説明

クマリン誘導体及びその用途

【課題】機能性蛍光物質として、特定の分子種の検出や溶液の脂溶性の高さの検出等に好適に利用可能な、新規なクマリン誘導体を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物。


〔式中、R、R、R、R、Rは水素又はCOOR等、XはNRを示し、R、Rは水素、アルキル基等を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なクマリン誘導体及びその蛍光物質としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の機能を持った蛍光物質は、多くの分野の科学研究において非常に有用である(非特許文献1〜2)。例えば、特定の分子種(イオン、小分子、酵素等)と結合又は反応することによってその蛍光特性(励起波長、蛍光波長、蛍光強度等)が変化する機能を持った蛍光分子は、その蛍光特性の変化から、分子種の濃度や活性を見積もることができる。
例えば、従来の蛍光物質として、カルシウムイオンと結合することによって蛍光強度が大きく変化するFluo−3(非特許文献3)や、一酸化窒素と反応することによって蛍光強度が増大するDAF−2(非特許文献4)が知られており(下記反応式参照)、このようなFluo−3やDAF−2は、それぞれカルシウム蛍光センサーや一酸化窒素蛍光センサーとして有用である。
【0003】
【化5】

【0004】
また、このような蛍光物質は、例えば生命科学の研究では、測定対象の分子種の濃度や活性の時空間的な変化を、生きた生体、組織、細胞を用いて解析することができるため、生体内における分子種の機能を解析する為にも有用である。
【0005】
このような有用性の高さから、現在も更に新たな機能性蛍光物質の開発が求められている。
【0006】
【非特許文献1】Lackowitz,J.R.Principles of Fluorescence Spectroscopy,Third Edition;Springler Science:New York,2006.
【非特許文献2】da Silva,A.P.;Gunaratne,H.Q.;Gunnlaugsson,T.;Huxley,A.J.M.;McCoy,C.P.;Rademacher,J.T.;Rice,T.E.Chem.Rev.1997,97,1515−1566.
【非特許文献3】Minta,A.;Kao,J.P.Y.;Tsien,R.Y.J.Biol.Chem.1989,264,8171−8178.
【非特許文献4】Kojima,H.;Nakatsubo,N.;Kikuchi,K.;Kawahara,S.;Kirino,Y.;Nagoshi,H.;Hirata,Y.;Nagano,T.Anal.Chem.1998,70,2446−2453.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、機能性蛍光物質として、特定の分子種の検出や溶液の脂溶性の高さの検出等に好適に利用可能な、新規なクマリン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、機能性蛍光物質を開発するための方法論として、多種類の候補蛍光物質からなるライブラリー構築が有用であると考えた。そこで本発明者らは、図1に示すように、単一の原料(蛍光団)から同様の反応条件にて多種類の化合物を効率よく得るというコンビナトリアル合成法を蛍光物質に適用し、クマリンを基本骨格とした蛍光物質ライブラリーの構築を行っている。
【0009】
クマリンの構造、並びに置換位置は以下の通りである。クマリンに蛍光性を持たせるために、通常、7位には水酸基、アミノ基、アルコキシル基等の電子供与性基が導入される。
【0010】
【化6】

【0011】
これまでに、クマリンの3位に様々な置換基を導入した蛍光物質ライブラリーが報告されていたが(Schiedel,M.−S.;Briehen,C.A.;Bauerle,P.Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,4677−4680.又はSilvakumar,K.;Xie,F.;Cash,B.M.;Long,S.;Barnhill,H.N.;Wang,Q.Org.Lett.2004,6,4603−4606.参照)、これに対し、本発明者らは今回、クマリンの5,6,8位に着目し、芳香環、トリアゾール環を含む置換基を効率的に導入する合成法の開発を行った。
その結果、本発明者らは、特定の分子種を検出し得るプローブ(蛍光センサー分子)や、環境応答型蛍光分子等として好適に利用可能な新規クマリン誘導体を見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物である。
【化7】

〔一般式(1)中、Rは水素又はCOORを示し;Rは水素、CH、CF又はCHCOORを示し;XはOR又はNRを示し;R、R及びRはそれぞれ独立に水素、又は下記一般式(2):
【化8】

で表されるいずれかを示し;YはR、OR、NR、NO、COOR又はCNを示し、或いはYはそれが結合するベンゼン環の隣接する2つの炭素と共に複素環を形成していてもよく;Rは水素、置換基を有していてもよいCH、C又はC(=O)CHを示し;Rは水素、置換基を有していてもよいCH、C又はC(=O)CHを示す。〕
<2> 下記構造式(3a)〜(3o)の少なくともいずれかで表される前記<1>に記載の化合物である。
【化9】

〔構造式(3a)〜(3o)中、Arはそれぞれ下記の構造:
【化10】

を示す。〕
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の化合物を1種以上含むことを特徴とする特定の分子種の検出剤である。
<4> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の化合物を1種以上用いることを特徴とする特定の分子種の検出方法である。
<5> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の化合物を1種以上含むことを特徴とする溶液の脂溶性の高さの検出剤である。
<6> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の化合物を1種以上用いることを特徴とする溶液の脂溶性の高さの検出方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、機能性蛍光物質として、特定の分子種の検出や溶液の脂溶性の高さの検出等に好適に利用可能な、新規なクマリン誘導体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(化合物)
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする新規クマリン誘導体である。
【0015】
【化11】

【0016】
<一般式(1)>
前記一般式(1)中、Rは水素又はCOORを示し;Rは水素、CH、CF又はCHCOORを示し;XはOR又はNRを示し;R、R及びRはそれぞれ独立に水素、又は下記一般式(2):
【0017】
【化12】

で表されるいずれかを示し;YはR、OR、NR、NO、COOR又はCNを示し、或いはYはそれが結合するベンゼン環の隣接する2つの炭素と共に複素環を形成していてもよく;Rは水素、置換基を有していてもよいCH、C又はC(=O)CHを示し;Rは水素、置換基を有していてもよいCH、C又はC(=O)CHを示す。
【0018】
前記Yが、それ(Y)が結合するベンゼン環の隣接する2つの炭素と共に複素環を形成する場合の前記複素環としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環などが挙げられる。
これらの中でも、前記複素環としてはトリアゾール環が好ましい。
【0019】
前記R及び前記Rにおいて、前記CH、C又はC(=O)CHが置換基を有する場合の前記置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン原子、フェニル基、イミダゾール環、ピリジン環等の複素環基などが挙げられる。前記置換基は、前記CH、C又はC(=O)CHの1つ乃至複数の水素と置換される。複数の水素と置換される場合には、同一の置換基で置換してもよく、異なる置換基で置換してもよい。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
なお、前記R、前記Rとしては、メチル(CH)基、エチル(C)基が好ましい。
【0020】
<具体例>
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記構造式(3a)〜(3o)の少なくともいずれかで表される化合物などが好適に挙げられる。
【0021】
【化13】

【0022】
前記構造式(3a)〜(3o)中、Arはそれぞれ下記の構造を示す。
【0023】
【化14】

【0024】
<製造>
前記化合物(3a)〜(3o)の製造方法については、後述する実施例1に詳細かつ具体的に示した。実施例1に記載した方法によれば、一種類の原料化合物(化合物1:実施例1参照)から、同様の反応条件により、多種類の化合物(化合物3a〜3o)を効率的に得ることができる。
当業者であれば、実施例1の具体的説明を参照しつつ、原料化合物、反応条件、試薬等を適宜選択し、必要に応じてこれらの方法に適宜の修飾乃至改変を加えることにより、前記一般式(1)に含まれる化合物をいずれも効率的に製造することができる。
【0025】
<用途>
前記一般式(1)で表される化合物は、蛍光性を有する新規クマリン誘導体であり、その蛍光性を利用して種々の用途に好適に利用可能である。例えば、前記化合物は、後述するような本発明の特定の分子種の検出方法/検出剤や溶液の脂溶性の高さの検出方法/検出剤に好適に利用可能であり、また、これら以外にも様々な用途に好適に利用可能である。
また、例えば前記したような製造方法によれば、一種類の原料化合物から、同様の反応条件により、多種類の一般式(1)で表される化合物を効率的に得ることができる。得られた多種類の化合物は、それぞれが単独で有用であることは勿論であるが、更には得られた多種類の化合物群全体からなる蛍光物質ライブラリーとしても有用である。多種類の化合物を含む蛍光物質ライブラリーを構築しておくことにより、例えば、前記蛍光物質ライブラリーから、所望の機能性を有する蛍光物質(化合物)をより効率的に探索することが可能となる。
【0026】
(特定の分子種の検出方法/特定の分子種の検出剤)
本発明の特定の分子種の検出方法は、前記した本発明の化合物の1種以上を用いることを特徴とする。以下、本発明の特定の分子種の検出方法の説明を通じ、本発明の特定の分子種の検出剤についても説明するものとする。
【0027】
前記したように、本発明の化合物は蛍光性を有する化合物(本明細書中「蛍光物質」と称することがある)であるが、本発明者らは更に、前記化合物が、それらの構造の違いに応じてそれぞれ異なる蛍光特性を有していることを見出した(実施例2(1)参照)。したがって、これらの化合物によれば、前記化合物に結合又は反応することにより前記化合物の構造を変化させる特定の分子種の濃度や活性の強さを、前記化合物の蛍光特性の変化を指標として容易に検出することが可能となる。
【0028】
<特定の分子種>
前記「特定の分子種」の種類としては、前記化合物に結合又は反応することにより、前記化合物の蛍光特性を変化させる性質を有する分子種であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン(水素イオン、カルシウムイオンなど)、小分子(一酸化窒素、一重項酸素など)、酵素(ペプチダーゼ、脱アルキル化酵素など)等から適宜選択することができる。
【0029】
<検出>
前記特定の分子種の検出方法の実施方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、検出対象の試料(例えば、前記特定の分子種を含む試料、前記特定の分子種を含むか否かを評価したい試料等)と、前記化合物とを接触させ、接触前後での前記化合物の蛍光特性の変化を、公知の蛍光測定装置等を用いて測定する方法などが挙げられる。
なお、前記蛍光特性の変化としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光強度の変化、蛍光波長の変化、励起波長の変化などが挙げられる。
接触前後での前記化合物の蛍光特性の変化の有無や、その変化の程度等から、前記試料中の特定の分子種の濃度や活性の強さ等を、適宜判断することができる(具体例としては、後述する実施例2(1)参照)。
【0030】
なお、前記検出方法によれば、生きた生体、組織、細胞等を前記試料として用い、これらにおける特定の分子種の濃度や活性の時空間的な変化等を解析することもできる。したがって、前記検出方法は、例えば生命科学の分野において非常に好適である。
【0031】
<検出剤>
前記特定の分子種の検出方法において、検出対象の試料と接触させる前記化合物としては、前記した本発明の化合物を1種以上含む検出剤(本発明の特定の分子種の検出剤)を使用することが好ましい。前記検出剤に含まれる前記化合物の種類は、検出したい前記分子種の種類に応じて適宜選択することができ、また、前記化合物は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記検出剤は、前記化合物そのものであってもよいし、或いは更に適宜その他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記検出剤中の前記化合物と前記その他の成分との含有量比としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
(溶液の脂溶性の高さの検出方法/溶液の脂溶性の高さの検出剤)
本発明の溶液の脂溶性の高さの検出方法は、前記した本発明の化合物の1種以上を用いることを特徴とする。以下、本発明の溶液の脂溶性の高さの検出方法の説明を通じ、本発明の溶液の脂溶性の高さの検出剤についても説明するものとする。
【0033】
前記したように、本発明の化合物は蛍光性を有する化合物(蛍光物質)であるが、本発明者らは更に、前記化合物が、溶液の脂溶性の高さの違いに応じて蛍光特性が変化する性質を有していることを見出した(実施例2(2)参照)。したがって、これらの化合物によれば、溶液の脂溶性の高さを、前記化合物の蛍光特性の変化を指標として、容易に検出することが可能となる。
【0034】
<溶液>
前記「溶液」の種類としては、特に制限はなく、脂溶性の高さを検出したい任意の溶液を、目的に応じて適宜選択することができる。なお、前記「脂溶性」とは、溶媒分子の分極状態を表す指標であり、分極が強い分子は「脂溶性が低い」、分極が弱い分子は「脂溶性が高い」と表される。
【0035】
<検出>
前記溶液の脂溶性の高さの検出方法の実施方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、検出対象の溶液中での前記化合物の蛍光特性を、公知の蛍光測定装置等を用いて測定し、その蛍光特性を、同様に測定した対照溶液(既に脂溶性の高さがわかっている溶液)中での前記化合物の蛍光特性と比較する方法などが挙げられる。
なお、前記蛍光特性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光強度、蛍光波長、励起波長などが挙げられる。
前記検出対象溶液中での蛍光特性と、前記対照溶液中での蛍光特性とを比較することにより、前記検出対象溶液の脂溶性の高さを、前記対照溶液の脂溶性の高さを基準として相対的に判断することができる。
より具体的には、例えば、前記検出対象溶液中での蛍光強度が、前記対照溶液中での蛍光強度よりも高かった場合に、前記検出対象溶液の脂溶性は、前記対照溶液よりも相対的に高いと判断することができ、逆に、前記検出対象溶液中での蛍光強度が、前記対照溶液中での蛍光強度よりも低かった場合に、前記検出対象溶液の脂溶性は、前記対照溶液よりも相対的に低いと判断することができる(実施例2(2)参照)。
【0036】
<検出剤>
前記溶液の脂溶性の高さの検出に使用する前記化合物としては、前記した本発明の化合物を1種以上含む検出剤(本発明の溶液の脂溶性の高さの検出剤)を使用することが好ましい。前記検出剤に含まれる前記化合物の種類は、目的に応じて適宜選択することができ、また、前記化合物は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、前記化合物としては、脂溶性の高さの違いによる蛍光強度の違いが大きく、検出がし易い点で、例えば化合物3fや化合物3hが好ましいと考えられる(実施例2(2)参照)。
前記検出剤は、前記化合物そのものであってもよいし、或いは更に適宜その他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記検出剤中の前記化合物と前記その他の成分との含有量比としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0037】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0038】
(実施例1:化合物3a〜3oの合成)
実施例1では、下記の合成スキームに従い、本発明の化合物3a〜3oの合成を行った。
【0039】
【化15】

【0040】
以下、化合物3a〜3oの合成手順を詳細に説明する。
なお、上記合成スキームの化合物1は既報の文献(Corrie,J.E.T.;Munasinghe,V.R.N.;Rettig,W.J.Heterocyclic.Chem.2000,37,1447−1455.参照)に記された方法により合成した。化合物2a〜2lは市販品をそのまま用いた。前記市販品はそれぞれ、東京化成工業株式会社、Aldrich社、和光純薬工業株式会社のいずれかから適宜入手した。化合物3kは化合物3mに、化合物3lは化合物3nに、化合物3nは化合物3oへと変換し、本発明の化合物15種類(3a〜3o)から成る蛍光物質ライブラリーを構築した。
【0041】
<化合物3aの合成>
化合物2a(34.3mg,0.168mmol)、フッ化セシウム(43.5mg,0.286mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノフェロセン)ジクロロパラジウム(II)・塩化メチレン錯体(PdCl(dppf)・CHCl,9.4mg,0.012mmol)をDMF(1ml)に溶かした溶液に、化合物1(20.3mg,0.055mmol)をアルゴン雰囲気下、室温で加え、60℃に加熱して2時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和塩化アンモニウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した。減圧下で溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィーで精製することによって、黄色固体の化合物3a(14.5mg,72%)を得た。
融点:123−124℃;H NMR(500MHz,CDCl)・・・8.44(s,1H),7.40(m,4H),7.31(m,1H),7.28(s,1H),6.85(s,1H),4.37(q,J=7.1Hz,2H),3.03(q,J=7.1Hz,4H),1.37(t,J=7.1Hz,3H),0.95(t,J=7.0Hz,6H);13C NMR(125MHz,CDCl)・・・163.8,157.6,156.4,155.2,148.8,140.5,132.7,131.6,128.7(2C),128.2(2C),127.3,112.8,111.1,105.7,61.4,45.8(2C),14.3,12.1(2C);HRMS(ESI)calcd for C2223NONa(M+Na) 388.1525.Found 388.1502;Anal.Calcd for C2223NO:C,72.31;H,6.34;N,3.83.Found:C,72.33;H,6.45;N,3.56.
【0042】
<化合物3bの合成>
化合物3aの合成と同様の方法で、化合物1と化合物2bから、収率85%で黄色粉状物の化合物3bを得た。
融点:170−171℃;H NMR(500MHz,CDCl)・・・8.42(s,1H),7.23(s,1H),7.21(d,J=8.4Hz,2H),6.80(s,1H),6.73(d,J=8.3Hz,2H),4.36(q,J=7.1Hz,2H),3.76(br s,2H),3.05(q,J=7.1Hz,4H),1.36(t,J=7.1Hz,3H),0.95(t,J=7.1Hz,6H);13C NMR(125MHz,CDCl)・・・163.8,157.8,156.1,155.4,148.9,145.2,132.3,131.7,130.8,129.1(2C),115.5(2C),112.4,111.1,105.6,61.4,45.5(2C),14.3,12.1(2C);HRMS(ESI)calcd for C2224Na(M+Na) 403.1634.Found 403.1608;Anal.Calcd for C2224・1/8HO:C,69.05;H,6.39;N,7.32.Found:C,69.05;H,6.36;N,7.34.
【0043】
<化合物3cの合成>
化合物3aの合成と同様の方法で、化合物1と化合物2cから、収率63%で黄色針状物の化合物3cを得た。
融点:125−126℃;H NMR(500MHz,CDCl)・・・8.43(s,1H),7.57(d,J=8.1Hz,2H),7.48(s,1H),7.38(d,J=8.2Hz,2H),7.25(s,1H),6.82(s,1H),4.36(q,J=7.1Hz,2H),3.03(q,J=7.0Hz,4H),2.19(s,3H),1.36(t,J=7.1Hz,3H),0.95(t,J=7.0Hz,6H);13C NMR(125MHz,CDCl)・・・168.4,163.7,157.7,156.3,155.3,148.8,137.3,136.1,132.6,131.1,128.7(2C),120.0(2C),112.8,111.2,105.9,61.5,45.7(2C),24.6,14.3,12.1(2C);HRMS(ESI)calcd for C2426Na(M+Na) 445.1739.Found 445.1713;Anal.Calcd for C2426:C,68.23;H,6.20;N,6.63.Found:C,68.03;H,6.23;N,6.57.
【0044】
<化合物3dの合成>
化合物3aの合成と同様の方法で、化合物1と化合物2dから、収率66%で黄色固体の化合物3dを得た。
融点:166−168℃;H NMR(500MHz,CDCl)・・・8.42(s,1H),7.29(d,J=8.7Hz,2H),7.24(s,1H),6.80(s,1H),6.73(d,J=8.4Hz,2H),4.36(q,J=7.1Hz,2H),3.06(q,J=7.1Hz,4H),2.97(s,6H),1.36(t,J=7.1Hz,3H),0.96(t,J=7.1Hz,6H);13C NMR(125MHz,CDCl)・・・163.9,157.8,155.9,155.5,149.6,148.9,132.2,131.9,128.7(2C),128.2,112.5(2C),112.3,111.1,105.6,61.3,45.5(2C),40.4(2C),14.3,12.1(2C);HRMS(ESI)calcd for C2428Na(M+Na) 431.1947.Found 431.1930;Anal.Calcd for C2428:C,70.57;H,6.91;N,6.86.Found:C,70.41;H,6.86;N,6.86.
【0045】
<化合物3eの合成>
化合物3aの合成と同様の方法で、化合物1と化合物2eから、収率28%で黄色粉状物の化合物3eを得た。
融点:123−124℃;H NMR(500MHz,CDCl)・・・8.45(s,1H),8.28(d,J=8.8Hz,2H),7.64(d,J=8.8Hz,2H),7.33(s,1H),6.91(s,1H),4.38(q,J=7.1Hz,2H),3.03(q,J=7.1Hz,4H),1.38(t,J=7.2Hz,3H),0.98(t,J=7.1Hz,6H);13C NMR(125MHz,CDCl)・・・163.5,157.1,156.9,154.9,148.4,147.1,147.0,132.6,129.4,129.0(2C),124.2(2C),114.0,111.6,106.7,61.7,46.1(2C),14.3,11.9(2C);HRMS(ESI)calcd for C2222Na(M+Na) 433.1376.Found 433.1381;Anal.Calcd for C2222・1/4HO:C,63.68;H,5.47;N,6.75.Found:C,63.90;H,5.45;N,6.49.
【0046】
<化合物3fの合成>
化合物3aの合成と同様の方法で、化合物1と化合物2fから、収率75%で黄色針状物の化合物3fを得た。
融点:112−113℃;H NMR(500MHz,CDCl)・・・8.44(s,1H),7.29(d,J=8.6Hz,2H),7.25(s,1H),6.88(d,J=8.6Hz,2H),6.84(s,1H),5,15(br s,1H),4.37(q,J=7.1Hz,2H),3.04(q,J=7.1Hz,4H),1.37(t,J=7.1Hz,3H),0.96(t,J=7.1Hz,6H);13C NMR(125MHz,CDCl)・・・163.9,158.1,156.2,155.5,155.4,149.1,132.6,132.5,131.5,129.4(2C),115.8(2C),112.3,111.1,105.6,61.5,45.6(2C),14.3,12.1(2C);HRMS(ESI)calcd for C2222NO(M−H) 380.1498.Found 380.1491;Anal.Calcd for C2223NO:C,69.28;H,6.08;N,3.67.Found:C,69.02;H,6.20;N,3.65.
【0047】
<化合物3gの合成>
化合物3aの合成と同様の方法で、化合物1と化合物2gから、収率63%で黄色針状物の化合物3gを得た。
融点:70−71℃;H NMR(500MHz,CDCl)・・・8.43(s,1H),7.35(d,J=8.8Hz,2H),7.26(s,1H),6.93(d,J=8.8Hz,2H),6.85(s,1H),4.37(q,J=7.1Hz,2H),3.84(s,3H),3.04(q,J=7.1Hz,4H),1.37(t,J=7.1Hz,3H),0.96(t,J=7.1Hz,6H);13C NMR(125MHz,CDCl)・・・163.8,159.0,157.6,156.2,155.1,148.8,132.7,132.5,131.4,129.3(2C),114.2(2C),112.9,111.3,106.0,61.5,55.3,45.8(2C),14.3,12.1(2C);HRMS(ESI)calcd for C2325NONa(M+Na) 418.1630.Found 418.1608rt;Anal.Calcd for C2325NO:C,69.86;H,6.37;N,3.54.Found:C, 69.62;H,6.40;N,3.54.
【0048】
<化合物3hの合成>
化合物3aの合成と同様の方法で、化合物1と化合物2hから、収率58%で黄色固体の化合物3hを得た。
融点:79−80℃;H NMR(500MHz,CDCl)・・・8.44(s,1H),8.00(d,J=8.4Hz,2H),7.55(d,J=8.4Hz,2H),7.30(s,1H),6.87(s,1H),4.37(q,J=7.1Hz,2H),3.02(q,J=7.1Hz,4H),2.62(s,3H),1.37(t,J=7.1Hz,3H),0.96(t,J=7.1Hz,6H);13C NMR(125MHz,CDCl)・・・197.4,163.6,157.3,156.7,155.0,148.6,145.4,136.0,132.6,130.4,128.9(2C),128.4(2C),113.4,111.3,106.2,61.6,45.9(2C),26.6,14.3,12.0(2C);HRMS(ESI)calcd for C2425NONa(M+Na) 430.1630.Found 430.1606;Anal.Calcd for C2425NO:C,70.74;H,6.18;N,3.44.Found:C,70.55;H,6.29;N,3.42.
【0049】
<化合物3iの合成>
化合物3aの合成と同様の方法で、化合物1と化合物2iから、収率45%で黄色針状物の化合物3iを得た。
融点:174−176℃;H NMR(500MHz,CDCl)・・・8.44(s,1H),7.70(d,J=8.3Hz,2H),7.58(d,J=8.3Hz,2H),7.29(s,1H),6.89(s,1H),4.37(q,J=7.1Hz,2H),3.01(q,J=7.1Hz,4H),1.37(t,J=7.1Hz,3H),0.97(t,J=7.0Hz,6H);13C NMR(125MHz,CDCl)・・・163.5,157.2,156.8,154.9,148.5,145.2,132.6(2C),132.6,129.7,128.9(2C),118.6,113.7,111.5,111.2,106.5,61.6,45.9(2C),14.3,11.9(2C);HRMS(ESI)calcd for C2322Na(M+Na) 413.1477.Found 413.1462;Anal.Calcd for C2322:C,70.75;H,5.68;N,7.17.Found:C,70.61;H,5.75;N,6.99.
【0050】
<化合物3jの合成>
化合物3aの合成と同様の方法で、化合物1と化合物2jから、収率46%で黄色固体の化合物3jを得た。
融点:115−117℃;H NMR(500MHz,CDCl)・・・8.44(s,1H),8.07(d,J=8.2Hz,2H),7.52(d,J=8.3Hz,2H),7.31(s,1H),6.88(s,1H),4.37(q,J=7.1Hz,2H),3.93(s,3H),3.02(q,J=7.1Hz,4H),1.37(t,J=7.1Hz,3H),0.96(t,J=7.0Hz,6H);13C NMR(125MHz,CDCl)・・・166.7,163.6,157.3,156.6,155.0,148.6,145.2,132.6,130.4,130.1(2C),129.1,128.2(2C),113.2,111.2,106.0,61.5,52.1,45.8(2C),14.2,12.0(2C);HRMS(ESI)calcd for C2425NONa(M+Na) 446.1580.Found 446.1583;Anal.Calcd for C2425NO:C,68.07;H,5.95;N,3.31.Found:C,67.78;H,5.94;N,3.30.
【0051】
<化合物3kの合成>
化合物3aの合成と同様の方法で、化合物1と化合物2kから、収率63%で黄色固体の化合物3kを得た。
融点:121−123℃;H NMR(500MHz,CDCl)・・・8.44(s,1H),8.11(d,J=8.4Hz,2H),7.52(d,J=8.5Hz,2H),7.46(d,J=7.0Hz,2H),7.39(m,2H),7.34(m,1H),7.30(s,1H),6.86(s,1H),5.37(s,2H),4.37(q,J=7.1Hz,2H),3.01(q,J=7.1Hz,4H),1.37(t,J=7.1Hz,3H),0.95(t,J=7.1Hz,6H);13C NMR(125MHz,CDCl)・・・166.1,163.6,157.4,156.7,155.0,148.6,145.3,136.0,132.6,130.4,130.2(2C),129.1,128.6(2C),128.33,128.27(2C),128.2(2C),113.3,111.3,106.1,66.8,61.5,45.9(2C),14.3,12.0(2C);HRMS(ESI)calcd for C3029NONa(M+Na) 522.1893.Found 522.1888;Anal.Calcd for C3029NO・1/8HO:C,71.80;H,5.88;N,2.79.Found:C,71.70;H,6.01;N,2.81.
【0052】
<化合物3lの合成>
化合物3aの合成と同様の方法で、化合物1と化合物2lから、収率62%で黄色粉状物の化合物3lを得た。
融点:187−188℃;H NMR(500MHz,CDCl)・・・8.44(s,1H),8.23(d,J=2.1Hz,1H),7.52(dd,J=8.6,2.1Hz,1H),7.31(s,1H),6.89(s,1H),6.86(d,J=8.6Hz,1H),6.21(br s,2H),4.37(q,J=7.2Hz,2H),3.06(q,J=7.1Hz,4H),1.37(t,J=7.1Hz,3H),0.99(t,J=7.1Hz,6H);13C NMR(125MHz,CDCl)・・・163.5,157.4,156.2,155.2,148.6,144.0,135.8,132.1,132.1,129.8,128.9,125.0,119.2,113.3,111.7,106.7,61.5,45.6(2C),14.2,11.9(2C);HRMS(ESI)calcd for C2222(M−H) 424.1509.Found 424.1513;Anal.Calcd for C2223:C,62.11;H,5.45;N,9.88.Found:C,62.02;H,5.65;N,9.76.
【0053】
<化合物3mの合成>
化合物3k(110.4mg,0.221mmol)をメタノール:テトラヒドロフラン(2:1)3mLに溶かし、10%Pd/C(パラジウム炭素、17.0mg)を室温下で加え、水素雰囲気下で40分間撹拌した。反応液をろ過後、カラムクロマトグラフィーにて精製し、黄色粉状物の化合物3m(66.0mg,73%)を得た。
融点:249−250℃;H NMR(500MHz,CDCl)・・・11.06(br s,1H),8.46(s,1H),8.15(d,J=8.3Hz,2H),7.56(d,J=8.3Hz,2H),7.33(s,1H),6.86(s,1H),4.36(q,J=7.1Hz,2H),3.03(q,J=7.1Hz,4H),1.36(t,J=7.1Hz,3H),0.96(t,J=7.1Hz,6H);13C NMR(125MHz,CDCl)・・・170.9,163.6,157.4,156.7,154.9,148.6,146.1,132.7,130.8(2C),130.3,128.4(2C),128.1,113.4,111.4,106.2,61.6,46.0(2C),14.3,12.0(2C);HRMS(ESI)calcd for C2322NO(M−H) 408.1447.Found 408.1450;Anal.Calcd for C2323NO・1/4HO:C,66.74;H,5.72;N,3.38.Found:C,66.98;H,5.76;N,3.35.
【0054】
<化合物3nの合成>
化合物3l(120.9mg,0.284mmol)を2.5mLのメタノールに溶かし、10%Pd/C(パラジウム炭素、39.1mg)を室温下で加え、水素雰囲気下で2時間撹拌した。反応液をろ過後、カラムクロマトグラフィーにて精製し、黄色粉状物の化合物3n(72.5mg,65%)を得た。
融点:185−186℃;H NMR(500MHz,CDCl)・・・8.41(s,1H),7.23(s,1H),6.82−6.75(m,4H),4.36(q,J=7.1Hz,2H),3.68(br s,4H),3.07(q,J=7.1Hz,4H),1.37(t,J=7.1Hz,3H),0.96(t,J=7.1Hz,6H);13C NMR(125MHz,CDCl)・・・163.9,157.9,156.1,155.3,149.0,134.7,134.0,132.5,132.4,131.5,120.0,116.9,116.4,112.0,110.8,105.2,61.3,45.5(2C),14.2,12.1(2C);HRMS(ESI)calcd for C2224(M−H) 394.1767.Found 394.1760;Anal.Calcd for C2225・1/4HO:C,66.07;H,6.43;N,10.51.Found:C,66.01;H,6.27;N,10.44.
【0055】
<化合物3oの合成>
化合物3n(47.8mg,0.131mmol)をメタノール:水(1:4)2mLに溶かし、酢酸(0.2ml)、亜硝酸ナトリウム(21.4mg,0.310mmol)を室温下で加えた。5分間撹拌後、反応液を酢酸エチルで希釈し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄した。溶媒を留去後、カラムクロマトグラフィーにて精製し、黄色粉状物の化合物3o(50.2mg,94%)を得た。
融点:232−233℃;H NMR(500MHz,CDCl)・・・8.51(s,1H),8.02(s,1H),7.98(d,J=8.6Hz,1H),7.55(dd,J=8.6,1.0Hz,1H),7.41(s,1H),6.91(s,1H),4.38(q,J=7.1Hz,2H),3.05(q,J=7.1Hz,4H),1.36(t,J=7.1Hz,3H),0.96(t,J=7.0Hz,6H);13C NMR(125MHz,CDCl)・・・163.7,158.1,156.5,155.2,149.0,139.3,138.4,138.3,133.4,131.1,127.0,115.5,114.1,112.5,111.4,106.0,61.7,52.2,46.0(2C),14.3,12.1(2C);HRMS(ESI)calcd for C2221(M−H) 405.1563.Found 405.1564;Anal.Calcd for C2222:C,65.01;H,5.46;N,13.78.Found:C,64.72;H,5.60;N,13.68.
【0056】
(実施例2:各化合物の機能性確認)
実施例2では、前記実施例1で合成した本発明の化合物(化合物3a〜3o)の蛍光特性を検討し、各化合物が種々の機能性を有した蛍光物質であることを確認した。
【0057】
(1)蛍光センサー分子としての機能(特定の分子種を検出する機能)
水溶液(1mM リン酸バッファー(pH7.4))中での、各化合物3μMの励起波長420nmにおける蛍光スペクトルを、分光蛍光光度計(日本分光株式会社製、FP−6600)を用いて測定した。
【0058】
結果の一部を図2に示す。化合物3a〜3oは、それぞれの構造の違いに応じて蛍光特性が異なり、したがって、本発明の化合物は例えば以下のような用途に好適であることが示された。
化合物3cから3bへの変換は、アミド基からアミノ基への変換であり、変換により全く無蛍光の状態になる(図2(i))。こうした反応は、例えば生体内に存在するペプチダーゼの検出に適用することができる。
化合物3nから3oへの変換は、ジアミノ基からトリアゾールへの変換であり、変換により全くの無蛍光の状態から、蛍光を持つようになる(図2(ii))。こうした反応は、例えば生体内において血管収縮などを担う生理活性物質である一酸化窒素の検出に適用することができる。
化合物3gから3fへの変換は、メトキシ基から水酸基への変換であり、変換により蛍光強度が約5分の1に減少する(図2(iii))。こうした反応は、例えば生体内の脱アルキル化酵素やグリコシダーゼの検出に適用できると考えられる。
【0059】
(2)環境応答型蛍光分子としての機能(溶液の脂溶性の高さを検出する機能)
水溶液(1mM リン酸バッファー、pH7.4)中、メタノール中、アセトニトリル中、又は塩化メチレン中での各化合物3a〜3oの蛍光強度(FI)は、個々の化合物が最も強い蛍光強度を持つ励起波長、蛍光波長における蛍光強度を、分光蛍光光度計(日本分光株式会社製、FP−6600)を用いて測定した。(なお、用いた溶媒の脂溶性の高さは、「塩化メチレン」>「アセトニトリル」>「メタノール」>「水溶液」の順である。)
【0060】
結果を表1に示す。ほとんどの化合物が脂溶性の高い溶媒になるのに伴い蛍光強度が増大した。また、その変化量は個々の化合物で異なっていた。特に、化合物3f及び化合物3hでは、水溶液中と塩化メチレン中で比較すると、200倍以上の蛍光強度の増大が起こっていた。
これらの結果から、本発明の化合物が、溶液の脂溶性の高さを検出する用途に好適であることが示された。
【0061】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の化合物は蛍光性を有する新規クマリン誘導体であり、その蛍光性を利用して種々の用途に好適に利用可能である。例えば、前記化合物は、イオン、小分子、酵素等の特定の分子種の検出や、溶液の脂溶性の高さの検出等に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明者らが実施した蛍光物質ライブラリーの構築方法を示す概念図である。
【図2】図2は、水溶液(1mM リン酸バッファー(pH7.4)中での各化合物の蛍光スペクトルを示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物。
【化1】

〔一般式(1)中、Rは水素又はCOORを示し;Rは水素、CH、CF又はCHCOORを示し;XはOR又はNRを示し;R、R及びRはそれぞれ独立に水素、又は下記一般式(2):
【化2】

で表されるいずれかを示し;YはR、OR、NR、NO、COOR又はCNを示し、或いはYはそれが結合するベンゼン環の隣接する2つの炭素と共に複素環を形成していてもよく;Rは水素、置換基を有していてもよいCH、C又はC(=O)CHを示し;Rは水素、置換基を有していてもよいCH、C又はC(=O)CHを示す。〕
【請求項2】
下記構造式(3a)〜(3o)の少なくともいずれかで表される請求項1に記載の化合物。
【化3】

〔構造式(3a)〜(3o)中、Arはそれぞれ下記の構造:
【化4】

を示す。〕
【請求項3】
請求項1から2のいずれかに記載の化合物を1種以上含むことを特徴とする特定の分子種の検出剤。
【請求項4】
請求項1から2のいずれかに記載の化合物を1種以上用いることを特徴とする特定の分子種の検出方法。
【請求項5】
請求項1から2のいずれかに記載の化合物を1種以上含むことを特徴とする溶液の脂溶性の高さの検出剤。
【請求項6】
請求項1から2のいずれかに記載の化合物を1種以上用いることを特徴とする溶液の脂溶性の高さの検出方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−208039(P2008−208039A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43878(P2007−43878)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(504179255)国立大学法人 東京医科歯科大学 (228)
【Fターム(参考)】