説明

クッション材

【課題】 臥床又は着座を長時間続けても、肌刺激の少ないソフト風合いクッション材を提供する。
【解決手段】 表裏二層の編地と、該二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物からなる、表面材を持ったクッション材であって、この表面材の総カバーファクターが650以上1550以下であって、表面の編地を構成する糸条の単繊維太さが0.1dtex以上、1.5dtex以下であり、かつその表面の編地面が起毛されていることを特徴とする表面ソフト風合いクッション材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体編物を表面に使用したクッション材に関し、特に長時間皮膚接触時においても表面がソフトな風合いで、肌刺激の少ないクッション材に関する。
【背景技術】
【0002】
寝具等のクッション材の表面に使用される生地の皮膚刺激性は、通常、発汗のない状態での刺激性有無が確認されており、安全性が認められているが、発汗時を想定した評価はなされていないのが現状である。人間の皮膚は、湿潤が継続すると皮膚がふやけた状態となって抵抗力が弱まり、雑菌が繁殖しやすくなる。従って、例えば睡眠中等に発汗し、そのまま放置すると、寝具表面との皮膚接触面が長時間湿った状態が持続し、痒みを感じ、かぶれ等の皮膚障害を発生することがある。
【0003】
また、従来より、立体編物は、例えば特許文献1に示すように、クッション材として広く使用されているが、その目的の多くは湿潤の解消であり、発汗により湿潤し、かつ長時間接触している場合、編地表面の特性が皮膚に与える刺激性までは考慮されていなかった。
【特許文献1】特開2002−325657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、発汗して皮膚が湿潤し、臥床又は着座を長時間続けた場合においても、ソフトな風合いを有し、かつ、肌刺激の少ないクッション材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために、長時間の臥床または着座における肌刺激のメカニズムと、クッション材の表面編地を構成する要件、例えば使用する繊維素材、組織等の構造との関連について詳細な検討を繰り返した結果、表面編地の立体構造と、表面編地の総カバーファクターと、表面の編地を構成する糸条の単繊維太さとが大きく関係することを究明し、さらにその編地表面を起毛することにより、上記課題が達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
表裏二層の編地と、該二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物からなる表面材を持ったクッション材であって、該表面材の総カバーファクターが650以上、1550以下であって、表面の編地を構成する糸条の単繊維太さが0.1dtex以上、1.5dtex以下であり、かつその表面の編地面が起毛されていることを特徴とするクッション材。
【発明の効果】
【0007】
本発明のクッション材は、ざらつきが小さくソフトな風合いで肌刺激が小さく、また発汗した状態で長時間使用してもこれらの機能を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の立体編物の表面(肌が直接触れる面)に使用する繊維素材としては、綿、麻、絹、ウール等の天然繊維、キュプラ、レーヨン、精製セルロース繊維、アセテート(ジまたはトリアセテート)等のセルロース系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、W型等の異型断面糸や吸湿性や吸水性を改質したポリエステル系、ポリアミド系等合成繊維等のいずれのものでもよい。繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形があり、繊維の形態も、原糸(未加工糸)、紡績糸、有撚糸、仮撚加工糸、流体噴射加工糸等いずれのものを採用してもよく、マルチフィラメント糸で、これらの素材及び又は断面や形態の異なる二種以上を交絡、交撚、複合仮撚加工、交編等の公知の複合手段で混用して用いてもよい。
【0009】
上記繊維素材のうち、吸湿性や吸水性に優れたものが肌触り等の快適性からより好ましく用いられるが、特に連結糸にモノフィラメント糸を用いる場合、編地表面にモノフィラメント糸が露出しないように被覆率を上げるため、マルチフィラメントの仮撚加工糸、紡績糸等の嵩高糸を用いることが好ましい。またW型や扁平の断面形状を有する糸がしなやかな表面とするために好ましく、W型は吸水速乾性も付与できるためより好ましい。
一方、裏面(肌に接触しない面)の編地については特に制限は無く、表面の編地と同様の繊維素材、断面、形態のものを用いることができる。
【0010】
本発明において、表裏の編地を構成する繊維素材の単繊維太さはそれぞれ0.1dtex以上、1.5dtex以下である。0.5dtex以上、1.2dtex以下が好ましく、0.5dtex以上、1.0dtex未満が特に好ましい。単繊維太さが0.1dtex以下の糸条では、立体編地を編成すると編成時の糸の張力変動により単繊維の糸切れが発生し、編地表面を起毛しても仕上がり品位が良くないことがある。又、単繊維太さが1.5dtex以上では、編地表面を起毛した後の風合いでソフト感が劣ることがある。総繊度は50〜300dtexが好ましく、特に好ましくは100〜250dtexである。
【0011】
更に、これら表裏の編地を連結する連結糸としては、モノフィラメント糸が好ましく、ポリエチレンテレフタレート系繊維、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維、ポリブチレンテレフタレート系繊維等のポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエステル系エラストマー繊維等、任意の素材の繊維を用いることができるが、このうちポリトリメチレンテレフタレート系繊維を連結糸の少なくとも一部に用いると、弾力感のあるクッション性を有し、繰り返し或いは長時間圧縮後のクッション性の耐久性が良好となり好ましい。繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよいが、丸型断面が立体編物の圧縮耐久性を向上させる上で好ましい。
【0012】
連結糸は、モノフィラメント糸100%が最適であるが、マルチフィラメント原糸やその仮撚加工糸を混用してもよく、その際はモノフィラメント糸が30質量%以上、特に50質量%以上で構成するのが好ましい。
【0013】
連結糸の好ましい太さは、モノフィラメント糸の場合は20〜500dtex、特に30〜300dtexが好ましく、マルチフィラメント糸の場合は総dtexでは20〜300、特に30〜200が好ましく、単糸dtexは1〜7、特に2〜6が好ましい。
【0014】
連結糸の180℃乾熱収縮率は5%以上、25%以下、特に8%以上、20%以下が好ましい。尚、180℃乾熱収縮率とは、編成前の糸を180℃で30分間乾熱した時の糸の収縮率をいう。更に、連結糸の突出防止のため、表糸との180%乾熱収縮率の差は、連結糸の方が収縮を大きくする必要があり、1%以上、より好ましくは、3%以上連結糸の方を大きくすることが好ましい。
【0015】
連結糸の密度については、立体編物2.54cm平方(6.45cm)の面積中にある連結糸の本数をN(本/6.45cm)、連結糸のdtexをT(g/1×106cm)、連結糸の比重をρ(g/cm)としたとき、立体編物6.45cmの面積中にある連結糸の総断面積(N・ T/1×106・ρ)が0.01〜0.3cmが好ましく、より好ましくは0.03〜0.2cmである。この範囲に設定することによって、適度な剛性による良好なクッション性を有するものとなる。なお、本発明の表裏の編地または連結糸に用いる繊維は、未着色でもよく、着色されていてもよい。
【0016】
立体編物の構造について説明すると、本発明の立体編物は、相対する2列の針床を有する編機で編成することができ、ダブルラッセル編機、ダブル丸編機、Vベッドを有する横編機等で編成できるが、寸法安定性のよい立体編物を得るには、ダブルラッセル編機を用いるのが好ましい。編機のゲージは9ゲージから28ゲージまでが好ましく用いられる。
【0017】
立体編物の表裏の編地は、編組織は同一である必要は無く、異なる編組織でもよく、4角、6角等のメッシュ編地、マーキゼット編地等複数の開孔部を有する編地にして軽量性、通気性を向上させてもよいが、表面を平坦な組織またはメッシュひとつ分の開孔面積が0.15cm以下の細かいメッシュ組織にして、肌触りを良好にしたものが好ましい。編地表面を起毛するとより肌触りの良好なものが得られるが、本発明では、後述のように特に表の編地面を起毛する必要がある。裏面の編組織は、開孔部のあるメッシュ組織であることが通気性を向上させるためには好ましいが、平坦な構造でも立体構造により通気性は確保されるため、特に限定されるものではない。
又、立体編物は、表裏の少なくとも一方の編地のタテ方向及び/又はヨコ方向に挿入糸(モノフィラメント糸及び又はマルチフィラメント糸)が直線状に挿入されていてもよい。
【0018】
連結糸は、表裏の編地中にループ状の編目を形成してもよく、表裏編地に挿入組織状に引っかけた構造でもよいが、少なくとも2本の連結糸が表裏の編地を互いに逆方向に斜めに傾斜して、クロス状(X状)やトラス状に連結することが、立体編物の形態安定性を向上させる上で好ましい。又、表裏糸と連結糸のランナー長のバランスは、連結糸の出現面積に大きな影響を及ぼすため非常に重要である。
【0019】
立体編物の厚みは目的に応じて任意に設定できるが、水分放出性を考慮すると、厚みは1〜10mmが好ましく、特に2〜8mmがより好ましい。
立体編物の着色方法は、未着色の糸をかせやチーズ状で糸染めする方法(先染め)、紡糸前の原液に顔料、染料等を混ぜて着色する方法(原液着色)、立体編物状で染色したりプリントする方法等によって着色することができる。
【0020】
立体編物の仕上げ加工方法は、立体編物を未着色で用いる場合や、先染め糸や原液着色糸を使用した立体編物の場合は生機をプレヒートセット、精練、ヒートセット、表面起毛等の工程を通して仕上げることができる。通常は生機を精練、ヒートセットする工程であるが、プレヒートセットを入れることで、連結糸が締まり、表面に突出するのを防ぐことができる。又、連結糸或いは表裏糸のいずれかが未着色の立体編物の場合は、生機をプレヒートセット、精練、染色、ヒートセット、表面起毛等の工程を通して仕上げることができる。
【0021】
本発明において、表面材の表面編地面が、起毛されていることを特徴とする。前述した単繊維太さの繊維が構成する編地面が起毛されていることによって、ソフトな風合いを有し、かつ、発汗した状態で長時間使用しても肌刺激の小さいクッション材とすることができる。表面の起毛は、生機状態で起毛して次の工程に進めても、または染色、ヒートセット後に起毛して仕上げてもよい。好ましくは、染色、ヒートセット後に表面を起毛する方が仕上がり品位は良好となる。なお、表面を起毛する方法については、針布を使った針布起毛、サンドペーパーによるバフ起毛加工(別名、エミリー起毛加工)等により表面を起毛させる方法がある。針布起毛工程の場合、針布の密度、長さ、角度、先端形状等に加え、回転数、立体編地との接圧、接触回数の諸条件を適宜選択することにより表面の起毛状態が自由に設定できる。同様にバフ起毛工程の場合も、ペーパーメッシュ、粗さ、接触回数等の諸条件を適宜選択ことにより、表面の起毛状態を自由に設定できる。起毛方法は、表面の起毛、風合いに応じ、適宜選定すればよい。
仕上げ加工後の立体編物は、融着、縫製、樹脂加工等の手段で端部を処理したり、熱成形等により所望の形状にして用いることができる。
【0022】
クッション材として表面の立体編物と組み合わせる他素材としては、天然綿、合成繊維綿、又はこれらの繊維を複合した綿、並びにこれらの繊維綿を適宜圧縮した綿、それらの綿に合成樹脂を施して圧縮回復性を改良したもの、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン等の発泡体、並びにこれらの発泡体と綿とを組み合わせたもの、または、熱可塑性樹脂や熱可塑性弾性樹脂からなる繊維が互いに不規則に交絡し、交絡により接触した接点を形成する、厚さが5〜50mm程度の立体的構造体等が挙げられる。表面素材と同様または類似の表裏二層の編地と、該二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物であってもよい。又、それらを表面材としての立体編物と一体化させるために綿布や合成繊維布等を使用してもよい。
【0023】
本発明者等は、クッション材として好適な立体編物の表面の編地を構成する糸、連結部を構成する糸、立体編物の表面状態等について鋭意検討した結果、表面の編地を構成する糸条が前述の単繊維太さを満たした上で、総カバーファクターを特定範囲に制御することが重要であることを見出した。以下に詳細に説明する。
【0024】
好ましい表面ソフト風合いを達成するために、立体編物の総カバーファクター(TCF)は、650以上、1550以下であることが必要である。特に、800以上、1200以下であることが好ましい。
【0025】
なお、ここで、総カバーファクター(TCF)とは、下記式で計算されるものである。
総カバーファクター(TCF)=コースカバーファクター(CCF)+ウェールカバーファクター(WCF)
但し、コースカバーファクター(CCF)=(コース数;本/2.54cm)×(表面の編地を構成する糸条の太さ;dtex)1/2
ウェールカバーファクター(WCF)=(ウェール数;本/2.54cm)×(表面の編地を構成する糸条の太さ;dtex)1/2
ここで、表面の編地を構成する糸条の太さとは、表面の編地2.54cm平方(6.45cm)の面積中に存在する編目を構成する糸条の太さをいう。例えば2枚筬から同一の針に2本の表糸が供給されて一つの編目を構成する場合は、2本の表糸の太さを合計した太さをいう。
【0026】
編目を構成する糸条の太さが異なる場合は、先ず表面の編地2.54cm平方(6.45cm)の面積中に存在する編目の総数(n)と、各編目を構成する糸条の太さ(D1、D2、D3、・・・、Dn;dtex)を測定する。次いで、各編目を構成する糸条の太さの合計(D1+D2+D3+・・・Dn;dtex)を編目の総数(n)で割ったもので表す。
【0027】
上記記載の総カバーファクターの範囲は、9ゲージ以上、28ゲージ以下の編機を用い、表糸繊度を総dtexで60dtex以上、300dtex以下とし、編条件を適宜調整することで達成することができる。
【0028】
次に、好ましいソフト風合いを達成するためには、立体編物表面のメッシュの最大の開孔面積(メッシュひとつ分)は、0.13cm以下であることが好ましく、特に、0.10cm以下であることが好ましい。
【0029】
ここで、開孔面積とは、立体編物1cmと面積既知の図を描いた紙を合わせて、表面拡大写真(5〜50倍)を直角方向から撮影し、写真をイメージスキャナーでコンピューターに読み込み、画像解析ソフト「高精細画像解析システムIP1000PC」(商品名、旭化成(株)製)を用いて、編地表面のひとつの開孔部と面積既知の図をそれぞれ領域指定し、領域指定したそれぞれの面積の画素数を比較することにより、開孔ひとつ分の面積を算出したものである。
上記記載の最大開孔面積の範囲は、表面を開孔のない編構造とするか、あるいは、8コースリピート以下のメッシュ構造とすることで達成できる。
【0030】
好ましいソフト風合いを達成するためには、連結糸出現面積割合(A)と連結糸直径(D)の積(A×D)値は、0.001以上、1.200以下であることが好ましく、特に、0.001以上、0.800以下であることが好ましい。又、連結糸出現面積割合(A)の範囲は30%以下が好ましく、特に好ましくは20%以下である。
【0031】
ここで、連結糸出現面積割合(A)とは、立体編物1cmの表面拡大写真(5〜50倍)を直角方向から撮影し、写真をイメージスキャナーでコンピューターに読み込み、画像解析ソフト「高精細画像解析システムIP1000PC」(商品名、旭化成(株)製)を用いて、任意の領域を指定し、連結糸が出現している面積が全体の面積に占める割合を、画素数を比較することにより、百分率で算出したものである。但し、連結糸が出現している面積とは、表面材として用いたときに肌に接触する可能性のある部分の面積であり、例えば、開孔部の中に見えて肌に接触する可能性のないものは含めない。また、連結糸直径(D)は、光学顕微鏡を用いて、任意の3箇所を測定し、それらの平均値を算出したものである。
【0032】
上記記載のA×D値の範囲を達成するためには、連結糸の180℃乾熱収縮率は、5%以上、25%以下、好ましくは、8%以上、20%以下とし、更に、表糸と連結糸の180℃乾熱収縮率の差を、1%以上、より好ましくは、3%以上連結糸の収縮を大きくして連結糸の出現面積を抑えることが必要である。ここで、180℃乾熱収縮率とは、編成前の糸を180℃で30分間乾熱した時の糸の収縮率をいう。更に、使用する糸が上記乾熱収縮率を有するだけでなく、生機を精練及びヒートセットする工程で、通常は生機を精練後にヒートセットするが、精練前にプレヒートセットを入れることで、連結糸が締まり、表面に突出するのを防いで、A×D値を最適な範囲内にすることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例で具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
本発明に用いられる評価方法は以下の通りである。
【0034】
(1)編地表面がソフトな風合いであるかを確認するために下記の皮膚刺激性の評価を行った。
(イ)2cm角の評価生地に水0.5mlを含ませ、被験者の上腕内側部に貼り付ける。この時、製品となったときに肌接触面となる面を肌側となるようにし、幅1cm、長さ4〜6cmの絆創膏2枚で十字になるように固定する。上半身は綿100%の半袖Tシャツを着用し、サンプル貼り付け部に袖が触れないようにする。評価生地を貼り付けた状態で、気温35±2℃、湿度70±5%RH環境下で6時間臥床する。その後の感覚的な皮膚刺激の有無を確認し、更にサンプルを取り除き30分安静後の皮膚の状態変化を観察する。
(ロ)上記評価を5名の被験者について実施し、平均点で評価した。採点基準は、下記の通りである。
3点:かゆみ等の刺激を感じず、皮膚の変化はない
2点:かゆみ等の刺激を感じるが、皮膚の変化はない
1点:かゆみ等の刺激を感じ、かつ、皮膚に発赤等の変化が見られた
(ハ)同様にして、使用時の風合い(ソフト感)を、下記基準で評価した。
◎ :ソフト感が極めて優れている
○ :ソフト感に優れる
△ :ソフト感が若干劣る
× :風合いがかたく、ソフト感を感じない。
【0035】
本発明の実施例に用いた立体編物は以下の通りである。
立体編物A:6枚筬を装備した22ゲージ、釜間4.2mmのダブルラッセル編機を用い、表面の編地を形成する2枚の筬(L1、L2)から167dtex/144f(単繊維太さ1.16dtex)の丸断面のポリエチレンテレフタレート系繊維の仮撚加工糸(一般市販のテトロン仮撚加工糸、180℃乾熱収縮率:3%)をいずれもオールインの配列で供給し、裏面の編地を形成する2枚の筬(L5、L6)からも同一の仮撚加工糸をいずれも3イン1アウトの配列で供給し、連結糸を形成するL3の筬から56dtexのナイロン66繊維モノフィラメント糸(180℃乾熱収縮率:18%)をオールインの配列で供給して、表面の編地の密度が33.3コース/2.54cm、24.8ウェール/2.54cmの立体編物の生機を下記組織で編成した。
【0036】
L1:2422/2022/
L2:2022/4644/
L3:0220/2002/
L5:4420/2224/2220/2242/4468/6664/6668/6646/
L6:4468/6664/6668/6646/4420/2224/2220/2242/
得られた生機をプレヒートセットして精練後、再度ヒートセット後にサンドペーパーによるバフ起毛にて編地表面を起毛させて、厚み3.5mmの立体編物を得た。得られた立体編物は、表面の編地が平坦な組織で、裏面の編地がメッシュ組織であり、表面の編地密度は、35コース/2.54cm、22ウェール/2.54cmであった。
【0037】
立体編物B:6枚筬を装備した22ゲージ、釜間4.2mmのダブルラッセル編機を用い、表面の編地を形成する筬(L1、L2)に84dtex/144f(単繊維太さ0.58dtex)のポリエチレンテレフタレート系繊維の仮撚加工糸(一般市販のテトロン仮撚加工糸、180℃乾熱収縮率:3%)を2本引き揃えて、オールインの配列で供給し、裏面の編地を形成する2枚の筬(L5、L6)に110dtex/60fのW型断面のポリエチレンテレフタレート系繊維の仮撚加工糸(旭化成せんい株式会社製、商標「テクノファイン」仮撚加工糸、180℃乾熱収縮率:3%)をいずれも3イン1アウトの配列で供給し、連結糸を形成するL3の筬に56dtexのナイロン6繊維モノフィラメント糸をオールインの配列で供給して、表面の編地の密度が37.6コース/2.54cm、25.4ウェール/2.54cmの立体編物の生機を下記組織で編成した。
【0038】
L1:2022/4644/
L2:2422/2022/
L3:0220/2002/
L5:4420/2224/2220/2242/4468/6664/6668/6
646/
L6:4468/6664/6668/6646/4420/2224/2220/2
242/
得られた生機をプレヒートセットして精練後、再度ヒートセットした後にサンドペーパーによるバフ起毛にて編地表面を起毛させてバフ、厚み3.1mmの立体編物を得た。
得られた立体編物の表面の編地密度は、41.0コース/2.54cm、20.0ウェール/2.54cmであった。
【0039】
[実施例1]
上記立体編物Aの表面の皮膚刺激性を評価した結果、2.5点と優れたソフト風合いのクッション材が得られた。この立体編物を表面材として使用したクッション材に、発汗する環境下で3時間着座しても、皮膚の刺激は全く感じられず、非常に快適なものであった。
【0040】
[実施例2]
上記立体編物Bの表面の皮膚刺激性を評価した結果、2.8点と極めて優れたソフト風合いのクッション材が得られた。
【0041】
[比較例1]
表編地用糸の繊度を56dtex/60f(単繊維太さ0.93dtex)とした以外は、立体編物Aと同様に編成し加工して得られた立体編物について表面の皮膚刺激性を評価した結果、1.7点と若干ソフト風合いの劣ったクッション材が得られた。これは、総カバーファクターが範囲外の603であるためである。
【0042】
[比較例2]
立体編物Aと同様に編成し、仕上げ加工密度を変えて、表面の編地密度を50コース/2.54cm、45ウエル/2.54cmにて仕上げサンドペーパーによるバフ起毛加工を施した。この立体編物について表面の皮膚刺激性を評価した結果、1.1点と風合いの硬いクッション材が得られた。これは、総カバーファクターが範囲外の1736であるためである。
【0043】
[比較例3]
表編地用糸の繊度を167dtex/2016f(単繊維太さ0.08dtex)とした以外は、立体編物Aと同様に編成し、加工して得られた立体編物について、表面の皮膚刺激性を評価した結果、2.1点とソフト風合いのクッション材が得られたが、表面の品位が不良で、特に表面糸の毛玉状の欠点が多発した、商品性に劣る立体編地であった。これは、単繊維太さが範囲外のためである。
【0044】
[比較例4]
表編地用糸の繊度を167dtex/96f(単繊維太さ1.74dtex)とした以外は、立体編物Aと同様に編成し、加工して得られた立体編物について表面の皮膚刺激性を評価した結果、1.5点と、風合いの硬いクッション材が得られた。これは、単繊維太さが範囲外のためである。
【0045】
[比較例5]
立体編物Aと同様に編成し、加工を施し、サンドペーパーによるバフ起毛加工を施さずに仕上げて得られた立体編物について、表面の皮膚刺激性を評価した結果、2.1点と若干ソフトな風合いの劣ったクッション材が得られた。これは、起毛加工を施さなかったためである
【0046】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のクッション材は、表面ソフト風合いに優れたクッション材であり、臥床又は着座を長時間続け、発汗した場合においても、肌刺激が少なく、快適性にも優れたクッション材である。このため、特に敷き寝具やシーツに最適であるが、枕や座布団、乗り物用シート、椅子等を含む一般のクッション材や、それらのカバー材としても好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏二層の編地と、該二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物からなる表面材を持ったクッション材であって、該表面材の総カバーファクターが650以上、1550以下であって、表面の編地を構成する糸条の単繊維太さが0.1dtex以上、1.5dtex以下であり、かつその表面の編地面が起毛されていることを特徴とするクッション材。

【公開番号】特開2007−195777(P2007−195777A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18612(P2006−18612)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】