説明

クッション体

【課題】クッション特性を向上する。
【解決手段】クッション体20は、弾力性を有する樹脂発泡体を直方体形状に形成した2つのブロック材22,32から構成される。クッション体は、ブロック材22,32をU字状に湾曲し、互いにU字状の内側に互い違いに嵌め合わせて、当該嵌め合わせ部位を接合することで構成されている。クッション体20には、湾曲部26,36に外周面側に開口する孔部40が設けられ、ブロック体を互いに接合した部分と湾曲部26,36とで圧縮たわみ荷重が異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マットレス等を構成するクッション体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばマットレスは、上面を構成する板状の上クッション材と下面を構成する板状の下クッション材の間に適数のコイルスプリングを配列設置して、上クッション材からの荷重を各コイルスプリングで弾力的に受け止めるよう構成されている。しかし、前記コイルスプリングはバネ鋼等から形成された金属製であり、ウレタン製の上クッション材および下クッション材とは材質が異なるため、当該マットレスの廃棄処分時にはクッション材とコイルスプリングとを分別しなければならず、廃棄作業が面倒かつ煩わしい。
【0003】
そこで近年では、金属製のコイルスプリングの代替部材として、図11に示すように、樹脂発泡体から形成された円筒形状の環状クッション材50が実用化されている(例えば特許文献1参照)。この環状クッション材50は、図13に示すような弾力性を有する長方形状の樹脂発泡体52を、長手方向で離間する側面52a,52aを突き合わせるように環状に丸め、両側面52a,52aを接着剤で接合することで円筒形状に形成したものである。樹脂発泡体52には、該樹脂発泡体52の短手方向に沿う複数のスリット54が厚み方向に貫通形成されており、樹脂発泡体を丸めて環状クッション材50を形成した際に、該スリット54が外周面側に拡開し、環状クッション材50の外周面が網状になっている。そして、環状クッション材50は、図12に示すように、円筒形状の下側の端面(樹脂発泡体52の短手方向で離間する一方の端面)50aをマットレス10の下クッション材12に当接させて載置すると共に、上側の端面50bにマットレス10の上クッション材14を載置した姿勢で、当該マットレス10内に配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−520284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マットレス等のクッションには、荷重入力初期段階で圧縮たわみ荷重が低く(柔らかく)、荷重がかかるにつれて圧縮たわみ荷重が高く(硬く)なるようなクッション特性が求められている。しかし、特許文献1に開示の環状クッション材50のように、単一の樹脂発泡体52のブロック材から構成されたものは、圧縮たわみ荷重の調節が難しく、特に圧縮たわみ荷重を高く設定したもとで好適なクッション特性を示すように構成するのが困難である。例えば、環状クッション材50は、通気性を確保するためにスリット54が樹脂発泡体52の全体に散在すると共に、該スリット54の外周面側が広くなるように開いている。すなわち、環状クッション材50は、開いたスリット54によって圧縮たわみ荷重が比較的低くなり、圧縮たわみ荷重を高く設定し難い。また、環状クッション材50は、樹脂発泡体52自体を硬く設定することで、圧縮たわみ荷重を高く設定することが考えられるが、樹脂発泡体52の硬さによって荷重入力初期段階に必要とされる柔らかさが損なわれてしまう。
【0006】
すなわち本発明は、従来の技術に係るクッション体に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、適切なクッション特性を保ちながら圧縮たわみ荷重を調節できるクッション体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明のクッション体は、
弾力性を有する樹脂発泡体を直方体形状に形成した2つのブロック材からなり、
第1のブロック材を湾曲させることで向かい合う部分からなる一対の第1対向片部の間に、第2のブロック材を湾曲させることで向かい合う部分からなる一対の第2対向片部のうちの片方を挟むと共に、一対の第2対向片部の間に前記第1対向片部の片方を挟み、該挟持部位を互いに接合して組み合わされ、
前記ブロック材には、前記一対の対向片部の間を繋いで湾曲する湾曲部に対応して、少なくとも曲がりの外周面側となる面に通じる孔部が設けられ、該ブロック材の湾曲によって該孔部が該湾曲部の外周面で開くよう構成したことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、ブロック材の対向片部を互いに接合した部分において比較的圧縮たわみ荷重を高く設定し得ると共に外周面側に孔部が開口する湾曲部において比較的圧縮たわみ荷重を低く設定し得る。これにより、クッション体全体として圧縮たわみ荷重のバランスがよくなり、適切なクッション特性を保ちながら圧縮たわみ荷重を適宜調節できる。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記孔部は、前記ブロック材の曲がりの内外方向に連通するよう形成されることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、湾曲部に対応して孔部を設けることで、ブロック材を曲げ易くできると共に、クッション体の通気性を向上し得る。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記孔部は、前記ブロック材の湾曲軸方向に沿って延在するスリット状に形成され、該ブロック材の湾曲により湾曲部において該孔部における曲がり方向外側が拡開されることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、孔部をスリット状に形成することで、クッション体の反発弾性を損なうことなく、通気性を向上し得る。
【0010】
請求項4に係る発明では、前記2つのブロック材は、前記湾曲部の湾曲軸方向の大きさが同じに設定されて、該湾曲軸方向に交差する側面を互いに揃えて接合されることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、互いに接合した対向片部で構成される端面を水平にできるので、該端面を当接させて設置部位に安定して設置できると共に、該端面を介して荷重を適切に受けることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るクッション体によれば、適切なクッション特性を保ちながら圧縮たわみ荷重を適宜調節できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好適な実施例に係るクッション体を示す概略斜視図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図1のB矢視図である。
【図4】実施例のクッション体を構成するブロック材を示す概略斜視図である。
【図5】実施例のクッション体において、ブロック材を互いに組み付ける前の状態を示す概略斜視図である。
【図6】実施例のクッション体を用いたマットレスを一部破断して示す平面図である。
【図7】実施例のクッション体を用いたマットレスを示す要部断面図である。
【図8】実験で用いた実施例のクッション体のブロック材を示す正面図である。
【図9】実験で用いた実施例のクッション体を示す平面図である。
【図10】実験例に係るたわみ荷重曲線を示すグラフ図である。
【図11】従来の環状クッション材を示す概略斜視図である。
【図12】従来の環状クッション材を用いたマットレスを示す要部断面図である。
【図13】従来の環状クッション材を構成するブロック材を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係るクッション体につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0014】
図1〜図3に示す実施例に係るクッション体20は、ベッドのマットレス、ソファーのクッション、車両等のシート等に用いられ、これらの部材において弾力的に荷重を支持するクッション部材を構成するものである。樹脂発泡体からなるクッション体20は、例えばマットレスにおいてコイルスプリングが担っていた機能を代替し得るものであって、前述の如くコイルスプリングと比べて軽量化できたり、リサイクルが容易であり、軋みによる異音がない等の様々な利点を有している。
【0015】
図1または図5に示すように、クッション体20は、U字形状に湾曲させた2つのブロック材22,32を互い違いに嵌め合わせるように組み合わせて1つの部材として構成されている。各ブロック材22,32は、弾力性を有する樹脂発泡体から形成される。樹脂発泡体としては、ポリウレタンフォーム、ポリエチレン等のポリオレフィン系フォーム、ゴムスポンジ等を用いることができる。この中でも、作り易さや取り扱い性等の観点からポリウレタンフォームが最適である。樹脂発泡体は、発泡倍率が約10〜60倍、見かけ密度が16〜100kg/m程度に設定されて、柔らかくて復元性(塑性変形しない)がある所謂軟質フォームであって、気泡が連通する連泡構造であるのが望ましい。なお、実施例では、樹脂発泡体として連泡構造の軟質ウレタンフォームが用いられている。
【0016】
図4に示すように、ブロック材22,32は、直方体形状に形成された樹脂発泡体製の板状ブロックである。ブロック材22,32は、例えば樹脂発泡体のスラブ材を裁断することで所定形状とされ、実施例では、長手辺およびこの長手辺より短い短手辺とに囲まれた矩形面を板面とし、該短手辺より薄い厚みで形成されている。なお、以下のブロック材22,32の説明において、ブロック材22,32の長手辺に沿う方向を長手方向といい、ブロック材22,32の短手辺に沿う方向を短手方向といい、ブロック材22,32の最も短い辺に沿う方向を厚み方向という。実施例では、2つのブロック材22,32が同じ樹脂発泡体から形成されて、2つのブロック材22,32の物性が同一になっている。また、2つのブロック材22,32は、同一の形状および同一の大きさに設定されている。
【0017】
前記ブロック材22,32には、該ブロック材22,32を湾曲して他方のブロック材32,22と組み合わせた際に、クッション体20において湾曲した湾曲部26,36となる部分に対応して、孔部40が設けられている(図2,図4または図5参照)。実施例のブロック材22,32は、短手方向を湾曲軸Jとして長手辺が湾曲される構成であるので(図5参照)、該ブロック材22,32における長手方向の中央部に、孔部40が設けられる。また、孔部40は、クッション体20の湾曲部26,36において曲がりの外周面側に通じるように形成されており、ブロック材22,32は、孔部40が通じた板面を曲がりの外側とするように湾曲される。実施例のブロック材22,32は、クッション体20の湾曲部26,36に対応する部分だけでなく、クッション体20において互い接合される対向片部24,34に対応する部分にも孔部40が設けられ、ブロック材22,32の板面全体に複数の孔部40が散在している(図4参照)。更に、孔部40は、ブロック材22,32の厚み方向に連通するように形成されている。孔部40は、ブロック材22,32の短手方向に延在するスリット状であって、ブロック材22,32の厚み方向に貫通する切れ込みを入れることで形成されている。なお、ブロック材22,32では、平たく延ばした姿勢において各孔部40が閉じた状態になっている(図4参照)。
【0018】
前記ブロック材22,32には、図4に示すように、短手方向に一列に並べて複数の孔部40が設けられると共に、長手方向において隣り合う孔部40が短手方向に互いにずらして配置されている。すなわち、ブロック材22,32では、短手方向に一列に並ぶ複数の孔部40のグループが、長手方向に離間して複数組設けられ、隣り合うグループの孔部40が互いにずれて千鳥状に配置されている。このように、ブロック材22,32では、孔部40によって切れた部分が長手方向において揃わないようになっている。なお、2つのブロック材22,32は、孔部40の形状、大きさおよび配置が同一に構成されている。
【0019】
図1に示すように、クッション体20は、第1のブロック材22を湾曲させることで板面が向かい合う部分からなる一対の第1対向片部24,24の間に、第2のブロック材32を湾曲させることで板面が向かい合う部分からなる一対の第2対向片部34,34のうちの片方を挟むと共に、一対の第2対向片部34,34の間に前記第1対向片部24,24の片方を挟み、該挟持部位を互いに接合して構成されている。ここで、クッション体20では、ブロック材22,32の長手方向が、湾曲部26,36の周方向および対向片部24,34における湾曲部26,36からの延出方向に沿うようになり、ブロック材22,32の短手方向が、湾曲部26,36における曲がりの中心軸に沿う湾曲軸方向に沿うようになり、ブロック材22,32の厚み方向が、湾曲部26,36の曲がりの内外方向に沿うようになっている。
【0020】
より詳細に説明すると、第1のブロック材22は、短手方向を湾曲軸Jとして長手辺が湾曲するよう曲げることで、板面が対向する一対の第1対向片部24,24と、一対の第1対向片部24,24の間を繋いで湾曲する第1湾曲部26とからなるU字形状に湾曲形成される(図5参照)。同様に、第2のブロック材32は、短手方向を湾曲軸Jとして長手辺が湾曲するよう曲げることで、板面が対向する一対の第2対向片部34,34と、一対の第2対向片部34,34の間に延在して湾曲する第2湾曲部36とからなるU字形状に湾曲形成される。ここで、第1のブロック材22および第2のブロック材32の夫々では、長手方向に離間する側面が揃うように湾曲されている(図5参照)。第1のブロック材22および第2のブロック材32は、クッション体20においてU字形状の開放端を向かい合わせて配置され、片方の対向片部24,34を相手方の対向片部34,34,24,24間に互いに挿入して、互い違いに組み合わされている。そして、クッション体20では、一対の対向片部24,24,34,34によって相手方の片方の対向片部34,24を挟持し、第1対向片部24と第2対向片部34とが所定の接合手段で接合される。ここで、接合手段としては、接着剤や熱による溶着等が採用可能であって、実施例では、樹脂発泡体と同系統のウレタン系接着剤が用いられている。クッション体20では、2つのブロック材22,32における湾曲部26,36の湾曲軸方向(短手方向)の大きさが同じに設定されて、該ブロック材22,32における湾曲軸方向に交差する側面を互いに揃えて接合されている。すなわち、クッション体20は、4つ並んだ対向片部24,24,36,36の湾曲軸方向に交差する側面で構成される支持端面(端面)20aの夫々が水平に揃うようになっており、湾曲軸方向に離間する一対の支持端面20a,20aが平行な関係で形成されている(図2または図3参照)。
【0021】
前記クッション体20は、ブロック材22,32に孔部が予め設けられているので、湾曲部26,36において内外の周長差により外周面側が内周面側と比べて引き伸ばされ、湾曲部26,36に設けられた孔部40が外周面側が拡開されて開口する一方、内周面側が閉じた状態となっている。実施例では、湾曲部26,36に設けられた孔部40が、ブロック材22,32の平坦状態で閉じていた状態から外周面側が開口するように周方向に拡開され、周方向に隣り合う孔部40が湾曲軸方向にずらして配置されているので、各孔部40が略菱形形状に開口するようになっている。これに対して、クッション体20では、対向片部24,34が平らに延びた状態にあるので、対向片部24,34に設けられた孔部40がブロック材22,32の平坦状態と変わらず、実施例ではスリット状の孔部40が閉じた状態にある。
【0022】
前記クッション体20を例えばマットレス10に用いる場合について簡単に説明する。図7に示すように、クッション体20は、ウレタンシート等の下クッション材12に下側の支持端面20aを当接させた状態で載置されると共に、上側の支持端面20aでウレタンシート等の上クッション材14を支持し、該クッション体20の湾曲軸方向に荷重がかかる(圧縮される)ように使用される。マットレス10には、図6に示すように、クッション体20が湾曲軸Jを立てた姿勢で並べて複数配置されると共に、該クッション体20と同じ樹脂発泡体からなる円形のクッションコア16や板状のクッションコア18が設置されている。このように、マットレス10は、下クッション材12と上クッション材14とに挟まれる芯材部分が特性が異なる複数種類の樹脂発泡体で構成されている。クッション体20は、マットレス10において比較的大きな荷重がかかる部位に好適に用いられ、実施例では、マットレス10に仰臥した人の腰あたりに対応する部分にクッション体20を用いるのがよい。すなわち、実施例のクッション体20は、マットレス10における長手方向の中央領域に配置されている(図6参照)。
【0023】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係るクッション体20の作用について説明する。クッション体20は、湾曲軸Jを立てた姿勢で設置され、上側の支持端面20aで荷重を受けるようになっている。クッション体20は、2つのブロック材22,32を組み合わせることで4つの対向片部24,24,34,34が互いに接合されて1つのブロックとなっているので、該対向片部24,34が1つだけの場合(ブロック材22,32単体を短手方向に圧縮した場合)と比べて、当該部分で圧縮たわみ荷重を高く(硬く)設定することができる。これに対して、クッション体20は、湾曲部26,36が1つのブロック材22,32だけで構成されているので、4つの対向片部24,24,34,34を接合した部分と比べて圧縮たわみ荷重を低く(柔らかく)設定することができる。また、クッション体20は、湾曲部26,36においてスリット状の孔部40が外周面側に開いて隙間が形成されている一方、対向片部24,34の孔部40が閉じた状態になっているので、4つの対向片部24,24,34,34を接合した部分と比べて湾曲部26を柔らかくすることができる。しかも、クッション体20は、ブロック材22,32の圧縮たわみ荷重を変えることなく、2つのブロック材22,32を組み合わせることによって、4つの対向片部24,24,34,34を接合した部分の圧縮たわみ荷重を高くすることができるので、荷重入力初期段階で圧縮たわみ荷重が低く(柔らかく)、荷重がかかるにつれて圧縮たわみ荷重が高く(硬く)なるクッション特性が損なわれない。このように、実施例のクッション体20によれば、全体として圧縮たわみ荷重のバランスがよくなり、適切なクッション特性を保ちながら圧縮たわみ荷重を適宜調節できる。ここで、実施例のクッション体によれば、前述した如くある程度圧縮変形した際に応力(圧縮たわみ荷重)が大きくなって底付きしないクッション特性を向上することができる。
【0024】
前記クッション体20は、ブロック材22,32において曲げられる部位に孔部40が設けられているので、該ブロック材22,32を曲げ易くできると共に、湾曲部26,36において孔部40の外周面側が開口するように開くので、該孔部40によって通気性を向上することができる。また、孔部40は、スリット状に形成されているので、弾力性を生み出す樹脂発泡体の欠けを抑えることができるので、クッション体20の圧縮たわみ荷重を高く設定し易い。すなわち、孔部40をスリット状に形成することで、クッション体20の反発弾性を損なうことなく、通気性を向上し得る。このように、クッション体20は、孔部40が湾曲軸方向に延在するスリット状に形成されており、荷重がかかっていない通常状態において対向片部24,34の孔部40が閉じた状態にあるが、支持端面20aで荷重を受けて圧縮変形することで、対向片部24,34の孔部40も周方向に開くので、該対向片部24,34においても通気性を確保することができる。このように、孔部40を設けて通気性を向上することで、クッション体20のヒステリシスロス率を少なくすることができる。ここで、クッション特性としては、前述した荷重の入力に対するたわみ量に加えて、ヒステリシスロス率(JIS K6400-2)の少なさで、荷重解放後の戻りが早いことも要求される。ヒステリシスロス率とは、変形及び回復の1サイクルにおける機械的エネルギー損失を示し、圧縮たわみ荷重たわみ試験を行って得られる力―たわみ曲線から求められる。ヒステリシスロス率の大きいものほどスローリカバリーとなって、押し込んだ後の開放時の反発力が低下して所謂粘性が強いフォームとなる。
【0025】
前記クッション体20は、互いに接合した対向片部24,24,34,34で構成される支持端面20aが水平になっているので、該クッション体20を下クッション材12に対して安定して設置できると共に、下クッション材12と下側の支持端面20aとの間で広い接着面積を確保することができる。また、クッション体20は、上側の水平な支持端面20aで上クッション材14を支持するので、上クッション材14の凸凹を最小限に抑えることができると共に、該上クッション材14と上側の支持端面20aとの間で広い接着面積を確保することができる。しかも、クッション体20は、上側の水平な支持端面20aを介して荷重を適切に受けることができると共に、上側の支持端面20aで受けた荷重を下クッション材12に座りよく支持された下側の支持端面20aとの間で対向片部24,34を適切に圧縮するように作用させることができる。従って、実施例のクッション体20は、優れたクッション特性を示す。
【0026】
前記クッション体20は、2つのブロック材22,32が重なり合って接合された部分を減らし、湾曲部26,36が大きくなるように設定すれば、全体として柔らかくなるように調節することができる。これに対して、クッション体20は、2つのブロック材22,32における対向片部24,34が重なり合って互いに接合された部分を大きくすれば、全体として硬くなるように調節することができる。このように、クッション体20によれば、2つのブロック材22,32における対向片部24,34が接合される部分の範囲を変えることで、硬さを簡単に調節できる。
【0027】
(実験例)
実施例のクッション体20に関して圧縮たわみ荷重試験を行い、クッション特性を確認した。また、比較例として、従来例(図10)として挙げたクッション体(比較例1)および直方体形状のブロック材(比較例2)についても、圧縮たわみ荷重試験を行った。実施例、比較例1および比較例2は、ブロック材を構成する樹脂発泡体として軟質ウレタンフォーム(発泡倍率:40倍、見掛け密度:25kg/m)を用いている。実施例のクッション体20は、図8に示すような横210mm×縦60mm×厚さ30mmの大きさに形成された2つのブロック材22,32をU字形状に湾曲し、図9に示すように互いに35mmずつ重なるように互い違いに組み合わせて互いに重なった部位を接着剤で接合して構成されている。孔部実施例のブロック材22,32には、クッション体20の湾曲軸方向となる短手方向に沿ってスリット状の孔部40が、図8に示すピッチで厚み方向に貫通するように形成されている。なお、図9では孔部40を省略している。比較例1のクッション体は、図8に示すブロック材を1つ用いて構成され、該ブロック体の長手辺を曲げるように環状に丸めて、長手方向に離間する側面を突き合わせて接着剤で接合することで、円筒形状に形成されている。比較例1のクッション体に用いられるブロック材は、実施例のブロック材と同様に孔部が形成されている。比較例2は、横166mm×縦166mm×厚さ60mmの大きさに形成されたブロック材を、曲げや孔等の加工を行うことなくそのまま用いている。
【0028】
圧縮たわみ荷重試験は、JIS K6400−2 B法に基づいて行った。実施例および比較例1は、湾曲軸を立てた姿勢(ブロック材の短手辺が上下に沿う姿勢)で4つのクッション体20を2行2列に並べ、上側の端面中央をφ200の円板によって75%まで圧縮した。すなわち、図8のブロック材22(24)の縦寸法が初期高さになっている。比較例2は、1つのブロック材を厚み方向が上下に沿う姿勢でおき、該ブロック材の上側の端面中央をφ200の円板によって75%まで圧縮した。すなわち、比較例2は、ブロック材の厚みが初期高さになっている。なお、圧縮たわみ試験では、予備圧縮を行っていない。実施例、比較例1および2の夫々について、たわみ量(%)と荷重(N)との関係を図10に示す。また、実施例、比較例1および2の夫々について、ヒステリシスロス率(圧縮・開放カーブの内側面積÷圧縮時カーブの下側とX軸で挟まれた面積)を、JIS K6400−2に基づいて算出した。その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
図10に示すように、実施例1および比較例1は、圧縮開始直後(たわみ量:0〜20%)の荷重が比較例2より低く、荷重入力初期段階において該荷重を柔らかく受ける適切なクッション特性を有していることが分かる。また、実施例1は、たわみ量が20%を越えたあたりから比較例1と比べて荷重が高くなり、荷重の入力が進むと該荷重を受け止めるような適切なクッション特性を有していることが分かる。このように、実施例のクッション体20は、圧縮がある程度された段階において、比較例1と比べて優れたクッション特性を示し、比較的高い荷重を支持するのに適している。また、表1に示すように、実施例は、比較例1および2と比べてヒステリシスロス率が低く、実施例のクッション体20は、圧縮していた荷重が解放された際に素早く元の形状まで戻る復元力に優れていることが確認できる。
【0031】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、以下のように変更することも可能である。
(1)実施例では、全く同じブロック材を用いたが、圧縮たわみ荷重等の物性の異なるブロック材を組み合わせてもよい。また、異なる樹脂発泡体からなるブロック材を組み合わせてもよい。
(2)実施例では、ブロック体にスリット状の孔部を設けたが、円形や矩形状の開口形状であってもよい。この場合であっても、湾曲部に対応する部位に設けた孔部は、ブロック材を曲げることで周方向に拡開される。
(3)孔部は、ブロック体の全体に設ける構成に限定されず、湾曲部に対応する部位に少なくとも設ければよい。また、孔部は、少なくとも外周面側に通じていれば、ブロック材の厚み方向の途中までで閉塞する構成であってもよい。
(4)ブロック材には、湾曲部における曲がりの外周面に凹むように形成されて、該湾曲部の周方向に沿って延在する溝部を設けてもよい。湾曲部は、内周面側より外周面側が引き伸ばされる周長差によって外周面側の端縁が引っ張られ、端面が内周面側から外周面側に向かうにつれて傾斜するが、溝部を設けることで、外周面側の端縁の引っ張りを抑制でき、湾曲部の端面も対向片部の端面に揃えて水平に形成することができる。
【符号の説明】
【0032】
22 第1のブロック材(ブロック材),24 第1対向片部(対向片部),
26 第1湾曲部(湾曲部),32 第2のブロック材(ブロック材),
34 第2対向片部(対向片部),36 第2湾曲部(湾曲部),40 孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾力性を有する樹脂発泡体を直方体形状に形成した2つのブロック材からなり、
第1のブロック材を湾曲させることで向かい合う部分からなる一対の第1対向片部の間に、第2のブロック材を湾曲させることで向かい合う部分からなる一対の第2対向片部のうちの片方を挟むと共に、一対の第2対向片部の間に前記第1対向片部の片方を挟み、該挟持部位を互いに接合して組み合わされ、
前記ブロック材には、前記一対の対向片部の間を繋いで湾曲する湾曲部に対応して、少なくとも曲がりの外周面側となる面に通じる孔部が設けられ、該ブロック材の湾曲によって該孔部が該湾曲部の外周面で開くよう構成した
ことを特徴とするクッション体。
【請求項2】
前記孔部は、前記ブロック材の曲がりの内外方向に連通するよう形成される請求項1記載のクッション体。
【請求項3】
前記孔部は、前記ブロック材の湾曲軸方向に沿って延在するスリット状に形成され、該ブロック材の湾曲により湾曲部において該孔部における曲がり方向外側が拡開される請求項1または2記載のクッション体。
【請求項4】
前記2つのブロック材は、前記湾曲部の湾曲軸方向の大きさが同じに設定されて、該湾曲軸方向に交差する側面を互いに揃えて接合される請求項1〜3の何れか一項に記載のクッション体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−110437(P2012−110437A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260488(P2010−260488)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】