説明

クッションパッド

【課題】アームレスト付シートのクッションパッドにおける成形性の向上。
【解決手段】背もたれ部を構成するパッド本体部12と、その側部12Aに連結一体化されるとともに前面14Aにアームレスト5を回動自在に収納する収納凹部16が設けられたアームレスト部14と、を成形型54内における発泡原料56の発泡充填により成形してなるクッションパッド10において、収納凹部16の下側の厚肉状の張り出し部22に隣接されて、アームレスト部14とパッド本体部12との境界部24に、下方に向けて開かれた切り欠き部26が設けられ、該切り欠き部により張り出し部22とパッド本体部12とが薄肉状の繋ぎ部28で接続されており、張り出し部22の裏面22Aにコア抜き凹部30が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用シートなどの車両用シートにおいてクッション材として用いられるクッションパッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の座席(シート)においてクッション材として用いられるクッションパッドは、軟質ポリウレタンフォームなどの弾力性のある軟質フォームからなり、所定形状の成形型内に発泡原液を注入し、発泡充填させることで成形されている(例えば、下記特許文献1,2参照)。
【0003】
ところで、車両用シートにはアームレスト付シートがあり、該シートのシートバックに用いられるクッションパッドとして、背もたれ部を構成するパッド本体部と、その側部に設けられて前面にアームレストを回動自在に収納する収納凹部を備えるアームレスト部とからなるものが知られている(下記特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2006−416号公報
【特許文献2】特開2006−1213号公報
【特許文献3】特開2001−258677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなアームレスト付シートのクッションパッドにおいては、前記パッド本体部とアームレスト部との境界部に、シートバックを可倒式にするためのヒンジ部を受け入れるための切り欠き部26(図6参照)が設けられることがある。かかる切り欠き部が設けられた場合、アームレスト収納凹部6の下側の厚肉状の張り出し部22とパッド本体部12とが薄肉状の繋ぎ部28で接続された形状となる。
【0005】
このような薄肉状の繋ぎ部で接続された形状の場合、成形型内において、厚肉部であるパッド本体部と張り出し部を成形するための比較的広い2箇所のキャビティの間が、繋ぎ部を成形するための狭い流路(即ち、絞られた流路)を介して接続されることになる。そのため、発泡充填時に、該狭い流路での発泡原液の流動が激しく、その周辺部の成形性に影響を与え、発泡セルの崩壊(コラプス)によるヒケや、エア溜まりなどが発生するおそれがある。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、アームレスト付シートのクッションパッドにおける成形性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係るクッションパッドは、背もたれ部を構成するパッド本体部と、該パッド本体部の側部に連結一体化されるとともに前面にアームレストを回動自在に収納する収納凹部が設けられたアームレスト部と、を成形型内における発泡原料の発泡充填により成形してなるクッションパッドであって、前記収納凹部の下側の厚肉状の張り出し部に隣接されて、前記アームレスト部と前記パッド本体部との境界部に、下方に向けて開かれた切り欠き部が設けられ、該切り欠き部により前記張り出し部と前記パッド本体部とが薄肉状の繋ぎ部で接続されるよう形成されており、前記張り出し部の裏面側にコア抜き凹部が設けられたものである。
【0008】
上記構成によれば、厚肉状の張り出し部の裏面にコア抜き凹部を設けたことにより、アームレスト収納凹部の下部の張り出し部での容積が低減される。そのため、発泡充填時に、パッド本体部と張り出し部との間を繋ぐ繋ぎ部での発泡原液の流動が抑えられ、成形性が改善される。また、この場合、コア抜き分だけ成形後のクッションパッドの容積が低減されるので、その分、軽量化が図られ、コストダウンにもつながる。
【0009】
本発明の請求項2に係るクッションパッドは、背もたれ部を構成するパッド本体部と、該パッド本体部の側部に連結一体化されるとともに前面にアームレストを回動自在に収納する収納凹部が設けられたアームレスト部と、を備えてなり、前記収納凹部の下側の厚肉状の張り出し部に隣接されて、前記アームレスト部と前記パッド本体部との境界部に、下方に向けて開かれた切り欠き部が設けられ、該切り欠き部により前記張り出し部と前記パッド本体部とが薄肉状の繋ぎ部で接続されるよう形成されたクッションパッドであって、前記切り欠き部の少なくとも上部を、前記張り出し部と該張り出し部に対向する前記パッド本体部の下端部とを連結する連結部にて塞いだ状態で、前記パッド本体部と前記アームレスト部を成形型内における発泡原料の発泡充填により一体に発泡成形し、該連結部を発泡成形後に切除することで前記切り欠き部を形成してなるものである。
【0010】
上記構成によれば、薄肉状の繋ぎ部を形成する切り欠き部を連結部にて塞いだ形状に発泡成形するので、厚肉状の張り出し部とパッド本体部を成形する2つのキャビティ間を繋ぐ繋ぎ部の流路が該連結部により拡大されて、発泡原液の流動が抑えられ、成形性が改善される。
【発明の効果】
【0011】
上記のように本発明によれば、パッド本体部とアームレスト部とを一体に発泡成形したものでありながら、ヒケやエア溜まりが抑制された成形性に優れるクッションパッドが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係るクッションパッド10の正面図、図2は同クッションパッド10の裏面図である。
【0014】
このクッションパッド10は、図6に示すような自動車のリアシート1を構成するシートバック2に用いられる高弾性の軟質ポリウレタンフォームからなるクッション材である。シートバック2は、左右の着座部3,4の間にアームレスト5を備え、アームレスト5は、図6に示す前倒しされた使用状態と、収納凹部6内に押し込まれた縦姿勢の収納状態とに切り替えることができるように回動自在に設けられている。本実施形態が対象とするクッションパッドは、上記アームレスト5を収納する収容凹部を一体に備えたクッションパッド10であり、図6において中央部を含む右側のシートバック部分に用いられるものである。
【0015】
図1に示すように、クッションパッド10は、着座部4の背もたれ部を構成するパッド本体部12と、その車両中央側の側部12Aに連結一体化されたアームレスト部14とを備えてなる。アームレスト部14は、その前面14Aに、アームレスト5を回動自在に収納する収納凹部16を備え、該収納凹部16は、アームレスト部14の下部を除く全体に矩形状に形成されている。そして、収納凹部16内における下端部の両側部には、アームレスト5を回動可能に支持するためのヒンジ用開口部18,20が設けられている。
【0016】
アームレスト部14における収納凹部16の下側部分は、図3にも示されるように、パッド本体部12の前面と略面一になるように、前方に張り出した張り出し部22として構成されており、すなわち、収納凹部16が設けられた薄肉状部分に対して厚肉状に形成されている。
【0017】
アームレスト部14とパッド本体部12との境界部24における下端部には、上記張り出し部22に隣接させて切り欠き部26が設けられている。この切り欠き部26は、シートバック2を倒すヒンジ部を受け入れるために、下方に向けて開かれた平面視コの字状に形成されている。また、切り欠き部26の高さ(シートバック2の上下方向における切り欠き部の長さ)は、上記張り出し部22の高さと略同じ寸法に設定されている。
【0018】
上記のように切り欠き部26が設けられたことにより、張り出し部22とパッド本体部12とは、薄肉状の繋ぎ部28で接続された形状となっている。より詳細には、厚肉状のパッド本体部12と張り出し部22の隣接する角部同士が、絞り形状となる幅狭の繋ぎ部28を介して接続されている。
【0019】
そして、図2,4に示すように、本実施形態では、上記厚肉状の張り出し部22の裏面22Aに、コア抜き凹部30が設けられている。コア抜き凹部30は、張り出し部22の中央部を含む略全域にわたって、裏面側から四角錐台状に陥没する肉抜き凹所として設けられており、これにより、張り出し部22は、正面側から見た外形形状の変更を伴うことなく、比較的薄肉状に形成されている。
【0020】
クッションパッド10は、図5に示すように、パッドの正面側を成形する凹状の下型50と、パッドの裏面側を成形する上型52と、を備える成形型54を用いて、発泡成形により製造される。すなわち、下型50に、ポリウレタン原液などの発泡原液56を供給し、上型52を被せて型閉めして、これにより形成される成形型54のキャビティ(発泡空間)58内で発泡原液56を発泡充填させることで、クッションパッド10が発泡成形され、成形後、脱型することにより、クッションパッド10が得られる。
【0021】
かかる発泡成形時、上記クッションパッド10においては、アームレスト部14の下端部の張り出し部22とパッド本体部12とが薄肉状の繋ぎ部28で接続されており、そのため、パッド本体部12を成形するための広いキャビティがこの繋ぎ部28で急激に絞られている。また特に本実施形態の場合、収納凹部16内に設けられた中央側のヒンジ用開口20により、この繋ぎ部28近傍における発泡原液56の流路が一層狭められているが、上記張り出し部22の裏面にコア抜き凹部30を設けたことにより、該張り出し部22を成形するためのキャビティの容積が大幅に低減されている。そのため、発泡充填時に、パッド本体部12と張り出し部22との間を繋ぐ繋ぎ部28での発泡原液56の激しい流動が抑えられ、成形性が改善される。
【0022】
よって、本実施形態によれば、上記繋ぎ部28での激しい液流動に起因するその周辺部での成形性不良が改善され、発泡セルの崩壊(コラプス)によるヒケや、エア溜まりなどが抑制される。また、本実施形態によれば、コア抜きした分だけ成形後のクッションパッド10の容積が低減されるので、その分、軽量化が図られ、コストダウンにもつながる。
【0023】
なお、このようにして成形されたクッションパッド10は、シートバックフレームに組み込まれ、表面に表皮が被せられ、更にアームレスト5を装着することにより、リアシート1として構成される。
【0024】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るクッションパッド10Aについて図7,8に基づいて説明する。第2実施形態のクッションパッド10Aは、上記切り欠き部26を塞いだ状態に発泡成形し、発泡成形後に上記塞いだ部分を切除することで切り欠き部26を所定形状に形成することを特徴とするものである。
【0025】
詳細には、図7に示す発泡成形後の状態では、切り欠き部26は、その下端部を除いて連結部32により塞がれている。連結部32は、図8にも示されるように、張り出し部22の側面22Bと、これに対向するパッド本体部12の下端部34の側面34Aとを連結するように設けられており、これにより、張り出し部22とパッド本体部12とを繋ぐ上記繋ぎ部28での繋がり面積が大きく確保されている。
【0026】
このように、薄肉状の繋ぎ部28を形成する切り欠き部26を連結部32にて塞いだ形状に発泡成形するので、厚肉状の張り出し部22とパッド本体部12を成形する2つのキャビティ間を繋ぐ繋ぎ部28の流路が該連結部32により拡大されるので、発泡原液の激しい流動が抑えられ、成形性が改善される。
【0027】
なお、この例では、張り出し部22の裏面側に、第1実施形態のようなコア抜き凹部30は設けられていないが、上記連結部32により、同様に発泡原液の激しい流動が抑えられる。
【0028】
上記連結部32は、発泡成形後に、カッターなどの切断手段を用いて切り取られ、これにより、切り欠き部26が形成されて(図3と同様な状態)、所定形状のクッションパッド10Aが得られる。かかる切断時における作業性の観点より、上記切り欠き部26を完全に塞いでしまうよりも、下端部を除いて塞ぐことが好ましく、より詳細には、繋ぎ部28近傍の切り欠き部26上部のみを塞ぐことが好ましい。
【0029】
その他の構成は、第1実施形態と同様であり、同様の作用効果が奏される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、自動車シートを始めとする各種のアームレストを備えるシートのクッション材として利用することができる
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係るクッションパッドの正面図である。
【図2】同クッションパッドの裏面図である。
【図3】同クッションパッドの要部拡大斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】同クッションパッドの発泡成形時の断面図である。
【図6】自動車のリアシートの斜視図である。
【図7】第2実施形態に係るクッションパッドの正面図である。
【図8】第2実施形態に係るクッションパッドの要部拡大斜視図である
【符号の説明】
【0032】
5…アームレスト、10,10A…クッションパッド、12…パッド本体部、14…アームレスト部、14A…アームレスト部の前面、16…収納凹部、22…張り出し部、22A…張り出し部の裏面、24…境界部、26…切り欠き部、28…繋ぎ部、30…コア抜き凹部、32…連結部、34…パッド本体部の下端部、54…成形型、56…発泡原液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれ部を構成するパッド本体部と、該パッド本体部の側部に連結一体化されるとともに前面にアームレストを回動自在に収納する収納凹部が設けられたアームレスト部と、を成形型内における発泡原料の発泡充填により成形してなるクッションパッドであって、
前記収納凹部の下側の厚肉状の張り出し部に隣接されて、前記アームレスト部と前記パッド本体部との境界部に、下方に向けて開かれた切り欠き部が設けられ、該切り欠き部により前記張り出し部と前記パッド本体部とが薄肉状の繋ぎ部で接続されるよう形成されており、前記張り出し部の裏面側にコア抜き凹部が設けられたことを特徴とするクッションパッド。
【請求項2】
背もたれ部を構成するパッド本体部と、該パッド本体部の側部に連結一体化されるとともに前面にアームレストを回動自在に収納する収納凹部が設けられたアームレスト部と、を備えてなり、
前記収納凹部の下側の厚肉状の張り出し部に隣接されて、前記アームレスト部と前記パッド本体部との境界部に、下方に向けて開かれた切り欠き部が設けられ、該切り欠き部により前記張り出し部と前記パッド本体部とが薄肉状の繋ぎ部で接続されるよう形成されたクッションパッドであって、
前記切り欠き部の少なくとも上部を、前記張り出し部と該張り出し部に対向する前記パッド本体部の下端部とを連結する連結部にて塞いだ状態で、前記パッド本体部と前記アームレスト部を成形型内における発泡原料の発泡充填により一体に発泡成形し、該連結部を発泡成形後に切除することで前記切り欠き部を形成してなるクッションパッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−260309(P2007−260309A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92517(P2006−92517)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】