説明

クッション用セルとそれを用いたクッション体

【課題】膨張状態において応力の分散化が図られて、優れた耐久性が実現されると共に、膨張状態において四角形状の配設スペースに対して優れたスペース効率で人体の支持面積を大きく確保することができる、新規な構造のクッション用セルと、それを用いた新規な構造のクッション体を提供する。
【解決手段】内部に流体室が形成されて、流体室の圧力を調節することで高さを変更設定可能とされたクッション用セル10において、収縮状態で平面形状が四角形状とされていると共に、各辺部46が外周側に凸となる湾曲形状とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体室の圧力を調節することで伸縮して高さが変更設定されるクッション用セルと、該クッション用セルを用いたマットレス等のクッション体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、体圧の分散化による圧迫性壊疽(褥瘡)等の予防や優れた寝心地等を実現し得るクッション体として、複数のクッション用セルを備えたものが提案されており、マットレス等への適用が検討されている。即ち、クッション体は、ベッド等の人体支持面上に配設されるものであって、内部に流体室を備えたクッション用セルの複数が整列配置された構造を有している。そして、それらクッション用セルの流体室に圧力流体が供給されて膨らませられることにより複数のクッション体で協働して人体を支持する面が構成されるようになっている。例えば、特許第2615206号公報(特許文献1)に開示されているのが、それである。
【0003】
ところで、クッション体は、一般的には略直方体であることから、クッション体を構成する各クッション用セルの配設領域は、通常、平面形状で四角形とされている。複数のクッション用セルが整列配置されるクッション体では、隣接するクッション用セル間に隙間が生じると、体圧の集中作用による褥瘡等の発生や触感の悪化が問題となる。それ故、配設領域が四角形の場合には、クッション用セルの上面も配設領域に対応する四角形状とされることが望ましい。
【0004】
しかしながら、クッション用セルの収縮状態において、クッション用セルの上面が四角形状とされていると、流体室の圧力を高めてクッション用セルを膨張させる際に、経線方向の自由長が中心軸周りの周方向で異なっており、経線方向の自由長が短い辺部に応力が集中して、辺部において外周側に凹となる括れ変形が発生する。その結果、応力の集中的な作用によってクッション用セルの耐久性が低下したり、括れ変形によって隣接配置された別のクッション用セルとの間に不要な隙間が形成されるといった問題が生じるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2615206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、膨張状態における応力の分散化が図られて、優れた耐久性が実現されると共に、膨張状態において四角形状の配設スペースに対して優れたスペース効率で人体の支持面積を大きく確保することができる、新規な構造のクッション用セルを提供することにある。
【0007】
また、本発明は、上記クッション用セルを用いた新規な構造のクッション体を提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、内部に流体室が形成されて、該流体室の圧力を調節することで高さを変更設定可能とされたクッション用セルにおいて、収縮状態で平面形状が四角形状とされていると共に、各辺部が外周側に凸となる湾曲形状とされていることを、特徴とする。
【0009】
このような第1の態様に従う構造とされたクッション用セルによれば、収縮状態において辺部が外周側に凸となる湾曲形状とされていることによって、平面形状が四角形とされたクッション用セルの膨張時に、経線方向の自由長の違いに起因した辺部の中央部分に対する応力の集中が低減される。それ故、膨張状態のクッション用セルに使用者が勢いよく乗った場合等にも、クッション用セルの破損が回避されて、耐久性の向上が実現される。
【0010】
また、辺部を湾曲形状とすることによる応力の分散化によって、膨張時に辺部の中央部分が括れる(外周側に凹となるように凹む)のを防ぐことができることから、四角形の配設領域に対して膨張状態のクッション用セルが優れたスペース効率で配設される。それ故、クッション用セルによって、より広い面積で人体を支持することができて、体圧の分散化による圧迫性壊疽(褥瘡等)の防止効果が発揮される。
【0011】
さらに、膨張状態のクッション用セルの大きさが、四角形状の配設領域の大きさに対して効率的に確保されることから、クッション用セルの最大高さ寸法を大きくすることが可能とされて、クッション用セルの高さの調節可能範囲を大きく得ることができる。
【0012】
加えて、膨張時に辺部での括れ変形が低減されることから、例えば、クッション用セルが、別のクッション用セルやウレタンフォーム等の別部材と隣接して配置される場合には、クッション用セルの括れ変形によって形成される隙間を低減することができる。それ故、人体との当接面において隙間による凹凸が抑えられて、体圧の集中的な作用が防止される。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載されたクッション用セルにおいて、前記辺部の外周側への最大突出量が、該辺部の長さの0.05倍〜0.15倍とされているものである。
【0014】
第2の態様によれば、膨張時に辺部が直線形状に近づくことから、クッション用セルの配設領域(クッション用セルが人体を支持する領域)が四角形状とされている場合に、より広い面積で人体を支持することができて、体圧の分散化による褥瘡等の防止効果をより有利に得ることができる。また、クッション用セルの高さの調節可能範囲(最大高さ)をより大きく得ることができて、クッション用セルの高さを調節することによる体圧の分散化も、効果的に図られ得る。
【0015】
加えて、複数のクッション用セルを整列配置する場合や矩形ブロック状のウレタンフォーム等と隣接配置する場合等に、辺部が外周側に凸又は凹となることによる隙間の形成が抑えられる。それ故、クッション用セルの外縁において体圧の集中作用が生じるのを防いで、体圧の分散化による褥瘡等の防止効果が発揮される。
【0016】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載されたクッション用セルにおいて、少なくとも1組のシートを相互に重ね合わせて周縁部において流体密に固着することにより形成されたセル体を含んで構成されているものである。
【0017】
第3の態様によれば、各シートの形状を辺部が外周側に凸となるように湾曲した四角形状とすることで、所定形状のセル体、ひいてはクッション用セルを容易に得ることができる。しかも、各シートを所定形状で形成することによって、辺部の曲率(外周側への突出量)等を高精度に設定することができる。
【0018】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか1つの態様に記載されたクッション用セルにおいて、角部が外周側に凸となる湾曲形状とされていると共に、該角部の曲率半径が前記辺部の曲率半径よりも小さくされているものである。
【0019】
第4の態様によれば、角部への応力集中も緩和されることから、応力の分散化による耐久性の向上がより効果的に図られる。しかも、角部が辺部よりも小さな曲率半径で湾曲していることから、平面形状としては略四角形が維持されて、人体の支持面積や流体室の容積が効率的に確保される。
【0020】
なお、角部および辺部は、必ずしも全体が一様な曲率半径で形成されている必要はなく、曲率半径が徐々に或いは段階的に変化していても良い。そのような場合には、角部の曲率半径の平均値が辺部の曲率半径の平均値よりも小さくされていれば良い。
【0021】
本発明の第5の態様は、人体支持面上に配設されるクッション体であって、前記人体支持面上に整列配置される複数の第1〜第4の何れか1つの態様に記載されたクッション用セルを備えていることを、特徴とする。
【0022】
このような第5の態様に従う構造とされたクッション体によれば、人体支持面上に整列配置される複数のクッション用セルが、それぞれ膨張時の辺部の括れ変形を低減されていることから、整列方向で隣接するクッション用セル間の隙間が抑えられる。それ故、人体に直接的に又は間接的に当接するクッション用セルの上面において、クッション用セルの外縁に体圧が集中作用するのを防いで、褥瘡等の発生を防止することができる。
【0023】
また、クッション用セルの高さの調節可能範囲が大きいことによって、各クッション用セルの流体室の圧力を調節することで、クッション用セルの上面で構成されるクッション体の表面を、人体の表面形状に高精度に対応させることができる。それ故、体圧の分散化が図られて、褥瘡等の防止が実現される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、四角形状とされたクッション用セルの辺部が、収縮状態で外周側に凸となる湾曲形状とされていることにより、膨張時に辺部に応力が集中的に作用するのを防ぐことができて、耐久性の向上が図られる。また、膨張状態では、辺部が内周側に凹となる括れ形状になるのが抑えられることから、四角形の配設領域に対してクッション用セルによる支持面積を効率的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態としてのクッション用セルを、膨張状態で示す斜視図。
【図2】図1に示されたクッション用セルの縦断面図であって、図5のII−II断面に相当する図。
【図3】図1に示されたクッション用セルの収縮状態の縦断面図。
【図4】図1に示されたクッション用セルの収縮状態の平面図。
【図5】図1に示されたクッション用セルの膨張状態の平面図。
【図6】流体室の内圧と、クッション用セルの高さの相関関係を示すグラフ。
【図7】図1に示されたクッション用セルを用いたマットレスの平面図。
【図8】図7に示されたマットレスの右側面図。
【図9】図7のIX−IX断面図。
【図10】図7に示されたマットレスの一部をクッション用セルの収縮状態で示す平面図。
【図11】図7に示されたマットレスの背上げ状態を示す右側面図。
【図12】本発明の第2の実施形態としてのクッション用セルを、膨張状態で示す斜視図。
【図13】図12に示されたクッション用セルの収縮状態の平面図。
【図14】図12に示されたクッション用セルの膨張状態の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1〜図5には、本発明の第1の実施形態としてのクッション用セル10が示されている。クッション用セル10は、全体として袋状を呈しており、内部に形成された後述する流体室36の圧力を調節することによって、高さを変更設定することが可能とされている。また、クッション用セル10は、セル体としての上側袋状部12および下側袋状部14を含んで構成されている。なお、以下の説明において、特に説明がない限り、上下方向とは、図2中の上下方向を言う。また、図1,図4,図5および後述する図12〜図14では、説明を容易にするために、クッション用セルの表面に経線49(後述)と緯線が示されている。
【0028】
より詳細には、上側袋状部12は、シートとしての天部16と、中央部分に開口部18が形成されたシートとしての上側中間部20とが、外周縁部22で相互に溶着されることにより形成されている。一方、下側袋状部14は、中央部分にポート24が取り付けられたシートとしての底部26と、中央部分に開口部28が形成されたシートとしての下側中間部30とが、外周縁部32で相互に溶着されることにより形成されている。そして、上側中間部20と下側中間部30を各開口部18,28の周縁部で相互に溶着することによりクッション用セル10が形成されて、クッション用セル10の高さ方向中間部分に形成された括れ部34を挟んだ両側で、上側袋状部12と下側袋状部14が相互に傾動可能とされている。
【0029】
上記クッション用セル10を構成するシートの材質としては、代表的なものとして、熱可塑性エラストマーが挙げられ、より詳細にはポリウレタン系のエラストマーやそれ以外にもオレフィン系やスチレン系やポリアミド系のエラストマー等がある。また、本実施形態では、上側袋状部12と下側袋状部14の大きさと形状は略等しくされているが、相互に異ならされていても良い。
【0030】
このような構造とされたクッション用セル10の内部には、流体室36が形成されている。この流体室36は、上側袋状部12の内側空間と、下側袋状部14の内側空間が、それら袋状部12,14の開口部18,28を利用した連通部38を通じて相互に連通されることによって、形成されている。また、流体室36は、外部から略密閉されており、クッション用セル10の底部26に貫設された筒状のポート24を通じて外部に連通されている。そして、ポート24を通じて流体室36内に空気等の流体が給排されることにより、流体室36の圧力が調節されて、クッション用セル10が、図1,図2に示された膨張状態や、図3に示された収縮状態、或いはそれらの中間状態に、切り替えられるようになっている。
【0031】
なお、図2,図3では、クッション用セル10が底部クッション層40上に配設されている。より具体的には、クッション用セル10の底部26には、矩形の取付シート42が重ね合わされており、取付シート42に貫通形成された貫通穴にポート24が挿通されていると共に、貫通穴の周縁部が底部26に溶着されている。そして、この取付シート42が、ウレタンフォーム等で形成された底部クッション層40上に配設された固定シート44に対して、スナップ等の固定手段45によって装着されることにより、クッション用セル10が底部クッション層40上に立設されている。尤も、クッション用セル10の配設構造は、特に限定されるものではない。
【0032】
また、クッション用セル10は、図4に示されているように、収縮状態の平面形状が略四角形とされている。なお、クッション用セル10の収縮状態とは、流体室36内の圧力流体(空気)が排出された図3の如き状態を言う。
【0033】
さらに、クッション用セル10では、4つの辺部46が、それぞれ外周側に凸となる円弧状に湾曲しており、角部48を直線的に繋いだ基準線:b(図4中の一点鎖線)に対して外周側に突出している。また、本実施形態では、辺部46の基準線:bに対する外周側への突出量は、辺部46の長さ方向中央に向かって次第に大きくなっており、長さ方向中央で最大となっている。
【0034】
辺部46の外周側への最大突出量(辺部46の長さ方向中央での突出量):Cは、辺部46の長さ:lに対して、0.05倍〜0.15倍とされることが望ましい。より好適には、辺部46の最大突出量:Cが、辺部46の長さ:lに対して、0.1倍〜0.15倍とされ、本実施形態では、0.1倍とされている。
【0035】
また、4つの角部48は、それぞれ外周側に凸となる円弧状に丸められた湾曲形状とされており、その曲率半径が辺部46の曲率半径よりも小さくされている。これにより、クッション用セル10は、平面視において、実質的に略四角形を保ちつつ、全周に亘って角のない滑らかな湾曲形状とされている。
【0036】
本実施形態のクッション用セル10は、4枚のシート(天部16、上側中間部20、下側中間部30、底部26)を相互に溶着して形成されていることから、このような収縮状態での形状が、シートの形状によって容易に実現される。要するに、天部16、上側中間部20、下側中間部30、底部26は、何れも、辺部46が外周側に凸となるように湾曲した略四角シート状とされていると共に、角部48が辺部46よりも小さな曲率半径で湾曲している。このような複数枚のシートで形成されたクッション用セル10では、各シートを所定の形状で形成することによって、目的とする曲率半径を有する辺部46および角部48を、容易に且つ優れた形状精度で得ることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、上側袋状部12の天部16が上記の如き辺部46および角部48を有する略四角形状を呈していると共に、上側袋状部12の上側中間部20と、下側袋状部14の底部26および下側中間部30とが、何れも天部16と略同じ外周形状を有している。これにより、クッション用セル10は、全体が上下方向視において略四角形状とされており、略同一形状の上側袋状部12と下側袋状部14によって構成された2段構造とされている。尤も、底部26および下側中間部30が天部16とは異なる形状で形成されて、上側袋状部12と下側袋状部14が異なる形状とされていても良い。
【0038】
そして、収縮状態のクッション用セル10(図3,図4)の流体室36に対して流体が送入されて流体室36の圧力が高まるに連れて、クッション用セル10の高さ寸法が大きくなると共に、上下方向の投影面積が小さくなる。特に、クッション用セル10の平面形状が略四角形とされていることから、自由長が最も小さくなる辺部46の中央部分において、内周側への変形量が角部48よりも大きくなる。なお、自由長は、膨らんだクッション用セル10の中心軸を含む縦断面における上端(天部16の中央)から下端(底部26の内周縁)までのセル10表面の長さに相当する経線49の長さである。
【0039】
ここにおいて、クッション用セル10では、収縮状態において辺部46が外周側に凸の円弧状に湾曲しており、辺部46の中央部分が基準線:bに対して外周側に予め突出していることにより、対角方向の自由長と対辺方向の自由長の差が抑えられている。
【0040】
このように、クッション用セル10では、辺部46が外周側に凸となる湾曲形状とされて、対辺方向の自由長(辺部46の中央を通る経線49aの長さ)と対角方向の自由長(角部48を通る経線49bの長さ)との差が低減されていることにより、膨張時の辺部46に対する応力集中が緩和されている。それ故、流体室36が高圧とされた膨張状態で、更に使用者の体荷重が入力された場合等にも、応力の分散化によってクッション用セル10の損傷を回避することができて、耐久性の向上が図られる。
【0041】
加えて、角部48も外周側に凸の湾曲形状とされており、それら辺部46と角部48が滑らかに接続されていることから、角部48や辺部46と角部48との接続部においても応力集中が防止されて、より優れた耐久性が実現される。なお、円弧状とされた角部48の曲率半径が、円弧状とされた辺部46の曲率半径よりも小さくされていることにより、膨張時の上下方向での投影形状が略四角形とされている。
【0042】
また、辺部46の中央が収縮状態において基準線:bよりも外周側に突出していることから、クッション用セル10は、膨張によって、辺部46中央の基準線:bに対する内周側への括れが低減されると共に、辺部46中央の外周側への突出が低減される。特に、収縮状態における辺部46の基準線:bからの最大突出量:Cが、辺部46の長さに対して、0.05倍〜0.15倍に設定されることによって、膨張時に辺部46が直線形状に近づいて、クッション用セル10が略四角形状を呈する。これにより、クッション用セル10は、膨張状態において四角形の配設領域に対するスペース効率に優れることから、人体の支持面積が大きく確保されて、体圧の分散化によって圧迫性壊疽(褥瘡等)の発生が防止される。
【0043】
しかも、配設領域が四角形である場合には、配設領域に対してクッション用セル10の上下方向の投影面積が効率的に確保されることから、クッション用セル10の最大高さ寸法が大きくなって、高さの調節可能範囲が大きく確保される。即ち、クッション用セル10を構成する各シート(天部16、上側中間部20、下側中間部30、底部26)の形状は、膨張時のクッション用セル10の上下方向での投影形状が、配設領域内に収まるように設定される。本実施形態のクッション用セル10は、膨張時の上下方向投影形状が、配設領域に略対応する四角形状とされていることから、それら各シートの面積を最大限に確保することができて、シートの変形によって得られる最大高さ寸法を大きく設定可能となるのである。なお、クッション用セル10は、上側袋状部12と下側袋状部14を備えた2段構造とされていることから、高さの調節可能範囲がより大きく確保され得る。
【0044】
このようにクッション用セル10の高さ寸法を効率的に得ることができることは、図6に示された実測結果のグラフからも明らかである。即ち、図6のグラフによれば、実施例としての本実施形態に係るクッション用セル10は、比較例としての従来構造に係るクッション用セルに比して、流体室36の圧力が同じである場合に、高さ寸法が大きくなっており、高さ寸法が効率的に大きく得られることが、示されている。なお、図6中の比較例は、辺部が直線とされていると共に角部が円弧状に丸められた、角丸矩形状のクッション用セルとされている。
【0045】
かくの如き構造とされたクッション用セル10は、例えば、図7〜図9に示されているようなクッション体としてのマットレス50に用いられる。マットレス50は、ベッド52の人体支持面54上に配設されており、人体支持面54の長さ方向の両端部分に配設された頭部側ブロック56と脚部側ブロック58の間に、圧切換型のマットレスユニット60の複数が、人体支持面54の長さ方向に整列配置されていると共に、それらマットレスユニット60の表面上の全体に亘って広がる表層マット62および体圧センサ64が載置された構造とされている(図9参照)。なお、以下の説明において、原則として、幅方向とは、図7中の左右方向を、長さ方向とは、図7中の上下方向を、高さ方向とは、図8中の上下方向を、それぞれ言う。また、図7では、後述する連結ブロック68a,68bやクッション用セル10の配置を見易くするために、表層マット62および体圧センサ64,後述する天部クッション層74の図示を省略している。
【0046】
頭部側ブロック56および脚部側ブロック58は、互いに略同じ直方体形状で幅方向に延びており、ウレタンフォーム等の弾性体で形成されている。また、頭部側ブロック56と脚部側ブロック58は、ベッド52の人体支持面54の長さ方向各一方の端部に配設されており、長さ方向で所定距離を隔てて配置されている。
【0047】
また、頭部側ブロック56と脚部側ブロック58の間には、複数のマットレスユニット60が配設されている。マットレスユニット60は、人体支持面54の幅方向に延びるベース部材66と、ベース部材66の長手方向両端部上にそれぞれ設けられた連結部としての連結ブロック68a,68bと、ベース部材66の長手方向の中間部分に取り付けられるクッション部70を、含んで構成されている。
【0048】
ベース部材66は、合成樹脂や金属等で形成された硬質の部材であって、幅方向に略一定の断面形状で延びる長手板状とされている。また、本実施形態のベース部材66は、上面がベッド52の人体支持面54に広がる平面とされていると共に、下面が長さ方向の中央側に行くに従って下向きの突出高さが大きくなる湾曲面とされて、逆向きの蒲鉾形を呈しており、重量の増加を抑えつつ、機械的な強度が高められている。
【0049】
連結ブロック68a,68bは、合成樹脂や金属等の硬質材料で形成された矩形中空箱体状とされており、図7および図9に示されているように、ベース部材66の長手方向の一方の端部上に連結ブロック68aが取り付けられていると共に、長手方向の他方の端部上に連結ブロック68bが取り付けられている。そして、人体支持面54上に整列配置された複数のマットレスユニット60が、連結ブロック68a,68bにおいて相互に着脱可能に連結されるように、連結ブロック68a,68bには、後述する連結手段を構成する連結帯状体としての第1連結ベルト76および第2連結ベルト78が設けられている。
【0050】
また、図中では省略されているが、連結ブロック68には、クッション用セル10の流体室36の圧力を制御する制御装置や、流体室36に空気を給排する給排管路の一部、更には、給排管路の連通と遮断等を切り替える電磁バルブ等を含んだ圧力調節手段が収容されている。かかる圧力調節手段のメンテナンス性を考慮して、連結ブロック68には、少なくとも壁部の一部に開閉部(ドア部)が設けられていることが望ましい。更に、図示は省略されているが、後述する複数のマットレスユニット60の配設状態において、隣接する連結ブロック68間或いは連結ブロック68とクッション用セル10との間で給排流体(空気)や電力を送受するために、連結ブロック68には、電気を伝達するためのソケットや、給排流体を伝達するための外部ポート等が設けられている。
【0051】
連結ブロック68a,68bの間には、圧切換型のクッション部70が設けられている。クッション部70は、底部クッション層40と天部クッション層74の間に複数のクッション用セル10が配設された構造を有しており、このクッション用セル10の内部に設けられた流体室36の圧力を、上述の圧力調節手段で制御することにより、高さの変更調節が可能とされている。
【0052】
底部クッション層40は、人体支持面54の幅方向に長手の矩形板状を呈する弾性体(ウレタンフォーム等)であって、人体支持面54の長さ方向における寸法がベース部材66と略同じとされていると共に、人体支持面54の幅方向における寸法が両端の連結ブロック68a,68bの対向面間距離と略同じとされている。
【0053】
天部クッション層74は、人体支持面54の幅方向に延びる板状の弾性体(ウレタンフォーム等)であって、人体支持面54の長さ方向における寸法および幅方向における寸法が、何れも底部クッション層40と略同じとされている。そして、天部クッション層74は、底部クッション層40に対して上方に所定距離を隔てて対向配置されている。
【0054】
また、上下方向で対向して配置された底部クッション層40と天部クッション層74の間には、複数のクッション用セル10が配設されており、底部クッション層40によって底面の中央部分が支持されると共に、上面に対して天部クッション層74が重ね合わされている。これにより、圧切換型のクッション部70が形成されている。また、クッション用セル10は、ベッド52の人体支持面54の幅方向に並んで複数が配設されており、本実施形態では、7つのクッション用セル10が1つの底部クッション層40上で1列に並んで配設されている。なお、クッション用セル10上に重ね合わされた天部クッション層74は、クッション用セル10の膨張と収縮によって、底部クッション層40に対して相対的に接近/離隔するようになっている。
【0055】
このような構造とされた圧切換型のマットレスユニット60は、複数が長さ方向で整列して配置される。本実施形態では、人体支持面54の長さ方向に21本のマットレスユニット60が整列して配置されている。
【0056】
なお、図10に示されているように、複数のマットレスユニット60が長さ方向に整列して配置されることによって、各クッション用セル10の配設領域(図10中、一点鎖線に囲まれた領域)が平面視で碁盤目状の四角枡形状で形成されており、その各配設領域にクッション用セル10が配設されて縦横に並んで配置されている。また、クッション用セル10の収縮状態では、クッション用セル10の外周部分が、少なくとも辺部46(特に、膨らんだ中央部分)において隣接する別の配設領域に突出しており、隣接するクッション用セル10,10の外周部分が相互に重なり合っている。なお、本実施形態では、辺部46と角部48の何れも配設領域から外周側に突出しており、クッション用セル10の外周部分が全周に亘って隣接する他のクッション用セル10と重なり合っている。尤も、クッション用セル10は、収縮状態で配設領域に収まる平面形状とされていても良い。
【0057】
このように整列配置されたマットレスユニット60は、整列方向で隣り合うもの同士が連結ブロック68a,68bに設けられた連結手段を構成する連結帯状体としての第1連結ベルト76と第2連結ベルト78によって相互に連結されている。なお、以下では、ベース部材66の長手方向一方の端部上に取り付けられた連結ブロック68aの連結構造について説明をするが、ベース部材66の長手方向他方の端部上に取り付けられた連結ブロック68bの連結構造も、連結ブロック68aの連結構造と同様である。
【0058】
第1,第2連結ベルト76,78は、何れも、薄肉且つ狭幅の長手帯状とされており、合成樹脂や化学繊維、合成皮革等によって形成されている。また、第1,第2連結ベルト76,78は、外力の作用によって厚さ方向で容易に変形するものであって、長手方向での歪みが小さい(伸縮変形し難い)ものが望ましい。なお、後述する連結ブロック68a,68aの長さ方向での位置決めと傾動を実現するためには、第1,第2連結ベルト76,78の長手方向での歪みは小さいほど良いが、第1,第2連結ベルト76,78や圧力調節手段の配線および配管の着脱を容易にする等の目的で、連結ブロック68aの位置決め作用等が充分に得られる程度であれば歪みが許容されていても良い。
【0059】
また、第1,第2連結ベルト76,78の両端部分には、それぞれ図示しない面ファスナが配設されている。より具体的には、第1連結ベルト76には、一方の端部の上面に面ファスナが設けられていると共に、他方の端部の下面に面ファスナが設けられている一方、第2連結ベルト78には、一方の端部の下面に面ファスナが設けられていると共に、他方の端部の上面に面ファスナが設けられている。
【0060】
そして、第1連結ベルト76が連結ブロック68aの幅方向外側(人体支持面54の幅方向外方であって、ベース部材66の長手方向外方)の端部に取り付けられていると共に、第2連結ベルト78が連結ブロック68aの幅方向内側(人体支持面54の幅方向内方であって、ベース部材66の長手方向内方)の端部に取り付けられている。また、第1連結ベルト76の長さ方向一方の端部が、頭側に位置する連結ブロック68aの上面に対して、面ファスナを用いた着脱可能な状態で取り付けられると共に、第1連結ベルト76の他方の端部が、脚側に位置する連結ブロック68aの下面に対して、面ファスナを用いた着脱可能な状態で取り付けられる。更に、第2連結ベルト78の一方の端部が、頭側に位置する連結ブロック68aの下面に対して、面ファスナを用いた着脱可能な状態で取り付けられると共に、第2連結ベルト78の他方の端部が、脚側に位置する連結ブロック68aの上面に対して、面ファスナを用いた着脱可能な状態で取り付けられる。なお、上記からも明らかなように、連結ブロック68aの上面および下面には、幅方向両端部分に予め面ファスナが固着されている。尤も、第1,第2連結ベルト76,78は、接着や溶着等の手段によって、連結ブロック68aに対して取外し不能な状態で固着されていても良い。
【0061】
また、第1,第2連結ベルト76,78の長さ方向の中間部分は、隣り合う連結ブロック68a,68aの間で略上下方向に延びている。この第1,第2連結ベルト76,78の中間部分は、連結ブロック68aの長さ方向の側面に沿って配置されており、それら連結ブロック68a,68aに対して拘束されることなく接近や離隔等の相対変位が許容されている。
【0062】
このように第1,第2連結ベルト76,78が整列方向で隣接する連結ブロック68a,68aに取り付けられることにより、それら連結ブロック68a,68aが第1,第2連結ベルト76,78によって整列方向で相互に連結されている。なお、連結ブロック68a,68aを整列方向で離隔させるように作用する外力は、第1,第2連結ベルト76,78の連結ブロック68a,68aに対する取付け部分(面ファスナ)に対して面方向の力として作用することから、かかる外力の作用によって第1,第2連結ベルト76,78が連結ブロック68a,68aから外れることはなく、連結ブロック68a,68aが整列方向で連結された状態に保持される。
【0063】
さらに、第1,第2連結ベルト76,78が何れも整列方向での伸縮変形を抑えられていることによって、整列方向で隣り合う連結ブロック68a,68aの整列方向および高さ方向での相対変位が制限されて、相互に位置決めされている。即ち、連結ブロック68a,68aが整列方向又は高さ方向で相対的に変位するためには、第1,第2連結ベルト76,78の少なくとも一方が整列方向に伸びる必要があるが、第1,第2連結ベルト76,78は、整列方向での伸縮変形が制限されていることから、連結ブロック68a,68aの整列方向および高さ方向での相対変位が制限されている。
【0064】
一方、整列方向に隣り合う連結ブロック68a,68aは、第1,第2連結ベルト76,78による連結状態において、上端部間を幅方向に延びる仮想的な傾動の軸周りで、相対的な傾動が許容されている。即ち、連結ブロック68a,68aは、第1連結ベルト76の長さ方向一方の端部と中間部分との相対的な傾斜角度および第2連結ベルト78の長さ方向他方の端部と中間部分との相対的な傾斜角度が、変化することによって、連結ブロック68a,68aの上端部間を幅方向に延びる傾動の軸周りでの相対的な傾動が許容される。そこにおいて、第1,第2連結ベルト76,78は、何れも、薄肉帯状で厚さ方向に容易に変形することから、外力の作用による上記の如き連結ブロック68a,68aの傾動が許容される。
【0065】
同様に、整列方向に隣り合う連結ブロック68a,68aは、第1,第2連結ベルト76,78による連結状態において、下端部間を幅方向に延びる仮想的な傾動の軸周りで、相対的な傾動が許容されている。
【0066】
なお、整列方向で隣り合う連結ブロック68b,68bは、連結ブロック68a,68aと同様に第1,第2連結ベルト76,78によって連結されており、整列方向および高さ方向で相対的に位置決めされている。更に、連結ブロック68b,68bは、上端部間を幅方向に延びる仮想的な傾動の軸周りで、相対的な傾動を許容されていると共に、下端部間を幅方向に延びる仮想的な傾動の軸周りで、相対的な傾動を許容されている。
【0067】
このように、ベース部材66の長手方向両端部上に設けられた連結ブロック68a,68bが、何れも、整列方向で隣り合う別の連結ブロック68a,68bに対して、相対傾動を許容された状態で連結されていることにより、マットレスユニット60が隣り合う別のマットレスユニット60に対して相対的に傾動可能とされている。従って、例えば、図11に示されているように、ベッド52が背上げ機構を有しており、人体支持面54が長さ方向の中間部分で屈曲される場合でも、隣り合う別の連結ブロック68a,68bが傾動して、マットレス50が上向きに凹となる形状に変形して、人体支持面54の変形に追従することができる。また、ベッド52の人体支持面54が、背上げ時に膝を支持する部分が上方に凸状変形するようになっている場合でも、隣り合う別の連結ブロック68a,68bが傾動して、マットレス50が上向きに凸となる形状に変形して、人体支持面54の変形に追従することができる。
【0068】
このように、第1,第2連結ベルト76,78を用いた単一の連結構造によって、全てのマットレスユニット60が隣り合うもの同士で相互に連結されていると共に、全ての連結部位において凹状変形と凸状変形と変形なしの何れかが任意に選択的に許容されるようになっている。それ故、マットレス50は、特別な調整や部品の交換等を要することなく、脚部を支持する部分での凸状変形の有無等といったベッド52の変形(背上げ)態様の違いや、ベッド52の屈曲位置の違い等に、自在に対応することが可能とされている。しかも、第1,第2連結ベルト76,78を用いた極めて簡単な構造によってフレキシブルな連結構造が実現されており、製造が容易であると共に、信頼性や軽量化等においてもメリットがある。
【0069】
さらに、第1,第2連結ベルト76,78が、連結ブロック68aに対して面ファスナで着脱可能に取り付けられていることから、第1,第2連結ベルト76,78を連結ブロック68aから取り外すことによって、マットレスユニット60を他のマットレスユニット60から容易に取り外すことができる。それ故、第1,第2連結ベルト76,78の交換が容易に実現されることは勿論、マットレスユニット60を構成するベース部材66や連結ブロック68、クッション部70等の交換やメンテナンスも容易に行われ得る。
【0070】
このように人体支持面54上に複数の圧切換型のマットレスユニット60を整列配置して、隣接する連結ブロック68a,68b同士を第1,第2連結ベルト76,78で相互に連結した際には、複数のマットレスユニット60のクッション部70の表面が略面一になるようにされている。そして、相互に連結された複数のマットレスユニット60の表面上には、表層マット62が重ね合わされている。表層マット62は、薄肉の矩形板状とされたウレタンフォーム等の弾性体であって、頭部側ブロック56と脚部側ブロック58の間で、連結ブロック68a,68bおよびクッション部70の上面を覆うように配設されている。
【0071】
また、クッション部70の上面には、体圧センサ64が重ね合わされており、体圧センサ64が表層マット62とクッション部70の間に挟み込まれて配設されている。かかる体圧センサ64としては、歪ゲージや磁歪体を用いたロードクッション用セル等を採用することも可能であるが、本実施形態ではシート状の静電容量型センサが採用されている。このような静電容量型センサとしては、従来公知のもの(例えば、特許第4565359号公報に開示されたもの)が適宜に採用可能であることから、ここでは概略の説明に留める。即ち、体圧センサ64は、ウレタンフォーム等のエラストマーで形成された誘電体層の一方の面に帯状で柔軟な第1電極膜が重ね合わされていると共に、他方の面に第1電極膜と略同一形状で異なる方向を長手とする第2電極膜が重ね合わされており、それら第1, 第2電極膜の対向部分に検出部が構成されるようになっている。そして、検出部に体圧等の外力(体荷重)が作用すると、誘電体層の厚さ(第1, 第2電極膜の対向面間距離)が変化して、検出部に構成されるコンデンサの静電容量が変化することから、静電容量の変化に基づいて検出部に作用した体圧が検出されるようになっている。特に、体圧センサ64は、寝心地に悪影響を及ぼさないために、薄肉であると共に、柔軟性を有することが望ましい。
【0072】
なお、本実施形態では、体圧センサ64の検出部が縦21個×横7個で設けられており、クッション部70のクッション用セル10と位置合わせされて配置設置されるようになっている。尤も、体圧センサ64の検出部の数は、必ずしもクッション用セル10の数と同数に限定されるものではなく、例えば、クッション用セル10よりも多くの検出部を設けて、より高精度に体荷重を検出することもでき得る。
【0073】
そして、体圧センサ64による使用者の体圧の測定結果に基づいて、各クッション用セル10の流体室36の圧力が調節される。これにより、体圧が広範囲に分散して作用するようにクッション用セル10の弾性や高さが制御されて、褥瘡の発生が抑えられる。より具体的には、例えば、体圧センサ64によって測定された体圧が大きい部分では、流体室36内の流体が排出されて、クッション用セル10の高さが低くされると共に、体圧センサ64によって測定された体圧が小さい部分では、流体室36に流体が供給されて、クッション用セル10の高さが高くされることにより、使用者の体に対して体圧の反力が広範囲に亘って分散作用するようになっている。
【0074】
このような構成とされた本実施形態のマットレス50においては、クッション部70を構成する各クッション用セル10の辺部46が、収縮状態で外周側に凸となる湾曲形状とされており、クッション用セル10が膨張することで辺部46が徐々に略直線形状に近づくようになっている。それ故、クッション用セル10の膨張状態において、クッション用セル10の辺部46での括れ変形が低減されることで、図7に示されているように、隣接して配置されたクッション用セル10,10間に形成される隙間が低減されて、人体の支持面積が大きく確保されることによる体圧の分散化が有効に実現される。
【0075】
また、クッション用セル10の膨張状態での形状が、四角形の配設領域に略対応する四角形状とされることにより、クッション用セル10の平面形状が配設領域に対して効率的に大きく得られることから、それに伴ってクッション用セル10の最大高さ寸法も大きくされる。それ故、各クッション用セル10の高さの調節自由度が大きくなって、各クッション用セル10の高さを調節することで、マットレス50の表面に人体の凹凸に高精度に対応した湾曲面を形成することが可能となる。その結果、体圧の分散化がより効果的に実現されて、褥瘡等の発生が低減される。
【0076】
特に本実施形態のマットレス50では、クッション用セル10の収縮状態で隣接するクッション用セル10,10の外周部分が重なり合っており、クッション用セル10の辺部46において外周側に凸となる湾曲が許容されている。このように、収縮状態においてクッション用セル10が相互に重なり合うことで、収縮状態の形状を配設領域に合わせる必要はなく、外周部分が配設領域からはみ出す形状を採用することができる。それ故、膨張時に配設領域に略対応する形状となるクッション用セル10を採用することができて、膨張時に隣接するセル10,10間の隙間を効果的に抑えることができる。加えて、クッション用セル10は、複数枚のシート16,20,26,30の周縁部を溶着することで形成されていることから、収縮時には、隣接するセル10,10の外周部分同士が容易に重なり合うようになっている。
【0077】
図12には、本発明の第2の実施形態としてのクッション用セル80が示されている。このクッション用セル80は、1つのセル体のみで構成された1段構造とされており、それぞれシート状とされた天部16と底部26の外周縁部を相互に溶着することにより形成されている。換言すれば、本実施形態のクッション用セル80は、第1の実施形態の下側袋状部14において下側中間部30の開口部28をなくしたような構造とされており、図中では明示されていないが、底部26の中央部分には、第1の実施形態と同様のポート24が貫設されている。
【0078】
かかる本実施形態のクッション用セル80は、収縮状態において、図13に示されているように、各辺部46が外周側に凸となる湾曲形状とされており、第1の実施形態と同様に中央が最も大きく突出する円弧状とされている。また、各角部48は、辺部46よりも曲率半径の小さい円弧状の湾曲形状とされており、辺部46と滑らかに連続している。
【0079】
そして、クッション用セル80の流体室36にポート24を通じて空気等の流体が送入されて、収縮状態から膨張状態に徐々に移行することにより、高さ寸法が大きくなると共に、上下方向の投影面積が小さくなる。それに伴って、自由長の長い対角方向に比して、自由長の短い対辺方向での収縮量が大きくなって、辺部46の湾曲形状が徐々に直線形状に近づくことから、図14に示された膨張状態において、基準線:bに対する辺部46の括れ変形量(内周側への凹み)が低減されている。なお、図13,図14からも明らかなように、本実施形態のクッション用セル80は、最収縮時と最膨張時の中間形状において、辺部46が略直線形状とされて、クッション用セル80が略四角形状を呈するようになっている。
【0080】
これにより、本実施形態のクッション用セル80では、膨張状態においても、上下方向の投影面積が配設領域に対して効率的に確保されて、人体の支持面である上面の面積を大きく確保することができる。それ故、体圧の分散化が図られて、褥瘡等の発生が防止される。
【0081】
また、辺部46の中央部分が外周側に突出していることによって、対辺方向の自由長が大きく確保されることから、クッション用セル80の膨張変形時に辺部46の中央部分に対する応力の集中的な作用が回避されて、応力の分散化が図られる。それ故、応力の集中によるクッション用セル80の損傷(辺部46における溶着の破壊等)が防止されて、耐久性の向上が実現される。
【0082】
要するに、本発明の適用範囲は、第1の実施形態に示された2段構造のクッション用セル10に限定されるものではなく、1段構造のクッション用セル80においても同様の効果を得ることができる。なお、2つ以上の括れ部34を備えた3段以上のクッション用セルにおいても、四角形状とされて辺部46が外周側に凸となる湾曲形状とされていれば、同様の効果が発揮され得る。
【0083】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、辺部46は、長さ方向の中央において外周側への突出量が最大となる円弧状の湾曲形状とされていることが望ましいが、例えば、長さ方向の中央を外れた位置で突出量が最大となっていても良いし、曲率半径が徐々に変化する湾曲形状等も採用され得る。
【0084】
また、クッション用セルの膨張状態において、辺部46は直線形状や外周側に凹となる湾曲形状に限定されるものではなく、膨張状態においても辺部46が外周側に凸となる湾曲形状とされていても良い。
【0085】
また、角部48は、応力集中の緩和を実現するために湾曲形状とされていることが望ましいが、湾曲することなく角をなしていても良い。
【0086】
また、前記実施形態では、クッション体の一例として、ベッド52上に配設されるマットレス50が示されているが、本発明に係るクッション用セルを用いたクッション体は、例えば、車椅子の座面を構成するもの等にも適用され得る。
【符号の説明】
【0087】
10,80:クッション用セル、12:上側袋状部(セル体)、14:下側袋状部(セル体)、16:天部(シート)、20:上側中間部(シート)、26:底部(シート)、30:下側中間部(シート)、36:流体室、46:辺部、48:角部、50:マットレス(クッション体)、54:人体支持面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体室が形成されて、該流体室の圧力を調節することで高さを変更設定可能とされたクッション用セルにおいて、
収縮状態で平面形状が四角形状とされていると共に、各辺部が外周側に凸となる湾曲形状とされていることを特徴とするクッション用セル。
【請求項2】
前記辺部の外周側への最大突出量が、該辺部の長さの0.05倍〜0.15倍とされている請求項1に記載のクッション用セル。
【請求項3】
少なくとも1組のシートを相互に重ね合わせて周縁部において流体密に固着することにより形成されたセル体を含んで構成されている請求項1又は2に記載のクッション用セル。
【請求項4】
各角部が外周側に凸となる湾曲形状とされていると共に、該角部の曲率半径が前記辺部の曲率半径よりも小さくされている請求項1〜3の何れか1項に記載のクッション用セル。
【請求項5】
人体支持面上に配設されるクッション体であって、
前記人体支持面上に整列配置される複数の請求項1〜4の何れか1項に記載されたクッション用セルを備えていることを特徴とするクッション体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−46700(P2013−46700A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186410(P2011−186410)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】