説明

クモ類を防除するためのアロモン忌避性およびカイロモン誘引性組成物

カモ類およびニワトリの尾腺から排出されるアロモンおよびカイロモンの組成物を説明し、その外クモ類を処理する方法を説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クモ類を処理するための、カモ類(ducks)およびニワトリの尾腺から排出されるアロモンおよびカイロモンの組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クモ綱(類)は、昆虫および甲殻類と同じ節足動物類であるが、8本の足を有し、羽または触角を持たず、2つの体領域および気管または肺源の呼吸機構を有する、節足動物の一つの綱である。クモ綱(類)には、クモ、ダニ、マダニ、ガガンボ(daddy long legs)およびサソリが含まれる。
【0003】
特定のクモ綱(類)は、脊椎動物にとって不快なものである。一例として、クロゴケグモは、有毒であり、プレーリーガラガラヘビの毒の15倍の毒性である。クロゴケグモは、特定の宿主の好みはなく、したがってどんな対象でも咬む。多くの例においてクロゴケグモの咬傷からの毒は、致命的ではないが、若年者または高齢者で死亡が発生する一部のケースがなお存在する。
【0004】
このことは、マウスおよびシカが、マダニの宿主となる、一般的に最もうつされやすい動物であるということにおいて、マダニと対照的である。マダニは、シカダニの咬傷からうつされる細菌ボレリア・ブルグドルフェリ (Borrelia burgdorferi) によって引き起こされる、皮膚の変化、関節の炎症およびインフルエンザ様症状を特徴とする急性炎症性疾患を生じさせる、ライム病の原因であることが周知である。ライム病が、ヒトにおいて数ヶ月および数年に渡ってさえ生じ得る、散在性の痛み、疼痛、記憶障害および種々の医学的問題の慢性症候群に結び付けられてきたことがよく知られている。ライム病の症例数は、過去2、3年に渡り増えており、2000年には米国だけで、17,730件という高い記録が報告された。
【0005】
なお、クモ類の別のカテゴリーにダニ類があるが、それらは、寄生性および宿主特異性である。あるダニ類は、鳥類、げっ歯類、食品材料、植物およびハウスダストから移動して、ヒトを攻撃し、そして不快にし得る。トリサシダニ(Ornithonyssus sylviarum)、ワクモ(Dermanyssus gallinae)、イエダニ(Omithonyssus bacoti)、イエネズミダニ(Liponyssoides sanuineus)、ニキビダニ(Demodex folliculorum)、掻痒または疥癬ダニ(ヒトヒゼンダニ)(Sarcoptes scabiei hominis)、シラミダニ(Pyemotes tritici)、コナダニ(Acarus siro L.)およびコナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)ならびにチリダニ(Dermatophagoides sp.)を含む、異なるカテゴリーのダニ類もある。
【0006】
ダニ類は、種々の他の動物にもうつる。成虫は、種々の場所に見出されるが、卵は、通常、土壌表面、割れ目および隙間、ある例においてはそれらが感染する宿主の皮膚の下に生みつけられる。穴居性疥癬ダニ(Sarcoptes scabies)は、非穴居性疥癬ダニ(Chorioptes bovis)と同様に、ヒトを含む多くの動物に感染することが知られている。かなりまれであるが、ネコ疥癬ダニ(Notoedres cati)は、高度に接触感染性であり、子ネコ、ネコおよびウサギに感染する。プソロプテス・オビス(Psoroptes ovis)は、ヒツジに感染するダニである。プソロプテス・ボビス(Psoroptes bovis)は、畜牛に感染し、そして、プソロプテス・クニクリ(Psoroptes cuniculi)はウサギに感染する。プソロプテス(Psoroptes)群のダニ類は、感染した動物に疥癬を引き起こす。
【0007】
葉巻形状のダニであるデモデックス・ホリクロルム(Demodex folliculorum)は、イヌデモデックス症を引き起こす。イヌにおけるこの皮膚疾患は、皮膚の症状が、うろこ形状または膿疱形状のどちらかを引き起こし得るために、処置するのが困難である。一般に、抗生物質および抗ヒスタミン剤を用いた反復処置が必要とされる。普通、ワクモまたはアカワクモとして知られているデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae)は、家禽のアカダニであり、通常、夜間にのみ鳥にくいつく。ネコおよびイヌは、家禽との接触の結果として感染され得る。
【0008】
例えば、ペットの鳥、子ネコ、ネコおよびウサギにも、ダニは感染し得る。ペットのアレチネズミに、トリサシダニおよびワクモが寄生するようになったことも、近年報告されている。吸血ダニは、脳炎も媒介し、トリサシダニ皮膚炎およびダニ症を引き起こし得る。
【0009】
ダニ類は寄生性であり、宿主にくいつき、その血液を吸い、貧血、掻痒、皮膚炎および疥癬を引き起こし得る。それらの寄生性が、特定のダニを、ヒトに対してだけでなく、特に、養鶏業などの特定の産業に対しても、脅威としている。
【0010】
トリサシダニ(Omithonyssus sylviarum)は、産卵を10〜15%まで減少させることができる多くの個体数を有する、家禽の外部寄生動物であることがよく知られている。ライフサイクル全体は、鳥にて完了し得、卵、幼虫、若虫段階および成虫のみからなる。8本脚の成虫は、長さ約1/26インチであり、色は暗赤色〜黒色である。ライフサイクル全体は、1週間以内に完了し得る。
【0011】
トリサシダニ以外に、ワクモ(Dermanyssus gallinae)は、夜間に家禽から血液を吸い、日中は隠れたままである。一般に、これらのダニ類は、色が灰色であり、摂食後は赤色に変わる。これらのダニ類は、拡大鏡を用いなければめったに見ることができない。ダニ類の深刻な蔓延がある場合、各種家禽の体重の増加は、産卵と同様に減少する。ダニ類の大規模な蔓延を伴う一部の例において、若鶏および抱卵中の雌鶏は、ダニ誘発性貧血から実際に死亡することがある。
【0012】
養鶏でのダニの蔓延は、深刻な問題であり、産卵の損失だけでなく、ブロイラーチキン自体の損失も引き起こす。養鶏業は、現在、ダニ類の蔓延により多大な金銭を失っていることに気付いている。多くの場合、衛生的な栄養供給は、ダニ類を殺すために使用されるすべての化学製品が生きた家禽の存在下では使用できないことを要求しているため、この問題には簡単な解決策はない。
【0013】
ダニ類の問題を処理するために、多くの化学製品が利用できる。これらの製品は、2、3の殺ダニ剤を挙げれば、アクトグラド(Actograd:Virbac社)、タゴン(Tugon) 80(Bayer社)、セバシル(Sebacil:Bayer社)およびエトコデックス(Etcodex:Hoechst社)を含む。しかし先に述べたように、これらの製品は、家禽の存在下で使用できず、そしてそれゆえ養鶏業者は、これらの製品を使用するときは、雛鳥および雌鶏を小屋から移動させる必要がある。
【0014】
殺ダニ剤以外に、ダニ類および各種の他のクモ類を処理するための他の代用品がある。これらの処理は、家禽小屋を消毒するためのガスによる処理およびシリカ粉末の使用を含む。しかし、前者の方法は、たいへん費用がかかり、処理中に家禽を別の環境に収容する必要がある。また、この処理で使用するガスの分子は、時々、ヒトおよび動物の健康に有害である。
【0015】
シリカ粉末処理は、家禽の存在下で実施され得るが、非常に多くの薬用量を必要とし、そして家禽小屋全体にシリカ粉末を充満させざるを得ない。その上、シリカ粉末は、鳥と人間の両方に、多数の肺疾患を引き起こすことが知られている。
【0016】
化学薬品およびシリカ粉末処理に伴なう最も顕著な問題の1つは、ダニ類は家禽小屋の割れ目や隙間に棲むことが知られており、それゆえ、化学殺ダニ剤およびシリカ粉末処理を用いて殺すことは困難である。
【0017】
家禽へのダニ類の蔓延により、養鶏業者は、彼らのビジネスの10〜40%を失う。ひとたびダニ類が群になって存在すれば、1回の処理の試みでダニ類を根絶することは不可能である。実際に、米国では、家禽小屋に10の規模で4ヶ月を越える期間にダニ類が蔓延すると、平均8の規模で、家禽または鶏小屋は完全に破壊される。家禽または鶏小屋の破壊後は、小屋が建っていた土地は、その周囲400メートルと共に、消毒されてから、新しい家禽小屋が建てられる。この手順は、ダニ蔓延を一掃するためには極めて効果的であるが、非常に費用がかかることが認識できる。
【0018】
それゆえ、当分野では、他の動物またはヒトを害さずに、養鶏業において、クモ類および特にデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae:ワクモ)を処理する問題に対する、よりよい解決策を見出す必要性がある。
【0019】
化学的伝達に介在できる、異なる腺によって生成される分泌物が、化学信号として知られている。化学信号の中でも、種内伝達に厳密に関与する化学信号であり、該信号は種間伝達に関与する化学信号とは区別され得る。
【0020】
種内伝達に関与するこれらの化学信号は、フェロモンと呼ばれる。フェロモンは、定義により、同じ種の別の個体による予知できる反応を引き起こす、体によって放出される物質であり、その物質は、例えば、特異的誘引物質、社会的伝達物質、性的刺激物質などとして作用し得る。哺乳類のオスでは、多数の異なる腺、例えば、顎下腺、唾液腺、副甲状腺および脂腺が、フェロモンを生成することが知られている。フェロモンの各種用途が、米国特許第6,054,481号、第6,077,867号および第6,169,113号に記載されている。
【0021】
種間伝達に関与するこれらの化学信号は、アレロケミカル信号の一般カテゴリにグループ分けされる。
【0022】
一般に、アレロケミカル信号は、2つの下位グループに分けられ、そして、それらの機能は、信号の放出者(emitter)およびメッセージの感受者(receiver)の間の関係に影響を及ぼす。放出される化学信号があり、それが放出者に好ましい関係にあるとき、下位のグループ分けはアロモンとして知られている。定義により、アロモンは、1つの種によって生成されるホルモンまたは物質であり、特に、放出種の利益になるような、別の種に対する効果を有する。例えば、ある花から放出される誘引性アロモンは、これらの花を受粉し得る各種の昆虫を誘引することができる。
【0023】
対照的に、放出された化学信号が、感受者と好ましい関係にあるとき、下位のグループ分けはカイロモンとして知られている。カイロモンは、定義により、他の種および時には天敵さえ誘引できるフェロモンまたは物質である。カイロモンは、時には、寄生生物による特定の宿主の所在確認に関係している。例えば、ヒトの皮膚から放出される乳酸は、多数のクリシダエ(Culicidae)に知られたカイロモンである。
【0024】
アロモンおよびカイロモンは、エンドユーザに害を生ぜずに分解する天然物質である。これらの化学物質は免疫性も引き起こさず、そして安全である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
それゆえ一態様において、本発明は、クモ類の蔓延を処理するために使用可能であり、安全および効果的であり、そしてヒトを含む他の動物の存在下で使用できる、カモの忌避性アロモン(duck repulsive allomone)およびニワトリの誘引性カイロモン(chicken attractive kairomone)を提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、ワクモまたはトリサシダニによる家禽感染を処置または防止するために使用できるカモの忌避性アロモンを提供する。
【0027】
更に別の態様において、本発明は、ワクモまたはトリサシダニをトラップする粘着性材料と併用できる、ニワトリの誘引性カイロモンを提供する。
【0028】
更に別の態様において、本発明は、雌鶏、ニワトリ、シチメンチョウ、カモ類、ガチョウおよび雛鳥などの鳥類におけるワクモまたはトリサシダニを処理または防止する方法に関し、上記方法は、このような処置を必要とする雌鶏、ニワトリ、または雛鳥に、カモのデルマニサス(Dermanyssus)忌避性アロモンの薬学的に有効な量を投与することを含む。
【0029】
これらおよび他の目的は、本発明の概要、好ましい実施態様の説明および請求項によって明示されているように、本発明によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、それゆえ、カモの忌避性アロモンまたはニワトリの誘引性カイロモンに関する。アロモンおよびカイロモンは、それぞれ、カモ類およびニワトリ類の尾腺から排出される。
【0031】
本発明のカモの忌避性アロモン組成物は、クモ類、マダニ類およびダニ類などのクモ類を忌避するのに使用され得、それゆえ、これらのクモ類が宿主を咬むことまたは宿主を摂食することを防止する。
【0032】
別の見地において、本発明は、クモ類を誘引するために使用され得るカイロモン組成物を提供する。クモ類が、いったんこのカイロモンに誘引されると、粘着性材料を用いて、または、ダニに、トラップ内にある殺ダニ剤を摂食させることによって、トラップされ得る。カイロモンは摂食挙動を誘発し、それゆえ、ダニが、例えばポリエチレンフィルムなどの、いずれかの種類の粘着性表面に付着することを高めることができる。
【0033】
別の見地において、本発明は、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートおよび/またはそれらの誘導体ならびに/あるいはそれらの異性体を含む、その外ビス(2−エチルヘキシル)アジパートまたは2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートと、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートもしくは2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体1つ以上との、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートまたは2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの異性体1つ以上および/またはビス(2−エチルヘキシル)アジパートもしくは2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む、カモの忌避性アロモンを提供する。
【0034】
別の見地において、本発明は、ビス(2−エチルヘキシル)アジパート約45.0〜55.0重量%および2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラート約45.0〜55.0重量%、および/またはビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル 1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体(エステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミド)、および/またはビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートおよびそれらの誘導体の異性体を含む、その外ビス(2−エチルヘキシル)アジパートまたは2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートと、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体(エステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミド)1つ以上との、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの異性体1つ以上および/またはそれらの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む、カモの忌避性アロモン組成物を提供する。
【0035】
別の見地において、本発明は、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンおよび/またはそれらの誘導体ならびに/あるいはそれらの異性体を含む、その外1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの1つ以上と、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの誘導体1つ以上との、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール(オレイルアルコール)、オクタデカンの異性体1つ以上および/または1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む、ニワトリの誘引性カイロモン組成物を提供する。
【0036】
別の見地において、本発明は、1−ヘプタデセン約23.5〜26.5重量%、ヘプタデカン約23.5〜26.5重量%、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)約23.5〜26.5重量%およびオクタデカン約23.5〜26.5重量%および/または1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンの誘導体(エステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミド)ならびに/あるいはそれらの異性体を含む、その外1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの1つ以上と、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンの誘導体(エステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミド)1つ以上との、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの異性体1つ以上および/または1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む、ニワトリの誘引性カイロモン組成物を提供する。
【0037】
先に記載したアロモンまたはカイロモンの組成物は、0.1%〜99.9%の可変濃度を有し得る。しかし、ここに記載された特定の濃度を使用するときに、効果が向上する。その上、カイロモン組成物において、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンから選択される化合物のうち少なくとも2つが処方物で使用され得、なおカイロモンの効果を有する。
【0038】
別の実施態様において、本発明は、クモ類を忌避する方法に関し、上記方法は、カモの忌避性アロモンの忌避量を、このような処理の必要な動物に投与することを含む。
【0039】
クモ類を忌避する方法では、上記方法は、このような処理を必要とするヒトに、カモの忌避性アロモンの薬学的に許容されうる量を投与することを含む。これらのクモ類は、これに限定されるわけではないが、デルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae:ワクモ)、マダニまたはオリソニサス(Omithonyssus:イエダニ)を含む。
【0040】
別の見地において、本発明は、雌鶏、ニワトリ、カモ類、ガチョウ、シチメンチョウ、および雛鳥におけるワクモまたはトリサシダニを処理または防止する方法にも関し、上記方法は、このような処置の必要な雌鶏、ニワトリまたは雛鳥に、ビス(2−エチルヘキシル)アジパート約45.0〜55.0重量%および2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラート約45.0〜55.0重量%および/またはそれらの誘導体ならびに/またはそれらの異性体を含む、その外ビス(2−エチルヘキシル)アジパートまたは2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートと、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体(エステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミド)1つ以上との、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの異性体1つ以上ならびに/またはビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む、カモの忌避性アロモンの薬学的に有効な量を投与すること含む。
【0041】
なお別の見地において、本発明は、建物または鶏小屋内のデルマニサス(Dermanyssus:ワクモ)を誘引する方法であって、1−ヘプタデセン約23.5〜26.5重量%、ヘプタデカン約23.5〜26.5重量%、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)約23.5〜26.5重量%およびオクタデカン約23.5〜26.5重量%を含む、その外1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの1つ以上と、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンの誘導体(エステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミド)1つ以上との、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの異性体1つ以上ならびに/または1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む誘引性カイロモンを建物または鶏小屋に置き、それによりデルマニサス(Dermanyssus:ワクモ)を誘引することを含む方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
ここで使用されるように、用語「クモ類」は、クモ目、ダニ目およびコナダニ目を含む、クモ綱のすべてを包含する。それゆえ、クモ綱には、クモ類、マダニ類を含む、、その外中気門亜目、無気門亜目および前気門亜目の亜目を含む、あらゆる種類のダニ類が含まれる。
【0043】
ここで使用されるように、用語「鳥」および「鳥類」は互換的に使用され、卵を産み、通常に飛行が可能である、羽毛および翼を有する全ての温血動物を包含する。鳥類の例は、これに限定されるわけではないが、雛鳥、ニワトリ、雌鶏、カモ類、ガチョウ、シチメンチョウなどを含む。
【0044】
「カイロモン」とは、1つの生物によって生成される、他の種の生物に反応を誘発するための情報化学物質を意味する。それは放出者に好ましくない反応を引きおこす。
【0045】
「アロモン」とは、1つの生物によって生成される、他の種の生物に反応を誘発する情報化学物質を意味する。それは放出者に好ましい反応を引きおこす。例えば、一部の植物は、昆虫を寄せ付けず、摂食させないアロモンを生成する。
【0046】
「溶液」という用語は、溶解または懸濁させることのどちらかによって、固体が液体に分散しているものを意味する。
【0047】
「エンハンサ組成物(enhancer composition)」は、鳥において、種−種特異性であり、組成物の種特異性の有効性を向上させるために、アロモンまたはカイロモンの組成物を増強するか、またはそれらと相乗的に作用するために使用され得る活性組成物を意味する。
【0048】
本発明で述べる化合物とその誘導体1つ以上および異性体1つ以上との混合物に言及するときに、組成物は、ただの例にすぎないが、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートならびに2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートのアルコール誘導体またはビス(2−エチルヘキシル)アジパートのアルコール誘導体および2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートアルコール誘導体の異性体を包含し得ることを意味する。ここで言及する誘導体および異性体は、その化学的対応物で述べられるのと全く同じ重量パーセントを有する。例えば、ビス(2−エチルヘキシル)アジパート約45.0〜55.0重量%および2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラート約45.0〜55.0重量%の誘導体および異性体は、同じ約45.0〜55.0重量%の濃度を有する。同じ説明がカイロモン組成物にも当てはまる。
【0049】
ここで使用されるように、用語「異性体」は、構造異性および空間異性(spacial isomerism)を包含し、アロモン組成物およびカイロモン組成物の異性体を指し、その外それらの誘導体の異性体を指す。
【0050】
本発明は、更に詳細には、鳥の尾腺からの分泌物に由来するアロモン組成物およびカイロモン組成物の同定に関する。
【0051】
本発明のアロモン組成物は、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートおよび/またはそれらの誘導体ならびに/あるいはそれらの異性体の混合物;ならびに/あるいはビス(2−エチルヘキシル)アジパートまたは2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートと、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体(エステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロール、およびアミド)1つ以上との、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの異性体1つ以上、および/またはビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む。
【0052】
本発明のアロモン組成物は、ビス(2−エチルヘキシル)アジパート約45.0〜55.0重量%および2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラート約45.0〜約55.0重量%および/またはそれらの誘導体ならびに/あるいはそれらの異性体の混合物;ならびに/あるいはビス(2−エチルヘキシル)アジパートまたは2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートと、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体(エステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミド)1つ以上との、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの異性体1つ以上および/またはビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む。
【0053】
本発明のカイロモン組成物は、1−ヘプタデセン約23.5〜26.5重量%、ヘプタデカン約23.5〜26.5重量%、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)約23.5〜26.5重量%およびオクタデカン約23.〜26.5重量%および/またはそれらの誘導体ならびに/あるいはそれらの異性体の混合物;ならびに/あるいは1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの1つ以上と、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンの誘導体(エステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミド)1つ以上との、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンの異性体1つ以上および/または1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む。
【0054】
先に記載したアロモンまたはカイロモンの組成物は、0.1〜99.9%の可変濃度を有し得る。しかし、ここに記載した特定の濃度を使用するときに、効果が向上する。その上、カイロモン組成物において、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンから選択される化合物のうち少なくとも2つが処方物で使用され得、なおカイロモンの効果を有する。
【0055】
アロモンまたはカイロモンの組成物は、組成物の生物活性構造が保存されるという条件で、化学担体に結合させることもできる。このような担体分子は、これに限定されるわけではないが、樹脂、リポソーム、クラウン化合物、担体タンパク質、あらゆる種類のポリマーなどを含む。
【0056】
組成物は、純粋な形態で使用され得、その外エステルまたは塩、さらにその外、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミドの誘導体の形態でも使用され得る。純粋なものおよび誘導体の異性体の形態も本発明に含まれる。これらの誘導体または異性体は、本発明の組成物中の化学成分の1つ以上またはすべてを置き換えることができ得、同じ効果を有する。
【0057】
別の態様において、本発明は、溶液状の組成物を含む。それゆえ、本発明は、カモのデルマニサス(Dermanyssus:ワクモ)忌避性アロモンの、ビス(2−エチルヘキシル)アジパート約45.0〜55.0重量%および2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラート約45.0〜55.0重量%および/またはそれらの誘導体ならびに/あるいはそれらの異性体;ならびに/あるいはビス(2−エチルヘキシル)アジパートまたは2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートと、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体(エステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミド)1つ以上との、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの異性体1つ以上および/またはビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体の異性体1つ以上との混合物;あるいはニワトリのデルマニサス(Dermanyssus:ワクモ)誘引性カイロモンの、1−ヘプタデセン約23.5〜26.5重量%、ヘプタデカン約23.5〜26.5重量%9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)約23.5〜26.5重量%およびオクタデカン約23.〜26.5重量%および/またはそれらの誘導体ならびに/あるいはそれらの異性体;ならびに/あるいは1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの1つ以上と、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンの誘導体(エステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミド)1つ以上との、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)の異性体1つ以上および/またはその誘導体の1つ以上の異性体との混合物の溶液に提供する。
【0058】
これらの組成物および溶液は、忌避性組成物または誘引性組成物のどちらかとして別々に使用される。
【0059】
組成物は、溶液、エアゾールスプレー、ゲル、徐放性マトリクス、シャンプー、石鹸、ローション、軟膏などの形態であってもよい。組成物は、リポソーム、ディフューザ、いずれかの種類のポリマーに入れ、マイクロカプセル化され得る。
【0060】
本発明のアロモンの溶液および組成物は、飼料に加えて、鳥および他の動物に給餌することもできる。それらを水に入れて、鳥や他の動物に飲ませることもできる。
【0061】
先に述べたアロモンおよびカイロモンの組成物の濃度は、最終使用形態によって変化する。しかし、利用されるこれらの組成物の濃度およびその濃度は、本発明で述べる方法によって確認および試験できる。
【0062】
アロモンおよびカイロモンの組成物は、本発明の溶液を形成するために、どの非水性溶媒でも希釈することができる。溶媒は、アルコール、ジエチルエーテル、クロロホルム、エタノール、ベンゼン、プロピルアルコール、イソプロパノール、2−プロパノール、アセトン、ポリソルバート80などである。これらの溶媒を併用して使用できる。
【0063】
組成物が、食物に含まれて投与される場合、一般にそれらは、動物またはヒトの食料に使用できる、水などの摂取できる水溶液あるいは植物または動物油あるいは動物またはヒトの食料を製造するために使用される、いずれかの種類の脂質製品に溶解させる。それらは、固体組成物として食物に直接添加することもできる。
【0064】
ニワトリのデルマニサス(Dermanyssus:ワクモ)誘引性カイロモンは、セルロース紙などの粘着性紙の上またはクモ類を誘引およびトラップできるボックス内に置くこともできる。誘引性カイロモン以外に、捕捉目的で粘着剤も使用される。このような粘着剤は、天然の粘着剤または合成粘着剤のどちらでもよい。代表的な天然の粘着剤は、デンプンおよび変性デンプンを含む。本発明で使用できる合成粘着剤は、これに限定されるわけではないが、ポリアクリラート、ポリビニルクロライド、シリコーン、ウレタン、スチレンコポリマー、ポリビニルアセタートなどを含む。粘着剤層は、一般に、0.02〜0.5インチ厚である。
【0065】
捕捉ボックスまたは捕捉容器は、屋内用途には厚紙あるいは屋外用途にはプラスチックまたはポリマーなどの材料で作成することができる。誘引性カイロモンは、屋内全体に分散され、そして容器またはボックスは、クモ類が自由に入り、粘着性物質によってトラップされるように、1つ以上の入口通路を有する。本用途の容器用のカイロモンの濃度は、約0.015〜0.5ppmである。
【0066】
本アロモン組成物は、壁、テント、ベッド、カーペット、衣類などの、クモ類が接触する各種の物体に適用することができる。その上、本アロモン組成物は、ダニ、マダニ、クモなどのなどのクモ類を忌避するために、動物またはヒトに局所的に適用することができる。
【0067】
本発明は、クモ類を忌避する方法にも関し、上記方法は、カモの忌避性アロモンの忌避量を、このような処置を必要とする動物に投与することを含む。ワクモは、人畜共通寄生生物であり、ヒトへの寄生を回避するのに有効であるため、動物の範ちゅうにはヒトが含まれる。
【0068】
本発明は、雌鶏、ニワトリ、カモ類、シチメンチョウ、ガチョウおよび雛鳥におけるワクモまたはトリサシダニを処理または防止する方法を含み、上記方法は、このような処置を必要とする雌鶏、ニワトリまたは雛鳥に、ビス(2−エチルヘキシル)アジパート約45.0〜55.0重量%および2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラート約45.0〜55.0重量%および/またはそれらの誘導体ならびに/あるいはそれらの異性体;ならびに/あるいはビス(2−エチルヘキシル)アジパートまたは2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートと、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体(エステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミド)1つ以上との、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの異性体1つ以上および/またはビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む、カモの忌避性アロモンの薬学的に有効な量を投与することを含む。
【0069】
更に別の態様において、本発明は、建物または鶏小屋内のデルマニサス(Dermanyssus:ワクモ)を誘引する方法であって、1−ヘプタデセン約23.5〜26.5重量%、ヘプタデカン約23.5〜26.5重量%、9オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)約23.5〜26.5重量%およびオクタデカン約23.5〜26.5重量%および/またはそれらの誘導体ならびに/あるいはそれらの異性体;ならびに/あるいは1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの1つ以上と、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンの誘導体(エステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミド)1つ以上との、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンの異性体1つ以上および/または1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む誘引性カイロモンを建物または鶏小屋に置き、それによってデルマニサス(Dermanyssus:ワクモ)を誘引することを含む。
【0070】
先に記載した組成物は、カモ類およびニワトリの尾腺の分泌物から得た化学成分組成の詳細な分析の後に発見された。
【0071】
更に特には、この手順は、カモ類またはニワトリの尾羽部を滅菌圧(湿)布(sterile compress)でふき取り、分泌物の組成をガスクロマトグラフィー/質量分析法で分析することを含んでいた。クロマトグラフからの、分泌物中の有力な化学成分組成を、当該技術分野で周知のコンピュータデータベースを使用して更に分析し、そしてアロモン組成物およびカイロモン組成物の化学構成を決定した。
【0072】
本発明およびその利点を十分に説明するために、以下の具体的な実施例を示すが、それは例示のためのみであり、決して限定的でないことが理解される。
【0073】
実施例1
ニワトリおよびカモ(ducks)からのアロモンおよびカイロモンを同定するための分離および分析
尾腺または尾部の腺に、無菌圧(湿)布を当てることによって、ニワトリおよびカモから試料を得て、この腺からの分泌物を圧(湿)布上に採集した。圧(湿)布を直ちにジクロロメタン10mlを含むフラスコに入れ、フラスコを数回撹拌して分泌物を脱着させた。
【0074】
10羽のカモおよび16羽のニワトリから試料を得た後、溶媒(アセトニトリルおよびジクロロメタン)5mlを同系列の各試料から採取し、合わせた試料を形成した。合わせた試料15mlを、その後、空気気流下で蒸発させることにより、10倍に濃縮して1.5mlとした。
【0075】
その後、試料を、Perkin-Elmer社のTurbo Mass GC/MSを使用して、ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)により分析した。使用したカラムは30m、0.25mm径、膜厚0.25μmを有するJW型DB5MSであった。使用したスプリットは1/20であり、使用したスプリット/スプリットレスは45秒であった。2.0μlを注入した。
【0076】
検出は、180℃、70eVのエネルギーでの正の電子衝撃(EI+)を用いた、衝撃により行なった。この技術を、再現性のある特有な方法として分子を分離するのに使用した。
【0077】
その後、当該技術分野で知られているデータベースに照らして、試料中のどの分子が得られスペクトルに最も近いかを解析した。
【0078】
別の分子の構造を確認するために、その後、メタン中で正の化学イオン化(CI+)を行なった。この技術は当該技術分野で知られている。
【0079】
得られた2つの異なったクロマトグラフのプロフィールはカモとニワトリとでは異なっていた。ニワトリにおいては、誘引性カイロモンの組成を見出された。対照的にカモにおいては、下の表で示すように、忌避性アロモンが見出された。
【0080】
クロマトグラフの結果を、ニワトリおよびカモのそれぞれについて、図1〜3に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
クロマトグラフの完全な検討後、ニワトリの誘引性カイロモンは下記の組成から成っていた。
約23.5〜26.5(重量%)ヘプタデセン−1オール
約23.5〜26.5(重量%)ヘプタデカン/ヘプタデセン
約23.5〜26.5(重量%)9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)
約23.5〜26.5(重量%)オクタデカン/オクタデセン
【0083】
クロマトグラフのより完全な検討後、カモからの忌避性アロモンは下記の組成から成っていることを見出した。
約45.0〜55.0(重量%)ビス(2−エチルヘキシル)アジパート
約45.0〜55.0(重量%)2,2,4−トリメチル−1,3 ペンタンジオール ジイソブチラート
【0084】
上述のカイロモンおよびアロモンの特定の濃度は、後述の全ての実施例で使用された。
【0085】
実施例2
溶媒選択の選定
皮膚に存在する分子は本質的に脂溶性であり、分子を抽出するためには有機溶媒を使用することが必要である。しかし、有機溶媒は皮膚に対して極めて刺激性があり、皮膚組織を変質させる恐れがあり、それによって寄生動物の行動の変容を引き起こす可能性がある。したがって、異なる溶媒を試験して、皮膚の皮膚組織を変質させず、同時に皮膚に、その外寄生動物もしくはクモ類に対してより有害でない溶媒を特定するために、後述の実験を実施した。
【0086】
4つの異なる溶媒、すなわち、クロロホルム、ジエチルエーテル、アセトンおよび60%エタノールを試験した。各溶媒につき、デルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae)の摂食量の変化が、特定の溶媒で洗浄したニワトリの皮膚の切除した小片および自然のままの皮膚について検討された。
【0087】
各皮膚を溶媒0.5mlで3回洗浄した。第1のグループでは、皮膚をインビトロで洗浄し、クモ類(デルマニサス・ガリナエ:Dermanyssus gallinae)に与えた。第2のグループでは、溶媒のフラクション0.5mlを既に洗浄された皮膚上に置き、蒸発させた。第3のグループにおいては、皮膚を、異なるニワトリもしくはカモの皮膚の洗浄後に得られた液体中で洗浄した。60%エタノールについては、洗浄し、この溶媒を蒸発させた後、皮膚を再び水0.5mlで2回洗浄した。
【0088】
その結果を図4に示してある。ニワトリの皮膚の皮脂層上に、デルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae)の摂食を引き寄せる1つ以上の物質が存在することから、溶媒として60%エタノールを使用されるべきであることが、この図から明らかである。
【0089】
実施例3
抽出物による試験
この実施例では、ニワトリおよびカモの皮膚を利用して、これら2種類の異なる鳥類におけるカイロモンおよびアロモンの存在を調べた。カモおよびニワトリの皮膚を60%エタノール0.5mlで3回洗浄し、これらの洗浄からのフラクションを集めた。洗浄フラクション0.5mlをその後、同一皮膚上にあと3回再付着させ、各洗浄間に1時間を保つことで、アルコールを蒸発させた。3回の最後の洗浄の後、皮膚を、脱イオン水0.5mlで1回洗浄した。
【0090】
尾腺または尾部の腺からの抽出物を、エタノールで洗浄したニワトリの皮膚またはカモの皮膚上に付着させた。付着させる前に、これらの抽出物を1/20に希釈した。この希釈は、体全体に分配させて見出される未精製の分泌物の量を考慮している。
【0091】
デルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae)(試験管当たり30匹)をニワトリの皮膚およびカモの皮膚のいずれかに適用した。この実験には3本の試験管を使用し、各試験管は30匹のデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae)を含有していた。結果を図5に示す。これらの実験から、皮膚に、アルカドニダ(Arcadnida)の摂食を助長する1つ以上の物質、カイロモンが存在すると結論された。このカイロモンは、尾腺または尾部の腺に存在している。カモの皮膚には、アルカドニダ(Arcadnida)に対して忌避性の効果を有し、尾腺または尾部の腺にも見出される物質が1つ以上存在している。これらの物質はアロモンである。
【0092】
カモまたはニワトリの尾腺の抽出物を、エチルアルコールで、1/10、1/20、1/40、1/80、および1/160に希釈した。4枚の吸収紙を、ペトリ皿に置いた。1枚の吸収紙上に、公知の殺ダニ剤を置いた(指示量の1.20倍の投与量での、12時間でのLD100)。別の吸収紙上には、抽出物を置いた。ダニをペトリ皿に投入した。ペトリ皿を閉じて、乾燥した場所に12時間置いた。12時間後、死んだダニを数えた。抽出物についての結果を図6に示す。
【0093】
実施例4
雛鳥における忌避性アロモンの試験
5/8の蔓延レベルで、デルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae)をケージに蔓延させた。飼育中に認められる最大の蔓延レベルは6/8である。これは、1cm当たり約60匹のダニを意味する。
【0094】
ケージは2つの区画に分けた。1つの区画には飼料のみが入っている。分離によって、両区画の間をダニは自由に移動することができるが、雛鳥は移動できず、雛鳥は飼料が入っていない区画に限定した。ケージの2つの区域は等しくワクモを蔓延させた。この実施例で使用した雛鳥は1日齢であった。
【0095】
雛を、2つのロットに分けた。ロットAにはカモの忌避性アロモン(以後DRA)を追加した飼料を与え、ロットBには1日目に通常の飼料を与えた。DRA800μg/200g、したがって4mg/kgを飼料に加えた。
【0096】
雛が摂取する飼料の量は平均して15〜20gであった。
【0097】
2つの区画を有するケージの各区画につき4羽の雛を入れた。死んだ雛は全て直ちに取り出し、各区画に4羽を維持するように取り替えた。実験を11日にわたって実施した。次の結果を、下の表2に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
上記の結果は、ワクモに対する、雛の飼料中のDRAの防御の有効性を証明している。
【0100】
実施例5
ブロイラー雌鶏およびニワトリにおける忌避性アロモンの試験
下表3に示す、異なる濃度のカモの忌避性アロモン(以後DRA)が、産業用のブロイラー雌鶏およびニワトリの飼料において、試験された(基準濃度200μg飼料/1羽/1日)。
【0101】
【表3】

【0102】
得られた結果を図7および図8に示してある。
【0103】
これらの結果は、摂食レベルが20%より低い(これは牧畜業の雌鶏が容認できる許容限度である)ので、2つの濃度がデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinaeワクモ)の雌鶏に対する攻撃を防いでいることを示している。他の濃度および対照の比較は、変動が有意であることを示している。実際、グループ3およびグループ4は、その他の3つのグループ(対照、グループ1およびグループ2)よりも低い摂食レベルを有していた。したがって、飼料に組み込まれるDRAの有効な用量が存在する。
【0104】
これらの動物グループが実験の前の1日間、随意に給餌されなかったから、8日目の、グループ3およびグループ4の曲線の小さな屈曲点は、実験計画上の変動であった。
【0105】
図7および図8における曲線は、雌鶏およびニワトリ間では結果が同一であり、したがってDRAが異なる性別によって異なる影響を与えないことを示している。
【0106】
試験による統計上の差異は、対照と異なるグループとの比較が可能であり、次に、その統計的差異を示す。
【0107】
(1) 4日目における、対照例に対するグループ4の最大値、p<0.0001〜p<0.005。
【0108】
(2) 6日目(ニワトリ)、(8)日目(雌鶏およびニワトリ)および11日目(雌鶏)におけるグループ3とグループ4との間には、有意な差異が存在する。これら各比較に関してp<0.01。
【0109】
(3) グループ4では、変動は他の3つのグループと有意に異なっていた。対照例、グループ1およびグループ2に対するグループ4について、p<0.0001。
【0110】
実施例6
ニュートラルな血液(neutral blood)でのアロモンおよびDRAの試験
この実験においては、ニュートラルな血液が使用され、雌鶏およびニワトリの皮膚にDRA(p<0.0007)が追加され、実施例4(表を参照)と同じグループおよび処理が用いられた。ダニは前の実施例5と同じレベルで摂食された。結果を図9に示してある。
【0111】
グループ1およびグループ2と対照との間には著しい差異があった。8日目および11日目のグループ3およびグループ4との間に、著しい変動のある、2つのグラフの類似性が注目される。
【0112】
実施例7
血液中のアロモンの試験
図10は、DRAが試験した動物の血液中に入り込まないことを確認する。この試験はデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae)の血液指標を用いて実施した。飼料とともに注入された物質も消化の過程で吸収された。DRAを追加した動物の血液を有するニュートラルな皮膚の使用は、DRAが皮膚上で見出され、したがってDRAが動物の皮膚から分泌したことを実証することを可能にする。
【0113】
ダニ類は通常の皮膚片から摂食することを誘導されたが、計画された血液はDRAを給餌したニワトリから得た血液試料であった。
【0114】
実施例8
この実施例において、カモの忌避性アロモン(以後DRA)が飼料中および水中に組み込まれ、ニュートラルな対照およびプラセボグループと比較された。DRA200mlが1羽が1日に摂取する水の中に入れられ、DRA200μgを1羽が1日に摂取する飼料中に入いれられた。下記の表4には、この実施例におけるグループおよびそれらの用量を示す。ニワトリは平均して約120〜150gの餌を消費した。
【0115】
【表4】

【0116】
また、グループ2および4はプラセボを組成とし、グループ1は対照である。0〜20日目についての図11および12は、ニワトリの蓄殺までの給餌に関する結果を示す。
【0117】
図11は、全ての試験に関し、4日目を始点とするグループ3について、対照グループとプラセボグループとの間で有意の差異を示している(グループ1と比較した場合の4日目のp<0.0001、および20日目のp=0.0025。グループ6対グループ1では、2日目のp=0.015、4日目のp<0.0001および20日目でのp=0.0031)。これら2グループ間の差異は、全ての試験に関して非常に有意である。
【0118】
したがって、グループ1、グループ2およびグループ4間の差異は非常に重要である。DRAを使用した場合、ワクモの摂食レベルの減少が注目さられる。
【0119】
グループ3と6との間に変動はなく、非摂食の完全に直線的な速度論を示す。他の4つのグループでの変動が注目される。また、対照と異なるプラセボグループについて、8日目と10日目(10日目は12日目と等しい)との間で、摂食レベルは統計的に減少した。グループ5の変動は顕著であった。
【0120】
動物に対して良好な防御をもたらすグループ3および6に示されるように、平均的な用量における、2つの投与形態(水対飼料)の間に注目すべき差異はない。
【0121】
実施例9
雛鳥および雌鶏におけるアロモン防御
この実施例では、雌鶏と比較した場合の、雛鳥に関しての防御の出現時間を例証する。手順は、実施例4、すなわちDRAを飼料に加えたものと同じであった。
【0122】
雌鶏は平均して約120〜150gの飼料を消費したのに対し、雛鳥は平均して約15〜20gの飼料を消費した。
【0123】
雛鳥は一定の齢以前では皮膚膜を作らず、したがって処理が、成長した雌鶏やニワトリとは異なる効果を有し得ることに注目すべきである。
【0124】
6日目の結果を下記の表5に示す。
【0125】
【表5】

【0126】
上記表5から分かるように、6日目ではプラセボ(偽薬)グループと比べて摂食は相当減少した。p値は、p値が0.003であった、ちょうど20日目までは全てp<0.0001であった。DRAの防御性の消失の動力学および効果を観察するために、14日目に、DRAによる処置を止め、通常の飼料に戻すことにした。下記の表6に示すように、16日目に、その後続く摂食の増加が認められた。
【0127】
【表6】

【0128】
上記表6の結果は、雛鳥が、DRAによる処置終了後0〜48時間の間のみ、DRAによる処置後防御されることを証明している。したがって、雛鳥をその成長の間、継続的に処置することが必要である。
【0129】
しかし、プラセボとDRAによって処理した雛との間の差異は28日目に有意であり(p=0.006)、したがって防御性は28日目でも依然として存在していたことに注目すべきである。
【0130】
30日目に、雛鳥を再び処置した。図13および15は、DRAによる防御効果が、DRAによる処置の終了後14日後よりも、30日目の方がはるかに小さいことを示している(DRA対プラセボに関し、p=0.011)。しかし、防御効果の再出現は、DRAは消失したと考えるなら、ほとんど即座である(32日目でp=0.0008)。
【0131】
したがって、ひとたびDRAの処置を停止すると、ダニはその摂食行動を回復した。処置剤の再投与直後、忌避性効果が認められる。したがって、防御のためには、DRAを有する特別な飼料を維持するほうが良い。
【0132】
実施例10
異なる皮膚タイプの使用
この実施例においては、2つの(2)異なるタイプの皮膚、すなわち羽のない皮膚および羽を有する皮膚を、DRAによって処理した。処理した皮膚は、通常のえさあるいはDRAを給餌したニワトリのものであった。皮膚の羽の半分を除去し、そして皮膚の羽の半分を維持した。
【0133】
羽のない皮膚は、より少ないデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae)を有した(プラセボ対プラセボについて、p=0.033)。羽は、デルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae)に対してある種の誘引性を有するようである。しかし、プラセボとDRAによって処理した皮膚との間の差異は有意であった(プラセボ対DRAにつき、p<0.0001)。したがって、化学信号が、羽に「濃縮されている」ようである。
【0134】
実施例11
ヘプタデセン−1約23.5〜26.5%(重量%)、ヘプタデカン約23.5〜26.5(重量%)、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)約23.5〜26.5(重量%)およびオクタデカン約23.5〜26.5(重量%)の溶液を作成する。
【0135】
プラスチック製の、開口部を有する容器内部を、ダニ類を捕捉するため、ポリアクリラート粘着材料で満たす。その後、カイロモン溶液を容器内部に加え、雌鶏小屋に置く。カイロモン溶液に誘われたダニ類は、数日後には容器に捕捉される。容器はその後処分される。
【0136】
実施例12
実施例11と同じカイロモンを有する容器をこの実施例において使用する。容器を、多数のクロゴケグモが巣を作っている、家屋の外側にある窓の窪みに置いた。数日後には、カイロモン溶液に誘われたクロゴケグモが容器に捕捉される。
【0137】
容器はその後処分される。
【0138】
実施例13
イヌを、ビス(2−エチルヘキシル)アジパート約45.0〜55.0(重量%)および2,2,4−トリメチル−1,3 ペンタンジオールジイソブチラート約45.0〜55.0(重量%)からなるシャンプーで洗う。その後、イヌを、通常マダニで感染された森を通り抜けて歩かせる。その後、イヌをマダニに関し調べ、シャンプー中のアロモンがこのクモ類を忌避したため、マダニ1匹も見つからなかった。
【0139】
実施例14
実施例13と同じ方法を適用したが、ネコを使用する。その後、ネコをマダニに関し調べ、シャンプー中のアロモンがこのクモ類を忌避したため、マダニ1匹も見つからなかった。
【0140】
実施例15
子供を、ビス(2−エチルヘキシル)アジパート約45.0〜55.0(重量%)および2,2,4−トリメチル−1,3 ペンタンジオールジイソブチラート約45.0〜55.0(重量%)からなるシャンプー/石鹸で洗う。その後、子供を、通常マダニで感染された森を通り抜けて歩かせる。その後、子供をマダニに関し調べ、シャンプー/石鹸中のアロモンがこのクモ類を忌避したため、マダニ1匹も見つからなかった。
【0141】
実施例16
養鶏業者を、ビス(2−エチルヘキシル)アジパート約45.0〜55.0(重量%)および2,2,4−トリメチル−1,3 ペンタンジオールジイソブチラート約45.0〜55.0(重量%)からなるシャンプー/石鹸で洗う。養鶏業者が雌鶏小屋に入り、一日の大半をニワトリ、雌鶏および雛鳥とともに作業する。養鶏業者は、石鹸で洗わないのと比べて、体表により少ないダニの咬み傷しか存在しないことを認める。
【0142】
実施例17
この実施例は、デルマニサス。ガリナエ(Dermanyssus gallinae)による慢性的なおよび広範囲の寄生性感染を患う産卵用雌鶏の飲料水に加えた場合の、カモの忌避性アロモン(DRA)の有効性を説明する。
【0143】
雌鶏小屋を、この研究に従事している者が最初に訪れ、雌鶏小屋の飼育長の立会のもと、デルマニサス。ガリナエ(Dermanyssus gallinae)が感染した雌鶏小屋の初期検査を実施した。雌鶏小屋を、ブーツと手袋を着用した調査員が検査した。雌鶏小屋内で、複数の雌鶏を7列に分け、各列に1〜7の数字を割り当てた
【0144】
飼育長に、雌鶏の7列の各々から、任意に2羽の雌鶏を選ぶことを求めた。任意に選らばれた各雌鶏から血液を採取し、ニワトリの解剖も実施した。各雌鶏の翼部静脈から血液4mlを採取した。血液の一部を、いかなる化学添加剤も含有してない試験管に入れ、他方をEDTAを含有する試験管に入れた。その後、血液試料を、冷蔵ブロックを有する等温容器に入れた。この試料を実験室で次の日に分析した。
【0145】
血液試料採取後、任意に選らばれたニワトリを犠牲にし、外部寄生動物の調査を含む、全解剖に付した。解剖の間に、微量の盲腸粘膜を盲腸壁から採取し、10%ホルマリン中に入れ、最終的には原生動物による感染を調らべた。
【0146】
調査員が雌鶏小屋にいるときに、存在するクモ類を採集し、その数を数えることによって、雌鶏小屋の詳細な調査を実施した。雌鶏小屋の各列には、各段ごとに60個のケージがあり、3つの段があった。目に見えるクモ類のコロニーおよび粉塵を20ケージにつき収集した。各試料を気密性のジャーに入れて実験室に持って行き、存在するクモ類の素性とその数を決定した。クモ類のコロニーを、12ケージについて数え、12ケージの各々について、クモ類のコロニーのうちの最大直径を計測した。最後に、各列について、各列の下側(3段の雌鶏の糞の全てを集めてある)で糞15ミリリットルの試料採取を実施した。
【0147】
さらにこの視察の間、調査員は飼育長に対して、ビス(2−エチルヘキシル)アジパート50%(重量%)および2,2,4−トリメチル−1,3 ペンタンジオールジイソブチラート50%(重量%)のP1と呼ばれる製造物の使用法を示し、製造物投与の特定手順を提供した。処置は、最初の視察(V1)後に始めた。
【0148】
処置に利用した製造物
活性の主体に該当している、DRAの異なる類似体を有する3つの製造物を使用して、水性溶液中に入れた。溶液はその性質においては変わらないが、使用される張力作用性および保存性についてのみ変化した。下記の溶液を処置において使用した。
【0149】
溶液1:ビス(2−エチルヘキシル)アジパート50%(重量%)および2,2,4−トリメチル−1,3 ペンタンジオールジイソブチラート50%(重量%)のDRAをエタノールで、100mlとした、滴定された4%DRA溶液。この製造物を2.5リットルの水のビンに入れた。
【0150】
溶液2:ポリソルバート80を5%(重量%)含有するビス(2−エチルヘキシル)アジパート50%(重量%)および2,2,4−トリメチル−1,3 ペンタンジオールジイソブチラート50%(重量%)のDRAをエタノールで、100mlとした、滴定した4%DRA溶液。この製造物を5リットルの水のビンに入れた。
【0151】
溶液3:ポリソルバート80を5%(重量%)含有するビス(2−エチルヘキシル)アジパート50%(重量%)および2,2,4−トリメチル−1,3 ペンタンジオールジイソブチラート50%(重量%)のDRAを水で、100mlとした、滴定した4%DRA溶液。この製造物を4リットルの水のビンに入れた。
【0152】
第1の溶液1を、V1において、飼育者に提示した。連続して作成したDRA製造物の2つのロットを使用して、駆除を実施した。飼育者との電話会談を実施し、DRA製造物の投与に関連する問題点を調査員と討議した。
【0153】
ある電話会談の中で、製造物の配合を評価することを決定した。
【0154】
処置剤の投与
製造物を水のビンに投与した。溶液1の水への微弱な混和性は、雌鶏の各列における水槽ごとに、各水のビンにおける微粒化を必要とした。溶液1を、50mlの注入器を有する水のビンに入れ、その後、各用量を、外径0.5ミリメートルを有する針を通して移動することによって、水槽内では微粒化させた。この操作を朝晩実施した。
【0155】
処置の継続期間
処置剤を、32日間の期間で消費した。最初の10日間、溶液1を処置剤として使用した。次の6日間で、溶液2を処置剤として投与し、残りの16日で、溶液3を処置剤として投与した。
【0156】
この32日間の処置の間に消費した製造物の量を下記の表7に示す。
【0157】
【表7】

【0158】
溶液2および3の算出のための実測割合は、これら2溶液の投与方法によって説明され得る。これら溶液の扱いを容易にするために、飼育者は、投与する用量を吸引する前に、ごく少容量のサラダボールに、量を変えたこれらの製造物(溶液2および3)を入れた。このようにして、この相違によって理論消費量が算出された。
【0159】
雌鶏が処置された32日間の間、クモ類に対して別段の処置は実施しなかった。
【0160】
32日目の処置後、雌鶏小屋に対する2回目の視察(V2)を実施した。視察1の際のように、飼育長に雌鶏の7つの列から各々任意に2羽の雌鶏を選ぶことを求め、視察1の際と同じ手順を用いて、血液摂取と解剖を実施したが、解剖した雌鶏から、盲腸の転写(copies)を採取することは除外した。これを除外したのは、視察1の時の試料の評価後、寄生動物が存在しないことが見出されたことによるものであった。視察1の際の異なる雌鶏における解剖結果が、異なる臓器に肉眼で見える異常が存在することを示したので、解剖の間、組織病理学的分析用の多様な採集をおこなった。視察2の際の解剖において尾腺も除去して、DRAが分泌物中に存在するかを確かめた。
【0161】
処置をおこなった水の異なる水槽の各々からも、試料を採取した。その後、試料を実験室で分析して、DRA製造物の化学組成が変化したか否かを確かめた。
【0162】
実験の間、飼育者が行なった観察結果を回収した。
【0163】
評価に際して使用した基準
製造物の有効性を、寄生虫学的パラメータ、医学的パラメータ、および畜産学的パラメータの3つのパラメータを使用して評価した。
【0164】
寄生虫学的パラメータ
クモ類の全個体数を再グループ化して試験を実施し、雌鶏小屋の異なる区域におけるクモ類の活動力、クモ類の数、および蔓延の量を評価した。インビトロ試験を実施して、解剖した雌鶏の尾腺分泌物内のDRAの存在下で、クモ類の摂食の阻害量および視察2の際に得た糞を測定した。測定した寄生虫学的パラメータの各カテゴリーについて、各列の結果を別個に算出した。全寄生動物の比較を処置前後でおこない、その結果を実験室で実施した結果とも比較した。
【0165】
宿主(雛)のいるケージ内および試験管内でのクモ類の摂食行動、ならびに同じ状況下でのクモ類の群生行動をも観察した。GC/MSによるクモ類の表皮の分析も実施した。
【0166】
医学的パラメータ
デルマニサス(Dermanyssus)の蔓延は、感染された雌鶏で血液学的問題を引きおこす。これが、視察1および2の際に、任意に選んだ14羽の雌鶏から血液を採取した理由である。その後、血液試料について、後述の分析を実施した:
(1)ヘマトクリット値;
(2)ストレスの指標である白血球/リンパ球の割合を評価することを可能にする血球算定、および顆粒球数が寄生虫の感染の指標であるので、顆粒球の数を定量化した;
(3)血液タンパク質の電気泳動;および
(4)T4(コルチコステロン)のレベル。
【0167】
血液を採取した雌鶏も犠牲にし、各雌鶏に対して解剖を実施した。視察1の際に犠牲にした雌鶏については、この解剖は、盲腸壁からの微量の盲腸粘膜の除去を含んでおり、その盲腸粘膜を10%ホルマリン中に置き、組織病理学的評価をおこなった。視察2で犠牲にした雌鶏について、砂嚢壁および肝葉を除去し、列4のある雌鶏において観察した、砂嚢についての大量の胆汁の逆流を示す悪液質性の(cahectic)状態の原因を明らかにした。この分析の結果によって、日和見性の不調がおこることについての寄生虫の影響の評価が可能となり、雌鶏の生理学的状態についてのいくつかの情報がもたらされる。
【0168】
畜産学的パラメータ
この研究においておこなわれた畜産学的パラメータを次に示す:
(1)餌消費量;
(2)産卵数;
(3)卵の重量;
(4)壊れた卵の数;および
(5)雌鶏ごとの水消費量。
【0169】
結果の評価
蔓延量を算出するために、雌鶏小屋の直線的な全表面、ならびに雌鶏小屋の用具の表面も推算をおこなった。これらの測定をおこなった後、観察されたコロニーの平均直径の測定値、および類似区域における重複の頻度を決定した。これら全ての測定によって、各雌鶏小屋についてのcm2当たりのクモ類の平均集中度の算出が可能となった。その後、この値を8単位の片対数目盛と比較した。その後、蔓延の等級を0〜8の段階で得た。等級8は、cm2当たり400個を越えるクモ類が存在するときに当てはまり、雌鶏小屋におけるクモ類の蔓延の最大量を示している。
【0170】
寄生虫数の進展を評価するために、各列について7種類の異なる測定をおこない、研究した雌鶏小屋の寄生動物個体数の進展について最良の評価を可能にした。おこなった測定は次のもであった:
(1)ケージごとのコロニーの数;
(2)観察されたコロニーの直径;
(3)地面上の糞についての蔓延の程度;
(4)収集した卵上の蔓延の程度;
(5)雌鶏小屋の構造物(ケージ、パイプなど)上の蔓延;
(6)蔓延されたケージの数;および
(7)各列における平均蔓延の程度。
【0171】
各列および各値について、測定した寄生動物の各パラメータのきわめて明らかな減少を認めた。雌鶏小屋における6.5の蔓延等級が2に減少した(図16)。DRA製造物を使用することによって、クモ類の蔓延が、5週間で、蔓延レベル2に減少したことが示された。
【0172】
第1の測定を実施して、クモ類が蔓延したケージ数、存在するクモ類のコロニーの数、およびクモ類のコロニーの直径を直接評価した。これらの測定値は、簡単に得ることができ、飼育者にとって雌鶏小屋における蔓延量を評価する上で、個人的な参考資料としても役立つので、二重の利点を有する。蔓延の強弱に基づいた測定値も報告した。このデータによって、飼育者は偏りのない見方で蔓延を評価することができ、蔓延レベル2を上回っているかどうかを決定することができる。反対に、蔓延等級が5以上の場合、飼育者の評価は非常に重要となり、クモ類に対する処置を開始すべきである。
【0173】
V1(視察)時に、80%を越えるケージが、ケージ当たり平均2.5個のコロニーで感染され、そして、クモ類のコロニーの直径は平均5cmを有していたことは注目された。最後の視察2の後、ケージ当たり平均0.5個のコロニーとなり、感染されたケージのパーセンテージは80%から18%に落ち、コロニーの直径は5cmから1.5cmに落ちた(図17、18および19)。
【0174】
雌鶏小屋における構造物内のクモ類の蔓延量を測定することも興味深い。この種の測定では、動物の飼育などにおいて、糞を採集し、クモ類の数を評価し、卵を採集し、クモ類の数を数え、壁などの雌鶏小屋の構造物上のクモ類を数えることによって、構造物の蔓延の等級を測定した。測定をおこない、DRA製造物がケージから寄生動物を撃退するのかどうかだけでなく、DRAがワクモの生息環境またはこれらの摂食環境を破壊するのかについても評価した。
【0175】
蔓延の等級を、床から糞を採集することによって評価した。乾燥した糞は、寄生動物にとって特権的な潜伏場所であり、雌鶏小屋からのそれらの排除は、他の雌鶏小屋の寄生動物による再汚染の恐れがある。結果は、DRA製造物がデルマニサス(Dermanyssus)のの摂食を妨げることを示した。一旦、雌鶏小屋の中央部において、クモ類の個体群が再形成された場合、再汚染は不可避である。
【0176】
図20は、得たデータおよび本発明のDRA製造物の、集積した糞のある雌鶏小屋に対する有効性を示しており、処置以前の平均蔓延等級5が、処置後には蔓延等級1以下に低下したことを示している。
【0177】
糞を試験し、糞が実験室内のクモ類を忌避するかを調べた。結果を図21に示すが、図のデータは、糞からのアルコール抽出物が、インビトロでのこれらの試験のために使用した雛鶏の皮膚の摂食をクモ類から妨げたことを示している。
【0178】
卵および雌鶏小屋における他の構造物に関する限り、クモ類の蔓延の平均パーセンテージについての明らかな減少が認められた。卵への感染については、第1の視察では蔓延率は64%であり、本発明のDRA製造物での処置後には14%に落ちた。雌鶏小屋の構造物の蔓延については、第1視察では57%の蔓延率と決定し、処置後には12%に落ちた(図22)。
【0179】
全体的に、雌鶏小屋における寄生動物量の6.5から2への低下が認められた。
【0180】
寄生動物の個体群の評価
第2若虫を評価したのは、これがクモ類の成長における中間段階で、この段階では第2若虫は絶食に影響されやすいからであり、同時にその存在がコロニーの拡大を知らせているという事実からである。成虫の個体群の分析によって、コロニーの発展の原動力が明らかになる。とりわけ、タイプ2の雌若虫のパーセンテージが非常に興味深い。これらの雌はタイプ1の雌よりも大きく、茶色がかった赤から黒の色合いをしている。これらタイプ2の雌は肉眼で見ることのできる卵を有している。この卵は、雄成虫がいなければ産卵されず、タイプ1の雌の存在下で産卵され、新しいコロニーの元となる新しい雄を産む。雌は産卵後に死ぬ。成虫の間でのこれらの広がりは、2つの性の消失に伴うコロニーの衰退状態を示知らせている。この状態の後、コロニーは分散する。
【0181】
視察1では、雌鶏小屋の寄生動物の個体数動態は、大部分が第二若虫期(deutonymphal stage)の第二若虫(deutonymphs)である拡大途上の個体数動態と事実上一致した。第2の視察では、寄生動物の個体群は、退行状態の個体数動態であった。注目に値することには、第1の視察後では死亡数は7%以下であったのに比較して、第2の視察後、コロニー内で存在していた87%を超えるクモ類が死んだことであった。N2期の若虫も、視察2の際の試料採取時には存在していなかった。このことは、ダニの個体群が停滞し、退行したことを示している。視察2の間に数多くのタイプ2の雌が存在したことも観察された。タイプ2の雌はコロニーの中央には見出されなかったが、これはこれら雌の通常の習性である。タイプ2の雌は、タイプ1の若虫の周囲に不規則に重なった状態で見出された。
【0182】
別のパラメータで、摂食によって赤色になるダニの数を測定した。視察1では、個体群の80%が赤色であった。視察2では、4列目にのみ、数匹の赤色のダニがいた。
【0183】
インビトロの寄生動物の試験
3つのパラメータを試験した:糞中のDRAの存在;視察2で犠牲にした雌鶏の尾腺分泌物中のDRAの存在;および雌鶏小屋内に存在するダニの感受性である。
【0184】
糞中のDRAの存在
雌鶏小屋から採取した雌鶏の糞を、アルコールを用いて抽出した。DRAで処置した雌鶏の糞の抽出物を雛鶏の皮膚に適用し、デルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae)から雛鶏を防御した。対照の雛鶏の皮膚がダニの90%によって咬まれたのに対し、雌鶏の糞のアルコール抽出物で処置した雛の皮膚はその状況で20%で咬まれた。
【0185】
第2の視察時の雌鶏の尾腺分泌物中のDRAの存在
視察2の後で犠牲にした雌鶏の尾腺を除去し、DRAの存在を試験した。
【0186】
図23は、異なる濃度でDRAを試験したときの結果を示している。160の希釈液は非常に忌避性があった。320の希釈液も有効であり、DRA製造物は、雌鶏の尾腺中に存在するだけでなく、カモの腺中に通常見出される濃度で存在すると結論され得る。
【0187】
その他の検査
他の殺ダニ剤に対する耐性についての試験
他の殺ダニ剤をその有効性について試験した。その結果を次の表8に示す。
【0188】
【表8】

【0189】
用量は、市販の製品の説明書に示されている用量の1〜32倍で選択した。アミトラズは処方された用量では最も有効な殺ダニ剤であった。試験した他の殺ダニ剤は全て50%以下の死亡率という実績であった。4倍の用量で、アファメスリン(Aphamethrine)は85%の有効度があった。しかし、これらの市販製品では、専ら推奨用量の16倍で、ワクモを殺すのに有効であった。製品は有効だとしても、コロニーは処置後、再形成する傾向があることが注目された。
【0190】
視察2で採取したダニの摂食および実験室における個体数動態的成長
この項で述べる結果は定性的であるに過ぎず、生きた宿主を使用した、雌鶏のケージの蔓延等級の進展の比較に過ぎない。同様の規模(等級4)を有するダニの個体群を、生きた雛鶏がいる2つの離れたニワトリのケージに置いた。第1の個体群は対照で、DRAでの処置を行なっておらず、そして、この実施例で使用したデルマニサス(Dermanyssus)は異なる供給源から得たものであった。第2のニワトリのケージは、視察2後処置した雌鶏小屋から採集したデルマニサス(Dermanyssus)を含有していた。
【0191】
2週間で、対照の個体群は,視察2の個体群と比較して、尺度目盛で2ポイントの増加があった。対照グループにおける等級4のワクモの強い毒性によって、雛鶏が死亡する結果となったが、それに対して、視察2のダニの個体群では、雛は生き残った。
【0192】
群生行動
処置5日目の後には、ダニコロニーの移動が一定であることが観察された。これらの観察は、視察2のワクモで、実験室において確認された。実施した試験管での実験では、安定したコロニーを見出すことはできなかった。連続した移動のみが観察された。
【0193】
視察2のワクモを対照のダニコロニーに入れると、再形成には到ることができない、コロニーの崩壊が起こることが認められた。
【0194】
視察2のダニ表皮のクロマトグラフプロフィールの研究
視察2のデルマニサス(Dermanyssus)を−78℃でCOに投入して、その消化管を空にせずに騒がすことなく殺した。その後、ニワトリダニをジクロロメタン中に入れ、GC/MSを使用して溶媒の分析をおこなった。クロマトグラフを図24に示し、DRAの2つの特性ピークを示した(13.23において)。ダニ表皮による、強い疎水性を有する2つの分子の吸収は驚くべきことではないが、それはダニ表皮が、疎水性組成物に関して高い親和性を有する構造を有しているからである。
【0195】
雌鶏の血液についての医学的パラメータ
視察1および視察2での雌鶏から採取された血液の分析は、35日間の処置について注目すべき差異を有していた。下記の表9は、視察1および視察2での血液検査の結果を示しており、平均および変化(σ)を算出した。
【0196】
この表から分かるように、この生理学的値について、ヘマトクリット値の顕著な増加が認められた。視察1で認められた値は極端に低く、19.73〜27.77%の範囲の値からなっており、これらの値は、生理学的正常値30%よりも低かった。ヘマトクリット値は血液の損失を反映しており、この血液の損失は重要であり、標準的な卵の産卵と相入れない。対照的に、視察2の処置した雌鶏のヘマトクリット値は、31.42〜39.78%にあり、これらの値は正常値で、したがってDRAでの処置はデルマニサス(Dermanyssus)の摂食を阻害する結果となり、処置した雌鶏には血液の損失が起こらないことを示している。
【0197】
視察1と比較して、視察2のDRA処置した雌鶏の血液の顆粒球のより低いレベルが、ワクモの感染の退行を確認する。顆粒球および好酸球の劇的な減少が、ワクモに咬まれたことに(炎症反応あるいは刺激の反復により引き起こされるストレス状態という結果になる)よって引き起こされる雌鳥の障害を低減したことを示している。
【0198】
白血球/リンパ球の結果はストレスの信頼しうる医学的徴候と考えられ、この値は、DRAで処置していない視察1の雌鶏から採取された血液と比較して、視察2の雌鶏から採取された血液では著しく低かった。
【0199】
【表9】

【0200】
表中、*は手段間の差異が統計的に有意であることを示している(スチューデントt-検定(n=28)(p<0.01))。
【0201】
雌鶏の血液タンパク質の電気泳動
視察1および視察2の雌鶏から採取した血液に関して電気泳動を実施し、試料の血液タンパク質含有量を測定した。
【0202】
下記の表10は、動物における炎症を評価するアルブミン/グロブリン(A/G)比を示している。この表は、視察1(V1)および視察2(V2)から得た値を示している。
【0203】
【表10】

【0204】
A/G比の平均値は、V1では0.46であり、V2では0.92である。公表されている正常値は0.71である(Sturkie and Newman, 1951)。したがって、これらの結果は、DRAで処置していない雌鶏には、DRAで処置した雌鶏よりも、多くの炎症があったことを示している。
【0205】
解剖結果
犠牲にして解剖に付した視察1の雌鶏によって、翼腋部に生じ、多くの雌鶏の臀部に現れた引っ掻き傷の外側で実施した14の解剖には異常は無かったことが明らかとなった。盲腸の組織病理学的検査は正常であった。鳥の尾腺を検査したが、大きさは正常のように見え、内容物は、この種において通例認めることができる内容物と一致した;すなわち、尾腺は黄色の油状物を含有し、半透明の小さな蝋上の小球を有していた。
【0206】
解剖した視察2の雌鶏にはなんら肉眼で見える異常は無かった。尾腺は非常に容積があった。その内容物は、上述の視察1の雌鶏のそれとは非常に異なっており、非常に油性で、琥珀色から不透明の橙色であった。視察2の雌鶏の尾腺の外見はカモで認めたものと同じであった。分泌物を採取し、上述の試験管給餌試験において使用した。
【0207】
試験の間、調査員は4列目の雌鶏の高い死亡率に注目した。4列目の雌鶏には死亡前、不眠を伴う食欲減退期があった。4列目の死亡した雌鶏に対して、追加して3つの解剖を実施した。これらの雌鶏は悪液質性で、特にその胸骨の筋肉に顕著な筋萎縮があった。子宮の退化も示しており、成熟卵胞が閉塞していた。
【0208】
犠牲にした4列目の雌鶏の砂嚢を検査した。砂嚢の空洞は、穀類の外皮および特定し難い餌の断片を含有していた。砂嚢の内容物は胆汁が染み込んでおり、緑色の内容物を含有していたが、これは粘膜でも同じであった。このことは、雌鶏が絶食していたことを示している。2羽の雌鶏の肝組織は褐色の外観を有していたが、この外観はサルモネラ菌に感染した雌鶏に典型的な褐色の外観ではなかった。
【0209】
畜産学的パラメータ
卵の産卵
卵の産卵についても分析し、その結果を図25に示す。
【0210】
この図から示されるように、この試験における雌鳥の産卵曲線は、図26に示す理論曲線をたどる傾向があった。この図から分かるように、産卵における力強い開始および早期のピークの後は、卵の産卵は急速に減少し、常に理論曲線の下方にとどまり、雌鶏の週齢55週目頃にかなりの低下があった。別に行なった全体的な観察は、理論重量に対する採集卵の重量であった。この曲線は、第1の曲線を上回った。卵の重量は理論基準を下回ったが、各雌鶏の卵の重量は平均水準であった。
【0211】
採集した低級卵の割合にはばらつきがあることは、観察する上で興味深いが、それはその割合が雌鶏グループの収益性についての主要な要素だからである。処置前後の平均的な結果が、低級に格付けされた卵の割合の増加に気づかせられる。
【0212】
処置の継続期間の最後の5週間に、正常な産卵と比較して産卵の増加が観察された。低級に格付けされた卵の割合は、DRAによる処置の最初の2週間にわずかに上昇し、その後横ばい状態に至り、そして大きさはその後上昇し、最後にはおおむね15%を超えた。
【0213】
卵の平均重量は、DRA処置の開始に伴って4週目以後減少した。この差は顕著なものではないが、図25が処置前後の産卵の重量の比較を可能とし、卵の平均重量の増加を示したので興味深い。
【0214】
1日につき雌鶏が摂取した餌の量も、DRAでの処置の間、雌鶏について、減少した。この状況に関して、次の2つの仮説を立てることができる。
【0215】
水の異なった味や処置剤の摂取に関連する消化器系の問題のため、雌鶏用の水の中のDRAが雌鶏を混乱させる。しかし、1日に消費された水の量は一定であった。DRAが雌鶏に対して所望の影響を与えていると考えたいが、そうではない。DRAの処置を使用して、卵(卵の、重量/低級さ/大きさ)の産卵は非常に順調だった。
【0216】
DRAは、雌鶏による餌消費の減少させ、産卵基準の維持を可能としたが、ここで、餌消費指標の低下が、養鶏業者の粗利益を増加させる。
【0217】
雌鶏の死亡数量は養鶏農場の平均的な範囲に一致する。
【0218】
結果の考察
寄生虫学的結果
寄生動物に関する全体的な結果は、DRAでの試験のデルマニサス(Dermanyssusワクモ)の個体群の顕著な退行を示している。この退行は、インビトロでの分析試験の間に観察された速度論を追跡すると、処置の5日目に始まった。寄生動物の個体群の侵入は、N2若虫期という脆弱な段階で始まり、次にタイプ1の雌、その後雄と続く。タイプN1の若虫およびタイプ2の雌における耐性状態は、顕著な生存率を示すが、やがて減少し、群生行動の大きな形態変化に結びついた。これらのワクモが明らかに、常に観察できるタイプ2の雌の周囲に構造的コロニーを再形成する能力がないことは、その生存の見込みが減少することに似ている。
【0219】
視察2(V2)の際に採取した尾腺の分泌物でのインビトロでのダニの摂食に関する試験によって、分泌物中のDRAの存在および投与の選択を確認する。消化管による再吸収後のDRAの成分は尾腺によって排泄される。
【0220】
4列目に関して得られた結果は、他の列に関して得られた結果とは関連していなかった。水の受器中に2つの液相の存在を実際に認めたので、4列目での処置は、他の列の約2週間後に始まったように見える。水槽内に認めた浮遊物は虹色で、全表面を覆い、水槽の内壁にぴったりと付着していた。4列目の水槽から採取した試料のクロマトグラフィーによる分析により、それがDRAであることを確認した。
【0221】
更に、4列目の水槽には、他の6個の水槽よりも、より多くのカルシウム沈殿物があった。緑藻類も、この水槽内であるカルシウム沈殿物中にコロニー化しつつあった。この水槽はまた、空調機の換気システムの真横に置いたので、水の温度が上昇していた。したがって、4列目の水槽における差異が、DRAで処置した他の列と比較した場合の結果から得られた差異を説明する。
【0222】
医学的パラメータ
これらの結果は寄生虫学的結果と一致した。ワクモの摂食行動の阻害は血液の欠乏期間を示した。また、反復して咬むこと(これはDRAの処置によって退行した)によって免疫作用を誘発した。これらのパラメータの研究は、白血球/リンパ球およびヘマトクリット値の結果において示したように、雌鶏の健康状態の改善を強調することを可能にする。この生理学的パラメータの改善が、より良好な産卵およびより少ない罹患率に役立った。
【0223】
畜産学的パラメータ
処置された雌鶏の週齢、そして分析試験の継続期間(家禽の淘汰によって限定された)も、何ら結果についての統計的に有意な分析をもたらさなかった。しかし、デルマニサス(Dermanyssus)がひどく寄生している家禽において測定したそれらのパラメータにおいて認めた傾向は励みになった。
【0224】
DRAの治療的意味合いは寄生虫学的領域に限定される。畜産学的結果は実際に、DRAを投与した場合のワクモの抑制効果を示している。
【0225】
米国においては、生産の富は、“Grand Consortiums of the Laying Hen”において最近提供された年ごとの生産量を基礎として算出されている。したがって、1987年には、既に米国の養鶏場の92%でオリニスニサス・シルビアラム(Ornithonyssus sylviarum:トリサシダニ)が蔓延していたと考えうる。Hinkleは、供給された生産量の92%が寄生された動物に関連した量であると推論した。この著者にとっては、状況はそれほど正常ではなかった。
【0226】
実施例18
この実施例の目的は産卵用雌鶏のいる雌鶏小屋におけるDRAの効力を試験することであった。この試験を4週間の期間続けた。この実施例では、建物当たり31,000羽の雌鶏を収容するB1〜B6の6棟の建物を使用した。この実施例で使用した雌鶏はイサブラウンという(褐色卵の産卵用)雌鶏であった。雌鶏の週齢は建物で異なっていた。建物1、2および3(以後、B1、B2およびB3とする)では、雌鶏の週齢は29週であったが、建物4、5および6(以後、B4、B5およびB6とする)では、雌鶏の週齢は57週であった。
【0227】
処理
各建物を他の5棟とは独立に処理した。建物B1では、評価試験は、熱噴霧器中で生成物を12リットルに希釈した、4%(重量%)の濃度のDRA(ビス(2−エチルヘキシル)アジパート50%(重量%)および2,2,4トリメチル1,3 ペンタンジオールジイソブチラート50%(重量%))12mlを入れた熱噴霧器によりDRAを霧状化して実施し、3つの水槽がこの建物内には置かれていた。
【0228】
建物2〜6については、4%(重量%)の濃度のDRA(ビス(2−エチルヘキシル)アジパート50%(重量%)および2,2,4トリメチル1,3 ペンタンジオールジイソブチラート50%(重量%))を飲料水中で投与した。これによって、雌鶏に対しての処置を途切れることなく行ない、処理の継続期間を下記の表11に示すように変化させた。建物B2およびB6については、15日目の監督視察の後、第2の処理をおこなった(処理を開始してから15日後)。建物B2〜B6に関して分配した量は、500リットルの水槽にDRA50mlであった。この実施例においては、対照試験は行なわなかった。
【0229】
【表11】

【0230】
市販で既知の餌と水を雌鶏に与えた。監督視察を2日目と15日目に行なった。
【0231】
アカワクモの蔓延状態を、Bruneau et alの Parisitology, 123, 583-589 (Dec. 2001)の方法に従って、決定した。蔓延状態の測定は対数尺度で提供する。6/8という新たな蔓延レベルは、実験室内以外では測定することができない。4/8という新たな蔓延と考えられる尺度は、建物あるいは雌鶏小屋を処理する上でのクリティカルな段階である。
【0232】
雌鶏から血液を採取し、タンパク質の電気泳動を行なった。雌鶏の状態も評価した。
【0233】
雌鶏小屋の建物の特性
雌鶏小屋の建物は、この試験以前の7年間継続して、アカワクモが蔓延していた。以前利用されていた、アカワクモの数を最小にするための別の解決法は、昼夜間で、4時間点灯/2時間消灯の異なる照明周期、そしてアカワクモを処置するために用いられる市販商品であるSevin、Cepoux及びActogradeによる処置(5つの群れに対してのみの)であった。処置は成功せず、この試験の雌鶏に対して影響を与えなかった。
【0234】
建物は次のように位置していた。
【0235】
【表12】

【0236】
アカワクモの蔓延等級の評価は、上記Bruneauの方法に従った。建物内で最初の評価をおこない、建物の蔓延状態および存在する別のアカワクモを確認した。その後、建物からアカワクモの除去後のアカワクモの個体群の状態についての診断的検討を、実験室において1日目に行なった。ワクモの2つの種が雌鶏小屋の建物内にいた。デルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae:ワクモ)(DG)とデルマニサス・ヒルンジニス(Dermanyssus hirundinis:スズメサシダニ)(DH)であった。
【0237】
評価の結果を下記の表12に示した。
【0238】
【表13】

【0239】
約9週間後、下記の観察をした。
【0240】
観察と結果
ワクモの蔓延の個体群は、この試験の間変化しなかった。存在したワクモの85%はデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae:ワクモ)であり、残りはデルマニサス・ヒルンジニス(Dermanyssus hirundinis:スズメサシダニ)であった。
【0241】
各建物を評価して、下記の結果を得た。
【0242】
建物1:ダニのコロニーがまだ存在した。この建物内において寄生動物の状況の改善が注目された。採集した卵の表面にはダニはいなかった。卵の1%以下には、卵上で摂食するダニによって損なわれた斑点があった。実験室において、ダニは完全に機能的であるようにあった;すなわち、ダニは光から逃げ、たとえ分散してもコロニーを再形成し、正常に摂食した。処置を更にこの建物内で点検した。
【0243】
建物2:積み重なったワクモを見出されたが、コロニーはなかった。DRAでの処理後は、最初の視察時にマークした区域にコロニーのダニは存在しなかった。摂食するダニによって斑点がついた卵を認められなかった。ダニは光や機械的刺激から逃がれなかった。ダニは摂食することもできなかった。
【0244】
建物3:建物2についてと同じ観察が指摘された。
【0245】
建物4:多くの移動しているアカワクモの存在を、この建物の全ての構造物にわたって認めた。コロニーが崩壊し、乱れていた。卵採集棟におけるワクモの数の低下が観察された。卵の多くは下級品であり、平均で35%であった。ワクモは地表に潜伏する傾向があったが、このことは、ダニが卵採集棟内で押しつぶされたという点において、複合的な危険の原因となった。
【0246】
建物5:建物4と同じ観察
【0247】
建物6:建物4と同じ観察
【0248】
下記の表13は、15日目の蔓延の結果を示している。
【0249】
【表14】

【0250】
建物1のみ、ワクモの蔓延の等級が増大した。水に入れたDRAで処理した他の全ての建物は、処理に対して肯定的に応えた。すなわち、ワクモの蔓延は減少した。
【0251】
35日目での評価
建物について、15日目について上記したのと同様の方法で、35日目にも評価した。次の観察が指摘された。
【0252】
建物B1、B2およびB3:ニワトリダニは光や他の機械的刺激に反応しなかった。ダニは摂食することができなかった。建物1内では、コロニーの隔離解消後、再形成されたコロニーは60%を超えていた。建物2および建物3におけるコロニーの再形成は60%を超えなかった。
【0253】
建物B4、B5およびB6:ニワトリダニは光には反応しなかった。機械的刺激に対する反応は殆んどなかった。再形成コロニーに関する閾値60%を、建物4および建物6は超えていた。B4およびB6の蔓延は、B1の建物と実質的に同一であった。
【0254】
下記の表14は、蔓延に関して、0日目、15日目および35日目を比較して得られた結果を示している。
【0255】
【表15】

【0256】
これらの結果は、DRA処理によってワクモの量が減少したことを示している。
【0257】
本発明を、種々の好ましい実施形態に関して述べてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の改良、置き換え、省略、および変更が可能であることを、当業者が理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、後述の請求の範囲、およびその均等を含む範囲に限定することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0258】
【図1】カモ類およびニワトリの尾腺からの分泌物に見出された成分の、ガスクロマトグラフィー/質量分析法スペクトルのチャートである。
【図2】カモ類およびニワトリの尾腺からの分泌物に見出された成分の、別のガスクロマトグラフィー/質量分析法スペクトルのチャートである。
【図3】カモ類およびニワトリの尾腺からの分泌物に見出された成分の、更に別のガスクロマトグラフィー/質量分析法スペクトルのチャートである。
【図4】使用した溶媒の種類を示すグラフである。Chlは、クロロホルムを表し、D−ethは、ジエチルエーテルを表し、Acetは、アセトンを表し、そしてEth60%は、60%エタノールを表す。□は、溶媒で洗浄した皮膚でのダニの摂食レベルを意味し、■は、別の皮膚によって洗浄した洗液の生成物を皮膚に付着させた後のダニの摂食レベルを表し、□は、水で洗浄およびすすいだ洗液の生成物を洗浄した皮膚に付着させた後のダニの摂食レベルを表し、□は、ニワトリの未処理の皮膚でのダニの摂食レベルを意味する。
【図5】ニワトリまたはカモの尾腺に由来する抽出物の異なる濃度を用いた、デルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinaeワクモ)の摂食パーセントを示すグラフであり、抽出物の異なる濃度は、1/10〜1/160希釈度の溶解アルコールで希釈してある。抽出物の第一のグループは、洗浄したニワトリの皮膚で試験した。抽出物の第二のグループは、洗浄したカモの皮膚で試験した。抽出物の第三のグループは、未洗浄のニワトリの皮膚で試験し、そして抽出物の第四のグループは、未洗浄のカモの皮膚で試験した。これらの抽出物は、カモの尾腺からであった。一方はアルコール(□)に溶解させ、もう一方はアセトニトリル(■)に溶解させた。
【図6】カモ(□)またはニワトリ(■)の尾腺の抽出物を用いたデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae:ワクモ)の摂食のパーセントを示すグラフである。「Alone」は、洗浄した皮膚上のダニの摂食を表す。「GL Ca」は、カモの尾腺からの抽出物をプラスした、洗浄した皮膚でのダニの摂食を表す。「Lca」は、カモの洗液の生成物をプラスした、洗浄した皮膚でのダニの摂食を表す。「GI Pou」は、ニワトリの尾腺からの抽出物をプラスした、洗浄した皮膚でのダニの摂食を表す。「Lpou」は、ニワトリの洗液の生成物をプラスした、洗浄した皮膚でのダニの摂食を表す。
【図7】雌鶏に、本発明のカモの忌避性アロモンを飼料に入れて与えた後の、11日間に渡るデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae:ワクモ)の摂食パーセンテージを示すグラフである。
【図8】ニワトリに、本発明のカモの忌避性アロモンを飼料に入れて与えた後の、11日間に渡るデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae:ワクモ)の摂食パーセンテージを示すグラフである。
【図9】雌鶏に、本発明のカモの忌避性アロモンを飼料およびニュートラルな血液に入れて与えた後の、11日間に渡るデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae:ワクモ)の摂食パーセンテージを示すグラフである。「ニュートラルな血液」とは、通常のえさを給餌されたニワトリの血液を意味する。
【図10】本発明のカモの忌避性アロモンを追加した雌鶏の血液を用いた、11日間に渡るデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae:ワクモ)の摂食パーセンテージを示すグラフである。
【図11】0〜6日目までの、水または飼料のいずれかに入れたプラセボ(偽薬)または本発明のカモの忌避性アロモンのいずれかで試験した6つの異なるグループのデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae:ワクモ)の摂食パーセンテージを示す、異なる日における各種のグラフである。
【図12】10〜20日目までの、水または飼料のいずれかに入れたプラセボ(偽薬)または本発明のカモの忌避性アロモンのいずれかで試験した6つの異なるグループのデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae:ワクモ)の摂食パーセンテージを示す、異なる日における各種のグラフである。
【図13】雛鳥へのデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae:ワクモ)の摂食パーセンテージを示す、異なる日におけるグラフである。□は、対照を表す。■は、停止された、飼料中のカモの忌避性アロモンの投与を表す。左斜線は、雛鳥への本発明のカモの忌避性アロモンの投与を表す。
【図14】羽を有する正常のニワトリの皮膚および羽のないニワトリのヌード皮膚でのデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae:ワクモ)の摂食パーセンテージを示すグラフである。□は、対照を表す。右斜線は、本発明のカモの忌避性アロモンの投与を表す。
【図15】24日間に渡る、雛鳥のデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae:ワクモ)の摂食パーセンテージを表すグラフである。□は、対照を表す。右斜線は、本発明のカモの忌避性アロモンの投与を表す。
【図16】7列の処置済み雌鶏それぞれの、ワクモのカモの忌避性アロモン(DRA)による処置前の0日および処置後の25日目の、蔓延の等級を示すグラフである。
【図17】0日(未処置)およびカモの忌避性アロモン(DRA)による処置後の35日目における、7列の雌鶏それぞれの各ケージ(小屋)でのワクモの蔓延パーセントを示すグラフである。
【図18】試験した7列の雌鶏についての、処置前の0日およびカモの忌避性アロモン(DRA)による処置後の35日目における、ワクモのケージ(小屋)ごとのコロニー数を示すグラフである。
【図19】試験した7列の雌鶏についての、処置前の0日およびカモの忌避性アロモン(DRA)による処置後の35日目における、ワクモの(コロニーの)直径を示すグラフである。
【図20】試験した7列の雌鶏についての、処置前の0日およびカモの忌避性アロモン(DRA)による処置後の35日目における、雌鶏の糞の蔓延を示すグラフである。
【図21】雌鶏の糞から抽出したカモの忌避性アロモン(DRA)を用いた、雛鳥でのワクモの摂食パーセントを示すグラフである。DRA生成物はアルコールで抽出した。
【図22】0日(未処置)およびカモの忌避性アロモン(DRA)による処置後の35日目における、7列の雌鶏のそれぞれについての、ケージ(小屋)支柱内のワクモの蔓延パーセントを示すグラフである。
【図23】35日目の処置後に解剖した雌鶏の尾腺から抽出した、異なる希釈液のカモの忌避性アロモン(DRA)によって処置した雛鳥の、ワクモの摂食パーセントを示すグラフである。
【図24】処置後の35日に解剖した雌鶏から抽出したカモの忌避性アロモン(DRA)のGC/MSスペクトログラフである。DRAのピークは、このスペクトルグラフで13.23付近に見られる。
【図25】カモの忌避性アロモン(DRA)で処置した雌鶏の産卵量を示す曲線である。▲は、産まれた卵の週齢のパーセントを示す。□は、平均卵重量を示す。「−−−−」は、雌鶏の生体重量を表す(LW)。および□は、雌鶏の理論生体重量を表す(LW)。
【図26】カモの忌避性アロモン(DRA)によって処置されなかった正常な雌鶏の産卵の理論曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カモ尾腺の分泌物に由来するカモの忌避性アロモンを含む組成物。
【請求項2】
上記カモの忌避性アロモンが、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートおよび/またはそれらの誘導体ならびに/あるいはそれらの異性体;ならびに/あるいはビス(2−エチルヘキシル)アジパートまたは2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートと、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体1つ以上との、および/またはビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの異性体1つ以上および/またはビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
上記カモの忌避性アロモンが、ビス(2−エチルヘキシル)アジパート約45.0〜55.0重量%および2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラート約45.0〜55.0重量%および/またはそれらの誘導体ならびに/あるいはそれらの異性体;ならびに/あるいはビス(2−エチルヘキシル)アジパートまたは2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートと、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体(エステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミド)1つ以上との、および/またはビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの異性体1つ以上および/またはビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む、請求項2記載の組成物。
上記誘導体が、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートのエステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミドである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
クモ類を忌避する方法であって、このような処置の必要がある動物にカモの忌避性アロモンの薬理上許容しうる量を投与することを含む方法。
【請求項5】
雌鶏、ニワトリおよび雛鳥のワクモまたはトリサシダニを処理または防止する方法であって、このような処置の必要がある雌鶏、ニワトリまたは雛鳥に、カモの忌避性アロモンの薬理上有効な量を投与することを含む方法。
【請求項6】
上記カモの忌避性アロモンが、ビス(2−エチルヘキシル)アジパート約45.0〜55.0重量%および2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラート約45.0〜55.0重量%および/またはそれらの誘導体ならびに/あるいはそれらの異性体;ならびに/あるいはビス(2−エチルヘキシル)アジパートまたは2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートと、ビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体(エステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミド)1つ以上との、および/またはビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの異性体1つ以上および/またはビス(2−エチルヘキシル)アジパートおよび2,2,4−トリメチル1,3ペンタンジオールジイソブチラートの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む、請求項6記載の方法。
【請求項7】
上記投与することが、経口投与を含む、請求項5〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
上記投与することが、局所投与を含む、請求項5〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
ニワトリの尾腺の分泌物に由来するニワトリの誘引性カイロモンを含む組成物。
【請求項10】
1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン(オレイルアルコール)およびオクタデカンおよび/またはそれらの誘導体ならびに/あるいはそれらの異性体;ならびに/あるいは1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの1つ以上と、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンの誘導体1つ以上および/または1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの異性体1つ以上および/または1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む、請求項10記載のニワトリの誘引性カイロモンを含む組成物。
【請求項11】
上記ニワトリの誘引性カイロモンが、1−ヘプタデセン約23.5〜26.5重量%、ヘプタデカン約23.5〜26.5重量%、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)約23.5〜26.5重量%およびオクタデカン約23.5〜26.5重量%および/またはそれらの誘導体ならびに/あるいはそれらの異性体;ならびに/あるいは1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの1つ以上と、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン(オレイルアルコール)およびオクタデカンの誘導体1つ以上および/または1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの異性体1つ以上および/または1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
上記誘導体が、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンのエステルもしくは塩、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、ステロールおよびアミド誘導体である、請求項10記載の組成物。
【請求項13】
クモ類を誘引する方法であって、上記クモ類を捕捉するための、粘着剤を有するトラップ内に、餌としてニワトリの誘引性カイロモンの有効量を置くことを含む方法。
【請求項14】
上記ニワトリの誘引性カイロモンが、1−ヘプタデセン約23.5〜26.5重量%、ヘプタデカン約23.5〜26.5重量%、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)約23.5〜26.5重量%およびオクタデカン約23.5〜26.5重量%および/またはそれらの誘導体ならびに/あるいはそれらの異性体;ならびに/あるいは1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの1つ以上と、1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン(オレイルアルコール)およびオクタデカンの誘導体1つ以上および/または1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)、オクタデカンの異性体1つ以上および/または1−ヘプタデセン、ヘプタデカン、9−オクタデセン−オール1(オレイルアルコール)およびオクタデカンの誘導体の異性体1つ以上との混合物を含む、請求項14記載の方法。
【請求項15】
請求項1記載のカモの忌避性アロモンまたは請求項8記載のニワトリの誘引性カイロモンのいずれかを含む溶液。
【請求項16】
クモ類を忌避する方法であって、このような処置の必要があるヒトに、薬理上許容される量のカモの忌避性アロモンを投与することを含む方法。
【請求項17】
上記クモ類が、デルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae:ワクモ)、マダニまたはオミソニサス・シルビアルス(Omithonyssus sylviarum:イエダニ)である、請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2006−501173(P2006−501173A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−514863(P2004−514863)
【出願日】平成15年6月19日(2003.6.19)
【国際出願番号】PCT/EP2003/007143
【国際公開番号】WO2004/000337
【国際公開日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【出願人】(504467370)
【氏名又は名称原語表記】FIDELINE
【Fターム(参考)】