説明

クッパー細胞の効率的増殖方法およびその利用

【課題】 簡便な方法で大量のクッパー細胞を効率的に製造することを可能とする方法を提供すること。
【解決手段】 本発明により、肝臓由来の細胞集団の初代培養において、クッパー細胞を活発に増殖させることができる混合培養系を確立するとともに、この混合培養系を利用して大量の高純度クッパー細胞を効率的に製造する新規製造方法を確立することに成功した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッパー細胞の効率的増殖方法およびその利用に関し、より詳しくは、混合培養系によるクッパー細胞の効率的増殖方法、当該増殖方法を利用したクッパー細胞の製造方法、クッパー細胞の増殖に影響を与える化合物のスクリーニング方法およびクッパー細胞の生物学的活性に影響を与える化合物のスクリーニング方法、並びに、当該製造方法により製造されたクッパー細胞の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
クッパー細胞は、肝臓に特異的に存在する組織マクロファージの一種であり、異物の認識や免疫応答の誘導など重要な生体防御機能を担う細胞である。また、クッパー細胞は、肝機能障害、肝炎、肝硬変などの誘発や発症と密接に関連しており、肝臓病態の解明やその治療薬の開発などにおいて極めて重要な標的と考えられている。このため、クッパー細胞を肝臓から単離する試みや、単離したクッパー細胞を試験管内で培養して増殖させるための試みが、これまでに数多くなされてきた。
【0003】
その結果、クッパー細胞の単離方法として、コラゲナーゼなどの消化酵素による肝灌流と細胞分散を経て得られた細胞懸濁液を低速度で遠心して肝実質細胞を取り除き、上清中の非実質細胞をエルトリエーション遠心分離装置により、細胞密度を指標にクッパー細胞分画を採取する方法が確立されるに至った(非特許文献1〜3)。しかしながら、このクッパー細胞の単離には、特殊な機器を必要とし、しかも、熟練技術に依存した複雑な工程を経ねばならないという解決すべき課題があった。また、クッパー細胞の単離の都度、動物を犠牲にして、それらの肝臓からクッパー細胞を単離しなければならないため、簡便に大量のクッパー細胞を得ることは困難であった。
【0004】
また、クッパー細胞のプラスチックディッシュへの付着性を利用して、肝細胞からクッパー細胞を分離する方法も知られている(非特許文献4)。しかしながら、この方法もまた、得られるクッパー細胞の量が、出発材料である肝臓の量に依存するため、簡便に大量のクッパー細胞を得ることは困難であった。また、クッパー細胞は増殖能力が低いことが知られており、この方法によりクッパー細胞を分離することが出来たとしても、簡便に大量のクッパー細胞を製造することは困難であった。
【0005】
さらに、肝臓由来の細胞を限界希釈した後、種々のサイトカインなどの存在下でインビトロで培養し、クッパー細胞のクローンを得る方法も知られている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、大量のクッパー細胞を取得するまでに120日間という極めて長期間の培養が必要となる。また、クッパー細胞は増殖能力が低いことが知られており、クッパー細胞だけでは増殖しない。従って、この方法によりクッパー細胞のクローンを得ることが出来たとしても、簡便な方法で大量のクッパー細胞を効率的に製造することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第02/059279号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】G. Heuff et al. (1994) J. Immunol. Methods 14:61-65
【非特許文献2】J. K. Olynyk et al. (1998) J. Gastroenterol. Hepatol. 13:842-845
【非特許文献3】V. Valatas et al. (2003) Cell Biol. Int. 27:67-73
【非特許文献4】マクロファージ実験マニュアル 講談社サイエンティフィク (1992) 28-35
【非特許文献5】A. Suzumura et al. (1987) J. Neuroimmunol. 15, 263-278
【非特許文献6】実験医学別冊 バイオマニュアルUPシリーズ 脳・神経研究プロトコール 第1章 神経組織の培養技術 (1)ミクログリアの培養 1995年 羊土社
【非特許文献7】Bartlett, P. F. et al. (1988) PNAS 85:3255-3259
【非特許文献8】Takenouchi, T. et al. (2005) Biochim. Biophys. Acta 1726:177-186
【非特許文献9】Froh M. et al. (2003) Gastroenterology 124:172-183
【非特許文献10】半田宏, LANDFALL, Vol.42, pp1-6, Apr.2001
【非特許文献11】半田宏,日産婦誌56巻9号N-498〜502,2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便な方法で大量のクッパー細胞を効率的に製造することを可能とする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ラット、マウス、およびウシ等の哺乳動物の肝臓由来の細胞を遠心して得られた、主として肝実質細胞からなる画分(以下、「肝実質細胞画分」と称する。)について初代培養を行い、死滅あるいは形態変化により肝実質細胞が実質的に存在しなくなった後も培養を継続していたところ、増殖してきた繊維芽細胞様細胞が細胞層を形成し、その後、意外にも、これら細胞層の上にクッパー細胞が出現し、活発に増殖してくることを世界で初めて見出した。クッパー細胞は、通常の培地にて培養しても増殖することはないが、初代培養において増殖したクッパー細胞は、初代培養前の肝実質細胞画分にわずかに含まれていたクッパー細胞が、肝実質細胞が実質的に存在しなくなった後に出現した繊維芽細胞様細胞層による活性刺激を受けて活発に増殖したものであると考えられた。また、初代培養において増殖したクッパー細胞は、初代培養の培養器を振とうし、培養液中に浮遊させることにより、簡便に回収することができた。さらに、こうして回収したクッパー細胞をプラスチック容器への付着性を指標に選抜し回収することにより、クッパー細胞の純度をさらに高めることができた。
【0010】
培養液中に遊離させた細胞をプラスチック容器への付着性を指標に選抜することは、中枢神経系を構成するミクログリア細胞の調製において行われた例はあるが(非特許文献5、非特許文献6)、本発明とは細胞の種類が異なる。なお、肝臓由来の細胞からプラスチック容器への付着性を指標にクッパー細胞を分離する方法は知られているが(非特許文献4)、コラゲナーゼ液にて処理した肝細胞の混合物をガーゼでろ過し、さらに低速遠心操作(550rpm)にて得られる上清からクッパー細胞を分離している。一方、本発明は、コラゲナーゼ液にて処理した肝細胞の混合物の低速遠心操作(例えば、遠心力50xg(1分間当たりの回転数に換算すると約550rpm))にて得られる上清を除去して沈殿物である肝実質細胞画分を培養し、培養液中に遊離させた細胞をプラスチック容器への付着性を指標に選抜し回収する方法であり、このようなクッパー細胞の製造方法は、本発明が完成するまでは、全く行われていなかった。
【0011】
このように、本発明者らは、肝臓由来の細胞集団の初代培養において、クッパー細胞を増殖させることができる混合培養系を確立することに世界で初めて成功するとともに、この本発明の混合培養系を利用して、従来、簡便かつ大量に製造することが困難であったクッパー細胞について、その効率的な製造方法を確立することに成功した。
【0012】
本発明者らが確立した混合培養系を利用すれば、クッパー細胞の増殖に影響を与える化合物およびクッパー細胞の生物学的活性に影響を与える化合物を同定することが可能である。また、製造したクッパー細胞を不死化すれば、クッパー細胞を安定的に維持することが可能となる。さらに、本発明の方法により製造したクッパー細胞は、肝臓へ所望の薬物を送達するためのDDS製剤のキャリアーとして利用することも可能である。
【0013】
即ち、本発明は、混合培養系によるクッパー細胞の増殖方法、当該増殖方法を利用したクッパー細胞の製造方法、クッパー細胞の増殖に影響を与える化合物のスクリーニング方法およびクッパー細胞の生物活性に影響を与える化合物のスクリーニング方法、並びに、当該製造方法により製造されたクッパー細胞の用途に関し、より詳しくは、下記を提供するものである。
(1) 哺乳動物の肝臓に由来し、少なくとも肝実質細胞とクッパー細胞とを含む細胞集団を初代培養することを特徴とする、クッパー細胞の増殖方法。
(2) 細胞集団が肝実質細胞画分である、(1)に記載の増殖方法。
(3) 肝実質細胞が実質的に存在しなくなった後も初代培養を継続する、(1)または(2)のいずれかに記載の増殖方法。
(4) 5日以上、初代培養を行う、(1)から(3)のいずれかに記載の増殖方法。
(5) クッパー細胞の増殖が停止するまでの任意の期間初代培養を行う、(1)から(4)のいずれかに記載の増殖方法。
(6) 初代培養を行っている培養器を振とうし、振とうにより培養液中に浮遊してくるクッパー細胞を回収し、回収したクッパー細胞からプラスチック容器に付着性のクッパー細胞を選抜し回収した場合において、回収したクッパー細胞の純度が90%以上になる期間、初代培養を行う、(1)から(5)のいずれかに記載の増殖方法。
(7) 被検化合物がクッパー細胞の増殖に影響を与えるか否かを評価する方法であって、
(a)培養液中に被検化合物が存在する条件下で、(1)から(6)のいずれかに記載の増殖方法を実施する工程、および
(b)クッパー細胞の増殖を検出する工程、を含む方法。
(8) クッパー細胞の製造方法であって、
(a)(1)から(6)のいずれかに記載の増殖方法を実施する工程、および
(b)増殖したクッパー細胞を回収する工程、を含む方法。
(9) クッパー細胞の製造方法であって、初代培養を行っている培養器を振とうし、振とうにより培養液中に浮遊してくるクッパー細胞を回収することにより、工程(b)におけるクッパー細胞の回収を行う、(8)に記載の方法。
(10) クッパー細胞の製造方法であって、さらに、回収したクッパー細胞からプラスチック容器に付着性の細胞を選抜し回収する工程を含む、(8)または(9)に記載の方法。
(11) クッパー細胞の製造方法であって、クッパー細胞が増殖した後にクッパー細胞の回収を行う、(8)から(10)のいずれかに記載の方法。
(12) クッパー細胞の製造方法であって、初代培養開始後5日目以降にクッパー細胞の回収を行う、(8)から(11)のいずれかに記載の方法。
(13) クッパー細胞の製造方法であって、クッパー細胞が増殖した後クッパー細胞の増殖が停止するまでの間またはクッパー細胞の増殖が停止した後にクッパー細胞の回収を行う、(8)から(12)のいずれかに記載の方法。
(14) クッパー細胞の製造方法であって、初代培養開始後5日目から20日目の間に、クッパー細胞の回収を行う、(8)から(13)のいずれかに記載の方法。
(15) 不死化されたクッパー細胞の製造方法であって、
(a)(8)から(14)のいずれかに記載の方法によりクッパー細胞を製造する工程、および
(b)製造されたクッパー細胞に対して、不死化処理を行う工程、を含む方法。
(16) 被検化合物がクッパー細胞の生物学的活性に影響を与えるか否かを評価する方法であって、
(a)(8)から(15)のいずれかに記載の方法によりクッパー細胞を製造する工程、
(b)製造されたクッパー細胞に被検化合物を接触させる工程、および
(c)クッパー細胞の生物学的活性を検出する工程、を含む方法。
(17) 肝臓に所望の薬物を送達させるためのDDS製剤の製造方法であって、
(a)(8)から(15)のいずれかに記載の方法によりクッパー細胞を製造する工程、および
(b)製造されたクッパー細胞に、肝臓に送達させたい所望の薬物を保持させる工程、を含む方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、肝臓由来の細胞の混合培養系を利用したクッパー細胞の効率的な増殖方法が完成された。本発明のクッパー細胞の増殖方法を利用すれば、肝臓由来の細胞の混合培養系においてクッパー細胞を増殖させた上で、クッパー細胞を回収することができる。しかも、この混合培養系からのクッパー細胞の回収は、初代培養の期間中、複数回繰り返すことができる。また、混合培養系からのクッパー細胞の回収は、混合培養した細胞の培養器の振とうによる分離で行うことができる。さらに、プラスチック容器への強い付着性を指標として選抜し回収することにより、回収したクッパー細胞の純度をさらに高めることができる。
【0015】
これまで、肝臓由来の特定の細胞の製造は、分散させた肝細胞の混合集団に対して、様々な分画・精製手法を駆使して、如何にして高い純度で目的の細胞を回収するかという観点で行われてきており、大量にクッパー細胞を製造するには適していなかった。その一方、本発明の方法によれば、熟練した技術を必要とせず、一般的な実験機器のみを使用して、簡便に高い純度でクッパー細胞を大量に製造することが可能である。
【0016】
具体的には、本発明の方法によれば、プラスチック容器への付着性を指標として、一つの組織培養フラスコから、2〜3日おき、かつ、約2週間にわたって、クッパー細胞を選抜し回収し続けることができる。その結果、底面積75cm2の組織培養フラスコを用いた場合には、組織培養フラスコ1本当たり、約1x107個のクッパー細胞を回収できる(1回の回収当たり、約1x106〜約3x106個)。回収できる総細胞数は、組織培養フラスコの底面積および数に比例するため、例えば、ラット1個体から得られる肝細胞全体を用いた場合、約50本の組織培養フラスコ(底面積75cm2)で培養を行うことができ、最終的に、約5x108個のクッパー細胞の回収が可能となる。この値は、従来の方法(細胞密度を指標にクッパー細胞分画を採取する方法:非特許文献1〜3)によりラット1個体から得られるクッパー細胞の数の50〜100倍となる。このように、本発明の方法は、従来の方法に比して、クッパー細胞の大量生産に極めて適している。
【0017】
さらに、回収したクッパー細胞は通常の細胞凍結用培地を用いて凍結保存することができる。これらの凍結クッパー細胞は液体窒素中で長期間(少なくとも2年間)にわたって安定に保管でき、必要に応じて融解して使用することができる。
【0018】
本発明の方法にて製造したクッパー細胞に癌遺伝子を導入するなどして、クッパー細胞の細胞学的特徴を保持しつつ永続的に継代可能な不死化細胞株を得ることが可能である。また、製造されたクッパー細胞は、例えば、肝臓に抗癌剤など所望の薬物を送達するためのDDS製剤のキャリアーとして、あるいは、被検化合物がクッパー細胞の生物学的活性に影響を与えるか否かの評価のための道具として、利用することが可能である。
【0019】
本発明において確立されたクッパー細胞を増殖させるための混合培養系を利用することにより、被検化合物がクッパー細胞の増殖に影響を与えるか否かの評価を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】T-75組織培養フラスコ(底面積75cm2)およびペトリディッシュ(プラスチックディッシュの一形態)を用いた本発明のクッパー細胞の製造方法の一態様を示す図面である。
【図2】初期培養した肝実質細胞(初期培養開始1日後、4日後、8日後)の位相差顕微鏡写真である。細胞はラット由来である。
【図3】T-75組織培養フラスコ(底面積75cm2)を用いた混合培養系の培養日数と回収されたクッパー細胞の細胞数との関係を示すグラフである。細胞はラット由来である。
【図4】プラスチックディッシュへの付着性により選抜し回収したクッパー細胞(初期培養開始12日後)の免疫染色の結果を示す顕微鏡写真である。細胞はラット由来である。
【図5】プラスチックディッシュへの付着性により選抜し回収したクッパー細胞(初期培養開始21日後)における、FITC蛍光色素標識ラテックスビーズの取り込み(貪食)を検出した結果を示す、蛍光顕微鏡写真(A)とFACS解析のグラフ(B)である。細胞はラット由来である。
【図6】プラスチックディッシュへの付着性により選抜し回収したクッパー細胞(初期培養開始14日後)の組換え型サイトカイン(ラット、ウシ、マウス、またはヒト由来のrGM-CSF)に対する増殖応答能を検出した結果を示すグラフである。細胞はラット由来である。
【図7】プラスチックディッシュへの付着性により選抜し回収したクッパー細胞(初期培養開始11日後)の融合・多核体形成を示す顕微鏡写真である。細胞はラット由来である。
【図8】初期培養した肝実質細胞の位相差顕微鏡写真である。細胞はウシ由来である。初期培養開始2日後(A)、4日後(B)、8日後(C)、および16日後(D)に観察した。矢尻は、繊維芽細胞様細胞の上で増殖するマクロファージ様細胞を示す。スケールバーは、100μmである。
【図9】T-75組織培養フラスコ(底面積75cm2)を用いた混合培養系の培養日数と回収されたクッパー細胞の細胞数との関係を示すグラフである。細胞はウシ由来である。
【図10】プラスチックディッシュへの付着性により選抜し回収したクッパー細胞の免疫染色の結果を示す顕微鏡写真である。細胞はウシ由来である。「D8」は、選抜した細胞を、さらに8日間培養した細胞を用いたことを示す。矢尻は、多核体形成が認められた細胞を示す。スケールバーは、100μmである。
【図11】プラスチックディッシュへの付着性により選抜し回収したクッパー細胞(初期培養開始38日後)における、FITC蛍光色素標識ラテックスビーズの取り込みを検出した結果を示す、蛍光顕微鏡写真(A)とFACS解析のグラフ(B)である。細胞はウシ由来である。スケールバーは、50μmである。
【図12】プラスチックディッシュへの付着性により選抜し回収したクッパー細胞(初期培養開始28日後)の組換え型サイトカイン(ウシ、ヒト、またはマウス由来のrGM-CSF)に対する増殖応答能を検出した結果を示すグラフである。細胞はウシ由来である。
【図13】プラスチックディッシュへの付着性によりクッパー選抜し回収した細胞(初期培養開始17日後)におけるリポポリサッカライド刺激による炎症性あるいは抗炎症性サイトカインの遺伝子発現を検出した結果を示したものである。細胞はウシ由来である。
【図14】初期培養した肝実質細胞の位相差顕微鏡写真である。細胞はマウス由来である。初期培養開始2日後(A)、4日後(B)、7日後(C)、および10日後(D)に観察した。スケールバーは、100μmである。
【図15】Aは、ヒト癌遺伝子c-mycを導入した混合培養系(初期培養開始13日後)の位相差顕微鏡写真である。Bは、プラスチックディッシュへの付着性により選抜し回収したクッパー細胞(初期培養開始13日後)の位相差顕微鏡写真である。細胞はマウス由来である。スケールバーは、100μmである。
【図16】ヒト癌遺伝子c-mycの導入により不死化したクッパー細胞の増殖動態を示す図である。細胞はマウス由来である。
【図17】プラスチックディッシュへの付着性により選抜し回収したクッパー細胞の免疫染色の結果を示す顕微鏡写真である。細胞はマウス由来である。Aは、サイトケラチン18を、Bはサイトケラチン19を、CはSMAを、DはMac-1を、EはF4/80を、FはKT022を、それぞれ示す。EおよびFにおける矢尻は、細胞融合により多核体となった細胞を示す。スケールバーは、100μmである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<クッパー細胞の増殖方法>
本発明は、哺乳動物の肝臓に由来する肝実質細胞とクッパー細胞とを含む細胞集団の初代培養において、クッパー細胞を効率的に増殖させるための混合培養系を確立することが可能であるという本発明者らの知見に基づく。従って、本発明は、哺乳動物の肝臓に由来し、少なくとも肝実質細胞とクッパー細胞とを含む細胞集団を初代培養することを特徴とする、クッパー細胞の効率的増殖方法を提供する。
【0022】
本発明において、「肝実質細胞」とは、肝臓を構成し、肝機能を実質的に担う細胞を意味する。「肝非実質細胞」とは、肝臓を構成する細胞のうち、肝実質細胞以外の細胞を意味する。「クッパー細胞」とは、肝臓を構成する非実質細胞の一つであり、マクロファージの一種である細胞を意味する。「初代培養」とは、生体から取り出して、最初の植え継ぎを行うまでの培養を意味する。「混合培養系」とは、哺乳動物の肝実質細胞とクッパー細胞とを含む細胞集団を初代培養して繊維芽細胞様細胞が形成された状態の培養系を意味する。「培養器」は、細胞を培養することが出来る慣用の組織培養器であれば、材質および形状については、特に制限はなく、例えば、ガラス製の組織培養フラスコ、プラスチック製の組織培養フラスコ等が好適に使用される。また、「プラスチック容器」は、細胞を培養することが出来る慣用のプラスチック容器であれば、プラスチックの種類および形状については、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン製のプラスチックディシュ、ポリスチレン製のプラスチックディシュ等が使用され、好ましくは、細菌培養用プラスチックディシュまたは表面が何ら処理されていないプラスチックディシュ(ノン・コートプラスチックディシュ)が使用される。
【0023】
本発明において、「肝臓に由来し、少なくとも肝実質細胞とクッパー細胞とを含む細胞集団」は、初期培養によりクッパー細胞の混合培養系を確立しうる限り、特に制限はない。当該細胞集団は、哺乳動物の肝臓に由来する肝実質細胞画分であっても、肝非実質細胞画分であってもよいが、好ましくは肝実質細胞画分である。ここで「肝実質細胞画分」とは、肝臓由来の細胞の画分であって、肝非実質細胞よりも、肝実質細胞を多く含む画分であり、「肝非実質細胞画分」とは、肝実質細胞よりも、肝非実質細胞を多く含む画分である。肝実質細胞画分は、一般的に、コラゲナーゼ灌流法で得た肝細胞に対して、低速遠心操作により得られる沈殿としての細胞画分である。肝実質細胞画分を得るための低速遠心操作における遠心力は、10〜600xg、好ましくは、30〜60xgであり、遠心時間は、1〜15分間、好ましくは、1〜5分間である。遠心操作は、通常、細胞に損傷を与えない範囲の温度、例えば、0〜25℃、好ましくは、4〜15℃、さらに好ましくは、4〜10℃で行う。これらの遠心操作および培地による洗浄操作を1〜5回、好ましくは、2〜3回繰り返すことで、肝実質細胞画分を得ることができる。当該細胞集団の由来する哺乳動物としては、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ヒツジ、サル、ヒトなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0024】
また、本発明において、「肝実質細胞が実質的に存在しなくなった」とは、初代培養後の混合培養系において初代培養前の肝実質細胞の大部分(例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上)が存在しなくなったことを意味する。
【0025】
本発明においては、肝実質細胞画分の初代培養を長期間行うことにより、肝実質細胞画分に含まれているクッパー細胞を増殖させることができる。驚くべきことに、本発明者らは、肝実質細胞画分の初代培養を、死滅あるいは形態変化により肝実質細胞が実質的に存在しなくなった後も継続することにより、混合培養系に繊維芽細胞様細胞の層が広がり、次いで、この繊維芽細胞様細胞の層の支持効果を得て、この層の上でクッパー細胞が活発に増殖することを見出した。従って、本発明のクッパー細胞の増殖方法の好ましい態様は、肝実質細胞が実質的に存在しなくなった後も初代培養を継続することである。
【0026】
クッパー細胞は、初代培養の混合培養系において、主として、繊維芽細胞様細胞の層の上にゆるやかに付着して存在することから、初代培養を行っている培養器を振とうした場合、振とうにより培養液中に浮遊してくる。また、クッパー細胞は、プラスチック容器に対して非常に強い付着性を有するため、回収したクッパー細胞をプラスチック容器で培養して、当該プラスチック容器に付着性のクッパー細胞を選抜し回収することにより、クッパー細胞の純度をさらに高めることができる。従って、本発明のクッパー細胞の増殖方法における好ましい培養期間は、初代培養を行っている培養器を振とうし、振とうにより培養液中に浮遊してくるクッパー細胞を回収し、回収したクッパー細胞からプラスチック容器に付着性のクッパー細胞を選抜し回収した場合において、選抜したクッパー細胞の純度が高い状態(例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上の純度)になる期間である。振とう操作およびプラスチック容器に付着性のクッパー細胞の選抜操作については、後述する「クッパー細胞の製造方法」の項に詳細に記載する。
【0027】
振とうにより回収したクッパー細胞およびプラスチック容器に付着させて選抜し回収したクッパー細胞の純度は、例えば、実施例1に記載の免疫染色を行い、特異的抗体によって染色された細胞の割合として評価することが可能である。
【0028】
初代培養の培養期間は、由来する動物により適宜選択され、例えば、クッパー細胞の増殖が停止するまでの任意の期間初代培養を行うことができるが、クッパー細胞の増殖が停止した後も初代培養を継続しても良い。例えば、少なくとも5日以上、好ましくは1週間以上(例えば、10日以上、2週間以上)であり、長期間培養を行うことにより、クッパー細胞の回収の機会を増加させることができる。しかしながら、長期間培養を行うとクッパー細胞の増殖が低下し、クッパー細胞の回収量が少なくなるため、初代培養の培養期間は、5〜40日が好ましく、5〜30日が特に好ましい。
【0029】
本発明の増殖方法において、初代培養に用いる培地としては、クッパー細胞を増殖させるための混合培養系を確立しうる限り、特に制限はない。本発明の実施例においては、ダルベッコ改変イーグル培地(高グルコースタイプ)に、ウシ胎子血清(10%)、ウシインシュリン(10μg/ml)、および2-メルカプトエタノール(0.1mM)を添加した培地を用いているが、その他の培地も利用可能である。
【0030】
<被検化合物がクッパー細胞の増殖に影響を与えるか否かを評価する方法>
本発明のクッパー細胞の増殖方法を被検化合物の存在下において実施することにより、当該被検化合物がクッパー細胞の増殖に影響を与えるか否かを評価することができる。従って、本発明は、被検化合物がクッパー細胞の増殖に影響を与えるか否かを評価する方法であって、培養液中に被検化合物が存在する条件下で、上記本発明のクッパー細胞の増殖方法を実施する工程、および、クッパー細胞の増殖を検出する工程、を含む方法を提供する。
【0031】
ここで「増殖に影響を与える」とは、被検化合物がクッパー細胞の増殖を促進する場合と阻害する場合の双方を含む意である。
【0032】
被検化合物としては特に制限はなく、クッパー細胞の増殖に影響を与えるか否かを評価したい所望の化合物を用いることができる。被検化合物としては、例えば、精製若しくは粗精製タンパク質、ペプチド化合物、合成低分子化合物、天然化合物、細胞抽出物、細胞培養上清、微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。クッパー細胞への被検化合物の接触は、例えば、クッパー細胞を培養している培地への被検化合物の添加によって行うことができる。クッパー細胞の増殖の検出は、例えば、実施例1に記載の免疫染色を行い、混合培養系におけるクッパー細胞の数を算出することにより行うことができる。その結果、被検化合物の非存在下において検出した場合と比較して、クッパー細胞の数が増加していた場合、被検化合物は、クッパー細胞の増殖を促進する活性を有すると評価され、一方、被検化合物の非存在下において検出した場合と比較して、クッパー細胞の数が減少していた場合、被検化合物は、クッパー細胞の増殖を阻害する活性を有すると評価される。
【0033】
複数の被検化合物に対して、当該評価を行い、クッパー細胞の増殖に影響を与える化合物を選抜することにより、クッパー細胞の増殖を調節する薬物およびクッパー細胞が関連する疾患(例えば、肝機能障害、肝炎、肝硬変など)に対する医薬品候補化合物などのスクリーニングを行うことが可能である。
【0034】
<クッパー細胞の製造方法>
本発明は、また、上記本発明のクッパー細胞の増殖方法を利用して、クッパー細胞を効率的に製造する方法を提供する。従って、本発明のクッパー細胞の製造方法は、上記本発明の増殖方法を実施する工程、および、増殖したクッパー細胞を回収する工程、を含む。
【0035】
初代培養において増殖したクッパー細胞の回収の方法に特に制限はないが、簡便に純度の高いクッパー細胞を回収しうる点で、初代培養を行っている培養器を振とうし、振とうにより培養液中に浮遊してくるクッパー細胞を回収する方法が好ましい。振とう操作は、例えば、60〜180rpm、好ましくは80〜120rpmにて、10〜120分間、好ましくは30〜60分間の往復振とうで実施することができる。回収したクッパー細胞からプラスチック容器に付着性のクッパー細胞を選抜し回収することにより、さらにクッパー細胞の純度を高めることができる(図1)。例えば、回収したクッパー細胞をプラスチック容器へ播種して、10〜60分間、好ましくは20〜30分間保温培養し、プラスチック容器非付着性の細胞を生理食塩水などにより洗浄除去することにより、プラスチック容器付着性のクッパー細胞を選抜し回収することができる。本発明の方法によれば、90%以上(例えば、95%以上、98%以上、99%以上)の純度で、大量のクッパー細胞を効率的に製造することが可能である。
【0036】
初代培養からのクッパー細胞の回収は、繊維芽細胞様細胞の層の上でクッパー細胞が増殖した後であれば特に制限はなく、例えば、クッパー細胞の増殖が停止するまでの間に任意に行うことができるが、クッパー細胞の増殖が停止した後の任意の時期にクッパー細胞の回収を行っても良い。例えば、好適な回収時期は、哺乳動物の種類により適宜選択されるが、大量のクッパー細胞を回収できる点で、初代培養開始後5日目以降にクッパー細胞を回収するのが好ましく、5日目〜40日目の間にクッパー細胞を回収することがさらに好ましい。ラットやマウスの場合には、特に、初代培養開始後5日目〜20日目の間に回収することが好ましく、初代培養開始後7日目〜14日目の間の回収することがさらに好ましい。ウシの場合には、特に、初代培養開始後10日目〜35日目の間に回収することが好ましく、初代培養開始後15日目〜30日目の間に回収することがさらに好ましい。
【0037】
<クッパー細胞の凍結保存・融解方法>
上記本発明のクッパー細胞の製造方法により回収したクッパー細胞(例えば、約3x106個/mlの密度)を細胞凍結保存液に懸濁したのち、凍結用バイアルに分注し、フリーザー内(例えば、−80℃)で凍結する。その後、液体窒素中に移し、長期間(例えば、約2年間)凍結保存することができる。融解時はバイアルを温水(例えば、37℃)に浸して急速に解凍することにより、凍結保存前と同様の状態にてクッパー細胞を使用することができる。
【0038】
なお、細胞懸濁液の一部をとり、等量のトリパンブルー染色液と混合した後、血球計算盤を用いて生細胞(トリパンブルーに染色されない)と死細胞(青染される)を計数し、バイアルあたりの細胞回収率と生細胞の割合を算出することができる。
【0039】
<不死化クッパー細胞の製造方法>
こうして製造したクッパー細胞は、不死化処理を行うことにより継続的に増殖させることが可能である。従って、本発明は、不死化されたクッパー細胞の製造方法であって、上記本発明のクッパー細胞の製造方法によりクッパー細胞を製造する工程、および、製造されたクッパー細胞に対して不死化処理を行う工程、を含む方法を提供する。
【0040】
本発明における不死化処理としては、特に制限はないが、例えば、癌遺伝子の導入が挙げられる。クッパー細胞に、癌遺伝子を導入することで、クッパー細胞の特徴を保持しつつ永続的に継代可能な不死化細胞株を得ることが可能である。
【0041】
具体的な手法の一例としては、上記本発明のクッパー細胞の増殖方法と同様にして、まず、哺乳動物の肝臓由来の肝実質細胞画分を初代培養し、クッパー細胞が活発に増殖を開始した段階で、公知文献(非特許文献7、非特許文献8)に記載された細胞不死化方法と同様にして、ヒト癌遺伝子c-mycおよびネオマイシン耐性遺伝子を含むレトロウイルスベクターを感染させる。その後、培養器の振とうにより培養液中に浮遊してくるクッパー細胞を回収し、回収したクッパー細胞からプラスチック容器に付着性の細胞を選抜し、抗生物質(ネオマイシン)を加えた培地で培養する。これによりヒト癌遺伝子c-mycが導入されたクッパー細胞が選択的に増殖する。この細胞に対して、慣用の方法により、クローニング操作を行うことにより、不死化した高純度のクッパー細胞株を得ることができる。レトロウイルスベクターを用いる場合には、該ベクターに対する感染感受性が高い点で、マウスの肝臓由来のクッパー細胞を用いることが好ましい。
【0042】
<被検化合物がクッパー細胞の生物学的活性に影響を与えるか否かを評価する方法>
上記した本発明のクッパー細胞の製造方法により製造されたクッパー細胞を利用すれば、被検化合物がクッパー細胞の生物学的活性に影響を与えるか否かの評価を行うことができる。従って、本発明は、被検化合物がクッパー細胞の生物学的活性に影響を与えるか否かを評価する方法であって、上記本発明のクッパー細胞の製造方法によりクッパー細胞を製造する工程、製造されたクッパー細胞に被検化合物を接触させる工程、および、クッパー細胞の生物学的活性を検出する工程、を含む方法を提供する。
【0043】
ここで「生物学的活性に影響を与える」とは、被検化合物がクッパー細胞の生物学的活性を促進する場合と阻害する場合の双方を含む意である。
【0044】
被検化合物としては特に制限はなく、クッパー細胞の生物学的活性に影響を与えるか否かを評価したい所望の化合物を用いることができる。被検化合物としては、例えば、精製若しくは粗精製タンパク質、ペプチド化合物、合成低分子化合物、天然化合物、細胞抽出物、細胞培養上清、微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0045】
クッパー細胞への被検化合物の接触は、例えば、クッパー細胞を培養している培地への被検化合物の添加によって行うことができる。また、クッパー細胞の生物学的活性の検出は、例えば、本発明の実施例1のようにして、蛍光色素で標識されたラテックスビーズの貪食能、サイトカインに対する増殖応答能、リポポリサッカライド(LPS)刺激による炎症性サイトカイン産生能を指標として行うことができる。その結果、被検化合物を接触させていないクッパー細胞の生物学的活性と比較して、高いクッパー細胞の生物学的活性が検出された場合、被検化合物は、クッパー細胞の生物学的活性を促進する活性を有すると評価され、一方、被検化合物を接触させていないクッパー細胞の生物学的活性と比較して、低いクッパー細胞の生物学的活性が検出された場合、被検化合物は、クッパー細胞の生物学的活性を阻害する活性を有すると評価される。
【0046】
複数の被検化合物に対して、当該評価を行い、クッパー細胞の生物学的活性に影響を与える化合物を選抜することにより、クッパー細胞の生物学的活性を調節する薬物およびクッパー細胞が関連する疾患(肝機能障害や肝炎・肝硬変など)に対する医薬品候補化合物のスクリーニングを行うことが可能である。
【0047】
<肝臓に所望の薬物を送達させるためのDDS製剤の製造方法>
また、薬物療法の一つとして、薬物を輸送担体(キャリアー)に保持させて、必要な薬物を必要な時間に必要な部位に送達するためのドラッグデリバリーシステム(DDS)の研究開発が世界中で活発に行われているが、クッパー細胞は肝臓組織への移行性が知られていることから(非特許文献9)、本発明の方法により製造したクッパー細胞は、肝臓に所望の薬物を送達させるためのDDS製剤の製造に用いることが可能である。従って、本発明は、肝臓に所望の薬物を送達させるためのDDS製剤の製造方法であって、上記本発明のクッパー細胞の製造方法により、DDS製剤のキャリアーとしてのクッパー細胞を製造する工程、および、製造されたクッパー細胞に、肝臓に送達させたい所望の薬物を保持させる工程、を含む方法を提供する。
【0048】
肝臓に送達させるための薬物としては、特に制限はないが、例えば、肝臓に関連した疾患を治療または予防するための薬物(例えば、肝臓癌の治療目的であれば抗癌活性化合物、肝炎の治療目的であれば抗炎症性化合物)が挙げられる。また、クッパー細胞に肝臓に送達させたい所望の薬物を保持させる方法としては、例えば、慣用の方法により、当該薬物をラテックスビーズに結合させ、得られた薬物結合ラテックスビーズをクッパー細胞に貪食させる方法が挙げられる。
【0049】
例えば、抗癌活性化合物を結合させたラテックスビーズをクッパー細胞に貪食させた後、肝臓癌に罹患した哺乳動物に静脈内投与することにより、投与されたクッパー細胞が体内血液循環により肝臓へと移動し、クッパー細胞の起源組織である肝臓内に取り込まれた後に抗癌活性化合物を放出することにより、肝臓癌細胞を殺傷することができる。ラテックスビーズとしては、特に制限はなく、例えば、薬物やDNAを結合することが可能な慣用のラテックスビーズを使用することができ、スチレンとグリシジルメタクリレート(GMA)の共重合体に架橋剤としてジビニルベンゼンを加えてラテックスビーズを製造した後にさらに表面にGMAを結合させたラテックスビーズを好適に使用することができる(非特許文献10、非特許文献11)。抗癌活性化合物のラテックスビーズへの結合は、例えば、ラテックスビーズのGMAのエポキシ基に結合可能な官能基(例えば、アミノ基)をスぺーサー内に有する抗癌活性化合物と当該ラテックスビーズを慣用の方法により反応させて得ることができる。抗癌活性化合物とラテックスビーズを結合させるためのスぺーサーとしては、慣用のDDS製剤に使用されているのと同様なスぺーサー(例えば、数個のアミノ酸からなるポリペプチドなど)を使用することができ、好ましくは肝臓組織内で抗癌活性化合物を放出することができるスぺーサーであれば特に制限はなく、例えば、肝臓内に存在する酵素により特異的に切断されるペプチド結合やエステル結合を有するスぺーサーが特に好ましい。スぺーサーの長さ、ラテックスビーズの大きさ、ラテックスビーズに結合させる抗癌活性化合物の量、クッパー細胞に貪食させる抗癌活性化合物が結合したラテックスビーズの量、および抗癌活性化合物が結合したラテックスビーズを貪食させたクッパー細胞の投与量などについては、哺乳動物の肝臓癌に対する治療効果を観察しながら適宜選択される。同様に、抗炎症性化合物を結合させたラテックスビーズを用いることにより、哺乳動物における肝炎の治療を行うことができる。
【0050】
また、肝臓癌や肝炎のモデル動物に対して、肝臓癌や肝炎に対する医薬品候補化合物を保持させたクッパー細胞を投与して当該医薬候補化合物の治療効果や予防効果を検証することにより、医薬品候補化合物のスクリーニングに利用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
[実施例1] ラット肝臓からのクッパー細胞の製造
公知文献(非特許文献4)に記載された方法と同様にして、成体雄SDラット(10〜15週齢)の肝臓をコラゲナーゼ溶液で灌流し、消化した肝組織を摘出した。
【0053】
摘出した肝組織を細切して、コラゲナーゼ液を加えてピペッティングを行い、肝細胞の混合懸濁液を得た。得られた混合懸濁液に対して、4℃での低速遠心操作(50xgで1分間)および培地(ダルベッコ改変イーグル培地(高グルコースタイプ)にウシ胎子血清(10%)、ウシインシュリン(10μg/ml)、および2-メルカプトエタノール(0.1mM)を添加した培地)(以下においては、特に記載しない限り同様の培地を使用)による洗浄操作を3回繰り返し、その沈降物である肝実質細胞画分を培地に懸濁し、底面積75cm2のポリスチレン製組織培養フラスコ(住友ベークライト社 MS-21250(250ml,75cm2))(以下においては、特に記載しない限り同様の材質・底面積の組織培養フラスコを使用)当たり、5×106個の細胞を播種した。この初代培養において、肝実質細胞は5日目〜1週間目で実質的に存在しなくなり、1週間目〜10日目において、繊維芽細胞様細胞の層が形成され、その層の上に、球形のマクロファージ様細胞が活発に増殖した。即ち、初代培養開始後、1週間目〜10日目に、組織培養フラスコにおいて混合培養系が形成された。初代培養開始1日後、4日後、8日後の細胞の位相差顕微鏡写真を図2に示す。
【0054】
初代培養開始後40日目までの組織培養フラスコを、37℃にて短時間軽く振とうし(80〜120rpmの往復振とうを30〜60分間)、培養液中に浮遊した細胞を回収した。または、培養液中に浮遊した細胞を遠心操作で沈降させて回収してもよい(以下も同様にして培養液中に浮遊した細胞を回収した)。あるいは、上記培養液中に浮遊した細胞を含む培養液を細菌培養用のプラスチックディッシュ(Non-tissue culture dish: BD Falcon 351005)(以下においては、特に記載しない限り同様の材質、大きさ、形状のプラスチックディッシュを使用)に移して短時間保温培養し(炭酸ガス培養器内で37℃にて20〜30分間)、プラスチックディッシュ非付着性の細胞を、ダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水(D-PBS)により洗浄して除去し、プラスチックディッシュに付着した細胞をTrypLE Express溶液(インビトロジェン社製)で処理し、プラスチックディッシュからはがして培養液中に浮遊させた後、遠心操作で沈降させて回収した(以下も同様にしてプラスチックディッシュに付着した細胞を回収した)(図3)。細胞を回収した組織培養フラスコには、新しい培地を添加し、混合培養を継続した。
【0055】
プラスチックディッシュへの付着性により選抜し回収した細胞を、位相差顕微鏡により観察したところ、マクロファージに極めて類似した形態を示していた。また、ほぼ全ての細胞がラット・マクロファージ特異的モノクローナル抗体(OX-41、ED-1、ED-3)および抗Iba-1ウサギポリクローナル抗体(和光純薬製)で強く染色されたが、抗サイトケラチン18(CK18)マウスモノクローナル抗体(ミリポア社製)、抗サイトケラチン19(CK19)マウスモノクローナル抗体(Progen社製)および抗平滑筋アクチン(SMA)マウスモノクローナル抗体(Progen社製)、では免疫染色されなかった(図4)。以上の結果、これらの細胞集団中に、サイトケラチンや平滑筋アクチンに陽性の細胞はほとんど見出せなかったことから、回収した細胞には、肝実質細胞や間葉系細胞などの他種細胞の混入は極めて少ないと判断された(免疫染色による判定では、他種細胞の混入率は0.1%以下であった)。
【0056】
また、FITC蛍光色素標識ラテックスビーズの貪食能(図5)、組換え型サイトカイン(rGM-CSF)に対する増殖応答能(図6)、リポポリサッカライド刺激による炎症性あるいは抗炎症性サイトカイン産生能(表1)などの生物学的特性を有していた。
【0057】
【表1】

【0058】
なお、表1は、プラスチックディッシュへの付着性により選抜し回収した細胞(初期培養開始14〜24日後)におけるリポポリサッカライド刺激による炎症性あるいは抗炎症性サイトカインの産生能を検出した結果を示したものである。
【0059】
さらに、回収した細胞は培養を続ける間に互いに融合して巨大な多核体を形成していた(図7)。
【0060】
以上から、プラスチックディッシュへの付着性により選抜し回収した細胞がクッパー細胞であることが判明した。底面積75cm2の組織培養フラスコ1個当たり、1回の回収で約1x106〜約3x106個(全培養期間に得られる細胞総数は約1x107個)のクッパー細胞が回収された(図3)。回収したクッパー細胞の純度は、下記免疫染色の結果、回収した細胞における染色された細胞(クッパー細胞)の割合から、98%以上であった。
【0061】
なお、免疫染色、並びに、FITC蛍光色素標識ラテックスビーズの貪食能、組換え型サイトカイン(rGM-CSF)に対する増殖応答能、およびリポポリサッカライド刺激による炎症性サイトカイン産生能の測定は、以下の通り行った。
【0062】
(1)免疫染色
ガラス製8穴チャンバースライド(BD Falcon 354118)(以下においては、特に記載しない限り同様の材質、大きさ、形状のチャンバースライドを使用)において、プラスチックディッシュへの付着性により選抜し回収した上記細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、固定液(95%エタノール+1%酢酸)で固定した。固定処理は、4℃で15分間行った。PBSにて固定液を洗浄後、ブロッキング液(10%正常ヤギ血清+1%ウシ血清アルブミン、PBS中)で抗体の非特異的結合部位をマスクした。マスク処理は、室温で15分間行った。希釈した一次抗体(1:200〜1:800)を固定処理した細胞に滴下し、室温で1時間インキュベートした後、PBSで10分間処理することで、8穴チャンバースライドを洗浄した。洗浄操作は、3回繰り返した。次いで、ペルオキシダーゼ標識二次抗体を室温で1時間反応させた後、PBSで10分間処理することにより8穴チャンバースライドを洗浄した。洗浄操作は、3回繰り返した。次いで、DAB発色試薬を滴下し、一次抗体の結合した部位を可視化した後(茶褐色に発色する)、慣用の方法にて標本を作製し、細胞の観察を行った。
【0063】
(2)FITC蛍光色素標識ラテックスビーズの貪食能の測定
ガラス製8穴チャンバースライド(またはプラスチックディッシュ)において、プラスチックディッシュへの付着性により選抜し回収した上記細胞に、FITC蛍光色素標識ラテックスビーズ(直径1μm、Polysciences,Inc.,Warrington,PA、培地中に1:800で希釈)を与え、37℃で1〜4時間培養後に、PBSで洗浄し、上記免疫染色の場合と同様の手法で細胞を固定した。次いで、DAPI色素(核染色用)を含む封入剤で封入し、蛍光顕微鏡で観察した。また、フローサイトメーターを用いて、FITC蛍光色素標識ラテックスビーズの取り込み(貪食)を定量的に解析した。
【0064】
(3)組み換え型サイトカインに対する増殖応答能の測定
プラスチックディッシュへの付着性により選抜し回収した上記細胞を5000細胞/100μl/ウェルで96穴組織培養プレート(BD Falcon 353072)に播種し、各種組み換え型サイトカインを最終濃度3〜25ng/mlで添加した。4〜5日間培養後、各ウェルに細胞増殖アッセイ試薬であるWST-1を10μl/ウェルで添加し、37℃で2〜4時間反応させた。その後、440nmにおける吸光度を測定した。
【0065】
(4)リポポリサッカライド(LPS)刺激によるサイトカイン産生能の測定
プラスチックディッシュへの付着性により選抜し回収した上記細胞をプラスチックディッシュへ106細胞/60mmディッシュで播種した。培地を10μg/mlのLPSを添加した培地(約5ml)に交換し、炭酸ガス培養器に戻した。約30時間後に培養上清を回収し、ミリポアフィルター(ポアサイズ0.45μm)で濾過したのち、少量ずつ分注し、-80℃にて保管した。ラットサイトカイン測定用ELISAキット(Biosource社)を用いて、培養上清中の各種サイトカイン濃度を定量した。
【0066】
[実施例2] ウシ肝臓からのクッパー細胞の製造
上記ラットのクッパー細胞の場合と同様の製造方法にて、子ウシの肝臓より肝実質細胞を分離し、5x106細胞を組織培養フラスコ(底面積75cm2)へ播種し、初代培養した。この初代培養において、肝実質細胞は1週間目〜10日目で実質的に存在しなくなり、8日目〜2週間目において、繊維芽細胞様細胞の層が形成され、その層の上に、球形のマクロファージ様細胞が活発に増殖した(図8)。即ち、初代培養開始後、8日目〜2週間目に、組織培養フラスコにおいて、線維芽細胞様細胞とマクロファージ様細胞からなる混合培養系が形成された。
【0067】
上記ラットの場合と同様の手法で、プラスチックディッシュ付着性の細胞を選抜し回収した(図9)。回収した細胞は、マクロファージに極めて類似した形態を示し、ほぼ全ての細胞が、抗CD68マウスモノクローナル抗体(DAKO社製)、抗CD172aマウスモノクローナル抗体(VMRD社製)または抗Iba-1ウサギポリクローナル抗体(和光純薬製)により強く免疫染色されたが、抗サイトケラチン18(CK18)マウスモノクローナル抗体(ミリポア社製)、抗サイトケラチン19(CK19)マウスモノクローナル抗体(Progen社製)および抗平滑筋アクチン(SMA)マウスモノクローナル抗体(Progen社製)では免疫染色されなかった(図10)。以上の結果、これらの細胞集団中には、サイトケラチンや平滑筋アクチンに陽性の細胞はほとんど見出せなかったことから、回収した細胞には、肝実質細胞や間葉系細胞など他種細胞の混入は極めて少ないと判断された。
【0068】
さらに、上記ラットの場合と同様に、多核体形成能(図10)、FITC蛍光色素標識ラテックスビーズの貪食能および(図11)、組換え型サイトカイン(rGM-CSF)に対する増殖応答能(図12)が認められた。また、リポポリサッカライド刺激による炎症性あるいは抗炎症性サイトカイン産生能(図13)も認められた。
【0069】
底面積75cm2の組織培養フラスコ1個あたり、1回の回収で約1x106個(全培養期間に得られる細胞総数は約1x107個)のクッパー細胞が回収された(図9)。回収したクッパー細胞の純度は、上記ラットの場合と同様な免疫染色法により、98%以上であることが確認された。
【0070】
上記手法により回収したクッパー細胞を約3x106個/mlの密度で細胞凍結保存液(セルバンカー1、十慈フィールド株式会社)に懸濁したのち、凍結用バイアルに1mlずつ分注し、−80℃フリーザー内で凍結した後、液体窒素中に移して凍結保存した(約2年間)。バイアルを37℃の温水に浸して急速に解凍し、直ちに培養液(15ml)を加えた。細胞懸濁液の一部をとり、等量のトリパンブルー染色液(0.5%)と混合した後、血球計算盤を用いて生細胞(トリパンブルーに染色されない)と死細胞(青染される)を計数したところ、生細胞の割合は84%、またバイアルあたりに凍結保存された細胞の約75%が生細胞として回収できた。
【0071】
以上の結果から、ラットの場合と同様に、子ウシ肝実質細胞の初代培養系からもクッパー細胞を簡便かつ効率的に分離でき、本手法が、広く哺乳動物に対して適用できることが示された。
【0072】
なお、本実施例における、免疫染色、FITC蛍光色素標識ラテックスビーズの貪食能、組換え型サイトカイン(rGM-CSF)に対する増殖応答能、およびリポポリサッカライド刺激による炎症性サイトカイン産生能の測定は、実施例1と同様の方法で行った。
【0073】
炎症性あるいは抗炎症性サイトカイン産生能の測定においては、単離したマクロファージ様細胞をリポポリサッカライドで3時間刺激し、定量リアルタイムPCRにより各種遺伝子の発現を測定した。
【0074】
[実施例3] マウス肝細胞の初代培養とクッパー細胞の不死化
上記ラットと同様の手法により、C57BL/6マウス(オスで7週齢)から肝実質細胞分画を得て、組織培養フラスコ(底面積25cm2)に播種した。上記ラットと同様の培地を使用した。この初代培養において、肝実質細胞は5日目〜7日目で実質的に存在しなくなり、7日目〜14日目において、繊維芽細胞様細胞の層が形成され、その層の上に、球形のマクロファージ様細胞が活発に増殖した(図14)。
【0075】
公知文献(非特許文献7、非特許文献8)に記載された細胞不死化方法と同様にして、培養11日後から3日間連続して、ヒト癌遺伝子c-mycおよびネオマイシン耐性遺伝子を含むレトロウイルスベクターを感染させた(図15A)。感染後は通常の培地に戻し、組織培養フラスコ(底面積25cm2)を用いて培養を継続した。感染5〜6日後に組織培養フラスコを振とうし、クッパー細胞を浮遊させた後、プラスチックディッシュへ付着させ、クッパー細胞以外の細胞をPBSで洗浄した(図15B)。抗生物質(ネオマイシン)を加えた培地で培養を続け、ヒト癌遺伝子c-myc遺伝子が導入された細胞のみを選択的に増殖させ(図16)、クローニング操作を経て、不死化したマウスのクッパー細胞株を得た。
【0076】
このようにして樹立したマウスの不死化クッパー細胞株では、全ての細胞がマクロファージ特異的モノクローナル抗体(Mac-1、F4/80、KT022)で強く染色された(図17)。また、ほとんどの細胞が単核のまま増殖し、ごくまれに2〜4個の核からなる細胞が認められる程度であった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
上記した通り、本発明によれば、哺乳動物の肝臓から大量の高純度クッパー細胞を効率的に製造することが可能となる。クッパー細胞は、肝機能障害、肝炎、肝硬変などの誘発や発症と密接に関連しており、肝臓病態の解明やその治療薬の開発などの重要な標的となっている。また、本発明の方法により製造されたクッパー細胞は、薬物などを保持させ、その肝臓移行能を利用して、肝臓に所望の薬物を送達させるDDS製剤のキャリアーとして利用することも可能である。従って、本発明は、クッパー細胞の生物学的特性の解明などを目的とした研究ツールとしての利用のみならず、医療分野への利用に大きく貢献し得るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の肝臓に由来し、少なくとも肝実質細胞とクッパー細胞とを含む細胞集団を初代培養することを特徴とする、クッパー細胞の増殖方法。
【請求項2】
細胞集団が肝実質細胞画分である、請求項1に記載の増殖方法。
【請求項3】
肝実質細胞が実質的に存在しなくなった後も初代培養を継続する、請求項1または2のいずれかに記載の増殖方法。
【請求項4】
5日以上、初代培養を行う、請求項1から3のいずれかに記載の増殖方法。
【請求項5】
クッパー細胞の増殖が停止するまでの任意の期間初代培養を行う、請求項1から4のいずれかに記載の増殖方法。
【請求項6】
初代培養を行っている培養器を振とうし、振とうにより培養液中に浮遊してくるクッパー細胞を回収し、回収したクッパー細胞からプラスチック容器に付着性のクッパー細胞を選抜し回収した場合において、選抜したクッパー細胞の純度が90%以上になる期間、初代培養を行う、請求項1から5のいずれかに記載の増殖方法。
【請求項7】
被検化合物がクッパー細胞の増殖に影響を与えるか否かを評価する方法であって、
(a)培養液中に被検化合物が存在する条件下で、請求項1から6のいずれかに記載の増殖方法を実施する工程、および
(b)クッパー細胞の増殖を検出する工程、を含む方法。
【請求項8】
クッパー細胞の製造方法であって、
(a)請求項1から6のいずれかに記載の増殖方法を実施する工程、および
(b)増殖したクッパー細胞を回収する工程、を含む方法。
【請求項9】
クッパー細胞の製造方法であって、初代培養を行っている培養器を振とうし、振とうにより培養液中に浮遊してくるクッパー細胞を回収することにより、工程(b)におけるクッパー細胞の回収を行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
クッパー細胞の製造方法であって、さらに、回収したクッパー細胞からプラスチック容器に付着性の細胞を選抜し回収する工程を含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
クッパー細胞の製造方法であって、クッパー細胞が増殖した後にクッパー細胞の回収を行う、請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
クッパー細胞の製造方法であって、初代培養開始後5日目以降にクッパー細胞の回収を行う、請求項8から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
クッパー細胞の製造方法であって、クッパー細胞が増殖した後クッパー細胞の増殖が停止するまでの間またはクッパー細胞の増殖が停止した後にクッパー細胞の回収を行う、請求項8から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
クッパー細胞の製造方法であって、初代培養開始後5日目から20日目の間に、クッパー細胞の回収を行う、請求項8から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
不死化されたクッパー細胞の製造方法であって、
(a)請求項8から14のいずれかに記載の方法によりクッパー細胞を製造する工程、および
(b)製造されたクッパー細胞に対して、不死化処理を行う工程、を含む方法。
【請求項16】
被検化合物がクッパー細胞の生物学的活性に影響を与えるか否かを評価する方法であって、
(a)請求項8から15のいずれかに記載の方法によりクッパー細胞を製造する工程、
(b)製造されたクッパー細胞に被検化合物を接触させる工程、および
(c)クッパー細胞の生物学的活性を検出する工程、を含む方法。
【請求項17】
肝臓に所望の薬物を送達させるためのDDS製剤の製造方法であって、
(a)請求項8から15のいずれかに記載の方法により、DDS製剤のキャリアーとしてのクッパー細胞を製造する工程、および
(b)製造されたクッパー細胞に、肝臓に送達させたい所望の薬物を保持させる工程、を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−97934(P2011−97934A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228639(P2010−228639)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、農林水産省、食品素材のナノスケール加工基盤技術の開発と生体影響評価委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501167644)独立行政法人農業生物資源研究所 (200)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】