするには、自己吸着部の面積を少なくし非自己吸着部の面積を大きくすれば良い。
【0023】
本発明の載置クッションにおいて、上述のように、載置クッションが半導体ウエハを吸着する吸着力は自己吸着部の面積密度により調整されている。すなわち、自己吸着部の面積密度を載置クッションの場所により変化させることにより、その場所における載置クッションの吸着力の大きさを変化させることができる。特に半導体ウエハの外周部と接触する載置クッションの外周部における自己吸着部の面積密度を小さくして、半導体ウエハの外周部を吸着する吸着力を弱くして、半導体ウエハの外周部から中心部へ向けて徐々に半導体ウエハを載置クッションから引き離し、たとえば図3において、半導体ウエハWを反らせることなく載置クッション25から容易に分離してウエハ載置トレイ1外に取り出すことができる。
【0024】
次に載置クッションの自己吸着部の面積密度を変化させる方法について説明する
【0025】
図11は、単一の材質からなり自己吸着部だけ(すなわち、吸着機能層だけ)を有する載置クッション51の表面(すなわち、吸着面)を凹凸形状とした場合の模式図である。載置クッション51は、単一の吸着材質、たとえば、発泡エラストマー系高分子材料、発泡ゴム系高分子材料、または発泡ウレタン系高分子材料から形成されている。(或いは、これらの複合体でも良い。)載置クッション51の表面は凹凸状態になっていて、凸部分52と凹部分53からなっている。凸部分52は平坦になっていて、載置クッション全体の凸部分52は同じ程度の高さを有していることが望ましい。このような表面が凹凸形状である載置クッション51に半導体ウエハを載せたときに半導体ウエハは載置クッションの凸部分52に接触する。次に半導体ウエハを押し付けると凸部分52が収縮する。押し付ける力を除去すると、収縮した部分が完全にまたはある程度回復する。凸部分52は自己吸着機能を有するので、半導体ウエハは載置クッション(の凸部分52)に吸着される。しかし、凹部分53には半導体ウエハは接触しないので、半導体ウエハは載置クッション(の凹部分53)には吸着されない。或いは、半導体ウエハを押し付けたときに凹部分53に(軽く)接触する可能性はあるが、凹部分53の収縮程度は、凸部分52の収縮程度に比べかなり低いので、半導体ウエハの吸着力が弱く、押付力を除去したときに載置クッションの凹部分53は半導体ウエハから離れる。
【0026】
このように、載置クッション51の表面を凹凸形状とすることにより、半導体ウエハを吸着する部分と吸着しない部分を形成することができる。ある領域における表面の凸部分52の面積をSV、凹部分53の面積をSCとすると、この領域における(自己)吸着部の面積密度は、SV/(SV+SC)となる。半導体ウエハは凸部分52の自己吸着力により載置クッション51に吸着されているので、吸着部の面積密度SV/(SV+SC)を変化させることによりこの領域における半導体ウエハの載置クッションによる吸着力を変化させることができる。すなわち、ある領域における表面の凸部分52の面積を小さくし、凹部分53の面積を大きくすることにより、この領域における半導体ウエハの載置クッションによる吸着力を小さくすることが可能となる。
【0027】
そこで、半導体ウエハの中心部を載置する載置クッションの中心部の凸部分52を多くして自己吸着部の面積密度を大きくする。一方、半導体ウエハの外周部を載置する載置クッションの外周部の凸部分52を少なくして自己吸着部の面積密度を小さくする。このようにすると、半導体ウエハの外周部は載置クッションに確実に吸着されるとともに、半導体ウエハを載置クッションから引き剥がすときは、半導体ウエハを載置クッションから離れやすくすることができる。
【0028】
次に載置クッションの自己吸着部の面積密度を変化させる別の例について説明する。
【0029】
図12は、自己吸着機能を持たない材料である高分子材料からなる基材(非吸着部)62と自己吸着機能を持つ材料である高分子材料からなる自己吸着部を持つ場合の実施形態である。基材62の表面を凹凸形状に形成した後で、基材の凹部分63に自己吸着部を形成する。自己吸着部の形成方法として、凹凸状の基材の表面に自己吸着機能を持つ材料(高分子材料)を塗布し、基材の凹部分63を自己吸着機能を持つ材料(吸着機能層)で充填する方法、或いは、凹部分63に自己吸着機能を持つ材料(高分子材料)をはめ込む(または埋め込む)方法などがある。自己吸着機能を持たない基材の凸部分64の表面(非吸着部)と自己吸着部の表面とはほぼ平坦を保つように形成できるので、半導体ウエハを載置クッション61の表面に載置し、半導体ウエハを自己吸着機能を持たない基材の凸部分の表面(非吸着部)と自己吸着部の表面とに接触させることができる。
【0030】
自己吸着機能を持たない基材(非吸着部)も自己吸着部と同様に収縮性のある材料とする。次に半導体ウエハを押し付けると自己吸着部も基材もが収縮する。押し付ける力を除去するか弱めると、収縮した部分が完全にまたはある程度回復する。自己吸着部63は自己吸着機能を有するので、半導体ウエハは載置クッションに吸着される。しかし、半導体ウエハが非吸着部64に接触している部分は、自己吸着機能を持たないので、半導体ウエハは載置クッション(の基材部分)には吸着されていない。
【0031】
このように、載置クッションの表面に自己吸着機能を持つ自己吸着部と自己吸着機能を持たない非吸着部を形成することにより半導体ウエハを吸着する部分と吸着しない部分を形成することができる。ある領域における自己吸着部の面積をSS、非吸着部の面積をSNとすると、この領域における自己吸着部の面積密度は、SS/(SS+SN)となる。SS/(SS+SN)が大きければ、載置クッションが半導体ウエハ等を吸着する吸着力が大きく、また、SS/(SS+SN)が小さければ、載置クッションが半導体ウエハ等を吸着する吸着力が小さい。このように、自己吸着部の面積と非吸着部の面積の割合を変化させることにより、自己吸着部の面積密度を調節できる。
【0032】
従って、本発明を用いると、自己吸着部の面積密度を場所により変化させることにより、半導体ウエハを吸着する載置クッションの吸着力を、載置クッション内の場所により容易に変化させることができる。本発明の載置クッションにおいては、半導体ウエハの中心部を載置する載置クッションの中心部の自己吸着部を多くして、自己吸着部の面積密度を大きくする。一方、半導体ウエハの外周部を載置する載置クッションの外周部の自己吸着部を少なくして、自己吸着部の面積密度を小さくする。このようにすると、半導体ウエハの外周部は載置クッションから離れやすくなる。
【0033】
図12に示すような載置クッションの表面を自己吸着部と非吸着部を形成する別の実施形態として、図12とは逆に、表面が凹凸を有する自己吸着機能を有する単一(または複合)の材料を用いて、この凹部分を自己吸着機能を持たない非吸着部で充填等をして、載置クッションの表面に自己吸着部と非吸着部を形成できる。
【0034】
また、平坦な基材の表面に自己吸着機能を有する材料と自己吸着機能を持たない材料を交互に(隣り合わせで)形成することにより、載置クッションの表面に自己吸着部と非吸着部を形成できる。たとえば、自己吸着機能を有する材料と自己吸着機能を持たない材料を平坦な基材の表面に付着させたり、或いは、自己吸着機能を有する材料と自己吸着機能を持たない材料を平坦な基材の表面に塗布したりして、載置クッションの表面に自己吸着部と非吸着部を交互に(隣り合わせで)形成できる。
【0035】
図3において、上述したように、自己吸着部は、クッション性を有していて且つ周囲に化学的悪影響を及ぼし難い例えばアクリル酸エステル共重合体からなる発泡アクリルラテックス等のような発泡ゴム系高分子材料、発泡エラストマー系高分子材料又は発泡ウレタン系高分子材料等で形成されていて、自己吸着部内に多数形成された気泡のうち外気に向かって開口する気泡が各々微細吸盤として機能する。したがって、自己吸着部はその露出する面の全面が微細吸盤の集合層になっており、微細吸盤を吸着相手である半導体ウエハWに押し付けることにより、半導体ウエハWが自己吸着部に吸着固定された状態になる。なお、気泡は連続気泡又は独立気泡のどちらでもよく、気泡の平均直径が10ミクロンメートル程度以上で50ミクロンメートル程度以下であることが望ましい。
【0036】
図4に明示されるように、この実施の形態においては、自己吸着部の面積密度の大きい領域25Aが載置クッション25の中心部側、すなわち、半導体ウエハWの直径より小さな径の円板状に形成されて、その周囲を自己吸着部の面積密度の小さい領域25Bが全周にわたって囲んでいる。図4に二点鎖線で示されるW′は、半導体ウエハWが載置クッション25に載せられた時の半導体ウエハWの外縁位置であり、自己吸着部の面積密度の小さい領域25Bの外縁の方が半導体ウエハWより大きく形成されていて、半導体ウエハWの外縁位置W′が自己吸着部の面積密度の小さい領域25B内に位置している。
【0037】
非吸着部の素材としては、自己吸着部と同程度のクッション性を有していて自己吸着性のない例えば発泡ウレタン等のような発泡高分子材料やエラストマー系高分子材料等を用いることができる。図3に示される載置クッション25は、半導体ウエハWの中心部が吸着される載置クッション25の中心部領域25Aにおける自己吸着部の面積密度は大きく、これに対して半導体ウエハWの外周部が吸着される載置クッション25の外周部領域25Bにおける自己吸着部の面積密度は小さい。この結果、半導体ウエハWが載置クッション25に押し付けられた時、半導体ウエハWには載置クッション25からの反力が全体に均一に作用し、半導体ウエハWを歪みなく安全に格納することができる。
【0038】
図1と図5は、二つのウエハ載置トレイ1が分離された状態と重ね合わされた状態とを示している。なお、二つのウエハ載置トレイ1が分離された時、半導体ウエハWは実際には図3に示されるように載置クッション25に吸着された状態を保っているが、半導体ウエハWの存在を明瞭に図示するため、図1においては半導体ウエハWを単独で分離して図示してある。
【0039】
ウエハ載置トレイ1の裏面14には、半導体ウエハWを下側のウエハ載置トレイ1の載置クッション25に対して押し付けるための弾力性のあるウエハ押付クッションシート15(以下、「押付クッション15」と略称する)が取り付けられている。この実施の形態の押付クッション15は、載置クッション25と同様に、半導体ウエハWに対し化学的悪影響を及ぼさない材料により半導体ウエハWの所定の領域又は略全面を押圧できる大きさの円板状に形成されている。
【0040】
具体的には、半導体ウエハWの表面に押し付けられる状態に接触して弾力的なクッションとして機能する例えば発泡ウレタンやウレタン樹脂等からなる弾性高分子シート15Aと、ウエハ載置トレイ1の裏面(下面)14に取り付けられる例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等の材料からなる基材シート15Bとを積層一体化して構成されている。半導体ウエハWとの接触面は、半導体ウエハWに吸着しないように若干の凹凸面に形成するとよい。なお、ウエハ載置トレイ1に対する押付クッション15の取り付けは載置クッション25の取り付けと同様である。即ち、この実施の形態では押付クッション15がウエハ載置トレイ1の裏面14に接着されているが、ウエハ載置トレイ1の底面13に対して着脱自在な枠体やピン等を用いたり、自己吸着部を含む自己吸着層を形成したりすることで、押付クッション15をウエハ載置トレイ1に対して着脱自在に構成し、容易に洗浄したり交換したりすることができる。
【0041】
このように構成された実施の形態のクッションシート付ウエハ収納容器において、半導体ウエハWを搬送及び保管する際には、図5に示されるように、半導体ウエハWが、クッション性に富んだ載置クッション25と押付クッション15との間に弾力的に挟まれた状態で、ウエハ載置トレイ1とその上側に隣接して重ね合わされたウエハ載置トレイ1との間に形成される内側空間内に安全に格納される。
【0042】
そして、重なり合わされていたウエハ載置トレイ1が分離されても、図3に示されるように、半導体ウエハWは載置クッション25の自己吸着部に吸着された状態になっているので、二つのウエハ載置トレイ1の分離作業や半導体ウエハWの検査等の際にウエハ載置トレイ1が傾いた状態にされても、載置クッション25がウエハ載置トレイ1上から滑り落ちるおそれがなく、且つ半導体ウエハWが載置クッション25上から滑り落ちるおそれもない。また、半導体ウエハWが載置クッション25の上面に吸着固定された状態になることにより、半導体ウエハWが常に反りのない平坦な状態に保たれるので、半導体ウエハWが平坦な状態と反った状態を繰り返すことにより破損する現象の発生を未然に防止することができる。
【0043】
半導体ウエハWをウエハ載置トレイ1から取り外す際には、半導体ウエハWの外周部分を吸着している載置クッションの吸着力が半導体ウエハWの中心部分を吸着している載置クッションの吸着力より小さいので、半導体ウエハW全体(又は、少なくとも外縁部を含む広い範囲)に対し載置クッション25から引き離す力を作用させれば、半導体ウエハWの外周部分から載置クッション25の外周部分が外れていき、半導体ウエハWと載置クッション25の外縁部どうしの間に生じる隙間から自己吸着部の微細吸盤に順次空気が入って自己吸着部の吸着力がなくなるので、半導体ウエハWを反らせることなく載置クッション25から容易に引き離してウエハ載置トレイ1外に取り出すことができる。
【0044】
図6は、半導体ウエハWをウエハ載置トレイ1から取り外すための搬送チャック30が、半導体ウエハWの開放面である上面に吸着された状態を示しており、載置クッション25の自己吸着部の面積密度が小さい領域の全部または一部が搬送チャック30の外縁より内側位置になるように構成されていることにより、載置クッション25の自己吸着部の面積密度が小さい領域に吸着されている半導体ウエハWの外縁部分が搬送チャック30で持ち上げられて、前述のように半導体ウエハWを載置クッション25から容易に取り外すことができる。すなわち、搬送チャック30で半導体ウエハを吸着する力が一定の場合、一度半導体ウエハWを載置クッション25から剥がれると、載置クッション25が半導体ウエハを吸着する全体の力が弱くなるので、半導体ウエハWを載置クッション25から容易に取り外すことができる。なお、搬送チャック30としては、例えば空気流を被搬送物との間に流すことで発生する負圧を利用して被搬送物を非接触状態で吸引するいわゆるベルヌーイハンドや、静電気の吸着力を利用したいわゆる静電ハンド等を用いることができる。
【0045】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、載置クッション25の構成は、例えば図7に示されるように、載置クッション25全体のための基材シート25Cの上に、載置クッション25の外周部に自己吸着部の面積密度の小さいシート25Bを付着させ、その内側に自己吸着部の面積密度の大きいシート25Aのための基材シート25A′および自己吸着部の面積密度の大きいシート25Aを別設してもよい。この場合もシート25Aとシート25Bとは同じ程度の高さであることが望ましい。また、図8に示されるように、極薄の(例えば10〜20ミクロンメートル程度の)自己吸着部の面積密度の小さいシート25Bを自己吸着部の面積密度の大きいシート25Aの外縁部の表面に載せた状態で積層一体化してもよい。この場合には、シート25Aとシート25Bの高さが少し異なるが、シート25Bは非常に薄いので自己吸着部の面積密度の大小に影響はしない。もし、その影響が問題ある程度であれば、お互いの自己吸着部の面積密度を調整すれば良い。すなわち、シート25Aとシート25Bが平坦な場合に比べてシート25Bにおける自己吸着部の面積密度を小さくすれば良い。あるいは、図9に示されるように、自己吸着部の面積密度の大きいシート25Aの外縁部分付近の表面に凹凸加工を施す等、自己吸着部面積密度の大きいシート25Aの表面の一部を非吸着部に加工することで自己吸着部面積密度の小さいシート25Bを形成してもよい。このような凹凸面は、例えば加熱した金属板等を樹脂材に押し付けるいわゆる焼印等の手段により形成することができる。
【0046】
また、自己吸着部面積密度の小さいシート25Bの形成領域としては、載置クッション25に半導体ウエハWが載せられた時に、少なくとも半導体ウエハWの外縁部の一部又は全部に面する位置にシート25Bが存在するようにすれば、半導体ウエハWを剥がすときに載置クッション25の微細吸盤に外縁側から空気が送られて半導体ウエハWを反らせることなく自己吸着部から取り外すことができる。搬送チャック30との関係も同様であり、自己吸着部の面積密度の小さい領域25Bの一部又は全部が搬送チャック30の外縁より内側位置に形成されていればよい。
【0047】
次に本発明の載置クッションの自己吸着部および非吸着部の配列の例を述べる。
【0048】
図13は、全面一様な吸着力を持つ場合における自己吸着部および非吸着部の配列の状態を良く説明するための図である。図13(a)は、載置クッション71の表面に自己吸着部が碁盤の目のようにクロスに配列したものである。線または黒点72が自己吸着部で、白い部分73が非吸着部を示す。半導体ウエハはこの載置クッション71の表面に配置されるが、自己吸着部の面積密度は載置クッション71の表面のどこでも同じなので、載置クッション71が半導体ウエハを吸着する吸着力も半導体ウエハのどこでもほぼ一様となる。図13(b)は、載置クッション71の表面に自己吸着部を斑点形状にほぼ同じ密度で配列したものである。黒点72が自己吸着部で、白い部分73が非吸着部を示す。この場合にも、自己吸着部の面積密度は載置クッションの表面のどこでも同じなので、載置クッション71が半導体ウエハを吸着する吸着力も半導体ウエハのどこでもほぼ一様となる。これらの配列からも分かるように、線上の自己吸着部同士の線間隔を可変したり、或いは斑点形状の自己吸着部の間隔を可変(すなわち、自己吸着部の密度を可変)したりすることにより、自己吸着部の面積密度を変化させることができる。
【0049】
図14は、本発明の実施形態である載置クッション表面の自己吸着部および非吸着部の配列を示す図である。図14(a)は、載置クッション81の表面に自己吸着部82が放射線状に配列されている。白い部分83は、非吸着部である。図14(b)は、載置クッション81の表面に自己吸着部82が渦巻き状に配列されている。図14(a)および(b)において、載置クッション81の表面の中心に自己吸着部82が集まり、載置クッション81の表面の外側において自己吸着部82は疎になっている。従って、自己吸着部の面積密度は、載置クッション81の表面の中心付近で最も大きく、載置クッション81の表面の外側にいくに従い小さくなる。半導体ウエハはこの載置クッション81の表面に配置される(半導体ウエハの中心が載置クッション81の中心にほぼ載置される)ので、載置クッション81が半導体ウエハを吸着する吸着力は、半導体ウエハの中心部付近で大きく、半導体ウエハの外側にいくに従い小さくなる。このため、載置クッション81に吸着された半導体ウエハを載置クッション81から離すときは、半導体ウエハの外側から中心に向けて徐々に載置クッション81から離すことができ、たとえ、半導体ウエハが100ミクロンメートル以下の極薄になったとしても半導体ウエハを破損することなく安全かつ容易に取り出すことができる。
【0050】
図15は、本発明の別の実施形態である載置クッション表面の自己吸着部および非吸着部の配列を示す図である。図13(b)の場合と同様に、載置クッション91の表面に自己吸着部92を斑点形状に配列したものである。黒点92が自己吸着部で、白い部分93が非吸着部を示す。中心部94は自己吸着部の面積密度が大きく、周辺部95は自己吸着部の面積密度が小さくなっている。(尚、載置クッション91の内部の円形の線は、両者の境が良く分かるように引いている。)このような配列により、半導体ウエハの外周部を吸着する吸着力を小さくすることができる。このため、載置クッションに吸着された半導体ウエハを載置クッションから離すときは、半導体ウエハの外側から中心に向けて徐々に載置クッションから離すことができ、たとえ、半導体ウエハが100ミクロンメートル以下の極薄になったとしても半導体ウエハを破損することなく安全かつ容易に取り出すことができる。
【0051】
図15に示す載置クッション表面の自己吸着部および非吸着部の配列の応用として、半導体ウエハの中心部を吸着する載置クッションの中心部から、半導体ウエハの外周部を吸着する載置クッションの外周部へ向けて、自己吸着部の面積密度を徐々に小さくしていく方法がある。この場合においては、半導体ウエハが安全確実に載置クッションに吸着されているとともに、半導体ウエハを載置クッションから剥がすときにも、半導体ウエハを吸着する力が小さい半導体ウエハの外周部からだんだん大きくなる半導体ウエハの中心部へ向けて半導体ウエハを載置クッションから離していくので、きわめて安全にかつ容易に半導体ウエハを破損することなく取り出すことができる。
【0052】
また、押付クッション15は、図16に示されるように、その外縁部だけをウエハ載置トレイ1に固定して他の部分をウエハ載置トレイ1の裏面14から浮かせた状態に構成にしてもよい。このようにすると、半導体ウエハWの厚みに関係なく半導体ウエハWを適度のクッション性が作用した状態で格納することができる。また、押付クッション15を単層の弾性高分子シート等で形成することもできる。なお、この場合も、押付クッション15の半導体ウエハWに対する接触面は半導体ウエハWと吸着状態にならないように若干の凹凸面等に形成するとよい。
【0053】
以上、本発明である載置クッション表面の自己吸着部および非吸着部の配列について幾つか説明したが、これらは一つの実例であって、これらに制限されることはなく、他の配列も本発明に含まれることは言うまでもない。
【0054】
本発明は、載置クッション表面の自己吸着部の面積密度を可変し、載置クッションが半導体ウエハ等を吸着する吸着力を場所により変化させることにある。特に、載置クッション表面の中心付近における自己吸着部の面積密度を大きくして、半導体ウエハを吸着する吸着力を中心付近で大きくして確実に半導体ウエハを吸着する。さらに、載置クッション表面の外周部における自己吸着部の面積密度を小さくして、半導体ウエハを吸着する吸着力を外周部で小さくする。この結果、半導体ウエハはその外周部も含め載置クッションにしっかり吸着されているが、半導体ウエハを載置クッションから引き離すことが容易となり、たとえ、半導体ウエハが100ミクロンメートル以下の極薄になったとしても半導体ウエハを破損することなく安全かつ容易に取り出すことができる。
【0055】
上述の本発明の説明においては、載置クッションや半導体ウエハ等の平板は円形状であるとして説明してきたが、円形状に限らず、長方形状や正方形状の矩形状その他の形状に適用できることも言うまでもない。また、半導体ウエハに限らず、表示体用デバイスや太陽電池その他の薄い基板を用いる分野においても本発明を適用できる。また、上述の各実例および実施形態の説明において、記載しなかった内容について、お互いに矛盾がない限りにおいて適用できることも言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、半導体ウエハを搬送あるいは保管するために用いられるウエハ収納容器を使用する半導体産業に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明の実施の形態において重ね合わされた二つのウエハ載置トレイが分離された状態の側面断面図である。
【図2】図2は、ウエハ載置トレイが多数重ね合わされた状態の一部を分離して示す本発明のウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器の全体構成の斜視図である。
【図3】図3は、本発明のウエハ載置クッションシート付ウエハ載置トレイの一つに半導体ウエハが載置された状態の側面断面図である。
【図4】図4は、本発明のウエハ載置クッションシート単体と半導体ウエハとが分離された状態の斜視図である。
【図5】図5は、本発明のウエハ載置クッションシート付ウエハ載置トレイ二つが重ね合わされた状態の側面断面図である。
【図6】図6は、本発明のウエハ載置クッションシート付ウエハ載置トレイから半導体ウエハが搬送チャックで取り出される際の状態を示す側面断面図である。
【図7】図7は、本発明のウエハ載置クッションシート付の層構造である第1の変形例の側面断面図である。
【図8】図8は、本発明のウエハ載置クッションシートの層構造である第2の変形例の側面断面図である。
【図9】図9は、本発明のウエハ載置クッションシートの層構造である第3の変形例の側面断面図である。
【図10】図10は、本発明のウエハ載置クッションシートにおける吸着機能層の構造を示す図である。
【図11】図11は、本発明における自己吸着部の面積密度を可変する方法を示す図である。
【図12】図12は、本発明における自己吸着部の面積密度を可変する別の方法を示す図である。
【図13】図13は、自己吸着部および非吸着部の配列状態の説明図である。
【図14】図14は、本発明の実施形態である載置クッション表面の自己吸着部および非吸着部の配列を示す図である。
【図15】図15は、本発明の別の実施形態である載置クッション表面の自己吸着部および非吸着部の配列を示す図である。
【図16】図16は、本発明のウエハ押付クッションシートの変形例を適用したウエハ載置トレイが二つ重ね合わされた状態の側面断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ウエハ載置トレイ
13 底面
15 押付クッション(ウエハ押付クッションシート)
25 載置クッション(ウエハ載置クッションシート)
25A 自己吸着部の面積密度の大きい領域
25B 自己吸着部の面積密度の小さい領域
30 搬送チャック
W 半導体ウエハ
W′ 半導体ウエハの外縁位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハを一枚ずつ載せて保持するための複数のウエハ載置トレイが重ね合わされて、前記各ウエハ載置トレイに載せられた半導体ウエハがそのウエハ載置トレイとその上側に隣接して重ね合わされたウエハ載置トレイとの間に形成される内側空間内に収納される構造を有し、前記各ウエハ載置トレイ上面の半導体ウエハ載置位置に弾力性のあるウエハ載置クッションシートが配置されたウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器において、
前記ウエハ載置クッションシートの表面に、前記半導体ウエハを着脱自在に吸着する自己吸着部および前記半導体ウエハを吸着することなく分離した状態を保つ非吸着部が形成されていて、前記ウエハ載置クッションシートが前記半導体ウエハを吸着する吸着力が、自己吸着部の面積および非吸着部の面積から決定される自己吸着部の面積密度により調整されていることを特徴とするウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器。
【請求項2】
自己吸着部の面積密度をウエハ載置クッションシートの場所により変化させていることを特徴とする、請求項1に記載のウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器。
【請求項3】
前記半導体ウエハの外周部を吸着する前記ウエハ載置クッションシートの外周部の自己吸着部の面積密度は、前記半導体ウエハの中心部を吸着する前記ウエハ載置クッションシートの中心部の自己吸着部の面積密度より小さいことを特徴とする、請求項2に記載のウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器。
【請求項4】
前記半導体ウエハを吸着する前記ウエハ載置クッションの自己吸着部の面積密度が、前記半導体ウエハの中心部を吸着する前記ウエハ載置クッションシートの中心部から前記半導体ウエハの外周部を吸着する前記ウエハ載置クッションシートの外周部へ向かって小さくなっていることを特徴とする、請求項3に記載のウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器。
【請求項5】
前記非吸着部が、吸着性のないシートを前記自己吸着部の表面に積層して形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかの項に記載のウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器。
【請求項6】
前記非吸着部が、前記自己吸着部の表面の一部を非吸着性に加工して形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかの項に記載のウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器。
【請求項7】
前記非吸着部が、前記自己吸着部の表面の一部に凹凸加工を施して形成されていることを特徴とする、請求項6に記載のウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器。
【請求項8】
前記自己吸着部が多数の微細吸盤により形成されていて、前記微細吸盤を前記半導体ウエハに押し付けることにより前記微細吸盤と前記半導体ウエハとが吸着固定された状態になることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかの項に記載のウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器。
【請求項9】
自己吸着部は、弾力性を有する発泡エラストマー系高分子材料、発泡ゴム系高分子材料、発泡ウレタン系高分子材料またはこれらの複合材料から形成されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかの項に記載のウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器。
【請求項10】
発泡ゴム系高分子材料はアクリル酸エステル共重合体からなる発泡アクリルラテックスであることを特徴とする、請求項9に記載のウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器。
【請求項11】
前記自己吸着部の面積密度が小さい領域の一部又は全部が、前記半導体ウエハを前記ウエハ載置クッションシートから取り外す際に前記半導体ウエハに吸着される搬送チャックの外縁より内側位置に形成されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかの項に記載のウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器。
【請求項12】
前記ウエハ載置クッションシートが前記ウエハ載置トレイに対し着脱可能に設けられていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかの項に記載のウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器。
【請求項13】
前記半導体ウエハを前記ウエハ載置クッションシートに対して押し付けるための弾力性のあるウエハ押付クッションシートが前記ウエハ載置トレイの裏面側に配置されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかの項に記載のウエハ載置クッションシート付ウエハ収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−170780(P2009−170780A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9310(P2008−9310)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【Fターム(参考)】