説明

クニッツドメインライブラリー

ライブラリー、ベクター、ファージ粒子、宿主細胞、及びクニッツドメインの提示方法が開示される。ライブラリーは、少なくとも2つの相互作用ループで互いに変化するクニッツドメインを含むことができる。多様なクニッツドメインが低原子価でファージ上に提示され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年1月7日出願のU.S.S.N.60/438,491号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は本明細書にその全体が援用される。
【背景技術】
【0002】
ファージディスプレイを用いて、特定の標的と相互作用するタンパク質リガンドを同定することができる。この技術は、候補タンパク質リガンドを、それをコードする核酸と連結させるための媒体としてバクテリオファージ粒子を使用する。コード核酸はバクテリオファージ内にパーケージングされ、コードされたタンパク質は通常ファージ表面上にある。ファージディスプレイは、例えばLadnerら、米国特許第5,223,409号;Smith(1985)Science 228:1315−1317;WO92/18619;WO91/17271;WO92/20791;WO92/15679;WO93/01288;WO92/01047;WO92/09690;WO90/02809;de Haardら(1999)J.Biol.Chem 274:18218−30;Hoogenboomら(1998)Immunotechnology 4:1−20;及びHoogenboomら(2000)Immunol Today 2:371−8に記載されている。他のタンパク質評価法、例えばタンパク質アレイも有用なリガンドを同定するために使用することができる。
【0003】
有用なリガンドを同定するための鋳型としてさまざまな足場を使用することができる。有用な足場には、安定な足場構造に寄与するアミノ酸位置、及び標的と相互作用する結合部位を生ずるために多様であり得る他の位置を含めることができる。
【発明の開示】
【0004】
概要
ライブラリー、ベクター、ファージ粒子、宿主細胞、及びクニッツドメインの提示方法が開示される。1つの例示的なライブラリーは、ファージ粒子、及び多様なクニッツドメインを有する提示タンパク質を産生するのに十分なファージ遺伝子を含むファージ粒子を含むファージライブラリーである。クニッツドメインは、少なくとも2つの相互作用ループにおいて、ライブラリーの他のメンバーに対して異なっていることができる。1つの態様では、多様なクニッツドメインは、低原子価で繊維状ファージ上に提示されることができる。1つの態様では、小外被タンパク質の機能ドメインに融合した提示タンパク質をコードする配列、及びやはり機能ドメインを含む対タンパク質を生ずる配列を含むファージ核酸によって低原子価が提供される。
【0005】
1つの側面では、本発明は、複数の繊維状ファージ粒子を含むライブラリーを特徴とする。複数のファージ粒子のそれぞれは、(i) クニッツドメインを含む提示タンパク質、(ii) (a)場合により感染性ファージ粒子を生ずるのに十分なファージ遺伝子と(b)提示タンパク質をコードする配列とを含む核酸、を含む。クニッツドメインは、2つの相互作用ループのそれぞれに少なくとも1つの多様なアミノ酸位置を含む。それぞれのループ内の位置は、複数の粒子間で多様である。ファージ粒子あたりのクニッツドメインの平均コピー数は2.0未満である。
【0006】
クニッツドメインは、不変のアミノ酸位置において、ヒトクニッツドメイン(例えばLACI−K1)と、少なくとも70、75、80、85、90、95、97、98、99、又は100%同一であり得る。1つの態様では、1〜15、例えば5〜12のアミノ酸位置が複数の粒子間で多様である。例えば、少なくとも、ヒトLACI−K1のアミノ酸位置16、17、18、19、34、及び39に対応するアミノ酸位置が複数の粒子間で多様である。他の例では、少なくとも、ヒトLACI−K1のアミノ酸位置11、13、15、16、17、18、19、34、及び39に対応するアミノ酸位置が複数の粒子間で多様である。更に他の例では、ヒトLACI−K1のアミノ酸位置11、13、15、16、17、18、19、32、34、39、40、及び46に対応する少なくとも6つ、7つ又は8つのアミノ酸位置が複数の粒子間で多様である。ヒトLACI−K1のアミノ酸位置11、13、15、16、17、18、19、34、39、及び40に対応するアミノ酸位置のみ、又は16、17、18、19、34、及び39のみ、又は11、13、15、16、17、18、19、34、及び39のみ、又は他の組み合わせが、複数の粒子間で多様であり得る。
【0007】
複数の中のそれぞれのクニッツドメインは、少なくとも75、80、85、90、95、97、98、99、又は100%含むことができ、複数の中のクニッツドメインはいくつか(例えば50、60、80、又は90%)又は全ての多様な位置で、クニッツの保存された残基又はクニッツの高度に保存された残基を含むことができる。複数の中のそれぞれのクニッツドメインは、少なくとも75、80、85、90、95、97、98、99、又は100%含むことができ、複数の中のクニッツドメインはいくつか(例えば50、60、80、又は90%)又は全ての不変位置で、クニッツの保存された残基又はクニッツの高度に保存された残基を含むことができる。1つの態様では、位置32及び46のアミノ酸は不変である。
【0008】
変化の程度は、さまざまな可変位置で異なっていてよい。例えば、アミノ酸位置40に対応するアミノ酸位置はGとAのあいだで変化することができる。位置40が変化しない場合、例えばG又はAに拘束することができる。他の多様な位置は、全てのアミノ酸の中で、システイン以外の全てのアミノ酸の中で、C及びPを除く全てのアミノ酸の中で、C、P、及びGを除くアミノ酸の中で、疎水性アミノ酸、脂肪族アミノ酸、親水性アミノ酸、及び荷電アミノ酸の中で、さまざまに変化することができる。
【0009】
1つの態様では、提示タンパク質は、クニッツドメインに融合した小外被タンパク質の機能ドメインを含み、ファージ遺伝子は、(i’)少なくとも5アミノ酸の非ウイルスアミノ酸配列に融合していないか、又は(ii’)可変アミノ酸配列に融合していない、小外被タンパク質をコードする遺伝子を含む。例えば、ファージ遺伝子は、バクテリオファージの内在性小外被タンパク質をコードする遺伝子の野生型コピーを含むことができる。一般に、ファージ遺伝子は野生型コピー又はその機能性変異体であり得る。
【0010】
先に特徴付けした複数のファージ粒子に加えて、例えば、核酸成分を欠失した不活性粒子を含む他のファージ粒子が存在していてもよい。
他の側面では、本発明は、複数のファージ粒子を含むライブラリーを特徴とする。複数の中のそれぞれのファージ粒子は、(i) クニッツドメイン及び少なくとも遺伝子IIIファージ外被タンパク質の一部を含む提示タンパク質、(ii) 機能性遺伝子IIIファージ外被タンパク質、並びに(iii) (a)場合により、感染性ファージ粒子を産生するのに十分なファージ遺伝子、及び(b)提示タンパク質をコードする配列を含む核酸、を含む。クニッツドメインは、X以外の位置で、MHSFCAFKADX11GX13CX1516171819RFFFNIFTRQCEEFX34YGGCX3940NQNRFESLEECKKMCTRDGA(配列番号10)と少なくとも50、60、70、80、85、87、90、92、94、95、96、97、98、100%同一の配列を含むことができる。例えば、
11は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
13は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
15は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
16は:A、G、E、D、H、Tのうちの1つであり;
17は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
18は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
19は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり、
34は:A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
39は:A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;そして
40は:G、Aのうちの1つである。
【0011】
11、X13、X15、X16、X17、X18、X19、X34、X39、及びX40のうちの少なくとも2つは、複数の粒子間で変化することができる。少なくとも2つの可変位置は、典型的には、クニッツドメインの第1及び第2相互作用ループ内にあり、両ループ内に変化が存在し得る。X位置が変化しない場合、それぞれの位置に関し、例えば、上で列挙したアミノ酸のうちの1つに固定することができる。X位置が変化する場合、上で列挙したアミノ酸位置のあいだで、又は他の可能な組み合わせのあいだで変化することができる。
【0012】
1つの態様では、提示タンパク質は遺伝子III外被タンパク質スタンプを含む。ファージ遺伝子は野生型遺伝子III外被タンパク質をコードする遺伝子を含む。
1つの態様では、ライブラリーは、少なくとも10、10、1010、若しくは1011の異なるクニッツドメイン及び/又は1015、1014、1013、1012、1011、若しくは1010未満の異なるクニッツドメインの理論的多様性を有する。1つの態様では、理論的多様性は10〜1011又は10〜1015の異なるクニッツドメインである。
【0013】
1つの態様では、少なくともアミノ酸位置15、16、17、18、34、及び39は多様である。他の態様では、少なくともアミノ酸位置11、13、15、16、17、18、19、34、39、及び40は多様である。他の態様では、15、16、17、18、34、及び39のみ、又は11、13、15、16、17、18、19、34、39、及び40のみ、又は13、15、16、17、18、19、34、39、及び40のみのような位置のみが多様である。
【0014】
本明細書に記載のライブラリーは、標的と相互作用するクニッツドメインをコードする核酸を提供する方法に用いることができる。前記方法は、例えば、ライブラリーを提供すること;ライブラリー由来のファージ粒子を標的と接触させること;及び場合により、標的と相互作用する粒子から核酸を回収することを含む。例えば、標的は固定されており、回収工程は標的と相互作用する粒子を標的と相互作用しない粒子から分離することを含む。例示的標的にはプロテアーゼが含まれる。
【0015】
他の側面では、本発明は、オープンリーディングフレーム及びオープンリーディングフレームに機能可能に連結したプロモーターを含む核酸を特徴とする。オープンリーディングフレームは:(i)クニッツドメインを含有する第1要素;及び(ii)ファージ外被タンパク質の部分を含有する第2要素を含む提示タンパク質をコードする。ここで、前記部分は提示タンパク質をファージ粒子に物理的に結合させるのに十分である。
【0016】
核酸は、ヘルパーファージ非存在下で感染性ファージ粒子を産生するのに十分な遺伝情報を含有するベクターであることができる。例えば、核酸は、感染性ファージ粒子を産生するのに十分なファージ遺伝子のセットを含むことができる。例えば核酸はファージベクターである。
【0017】
1つの態様では、プロモーターは調節可能プロモーターであり、例えば誘導性プロモーター、例えばlacプロモーターである。
1つの態様では、外被タンパク質は小外被タンパク質であり、例えば遺伝子IIIタンパク質である。外被タンパク質の部分は、ファージ粒子に物理的に付着するアンカードメインのような部分を含むことができる。好ましい態様では、外被タンパク質の部分は遺伝子IIIアンカードメイン、又は「スタンプ」である。他の態様では、外被タンパク質は大外被タンパク質であり、例えば遺伝子VIIIタンパク質である。好ましい態様では、第2要素は全長の成熟遺伝子VIII外被タンパク質を含有する。1つの態様では、(ii)の外被タンパク質部分は:遺伝子IVタンパク質、遺伝子VIIタンパク質、遺伝子IXタンパク質のうちの1つに由来する。
【0018】
1つの態様では、クニッツドメインは、少なくとも70、75、80、85、90、又は95%のアミノ酸位置(又は全ての位置)で、クニッツの保存された残基又はクニッツの高度に保存された残基を有する。
【0019】
1つの態様では、クニッツドメインは、天然タンパク質、例えば本明細書に記載のクニッツドメインを含むタンパク質のクニッツドメインと少なくとも30%同一である。クニッツドメインは、天然タンパク質、例えば哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトのタンパク質、例えばLAC−Iのクニッツドメインと少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は98%同一であることができる。
【0020】
例えば、少なくとも2つのシステインがクニッツドメインに存在し、システイン間にジスルフィドを形成することができる。例えば、4つのシステインが存在する場合は2つのジスルフィドを形成する。典型的には、6つのシステインが存在し、3つのジスルフィドをシステイン間に形成する。
【0021】
本発明の1つの側面では、クニッツドメインは以下の配列:X−X−X−X−C−X−X−X−X−X9a−X10−X11−X12−X13−C14−X15−X16−X17−X18−X19−X20−X21−X22−X23−X24−X25−X26−X27−X28−X29−X29a−X29b−X29c−C30−X31−X32−X33−X34−X35−X36−X37−C38−X39−X40−X41−X42−X42a−X42b−X43−X44−X45−X46−X47−X48−X49−X50−C51−X52−X53−X54−C55−X56−X57−X58(配列番号2)を含む。C、C14、C30、C38、C51、及びC55のうちの少なくとも4つ又は6つが独立してシステインである。例えば6つ全てがシステインである。4つがシステインである場合、C、C14、C30、C38、C51、及びC55のうちの残りはシステイン以外のアミノ酸であるか又は存在しなくてよい。
【0022】
〜Xのそれぞれはいずれかのアミノ酸であるか、又は存在しない。X〜X13のそれぞれはいずれかのアミノ酸であるが、好ましくはCysではない。X9aはいずれかのアミノ酸であるが、好ましくはCysではなく、又は存在しない。X15〜X29bはいずれかのアミノ酸であるが、好ましくはCysではない。X29a、X29b、X29cはそれぞれいずれかのアミノ酸であるか、又は存在しない。X31〜X37はそれぞれいずれかのアミノ酸であるが、好ましくはCysではない。X39〜X50はそれぞれいずれかのアミノ酸であるが、好ましくはCysではない。X52〜X54はそれぞれいずれかのアミノ酸であるが、好ましくはCysではない。X56〜X58はそれぞれいずれかのアミノ酸であるか、又は存在しない。
【0023】
いくつかの態様では、クニッツドメインのシステイン間のアミノ酸残基数は、約5アミノ酸以下まで、例えば5、4、3、2、又は1アミノ酸まで増加又は減少する。例えば、X〜X13、X15〜X29c、X31〜X37、X39〜X50、及びX52〜X54で、又はそのあいだに残基を挿入又は除去してよい。
【0024】
1つの態様では、C14又はC30のいずれかがシステインでないときはいずれもシステインではない。1つの態様では、C14及びX9aが存在しないときはX12はGであり得る。1つの態様では、X37はGである。1つの態様では、X33はF又はYである。1つの態様では、X45はF又はYである。例えば少なくとも4つのシステインが存在し、CとC55、C14とC38、及びC30とC51のうちの2つのあいだにCys−Cysブリッジを形成することができる。典型的には、6つのシステインが存在する;CとC55、C14とC38、及びC30とC51のあいだにCys−Cysブリッジを形成することができる。
【0025】
ファージ遺伝子のセットは、クニッツドメインに連結しているコピーに加えて(第2要素にコードされている)、(ii)のファージ外被タンパク質をコードする遺伝子を含むことができる。例えば、遺伝子のセットは、1コピーの全長外被タンパク質を含むことができる。1つの態様では、外被タンパク質の一部を(ii)にコードする核酸は、関連配列との組換えを妨げるために改変されているヌクレオチド、例えば1コピーの前記遺伝子を含有する。
【0026】
1つの態様では、セット中のそれぞれのファージ遺伝子は、それぞれの遺伝子に内在しているプロモーターに機能可能に連結している。
1つの態様において、C、C14、C30、C38、C51、及びC55が存在し、X9a、X29a、X29b、X29c、X42a、X42bは存在しない。
【0027】
他の態様において、X12はGであり、X33はFであり、そしてX37はGである。
1つの態様において、クニッツドメインは1以上の以下の特性を含むことができる:X21はF、Y、及びWのうちの1つであり;X22はF及びYのうちの1つである。X23はF及びYのうちの1つであり;X35はY及びWのうちの1つであり;X36はG及びSのうちの1つである。X40はG及びAのうちの1つである。X43はG及びNのうちの1つである。X45はF及びYのうちの1つである。
【0028】
1つの態様において、クニッツドメインは1以上の以下の特性を含むことができる:XはMであり;XはHであり;XはSであり;XはFであり;XはAであり;XはFであり;XはKであり;XはAであり;X10はDであり;X20はRであり;X21、X22、X23はそれぞれFであり;X24はNであり;X25はIであり;X26はFであり;X27はTであり;X28はRであり;X29はQであり;X31はEであり;X35はYであり;X36はGであり;X41はNであり;X42はQであり;X43はNであり;X44はRであり;X45はFであり;X47はSであり;X48はLであり;X49及びX50はそれぞれEであり;X52及びX53はそれぞれKであり;X54はMであり;X56はTであり;X57はRであり;そしてX58はDである。
【0029】
1つの態様において、X15、X17、X18、X40、X46はそれぞれプロリン以外のアミノ酸であり;X16はA、G、E、D、H、Tのうちの1つである。
1つの態様において、X32はEであり;X34はIであり;X39はEであり;X40はGであり;そしてX46はEである。
【0030】
1つの態様において、核酸は選択可能マーカーマーカーを更に含む(例えば抗生物質耐性遺伝子、amp遺伝子)。
他の側面では、本発明は、複数の核酸を含むライブラリーを特徴とし、複数のうちのそれぞれの核酸は本明細書に記載の1以上の特徴を含むことができる。1つの態様では、クニッツドメイン配列は複数の核酸間で変化している。
【0031】
前記複数の核酸は、少なくとも10、10、1010、又は1011の異なるクニッツドメイン及び/又は1015、1014、1013、1012、1011、又は1010未満の異なるクニッツドメインをコードする核酸を含有することができる。1つの態様では、前記複数の核酸は、少なくとも10〜1011の異なるクニッツドメインをコードする核酸を含有する。前記複数の核酸は、少なくとも10、10、1010、又は1011の異なるクニッツドメイン及び/又は1015、1014、1013、1012、1011、又は1010未満の異なるクニッツドメインの理論的多様性によって特徴づけることができる。1つの態様では、理論的多様性は10〜1011異なるクニッツドメインである。
【0032】
1つの態様では、本発明は、複数の核酸を含有するライブラリーを特徴とし、それぞれの核酸ではC、C14、C30、C38、C51、及びC55が存在し、X9a、X29a、X29b、X29c、X42a、X42b、が存在しない。そして、クニッツドメイン配列は、(配列番号2の)X32、X34、X39、X40、及びX46に対応する位置の少なくとも2つが複数のメンバー間で変化している。
【0033】
1つの態様では、クニッツドメイン配列は、(配列番号2の)X11、X12、X15、X16、X17、X18、及びX19に対応する1以上の位置で不変である。他の態様では、クニッツドメイン配列は、配列番号2のX11、X12、X15、X16、X17、X18、及びX19に対応する1以上の位置が複数のメンバー間で変化している。1つの態様では、クニッツドメイン配列は、 配列番号2のX32、X34、X39、X40及びX46に対応する1以上の位置で不変である。
【0034】
1つの態様では、提示タンパク質は複数のクニッツドメイン、例えば、複数の多様なクニッツドメイン、又は1つの多様なクニッツドメイン及び少なくとも他の多様な配列を含む。
【0035】
他の側面では、本発明は核酸を含む宿主細胞を特徴とし、前記核酸は本明細書に記載の特徴を1以上含有する。宿主細胞は細菌細胞、例えば大腸菌細胞であり得る。
他の態様では、本発明は、複数の宿主細胞を含むライブラリーを特徴とし、複数のうちのそれぞれの宿主細胞は、本明細書に記載の特徴の1以上を有する核酸を含む。1つの態様では、クニッツドメイン配列は複数の核酸間で変化している。
【0036】
1つの側面では、本発明は核酸を含有するファージ粒子を特徴とし、前記核酸は本明細書に記載の特徴の1以上を含むことができる。1つの態様では、粒子は表面に物理的に付着したクニッツドメインを含有する。
【0037】
他の側面では、本発明は、複数のファージ粒子を含有するライブラリーを特徴とし、複数のうちのそれぞれのファージ粒子は、本明細書に記載の特徴の1以上を含むことができる核酸を含む。1つの態様では、クニッツドメイン配列は複数の核酸間で異なっている。
【0038】
1つの態様では、複数のファージ粒子は少なくとも10粒子を含有し、それぞれは異なる提示タンパク質をコードする核酸を含む。好ましくは、複数のファージ粒子は、それぞれが異なる提示タンパク質をコードする核酸を含む少なくとも10粒子を含む。より好ましくは、複数のファージ粒子は、それぞれが異なる提示タンパク質をコードする核酸を含む少なくとも10粒子を含む。この多様性の実測値はライブラリーの理論的多様性より小さいものであり得る。
【0039】
1つの態様では、複数のファージ粒子のうちの少なくとも20%、40%、60%、又は80%のファージ粒子が、ファージ粒子に物理的に付着した、それぞれのファージ粒子の提示タンパク質を含む。1つの態様では、提示タンパク質の平均コピー数は3未満、例えば2.5、2.0、1.7、1.5、又は1.2未満である。しかしながら、提示タンパク質を含まないが適当な核酸要素を含む粒子が複数の中に含まれる場合は、提示タンパク質の平均コピー数は2、1.5、1.2、1.1、1.0、又は0.9未満であり得る。例えば、平均コピー数は、2.4〜0.5、又は1.8〜0.5、又は1.4〜0.5である。
【0040】
ある場合には、提示タンパク質を含まない粒子を除外した、複数のファージ粒子を評価することは有用であり得る。したがって、平均コピー数は1未満ではあり得ない。ある場合には、提示タンパク質の平均コピー数は3未満、例えば2.5、2.0、1.7、1.5、又は1.2未満、例えば2.5〜1.0又は1.5〜1.0である。
【0041】
ファージ粒子のライブラリーは、液体組成物、例えば水性組成物中に調製することができる。組成物は、例えばクニッツドメイン内でのジスルフィド形成に好都合な酸化環境を提供することができる。組成物は、液体操作(例えば10μl、5μl、又はより少量のピペッティング)が可能であるように、非粘性であるか又は十分粘度が低い。クニッツドメインを無作為に選択する場合、ライブラリーは、折りたたまれているドメインの少なくとも30、40、50、70、75、80、85、90、又は95%を含み得る。折りたたまれたドメインの画分を決定するための1つの方法は、クニッツドメインをエピトープタグを有する細胞内で発現させ、細胞の粗溶解物の可溶性画分についてウエスタンブロットを行うことである。可溶性画分中のエピトープタグの検出可能レベル(適当な分子量で)は、折りたたまれたクニッツドメインが産生されたことを示している。例えばDavidsonら(1994)Proc Natl Acad Sci USA、91(6):2146−50を参照されたい。
【0042】
他の側面では、本発明は:(i) 本明細書に記載の特徴の1以上を含むライブラリーを提供すること、(ii) 提示タンパク質を用いて標的に結合しているファージ粒子のセットを選択することを含む方法を特徴とする。前記方法を用いて、複数のファージ粒子から、標的結合タンパク質をコードするファージを選択することができる。
【0043】
さまざまな態様において、少なくとも10%、20%、又は40%、より好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも80%のファージ粒子が提示タンパク質を表面に提示する。
【0044】
選択工程は:(a)ファージ粒子、標的、及び支持体を含有する混合物を形成すること、及び(b)ファージ固定標的複合体から標的に結合しないファージを分離することを含むことができる。
【0045】
1つの態様では、標的はプロテアーゼ、例えば活性化プロテアーゼ又は不活性プロテアーゼである。不活性プロテアーゼには、部分的に又は完全にプロテアーゼ活性が低減するアミノ酸修飾(例えば置換、挿入、又は欠失)を有するプロテアーゼが含まれる。
【0046】
1つの側面において、本発明は:(a)複数の核酸を提供すること、ここで前記複数の核酸は本明細書に記載の特徴を1以上含む;(b)複数のうちの少なくともいくつかの核酸を宿主細胞へ導入すること;及び(c)少なくともいくつかの粒子が導入した核酸のそれぞれによってコードされる提示タンパク質を組み込む条件下で、導入した核酸をパッケージするファージ粒子を組み立てること、を含む方法を特徴とする。前記方法を用いてファージライブラリーを提供することができる。
【0047】
核酸が調節可能プロモーターを含有する態様では、前記方法は、調節可能プロモーターが抑制される条件下でライブラリーを増殖させることを更に含むことができる。
1つの態様では、ヘルパーファージを宿主細胞へ導入しない。
【0048】
他の側面では、本発明は:(i)ファージライブラリーを提供すること、ここで前記ライブラリーは本明細書に記載の特徴を1以上含むことができる;(ii)標的に結合している提示タンパク質を提示するファージ粒子を選択すること;及び(iii)選択したファージ粒子の核酸を回収し、それにより標的に結合している提示タンパク質を同定すること、を含む方法を特徴とする。1つの態様では、前記方法は、同定された提示タンパク質のクニッツドメインを含む結合ポリペプチドを発現させることを更に含む。前記方法は、結合ポリペプチドを精製すること、結合ポリペプチドを医薬組成物として製剤化すること、及び結合ポリペプチドを(例えば医薬組成物として)被験者、例えば哺乳動物、例えばヒトへ投与することを更に含むことができる。前記タンパク質を用いて、標的を結合させた提示タンパク質を複数の提示タンパク質から同定することができる。同定したタンパク質についての情報を、例えばデジタル形式で伝達するか、又は受け取ることができる。レシピエントは前記情報に基づいてタンパク質を産生することができる。
【0049】
他の側面では、本発明は:(a)感染性ファージ粒子を産生するのに十分なファージ遺伝子のセット、(b)オープンリーディングフレーム、及び(c)オープンリーディングフレームに機能的に連結したプロモーター、を含む核酸を特徴とする。オープンリーディングフレームは:(i)クニッツドメインを含有する第1要素;及び(ii)提示タンパク質を物理的にファージ粒子と結合させることができる1以上のアミノ酸を含む第2要素、を含む提示タンパク質をコードする。第2要素は、例えば、ファージ粒子上のシステインとジスルフィドを形成できるシステイン、非共有結合的にファージ粒子と相互作用するアミノ酸配列(例えばfos−jun相互作用のためのもの)、又はファージ外被タンパク質の全部若しくは一部であり得る。前記核酸は本明細書に記載のように使用することができる。
【0050】
また、本発明は、クニッツドメイン含有タンパク質、例えば、本明細書に記載の方法によって同定されるクニッツドメインを含むタンパク質を特徴とする。例えば、前記タンパク質は、長さ200、100、又は70アミノ酸未満であり得る。1つのクニッツドメイン又は複数のクニッツドメインを含むことができる。タンパク質のクニッツドメインは:X以外の位置で(配列番号10)、MHSFCAFKADX11GX13CX1516171819RFFFNIFTRQCEEFX34YGGCX3940NQNRFESLEECKKMCTRDGAを含むことができるが、LACI−K1の配列とは少なくとも1つ、例えば位置11、13、15、16、17、18、19、34、及び39のうちの少なくとも5つ、6つ、7つ、又は8つのアミノ酸残基によって異なっている。例えば、
11は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
13は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
15は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
16は:A、G、E、D、H、Tのうちの1つであり;
17は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
18は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
19は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
34は:A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
39は:A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;そして
40は:G、Aのうちの1つである。
【0051】
「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合で連結した3つ以上のアミノ酸のポリマーを表す。ポリペプチドは、1つ以上の非天然アミノ酸を含んでいてもよい。典型的には、ポリペプチドは天然アミノ酸のみを含む。「ペプチド」という用語は、長さ3〜32アミノ酸のポリペプチドを表す。
【0052】
「タンパク質」は1以上のタンパク質鎖を含むことができる。したがって、「タンパク質」という用語は、ポリペプチド及びペプチドを包含する。タンパク質又はポリペプチドは、1つ以上の修飾、例えばグリコシル化、アミド化、リン酸化などを含むこともできる。
【0053】
「提示タンパク質」という用語は、それをコードする核酸と物理的に結合した、修飾されていないウイルス外被タンパク質以外のタンパク質を表す。ファージディスプレイの場合、提示タンパク質は、それをコードする核酸をパッケージするファージ粒子と物理的に結合し、また、バクテリオファージとは異種の少なくとも3つのアミノ酸のアミノ酸配列を含む。より典型的には、異種領域は足場ドメイン、例えばクニッツドメインを含む。物理的結合は、例えば1以上の共有結合、例えば1以上のペプチド結合又はジスルフィド結合によって介在され得る。1つの態様では、提示タンパク質は、ファージ外被タンパク質の少なくとも機能ドメインを含み、提示タンパク質がファージ粒子に導入される。
【0054】
「ウイルス粒子」という用語は、宿主細胞において子孫粒子を産生するのに十分な遺伝情報を含むウイルス、及び細胞に入ることはできるが子孫を産生することができないウイルス粒子を包含する。「バクテリオファージ粒子」という用語は、宿主細胞において子孫粒子を産生するのに十分な遺伝情報を含むバクテリオファージ、及び細胞に入ることはできるが子孫を産生することができないファージ粒子を包含する。したがって、「バクテリオファージ粒子」という用語は、ファージミドをパッケージする粒子及び完全なファージゲノムをパッケージする粒子を含む。
【0055】
「ヒトクニッツドメインライブラリー」は、さまざまなクニッツドメイン又はそのようなドメインをコードする核酸を含むライブラリーを意味し、ライブラリー中の不変アミノ酸位置は、特定のヒトクニッツドメインと少なくとも85%同一である。ヒトクニッツドメインライブラリーは、不変アミノ酸位置で、特定のヒトクニッツドメインと少なくとも85、87、90、92、93、94、95、96、97、98、又は100%同一であり得る。
【0056】
「LACI−K1ドメインライブラリー」は、さまざまなクニッツドメイン又はそのようなドメインをコードする核酸を含むライブラリーを意味し、ライブラリー中の不変アミノ酸位置はヒトLACI−K1と少なくとも85%同一である。LACI−K1ドメインライブラリーは、LACI−K1と不変アミノ酸位置で少なくとも85、87、90、92、93、94、95、96、97、98、又は100%同一であり得る。例えば、100%LACI−K1ドメインライブラリーは、ライブラリー中の不変アミノ酸位置がヒトLACI−K1と100%同一のライブラリーを意味する。同様の用語を用いて、他のクニッツドメイン、例えば他のヒトクニッツドメイン、例えば本明細書に記載のドメインと対応関係を有するライブラリーを意味することができる。
【0057】
「発現システム」は、オープンリーディングフレームとプロモーターを含む核酸配列の構造であり、オープンリーディングフレームがプロモーターに機能可能に連結し、翻訳され得る転写物として発現し得る。
【0058】
配列間の相同性又は配列同一性(これらの用語は本明細書において同義的に使用されている)の計算は以下のように行なう。2つの配列間の「%同一性」とは、配列が共有する同一位置数の関数であり、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数、及びそれぞれのギャップの長さを考慮している。2つの配列間の配列の比較及び%同一性の測定は数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。2つのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列間の%同一性は、GCGソフトウェアパッケージ中のギャッププログラムに導入されているNeedleman及びWunschのアルゴリズム((1970)J.Mol.Biol.48:444−453)を用いて測定することができ、Blossum62マトリックス、ギャップウェイト12、ギャップ拡張ペナルティ4、及びフレームシフトギャップペナルティ5を用いる。
【0059】
一般に、2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の%同一性を決定するには、最適な比較のために配列を並べる(例えば、最適なアラインメントのために第1及び第2のアミノ酸配列又は核酸配列の一方又は両方にギャップを導入することができ、比較するために非相同配列を無視することができる)。好ましい態様では、比較するために並べた参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、更により好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である(例えば少なくとも51、55、57又は58アミノ酸)。次に対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置でアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1配列中の位置が、第2配列中の対応する位置と同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドに占有されている場合、分子はその位置で同一である(本明細書において、アミノ酸又は核酸の「同一性」はアミノ酸又は核酸の「相同性」と等価である)。
【0060】
照会配列と参照クニッツドメイン配列(例えばLACI−K1配列)との最適なアラインメントを同定するためにギャッププログラムを用いて、「対応する」アミノ酸位置を同定する。
【0061】
クニッツドメインの「相互作用ループ」とは、LACI−K1のアミノ酸位置11〜19に対応するアミノ酸位置を含む第1相互作用ループ、及びLACI−K1のアミノ酸位置32〜40に対応するアミノ酸位置を含む第2相互作用ループを意味する。
【0062】
本発明の1以上の態様の詳細を添付の図面及び以下の詳細な説明に説明されている。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、詳細な説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。全ての引用特許、特許出願、及び引用文献(公共の配列データベース登録の引用を含む)は、あらゆる目的のためにその全体が援用される。USSN60/438,491号、US−2003−0129659−A1、及び10/656,350号はあらゆる目的のためにその全体が援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
詳細な説明
1つの側面において、本発明はクニッツドメインを提示するファージ粒子を提供する。粒子は、数多くのファージ粒子のライブラリーであり得る。ここで、それぞれのメンバーのクニッツドメインは互いに異なっている。ファージディスプレイライブラリーを用いて、特定の標的、例えば標的プロテアーゼに結合できるクニッツドメインを同定することができる。クニッツドメインは標的プロテアーゼの活性を阻害してもよい。
【0064】
ファージディスプレイライブラリーは、(i)粒子表面に多様な提示タンパク質を含み、そして(ii)提示タンパク質をコードする核酸を含有するファージ粒子の収集物である。提示タンパク質とそれをコードする核酸との物理的結合は、標的結合タンパク質の迅速な単離に便利である。
【0065】
ファージ粒子は所望の原子価で提示タンパク質を提示することができる。例えば、前記粒子は、限られた原子価で、例えば最大の可能なコピー数より小さいコピー数で提示タンパク質を提示することができる。例えば、提示タンパク質が遺伝子IIIタンパク質の少なくとも部分によってファージ粒子に付着している場合、最大の可能なコピー数は約5である。したがって、ファージ粒子上に提示されたクニッツドメインの原子価を例えば粒子あたり5、4、3、又は2コピー未満に制限することができる。
【0066】
ライブラリーでは、原子価の平均又は中央値は、例えば、4、3、2、1.5、1.4、1.25、1.1若しくは1.0以下、又は0.25〜2、0.3〜1.8、0.3〜1.5若しくは0.5〜1.5のあいだであり得る。原子価の低下は高特異的結合体の選択に有利に働く。1価の提示(例えば平均原子価1.4未満)を用いることができる。
【0067】
限られた原子価を達成する1つの方法は、少なくとも小外被タンパク質の機能性部分を含む提示タンパク質を使用する。小外被タンパク質(又はその機能性部分)の他のコピー−対タンパク質−も発現しており、一方、平均して、より少ない提示タンパク質が、小外被タンパク質が最大可能コピー数の所定の粒子に導入されるようにファージ粒子が産生している。例えば、繊維状ファージの遺伝子III外被タンパク質を用いる場合、典型的な最大可能コピー数は約5である。野生型遺伝子III外被タンパク質の発現と同時に起こる、遺伝子III外被タンパク質の少なくともアンカードメインとの融合物としての提示タンパク質の発現は、粒子あたり5、4、3、又は2未満の提示タンパク質を有するファージ粒子を生じ得る。
【0068】
前記提示タンパク質をコードする核酸配列は、他のファージ成分と関連して所望の発現レベルを生ずるプロモーターに機能可能に連結することができる。例えば、調節可能プロモーターを用いて、例えば提示タンパク質とその対の発現比を制御可能にすることができる。
【0069】
理論に拘束されるものではないが、提示タンパク質とその対はファージ粒子への導入に関し競合するかもしれない。提示タンパク質とその対の発現比制御の1つの結果は、提示タンパク質の原子価の制御である。
【0070】
提示タンパク質とその対タンパク質の対応する機能ドメインをコードする配列は異なっていてよい。例えば、対応する機能ドメインが同一アミノ酸配列を有する場合、コドンの選択は、異なるコード配列を生ずるように異なっていてよい。例えば、2つのうちの1つは、提示タンパク質をコードする核酸配列と対タンパク質をコードする核酸配列とのあいだの組換えを妨げるように選択された合成コドンを含むことができる。天然コドンを用いてもよい。シナリオを逆にすることもできる。例えば、提示タンパク質をコードする核酸が合成コドンを使用して外被タンパク質又はその断片をコードしてもよい。例えば、2つの配列は、5〜95、5〜60、又は20〜50%のコドンで異なっていてもよい。
【0071】
例示的クニッツドメイン
本明細書において、「クニッツドメイン」は、少なくとも51アミノ酸を含み、少なくとも2つ、より典型的には3つのジスルフィド結合を含有するポリペプチドドメインである。前記ドメインは、存在する場合は、第1と第6システイン、第2と第4システイン、及び第3と第5システインがジスルフィド結合を形成するように折りたたまれている。例えば、58アミノ酸を有する例示的クニッツドメインでは、位置5と55、14と38、及び30と51のシステイン間でジスルフィドが形成される。
【0072】
2つのジスルフィドが存在する実施において、対応するシステインのサブセット間でジスルフィド結合が形成され得る。それぞれのシステイン間の間隔は、以下の間隔:5〜55、14〜38、及び30〜51の7、5、4、3又は2アミノ酸内であり得る。
【0073】
配列番号2では、ジスルフィド結合は:5〜55、14〜38、及び30〜51のうちの少なくとも2つで以下のように連結する:X−X−X−X−C−X−X−X−X−X9a−X10−X11−X12−X13−C14−X15−X16−X17−X18−X19−X20−X21−X22−X23−X24−X25−X26−X27−X28−X29−X29a−X29b−X29c−C30−X31−X32−X33−X34−X35−X36−X37−C38−X39−X40−X41−X42−X42a−X42b−X43−X44−X45−X46−X47−X48−X49−X50−C51−X52−X53−X54−C55−X56−X57−X58(配列番号2)。
【0074】
ジスルフィドの数は1まで減らすてもよいが、一般には、標準システインのいずれも不対のままでないものとする。したがって、1つのシステインを変更する場合、補償するシステインが好適な位置に加えられるか、又は適合するシステインもシステイン以外に置換される。例えば、スジショウジョウバエ雄付属腺プロテアーゼインヒビターは位置5にシステインが無いが、位置1のすぐ前の位置−1にシステインを有する;おそらくこれはCys55とジスルフィドを形成する。
【0075】
ある態様では、C14及びC30をシステイン以外のアミノ酸に変更することができるが、好ましくは、これらの残基のうち1つが変更される場合、両者とも変更される。C14が存在し、X9aが存在しない場合、X12はGlyであり得る。ある態様では、X37はGlyである。ある態様では、X33はPhe又はTyrであり、X45はPhe又はTyrである。ある態様では、Cys14及びCys38は置換されており、Gly12、(Gly又はSer)37、及びGly36の要求性は下がる。
【0076】
0〜多くの残基がクニッツドメインのいずれかの末端に位置することができる。これらの残基は、例えば1以上のドメイン(例えば他のクニッツドメイン及び非クニッツ提示ドメイン)又は他のアミノ酸配列を構成することができる。
【0077】
天然クニッツドメインは一般に高度に安定なドメインである。クニッツドメインは、クニッツドメインのペプチド結合(「切れやすい結合」)が:1)切断されない、2)非常にゆっくり切断される、又は3)インヒビターの構造が切断されたセグメントの放出又は分離を妨げるため切断されても効果がない、ようにそれぞれのプロテアーゼ標的の活性部位に結合することができる。ジスルフィド結合は、一般に、露出したペプチド結合がたとえ切断されてもタンパク質をともに保持するように作用する。
【0078】
切れやすい結合のアミノ側鎖の残基から、結合から離れる方向に、残基を従来通りP1、P2、P3等と呼ぶ。切れやすい結合に続く残基をP1’、P2’、P3’等と呼ぶ。それぞれのセリンプロテアーゼが、基質又はインヒビターのP1、P2等の側鎖基及び主鎖原子を受け取る部位(いくつかの残基を含む)S1、S2等、並びに基質又はインヒビターのP1’、P2’等の側鎖基及び主鎖原子を受け取る部位S1’、S2’等を有することは一般に受け入れられている。基質に関してプロテアーゼ特異性を与え、プロテアーゼに関してインヒビター特異性を与えるのは、S部位とP側鎖基及び主鎖原子とのあいだの相互作用である。新規アミノ端を有する断片が最初にプロテアーゼから離れるため、多くの設計小分子プロテアーゼインヒビターは、部位S1、S2、S3等を結合させる化合物上に集中している。
【0079】
典型的には、X15又はLACI−K1の位置15に対応するアミノ酸位置はP1(上記)と等価であり、X16又はLACI−K1の位置16に対応するアミノ酸位置はP1’と等価であり、X17又はLACI−K1の位置17に対応するアミノ酸位置P2’と等価であり、X18又はLACI−K1の位置18に対応するアミノ酸位置はP3’と等価であり、そしてX19又はLACI−K1の位置19に対応するアミノ酸位置はP4’と等価である。以下で議論するように、S1、S2、S3、P1’、P2’P3’、及びP4’のうちの1つ以上は変化することができる。
【0080】
例示的ヒトクニッツドメインには、LACIの3つのクニッツドメイン(Wunら(1988)J.Biol.Chem.263(13):6001−6004;Girardら(1989)Nature、338:518−20;Novotnyら(1989)J.Biol.Chem.264(31):18832−18837);Inter−α−トリプシンインヒビターAPPIの2つのクニッツドメイン(アルツハイマーのアミロイド β−タンパク質前駆体インヒビター)(Kidoら(1988)J.Biol.Chem.263(34):18104−18107);コラーゲン由来のクニッツドメイン;及びTFPI−2の3つのクニッツドメイン(Sprecherら(1994)Proc.Natl.Acad.USA、91:3353−3357)が含まれる。
【0081】
LACIは、3つのクニッツドメインを含有するヒト血清リン酸化糖タンパク質である:
MIYTMKKVHA LWASVCLLLN LAPAPLNADS EEDEEHTIIT DTELPPLKLM
HSFCAFKADD GPCKAIMKRF FFNIFTRQCE EFIYGGCEGN QNRFESLEEC
KKMCTRDNAN RIIKTTLQQE KPDFCFLEED PGICRGYITR YFYNNQTKQC
ERFKYGGCLG NMNNFETLEE CKNICEDGPN GFQVDNYGTQ LNAVNNSLTP
QSTKVPSLFE FHGPSWCLTP ADRGLCRANE NRFYYNSVIG KCRPFKYSGC
GGNENNFTSK QECLRACKKG FIQRISKGGL IKTKRKRKKQ RVKIAYEEIF
VKNM (配列番号3)。
【0082】
シグナル配列は、アミノ酸1〜28に位置する。LACI内の3つのクニッツドメインは、LACI−K1(配列番号3の残基50〜107)、LACI−K2(配列番号3の残基121〜178)、及びLACI−K3(配列番号3の213〜270)と称される。LACIのcDNA配列は、Wunら(J.Biol.Chem.1988、263(13):6001−6004)に報告されている。Girardら(Nature、1989、338:518−20)は、3つのクニッツドメインそれぞれのP1残基が改変した突然変異研究について報告している。第VIIa因子が組織因子と複合体形成している場合は、LACI−K1は第VIIa因子を阻害する。LACI−K2は第Xa因子を阻害する。
【0083】
本明細書において、例示的クニッツドメインの残基はLACI−K1(LACIのクニッツドメイン1)を基準にして番号付けしている:
MHSFCAFKAD DGPCKAIMKR FFFNIFTRQC EEFIYGGCEG
NQNRFESLEE CKKMCTRD (配列番号1)。
【0084】
LACI−K1 クニッツドメインの最初のシステイン残基は残基5であり、最後のシステインは残基55である。クニッツドメイン内のアミノ酸位置も、GAPプログラム(上記)によって提供された最適なアラインメントを用いてLACI−K1内のアミノ酸との対応に関して参照し得る。
【0085】
本発明のクニッツドメインは、LACI−K1と少なくとも30、40、50、60、70、80、又は90%同一であり得る。本発明の他のクニッツドメインは、他の天然のクニッツドメイン(例えば本明細書に記載のクニッツドメイン)、特に他のヒトクニッツドメインと相同(例えば、少なくとも30、40、50、60、70、80、又は90%同一)である。
【0086】
多くのクニッツドメインの3次元分子構造が高分解能で知られている。例えばEigenbrotら(1990)Protein Engineering 3:591−598及びHynesら(1990)Biochemistry 29:10018−10022を参照されたい。BPTI クニッツドメインの1つの例示的X線構造モデルが「6PTI」としてBrookhavenタンパク質データバンクに寄託されている。
【0087】
70を越えるクニッツドメイン配列が知られている。例示的クニッツドメインを含有するタンパク質には以下が含まれる。括弧内にSWISS−PROT受託番号を示す:A4 HUMAN(P05067)、A4 MACFA(P53601)、A4 MACMU(P29216)、A4 MOUSE(P12023)、A4 RAT(P08592)、A4 SAISC(Q95241)、AMBP PLEPL(P36992)、APP2 HUMAN(Q06481)、APP2 RAT(P15943)、AXP1 ANTAF(P81547)、AXP2 ANTAF(P81548)、BPT1 BOVIN(P00974)、BPT2 BOVIN(P04815)、CA17 HUMAN(Q02388)、CA36 CHICK(P15989)、CA36 HUMAN(P12111)、CRPT BOOMI(P81162)、ELAC MACEU(O62845)、ELAC TRIVU(Q29143)、EPPI HUMAN(O95925)、EPPI MOUSE(Q9DA01)、HTIB MANSE(P26227)、IBP CARCR(P00993)、IBPC BOVIN(P00976)、IBPI TACTR(P16044)、IBPS BOVIN(P00975)、ICS3 BOMMO(P07481)、IMAP DROFU(P11424)、IP52 ANESU(P10280)、ISC1 BOMMO(P10831)、ISC2 BOMMO(P10832)、ISH1 STOHE(P31713)、ISH2 STOHE(P81129)、ISIK HELPO(P00994)、ISP2 GALME(P81906)、IVB1 BUNFA(P25660)、IVB1 BUNMU(P00987)、IVB1 VIPAA(P00991)、IVB2 BUNMU(P00989)、IVB2 DABRU(P00990)、IVB2 HEMHA(P00985)、IVB2 NAJNI(P00986)、IVB3 VIPAA(P00992)、IVBB DENPO(P00983)、IVBC NAJNA(P19859)、IVBC OPHHA(P82966)、IVBE DENPO(P00984)、IVBI DENAN(P00980)、IVBE DENPO(P00979)、IVBK DENAN(P00982)、IVBK DENPO(P00981)、IVBT ERIMA(P24541)、IVBT NAJNA(P20229)、MCPI MELCP(P82968)、SBPI SARBU(P26228)、SPT3 HUMAN(P49223)、TKD1 BOVIN(Q28201)、TKD1 SHEEP(Q29428)、TXCA DENAN(P81658)、UPTI PIG(Q29100)、AMBP BOVIN(P00978)、AMBP HUMAN(P02760)、AMBP MERUN(Q62577)、AMBP MESAU(Q60559)、AMBP MOUSE(Q07456)、AMBP PIG(P04366)、AMBP RAT(Q64240)、IATR HORSE(P04365)、IATR SHEEP(P13371)、SPT1 HUMAN(O43278)、SPT1 MOUSE(Q9R097)、SPT2 HUMAN(O43291)、SPT2 MOUSE(Q9WU03)、TFP2 HUMAN(P48307)、TFP2 MOUSE(O35536)、TFPI HUMAN(P10646)、TFPI MACMU(Q28864)、TFPI MOUSE(O54819)、TFPI RABIT(P19761)、TFPI RAT(Q02445)、及びYN81 CAEEL(Q03610)。
【0088】
特定アミノ酸位置の「クニッツの保存残基」とは、前記リストの少なくとも5配列中にその位置で存在するアミノ酸である。特定アミノ酸位置の「クニッツの保存残基」とは、前記リストの配列の少なくとも30%中にその位置で存在するアミノ酸である。1より多いクニッツの保存残基又は高度に保存された残基が特定の位置で利用可能であり得る。位置は上記リストの最適CLUSTALWアラインメントに基づいており、したがってLACI−K1のアミノ酸番号付けを参照している。
【0089】
さまざまな方法を用いて、配列データベースからクニッツドメインを同定することができる。例えば、あるクニッツドメインの公知のアミノ酸配列、コンセンサス配列、又はモチーフ(例えばProSite Motif)を、例えばBLASTを用いてGENBANK(登録商標)配列データベース(全米バイオテクノロジー情報センター、国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州)について;HMMのPfamデータベース(Hidden Markovモデル)について(例えばPfam検索のデフォルトパラメータを用いて);SMARTTMデータベースについて;又はProDomデータベースについて検索することができる。例えば、Sonhammerら(1997)Proteins 28(3):405−420;Gribskovら(1990)Meth.Enzymol.183:146−159;Gribskovら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4355−4358;Kroghら(1994)J.Mol.Biol.235:1501−1531;Stultzら(1993)Protein Sci.2:305−314;Schultzら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:5857;Schultzら(2000)Nucl.Acids Res.28:231;及びCorpetら(1999)Nucl.Acids Res.27:263−267を参照されたい。ProSiteはクニッツドメインをモチーフとして列挙し、クニッツドメインを含むタンパク質を同定する。例えばFalquetら、Nucleic Acids Res.30:235−238(2002)を参照されたい。
【0090】
可変クニッツドメイン
ディスプレイライブラリーは、提示されたクニッツドメインの1以上の位置で変動を含む。例えば1〜20又は5〜12位置で変化できる。可変位置はクニッツドメインの2つの相互作用ループのうちの1つに位置することができる。第1の「相互作用ループ」は、P1、P1’、P2’、P3’及びP4’並びにLACI−K1のアミノ酸11〜19に対応する他のアミノ酸位置を含む。第2の「相互作用ループ」は、LACI−K1のアミノ酸32〜40に対応するアミノ酸位置を含む。
【0091】
ライブラリーは一方又は両方の相互作用ループに変動を含み得る。
理論上のライブラリーサイズ、例えばライブラリーにコードされ得るユニーク提示タンパク質の数は大きいものであり得る(例えば10〜1019、10〜1015、10〜1014、又は10〜1012の異なる提示タンパク質、及び/又は例えば少なくとも10、10、10、10、又は1010)。理論上のサイズは、実施にかかわらず、その完全に表された形態でライブラリーにコードされ得たユニークアミノ酸配列の合計数を意味する。理論的多様性は一般に各位置での変動数の産物である。例えば、わずか2つの位置が全20アミノ酸のあいだで変化する理論的多様性は20×20、即ち400である。使用した実際のライブラリーが前記理論的多様性の小さなサブセットをサンプルしたに過ぎなくても、多様性の大きいライブラリーは非常に有用である。
【0092】
しかしながら、多様性の限られたライブラリー、例えば1015、1014、1013、1012、1011、1010、又は10未満の異なるタンパク質も有用である。適切に設計されている場合、そのようなライブラリーも、折りたたまれたタンパク質のより多い画分を含むことができる。多様性の限られたライブラリーも特定の配列空間の厳密な評価を容易にする。
【0093】
合成的多様性 ライブラリーは、人工的に合成された配列に由来する多様な核酸配列の領域を含むことができる。合成アミノ酸配列は、天然配列の変異体、例えば天然の配列と少なくとも30、50、70、80、90、95、又は98%同一な変異体を含む。
【0094】
典型的には、ライブラリーは、複数の選択された位置にヌクレオチドの分布を含む1以上の縮重オリゴヌクレオチド集団から合成される。所定のヌクレオチドの包含は分布に関して無作為である。合成的多様性の縮重源の1例は、NNNを含むオリゴヌクレオチドである。ここで、Nは等しい比率で4ヌクレオチドのいずれかである。縮重オリゴヌクレオチドも、鋳型クニッツドメインの不変アミノ酸位置をコードする不変位置を含む。
【0095】
また、合成的多様性は、例えば、所定のトリヌクレオチドで核酸配列中のコドン数をNNNよりも小さな分布までより制限することを余儀なくされる。例えば、そのような分布は、コドンのいくつかの位置で4ヌクレオチド未満(例えば3又は2)を用いて構築され得る。加えて、トリヌクレオチド付加技術を用いて分布を更に制約することができる。
【0096】
いわゆる「トリヌクレオチド付加技術」は、例えばWellsら(1985)Gene 34:315−323、米国特許第4,760,025号及び第5,869,644号に記載されている。オリゴヌクレオチドは1コドンが(即ちトリヌクレオチド)同時に固相支持体上で合成される。支持体には、合成のための多くの官能基が含まれ、多くのオリゴヌクレオチドが平行して合成される。支持体は、まず第1位置のためのコドンセットの混合物を含有する溶液に曝される。更なるユニットが付加されないように、ユニットは保護される。第1混合物を含有する溶液を洗浄除去し、固相支持体を脱保護することで、第2位置のためのコドンセットを含有する第2混合物を付着した第1ユニットに加えることができる。複数のコドンが連続して組み立てられるように、プロセスを反復する。トリヌクレオチド付加技術は、所定の位置で多くのアミノ酸をコードし得る核酸の合成を可能にする。これらアミノ酸の頻度は、混合物中のコドンの比率によって調節することができる。更に、所定の位置でのアミノ酸の選択は、合成中に単一ヌクレオチドの混合物を加える場合のように、コドン表の四分円に限定されない。
【0097】
ある態様では、多様な領域でのアミノ酸配列中の変動は、例えば類似側鎖を有するアミノ酸のサブセットに限定され得る。アミノ酸配列中の限定された変動の例としては、例えば、システインを除く全てのアミノ酸;塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン);酸性側鎖を有するアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸);非荷電、極性側鎖を有するアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン);非極性側鎖を有するアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン);芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。また、特定位置での変動はクニッツドメインの保存アミノ酸残基又は高度に保存されたアミノ酸残基に限定され得る。
【0098】
天然多様性 ライブラリーは、異なる天然配列、例えばさまざまな天然クニッツドメインに由来する(又はそれに基づいて合成される)多様な核酸配列の領域を含むことができる。いくつかのライブラリーに関し、合成及び天然の多様性が含まれる。
【0099】
突然変異誘発 1つの態様では、反復モードでディスプレイライブラリー技術が用いられる。第1ディスプレイライブラリーを用いて標的に対する1以上のリガンドが同定される。次に、これら同定されたリガンドを突然変異誘発法で変化させ、第2ディスプレイライブラリーを形成する。次に高親和性リガンドが、例えばより高ストリンジェントな又はより競合的な結合及び洗浄条件を用いて第2ライブラリーから選択される。
【0100】
いくつかの実施では、クニッツドメインの突然変異誘発は、結合接点であることが知られている領域又は結合接点であると思われる領域、例えば本明細書に記載の1以上の位置、例えば相互作用ループ内の1以上の位置を標的とする。更に、突然変異誘発は相互作用ループ近傍又はこれに隣接したフレームワーク領域を指向することができる。クニッツドメインの場合、突然変異誘発を、1つ又は2つの相互作用ループ、その中の1つ又は2つのアミノ酸位置に限定することもできる。集中した突然変異誘発は正確な段階的改善を容易にすることができる。
【0101】
いくつかの例示的突然変異誘発技術には:誤りがちなPCR(Leungら(1989)Technique 1:11−15)、組換え、無作為切断を用いたDNAシャッフリング(Stemmer(1994)Nature 389−391;「核酸シャッフリング」という)、RACHITTTM(Cocoら(2001)Nature Biotech.19:354)、部位特異的突然変異誘発(Zoolerら(1987)Nucl Acids Res 10:6487−6504)、カセット突然変異誘発(Reidhaar−Olson(1991)Methods Enzymol.208:564−586)、及び縮重オリゴヌクレオチドの導入(Griffithsら(1994)EMBO J 13:3245)が含まれる。突然変異誘発を用いて、多様なクニッツドメインの開始ライブラリーを調製することもできる。
【0102】
反復選択の1例において、本明細書に記載の方法は、タンパク質リガンドを、標的に対して少なくとも最小の結合特異性で、又は最小活性、例えば結合に対する平衡解離定数が100nM、10nM、又は1nM未満で標的化合物を結合させるディスプレイライブラリーから最初に同定するために使用される。最初に同定されたタンパク質リガンドをコードする核酸配列を、変動を導入するための鋳型核酸として用いて、例えば最初のタンパク質リガンドよりも特性(例えば結合親和性、動力学、又は安定性)が増した第2タンパク質リガンドを同定する。
【0103】
ファージディスプレイ
ファージディスプレイはバクテリオファージを利用してさまざまなポリペプチドを提示する。提示タンパク質を、共有結合、非共有結合、及び非ペプチド結合でバクテリオファージ外被タンパク質へ連結することができる。例えば米国特許第5,223,409号、Crameriら(1993)Gene 137:69及びWO01/05950を参照されたい。連結は、外被タンパク質に融合した多様な成分をコードする核酸の翻訳により生じ得る。連結は、柔軟性ペプチドリンカー、プロテアーゼ部位、又は終止コドン抑制の結果として導入されたアミノ酸を含み得る。
【0104】
ファージディスプレイは、例えば、Ladnerら、米国特許第5,223,409号;Smith(1985)Science 228:1315−1317;WO92/18619;WO91/17271;WO92/20791;WO92/15679;WO93/01288;WO92/01047;WO92/09690;WO90/02809;de Haardら(1999)J.Biol.Chem 274:18218−30;Hoogenboomら(1998)Immunotechnology 4:1−20;Hoogenboomら(2000)Immunol Today 2:371−8;Fuchsら(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hayら(1992)Hum Antibod Hybridomas 3:81−85;Huseら(1989)Science 246:1275−1281;Griffithsら(1993)EMBO J 12:725−734;Hawkinsら(1992)J Mol Biol 226:889−896;Clacksonら(1991)Nature 352:624−628;Gramら(1992)PNAS 89:3576−3580;Garrardら(1991)Bio/Technology 9:1373−1377;Rebarら(1996)Methods Enzymol.267:129−49;Hoogenboomら(1991)Nuc Acids Res 19:4133−4137;及びBarbasら(1991)PNAS 88:7978−7982に記載されている。
【0105】
ファージディスプレイシステムはFf繊維状ファージ(ファージf1、fd、及びM13)、及び他のバクテリオファージ(例えばT7バクテリオファージ及びラムダファージ;例えば、Santini(1998)J.Mol.Biol.282:125−135;Rosenbergら(1996)Innovations 6:1−6;Houshmetら(1999)Anal Biochem 268:363−370を参照されたい) について開発されている。
【0106】
ファージディスプレイに好適な核酸、例えばファージベクターが記載されている。例えば、Armstrongら(1996)Academic Press、Kayら編、pp.35−53;Coreyら(1993)Gene 128(1):129−34;Cwirlaら(1990)Proc Natl Acad Sci USA 87(16):6378−82;Fowlkesら(1992)Biotechniques 13(3):422−8;Hoogenboomら(1991)Nucleic Acids Res 19(15):4133−7;McCaffertyら(1990)Nature 348(6301):552−4;McConnellら(1994)Gene 151(1−2):115−8;Scott及びSmith(1990)Science 249(4967):386−90を参照されたい。
【0107】
ファージミド ファージディスプレイの代替構造はファージミドベクターを使用する。ファージミドシステムでは、提示タンパク質をコードする核酸が、典型的には長さ6000ヌクレオチド未満のプラスミド上に提供される。プラスミドはファージ複製起点を含み、プラスミドを有する細菌細胞にヘルパーファージ、例えばM13K01を感染させると、プラスミドがバクテリオファージ粒子に組み込まれる。しかしながら、ファージミドは、安定なファージ粒子を産生するための十分なファージ遺伝子セットを欠失している。これらのファージ遺伝子は、ヘルパーファージによって提供することができる。典型的には、ヘルパーファージは、ファージの複製及び組み立てに必要な遺伝子III及び他のファージ遺伝子の完全なコピーを提供する。 ヘルパーファージは不完全起点を有するため、ヘルパーファージゲノムは、野生型起点を有するプラスミドと比較して、ファージ粒子内に効率的に組み込まれない。例えば米国特許第5,821,047号を参照されたい。ファージミドゲノムは、ライブラリーのメンバーに感染した細胞を選択するために、選択可能マーカー遺伝子、例えばAmp又はKanを含有する。
【0108】
ファージベクター ファージディスプレイの他の構造は、発現したとき感染性ファージ粒子の産生に十分なファージ遺伝子のセット、ファージパッケージングシグナル、及び自律複製配列を含むベクターを使用する。例えば、ベクターは、提示タンパク質をコードする配列を含むように改変されたファージゲノムであり得る。ファージディスプレイベクターは、外来核酸配列が挿入できる部位、例えば制限酵素消化部位を含有するマルチクローニング部位を更に含むことができる。例えば提示タンパク質をファージベクター内にコードする外来核酸配列は、リボソーム結合部位、シグナル配列(例えばM13シグナル配列)、及び転写終結配列に連結することができる。
【0109】
ベクターは、標準クローニング技術で、クニッツドメイン及びファージ外被タンパク質の部分を含むポリペプチドをコードする配列を含有するように構築することができ、これは調節可能プロモーターに機能可能に連結している。ある態様では、ファージディスプレイベクターは、ファージ外被タンパク質の同一領域をコードする2つの核酸配列を含む。例えば、ベクターは、提示タンパク質をコードする配列に機能可能に連結した部分でそのような領域をコードする1つの配列、及び外被タンパク質をコードする機能性ファージ遺伝子(例えば野生型ファージ遺伝子)の背景でそのような領域をコードする他の配列を含む。
【0110】
ファージベクターの1つの利点は、ヘルパーファージの使用を必要としないことであり、よってライブラリーの調整を単純にし、起こり得るライブラリーバイアスを軽減し、そしてヘルパーファージ核酸をパッケージする粒子を含まないファージライブラリーを産生する。ファージディスプレイベクターは、薬物耐性マーカー、例えばアンピシリン耐性遺伝子のような選択可能マーカーを含むこともできる。しかしながら、ファージミドとは異なり、そのような選択可能マーカーを含まないファージベクターの使用も可能であり、時に有益である。
【0111】
外被タンパク質
ファージディスプレイシステムは、典型的にはFf繊維状ファージを使用する。繊維状ファージを使用する実施では、例えば、提示タンパク質はファージ外被タンパク質アンカードメインに物理的に付着している。提示タンパク質と、同一アンカードメイン、例えば外被タンパク質の内在コピーを有する他のポリペプチドの同時発現は粒子表面で発現の競合を生ずるであろう。
【0112】
タンパク質ディスプレイに使用し得るファージ外被タンパク質は、(i)遺伝子IIIタンパク質のような繊維状ファージの小外被タンパク質、及び(ii)遺伝子VIIIタンパク質のような繊維状ファージの大外被タンパク質を含む。遺伝子VIタンパク質、遺伝子VIIタンパク質、又は遺伝子IXタンパク質のような他のファージ外被タンパク質への融合も使用することができる(例えばWO00/71694を参照されたい)。
【0113】
これらタンパク質の部分(例えばドメイン又は断片)を用いてもよい。有用な部分は、ファージ粒子に安定に組み込まれたドメインを含み、例えば、その結果、融合タンパク質は選択手順にわたり粒子中に残る。1つの態様では、使用した遺伝子IIIタンパク質のアンカードメイン又は「スタンプ」ドメイン(例えば、例示的遺伝子IIIタンパク質スタンプドメインの記載に関し、米国特許第5,658,727号を参照されたい)。本明細書において、「アンカードメイン」とは、遺伝子パッケージ(例えばファージ)に組み込まれているドメインを意味する。典型的なファージアンカードメインはファージ外皮又はキャプシドに組み込まれている。
【0114】
他の態様では、遺伝子VIIIタンパク質を使用する。例えば、米国特許第5,223,409号を参照されたい。成熟した、全長遺伝子VIIIタンパク質は提示タンパク質に連結できる。
【0115】
繊維状ファージディスプレイシステムは、典型的にはタンパク質融合物を使用して、異種アミノ酸配列をファージ外被タンパク質又はアンカードメインに物理的に付着させる。例えば、ファージは、シグナル配列、異種アミノ酸配列、及びアンカードメイン、例えば遺伝子IIIタンパク質アンカードメインをコードする遺伝子を含むことができる。
【0116】
他のディスプレイフォーマットを使用して、クニッツドメインのライブラリー、例えばその変化が本明細書に記載のように設計されているライブラリーをスクリーニングすることも可能である。例示的な他のディスプレイフォーマットには、細胞に基づいた提示 (例えば酵母ディスプレイ)及び核酸−タンパク質融合が含まれる。例えば米国特許第6,207,466号及びWO03/029456を参照されたい。タンパク質アレイを用いることもできる。例えばWO01/40803、WO99/51773、及びUS2002−0192673−A1を参照されたい。
【0117】
提示タンパク質を発現させるためのプロモーター
調節可能プロモーターを用いて、提示タンパク質の原子価を制御することができる。調節された発現により、低原子価の提示タンパク質を有するファージを産生することができる。多くの調節可能(例えば誘導性及び/又は抑制性)プロモーター配列が公知である。そのような配列は、その活性が使用者の介入によって、例えば環境パラメータの操作によって変更又は調節できる調節可能プロモーターを含む。
【0118】
例えば、外因性化学化合物を加えて、あるプロモーターの転写を調節することができる。調節可能プロモーターは、1つ以上の転写アクチベーター又はリプレッサータンパク質の結合部位を含有することができる。転写因子結合部位を含む合成プロモーターを構築することができ、調節可能プロモーターとして使用することもできる。
【0119】
例示的な調節可能プロモーターには、環境パラメータ、例えば温度変化、ホルモン、金属、代謝産物、抗生物質、又は化学物質に応答性のプロモーターが含まれる。大腸菌での使用に適切な調節可能プロモーターには、lac、tac、trp、trc、及びtetオペレーター配列、又はオペロンに由来する転写因子結合部位を含有するプロモーター、アルカリフォスファターゼプロモーター(pho)、araBADプロモーターのようなアラビノースプロモーター、ラムノースプロモーター、プロモーター自体、又はその機能性断片が含まれる(例えば、Elvinら、1990、Gene 37:123−126;Tabor及びRichardson、1998、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1074−1078;Changら、1986、Gene 44:121−125;Lutz及びBujard、March 1997、Nucl.Acids Res.25:1203−1210;D.V.Goeddelら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.76:106−110、1979;J.D.Windassら、Nucl.Acids Res.10:6639−57、1982;R.Crowlら、Gene、38:31−38、1985;Brosius、1984、Gene 27:161−172;Amanna及びBrosius、1985、Gene 40:183−190;Guzmanら、1992、J.Bacteriol.174:7716−7728;Haldimannら、1998、J.Bacteriol.180:1277−1286を参照されたい)。tacプロモーターは合成プロモーターの1例である。
【0120】
例えばlacプロモーターはラクトース又はイソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)のような構造的に関連のある分子によって誘導することができ、グルコースによって抑制される。いくつかの誘導性プロモーターは、抑制解除の過程で、例えばリプレッサー分子の不活化によって誘導される。
【0121】
調節可能プロモーター配列は間接的に調節することもできる。間接的調節のために遺伝子操作できるプロモーターの例としては:ラムダファージPプロモーター、Pプロモーター、T7ファージプロモーター、SP6プロモーター、及びT5プロモーターが挙げられる。例えば、調節可能配列は、その発現が例えば環境パラメータによって調節されている因子によって抑制され、又は活性化される。そのようなプロモーターの1例はT7プロモーターである。T7RNAポリメラーゼの発現は、lacプロモーターのような環境応答性プロモーターによって調節できる。例えば、細胞は、T7 RNAポリメラーゼをコードする配列、及び環境パラメータによて調節される調節配列(例えばlacプロモーター)を含む異種核酸を含むことができる。T7 RNAポリメラーゼの活性は、T7リゾチームのようなRNAポリメラーゼの天然インヒビターの存在により調節することもできる。
【0122】
他の構造では、ラムダPを、環境パラメータで調節されるように遺伝子操作することができる。例えば、細胞は、ラムダリプレッサーの温度感受性変異体をコードする核酸配列を含むことができる。細胞を非許容温度まで上昇させることにより、Pプロモーターを抑制から開放する。
【0123】
プロモーター又は転写調節配列の調節特性は、前記プロモーター又は配列をレポータータンパク質(又はいずれかの検出可能タンパク質)をコードする配列へ機能可能に連結することにより容易に試験することができる。この構築物を細菌細胞へ導入し、豊富なレポータータンパク質をさまざまな環境条件下で評価する。有用なプロモーター又は配列は、ある条件で選択的に活性化又は抑制されるものである。
【0124】
ある態様では、非調節可能プロモーターが用いられる。例えば、関連条件下で適当量の転写物を産生するようにプロモーターを選択できる。非調節可能プロモーターの例は、遺伝子IIIプロモーターである。
【0125】
1つの態様では、プロモーターは第10/723,981号に記載のように配置される。
【0126】
ファージの産生及びスクリーニング
ファージディスプレイライブラリーを用いて、標的、例えば標的化合物と相互作用するクニッツドメインを同定することができる。1つの態様では、前記方法は、標的化合物の結合体の選択において回収されたファージライブラリーメンバーを増幅することを含む。
【0127】
ファージをスクリーニングし、増幅させる1つの例示的方法には、以下が含まれる:
a. 複数の多様な提示ファージを標的化合物へ接触させること;
b. 標的化合物に結合しているファージを非結合ファージから分離すること;
c. 標的化合物を結合させたファージを回収すること;
d. 宿主細胞に標的化合物を結合させたファージを感染させること;
e. 複製ファージを感染細胞から産生させること;
f. 場合により、a.からd.を1回以上、例えば1〜6回繰り返すこと;
g. 結合ファージ又はファージ内の核酸を、例えばそれぞれの特徴付けのために回収すること。
【0128】
前記方法は、ファージゲノムを含有するファージを用いた使用にもファージミドを含有するファージを用いた使用にも適応させることができる。
ファージを(例えば工程eで、又は工程aの前に)産生させるため、ファージ産生のあいだ、調節可能、例えば誘導性プロモーターの転写活性を選択したレベルで提供する条件下に宿主細胞を維持する。誘導性プロモーターがlacプロモーターである例では、lacインデューサー(例えばIPTG)、又はlacプロモーターの活性を阻害する物質(例えばグルコース)を増殖培地中に含むことができる。1つの態様では、高濃度のグルコース(例えば>1%)が用いられる。他の態様では、低濃度のグルコースが用いられる(例えば<0.1%)。
【0129】
例えばクニッツドメインを含有する提示タンパク質の発現調節は、ファージ粒子表面のドメインの原子価の調節手段を提供することができる。クニッツドメインを小外被タンパク質の部分、例えば遺伝子IIIタンパク質のアンカードメインとの融合物として発現させる実施、lacプロモーターの制御下にある実施、及び外被タンパク質、例えば全長遺伝子IIIタンパク質の他のコピーと同時発現させる実施に関し、提示タンパク質の原子価は以下のように変化することができる:グルコースの存在下では、lacプロモーターは抑制され、提示タンパク質は低原子価、例えばファージ粒子あたり0〜1コピーで発現するであろう;IPTGの存在下ではlacプロモーターは誘導され、提示タンパク質は高原子価、例えばファージ粒子あたり例えば平均で少なくとも1.0、1.5、1.8、又は2.0コピー発現するであろう。
【0130】
ある実施では、提示タンパク質は大外被タンパク質(VIII)に連結している。ファージは遺伝子VIIIタンパク質(VIII)を大量に産生する。成熟VIIIに連結した提示タンパク質の部分的分泌は、野生型VIIIの産生より小さいものであり得る。したがって、提示タンパク質の原子価の低下は、提示タンパク質をVIIIへ、例えば成熟VIIIへ連結することによって達成することもできる。
【0131】
ファージ産生条件には温度変化を含めることができる。ファージ産生のあいだ、インキュベーション温度を特定の時間下げることにより、提示アミノ酸配列の折りたたみを容易にすることができる。ファージ産生のあいだ、宿主細胞を培養するための1つの例示的手順には、37℃で20分のインキュベーション時間、続いて30℃で25分のインキュベーション時間が含まれる。
【0132】
所定の選択サイクルの後、それぞれのファージを、低多重度の感染条件下で感染させた細胞のコロニーを単離することによって解析することができる。それぞれの細菌コロニーを、例えばマイクロタイターウェル中で、ファージの産生をもたらす条件下で培養する。ファージを各培養物から回収し、ELISAアッセイに用いる。標的化合物をマイクロタイタープレートのウェルに結合させ、ファージと接触させる。プレートを洗浄し、結合ファージ量を、例えばファージに対する抗体を用いて検出する。
【0133】
標的分子を結合させるファージの選択には、ファージを標的分子と接触させることが含まれる。標的分子は、固体支持体に直接的又は間接的に結合させることができる。標的に結合するファージ粒子は、固定され、標的と結合しないメンバーから分離される。分離工程の条件は、ストリンジェントに変化させることができる。例えば、pH及びイオン強度を生理的条件から変化させることができる。結合及び分離を複数サイクル行なうことができる。
【0134】
共有結合法及び非共有結合法を用いて、標的分子を固体支持体又は不溶性支持体に付着させることができる。そのような支持体には、マトリックス、ビーズ、樹脂、平面表面、又はイムノチューブを含めることができる。非共有結合付着法の1例では、標的分子は結合対の一方のメンバーに付着している。結合対の他のメンバーは、支持体に付着している。ストレプトアビジンとビオチンは、高親和性で相互作用する結合対の1例である。他の非共有結合対には、グルタチオン−S−トランスフェラーゼとグルタチオン(例えば米国特許第5,654,176号を参照されたい)、6つのヒスチジンとNi2+(例えばドイツ国特許DE 19507 166号を参照されたい)、そして抗体とペプチドエピトープ(例えば、エピト−プタグの一般的提供方法に関し、Kolodziej及びYoung(1991)Methods Enz.194:508−519を参照されたい)が含まれる。
【0135】
標的化合物の共有結合付着法には、化学架橋法が含まれる。反応性試薬は、標的分子の官能基と支持体とのあいだに共有結合を作製することができる。化学的に反応できる官能基の例としては、アミノ基、チオール基、及びカルボキシル基が挙げられる。N−エチルマレイミド、ヨードアセトアミド、N−ヒドロスクシンイミド、及びグルタルアルデヒドは、官能基と反応する試薬の例である。
【0136】
ディスプレイライブラリーメンバーはさまざまな方法で選択され又は捕捉することができる。ファージは、標的分子で被覆された、マイクロタイタープレートのような容器への接着により捕捉することができる。あるいは、ファージは、クロマトグラフィカラムのようなフローチャンバーに固定された標的分子と接触することができる。ファージ粒子は常磁性ビーズのような磁気反応性粒子によって捕捉することもできる。ビーズは、標的化合物(例えば抗体)を結合させることができる試薬、又は間接的に標的化合物を結合させることができる試薬(例えばビオチン化標的化合物に結合しているストレプトアビジン被覆ビーズ)で被覆することができる。
【0137】
ディスプレイの有用なメンバーの同定を自動化することができる。例えばUS−2003−0129659−A1を参照されたい。自動化に好適な装置には、マルチウェルプレート輸送システム、磁気ビーズ粒子プロセッサ、液体処理ユニット、コロニー選択ユニット、及び他のロボットが含まれる。これらの装置は、カスタムアプリケーション上に構築するか、又はAutogen(Framingham MA)、ベックマン コールター(USA)、Biorobotics(Woburn MA)、Genetix(New Milton、Hampshire UK)、Hamilton(Reno NV)、Hudson(Springfield NJ)、Labsystems(ヘルシンキ、フィンランド)、Packard Bioscience(Meriden CT)、及びTecan(Mannedorf、スイス)のような商業的供給源から購入することができる。
【0138】
ある場合には、本明細書に記載の方法は磁気粒子を操作するための自動化プロセスを含む。標的化合物は磁気粒子状に固定されている。例えば、Thermo LabSystems(ヘルシンキ、フィンランド)の磁気粒子プロセッサであるKing FisherTMシステムを用いて、標的に対するディスプレイライブラリーメンバーを選択することができる。ディスプレイライブラリーはチューブ内で磁気粒子と接触する。ビーズ及びライブラリーを混合する。次に、使い捨ての覆いで被覆された磁気ピンで磁気粒子を回収し、洗浄液を含む他のチューブへそれらを移す。粒子を洗浄液と混合する。この様式では、磁気粒子プロセッサを用いて磁気粒子を複数のチューブへ連続的に移し、非特異的又は弱く結合したライブラリーメンバーを粒子から洗浄することができる。洗浄後、ディスプレイライブラリーメンバーの増幅を支持する培地を含む容器に粒子を移すことができる。ファージディスプレイの場合、容器は宿主細胞を含んでいてもよい。
【0139】
ある場合には、例えば、ファージディスプレイのために、プロセッサは感染宿主細胞を先に使用した粒子から分離することもできる。プロセッサは、追加の選択ラウンドのために磁気粒子の新たな供給を加えることもできる。
【0140】
選択を行なうための自動化の使用は、スループットと同様に、選択プロセスの再現性を増加させることができる。
例示的な磁気反応性粒子は、DYNAL BIOTECH(オスロ、ノルウェー)から入手可能なダイナビーズ(登録商標)である。ダイナビーズ(登録商標)は均一サイズ、例えば直径2μm、4.5μm、及び5.0μmの球状表面を提供する。ビーズはγFe及びFeを磁性物質として含む。粒子は磁場で磁性を有するため、超常磁性であるが、磁場の外では残留磁力が欠乏する。粒子はさまざまな表面、例えばカルボキシル化表面を有する親水性のもの及びトシル−活性化表面を有する疎水性のものが利用可能である。粒子をBSA又はカゼインのようなブロッキング剤でブロッキングし、標的以外の化合物の粒子への非特異的結合及びカップリングを軽減することもできる。
【0141】
標的は常磁性粒子に直接的又は間接的に付着している。さまざまな標的分子は常磁性粒子に連結した形態で購入することができる。1例では、標的は、反応基、例えば架橋剤(例えばN−ヒドロキシ−スクシンイミジルエステル)又はチオールを含む粒子に化学的にカップリングしている。
【0142】
他の例では、標的は、特異的結合対のメンバーを用いて粒子に連結している。例えば、標的はビオチンにカップリングすることができる。次に標的をストレプトアビジンで被覆した常磁性粒子(例えばM−270及びM−280ストレプトアビジンダイナパーティクル(登録商標)、DYNAL BIOTECH、オスロ、ノルウェーから入手可能)に結合させる。1つの態様では、標的を常磁性粒子に付着させる前に標的をサンプルに接触させる。
【0143】
ある実施では、自動化は、選択プロセスで同定されたディスプレイライブラリーメンバーを解析するためにも使用される。最終サンプルから、各ディスプレイメンバーのそれぞれのクローンを得ることができる。各メンバーのクニッツドメインは個別に解析して、例えば機能特性を評価することができる。例えば、ドメインを評価して、標的プロテアーゼの酵素活性に影響するかどうかin vitro又はin vivoで決定することができる。プロテアーゼ活性及びその動力学を評価する方法は周知である。例えば、標識基質の消化が評価できる。
【0144】
例示的機能特性には:動力学的パラメータ(例えば標的化合物への結合に関して)、 平衡パラメータ(例えば、標的化合物への結合に関する結合力、親和性など)、構造的又は生化学的特性(例えば温度安定性、オリゴマー形成状態、溶解度など)、及び生理学的特性(例えば腎クリアランス、毒性、標的組織特異性など)などが含まれる。結合パラメータの解析法には、ELISA、均一な結合アッセイ、及びSPRが含まれる。例えば、多様なクニッツドメインを含有する提示タンパク質についてのELISAは、例えば、ファージ若しくは他のディスプレイ媒体の背景で、又はファージ若しくは他のディスプレイ媒体の背景から取り除かれた提示タンパク質で、直接行なうことができる。
【0145】
各メンバーは、配列決定を行ない、例えば提示されたクニッツドメインのアミノ酸配列を決定することもできる。
【0146】
標的化合物
1つの側面では、前記方法は標的分子を結合させるファージの選択に関連する。如何なる化合物も標的分子として働くことができる。標的分子は、小分子(例えば小有機分子又は無機分子)、ポリペプチド、核酸、多糖などでよい。例として、標的に関して数多くの例及び構造が記載されている。当然、以下に列挙するもの以外の標的化合物、又は以下に列挙するもの以外の特性を有する標的化合物を使用することもできる。
【0147】
クニッツドメインライブラリーを用いてプロテアーゼを阻害可能なポリペプチドを選択することができる。例えば、本明細書の方法を用いて、プラスミン、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、及び他のプロテアーゼを結合させ、及び/又は阻害するクニッツドメイン、特に効果的にはヒトクニッツドメインを同定することができる。
【0148】
活性化型及び不活性型のプロテアーゼを用いることができる。例えば、活性化型には、プロドメインの除去によりチモーゲンから活性化した形態が含まれる。分泌プロテアーゼは典型的にはシグナル配列を除去するために処理される。
【0149】
不活性型には、化学修飾されたプロテアーゼ及び遺伝子修飾されたプロテアーゼが含まれる。更に他の不活性型には、チモーゲン型のプロテアーゼ及びインヒビター又は他の不活性化分子に結合されているプロテアーゼが含まれる。遺伝子修飾されたプロテアーゼには、少なくとも20%(例えば少なくとも30、40、50、60、70、80、90、95、又は99%)の活性が減少している遺伝子改変物(例えば置換、挿入、又は欠損)を含めることができる。改変は活性部位、例えば活性部位残基、例えば触媒三連構造のメンバーに又はその近傍にあり得る。
【0150】
例えば、遺伝子改変されたプロテアーゼを用いて、活性部位が遮蔽されていない不活性型を提供することができる。この分子は、例えば最初のスクリーニング又は選択に用いて、そのようなドメインは標的プロテアーゼによって切断され易いとしても、前記活性部位を結合させるクニッツドメインを発見することができる。活性部位が遮蔽されている(例えばインヒビターの結合によって)不活性型を用いて、標的プロテアーゼと相互作用はするが、活性部位でではないクニッツドメインを廃棄することができる。
【0151】
タンパク質標的分子は特定の物理構造、例えば折りたたまれた若しくは折りたたまれていない形態、又は活性若しくは不活性型を有することができる。1つの態様では、タンパク質は1より多い特定構造を有する。例えば、プリオンは1より多い構造をとることができる。天然構造も病的構造も、例えば天然構造を安定化する物質、又は病的構造を同定し若しくは標的とする物質を単離するための望ましい標的であり得る。
【0152】
ある態様では、タンパク質標的は疾患、例えば新生物、心血管、神経、炎症性及び肺の疾患及び障害に関連している。
【0153】
医薬組成物
他の側面では、本発明は、標的、例えば標的細胞又は標的分子に結合するタンパク質(例えば、標的タンパク質、例えばプロテアーゼ)を含有するクニッツドメインを含む組成物を提供する。前記組成物は医薬的に許容可能な組成物であり得る。例えば、クニッツドメイン含有タンパク質は、医薬的に許容可能な担体とともに製剤化することができる。本明細書において、「医薬組成物」は標識診断用組成物(例えばin vivoイメージング用)、及び治療用組成物を包含する。
【0154】
本明細書において、「医薬的に許容可能な担体」には、生理学的に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等が含まれる。好ましくは、担体は、静脈内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与に好適である(例えば注射又は注入による)。投与経路により、クニッツドメイン含有タンパク質は、化合物を酸の作用及びそれを不活性化できる他の自然条件から保護する材料で被覆することができる。
【0155】
「医薬的に許容可能な塩」とは、親化合物の所望の生物活性を保持し、望ましくない毒性効果を付与しない塩を意味する(例えばBerge,S.M.ら(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19を参照されたい)。そのような塩の例としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸等の非毒性無機酸に由来するもの、並びに脂肪族一酸及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸等の非毒性有機酸に由来するもの、が含まれる。塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属に由来するもの、及びN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等の非毒性有機アミンに由来するもの、が含まれる。
【0156】
クニッツドメイン含有タンパク質を含む組成物は、さまざまな形態をとり得る。例えば、これらには、溶液(例えば注射液及び輸液)、分散液又は懸濁液、錠剤、ピル、粉末剤、リポソーム及び坐薬のような液体、半固体及び固体剤形が含まれる。典型的な組成物は、ヒトへの抗体投与に用いるものに類似した組成物のような注射液又は輸液の形態である。一般の投与様式は非経口である(例えば静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)。1つの態様では、クニッツドメイン含有タンパク質は、静脈内注入又は注射により投与される。他の態様では、クニッツドメイン含有タンパク質は、筋肉内注射又は皮下注射により投与される。
【0157】
前記組成物は、溶液、ミクロエマルジョン、分散液、リポソーム、又は高薬物濃度に好適な他の注文構造として製剤化することができる。滅菌注射液は、クニッツドメイン含有タンパク質を必要量で適切な溶媒中に、必要に応じて上で列挙した成分のうちの1種又は組み合わせとともに組み込み、ろ過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒体及び上で列挙したもののうち必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。組成物は、乾燥又は脱水(例えば真空乾燥及び凍結乾燥)、滅菌ろ過、粒子分散、及び界面活性剤付加を含む方法により調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸のような生分解性生体適合性ポリマーを用いることができる。そのような製剤を調製するための多くの方法が特許化され、又は一般に知られている。例えば、持続制御放出薬物送達システム、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、1978を参照されたい。
【0158】
クニッツドメイン含有タンパク質はさまざまな方法、例えば静脈内注射又は注入で投与することができる。例えば、治療適用には、クニッツドメイン含有タンパク質を、用量約1〜100mg/m又は7〜25mg/mに達するように30、20、10、5、又は1mg/分未満の速度で静脈内注入することによって投与することができる。投与経路及び/又は投与様式は所望の結果により変化するであろう。
【0159】
医薬組成物は、医療用機器、例えば無針皮下注射機器、インプラント、埋め込み型ポンプ(例えばミクロ輸液ポンプ)、吸入器、及び坐薬によって投与することができる。例えば、米国特許第5,399,163号、第5,383,851号、第5,312,335号、第5,064,413号、第4,941,880号、第4,790,824号、第4,596,556号、第4,487,603号、第4,486,194号、第4,447,233号、第4,447,224号、第4,439,196号、及び第4,475,196号を参照されたい。例えば、埋め込み型ミクロ輸液ポンプを用いて、組成物を制御された速度で投薬することができる。
【0160】
用法・用量は最適な所望の反応(例えば治療効果)を提供するように調製される。例えば、単一ボーラスを投与してもよく、数回に分割した用量を長期にわたって投与してもよく、又は緊急の治療状態によって示唆されるように比例的に用量を減らしても増やしてもよい。投与を容易にするため、及び用量の均一性のために、非経口組成物を単位剤形に製剤化することができる。本明細書において単位剤形とは、治療すべき被験者に対し単位用量として好適な物理的に別個の単位を意味する;各単位は所望の治療効果を生ずるように計算された所定量の活性化合物を、必要とされる医薬担体とともに含有する。
【0161】
治療的又は予防的に有効量のクニッツドメイン含有タンパク質の例示的な、非限定的範囲は、0.1〜20mg/kg、0.02〜2mg/kg、0.1〜5mg/kg、又は1〜10mg/kgである。クニッツドメイン含有タンパク質は、用量約1〜100mg/m、約5〜30mg/m、又は約0.5〜7mg/mに達するように、20、10、5、1、又は0.3mg/分未満の速度で静脈内注入によって投与することができる。用量値は、緩和すべき病態のタイプ及び重篤度によって変更することができる。特定の用法・用量は長期にわたって調製することができる。
【0162】
医薬組成物は、治療的又は予防的に有効量のクニッツドメイン含有タンパク質を含むことができる。そのような量は、必要な用量及び期間、所望の治療又は予防効果を達成するのに有効な量を意味する。「治療的に有効な用量」は、未処置被験者と比較して、関連疾患の測定可能パラメータ又は症状を少なくとも約20%、40%、60%、又は80%まで調節することが好ましい。
【0163】
クニッツドメイン含有タンパク質が疾患を調節する能力は、動物モデルシステムで評価することができる。例えば、クニッツドメイン含有タンパク質ががんの少なくとも1つの症状を阻害する能力は、異種移植されたヒト腫瘍を有する動物モデルで評価することができる。in vitroアッセイを用いることもできる。
【0164】
1つの態様において、クニッツドメイン含有タンパク質は、物質、例えば細胞毒性薬、又は放射性同位元素に結合している。
クニッツドメイン含有タンパク質及び使用説明書、例えば治療、予防、又は診断での使用、を含むキットも本発明の範囲内である。1つの態様では、診断適用のための説明には、in vitroで、例えばサンプル中、例えばがん又は腫瘍性疾患を有する患者からの生検材料又は細胞中、又はin vivoで標的を検出するためのクニッツドメイン含有タンパク質の使用が含まれる。他の態様では、治療適用のための説明には、がん又は腫瘍性疾患を有する患者において示唆された用量及び/又は投与様式が含まれる。キットは、診断剤又は治療剤、例えば本明細書に記載の診断剤又は治療剤のような少なくとも1種の追加試薬、及び/又は必要に応じて1以上の別個の医薬調整品に製剤化された標的結合クニッツドメインを含む1以上の追加タンパク質、を更に含むことができる。
【0165】
治療
本明細書に記載の及び/又は本明細書に詳述した方法で同定されたクニッツドメイン含有タンパク質は治療用途及び予防用途を有する。例えば、これらのタンパク質を、培養細胞に例えばin vitro若しくはex vivoで、又は被験者に例えばin vivoで投与し、がん及び心血管疾患のようなさまざまな障害を治療し、予防し、及び/又は診断することができる。
【0166】
本明細書において、「治療する」又は「治療」という用語は、障害又は障害の少なくとも1つの症状を予防し、改善し、または治療するために、クニッツドメイン含有タンパク質を被験者又は被験者の細胞若しくは組織に適用すること又は投与することとして定義される。例えば、前記タンパク質は、障害の少なくとも1つの症状を改善するのに有効な量で投与することができる。本明細書において、「被験者」という用語には、ヒト、例えば障害を有する患者、及びヒト以外の動物が含まれる。
【0167】
クニッツドメイン含有タンパク質は、例えば治療目的でヒトに投与することができ、又は獣医学的目的で若しくはヒト疾患の動物モデルとしてヒト以外の被験者に投与することができる。
【0168】
前記方法を用いて、全てのタイプのがん性増殖又は発がんプロセス、転移性組織又は悪性形質転換した細胞、組織、若しくは臓器を含めたがんを、浸潤の組織病理学的タイプ及び段階にかかわりなく治療することができる。がん性障害の例には、限定されるものではないが、固形腫瘍、軟部組織腫瘍、及び転移性病変、並びに造血細胞由来のがんが含まれる。固形腫瘍の例には、さまざまな臓器系の悪性腫瘍、例えば肉腫、腺癌、及び癌腫、例えば肺、胸部、リンパ、胃腸(例えば結腸)、及び尿生殖路(例えば腎細胞、尿路上皮細胞)、咽頭、前立腺、及び卵巣に影響を及ぼすものが含まれる。
【0169】
前記方法を用いて、クニッツドメイン含有タンパク質が阻害するプロテアーゼの過剰な活性を特徴とする障害を治療することができる。例えば、プロテアーゼは凝固因子又は細胞外マトリックス成分を改変することができるプロテアーゼであり得る。
【0170】
診断用途
クニッツドメイン含有タンパク質は、in vitro及びin vivo 診断用途も有する。それらは、例えば標的の存在を検出する診断方法に、in vitroで(例えば、組織、生検材料、例えば腫瘍組織のような生体サンプル)、又はin vivoで(例えば被験者におけるin vivoイメージング)使用することができる。
【0171】
前記方法は:(i)サンプルをクニッツドメイン含有タンパク質と接触させること;及び(ii)クニッツドメイン含有タンパク質とサンプルとの複合体形成を検出すること、を含む。前記方法は、基準サンプル(例えば対照サンプル)をクニッツドメイン含有タンパク質と接触させること、及びクニッツドメイン含有タンパク質とサンプルとの複合体形成の程度を基準サンプルのものと比較して測定することを含むこともできる。サンプル又は被験者内での複合体形成における変化、例えば統計的に有意な変化は、対照サンプル又は被験者と比べて、サンプル内での標的の存在を表示し得る。
【0172】
他の方法は:(i) クニッツドメイン含有タンパク質を被験者に投与すること;及び(iii) クニッツドメイン含有タンパク質と被験者のあいだの複合体形成を検出すること、を含む。検出には複合体形成の場所又は時間の測定を含むことができる。
【0173】
クニッツドメイン含有タンパク質は、検出を容易にする検出可能物質で直接的又は間接的に標識することができる。好適な検出可能物質には、さまざまな酵素、 補欠分子族、蛍光材料、発光材料及び放射性物質が含まれる。例示的蛍光分子には、キサンチン色素、例えばフルオレセイン及びローダミン、並びにナフチルアミンが含まれる。本発明の画像診断に有用な標識の例には、131I、111In、123I、99mTc、32P、125I、H、14C、及び188Rhのような放射性標識、フルオレセイン及びローダミンのような蛍光標識、核磁気共鳴活性標識、陽電子放出断層撮影(「PET」)装置、で検出可能な陽電子放出同位体、ルシフェリンのような化学発光体、並びにペルオキシダーゼ又はホスファターゼのような酵素標識、が含まれる。そのような造影剤の例には、常磁性物質及び強磁性又は超常磁性物質が含まれる。キレート(例えばEDTA、DTPA及びNTAキレート)を用いて、常磁性物質(例えばFe+3、Mn+2、Gd+3)を付着させる(及び毒性を軽減する)ことができる。クニッツドメイン含有タンパク質は、NMR−活性19F原子を含有する表示基で標識することもできる。
【実施例1】
【0174】
クニッツドメインライブラリー挿入物の作製
変化に富んだコドンについては活性化トリヌクレオチド ホスホラミダイトを用いて、定常領域については正常な単一ヌクレオチド付加を用いて調製したオリゴヌクレオチドを用いてライブラリーを調製した。このクニッツドメインライブラリーのアミノ酸配列を図4に示す。
【0175】
【表1】

【実施例2】
【0176】
第1の例示的クニッツドメインライブラリーの作製
ライブラリー挿入物のPCRアセンブリの後、酵素NcoI及びXbaIを用いて制限消化を行った。ライブラリー挿入物を精製し、同様に消化・精製した1価のファージディスプレイベクターDY3P82に連結した。連結したDNAを電気的コンピテント細胞DH5−αへ形質転換し、合計2.8×10の形質転換体が生じた。
【0177】
提示ベクターDY3P82は、アンピシリン耐性であり、遺伝子iiiの全長コピー、及び提示されたクニッツドメインのアンカーとして遺伝子iiiの切断型コピーを含有する(図1)。提示物/遺伝子III融合物の発現は、lacプロモーター/オペレーターによって制御されている。lacプロモーターの使用により、発現レベルの制御を可能にし、結果として、IPTG(提示の誘導)又はグルコース(提示の抑制)の添加により、提示レベルの制御を可能にする。
【0178】
ファージDY3P82はM13mp18の誘導体である。DY3P82はM13mp18のKasI部位をBamHI部位に変更することによって構築した。このBamHI部位からBsu36I部位までのセグメントを前記DNAと置換した。これはbla遺伝子(pGemZ3fから得たものであり、ApaLI及びBssSI制限部位の除去により改変されている)及びディスプレイカセットを含む。この例示的ディスプレイカセットは:a)PlacZプロモーター(XhoIとPflMIとのあいだ)、b)M13シグナル配列上流のリボソーム結合部位、c)NcoI及びEagI制限部位を含有する改変M13シグナル配列、d)NsiI、MluI、AgeI、及びXbaI部位を含めたLACI−K1ドメインの部分、e)NheI部位を含めたリンカー、f)M13遺伝子IIIの第3ドメイン(前記DNAはM13ドメイン3のアミノ酸配列をコードするが、多くのコドンは内在遺伝子IIIと異なるように除去されている)、g)2つの終始コドン、h)AvrII部位、i)trpターミネーター、並びにj)NsiI部位(ベクター中に2つ存在する)、を含む。
【実施例3】
【0179】
クニッツドメインライブラリーによる提示
ファージ含有ライブラリーをグルコースの存在下(提示なし)又はIPTG存在下(提示)で調製し、抗DX−88ポリクローナル抗体調製品を用いてELISAを行った。このライブラリーも改善された操作特性、例えば改善された粘性を有していた。
【0180】
DX−88はLACI−K1に由来するクニッツドメインである。抗DX−88ポリクローナル抗体は、ウエスタンブロット及びELISAにおいて、LACI−K1ライブラリーからの単離物と交差反応する。
【0181】
マイクロタイタープレートのウェルを抗遺伝子VIII抗体で被覆し、ファージの捕捉を容易にした。その後、非特異的結合を妨げるためにウェルを適切な試薬(BSAなど)でブロッキングし、最終的にPBS/0.05% Tween−20(PBST)で洗浄した。次にライブラリーファージをマイクロタイタープレートに供し、37℃で1時間結合させた。非結合ファージをPBSTで洗浄除去し、抗DX−88抗体を加えた。DX−88抗体を結合させ、PBSTで洗浄し、HRPに結合した適切な2次抗体を加えた。2次抗体とインキュベーション後、洗浄し、TMBでELISAを現像した。
【0182】
DX−88を多価的に提示するファージを陽性対照として含めた。これらのファージはIPTG又はグルコースで調節可能ではない。誘導条件(+IPTG)から抑制条件(+グルコース)へのシフトは、DX−88ファージに何ら作用しないはずである。クローンR1F4、R2D1、R2F6、R2F8は、DY3P82ファージベクターへクローニングした抗体単離物であり、陰性対照として含まれている。
【実施例4】
【0183】
クニッツドメインライブラリーを用いたセリンプロテアーゼインヒビターの同定
1価のクニッツライブラリーを用いて、組換えセリンプロテアーゼ(rSerProtease−1)への結合体(おそらくインヒビター)を同定した。3ラウンドの選択を行った。ビオチン化rSerProtease−1標的へのファージの結合を溶液中で2時間行い、続いて、ストレプトアビジン被覆磁気ビーズ上でファージ−標的複合体を捕捉した。第3ラウンドで単離したファージについて、rSerProtease−1被覆プレート及び抗遺伝子VIII抗体を用いてELISA解析を行い、ファージを検出した。我々はrSerProtease−1に特異的に結合する数多くのファージを単離した。
【実施例5】
【0184】
第2の例示的クニッツドメインライブラリー
実施例4のクニッツドメインライブラリーに類似したクニッツドメインライブラリーを構築した。このライブラリーのアミノ酸配列を図5に示す。このライブラリーは、位置32、34、39、及び40に追加の変動部位を含有する。このライブラリーの理論上のサイズは2.64×1014のユニークアミノ酸配列である。
【0185】
1つの態様では、ライブラリーは遺伝子iii外被タンパク質をアンカーとして使用する。クニッツドメインは、ファージあたり約5コピー提示される。ペリプラズム中のタンパク質分解が原子価を低下させるかもしれないが、各ファージは、望ましくない親和性をもたらし得る2コピー以上を有する。
【0186】
【表2】

【実施例6】
【0187】
以下は例示的ベクター配列である。
DY3P82
【0188】
【化1−1】

【0189】
【化1−2】

【0190】
【化1−3】

【0191】
【化1−4】

【0192】
DY3P82 LACIK1
【0193】
【化2−1】

【0194】
【化2−2】

【0195】
【化2−3】

【0196】
【化2−4】

【0197】
【化2−5】

【0198】
本発明の多くの態様が記載されているが、それにもかかわらず、本発明の精神及び範囲を逸脱することなくさまざまな改変がなされ得ることが理解されるであろう。したがって、他の態様も以下の請求の範囲の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】図1は例示的ファージベクターDY3P82の図であり、例示的なLACI−K1由来クニッツドメインライブラリーに用いることができる。
【図2】図2は第1の例示的ライブラリーの設計の図である。アミノ酸配列は配列番号4として記載されている。核酸配列のおおよその翻訳は配列番号5として記載されている(しかしながら、トリヌクレオチド−多様なコドンの使用は核酸配列表に具体化することができない)。
【図3】図3は第2の例示的ライブラリーの設計の図である。アミノ酸配列は配列番号6として記載されている。核酸配列のおおよその翻訳は配列番号7として記載されている(やはりトリヌクレオチド−多様なコドンの使用は核酸配列表に具体化することができない)。図2及び図3に関し、アミノ酸位置数は各アミノ酸の上に記載されている。対応するヌクレオチド、制限酵素部位、変動部位は各アミノ酸の下に記載されている。可変位置は第2の数値も含有し、その位置で許容されるアミノ酸の可能な数を示している。
【図4A】図4Aは、例示的ファージベクターDY3P82 LACIK1のディスプレイカセットのDNA配列(配列番号8)、及びさまざまな提示タンパク質のアミノ酸配列(配列番号9)を説明する。(トリヌクレオチド−多様なコドンの使用は核酸配列表に具体化することができない)。塩基7244〜7415はPlacZプロモーター及びリボソーム結合部位を含有する。塩基7416〜7469はM13 iiiの18アミノ酸シグナル配列をコードする。シグナルペプチダーゼはAla18の後で切断する。塩基7470〜7475はアミノ酸Ala−Gluをコードし、ここに「a」及び「b」と表示されている。これらはシグナルペプチダーゼIによる効率的な切断を可能にする。塩基7476〜7649はLACI K1ドメインをコードし、野生型配列とともに示され、1〜58の番号が付けられている。多様な位置(11、13、15、16、17、18、19、34、39、及び40)が示されている。示した制限部位はDY3P82 LACIK1内でユニークである。
【図4B】図4Bは、例示的ファージベクターDY3P82 LACIK1のディスプレイカセットのDNA配列(配列番号8)、及びさまざまな提示タンパク質のアミノ酸配列(配列番号9)を説明する。(トリヌクレオチド−多様なコドンの使用は核酸配列表に具体化することができない)。塩基7244〜7415はPlacZプロモーター及びリボソーム結合部位を含有する。塩基7416〜7469はM13 iiiの18アミノ酸シグナル配列をコードする。シグナルペプチダーゼはAla18の後で切断する。塩基7470〜7475はアミノ酸Ala−Gluをコードし、ここに「a」及び「b」と表示されている。これらはシグナルペプチダーゼIによる効率的な切断を可能にする。塩基7476〜7649はLACI K1ドメインをコードし、野生型配列とともに示され、1〜58の番号が付けられている。多様な位置(11、13、15、16、17、18、19、34、39、及び40)が示されている。示した制限部位はDY3P82 LACIK1内でユニークである。
【図4C】図4Cは、例示的ファージベクターDY3P82 LACIK1のディスプレイカセットのDNA配列(配列番号8)、及びさまざまな提示タンパク質のアミノ酸配列(配列番号9)を説明する。(トリヌクレオチド−多様なコドンの使用は核酸配列表に具体化することができない)。塩基7244〜7415はPlacZプロモーター及びリボソーム結合部位を含有する。塩基7416〜7469はM13 iiiの18アミノ酸シグナル配列をコードする。シグナルペプチダーゼはAla18の後で切断する。塩基7470〜7475はアミノ酸Ala−Gluをコードし、ここに「a」及び「b」と表示されている。これらはシグナルペプチダーゼIによる効率的な切断を可能にする。塩基7476〜7649はLACI K1ドメインをコードし、野生型配列とともに示され、1〜58の番号が付けられている。多様な位置(11、13、15、16、17、18、19、34、39、及び40)が示されている。示した制限部位はDY3P82 LACIK1内でユニークである。
【図4D】図4Dは、例示的ファージベクターDY3P82 LACIK1のディスプレイカセットのDNA配列(配列番号8)、及びさまざまな提示タンパク質のアミノ酸配列(配列番号9)を説明する。(トリヌクレオチド−多様なコドンの使用は核酸配列表に具体化することができない)。塩基7244〜7415はPlacZプロモーター及びリボソーム結合部位を含有する。塩基7416〜7469はM13 iiiの18アミノ酸シグナル配列をコードする。シグナルペプチダーゼはAla18の後で切断する。塩基7470〜7475はアミノ酸Ala−Gluをコードし、ここに「a」及び「b」と表示されている。これらはシグナルペプチダーゼIによる効率的な切断を可能にする。塩基7476〜7649はLACI K1ドメインをコードし、野生型配列とともに示され、1〜58の番号が付けられている。多様な位置(11、13、15、16、17、18、19、34、39、及び40)が示されている。示した制限部位はDY3P82 LACIK1内でユニークである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維状ファージ粒子を含むライブラリーであって、各ファージ粒子は、(i) クニッツドメインを含む提示タンパク質、(ii) (a)感染性ファージ粒子を産生するのに十分なファージ遺伝子と(b)提示タンパク質をコードする配列とを含む核酸、を含み、
ここで、クニッツドメインは、2つの相互作用ループのそれぞれに少なくとも1つの多様なアミノ酸位置を含み、それぞれのループでの位置は複数の粒子のあいだで多様であり、そして、ファージ粒子あたりのクニッツドメインの平均コピー数は2.0未満である、前記ライブラリー。
【請求項2】
クニッツドメインが、変化しないアミノ酸位置でヒトクニッツドメインと少なくとも85%同一である、請求項1に記載のライブラリー。
【請求項3】
5〜12のアミノ酸位置が粒子間で変化に富んでいる、請求項1に記載のライブラリー。
【請求項4】
少なくともヒトLACI−K1のアミノ酸位置16、17、18、19、34、及び39に対応するアミノ酸位置が粒子間で変化に富んでいる、請求項3に記載のライブラリー。
【請求項5】
少なくともヒトLACI−K1のアミノ酸位置11、13、15、16、17、18、19、34、及び39に対応するアミノ酸位置が粒子間で変化に富んでいる、請求項4に記載のライブラリー。
【請求項6】
ヒトLACI−K1のアミノ酸位置11、13、15、16、17、18、19、34、39、及び40に対応するアミノ酸位置のみが粒子間で変化に富んでいる、請求項3に記載のライブラリー。
【請求項7】
アミノ酸位置40に対応するアミノ酸位置がG若しくはAであるか、又はGとAのあいだで変化する、請求項1に記載のライブラリー。
【請求項8】
提示タンパク質が、クニッツドメインに融合した小外被タンパク質の機能ドメインを含み、ファージ遺伝子は、(i’) 少なくとも5アミノ酸の非ウイルスアミノ酸配列に融合していないか、又は(ii’) 多様なアミノ酸配列に融合していない小外被タンパク質をコードする遺伝子を含む、請求項1に記載のライブラリー。
【請求項9】
複数のファージ粒子を含むライブラリーであって、複数のファージ粒子のそれぞれは、
(i) クニッツドメイン、及び遺伝子IIIファージ外被タンパク質の少なくとも一部を含む、提示タンパク質、
(ii) 機能遺伝子IIIファージ外被タンパク質、並びに
(iii) (a)感染性ファージ粒子を産生するのに十分なファージ遺伝子、及び(b)提示タンパク質をコードする配列を含む核酸、
を含み、ここで、クニッツドメインは、X以外の位置で、
MHSFCAFKADX11GX13CX1516171819RFFFNIFTRQCEEFX34YGGCX3940NQNRFESLEECKKMCTRDGAと少なくとも85%同一な配列を含む;
11は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
13は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
15は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
16は:A、G、E、D、H、Tのうちの1つであり;
17は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
18は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
19は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
34は:A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
39は:A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;そして
40は:G、Aのうちの1つである、そして
11、X13、X15、X16、X17、X18、X19、X34、X39、及びX40のうち少なくとも2つは複数の粒子間で変化しており、少なくとも2つの多様な位置はクニッツドメインの第1及び第2相互作用ループ内にある、前記ライブラリー。
【請求項10】
提示タンパク質が遺伝子III外被タンパク質スタンプを含む、請求項9に記載のライブラリー。
【請求項11】
ファージ遺伝子が野生型遺伝子III外被タンパク質をコードする遺伝子を含む、請求項9に記載のライブラリー。
【請求項12】
理論的多様性が10〜1012である、請求項9に記載のライブラリー。
【請求項13】
少なくともアミノ酸位置15、16、17、18、34、及び39が変化している、請求項12に記載のライブラリー。
【請求項14】
アミノ酸位置11、13、15、16、17、18、19、34、39、及び40が変化している、請求項12に記載のライブラリー。
【請求項15】
ファージ粒子あたりのクニッツドメインの平均コピー数が1.5未満である、請求項9に記載のライブラリー。
【請求項16】
標的と相互作用するクニッツドメインをコードする核酸を提供する方法であって:
請求項1に記載のライブラリーを提供し;
ライブラリーを形成するファージ粒子を標的と接触させ;そして
標的と相互作用する粒子から核酸を回収する、
ことを含む、前記方法。
【請求項17】
標的が固定されており、回収工程が、標的と相互作用する粒子を標的と相互作用しない粒子から分離することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
標的と相互作用するクニッツドメインをコードする核酸を提供する方法であって:
請求項9に記載のライブラリーを提供し;
ライブラリーを形成するファージ粒子を標的と接触させ;そして
標的と相互作用する粒子から核酸を回収する、
ことを含む、前記方法。
【請求項19】
標的がプロテアーゼである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ファージベクターであって:
(a) 感染性ファージ粒子を産生するのに十分なファージ遺伝子、及び
(b) 提示タンパク質をコードする配列、
を含み、
提示タンパク質は小外被タンパク質の機能ドメイン、及びX以外の位置で、
MHSFCAFKADX11GX13CX1516171819RFFFNIFTRQCEEFX34YGGCX3940NQNRFESLEECKKMCTRDGAと少なくとも85%同一な配列を含むクニッツドメインを含み;
11は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
13は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
15は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
16は:A、G、E、D、H、Tのうちの1つであり;
17は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
18は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
19は:A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
34は:A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;
39は:A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yのうちの1つであり;そして
40は:G、Aのうちの1つである、
ここで、ファージ遺伝子は、長さ5アミノ酸より大きい異種配列と融合しない小外被タンパク質をコードする遺伝子を含む、前記ベクター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

image rotate


【公表番号】特表2007−524348(P2007−524348A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500832(P2006−500832)
【出願日】平成16年1月7日(2004.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/000333
【国際公開番号】WO2004/063337
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(502352519)ダイアックス、コープ (16)
【氏名又は名称原語表記】DYAX CORP.
【Fターム(参考)】