説明

クラウン化合物及び/又は対イオンと複合体化されたペプチドを含む粘膜送達組成物

ペプチドを粘膜送達するための組成物及び方法が提供される。組成物は、ペプチド活性剤のpIとは異なるpHの非水性疎水性媒体に可溶化されたクラウン化合物及び/又は対イオンと錯体化された安定的に水和されたペプチド活性剤を含む。本方法は、対象体に有効量の本開示の組成物を投与することを含む。他の態様には、本開示の組成物を製造するための方法が含まれる。また、本開示の実施形態の実施に使用が見出される組成物及びキットが提供される。本方法及び組成物は、様々な異なる疾患状態を治療することを含む、様々な応用に使用が見出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ペプチドを粘膜送達するための、特に口腔粘膜を介して吸収させるための口腔粘膜送達用の組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドに基づく薬物は、経口摂取による経口送達が、本来的な透過性の不良及び胃腸(GI)管での分解により妨げられることが多いため、典型的には注射により送達される。それにもかかわらず、使用し易いこと及び全体的に患者コンプライアンスがより良好であることを含む、潜在的な治療有益性は、依然として重要である。
【0003】
GI管、肺、鼻腔、及び口腔に見出されるような種々の粘膜を越えて宿主の血流へとペプチドを粘膜送達することは、多くのペプチド及びペプチド製剤の場合、不可能なことではない。しかしながら、体循環に到達する未変化ペプチドの投与用量の割合(つまり、生物学的利用能)は、通常、特定の送達経路、ペプチド、及び製剤に応じて様々である。したがって、粘膜経路によるペプチド薬物の非侵襲性送達は、重要な自由度を提供する。
【0004】
例えば、口腔粘膜による薬物の送達は、内頚静脈を介する体循環への直接的接近を提供し、薬物が腸及び肝臓の初回通過代謝を迂回し、血流に進入して迅速に効力を発揮することを可能にする。そのため、口腔の粘膜内層は、インスリン、インターフェロン、及びインターロイキン等の大型治療用分子を送達するための有望な局所経路である(Veuillez et al., Eur. J. Pharm. Biopharm. (2001) 51:93-109;及びSudhakar et al., J. Control. Release (2006) 114: 15-40;及びAmin et al., Drug Delivery Technology (2007) 7(3) 48, 50-55)。
【0005】
より大型分子の口腔粘膜送達の1つの欠点は、それらの全体的な生物学的利用能が不良であることである。この点で、吸収促進剤を使用して粘膜透過性を増加させること及び/又は酵素阻害剤を添加して薬物安定性を増加させることを含む種々の手法が、ペプチドの口腔粘膜吸収を向上させるために探究されている。多くの物質が、吸収促進剤として機能することができ、最も普及しているものの1つは、胆汁酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、及び細胞間脂質可溶化に基づくもの等の界面活性剤である(Aungst et al., Intl. J. Pharmaceutics (1989) 53(3):227-35;Druker, D.J., Curr Pharm Design (2001) 7(14): 1399-1412;及びBerstein, G., Drug Development Res. (2006) 67(7):597-599)。クラウン化合物等の環状化合物も使用されている(国際公開第08/037484号)。
【0006】
薬物が充填されたレザバー型デバイスが、浸透促進剤としてのコール酸塩と共に、インスリンの頬側送達用に報告されている(米国特許第4,671,953号;第4,863,737号;第5122127号;及び5,132,114号)。大豆ホスホチジルコリン(phosphotidylcholine)、コレステロール、及びデオキシコール酸ナトリウムで構成
される脂質小胞も同様に、インスリン生物学的利用能を増強することが報告されている(Yang et al., Chem. Pharm. Bull. (2002) 50:749-753)。インスリン、及びオレイン酸
(18:1)、エイコサペンタエン酸(20:5)、又はドコサヘキサエン酸(22:6)等の不飽和脂肪酸を含有するプルロニックF−127(PF−127)で構成されたゲルが報告されている(Morishita et al., Int. J. Pharm. (2001) 212:289-293)。また
、吸収促進剤リサルビン酸は、卵アルブミン及び弱界面活性剤のアルカリ加水分解の産物であり、α−インターフェロン及びインスリン等の分子用に報告されている(Starokadomskyy et al., Int. J. Pharm. (2006) 308:149-154)。種々の送達系が、グルカゴン様イ
ンスリン分泌性ペプチド(GLP−1)の頬側送達について報告されている(米国特許第5,863,555号及び第5,766,620号)。
【0007】
また、様々な粘膜付着性剤形が、口腔における送達系の滞留時間を増大させることが報告されており(Ishida et al., Chem. Pharm. Bull. (1981) 29:810-816;及びSenel et al., Curr. Pharm. Biotechnol. (2001) 2:175-186)、それらには、例えばペレット状の粘膜付着性ポリマー性ナノ粒子(Venugopalan et al., Pharmazie (2001) 56:217-219)
及び粘膜付着性錠剤(Hosny et al., Boll. Chim. Farm. (2002) 141 :210-217)が含ま
れる。
【0008】
また、大豆レシチン及びプロパンジオールを有するインスリン(Xu et al., Pharmacol. Res. (2002) 46:459-467)、及び頬側エアゾルスプレー、及び無極性溶媒を使用したカプセル剤等の、種々の溶媒を使用した粘膜剤形が報告されている(米国特許第5,955,098号)。種々の有機溶媒の溶液又は懸濁液の肺送達製剤が報告されており、例えば、溶媒は、エタノール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドフラン(tetrahydofuran)、エチルエーテル、及びプロパノール等のクラス3残留溶媒である(米国特許第6,660,715号)。
【0009】
技術の進歩にもかかわらず、粘膜送達系は、口又は気道の種々の粘膜内層の刺激を引き起こす等の副作用を示す吸収促進製剤を含むことが多い。別の問題は、多くの組成物、特に胆汁酸塩の味が不快であることであり、患者の受容及びコンプライアンスが問題となる可能性が高いことが指摘される。別の問題は、生物学的効果、保存安定性、及び再現性のために、十分な量の活性ペプチド成分を送達するのに必要な容積に関する。
【0010】
そのような欠点は、安定的であり、良好に許容され、増強及び信頼性の高い粘膜送達、特に口腔粘膜送達を提供し、哺乳動物対象体の疾患及び他の有害状態の治療に好適であるペプチドを投与するための組成物及び方法について、満たされていない必要性があることを指摘する。1つ又は複数の粘膜経路により、ペプチド等のより大型薬物を治療量で効率的に送達することを提供し、速効性であり、投与が容易で、粘膜刺激又は組織損傷等の有害副作用が限定的であり、再現性の高い方法及び組成物に関する関連必要性が存在する。安定性が向上されたペプチドの非水性医薬用及び診断用組成物の必要性も存在する。追加の必要性は、そのような物質の製造及びそのような物質の組成物に関する。本開示は、これら及び他の必要性に取り組む。
【0011】
関連文献
種々のペプチド、使用、製剤、並びに送達経路及び送達系が、下記に報告されている:米国特許第4,671,953号;第4,863,737号;第5,122,127号;第5,132,114号;第5,346,701号;第5,424,286号;第5,545,618号;第5,614,492号;第5,631,224号;第5,766,620号;第5,869,082号;第6,268,343号;第6,312,665号;第6,375,975号;第6,436,367号;第6,451,286号;第6,458,924号;第6,660,715号;第6,676,931号;第6,770,625号;第6,867,183号;第6,902,744号;第6,969,508号;第6,977,070号;第6,998,110号;第7,030,082号;第7,070,799号;第7,169,410号;第7,196,059号;及び国際公開第9715297号;国際公開第1999/016417号;国際公開第2002/064115号;国際公開第2003/024425号;国際公開第2004/105790号;国際公開第2006/025882号;国際公開第2006/037811号;国際公開第2006/103657号;国際公開第2006/105615号;国際公開第2006/127361号;国際公開第2006/135930号;国際公開第2007/01
4391号;国際公開第2007/065156号;国際公開第2007/067964号;国際公開第2007/083146号;国際公開第2007/121256号;国際公開第2007/146448号;国際公開第2008/037484号;国際公開第2008/145728号;国際公開第2008/145732号;及び国際公開第2008/016729号;
【0012】
種々の文献には、経口、口腔内(頬側/舌下)、直腸、経皮、鼻腔内、及び肺内送達経路を含む、ペプチドの皮下注射(s.c.)及び使用の代替策について考察されている:Touitou, E., J. Controlled Rel (1992) 27:139-144; Amin et al., Drug Delivery Technology (2007) 7(3) 48, 50-55;Aungst et al., Pharmaceutical Research (1988) 5(5):305-308;Aungst et al., Intl. J. Pharmaceutics (1989) 53(3):227-35;Berstein, G., Drug Development Res. (2006) 67(7):597-599;Druker, D.J., Curr Pharm Design (2001) 7(14): 1399-1412;Hosny et al., Bollettino Chimico Farmaceutico (2002), 747(3):210-217;Khafagy et al., Advanced Drug Delivery Reviews (2007) 59(15):1521-1546;Lassmann-Vague et al., Diabetes & Metabolism (2006) 32(5, Pt 2):513-522;Morishita et al., Intl. J. Pharmaceutics (2001) 212(2):289-293;Patel et al., Drug Delivery Technology (2006) 6(3)48-60;Pillion et al., J. Pharm. Sci. (1995) 84(11): 1276-1279;Portero et al, Carbohydrate Polymers (2007) 68(4):617-625;Pozzilli et al., Metabolism, Clinical and Experimental (2005) 54(7):930-934;Owens,
D.R., Nature Reviews Drug Discovery (2002) 1(7):529-540;Rossi et al., American
J. Drug Delivery (2005) 3(4):215-225;Sadrzadeh et al., J. Pharm Sci (2007) 96(8): 1925-1954;Starokadomskyy et al., Intl. J. Pharmaceutics (2006) 308(1-2): 149-154;Xu et al., Pharmacological Research (2002) 46(5:459-467;Yang et al., S.T.P. Pharm. Sciences (2001) 77(6):415-419;Yang et al., Chemical & Pharmaceutical
Bulletin (2002) 50(6):749-753;
【0013】
Klibanovら(1995年、上記)は、様々なpHの水溶液からの種々の生体分子の凍結乾燥、並びにメタノール及びエタノール中でのそれらのその後の溶解度を報告した。
【0014】
米国特許出願公開第2006/0178304号には、様々なpHの水性溶液又は懸濁液からの種々のグルカゴン様ペプチドの凍結乾燥、及び水性溶液又は懸濁液中でのそれらのその後の溶解度が開示されている。
【発明の概要】
【0015】
ペプチド活性剤の粘膜送達に関連する組成物及び方法が提供される。粘膜送達組成物は、ペプチド活性剤の等電点とは異なるpHの非水性疎水性媒体に可溶化された、クラウン化合物及び/又は対イオンと錯体化された有効量の安定的に水和されたペプチド活性剤を含む。また、クラウン化合物及び/又は対イオンと錯体化された安定的に水和されたペプチド活性剤を含む事前に形成されたペプチド錯体を含む組成物が提供され、事前に形成されたペプチド錯体は、ペプチド活性剤の等電点とは異なるpH、随意にペプチド活性剤の等電点から離れたpHを有する溶液又は懸濁液から乾燥される。追加の組成物は、ペプチド活性剤の等電点とは異なるpHの非水性の疎水性媒体に可溶化された、対イオンと錯体化された有効量の安定的に水和されたペプチド活性剤を含み、対イオンとの錯体化された安定的に水和されたペプチド活性剤は、ペプチド活性剤の等電点とは異なるpH、随意にペプチド活性剤の等電点から離れたpHを有する溶液又は懸濁液から乾燥され、非水性の疎水性媒体は、多くの実施形態では、少なくとも1つのアシルグリセロール及び少なくとも1つの有機溶媒及び/又は脂質を含む。更に、主題組成物の医薬用及び/又は診断用調製物が提供される。
【0016】
また、生産方法が提供される。ある実施形態では、本方法は、ペプチド活性剤の等電点
とは異なるpHの非水性疎水性媒体中で可溶性ペプチド錯体を形成することを含み、ペプチド錯体は、クラウン化合物及び対イオンと錯体化された有効量の安定的に水和されたペプチド活性剤を含む。また、クラウン化合物及び対イオンと錯体化された安定的に水和されたペプチド活性剤を含む事前に形成されたペプチド錯体を生産するための方法であって、(i)ペプチド活性剤の等電点とは異なるpH、随意にペプチド活性剤の等電点から離れたpHを有する溶液又は懸濁液中でペプチド錯体を形成すること、及び(ii)ペプチド活性剤と結合した十分な量の水が保持される条件下で、溶液又は懸濁液からペプチド錯体を乾燥して、ペプチド活性剤を安定化させ、それにより事前に形成されたペプチド錯体を生産することを含む方法が提供される。ペプチド活性剤の等電点とは異なるpHの非水性疎水性媒体中に、対イオンと錯体化された有効量の安定的に水和されたペプチド活性剤を可溶化すること含み、対イオンと錯体化された安定的に水和されたペプチド活性剤は、ペプチド活性剤の等電点とは異なるpH、随意にペプチド活性剤の等電点から離れたpHを有する溶液又は懸濁液から乾燥され、非水性疎水性媒体は、多くの実施形態では、少なくとも1つのアシルグリセロール及び少なくとも1つの有機溶媒及び/又は脂質を含む別の方法が提供される。
【0017】
有効量のペプチド活性剤を、その必要性のある宿主に粘膜送達するための方法も提供される。この方法は、有効量の本開示の粘膜送達組成物を宿主の粘膜に投与することを含み、投与は、有効量のペプチド活性剤を宿主の血流に送達する。特徴的な実施形態では、粘膜送達組成物は、口腔粘膜送達組成物であり、粘膜は、口腔粘膜である。
【0018】
主題方法の実施に使用が見出されるキットが、更に提供される。ある実施形態では、キットは、有効量の本開示の粘膜送達組成物、及び/又は混合時に粘膜送達組成物を形成することが可能な有効量で、キット中に種々の組み合わせで各々個々に提供される成分を含む。
【0019】
主題方法及び組成物は、様々な異なる疾患状態の治療を含む、広範で様々な応用に使用が見出される。本明細書に開示された方法及び組成物の重要な利点を示す例示的な応用は、ペプチド錯体及び非水性疎水性媒体中に維持された安定的に水和された形態のペプチド活性剤を形成及び使用することにより付与される増強されたペプチド粘膜送達、及び特に信頼性が高く再現性の良い粘膜送達である。主題組成物及び方法は、糖尿病、肥満、及び関連障害を治療するために、in vivoで血糖レベルに影響を及ぼすことができるリラグルチド及びエキセンディン−4(エクセナチド)により例示される、グルカゴン様ペプチド−1及びその類似体等のペプチドホルモンを粘膜送達するのに特に有用である。したがって、ある実施形態では、特定の組成物及び方法は、糖尿病、肥満、及び関連障害を治療するためのペプチド活性剤を粘膜送達するために提供される。
【0020】
本開示の他の特徴は、本明細書に記述されており、また本開示を読むと、当業者であれば容易に明白になろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】対イオンのタイプが、代表的な粘膜送達組成物中のエキセンディン−4の舌下送達、及び腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)により測定されるマウスのグルコースレベルの低減に及ぼす影響を実証する一組の結果を表す図である。
【図2】媒体のpHを変更することが、代表的な粘膜送達組成物中のエキセンディン−4の舌下送達、及びIPGTTにより測定されるマウスのグルコースレベルの低減に及ぼす影響を実証する一組の結果を表す図である。
【図3】ペプチドに対するクラウン化合物及び対イオンの化学量論(stoicheometric)量及び比率を変更することが、代表的な粘膜送達組成物中のエキセンディン−4の舌下送達、及びIPGTTにより測定されるマウスのグルコースレベルの低減に及ぼす影響を実証する一組の結果を表す図である。
【図4】含水量及びプロセス条件が、代表的な粘膜送達組成物中のエキセンディン−4の舌下送達、及びIPGTTにより測定されるマウスのグルコースレベルの低減に及ぼす影響を実証する一組の結果を表す図である。
【0022】
定義
化合物、そのような化合物を含有する医薬組成物、及びそのような化合物及び組成物を使用する方法を記述する場合、以下の用語は、別様の指定がない限り以下の意味を有する。下記で定義された部分はいずれも、様々な置換基で置換されてもよく、それぞれの定義は、そのような置換部分をそれらの範囲内に含むことが意図されることも理解されるべきである。
【0023】
「アミノ酸」は、D、L、又はDL型の天然アミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Hyl、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びVal)のいずれか、並びにそれらの類似体/誘導体を指す。天然アミノ酸の側鎖は、当技術分野で周知であり、例えば、水素(例えば、グリシン中)、アルキル(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン中)、置換アルキル(例えば、トレオニン、セリン、メチオニン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、及びリジン中)、アルカリル(例えば、フェニルアラニン及びトリプトファン中)、置換アリールアルキル(例えば、チロシン中)、及びヘテロアリールアルキル(例えば、ヒスチジン中)が含まれる。したがって、アミノ酸には、アシル化アミノ酸及びアミノ化アミノ酸等の保護アミノ酸又は修飾アミノ酸が含まれる。
【0024】
「類似体」又は「誘導体」は、限定ではないが、本開示の化合物の構造に由来する構造を有しており、その構造が本明細書に開示されたものに十分に類似しており、その類似性に基づき、特許請求された及び/又は参考文献に記載された化合物と同じ又は類似した活性及び有用性を示すことが当業者により予測されることになるあらゆる化合物を指す。
【0025】
「頬側粘膜」は、頬の内壁を内層する膜を指す。
【0026】
「電荷錯化剤」は、イオン、原子、又は分子のイオン化可能な官能基と非共有結合性錯体を形成する化合物を指し、錯体は、非共有結合性化学結合により1つ又は複数のイオン、原子、又は分子と錯化剤との可逆的結合を示す。
【0027】
「錯体化」又は「電荷錯体」は、非共有結合性化学結合により、イオン、原子、又は分子のイオン化可能な官能基と非共有結合性錯体を形成するクラウン化合物等の電荷錯化剤の可逆的結合を指す。本明細書で使用される場合、錯体化又は電荷錯体という用語は、錯化剤に結合された塩又は金属イオンに限定されない。この用語は、一般的に、錯化剤と、ペプチドのイオン又はイオン基、特にペプチドの陽イオン又は陽イオン基との間の錯体に関する。
【0028】
「クラウン化合物」は、通常、非電荷の大環状多座配位化合物を指し、そこでは、3つ以上の配位環原子(通常は、酸素又は窒素)が、陽イオン種(ポルフィリン等の平面状類似体を除く)とのキレート錯体を容易に形成するのに好適なように近接しているか又は近接することができる。例えば、以下を参照されたい:M. Hiraoka, Crown Compounds: their Characteristics and Applications, Elsevier Science Publishers, 1982;及びE. Weber and F. Vogtle, Inorg. Chim. Acta (1980) 45:L65-L67。
【0029】
「乾燥ペプチド」は、凍結乾燥、噴霧乾燥、遠心蒸発、及び空気乾燥等のプロセスによ
り乾燥され、ペプチドと結合した残留水を含有するペプチドを指す。乾燥ペプチドは、典型的には、油状の又は湿潤した残渣外観を含む、乾燥粉末、微粒子、又は残渣材料の外観を有していてもよい粉末又は残渣である。対照的に、「無水ペプチド」は、本質的に水を含有していない。例えば、以下を参照されたい:凍結乾燥(例えば、Williams and Polli
(1984) J, Parenteral Sci. Technol. 38:48-59);噴霧乾燥(例えば、Masters (1991)
in Spray-Drying Handbook (5th ed; Longman Scientific and Technical, Essez, U.K.), pp. 491-676;Broadhead et al. (1992) Drug Devel. Ind. Pharm. 18:1169-1206;及びMumenthaler et al. (1994) Pharm. Res. 11: 12-20);空気乾燥(例えば、Carpenter
and Crowe (1988) Cryobiology 25:459-470;及びRoser (1991) Biopharm. 4:47-53);及び遠心蒸発(例えば、www.genevac.com)。
【0030】
「有効な」は、所望の、予測される、又は意図された結果を達成するのに適切であることを意味する。例えば、本明細書で示されている用語「有効量」又は「薬学的有効量」は、致命的でないが、所望の有用性を提供するのに十分な量の化合物を意味することが意図されている。例えば、宿主の血糖レベルを減少させるための有効量は、有用な応答(例えば、血糖レベルが対照レベル未満に低減されるか、又は血糖レベルの臨床的に意味のある低減をもたらす)を誘発する量である。下記で指摘するように、必要とされる正確な量は、対象体の種、年齢、及び全身状態、治療されている状態又は疾患の重症度、使用される特定の化合物、並びにその投与方法等に依存し、対象体によって様々であるだろう。したがって、正確な「有効量」を明記することは、可能ではない。しかしながら、適切な有効量は、当業者であれば、単なる日常的な実験作業を使用して決定することができる。
【0031】
「イオン化可能な官能基」は、基のpKaとは異なるpHで電荷を供与又は受容することが可能なペプチドのアミノ酸にある基を指す。
【0032】
「粘膜送達」は、胃腸管(GI)、直腸、膣、肺、鼻腔、又は頬側(頬)、舌下(舌の下)、唇、歯茎、口蓋、及び舌を含む口腔の1つ又は複数の粘膜に活性剤(薬物等)を塗布し、活性剤がこれらの場所を被う膜を通り抜け、血流に進入することを指す。
【0033】
「粘膜送達組成物」は、活性剤を粘膜送達することが可能な薬物送達組成物又は系を指す。
【0034】
「ペプチド」は、最大2、5、10、20、30、40、50、75、100、又は約200個のアミノ酸残基を含むポリアミノ酸を指し、コード化及び非コード化アミノ酸、化学的に又は生化学的に修飾された又は誘導体化されたアミノ酸、直鎖、分岐、又は環状ペプチド、及び修飾された骨格を有するペプチドを含んでいてもよい。ポリペプチド又はタンパク質と呼ばれることもあり、それらは本明細書では同義的に使用することができる。例えば、ベータ−アラニン、アルファ−アミノ酪酸、ガンマ−アミノ酪酸、アルファ−アミノイソ酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、ホモセリン、及びヒドロキシプロリン等の1つ又は複数の非天然アミノ酸を含むペプチドが含まれる。例えば、ペプチドのN末端及びC末端等の反応的な基が修飾されており、種々の標識剤、ポリエチレングリコール等のポリマー、脂質、及び糖質等により化学的に修飾されていてもよく、保護基等によりブロッキングされていてもよいペプチド、並びに翻訳後修飾等の生物学的修飾を保持するものが含まれる。
【0035】
「ペプチド活性剤」は、活性ペプチド又はその類似体/誘導体を指し、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、及びプロドラッグ形態を含む。
【0036】
「溶解度値パーセント」は、組成物中の分子の重量パーセントとして表される、標準室温における溶媒又は溶媒系中の分子の平衡溶解度限界又は最大溶解度を指す。
【0037】
「透過性増強脂質」は、それらの構造及び組成に応じて、標準室温で固体又は液体のいずれであってもよく、飽和又は不飽和、分岐又は直鎖であってもよく、粘膜の透過性を増強してペプチドを吸収することが可能である荷電された又は中性疎水性又は両親媒性の低分子を指す。脂肪、ワックス、ステロール、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、及びK等)、モノグリセリド、ジグリセリド、及びリン脂質等、例えば、オレイン酸、コレステロール等のステロール、グリセロール骨格に結合されたオレオイル、ステアロイル、及びパルミトイル鎖で構成されるトリグリセリド、ホスファチジルコリン等のリン脂質等を含んでいてもよい。透過性増強脂質のサブセットは、「透過性増強脂肪酸」であり、それは、飽和又は不飽和、分岐又は直鎖であってもよく、粘膜の透過性を増強してペプチドを吸収することが可能である脂肪族カルボン酸を指す。
【0038】
「口腔粘膜送達」は、頬側(頬)、舌下(舌の下)、唇、歯茎、口蓋、及び舌を含む口腔の1つ又は複数の粘膜に活性剤(薬物等)を塗布し、活性剤が、これらの場所を被う膜を通り抜け、血流に進入することを指す。
【0039】
「口腔粘膜送達媒体」は、活性剤の口腔粘膜送達が可能な薬物送達系を指す。
【0040】
「溶媒和」は、水性、有機、又は水性有機溶液等の溶媒との、ペプチド等の溶質の相互作用を指し、それは、溶媒中の溶質の安定化に結び付く。
【0041】
「溶解度」は、溶解速度が析出速度と等しい場合に達成される動的平衡状態を指す。特定の溶媒中における物質の溶解度の程度は、より多くの溶質を添加しても溶液の濃度が増加しない飽和濃度として測定される。
【0042】
「安定的に水和されたペプチド活性剤」は、乾燥ペプチド活性剤と同等な又はそれよりも大きな、有機又は水性有機溶媒中の重量による含水量及び溶解度を有し、本質的に凝集及び酸化されていないペプチド活性剤を指す。
【0043】
「舌下粘膜」は、舌の下側表面及び口の底部を含む膜を指す。
【0044】
用語「決定する」、「測定する」、及び「評価する」、及び「アッセイする」は、同義的に使用され、量的及び質的決定の両方を含む。
【0045】
用語「薬学的に許容される」は、生物学的でないか又はそうでなければ望ましくない物質を指し、つまり物質は、いかなる望ましくない生物学的効果も引き起こさず、又はそれが含有されている医薬組成物の他の成分のいずれとも有害な様式で相互作用せずに、選択された活性医薬成分と共に個体に投与することができる医学的に許容される品質及び組成である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本開示をより詳しく説明する前に、本開示は、記載されている特定の実施形態に限定されず、したがって、無論、様々であってもよいことが理解されるべきである。また、本明細書で使用された用語は、特定の実施形態を説明するためのものであるに過ぎず、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるため、限定的とは意図されないことが理解されるべきである。
【0047】
値の範囲が提供される場合、状況が明白にそうではないと示さない限り、その範囲の上限と下限の間にある、下限の単位の十分の一までの各中間値、その表示されている範囲の任意の他の表示されている値又は中間値は、本開示内に包含されることが理解されるべき
である。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、より小さな範囲に独立して含まれてもよく、また、表示されている範囲の任意の明確に除外された上限下限に従って、本開示内に包含される。表示されている範囲が、上限下限の1つ又は両方を含む場合、それら含まれた上限下限のいずれか又は両方を除外した範囲も、本開示に含まれる。
【0048】
ある範囲は、本明細書では、用語「約」が先行する数値を用いて表されている。用語「約」は、本明細書では、それが先行する正確な数値を文字通りに、並びにこの用語が先行する数値に接近又は近似する数値を支援するために使用される。ある数値が、具体的に記述された数値に接近又は近似しているか否かを決定する場合、接近又は近似する記述されていない数値は、それが示されている状況下で、具体的に記述された数値の実質的な等価性を提供する数値であってもよい。
【0049】
別様に定義されていない限り、本明細書で使用された技術用語及び科学用語は全て、本開示が属する当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似した又は同等である任意の方法及び物質を、本開示の実施又は試験に使用することもできるが、代表的で例示的な方法及び物質をこれから記述する。
【0050】
本明細書に引用された出版物及び特許は全て、あたかも個々の出版物又は特許の各々が、具体的に及び個々に参照により組み込まれることが示されているがごとく、参照により本明細書に組み込まれ、出版物の引用と関連する方法及び/又は物質を開示及び記述するために参照により本明細書に組み込まれる。あらゆる出版物の引用は、出願日前にそれを開示するためのものであり、本開示が、事前開示により、そのような出版物に先行する資格がないことを承認するものと解釈されるべきでない。更に、提供された公開の日付は、実際の公開日とは異なる場合があり、独立して確認される必要がある場合がある。
【0051】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、状況が明白にそうではないと示さない限り、複数の参照対象を含むことが留意される。特許請求の範囲は、あらゆる随意の要素を除外するように立案してもよいことが、更に留意される。そのため、この記述は、特許請求の要素の記載又は「否定的」限定の使用に関して、「単に」及び「のみ」等の排他的な用語を使用するための先行詞的な役割を果たすことが意図されている。
【0052】
当業者であれば本開示を読むと明白なるように、本明細書に記述及び示されている個々の実施形態の各々は、本開示の範囲又は趣旨から逸脱せずに、他の幾つかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離することができるか又は組み合わせることができる個別の成分及び特徴を有する。任意の記載された方法は、記載された事象の順序で、又は論理的に可能な任意の他の順序で実施することができる。
【0053】
上記に概説されているように、本開示は、ペプチド活性剤を粘膜送達するための組成物及びそれらを調製するための方法を提供する。また、主題組成物のキット及びその使用方法が提供される。
【0054】
組成物は、非水性疎水性媒体に可溶化された有効量のペプチド錯体又はペプチド塩を含む粘膜送達組成物を含む。ペプチド錯体は、クラウン化合物及び/又は対イオンと錯体化された安定的に水和されたペプチド活性剤を含み、ペプチド活性剤のpIとは異なるpHの非水性疎水性媒体に可溶化される。ペプチド塩は、対イオンと錯体化された安定的に水和されたペプチド活性剤を含み、ペプチド活性剤のpIとは異なるpHの非水性疎水性媒体に可溶化される。
【0055】
ある実施形態では、非水性疎水性媒体は、各々個々に(i)ペプチド錯体又はペプチド
塩を可溶化し、(ii)ペプチド活性剤の粘膜送達を増強するのに有効な量で存在する、少なくとも1つのアシルグリセロール及び少なくとも1つの有機溶媒及び/又は脂質を含む。したがって、粘膜送達組成物は、一般的に、アシルグリセロール及び有機溶媒及び/又は脂質を含む媒質等の非水性媒質中に種々の可溶化剤を含む(下記により詳しく記載)。また、粘膜送達組成物及びその成分は、非イオン性界面活性剤、酸化防止剤、緩衝剤、及び保存剤等の1つ又は複数等の、1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤を含んでいてもよい(下記により詳しく記載)。
【0056】
多くの実施形態では、ペプチド錯体又はペプチド塩は、事前に形成されており、事前に形成されたペプチド錯体又は事前に形成されたペプチド塩は、ペプチド活性剤のpIとは異なるpH、随意にペプチド活性剤のpIから離れたpHを有する溶液又は懸濁液から乾燥される。多くの実施形態では、非水性疎水性媒体は、事前に形成されている。幾つかの実施形態では、事前に形成された非水性疎水性媒体は、ペプチド活性剤の等電点とは異なるpH、随意にペプチド活性剤の等電点から離れたpHを有する溶液又は懸濁液から乾燥される。幾つかの実施形態では、粘膜送達組成物は、ペプチド活性剤の等電点とは異なるpH、随意にペプチド活性剤の等電点から離れたpHを有する溶液又は懸濁液から乾燥される。ある実施形態では、溶液又は懸濁液は、水性有機混合物である。したがって、更なる実施形態は、事前に形成されたペプチド錯体、事前に形成されたペプチド塩、事前に形成された非水性疎水性媒体、及びそれらの組み合わせの1つ又は複数を含む組成物に関する。
【0057】
また、主題組成物を生産する方法が提供される。1つの実施形態では、粘膜送達組成物を生産する方法であって、ペプチド活性剤のpIとは異なるpHの非水性疎水性媒体に分散されたペプチド錯体又はペプチド塩を形成し、ペプチド錯体が、クラウン化合物及び対イオンと錯体化された有効量の安定的に水和されたペプチド活性剤を含み、ペプチド塩が、対イオンと錯体化された有効量の安定的に水和されたペプチド活性剤を含む方法が提供される。特徴的な実施形態は、ペプチド錯体又はペプチド塩は、ペプチド活性剤のpIとは異なるpHで非水性疎水性媒体に可溶化される場合である。
【0058】
主題方法の形成ステップは、所望の粘膜送達組成物の有効量の各成分(又はその任意の有効な組み合わせ)を混合すること(つまり、安定的に水和されたペプチド活性剤、クラウン化合物、対イオン、及びクラウン化合物が含まれている粘膜送達組成物用の非水性疎水性媒体を含む有効量の成分を混合すること、又は安定的に水和されたペプチド活性剤、対イオン、及びクラウン化合物が存在しない粘膜送達組成物用の非水性疎水性媒体を含む有効量の成分を混合すること)を含む。
【0059】
例えば、ある実施形態では、主題方法の形成ステップは、有効量の(i)非水性疎水性媒体を含む第1の組成物及び(ii)ペプチド錯体又はペプチド塩を含む第2の組成物を混合することを含む。他の実施形態では、例えば、主題方法の形成ステップは、有効量の(i)非水性疎水性媒体及びペプチド塩を含む第1の組成物及び(ii)クラウン化合物を含む第2の組成物を混合することを含む。
【0060】
主題の生産方法では、多くの実施形態におけるペプチド錯体又はペプチド塩は、溶液又は懸濁液を乾燥することにより取得可能な乾燥粉末又は残渣として構成されており、溶液又は懸濁液は、その中の成分として、(i)ペプチド活性剤、クラウン化合物、及びペプチド錯体を形成するための対イオン、又は(ii)ペプチド活性剤、及びペプチド塩を形成するための対イオンを含み、乾燥は、ペプチド錯体又はペプチド塩を生成するために、ペプチド活性剤と結合した十分な量の水が保持される条件下である。ある実施形態では、溶液又は懸濁液は、ペプチド活性剤の等電点とは異なるpH、随意にペプチド活性剤の等電点から離れたpHである。特定の実施形態では、溶液又は懸濁液は、水性有機溶液又は
懸濁液である。特定の実施形態では、ペプチド錯体及び/又はペプチド塩は、乾燥粉末又は残渣として事前に形成される。特徴的な態様は、ペプチド錯体、ペプチド塩、ペプチド活性剤、クラウン化合物、及び/又は対イオンを含む乾燥粉末又は残渣の1つ又は複数が、水性有機溶液又は懸濁液に可溶性である場合である。特定の実施形態は、ペプチド錯体又はペプチド塩を含む乾燥粉末又は残渣が、水性有機溶液又は懸濁液に可溶性である場合である。
【0061】
したがって、多くの実施形態では、粘膜送達組成物を生産する方法であって、
(a)ペプチド活性剤のpIとは異なるpH、随意にペプチド活性剤のpIから離れたpHを有する水性又は水性有機溶液又は懸濁液から乾燥される事前に形成された塩としてペプチド活性剤を含む第1の組成物を準備し、乾燥が、ペプチド活性剤の溶媒和及び安定性を維持するために、ペプチドと結合した十分な量の水が保持される条件下であること、及び
(b)ステップ(a)の事前に形成されたペプチド塩を、非水性疎水性媒体を含む第2の組成物と混合して、粘膜送達組成物を形成すること、又は
(c)ステップ(a)の事前に形成されたペプチド塩を、非水性疎水性媒体及びクラウン化合物を含む第2の組成物と混合して、粘膜送達組成物を形成すること、又は
(d)ステップ(a)の事前に形成されたペプチド塩を、有機又は水性有機溶液又は懸濁液中にクラウン化合物を含む第2の組成物と混合し、(i)ペプチド活性剤の溶媒和及び安定性を維持するために、ペプチドと結合した十分な量の水が保持される条件下で、有機又は水性溶液又は懸濁液を乾燥させて、事前に形成されたペプチド錯体を形成すること、及び(ii)事前に形成されたペプチド錯体を、非水性疎水性媒体と混合して、粘膜送達組成物を形成することを含む方法が提供される。
【0062】
上述されたもの等の、事前に形成されたペプチド錯体及び/又は事前に形成されたペプチド塩を生産するための方法も提供される。例えば、1つの実施形態では、本方法は、(i)その中の成分としてペプチド活性剤、クラウン化合物、及び対イオンを含む水性有機溶液又は懸濁液を準備すること、及び(ii)ペプチド活性剤と結合した十分な量の水が保持される条件下で、水性有機溶液又は懸濁液を乾燥して、ペプチド錯体を生産することを含む。関連実施形態では、水性有機溶液又は懸濁液は、ペプチド活性剤のpIとは異なるpH、随意にペプチド活性剤のpIから離れたpHである。
【0063】
有効量のペプチド活性剤を、その必要性のある宿主に粘膜送達するための方法も提供される。この方法は、有効量の本開示の粘膜送達組成物を宿主の粘膜に投与することを含み、投与は、有効量のペプチド活性剤を宿主の血流に送達する。主題方法の実施に使用が見出されるキットが、更に提供される。
【0064】
粘膜送達組成物及びその成分は、一般的に無毒性及び非刺激性であり、安定的に水和されていないペプチド活性剤と比べて、宿主の血流への安定的ペプチド活性剤の、増強され信頼性が高く再現性の良い粘膜送達を容易にする。主題組成物は、頬側膜、舌下膜、又は頬側膜及び舌下膜の両方等の口腔粘膜を通して口腔粘膜送達するために宿主の口腔に投与すること等、単独で又は宿主の1つ又は複数の粘膜に送達するための薬物送達系の一部として投与することができる。したがって、組成物は、液体、ゲル、泡、クリーム、軟膏、半固体、又は噴霧等の、形状が自由な形態で提供してもよく、又は錠剤、貼付剤、薄膜、及びトローチ剤等の、形状が物理的に決まっている形態のデバイスを含んでいてもよい。
【0065】
主題組成物及び方法は、所与のペプチド活性剤が適用される一連の様々な疾患状態を治療することを含む、様々な異なる応用に使用が見出される。本開示の方法及び組成物の重要な利点を示す例示的な応用は、糖尿病、肥満、及び関連障害を治療するための、in vivoで血糖レベルを変更するインスリン及びインクレチン模倣体ペプチド等のペプチ
ドホルモンの、有効で信頼性が良く再現性の良い口腔粘膜送達である。そのため、主題組成物及び方法は、従来技術に対する重要な進歩を表す。特に、本開示により克服される重要な課題は、他の態様の中でも特に、信頼性が高く再現性の良いペプチド活性剤の粘膜送達である。
【0066】
主題開示の更なる記述に際して、まず主題組成物及び関連生産方法をより詳しく記述し、その後、主題方法に使用を見出すことができる種々の医薬用/診断用製剤及びキットの概略、並びに主題組成物及び方法が使用を見出す種々の代表的な応用の考察を記述する。
【0067】
組成物及び生産方法
本開示は、ペプチドの粘膜送達における著しい向上が、ペプチド活性剤の等電点(pI)とは異なるpHの非水性疎水性媒体に可溶化されたクラウン化合物及び/又は対イオンと錯体化された有効量の安定的に水和されたペプチド活性剤を含む粘膜送達組成物を提供することにより達成することができるという発見に部分的に基づく。クラウン化合物及び対イオンと錯体化された安定的に水和されたペプチド活性剤は、本明細書ではペプチド錯体とも呼ばれ、非水性疎水性媒体中にその場で容易に調製されるか、又はその場以外で事前に形成され、ただしペプチド活性剤は、ペプチド活性剤の溶媒和及び安定性を維持するために、ペプチドと結合した十分な量の水が保持される条件下で処理される。
【0068】
したがって、ある実施形態では、ペプチド錯体は、事前に形成されたペプチド錯体としてその場以外で調製され、その後非水性疎水性媒体と混合される。他の実施形態では、ペプチド錯体は、例えば、(i)クラウン化合物を、(ii)対イオンと錯体化した安定的に水和されたペプチド活性剤をペプチド塩として含む非水性疎水性媒体と混合することにより、非水性疎水性媒体中にその場で調製され、ただし、ペプチド活性剤は、ペプチド活性剤の溶媒和及び安定性を維持するために、ペプチドと結合した十分な量の水が保持される条件下で処理される。
【0069】
また、本開示は、ペプチド錯体又はペプチド塩が、ペプチド活性剤のpIとは異なるpH、随意にペプチド活性剤のpIから離れたpHの溶液又は懸濁液から乾燥される場合に、非水性疎水性媒体中のペプチド錯体又はペプチド塩の溶解度の著しい向上を達成することができるという知見に、部分的に基づく。粘膜送達組成物は、そのような乾燥ペプチド錯体又はペプチド塩を使用して、その場で又はその場以外で容易に調製することができ、ただしペプチド活性剤は、ペプチド活性剤の溶媒和及び安定性を維持するために、ペプチドと結合した十分な量の水が保持される条件下で処理される。
【0070】
したがって、粘膜送達組成物が、上述のようにその場でのプロセスで形成されるか又はその場以外でのプロセスにより形成されるかに関わらず、信頼性が高く再現性の良いペプチド活性剤の粘膜送達は、組成物が調製される条件に強く依存する。例えば、本開示の下記プロセスは、この点を例示しており、2つの基礎的なステップを含むことを特徴とする。
【0071】
第1のステップでは、ペプチド活性剤は、一般的に、ペプチド活性剤のpIとは異なるpH、随意にペプチド活性剤のpIから離れたpHを有する水性又は水性有機溶液又は懸濁液(例えば、水、及び水/アセトニトリル混合物)から乾燥される(例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥により)事前に形成された塩として提供される。溶液又は懸濁液のpH及びペプチドのpIに依存して、事前に形成された塩が、精製(例えば、酢酸等の所望の対イオンの存在下で水/アセトニトリル混合物が使用されるHPLC)から直接使用されるか、又は異なる対イオンが所望の場合(例えば、ペプチドサリチル酸)に脱塩及び対イオン交換にかけた前駆体ペプチド塩(例えば、ペプチドトリフルオロ酢酸)から調製されるかに関わらず、このステップは、容易に使用される。この場合も、脱塩及び対イオン交換に
は、水性又は水性有機溶液又は懸濁液(例えば、水、及び水/アセトニトリル混合物)が使用され、所望の事前に形成されたペプチド塩は、ペプチド活性剤のpIとは異なる、随意にペプチド活性剤のpIから離れたpHを有する溶液又は懸濁液から最終的に乾燥され(例えば、遠心蒸発/SpeedVac、凍結乾燥、又は噴霧乾燥により残渣として濃縮することにより)、所望の事前に形成されたペプチド塩を形成する。各ステップでは、ペプチド活性剤が、ペプチド活性剤の溶媒和及び安定性を維持するために、ペプチドと結合した十分な量の水が保持される条件下で処理されるように注意を払う。
【0072】
第2のステップでは、粘膜送達組成物は、その後、以下のいずれかにより形成される:(i)第1のステップの乾燥された事前に形成されたペプチド塩を、クラウン化合物(又はある実施形態ではクラウン化合物を用いずに)及び非水性疎水性媒体と混合して、粘膜送達組成物を形成すること;又は(ii)(a)第1のステップの乾燥された事前に形成されたペプチド塩を、有機又は水性有機溶液又は懸濁液(例えば、メタノール、及び水/メタノール混合物)中のクラウン化合物と混合すること、(b)ステップ(ii)(b)の有機又は水性有機溶液又は懸濁液を乾燥し(例えば、遠心蒸発器/SpeedVacで残渣として濃縮することにより)、その後(c)ステップ(ii)(b)の乾燥されたペプチド材料(事前に形成されたペプチド錯体を含む)を非水性疎水性媒体と混合して、粘膜送達組成物を形成すること。各ステップでは、ペプチド活性剤が、ペプチド活性剤の溶媒和及び安定性を維持するために、ペプチドと結合した十分な量の水が保持される条件下で処理されるように注意を払う。
【0073】
ある実施形態では、随意に、有効量の1つ又は複数の安定化賦形剤及び/又は水が、クラウン化合物との錯体化前、錯体化中、及び/又は錯体化後に、ペプチド活性剤の溶媒和及び安定性を維持する量で乾燥ペプチド塩に添加される。例えば、水を混合及び使用して、まず事前に形成されたペプチド塩を溶解し、その後メタノール及びクラウン化合物等の溶媒混合物を添加して、錯体化中に、安定的に水和されたペプチドを形成及び/又は維持することを支援することができる(例えば、水−溶媒混合物中の最終水濃度が、0.5%〜50%、より好ましくは約1%〜35%、多くの場合は約5%〜25%、及び典型的には約10〜15%の範囲になるように水を添加し、その後乾燥して溶媒を除去する)。また随意に、非水性疎水性媒体と混合する前に及び/又は混合中に、水をペプチド錯体と混合してもよい(例えば、水は、製剤混合物中の最終水濃度が、約0.1%〜10%、通常は約0.5%〜5%、及び典型的には約1%〜3%となるように、非水性疎水性媒体と混合する前に乾燥ペプチド錯体に添加され、ただし、添加される水の量は、製剤成分の望ましくない相分離を誘発することが可能な量とほぼ同じか又はそれ未満である)。別の例では、有効量の1つ又は複数の安定化賦形剤は、安定的に水和されたペプチドの維持を支援するために、乾燥前、乾燥中、及び/又は乾燥後の対イオン交換プロセス等の、事前に形成されたペプチド塩及び/又はペプチド錯体を調製する1つ又は複数のステップに含まれていてもよい(例えば、ベータ−D−オクチルグルコシド等の非イオン性界面活性剤、マンニトール等の等張改変剤等)。同様に、追加の水及び/又は1つ若しくは複数の安定化賦形剤が、ペプチド活性剤の溶媒和及び安定性を維持するのに十分な量で、最終粘膜送達製剤に混合されてもよい。
【0074】
そのため、安定的に水和されたペプチド活性剤(単独、又はクラウン化合物及び/若しくは対イオンとの錯体化)は、所望のペプチド物質を、ペプチド活性剤のpIとは異なるpH、随意にペプチド活性剤のpIから離れたpHの溶液又は懸濁液から乾燥することにより容易に調製され、ただし、ペプチド活性剤は、ペプチドの溶媒和及び安定性を維持するために、ペプチドと結合した十分な量の水が保持される条件下で処理される。溶液又は懸濁液は、水性、有機、又はそれらの混合物であってもよい。その結果生じる乾燥ペプチド物質(例えば、ペプチド単独、ペプチド塩、又はペプチド錯体)は、後の使用のために保管してもよく、及び/又は粘膜送達組成物の残りの成分の1つ又は複数と上記のように
混合する等、更に処理してもよい。
【0075】
ペプチド物質がそこから乾燥される溶液又は懸濁液のpH範囲は、安定的に水和されたペプチド活性剤のpIと重複していてもよく、その後、他の溶媒、特に有機溶媒及びその水性混合物、並びに非水性疎水性媒体と混合される場合、一般的に、溶液又は懸濁液の中間点pHが、ペプチドのpIから離れる程、乾燥ペプチドの溶解度は高くなる。一般的に、ペプチド物質がそこから乾燥される溶液又は懸濁液のpHは、ペプチド活性剤のpIから約0.2、0.3、0.4、又は0.5pH単位だけより大きく、通常はペプチド活性剤のpIから約0.6、0.7、0.8、又は0.9pH単位だけより大きく、及びより一般的にはペプチド活性剤のpIから1pH単位以上である。
【0076】
1つの実施形態では、ペプチド活性剤は、ペプチドが高度に荷電されるpHにて、更なる実施形態では、ペプチド活性剤がほとんど荷電されており、したがって可能な限り高い荷電数を有するpHにて、安定的な形態で凍結乾燥又は乾燥することができる。
【0077】
安定的に水和されたペプチド活性剤が、このようにして調製され、溶媒交換及び/又は乾燥を更に繰り返すことなく、非水性疎水性媒体を用いて製剤化される場合、錯体化の有益性、及びペプチド物質が元々そこから乾燥された溶液又は懸濁液のpHを、有効に維持することができる。しかしながら、ペプチドの安定的水和を維持するための注意が払われなければ、そのような有益性は、失われるか又はかなり低減される場合がある。特に、ペプチドが安定的に水和されない場合、信頼性が高く再現性の良いペプチド活性剤の粘膜送達に有害な影響が及ぶ。
【0078】
例えば、安定的に水和されたペプチド活性剤を、溶媒交換及び乾燥を伴う更なるプロセスステップ(例えば、脱塩、対イオン交換、及び/又は事前に形成されたペプチド錯体をその場以外で調製すること)にかける場合、安定的な水和は、上述のように、ペプチド活性剤のpIとは異なるpH、随意にペプチド活性剤のpIから離れたpHの溶液又は懸濁液中で、安定的に乾燥されたペプチド活性剤を処理することにより、及びその結果生じたペプチド物質を、プチド活性剤のpIとは異なるpH、随意にペプチド活性剤のpIから離れたpHの溶液又は懸濁液から乾燥することにより、達成及び/又は維持することができる。ある実施形態では、溶液又は懸濁液のpHは、酸又は塩基を注意深く添加することにより調整して、目標pH、典型的には約0.5〜8.5、より多くの場合は2.0〜約8.0、通常は約4.0〜8.0の範囲の目標pH(ペプチド活性剤のpIに依存する)を達成することができ、安定的に水和されたペプチド活性剤の維持を支援するために、緩衝剤、等張剤、保存剤、及び酸化防止剤等の1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤を随意に含む。特定の実施形態では、pHが調整される溶液又は懸濁液は、水、及び/又はアセトニトリル/水混合物、特に、約20%〜80%、30%〜70%、40%〜60%、及びより具体的には約55%〜65%、通常は約50:50混合物を含む、約10%〜90%のアセトニトリルを含むアセトニトリル/水混合物である。
【0079】
また、安定的水和は、安定的に水和されたペプチド活性剤を処理し、その結果生じたペプチド物質を、水性、有機、又はそれらの混合物を含む溶液又は懸濁液から乾燥することにより達成及び/又は維持することができ、ただし乾燥は、特に適切な温度、圧力、及び乾燥時間を維持することにより、望ましくない水分喪失を回避する条件下で行われる(例えば、遠心蒸発器/SpeedVacで、約35℃以下、典型的には約32℃以下等の約40℃以下で、2時間未満、より典型的には1.5時間未満等の約3時間以下)。ここで再び、1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤を、安定性のために添加することができる。
【0080】
上記で考察した種々のプロセスステップでは、通常は特定のプロセスステップに応じて
、水性、有機、又はそれらの混合物である溶液若しくは懸濁液(例えば、水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、それらの水性混合物等)、又は有機溶媒単独を使用してもよい。ある実施形態では、特にその場以外でのペプチド錯体形成の場合、溶液又は懸濁液は、約5容積%の含水量を有するアルコール水溶液等の、約1%〜約25%、特に約1%〜15%、及びより具体的には約2〜8%等の、約1%〜50容積%の含水量を有するアルコール水溶液を含む、メタノール水溶液又はエタノール水溶液等のアルコール水溶液である。メタノールは、水に最も近い有機溶媒であり、非常に広範な有機化合物を溶解することができるため、水性メタノール溶液及び懸濁液が、特に興味深い。追加の混合物は、DMSO/水及びアセトニトリル/水である。
【0081】
加えて、上記で考察した種々のプロセスステップを、任意の有効な組み合わせで使用し、例えば以下を含むステップで、所望の最終組成物を生産することができる:(i)随意にペプチド活性剤を脱塩するステップ;(ii)随意にペプチド活性剤の対イオン交換をするステップ;及び/又は(iii)その場以外でペプチド錯体を形成し、非水性疎水性媒体中で製剤化するステップ及び/又はその場で非水性疎水性媒体中でペプチドを錯体化するステップ;ただしペプチド活性剤は、ペプチド活性剤のpIを考慮に入れ、ペプチドの溶媒和及び安定性を維持するためにペプチドと結合した十分な量の水が保持される条件下で処理される。
【0082】
クラウン化合物及び/又は対イオンと錯体化したペプチド活性剤のpI及び水和に加えて、ペプチド活性剤の粘膜送達は、クラウン化合物、対イオン、及びそれらの量の選択、並びに非水性疎水性媒体、随意の賦形剤、及びそれらの量の選択を含む、本開示の他の態様により更に向上させることができることが見出された。
【0083】
例えば、ペプチド活性剤は、目的のクラウン化合物及び対イオン等の、十分な量の錯化剤と錯体化され、錯化剤は、一般的に、約2対1、5対1、10対1、15対1、20対1、30対1、60対1以上の比率の、ペプチド活性剤のモル過剰量で存在していてもよい。典型的には、クラウン成分及び対イオン成分は、ペプチド活性剤に存在するイオン化可能な基のタイプ及び数に依存したモル比で錯体化される。1つの実施形態では、ペプチド活性剤は、1つ又は複数の陽イオン基(例えば、第一級アミン、第二級アミン、グアニジウム基、及びそれらの組み合わせ)を含み、クラウン化合物は、陽イオン結合性クラウン化合物(例えば、クラウンエーテル型化合物)であり、対イオンは、陰イオン性対イオン(例えば、酸性対イオン)である。特に興味深いのは、陽イオン結合性クラウン化合物及び陰イオン性対イオンが、各々個々に、1陽イオン基当たり約0.5〜10化学量論当量、より具体的には約2〜4化学量論当量、及び最も具体的には1陽イオン基当たり約1〜2化学量論当量で存在する場合である。特定の実施形態では、陽イオン結合性クラウン化合物は、第一級アミン、第二級アミン、及び/又はグアニジウム基1つ当たり約2化学量論当量で存在し、陽イオン性対イオンは、ペプチド活性剤の第一級アミン、第二級アミン、及び/又はグアニジウム基1つ当たり約1化学量論当量で存在する。
【0084】
別の実施形態では、陽イオン基は、1つ又は複数の中和されたカルボン酸塩と結合し、陽イオン基は、これらに限定されないが、Na+、K+、Li+、Mg++、及びCa++等を
含む無機種に由来してもよい。
【0085】
pI、ペプチド水和、及びクラウン/対イオン量に加えて、別の特徴は、ペプチド錯体を安定化させるpH範囲を有する非水性疎水性媒体の製剤化及び使用である。例えば、非水性疎水性媒体のpHが、媒体中のペプチド錯体の所望の溶解度を維持するための範囲から外れて離れ過ぎている場合、錯体化の有益性、及びペプチド活性剤がそこで調製され、そこから乾燥される溶液又は懸濁液のpHを制御することの有益性は、粘膜送達組成物において失われるか又はかなり低減される場合がある。典型的には、非水性疎水性媒体のp
Hは、約+/−1〜約+/−4pH単位の範囲、通常は、約3〜6、約4〜6、約5〜8のpH範囲等の約+/−3pH単位、より一般的には約3〜5、約4〜7、約5〜7、又は約6〜8等のpH範囲等の約+/−2pH単位を有する。無論、非水性疎水性媒体の最終pH範囲は、酸、塩基、緩衝剤、及び/又は他の賦形剤を添加することにより、並びに成分及びそれらと結合する量に応じてペプチド塩及び/又はペプチド錯体それ自体を添加すること等により、調整することができる。
【0086】
非水性疎水性媒体のpH範囲は、ペプチド活性剤のpIと重複してもよいが、一般的に、媒体の中間点pHが、ペプチドのpIから離れるほど、媒体中のペプチド錯体の溶解度は高くなる。また、ペプチド錯体を、その場で又はその場以外のいずれかで、ペプチド活性剤のpIから離れたpHにて形成することにより、この物質を媒体と混合する際にペプチド活性剤のpIと不必要に交差させることなく、容易に目的pHが達成される。例えば、ペプチド活性剤が約5.0のpIを有し、非水性疎水性媒体が、約3.0〜6.0のpH範囲を有する場合、ペプチド塩又はペプチド錯体は、5.0を超えるpH、通常は少なくとも1pH単位だけより高いpHの溶液又は懸濁液から物質を乾燥することにより、その場以外で調製することができ、ただしこの場合も、ペプチド活性剤は、ペプチドの溶媒和及び安定性を維持するために、ペプチドと結合した十分な量の水が保持される条件下で処理される。混合した後、必要に応じて、混合された混合物のpHを更に調整、及び/又は組成物中で平衡化させて、溶媒和を達成することができる。
【0087】
これらの知見は、少なくとも1つのアシルグリセロール及び少なくとも1つの有機溶媒及び/又は脂質を有する非水性疎水性媒体を含むもの等の、ある粘膜送達組成物が、保管安定性を含む他の望ましい態様の中でも特に、有効量のペプチド活性剤の粘膜送達を著しく増強し、多くの場合、有効量のペプチド活性剤の粘膜送達を可能にするため、重要である。例えば、ある実施形態では、非水性疎水性媒体は、(i)クラウン化合物及び対イオンと錯体化された安定的に水和されたペプチド活性剤を可溶化し、(ii)ペプチド活性剤の粘膜送達を増強するのに有効な量で各々個々に存在する、少なくとも1つのアシルグリセロール及び少なくとも1つの有機溶媒及び随意に少なくとも1つの脂質を含む。この点に関して、「非水性」は、約10%未満の水、より具体的には約5%未満の水を意味することが意図される。したがって、粘膜送達組成物は、一般的に、アシルグリセロール及び有機溶媒及び随意に脂肪酸又は中性脂質等の脂質を含む媒質等の非水性媒質に、種々の可溶化剤を含む(下記により詳しく記載)。また、粘膜送達組成物及びその成分は、非イオン性界面活性剤、酸化防止剤、緩衝剤、粘度調整剤、保存剤、等張剤、及びキレート剤等の1つ又は複数等の、1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤を含んでいてもよい(下記により詳しく記載)。したがって、ペプチド錯体を安定化させるpH範囲及び/又は上記の1つ又は複数の追加の特徴を有する非水性疎水性媒体を使用することにより、主題開示の有益性を最大化することができる。
【0088】
上記に概説されているように、有効量の安定的に水和されたペプチド活性剤錯体は、粘膜送達組成物に可溶化されており、したがって、粘膜に投与されると、有効量のペプチド活性剤を宿主の血流に送達することが可能である。ある実施形態では、本開示の粘膜送達組成物に提供されているペプチド活性剤の粘膜送達は、安定的に水和されていないペプチド活性剤と比べて増強される。特に興味深いのは、増強が、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%を超えており、通常は約100%(つまり、1倍以上)を超えている場合である。
【0089】
例えば、宿主の血流に進入するペプチド活性剤の量は、質的に及び/又は量的に、直接的に及び/又は間接的に、クロマトグラフィーにより(例えば、HPLC、質量分光光度法等)、酵素的に(基質消費及び/若しくは修飾、又は産物及び/若しくは副産物産生の測定)、抗原−抗体結合(例えば、ウエスタンブロット、酵素結合抗体免疫吸着アッセイ
(ELISA)等)、生物学的作用(例えば、下記の実験セクションに例示されているもの等の、血流に進入するペプチド活性剤の量を間接的に測定することによる薬理学的生物学的利用能)による等、当技術分野で公知の種々の技術により測定することができる。そのような技術の1つ又は複数により、宿主の血流に進入するペプチド活性剤の量を比較することにより、増強は、容易に決定することができる。
【0090】
そのため、ある実施形態では、粘膜送達組成物は、胸膜腔内(pI)投与と比べて約10%より高い、通常は約15%より高い、及び典型的には約16%、17%、18%、19%、又は20%以上高い、ペプチド活性剤の薬理学的生物学的利用能を示す。特定の実施形態では、粘膜送達組成物を舌下投与した際のペプチド活性剤は、胸膜腔内投与と比べて約10%より高い、通常は約15%より高い、及びより典型的には約20%以上高い薬理学的生物学的利用能を有する。
【0091】
ある実施形態では、本開示の粘膜送達組成物に提供されているペプチド活性剤の粘膜送達は、安定的に水和されていないペプチド活性剤と比べて増強されており、信頼性が高く、再現性が良い。「信頼性が高く再現性が良い」とは、試験の測定が、本質的に同一の組成物の同一条件下での反復試験にわたって依然として一貫している度合いであることが意図される。そのため、実質的に同じ測定値という一貫した結果がもたらされる場合、本開示の粘膜送達組成物を使用した粘膜送達は、信頼性が高く再現性が良い。反対に、反復試験が、実質的に異なる測定値という一貫しない結果をもたらす場合、粘膜送達組成物の粘膜送達は、信頼性が低い。
【0092】
主題開示の更なる記述に際して、特定の成分又は組成物を、これから別々により詳細に概説する。
【0093】
安定的に水和されたペプチド活性剤
安定的に水和されたペプチド活性剤は、乾燥ペプチド活性剤と同等な又はそれよりも大きな、有機溶媒又は水性有機溶媒中に重量による含水量及び溶解度を有し、本質的に凝集及び酸化されていない。
【0094】
1つの実施形態では、安定的に水和されたペプチド活性剤は、(i)ペプチドの等電点とは異なるpH、随意にペプチドの等電点から離れたpHの溶液又は懸濁液から、(ii)ペプチドの溶媒和及び安定性を維持するために、十分な量の水が保持される条件下で乾燥されたペプチド活性剤と同等な又はそれよりも大きな、有機又は水性有機溶媒中に、重量による含水量及び溶解度を有する。
【0095】
関連実施形態では、安定的に水和されたペプチド活性剤は、保管安定的な乾燥形態のペプチドと同等の、重量による含水量を有する。この点で、乾燥形態のペプチドの保管安定性は、−20℃〜25℃の範囲の温度で保管した際に1か月以上の保管寿命を有する場合、決定的である多くの実施形態では、保管安定的な乾燥形態のペプチドは、1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤、例えば、対イオン、保存剤、等張剤、及び/又は緩衝剤等の共乾燥賦形剤と結合している。
【0096】
したがって、無水ペプチドと比べた、安定的に水和されたペプチド活性剤の含水量は、約0.1重量%〜約50重量%であってもよく、通常は約0.5%〜約50%、1%〜約30%、1%〜約25%、より一般的には約1%〜約20%、約1%〜約15%、及び典型的には約1%〜約5%等の約1%〜約10%である。
【0097】
ペプチドの水和は、当技術分野で公知の標準技術により、無水ペプチドと比べて測定することができる。例えば、含水量は、乾燥減量法及び/又はカール‐フィッシャー法を使
用して測定することができる(例えば、J. A. Dean, Analytical Chemistry Handbook, Section 19, McGraw-Hill, New York, 1995、又は米国食品医薬品局(FDA)の強制力のある規格(2004−USP−チャプター921)が記載されている米国薬局方(USP)の出版物USP−NF(2004)による)。
【0098】
溶解度に関して、安定的に水和されたペプチド活性剤は、0.001%以上、通常は125%以下の溶解度パーセント値、及び典型的にはペプチドの等電点とは異なるpH、随意にペプチドの等電点から離れたpHの溶液又は懸濁液から乾燥されたペプチド活性剤の溶解度パーセント値以下である、周囲温度における所与の有機又は水性有機溶媒中の溶解度パーセント値を有する。有機又は水性有機溶液又は懸濁液での溶解度は、より多くのペプチドを添加しても、溶液又は懸濁液におけるその濃度が増加しない濃度として容易に測定される。また、溶解度は、比較的清澄な液体又はゲル製剤中での目視検査により推定することができる(例えば、ペプチド製剤の外観が、本質的に透明である場合、可溶化されている)。
【0099】
pH及びpI
主題組成物のpHは、非水性疎水性媒体で混合された際に、ペプチド活性剤が、所望の錯化剤(複数可)との錯体化が維持されるように十分にイオン化され、並びに可溶性又は再可溶性であることが可能になるように設定される。例えば、陽イオン結合性クラウン化合物との錯体化は、ペプチドのアミノ基がプロトン化されている(イオン化される)場合に、促進される。したがって、主題組成物のpHは、組成物中のペプチド活性剤のpIとは異なり、多くの場合ペプチド活性剤のpIから離れており、その場合ペプチドは、クラウン化合物及び対イオンと錯体化されるように十分にイオン化される。「等電点」とは、ペプチド活性剤が全体的な正味の電荷を担持しないpH値であることが意図される。
【0100】
一般的に、pHは、ペプチド錯体が依然として安定しており、可溶性であるように選択される(又は乾燥された事前に形成されたペプチド錯体として調製された場合は、再可溶性である)。「ペプチド活性剤の等電点から離れた」とは、ペプチド活性剤の等電点から約1pH単位以上であることが意図される。pHは、ペプチド活性剤の等電点より高くともよく又は低くともよく、ただし所与の最終使用のための組成物中で安定的に水和されたペプチド活性剤を安定化させる範囲内にある。したがって、ある実施形態では、pHは、ペプチド活性剤のpIよりも高いが、他の実施形態では、pHは、ペプチド活性剤のpIよりも低い。ある実施形態では、pHは、ペプチド活性剤の等電点から約0.1〜約4pH単位である。幾つかの実施形態では、pHは、ペプチド活性剤の等電点から、約1〜約2pH単位を含む、約0.5〜約3pH単位である。
【0101】
所与の組成物の実際のpHは、クラウン化合物及び/又は対イオンのみで、及び/又は非水性疎水性媒体中で錯体化された安定的に水和されたペプチド活性剤の安定性を維持するように、容易に決定及び調整することができる。ある実施形態では、緩衝剤は、pHを所与の範囲内に維持するために含有されている。主に水を含有する溶媒混合物中の緩衝剤のpKaは、水中での値に近い。対照的に、有機溶媒の割合が増加するにつれて、緩衝剤のpKaは変化する。例えば、酢酸及びH2PO4-等の陰イオン性酸等の中性弱酸は、典
型的には、有機溶媒の割合が増加するにつれてより弱くなり、pKaは、より大きくなる。NH4+等の陽イオン性酸は、より強くなるが、この傾向は高有機濃度で逆転し、陽イオン性酸は、より弱くなる。
【0102】
したがって、pHは、経験的にアプローチすることができるか、及び/又は既知pHの標準緩衝溶液を基準にして溶液pHを計算することにより推定することができる(例えば、Rondinini, S., Analytical Bioanalytical Chem (2004) 374(5):813-816;Bosch et al., Anal. Chem. (1996) 68(20):3651-3657;Subirats et al., J Chrom A, (2007) 1138
:203-215;Subirats et al. Separation & Purification Reviews (2007) 36(3):231-255;及びGagliardi et al. J. Chromatography A (2005) 7077(2):159-169)。そのような
条件下のペプチドのpKa(及び等電点)値も決定することができる(例えば、Sanz-Nebot er al., J. Chromatography A (2002) 942(1-2): 145)。
【0103】
対イオン及び/又は緩衝剤を含む場合、選択する際に考慮すべきことには、組成物中での緩衝能、溶解度、及びイオン強度が含まれる。したがって、中性形態のペプチドに対するイオン化ペプチドの比率を増加させるためのpH最適化(つまり、ペプチドの等電点から離れる)は、水性、有機、及び水性有機溶液中で達成され、クラウン及び対イオン錯体化を促進することができる。
【0104】
ペプチド活性剤
本開示のペプチド活性剤は、主題の粘膜送達組成物及び方法と共に投与されると、その粘膜送達が促進又は増強されるペプチドである。所与のペプチド活性剤が、本開示による使用に好適か否かは、例えば、下記の実験セクションで使用されているアッセイを使用して、容易に決定することができる。一般的に、ペプチド活性剤は、本開示の主題非水性疎水性媒体を併用したその粘膜送達が、有効量の作用剤を宿主の血流に送達する場合、特にそのような送達が、粘膜送達媒体の非存在下におけるペプチドの粘膜投与(例えば、無菌生理食塩水中のペプチド)と比べて、例えば、上記で考察されており下記の実験セクションに例示されている、そのような目的に好適な検出系を使用して、宿主の血流中に存在するペプチド濃度を測定することにより決定すると、50倍以上及び時には100倍以上等、1〜10倍以上増加する場合、主題方法での使用に好適である。ある実施形態では、ペプチド活性剤は、観察可能な生物学的効果の出現及び/又は強度が、例えば、下記の実験セクションに記載のマウスアッセイで観察すると、粘膜送達により増加されるものである。
【0105】
興味深いペプチドの例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:アセタリン(acetalin)(例えば、アセタリン1、2、及び3(アセチル+エンケファリン)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)及び関連ペプチド、脂質動員ホルモン(例えば、アドレノメデュリン)、ADP−リボシル化因子(ARF)、アドレノメデュリンペプチド、アグーチ関連ペプチド、アラトスタチン、アミリンペプチド、アミロイドペプチド、アンギオテンシン及び関連ペプチド、アネキシン、種々の抗炎症ペプチド、抗菌ペプチド及び関連ペプチド、抗酸化ペプチド、アペリンペプチド、アポトーシスペプチド、Bad and Bag Cellペプチド、副腎髄質ペプチド、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、ボンベシン、ブラジキニン、C−ペプチド、C3aペプチド、カルシトニン及び関連ペプチド、CART(コカイン及びアンフェタミン制御転写物)ペプチド、カゾモルフィン、カスパーゼ関連ペプチド、細胞接着ペプチド、コレシストキニン‐パンクレオザイミンペプチド、コルチコトロピン関連ペプチド、チトクロム及び関連ペプチド、サイトカイン(例えば、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポイエチン等)、ケモカイン、デフェンシン、ダイノルフィン、エンドモルフィン、エンドルフィン、エンドセリン、エンケファリン、エキセンディン、フィブリノゲン及び関連ペプチド、フィブロネクチン断片、ガラニン、胃抑制ペプチド(GIP)、ガストリン、グレリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、増殖因子、成長ホルモン関連ペプチド、グアニリン、ヒートショックタンパク質、C型肝炎ウイルス(HCV)関連ペプチド、高移動度群(HMG)ペプチド、HIV関連ペプチド、インテグリン、インターロイキン、インターフェロン、キナーゼ/ホスファターゼ基質、黄体形成ホルモン放出ホルモン及び関連ペプチド、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、メラン−A及びムチン関連ペプチド、メラニン細胞刺激ホルモン及び類似体、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミオシン、ナトリウム利尿ペプチド、ニューロキニン、ニューロメジン、神経ペプチドY及び類似体、神経ペプチド、ニューロテンシン及び関連ペプチド、NF−kB/転写因子関連ペプチド、オレキシン、オス
テオカルシン断片、OVAペプチド、オキシトシン、バソプレシン、デスモプレシン及び関連ペプチド、膵臓ポリペプチド、副甲状腺ホルモン及び関連ペプチド、ペプチドYY及び類似体、ペプチドグリカンペプチド、リンペプチド、フィトケラチン、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAPS)、プリオンタンパク質(PrP)断片、プロラクチン放出ペプチド、プロテオリピドタンパク質(PLP)、サリューシンペプチド、サポシン関連ペプチド、セクレチン、セレクチン関連ペプチド、シグナル伝達ペプチド、ソマトスタチン、サブスタンスP及び類似体、タキキニン関連ペプチド、トロンビン関連ペプチド、トロンボスポンジン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン及び関連ペプチド、TNFペプチド、毒素、ウロテンシン関連ペプチド、血管作用性小腸ペプチド(VIP)、バソプレシン関連ペプチド、並びにウイルスペプチド等。
【0106】
特に興味深いのは、ペプチドホルモンであり、これは、血流に進入すると活性を示し、生体動物で内分泌機能を示す種類のペプチドである。特に興味深いペプチドホルモンの例には、これらに限定されないが、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、インスリン、ソマトスタチン、カルシトニン、及び副甲状腺ホルモン等、並びにそれらの類似体/誘導体が含まれる。したがって、ある実施形態では、ペプチド活性剤は、ペプチドホルモン、例えば、インスリン及びインクレチン模倣体、エキセンディン及び関連類似体/誘導体(例えば、エキセンディン−3及びエキセンディン−4等の化学的に合成された及び/又は生物学的に産生されたエキセンディン、リラグルチド、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、及びタスポグルチド(Taspoglutide)、アルビグルチド(Albiglutide)、ZP1
0(AVE0010)、及びそれらの種々の類似体/誘導体である。
【0107】
GLP−1等の天然インクレチンは、腸から循環中に放出された後、インスリン分泌特性を示す。GLP−1の作用には、(a)グルコース依存性様式のインスリン分泌の刺激、(b)グルカゴンの抑制、(c)食欲及び食物摂取量の低減、(d)胃内容排出の減速、(e)動物及び組織培養実験でのβ−細胞の新生、増殖、及び分化の刺激、並びに(f)様々な毒素により誘導されるβ−細胞アポトーシスのin vitro阻害が含まれる。
【0108】
天然エキセンディンは、外分泌腺から単離可能なペプチドホルモンであるが、内分泌作用を示す。エキセンディンは、グルコースレベルの上昇に応答してインスリン分泌を刺激し、胃内容排出を調節して、摂取された糖の血流への進入を遅延させる。エキセンディン−3は、VIP(血管作用性小腸ペプチド)、セクレチン、ヘロスペクチンI及びII、並びにヘロデルミンと相同性を共有する、39個アミノ酸のペプチドである。エキセンディン−3は、細胞cAMP及び分散モルモット膵臓腺房からのアミラーゼ放出を増加させる。エキセンディン−4は、アメリカドクトカゲ(Heloderma suspectum)の口腔分泌物
から最初に単離された39個アミノ酸のペプチドであり、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)と共通するある活性を有することが示されている。
【0109】
エクセナチド(BYETTA(登録商標)(エクセナチド注射剤)の活性成分、エキセンディン−4とも呼ばれる)は、天然GLP−1の作用を模倣することによりグルコース恒常性を向上させるGLP−1アゴニストである。エクセナチドは、グルコース依存性インスリン分泌、第1段階インスリン応答の回復、グルカゴン分泌の制御、胃内容排出の遅延、及び食物摂取量の低下を含む既知の機序の組み合わせにより、空腹時及び食後グルコース濃度を低減することにより、血糖管理を向上させる。
【0110】
薬物として、エクセナチドは、2型糖尿病(身体がインスリンを正常に使用せず、したがって血液中の糖の量を制御することができない状態)の治療用に認可されている皮下注射インクレチン模倣ペプチドである。エクセナチドは、メトホルミン、スルホニル尿素、又はチアゾリジンジオンと組み合わせで使用される。エクセナチドは、血糖レベルが高い
場合に、膵臓を刺激してインスリンを分泌することにより作用する。インスリンは、糖がエネルギーに使用される際に、糖を血液から他の体内組織へと移動させることを支援する。また、エクセナチドは、胃排出を遅延させ、食欲の低下を引き起こす。エクセナチドは、1型糖尿病(身体がインスリンを産生せず、したがって血液中の糖の量を制御することができない状態)を治療するためには使用されない。エクセナチドは、通常、朝食及び夕食前の60分以内に1日2回注射される。
【0111】
リラグルチドは、例えば2型糖尿病の治療に、エクセナチドと類似した使用が見出されるGLP−1誘導体である。リラグルチドは、皮下注射後の半減期が11〜15時間であり、そのため1日1回の用量に好適となる(Byettaが1日2回であるのと対照的である)。リラグルチドの持続的作用は、皮下組織及び血流内のアルブミンと結合するGLP−1分子と結合した脂肪酸分子により達成される。その後、活性GLP−1は、ゆっくりと一貫した速さでアルブミンから放出される。また、アルブミンと結合することにより、リラグルチドは、GLP−1と比較して、よりゆっくりと分解され、腎臓による循環からの除去が低減されるという結果となる。
【0112】
したがって、本開示の主題方法及び組成物に使用されるペプチド活性剤は、エキセンディン−4、リラグルチド、その種々の類似体/誘導体を含む、GLP−1等のインクレチン模倣体及びその種々の類似体/誘導体が含まれていてもよい。興味深いインクレチン模倣体及び関連化合物は、以下の文献に記載されている:米国特許第5,118,666号;第5,120,712号;第5,187,154号;第5,264,372号;第5,376,637号;第5,424,286号;第5,512,549号;第5,545,618号;第5,552,520号;第5,574,008号;第5,614,492号;第5,631,224号;第5,686,511号;第5,846,937号;第5,958,909号;第6,162,907号;第6,191,102号;第6,268,343号;第6,284,727号;第6,358,924号;第6,448,045号;第6,458,924号;第6,506,724号;第6,528,486号;第6,703,359号;第6,706,689号;第6,723,530号;第6,767,887号;第6,828,303号;第6,849,708号;第6,852,690号;第6,858,576号;第6,872,700号;第6,884,585号;第6,899,883号;第6,902,744号;第6,911,324号;第6,924,264号;第6,956,026号;第6,982,248号;第6,989,148号;第6,989,366号;第7,022,674号;第7,056,734号;第7,056,887号;第7,078,375号;第7,084,243号;第7,115,569号;第7,119,168号;第7,138,375号;第7,138,486号;第7,153,825号;第7,157,555号;第7,164,005号;第7,220,721号;第7,223,725号;第7,226,990号;第7,259,234号;第7,273,850号;第7,297,761号;第7,307,148号、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
本開示の主題方法及び組成物に使用される追加のペプチド活性剤には、ヒトインスリン及びその種々の類似体/誘導体等のインスリンが含まれていてもよい。興味深いインスリン及び関連化合物は、以下の文献に記載されている:米国特許第4,511,505号;第5,631,347号;第5,646,242号;第5,693,609号;第5,700,904号;第5,750,497号;第5,922,675号;第6,011,007号;第6,051,551号;第6,159,931号;第6,162,895号;第6,268,335号;第6,309,633号;第6,444,641号;第6,465,426号;第6,531,448号;第6,713,452号;第6,770,625号;第6,828,297号;第6,835,802号;第6,858,580号;第6,867,183号;第6,869,930号;第6,913,903号;第7,0
30,084号;第7,060,675号;第7,084,114号;第7,084,121号;第7,166,571号;第7,169,889号;第7,196,059号;第7,211,557号;第7,273,921号;第7,312,192号、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0114】
本開示の主題方法及び組成物に使用される更なるペプチド活性剤には、副甲状腺ホルモン、又はカルシトニン(例えば、天然、合成、又は組換えヒト、サケ、ブタ、又はウナギカルシトニンを含む、パジェット病、高カルシウム血症、及び骨粗しょう症の治療用の)が含まれていてもよい。興味深い副甲状腺ホルモン、カルシトニン、及び関連化合物は、米国特許第4,692,433号及びRE40.850に記載されており、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0115】
主題方法及び組成物のある態様では、ペプチド活性剤は、インクレチン模倣体ペプチドである。特徴的な実施形態では、インクレチン模倣体は、エキセンディン−4及びその類似体/誘導体である。特徴的な実施形態では、インクレチン模倣体は、リラグルチド及びその類似体/誘導体である。他の実施形態では、ペプチド活性剤は、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)及びその類似体/誘導体である。更に他の実施形態では、ペプチド活性剤は、インスリン及びその類似体/誘導体である。幾つかの実施形態では、ペプチド活性剤は、約100個のアミノ酸より大きなペプチド等の約50個のアミノ酸より大きなペプチドを含む、インスリン等の、本明細書に記載されているペプチドの1つ又は複数から選択されるペプチド以外のものである。
【0116】
また本開示の範囲は、ペプチド活性剤のプロドラッグを含む。そのようなプロドラッグは、一般的に、必要とされる化合物にin vivoで容易に変換される化合物の機能的誘導体である。したがって、本開示の方法では、用語「投与する」は、具体的に開示された化合物を投与すること、又は具体的に開示されていなくともよいが、それを必要とする対象体に投与した後、in vivoで特定の化合物に変換される化合物を用いて投与することを包含する。好適なプロドラッグ誘導体を選択及び調製するための従来手順は、例えば、Wermuth, "Designing Prodrugs and Bioprecursors" in Wermuth, ed. The Practice of Medicinal Chemistry, 2d Ed., pp. 561-586 (Academic Press 2003)に記載されている。プロドラッグには、翻訳後又は合成修飾部位、プロテアーゼ切断可能なリーダー残基又は配列を有するペプチド等の酵素的に又は化学的に切断可能な結合、又はin vivo(例えばヒト体内で)で加水分解して、本開示に好適な本明細書に記載の化合物を生成するエステルを保持するペプチドが含まれる。好適なエステル基には、限定ではないが、薬学的に許容される脂肪族カルボン酸、特にアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸、及びアルカン二酸に由来するものが含まれる。例示的なエステルには、ホルマート、アセタート、プロピオナート、ブチラート、アクリラート、シトラート、スクシナート、及びエチルスクシナートが含まれる。
【0117】
クラウン化合物
クラウン化合物には、例えば、以下のものが含まれる:環状ポリエーテル(クラウンエーテル、例えば、18−クラウン−6)及び環状ポリエステル(クラウンエステル、例えば、ノナクチン及びテトラノナクチン等のポリラクトン、ポリグリコールエステル又は乳酸エステル)及びそれらの類似体/誘導体(例えば、国際公開第08/037484号;Lifson et al., J. Am. Chem. Soc. (1983) 105:3866-3875;Lifson et al., J. Am. Chem. Soc. (1984) 23:2577-2590;及びMcGeary et al., Tetrahedron (2000) 56:8703-8713;これら文献は、それら全体が本明細書に組み込まれる)。特に興味深いのは、(i)環状ポリエステル;(ii)環状ポリアミド;(iii)環状ポリエーテル;(iv)環状ポリオキシム;(v)ポリチオエステル;(vi)アミノキシ酸のポリマー;(vii)ポリジスルフィド;(viii)環状ポリジオキサノン;及び(ix)(i)〜(ix)
の複数に属する環状化合物から選択されるクラウン化合物であり、クラウンは、プロトン化第一級アミノ基(−NH3+)及び/又はプロトン化第二級アミノ基(−NH2+−)及び/又はプロトン化グアニジウム基(−NH−C(=NH2+)−NH2)等の、陽イオンと電荷遮蔽錯体(charge masking complex)を形成することが可能な陽イオン結合性クラウン化合物である。
【0118】
ある実施形態では、クラウン化合物は、環状ポリエーテル、環状ポリエステル、及び環状デプシペプチドである(「デプシペプチド」とは、アルファ−ヒドロキシ酸及びアルファ−アミノ酸又はそれらの混合物を含むか又はからなり、アルファ−ヒドロキシ酸のヒドロキシ基とヒドロキシ酸又はアミノ酸のいずれかのカルボキシル基との間のエステル結合、並びにアルファ−アミノ酸のアミノ基とヒドロキシ酸又はアミノ酸のいずれかのカルボキシル基との間のアミド結合により互いに結合されているクラウン化合物を指す)。その切断型等の主題クラウン化合物の線形型は、本開示の幾つかの態様で電荷錯化剤として使用することができる。
【0119】
したがって、ある実施形態では、クラウン化合物は、生分解性結合を含む。一般的に、生分解性結合は、in vivoで切断可能である。特に興味深い生分解性結合の例には、カルボン酸エステル(−C(O)−O−)、チオエステル(−C(O)−S−)、オルトエステル(−C(OR1)(OR2)及び(−C(OR1)(OR2)(OR3))等のエ
ステルが含まれる。生分解性結合の追加の例には、ジスルフィド(−S−S−)、及びシッフ塩基(R12C=N−R3)等が含まれる。特に興味深いのは、生分解性結合が、エ
ステル、より具体的にはカルボン酸エステル及びオルトエステルから選択されるエステルである場合である。特に興味深いクラウン化合物は、名称が「Orthoester derivatives of crown ethers」であり、代理人整理番号が「R1856」であり、本明細書に共に同じ日に出願された同時係属出願に開示されており、この文献は、その全体が組み込まれる。カルボン酸エステル及びオルトエステルクラウン化合物の例には、これらに限定されないが、オキソ−クラウン及びその類似体/誘導体、特にオキソ−クラウンエーテルが含まれる。
【0120】
1つの実施形態では、オキソ−クラウンエーテルは、4〜8個の配位酸素環原子、8〜16個の環炭素原子、及び少なくとも1つのオキソ置換側鎖を含む。特に興味深いのは、下記に例示されているような、オキソ−(18−クラウン−6)、オキソ−(18−クラウン−6)−ジエチルタルトラート、及びオキソ−(18−クラウン−6)−ジグリセリンタルトラートから選択される構造を含むもの等のオキソ−(18−クラウン−6)化合物及びその類似体/誘導体である。
【0121】
【化1】

【0122】
対イオン
対イオンの存在は、安定的に水和されたペプチド活性剤のイオン化可能な基の中性荷電種の形成を可能にする。一般的に、対イオンは、安定的に水和されたペプチド活性剤を部分的に中和する又は全体的に中性性を付与する条件下でクラウン化合物と結合する量で存在する。ある実施形態では、対イオンは、酸性塩(例えば、サリチル酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、酒石酸、リン酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、メチルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)、アミノ酸(例えば、リジン、グリシン、ヒスチジン、アルギニン)、又は修飾アミノ酸(例えば、N−アセチル−リジン−アミド、N−アセチル−アルギニン−アミド)の対イオンである。様々な対イオンの組み合わせも企図される。
【0123】
したがって、幾つかの実施形態では、対イオンは、酸性塩、アミノ酸、修飾アミノ酸、及びそれらの混合物から選択される。1つの態様は、酸性塩の対イオンが、親水性酸又は親油性酸である場合である。興味深い親水性酸の例には、これらに限定されないが、トリフルオロ酢酸、スルホン酸及び安息香酸が含まれる。特に興味深い親油性酸の例には、これらに限定されないが、ドデシルスルホン酸及びより高級な相同体等のアリール及びアルキルスルホン酸、ジラウリロイルホスファチジルグリセロール(DLPG、dilauryloylphosphatidylglycerol)等のホスファチジルグリセロール誘導体(deravtive)、及びリポ酸等が含まれる。そのように、他の好適な親油性酸を使用することができる。特に興味深いのは、アルキルスルホン酸及びより高級な相同体等の、強力な親油性酸である酸性塩の対イオンである。ある実施形態では、親水性酸は、トリフルオロ酢酸、スルホン酸、及び安息香酸からなる群から選択される。他の実施形態では、親油性酸は、ドデシル−スルホン酸である。ドデシル−スルホン酸等の比較的強酸性の対イオンを使用する場合、例えば、酸化防止剤を含有させること及び対イオンの濃度等を制限すること等により、感受性であり得るペプチドの酸化を回避するための注意が払われる。
【0124】
上記に示したように、炭素原子が2〜30個、及び通常は8〜10個であるアルキル鎖を有するアルキルスルホン酸等の親油性酸が、特に興味深い。芳香族環に1つ又は複数のアルキル置換基を有し、各アルキル置換基が、一般的に2〜30個、及びより一般的に8〜10個の炭素原子を有するアリールスルホン酸は、好適な対イオンの更なる例である。幾つかの実施形態では、あるリン脂質も、対イオンとして使用することができる。例えば
、1つの酸性プロトンを有するホスファチジルグリセロール若しくはホスファチジル糖、又は2つの酸性プロトンを有するホスファチジン酸等の、ホスファートに少なくとも1つの酸性プロトンを有するリン脂質が、興味深い。そのようなリン脂質又はホスファチジル部分に含まれるアルカン酸は、それぞれ、一般的に各々4〜30個、より典型的には6〜20個、及び通常は8〜18個の炭素原子を有する。2つのアルカン酸を含むリン脂質は、対称性又は非対称性のいずれであってもよい。後者の場合、リン脂質分子は、2つの異なる脂肪酸を含む。別の実施形態では、ホスフォリプド(phospholipd)は、例えばホス
ファチジルイノシトールのように、由来が天然である。
【0125】
興味深いある実施形態では、対イオンは、多重酸性原子価(多重プロトン性)を有する酸又はポリカルボン酸であってもよい。特に興味深いのは、これらに限定されないが、リン酸及び硫酸等を含む無機酸、及びこれらに限定されないが、フタル酸及びテレフタル酸等のビスカルボン芳香族酸を含む有機酸であり、アルキル基シュウ酸(alkylic oxalic acid)、マロン酸、コハク酸、酒石酸、マレイン酸、及びフマル酸等に由来するものであ
る。
【0126】
実際に、特定の実施形態では、好みのビスカルボン酸を使用して、ペプチド側鎖、特にリジン及びアルギニンのアミノ基で陽イオン電荷を生じさせることができる。したがって、特定の実施形態では、1アミノ基対イオン当たり約1つのビスカルボン酸を有するペプチド活性剤を調製することができ、その後pHを、中性付近、およそpH6〜pH8にすることができる。そのような条件下では、ペプチド鎖(特にリジン及びアルギニン)のアミノ基は、酸の最初の酸性部分により完全にプロトン化することができ、同時に他の酸性官能基がイオン化され、追加の陽イオン電荷を生じさせる緩衝剤、例えばナトリウム又はカリウムと塩を形成し易い。この戦略に基づくと、ペプチドの陽イオン電荷が著しく増加され、より良好な溶解度、凝集の低減、及びペプチド安定性の増強がその結果としてもたらされる可能性が高い。
【0127】
非水性疎水性媒体
非水性疎水性媒体は、一般的に、そこに均質に分散されているペプチド錯体及び/又はペプチド塩の可溶化又は溶解度の維持を可能にする。したがって、ペプチド錯体及び/又はペプチド塩は、非水性疎水性媒体中に混合された際に、有効量のペプチド活性剤が、望ましくない析出及び/又は凝集形成をすることなく、そこに均質に分散されている限り、外観は、清澄していてもよく又は濁っていてもよい。上述のように、特に興味深いのは、粘膜組成物の非水性疎水性媒体が、(i)クラウン化合物及び対イオンと錯体化された安定的に水和されたペプチド活性剤を可溶化し、(ii)ペプチド活性剤の粘膜送達を増強するのに有効な量で各々個々に存在する、少なくとも1つのアシルグリセロール及び少なくとも1つの有機溶媒及び/又は脂質を含む。
【0128】
アシルグリセロール
アシルグリセロールには、脂肪酸を有するグリセロール(プロパン−1,2,3−トリオール)の不溶性エステルが含まれ、モノ−、ジ−、又はトリ−O−アシルグリセロールに分類することができる(つまり、アシル基の数及び位置により、1−又は2−モノグリセリド;1,2−又は1,3−ジグリセリド;及びトリグリセリド、並びに混合物の場合は、モノ−ジ−グリセリド等)。アシルグリセロールの例には、これらに限定されないが、トウモロコシ油モノ−ジ−トリジグリセリド、中鎖(C8〜C10)モノ−及びジグリセ
リド、長鎖トリグリセリド(ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、落花生油、薄荷油、サフラワー油、胡麻油、大豆油、水素添加大豆油、水素添加植物油)、及び中鎖トリグリセリド(ヤシ油又はパーム核油に由来するカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド等)が含まれる。そのようなアシルグリセロールは、直接的食品添加物としての使用に、並びに化粧品及び医薬品応用に、安全性が一般的に認められている。炭素が約8〜1
0個(C8〜C10)の置換又は非置換、飽和又は不飽和の脂肪族鎖を有するアシルグリセ
ロール及びより高級な相同体は、水にやや難溶性であるか又は不溶性であり、特に興味深い。
【0129】
ある実施形態では、アシルグリセロールは、モノアシルギセロール(monoacylgycerol
)、ジアシルグリセロール、及びそれらの混合物から選択される。特に興味深いのは、周囲標準室温で固体又は半固体であるモノアシルグリセロール及びジアシルグリセロール、特に中鎖(C8〜C10)モノ−及びジアシルグリセロールである。したがって、特徴的な
態様は、モノ−デカノイル−グリセロール等の中鎖(C8〜C10)モノアシルグリセロー
ルに関する。
【0130】
所与の投与経路及び剤形に応じて、少なくとも1つのアシルグリセロールは、製剤が所望の温度で液体、ゲル、又は固体、又は半固体であるような量で含有されていてもよい。固形口腔送達製剤には、例えば、最大約50℃〜約55℃の温度で製剤が固体又は半固体であるような量で、1つ又は複数の特定のアシルグリセロールを使用することができる。逆に、これより低い温度で液体又はゲルであるアシルグリセロール製剤を選択してもよい。例えば、アシルグリセロール製剤は、4℃で固体であり、室温又は宿主の温度で又は温度付近で融解し、例えば4℃で固体であり、約37℃〜45℃で融解又は融解し始める製剤を提供する量で、少なくとも1つのアシルグリセロールが含有されるように選択することができる。特に興味深いのは、約37℃〜45℃未満で固体又は半固体であるアシルグリセロール製剤等の、宿主の体温付近未満の温度で固体又は半固体であるアシルグリセロール製剤である。一般的に、そのような特徴(所与の製剤の他の成分に加えて)を有するアシルグリセロールは、その融解温度に基づいて選択することができる。特に興味深いのは、周囲室温で固体又は半固体であり、約60℃以下、通常は約55℃以下、より典型的には約53℃以下の融解温度を有するアシルグリセロールであり、例えば、モノ−デカノイル−グリセロールは、約53℃の融点を有する。多くのそのようなアシルグリセロールは公知であり、市販されている。
【0131】
特に興味深いのは、モノ−オレイン(オレイン酸を有するグリセロールエステル)、モノ−リノレイン、モノ−エライジン、モノ−エルカート等の、不飽和長鎖アルキル鎖(好ましくは、C18〜C21)を有するアシルグリセロールであり、それらは、室温で液体又は半固体である。
【0132】
例えば、中鎖(C8〜C10)モノ−及びジアシルグリセロールは、典型的には、宿主の
体温付近未満の温度で固体又は半固体であり、したがって宿主の体温付近未満、通常は約37℃未満である融点を有するか又は有するように配合することができ、そのため特に興味深い。したがって、そのようなアシルグリセロール化合物が宿主に送達されると、宿主の体温は半固体物質を融解し、ペプチド活性剤の溶解及び送達を所望のように可能にする。
【0133】
したがって、有利には、宿主の体温付近未満の温度で半固体であるアシルグリセロールを使用して、(1)固体又は半固体が、それらの液体形態と比較して低減された容積を有するため、粘膜送達媒体の容積を低減し、(2)固体又は半固体剤形(下記により詳しく記載)のため自由度を提供することができる。また、本開示のこの態様は、粘膜送達組成物中にペプチド活性剤を保持して、送達前の望ましくない漏出を回避すること、送達時にペプチド活性剤をより均一に溶解させること、目的の粘膜を通過する透過性を一般的に増強すること、並びにペプチド活性剤を粘膜送達組成物中でその安定的に水和された形態に維持することを支援する。
【0134】
したがって、ある実施形態では、アシルグリセロールは、宿主の体温付近未満の温度で
半固体である。特定の実施形態では、中鎖モノ−及びジアシルグリセロール等のアシルグリセロールは、周囲標準室温で半固体である。本開示の特徴的な態様は、モノ−デカノイル−グリセロール等の中鎖(C8〜C10)モノ−アシルグリセロールに関する。
【0135】
他の実施形態では、1つ又は複数の飽和アシルグリセロール(好ましくは、C6〜C24)の混合物を、上記で定義されている1つ又は複数の長鎖アルキル鎖不飽和アシルグリセロールと共に使用することができる。そのような混合物を使用することにより、これらに限定されないが、本発明の組成物の粘性及び融点等の物理的/化学的特性の最適化が可能になる。
【0136】
脂質
脂質は、一般的に、疎水性両親媒性の低分子と定義される。脂質の例には、脂肪、ワックス、ステロール、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、及びK等)、モノグリセリド、ジグリセリド、及びリン脂質等が含まれる。したがって、ある実施形態では、脂質成分は、例えば、脂質が、トウモロコシ油モノ−ジ−トリジグリセリド等の油、オリーブ油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、薄荷油、サフラワー油、胡麻油、大豆油、水素添加大豆油、水素添加植物油等の長鎖トリグリセリド、及びヤシ油又はパーム核油に由来するカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド等の中鎖トリグリセリド等である場合、アシルグリセロールを含む。ある実施形態では、脂質が脂肪酸又はビタミンE(例えば、α−、β−、γ−、及びδ−トコフェロール及び対応する4つのトコトリエノール、これらは脂溶性の中性ビタミンである)等である場合、脂質はアシルグリセロール以外である。
【0137】
特に興味深いのは、脂質が、脂肪酸、より具体的には、脂肪族カルボン酸である透過性増強脂肪酸を含む場合であり、それは、飽和又は不飽和、分岐又は直鎖であってもよく、様々な脂肪酸の混合物を含んでいてもよい。飽和に加えて、脂肪酸は、短鎖、中鎖、又は長鎖である。短鎖脂肪酸は、炭素が7個未満の脂肪族尾部を有する脂肪酸である。中鎖脂肪酸は、炭素が7〜14個の脂肪族尾部を有する脂肪酸である。長鎖脂肪酸は、炭素が16個以上の脂肪族尾部を有する脂肪酸である。特に興味深い脂肪酸の例には、カプリル酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、及びそれら混合物から選択される、7〜19個の炭素原子を有する飽和脂肪酸が含まれる。不飽和脂肪酸の例には、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、アルファ−リノレン酸、及びそれらの混合物から選択される、7〜19個の炭素原子を有するものが含まれる。これら脂肪酸の各々は、食品添加物としての、化粧品及び医薬品応用での、それらの使用を含む、種々の消耗品での使用が見出されており、したがって、一般的にそれらの使用目的に関して安全であると見なすことができる。
【0138】
1つの目的の態様は、ペプチド活性剤をその安定的に水和された状態に支援及び/又は維持するために、透過性増強脂肪酸を粘膜送達組成物の賦形剤として使用することである。この目的のために、7〜14個の炭素原子、特に7〜12個の炭素原子を有する透過性増強脂肪酸が、特に興味深い。特徴的な態様は、カプリル酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸から選択される飽和脂肪酸である透過性増強脂肪酸である。特に興味深いのは、ノナン酸であり、したがって脂肪酸は、本開示の粘膜送達組成物に使用されると、その粘膜送達特性を示す。脂肪酸の透過性増強特徴は、本明細書等に例示されているように、容易に決定することができる。
【0139】
多くの実施形態では、非水性疎水性媒体は、クラウン化合物及び/又は対イオンと錯体化された安定的に水和されたペプチド活性剤を可溶化にすることが可能な非水性溶媒を含む。本開示による非水性溶媒は、その製造及び製剤化の過程中で使用することができる医
薬用又は診断用組成物及び/又溶媒中の成分として使用することができる溶媒を含む。言い換えれば、そのような溶媒の医療使用は認可されており、及び/又はそれらの使用は、治療する個体の健康に脅威とならない。そのため、用語「非水性溶媒」は、油等の天然産物、及びCremofor EL等の天然産物誘導体も含む。
【0140】
有機溶媒
1つの実施形態では、非水性疎水性媒体は、少なくとも1つの有機溶媒を含む。用語「有機溶媒」は、当技術分野で公知であり、1つ又は複数の物質を溶解又は分散することが可能な、化学産業で一般的に使用されている炭素に基づく物質に関する。一般的に言えば、有機溶媒は、水よりも親油性又は疎水性である。結果として、それらのlogP値は、一般的に0よりも大きい。
【0141】
特に興味深いのは、無極性有機溶媒、水より小さな双極子モーメントを有する有機溶媒、並びに疎水性の有機溶媒、つまりほとんど又は全く水混和性でない溶媒である。本開示による有機溶媒は、パラフィン、脂肪族、及び芳香族炭化水素のような非置換炭化水素溶媒、並びに酸素(例えば、アルコール、ケトン、グリコールエステル)、ハロゲン(例えば、四塩化炭素)、窒素(例えば、DMF、ジメチルホルムアミド及びアセトニトリル)、又は硫黄(例えば、DMSO:ジメチルスルホキシド)のようなヘテロ原子(heteratom)を含有するそれらの誘導体を指す。
【0142】
一般的に使用される有機溶媒は、メタノール、エタノール、C3〜C10のアルコール、
アセトニトリル、ブタノン、1,1,1−トリフルオロエタノール(TFE)、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、酢酸エチル、四塩化炭素、ブタノール、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、塩化メチレン(ジクロロメタン)、ヘキサン、酢酸ブチル、ジ−イソプロピルエーテル、ベンゼン、ジペンチルエーテル、クロロホルム、ヘプタン、テトラクロロエチレン、トルエン、ヘキサデカン、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、及びジオキサンである。
【0143】
ある実施形態では、少なくとも1つの有機溶媒は、水溶性有機溶媒である。水溶性有機溶媒の例には、これらに限定されないが、ヘキサエチレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキシドが含まれる。これら成分の各々は、市販されており、多数の医薬品中に見出されており、それらの使用目的に関して一般的に安全であるとみなされている。したがって、ある実施形態では、水溶性有機溶媒は、ジオール、ポリオール、又はそれらの混合物等の湿潤剤を含むか又はからなる。他の実施形態では、水溶性有機溶媒は、極性非プロトン溶媒である。幾つかの実施形態では、水溶性有機溶媒は、極性非プロトン溶媒と湿潤剤との混合物を含む。
【0144】
湿潤剤は、水分子と水素結合を形成する親和性を有する吸湿性物質である。湿潤剤は、典型的には、幾つかの親水基、最も多くの場合はヒドロキシル基を有する分子であるが、アミン及びカルボキシル基を有するもの、場合によってはエステル化されているものも同様に見受けられる場合がある。湿潤剤の例には、グリセリン、プロピレングリコール、及びグリセリルトリアセタートが含まれる。他には、糖アルコールであるエリトリトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、イソマルト、マルチトール、及びラクチトール等のポリオール、又はポリデキストロース若しくはキラヤのような天然抽出物等のポリマー性ポリオール、又はヘキサエチレングリコール(MW282.3)、ポリエチレングリコール300、若しくはポリエチレングリコール400等のポリエチレングリコールであってもよい。
【0145】
ある実施形態では、1つ又は複数のジオール、ポリオール、及びそれらの混合物が、安定的に水和されたペプチド活性剤の可溶化を支援するだけでなく、OH(ヒドロキシル)基の供給源でもある非水性疎水性媒体中に含有されており、OH基は、ペプチドと水素結合を形成し易く、安定化を支援する。一例として、ペプチド、特に大型ペプチド(例えば、タンパク質)は、乾燥粉末又は残渣として製剤化される場合、折り畳み及び生物学的活性を維持するために、マンニトール等の糖アルコールと共に乾燥されてもよい。これは、水(溶液中の)を用いずに乾燥粉末又は残渣として製剤化される場合、ペプチドは、生物学的活性を失うことが多いからである。
【0146】
特に興味深いのは、極性非プロトン溶媒、プロピレングリコール、グリセロール、及びポリエチレングリコールの2つ以上の混合物を含む水溶性有機溶媒である。グリセロール(又はプロパン−1,2,3−トリオール)は、無色無臭の粘性液体であり、食品及び医薬製剤に広く使用されている。一般的にグリセリン(glycerin)又はグリセリン(glycerine)とも呼ばれているグリセロールは、糖アルコールであり、甘味を有しており、低毒
性である。グリセロールは、3つの親水性アルコール性ヒドロキシル基を有しており、それらがその水溶解度及び吸湿性の原因である。プロピレングリコール(又はプロパン−1,2−ジオール)は、ジオールアルコールであり、通常は、吸湿性であり、水、アセトン、及びクロロホルムと混和性である無味、無臭、及び無色の清澄な油性液体である。プロピレングリコールは、長期経口毒性が低いため、直接的食品添加物としての使用、並びに化粧品及び医薬品応用に関して安全であると認められている(GRAS)。ポリエチレンオキシド(PEO)又はポリオキシエチレン(POE)としても知られているポリエチレングリコール(又はPEG)は、ポリエーテルである。特に興味深いのは、PEGオリゴマー、及び20,000g/mol未満の分子量を有するポリマー、並びに種々の誘導体であり、その中で最も一般的なのは、単官能性メチルエーテルPEG(メトキシポリ(エチレングリコール))であり、mPEGと略される。特に興味深いのは、8000g/mol、4000g/mol、1000g/mol、800g/mol、700g/mol、又は600g/mol未満の分子量を有するPEGジオール、並びにヘキサエチレングリコール及び良く知られているPEG300及びPEG400等の、約200〜500g/molの分子量を有する特定のPEGジオールである。上記に示されている他の成分と同じように、主題PEG化合物は、直接的食品添加物としての使用、並びに化粧品及び医薬品応用に関して、安全性が一般的に認められている。
【0147】
極性非プロトン溶媒は、プロトン性溶媒と同じようにイオン溶解力を有するが、酸性水素を欠如している溶媒である。これら溶媒は、一般的に高い誘電率及び高い極性を有する。例としては、N−メチル−ピロリドン(又はN−メチル−2−ピロリドン)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、及びヘキサメチルホスホロトリアミドである。主題組成物中の極性非プロトン溶媒の利点は、可溶化(solubizing)性質が高いこと、及びペプチドの望ましくないイオン化を維持及び/又は低減することができることである。特に興味深いのは、N−メチル−2−ピロリドンである。N−メチル−2−ピロリドン(NMP、Pharmasolve)は、非常に強力な可溶化剤であり、少数の市販医薬品中に可溶化剤として見出される。N−メチル−2−ピロリドンは、炒ナッツ類の揮発成分としても見出されており、水、エチルアルコール、エーテル、クロロホルム、ベンゼン、酢酸エチル、及び二硫化炭素と混和性の多用途溶媒である。
【0148】
ある実施形態では、有機溶媒は、非イオン性界面活性剤を含んでいる。また、非イオン性界面活性剤は、非水性溶媒、有機溶媒、及び/又は水溶性有機溶媒であってもよい。非イオン性界面活性剤の例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:ポリオキシル35ヒマシ油(クレモフォアEL)、ポリオキシル40水素添加ヒマシ油(クレモフォアRH40)、及びポリオキシル60水素添加ヒマシ油(クレモフォアRH60)、並びにd−α−トコフェロール、ポリエチレングリコール1000スクシナート、ポリソ
ルベート20、ポリソルベート80、ソルビタン−モノラウラート(Span20)、ソルビタンモノパルミタート(Span40)、ソルビタンモノステアラート(Span60)、ソルビタン−モノオレアート(Span80)、ソルトールHS15、ソルビタンモノオレアート、ポロキサマー407、ラブラフィルM−1944CS、ラブラフィルM−2125CS、ラブラソール、ゲルシア44/14、ソフティゲン767、及びPEG300、400、又は1750のモノ−及びジ−脂肪酸エステル。これら成分の各々は、市販されており、多数の医薬品中に見出されており、それらの使用目的に関して一般的に安全であるとみなされている。したがって、ある実施形態では、非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチル化ポリオール、脂肪酸でエステル化されたポリオキシエチル化ポリオール、及びそれらの混合物から選択される。
【0149】
ある実施形態では、非イオン性界面活性剤は、ポリオキシル35ヒマシ油(クレモフォアEL)、ポリオキシル40水素添加ヒマシ油(クレモフォアRH40)、ポリオキシル60水素添加ヒマシ油(クレモフォアRH60)、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリオキシエチル化ポリオールであり、脂肪酸でエステル化されたポリエトキシ化ポリオールは、ポリソルベート20(Tween20)、ポリソルベート80(Tween80)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。特徴的な実施形態は、非イオン性界面活性剤が、ポリエトキシ化ヒマシ油及び特にポリオキシル35ヒマシ油(クレモフォアEL)等のポリオキシエチル化ポリオールである場合である。また興味深いのは、主題製剤化に有益であり得る中程度に酸性のフェノール基を含むため、単独の又は他のビタミンE化合物と組み合わせたd−α−トコフェロール等のビタミンEである。
【0150】
そのため、ある実施形態では、非水性疎水性媒体は酸性であり、少なくとも1つのアシルグリセロールは、中鎖アシルグリセロールであり、少なくとも1つの脂質は、短鎖脂肪酸及び/又は中鎖脂肪酸を含み、少なくとも1つの水溶性有機溶媒は、極性非プロトン溶媒である。例えば、特定の実施形態では、中鎖アシルグリセロールはモノ−デカノイルグリセロールであり、短鎖脂肪酸はノナン酸であり、中鎖脂肪酸はオレイン酸であり、極性非プロトン溶媒はN−メチル−2−ピロリドンである。
【0151】
他の実施形態では、非水性疎水性媒体は中性であり、少なくとも1つのアシルグリセロールは、中鎖アシルグリセロールであり、少なくとも1つの脂質は、中性脂肪酸であり、少なくとも1つの水溶性有機溶媒は、極性非プロトン溶媒である。例えば、中鎖アシルグリセロールは、モノ−デカノイルグリセロール及びオクタノイルグリセロールの混合物であり、中性脂質はビタミンEであり、極性非プロトン溶媒は、プロピレングリコールN−メチル−2−ピロリドンである。
【0152】
幾つかの実施形態では、粘膜送達組成物は、乳剤、分散剤、リポソーム、又は逆ミセルを含むミセルとして構成される(下記により詳細に記載)。
【0153】
他の成分
組成物は、他の薬学的に許容される成分を賦形剤として更に含んでいてもよい。そのような成分の例は、当技術分野で周知であり、それらには、非イオン性界面活性剤、酸化防止剤、緩衝剤、粘度調整剤、キレート剤、種々のタイプの湿潤剤、希釈剤(dilutant)、及び無菌溶液等が含まれる(下記により詳細に記載)。
【0154】
非イオン性界面活性剤又は洗剤は、疎水性尾部及び非荷電頭部基を有する有機化合物を含む。例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:アルキルポリ(エチレンオキシド)、アルキルフェノールポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)及びポリ(プロピレンオキシド)のコポリマー(商業的にはポロキサマー又はポロキサミンと呼ばれる)、オクチルグルコシド及びデシルマルトシド等のアルキルポリグルコシ
ド、セチルアルコール及びオレイルアルコール等の脂肪アルコール、コカミドMEA、コカミドDEA、並びにTween20、Tween80、及びドデシルジメチルアミンオキシド等のポリソルベート等。特に興味深いのは、ベータ−D−オクチルグルコシド等の非イオン性界面活性剤である。
【0155】
特に興味深いのは、一般的に、チオール、メラトニン、リポ酸、尿酸、カロチン、アスコルビン酸、及びポリフェノール等の還元剤である、グルタチオン等の酸化防止剤、及びビタミンE、並びにカタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、及び種々のペルオキシダーゼ等の酵素である。特に興味深い酸化防止剤の例には、これらに限定されないが、N−アセチル−メチオニン、ビオチン、アスコルビン酸、グルタチオン、及びビタミンEが含まれる。そのため、1つの実施形態では、粘膜送達組成物は、酸化防止剤を含む。関連実施形態では、事前に形成されたペプチド錯体は、酸化防止剤を含む。
【0156】
特に興味深い他の成分は、アスコルビン酸アルカノアートエステルであり、そのアルキル鎖は、好ましくは、C8〜C24であり、飽和又は不飽和である。そのような化合物は、界面活性剤として作用することができる。そのため、それらは、マイクロエマルジョン及びミクロゲルの形成を容易にすることができる。Zaino et al., Lat. Am. J.Pharm., 28, 438-442, 2009に記載の6−O−ラウリルアスコルビン酸等の好ましい化合物は、このクラスに分類される。アスコルビン酸アルカノアートエステルの利点は、それらが、本発明によるペプチド活性剤の送達及び安定化する役目を果たすだけでなく、更にその酸化を防止又は低減することが可能であることである。したがって、これら化合物は、界面活性剤及び/又は酸化防止剤の役目を果たすことができる。
【0157】
粘膜送達用の好ましい担体又は本開示による製剤用の希釈剤には、上記で考察した非水性溶媒が含まれる。そのような担体を含む組成物は、臨床要因により決定することができる保管及び投与計画を考慮に入れて、周知の従来方式により製剤化することができる。例えば、ペプチド活性剤は、1用量当たり1kg体重当たり1ng〜10mgの量で存在してもよいが、この例示的な範囲未満の又はこの範囲を超える用量が、特に前述の要因を考慮して想定される。想定される製剤は、ミクロスフェア、リポソーム、マイクロカプセル、及びナノ粒子/ナノカプセルを更に含む。
【0158】
本開示の組成物の追加の想定される成分には、シクロデキストリン(例えば、Irie and
Uekama (1999)又はChalla et al. (2005)を参照)及び/又はキトサンが含まれる。シクロデキストリンは、化合物に存在する疎水性部分と包接錯体を形成する。更に、シクロデキストリンは、親水性の外側表面を示す。シクロデキストリン又はキトサンを含む組成物は、ペプチド活性剤の遅延放出及び/又は長期間にわたる放出を提供することができる。したがって、製造される組成物は、シクロデキストリンを更に含む。シクロデキストリンは、当技術分野で公知であり、アルファ−シクロデキストリン、ベータ−シクロデキストリン、及びガンマシクロデキストリンが含まれる。言い換えれば、安定的に水和されたペプチド活性剤は、第1のステップで錯体化されて第1のペプチド錯体を形成し、その後第1のペプチド錯体は、第2のステップでシクロデキストリン、より詳しくはシクロデキストリンの疎水性(hydrophobic)内部空洞と錯体化されて第2の層を形成し、それにより合
計で2つのレベルの錯体化で生成される。これは、新規の送達手法を設計する可能性を開くものであり、例えば、安定的に活性のペプチド成分を、(i)リポソーム、(ii)ミクロスフェア、(iii)マイクロカプセル、(iv)ナノ粒子/ナノカプセルに封入することである。
【0159】
賦形剤は、1つ又は複数のキレート剤を更に含んでいてもよく、それらは、特定の化合物に応じて、酸化防止剤、対イオン、及び/又は緩衝剤等としての役目を果たすこともできる。そのようなキレート剤の例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる
:クエン酸、ホスホナート、テトラサイクリンファミリーの抗生物質等の抗生物質、アクリルポリマー、アスコルビン酸、イミノジコハク酸四ナトリウム、ジカルボキシメチルグルタミン酸、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)のヘプタナトリウム塩(DTPMP・Na7)、リンゴ酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、非極性アミノ酸(例えば、
メチオニン及びその誘導体)、シュウ酸、リン酸、極性アミノ酸(例えば、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、リジン、及びオルニチン、並びにそれらの誘導体)、デスフェリオキサミンB等のシデロフォア、及びコハク酸。
【0160】
リン酸ナトリウム、TRIS、グリシン、マレイン酸、及びクエン酸ナトリウム等の緩衝剤は、組成物のpHが時間と共に変化する傾向、そうでなければ化学反応により生じるであろう傾向を低減するために含まれていてもよい追加の賦形剤の例である。加えて、1つ又は複数の保存剤は、微生物活性(増殖及び代謝)を防止又は遅延させるために含まれていてもよい。薬学的に許容される保存剤の例は、フェノール、m−クレゾール、及びフェノール及びm−クレゾールの混合物、ベンゾアート、及びそれらの誘導体等である。
【0161】
無論、等張剤は、一般的に、幅広い範疇の賦形剤であり、例えば、以下のものが含まれていてもよい:塩(例えば、塩化ナトリウム)、糖又は糖アルコール(つまり、少なくとも1つの−OH基を有するC4〜C8炭化水素であり、例えば、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラシチトール(galacititol)、ズルシトール、キシリトール、
及びアラビト(arabito)が含まれる)、アミノ酸(例えば、L−グリシン、L−ヒスチ
ジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、トレオニン)、アルジトール(例えば、グリセロール(グリセリン)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール)ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、又はそれらの混合物。また、等張剤には、例えば、フルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、及びカルボキシメチルセルロース−Naを含む、モノ−、10ジ−、若しくはポリサッカライド又は水溶性グルカン等の任意の糖が含まれる。
【0162】
上記で言及されたもの等の賦形剤は、個々に又は組み合わせで使用することができる。賦形剤が調製物に可溶性であり、所与の最終的使用のための粘膜送達組成物又はその成分に有害効果を及ぼさない限り、使用される量に一定の制限はない。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照するのが便利である。
【0163】
保存安定性
ある実施形態では、主題粘膜送達組成物及び置換成分は、保管安定的調製物として調製される。1つの実施形態では、粘膜送達組成物、及び/又は粘膜送達組成物を含む医薬用及び/又は診断用調製物は、保管安定的である。1つの実施形態では、事前に形成されたペプチド錯体は、保管安定的である。関連実施形態では、非水性疎水性媒体は、保管安定的である。
【0164】
用語「保管安定的」は、キットに同梱するため等の、特にペプチド活性剤を活性成分として含む医薬用及び/又は診断用製剤として、保管用に調製され、等量化され、並びに/又は別々の及び/若しくは混合された成分として出荷される組成物を指し、活性成分の濃度は、保管安定性試験中効果的に維持され、そのような製剤の保管安定性試験で典型的に観察される分解生成物、酸化生成物、及び/又は不純物が、保管安定性試験中に存在しないか又は低減される。
【0165】
1つの実施形態では、保管安定性は、約−20℃〜約80℃、約4℃〜約70℃、約4℃〜約60℃、約4℃〜約50℃、約4℃〜約40℃、又は約4℃〜約30℃の温度範囲で決定される。別の実施形態では、保管安定性は、約1〜5%の相対湿度(「RH」)を超える、一般的には約10%のRH〜約90%のRH、約20%のpH〜約65%のRH、又は約30%のRH〜約75%のRH範囲で決定される。追加の実施形態では、保管安定性は、窒素及びアルゴン等の不活性ガス下で決定される。特に興味深いのは、例えば、約1週間〜5年間、約2週間〜約4か月、又は2週間、4週間、8週間、12週間、16週間、6か月間、及び12か月間の範囲である、保管安定性を測定するための時間間隔である。一般的に、所与の組成物の保管安定性は、組成物が、所与の最終的使用に好適であり、約3〜6か月間以上、典型的には約1年以上の期間安定的である所望の条件下で保管される際に決定される。
【0166】
保管安定性は、当技術分野で周知の種々の技術により評価することができる。例えば、保管安定性は、質的に及び/又は量的に、直接的に及び/又は間接的に、クロマトグラフィーにより(例えば、HPLC、質量分光光度法等)、酵素的に(基質消費及び/若しくは修飾、又は産物及び/若しくは副産物産生の測定)、抗原−抗体結合(例えば、ウエスタンブロット、酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)等)、生物学的作用(例えば、下記の実験セクションに例示されているもの等の、血流に進入するペプチド活性剤の量を間接的に測定することによる薬理学的生物学的利用能)による等、当技術分野で公知の種々の技術により測定することができる。
【0167】
主題開示の保管安定的な医薬用及び/又は診断用製剤には、米国食品医薬品局(FDA)のペプチド医薬品に関する規制基準を満たすか又は超過するレベルのペプチド活性剤の初期濃度を維持するものが含まれる。そのため、本開示の特定の製剤は、約6か月を超える期間、ある実施形態では、最大約2年間を含む、約12か月を超える期間、ペプチド活性剤の初期濃度を維持し、平均不純物濃度が、約1%未満、典型的には約0.1%未満である。また、各々のそれぞれの期間内では、粘膜送達活性は、特定の実施形態では、多くとも10%しか低減されず、薬物動態学的及び/又は薬理学的パラメーターは、いかなる実質的な変化も示さない。
【0168】
製剤
ある実施形態では、ペプチド錯体及び/又はペプチド塩及び非水性疎水性媒体は、宿主に投与される単一組成物に混合され、更なる他の実施形態では、ペプチド錯体及び/又はペプチド塩及び非水性疎水性媒体は、各々個々に、その後宿主に投与される単一組成物に混合するための別々の組成物で提供される。追加の実施形態では、非水性疎水性媒体中のペプチド塩、及び/又はクラウン化合物は、各々個々に、その後宿主に投与される単一組成物に混合するための別々の組成物で提供される。したがって、ペプチド錯体及び/又はペプチド塩及び非水性疎水性媒体は、単一組成物中に提供されてもよく、又はその後本開示の送達系の一部として混合するための、剤形又はデバイスの別々の容器を含み別々の組成物中に、各々個々に、その種々の組み合わせで提供されてもよく、又はその任意の有効な変化形で提供されてもよい。
【0169】
ペプチド錯体及び/又はペプチド塩は、粘膜送達用にその場以外で事前に形成されようが、又はその場で構築されようが、ペプチド錯体及び/又はペプチド塩及び他の粘膜送達組成成分は、各々個々に、有効量、つまり生物学的に関連する量で混合される。一般的に、ペプチド活性剤は、粘膜送達組成物の約0.001〜10重量%、通常は約0.01〜5%、約0.01〜3%、及びより一般的には約0.01〜2%を構成し、残りは、粘膜送達組成物の残りの成分である。
【0170】
したがって、主題粘膜送達組成物の成分は、有効量のペプチド活性剤を粘膜送達するた
めの量で混合される。したがって、そのような組成物は、この目的に好適であり、所与の最終的使用に対応するそれらの構成成分の有効な混合物を含む。
【0171】
一般的に、粘膜送達組成物は、約0.1〜50重量%のペプチド錯体又はペプチド塩、及び約50〜99.9重量%の非水性疎水性媒体の有効な混合物を含み、残りは、実質的に1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤である。
【0172】
特定の態様は、非水性疎水性媒体が、少なくとも1つのアシルグリセロール、水溶性有機溶媒等の少なくとも1つの有機溶媒、及び随意に少なくとも1つの脂質を含む場合である。これらの前提に基づき、選択された対イオンと共に所望のpHで乾燥又は凍結乾燥されたペプチドは、最終混合組成物に対して1%〜50%v/vで、より正確には最終混合組成物に対して3%〜25%、5%〜20%、6%〜15%v/vで、随意に有機溶媒及びクラウン構造物に対して水0.1%〜15%v/vと共に、有機溶媒に溶解又は懸濁することができる。その後、第1の有機溶媒にペプチドを溶解した後、アシルグリセロールを、随意に第2の有機溶媒(非イオン性界面活性剤)及び随意に脂質と共に添加する。
【0173】
特徴的な態様は、非水性疎水性媒体が、少なくとも1つのアシルグリセロール、少なくとも1つの脂質、及び随意に水溶性有機溶媒等の少なくとも1つの有機溶媒を含む場合である。アシルグリセロールは、約20〜80%、約30〜70%、約40〜60%、及び一般的に約45〜55%等を含む、粘膜送達組成物の最大約80重量%を構成する。脂質成分は、約10〜50%、通常は約20〜40%等を含む、粘膜送達組成物の約5〜60重量%を構成する。有機溶媒は、存在する場合、有機溶媒又は系に応じて、粘膜送達組成物の約1〜50重量%、通常は約5〜30%、及び典型的には約5〜10%を構成する。
【0174】
1つの実施形態では、粘膜送達組成物は、約0.1〜20重量%のペプチド錯体又はペプチド塩、約35〜55重量%のアシルグリセロール、及び約30〜50重量%の脂質の有効な混合物を含み、残りは、実質的に1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤である。
【0175】
幾つかの実施形態では、粘膜送達組成物は、約0.1〜15重量%のペプチド錯体又はペプチド塩、約45〜55重量%のアシルグリセロール、及び約30〜45重量%の脂質の有効な混合物を含み、残りは、実質的に1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤であり、アシルグリセロールは、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、及びそれらの混合物から選択され、脂質は、中性脂質、荷電脂質、又はそれらの混合物から選択される透過性増強脂質である。特に興味深いのは、アシルグリセロールが、モノ−デカノイルグリセロール及び/又はオクタノイルグリセロール等のモノアシルグリセロールであり、透過性増強脂質が、ノナン酸及びオレイン酸等の、7〜19個の炭素原子を有する短鎖及び中鎖飽和又は不飽和脂肪酸の混合物を含み、及び/又はビタミンE等の中性脂質を含む場合である。
【0176】
ある実施形態では、粘膜送達組成物は、約0.1〜15重量%のペプチド錯体又はペプチド塩、約35〜55重量%のアシルグリセロール、約30〜45重量%の脂質、及び約5〜15重量%の水溶性有機溶媒の有効な混合物を含み、残りは、実質的に1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤である。特徴的な態様は、アシルグリセロールが、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、又はそれらの混合物から選択され、脂質が、中性脂質、荷電脂質、又はそれらの混合物から選択される透過性増強脂質であり、水溶性有機溶媒が、極性溶媒及び極性非プロトン溶媒から選択される場合である。特に興味深いのは、アシルグリセロールが、モノ−デカノイルグリセロール及び/又はオクタノイルグリセロール等のモノアシルグリセロールであり、透過性増強脂質が、ノナン酸及びオレイン酸等の短鎖及び中鎖脂肪酸の混合物を含むか、又はビタミンE等の中性脂質を含み
、水溶性有機溶媒が、ジオール又はポリオール等の極性溶媒、又はN−メチルピロリドン等の極性非プロトン溶媒を含む場合である。
【0177】
ある実施形態では、粘膜送達組成物は、約0.1〜15重量%ペプチド錯体又はペプチド塩、約35〜45重量%の水溶性有機溶媒、及び約35〜55重量%のアシルグリセロールの有効な混合物を含み、残りは、実質的に非イオン性界面活性剤及び随意に1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤であり、水溶性有機溶媒は、ジオール及びポリオールの混合物を含み、アシルグリセロールは、モノアシルグリセロールである。特に興味深いのは、ジオールがグリセロールであり、ポリオールがプロピレングリコールであり、モノアシルグリセロールがモノ−デカノイル−グリセロール及び/又はオクタノイルグリセロールである組成物である。また、特に興味深いのは、非イオン性界面活性剤が、粘膜送達組成物の約10〜30重量%を構成し、非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチル化ポリオールを含む組成物である。興味深い特定のポリオキシエチル化ポリオールは、ポリオキシル35ヒマシ油(クレモフォアEL)である。
【0178】
他の実施形態では、粘膜送達組成物は、約0.1〜15重量%のペプチド錯体又はペプチド塩、約5〜25重量%の水溶性有機溶媒、及び約45〜55重量%のアシルグリセロールの有効な混合物を含み、残りは、実質的に非イオン性界面活性剤、透過性増強脂肪酸、及び随意に1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤であり、水溶性有機溶媒は、随意にポリエチレングリコールを含む極性非プロトン溶媒であり、アシルグリセロールは、モノアシルグリセロールである。特に興味深いのは、極性非プロトン溶媒が、N−メチルピロリドンであり、モノアシルグリセロールが、モノ−デカノイル−グリセロール及び/又はオクタノイルグリセロール等の中鎖モノアシルグリセロールであり、ポリエチレングリコールが、ヘキサエチレングリコール、PEG300、PEG400、及びそれらの混合物から選択されるポリエチレングリコールジオール等の短鎖ポリエチレングリコールジオールである組成物である。更に興味深いのは、非イオン性界面活性剤が、粘膜送達組成物の約10〜30重量%を構成し、非イオン性界面活性剤が、ポリオキシル35ヒマシ油(クレモフォアEL)等のポリオキシエチル化ポリオールを含む組成物である。
【0179】
また、興味深いのは、約0.1〜15重量%のペプチド錯体又はペプチド塩、約5〜25重量%の水溶性有機溶媒、約45〜55重量%のアシルグリセロール、約15〜25重量%の透過性増強脂肪酸、約10〜30重量%の非イオン性界面活性剤の有効な混合物を含み、残りが、随意に1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤であり、水溶性有機溶媒が、随意にポリエチレングリコールを含む極性非プロトン溶媒であり、アシルグリセロールが、モノアシルグリセロールであり、非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチル化ポリオールであり、透過性増強脂肪酸が、7〜19個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪酸である粘膜送達組成物である。
【0180】
特に興味深いのは、極性非プロトン溶媒が、N−メチルピロリドンであり、モノアシルグリセロールが、モノ−デカノイル−グリセロール及び/又はオクタノイルグリセロール等の中鎖モノアシルグリセロールであり、ポリエチレングリコールが、短鎖ポリエチレングリコールジオール(ヘキサエチレングリコール、PEG300、PEG400、及びそれらの混合物等)であり、非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチル化ポリオール(ポリオキシル35ヒマシ油(クレモフォアEL)等)を含み、透過性増強脂肪酸が、カプリル酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、及びそれらの混合物から選択される飽和脂肪酸、及び/又はパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、アルファ−リノレン酸、及びそれらの混合物から選択される不飽和脂肪酸である組成物である。特徴的な態様は、透過性増強脂肪酸が、カプリル酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、及びそれらの混合物から選択される、7〜12個の炭素原子を有する飽和脂肪酸
である組成物である。特定の実施形態は、透過性増強脂肪酸がノナン酸である組成物である。
【0181】
組成物の有益性を最大化するために、本開示のある実施形態に特に好ましい混合物が存在する。例えば、水溶性有機溶媒が主にアシルグリセロールで構成されている場合、特徴的な組成物は、モノ−デカノイル−グリセロール及び/又はオクタノイルグリセロール等のモノアシルグリセロール、非イオン性及びオレイン酸等の7〜21又は7〜19個の炭素原子を有する飽和又は不飽和透過性増強脂肪酸の混合物、及びN−メチル−2−ピロリドン等の極性非プロトン溶媒の組み合わせである非水性疎水性媒体を含む。水溶性有機溶媒が、主に湿潤剤で構成されている場合、特徴的な組成物は、グリセロール、プロピレングリコール、モノ−デカノイル−グリセロール及び/又はオクタノイルグリセロール等のモノアシルグリセロール、ポリオキシエチル化35ヒマシ油(クレモフォアEL)等のポリエトキシ化ポリオール、及び随意にヘキサエチレングリコール、PEG300又はPEG400等の短鎖PEGジオールの組み合わせである非水性疎水性媒体を含む。水溶性有機溶剤が、主に極性非プロトン溶媒で構成されている場合、特徴的な組成物は、N−メチル−2−ピロリドン、モノ−デカノイル−グリセロール及び/又はオクタノイルグリセロール等のモノアシルグリセロール、ポリオキシエチル化35ヒマシ油(クレモフォアEL)等のポリエトキシ化ポリオール、ノナン酸等の中鎖飽和脂肪酸、及び随意にヘキサエチレングリコール、PEG300又はPEG400等の短鎖PEGジオールの組み合わせである非水性疎水性媒体を含む。更に、例として、特徴的な態様は、上記の製剤中のペプチド活性剤が、ヒトインスリン、エキセンディン−4、又はリラグルチド(又はそれらの薬学的に許容される類似体/誘導体)であり、組成物が、N−アセチル−メチオニン等の酸化防止剤及び好ましくは緩衝液を更に含む場合である。
【0182】
本発明の組成物に使用される好ましい有機溶媒は、ポリオールである。好ましいポリオールは、プロピレングリコール及びグリセロール又はこの2つの混合物である。実際、プロピレングリコール及びグリセロールのLogPは、両方とも負であり、水の範囲付近であり、したがって好ましい水の代替物である。本発明の媒体の更なる成分の付加は、驚くべきことに、ペプチド可溶化の増強、優れた安定化、及び粘膜による送達の向上を可能にし、前記更なる成分は、モノアシルグリセロール、及び随意に脂肪酸脂質、及び随意に最終の正のLogPが約1.5以上、好ましくは2を超える非イオン性界面活性剤混合物を含むか又はからなる。したがって、ポリオールの追加及び媒体の更なる成分の付加は、好ましくはその後達成される。実施例セクションに記載の製剤1も参照されたい。
【0183】
これら組成物の有益性を最大化するために、安定的に水和されたペプチド活性剤は、(i)18−クラウン−6及びそのオキソクラウン類似体/誘導体から選択されるクラウン化合物、及び(ii)サリチル酸、酢酸、ホスファート、ナトリウム、カリウム、N−アセチル−リジン−アミド、N−アセチル−アルギニン−アミド、及びそれらの混合物から選択される対イオンと錯体化され、組成物のpHは、ペプチド活性剤の等電点から離れており、より詳しくは組成物は緩衝液を含む。サリチル酸及び酢酸は、多くの実施形態に特に興味深い。これら混合物を構成する各成分のレベルは、上記に及び下記の実験セクションに詳細に記述されており、製剤者が求める有益性に部分的に依存し、したがって1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤を含むことも有益である場合がある。
【0184】
上述の主題組成物は、直接使用してもよく、又は主題方法で使用される粘膜投与用の他の剤形に適合させてもよい。したがって、組成物は、様々な製品形態で及び、又は包装送達オプションで投薬することができる。本開示の組成物は、潜在的な副作用を最小限に抑えつつ、活性の向上を提供する。例えば、本開示の組成物の有益性を活用するためには、安定的に水和されたペプチド活性剤は、典型的にはクラウン化合物及び/又は対イオンとの錯体中に存在するが、遊離型の安定的に水和されたペプチド活性剤も、本開示に有用で
ある。その形態に関わらず、本開示の粘膜送達組成物は、本質的に非凝集及び非酸化形態の安定的に水和されたペプチド活性剤を含有する。
【0185】
別の考慮すべきことは、目的の特定の非水性疎水性媒体が、上述の組成物の成分の選択に基づき、周囲温度又は室温で、通常は半固体、ゲル、又は液体であるということである。したがって、本開示のある実施形態に特に好ましいこれら成分の混合物が存在する。例えば、アシルグリセロール、脂肪酸、及び水溶性有機溶媒の混合物で構成される、異なる融点を有する非水性疎水性媒体を含む組成物が提供される。そのため、粘膜送達組成物は、液体、ゲル、又は哺乳動物の口で溶解するように設計された固形の剤形として容易に提供することができる。
【0186】
例えば、特に興味深い非水性疎水性媒体は、約8重量%のNMP、約50重量%のモノ−デカノイルグリセロール、約20重量%のノナン酸、及び約15重量%のオレイン酸を含む。この混合物は、19〜20℃で固体であり、38〜40℃で明らかに液体であるが、25〜30℃で柔らかいか又は融解し始める。この組成物の固形製剤は、冷却板又は型に接触させることにより製作することができ、そこでは液体を冷却板に良好に配置して凝固させ、丸剤構造を形成させる。哺乳動物の口に置かれると、それは約1分で融解する。しかしながら、25℃で固体であるが、約35〜40℃で融解し始める固形製剤を調製するためには、モノ−ドデカノールグリセロールの割合を増加させるように製剤を調整して(融解温度を約2〜3℃増加させるには、10〜15%以上)、製剤の融解温度を増加させることができる。また、ノナン酸は液体であるが、デカン酸は室温で固体であり、オレイン酸は室温で液体、4℃で固体であるため、25℃で固体であるが、約35〜40℃で融解し始める固形製剤を調製するためには、脂肪酸の長さを増加させて、例えば、デカン酸を追加するか又はノナン酸をデカン酸に置換して、約35℃〜40℃の融点を有する粘膜送達組成物を形成することができる。したがって、非水性疎水性媒体の製剤は、本開示の安定的に水和されたペプチド錯体と組み合わせて使用される場合、剤形設計の点で大きな自由度が得られる。
【0187】
また上述のように、ある実施形態では、粘膜送達組成物は、1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤を含んでいてもよい医薬用及び/又は診断用組成物であり、ただしそのような賦形剤は、ペプチド錯体の維持に適合する。薬学的に及び/又は診断学的に許容される賦形剤は、当業者に周知であり、容易に入手可能である。賦形剤の選択は、特定の組成物により、並びに組成物を投与するために使用される特定の方法により、部分的に決定されるだろう。したがって、本開示の医薬用及び/又は診断用組成物の多種多様の好適な製剤が存在する。
【0188】
例示として、非水性疎水性媒体と混合されたペプチド錯体又はペプチド塩は、単独で(つまり、医薬用及び/又は診断用組成物の100重量%)、又は必要に応じて従来の薬学的に及び/又は診断学的に許容される担体及び賦形剤と混合して使用することができ、液剤、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、及びウエハ等の形態で使用することができる。そのような医薬組成物は、ある実施形態では、剤形及び目的の最終使用に応じて、最大約99.975重量%の非水性疎水性媒体と混合されたペプチド錯体を含有する。例えば、幾つかの実施形態では、医薬用及び/又は診断用組成物は、一般的に、所与の1単位容量当たり、約0.001〜10%の安定的に水和されたペプチド活性剤、典型的には約0.05%〜5%の安定的に水和されたペプチド活性剤、通常は約0.01〜3%の安定的に水和されたペプチド活性剤、及びより一般的には約0.1%〜2%の安定的に水和されたペプチド活性剤を含有するだろう。したがって、本開示の非水性疎水性媒体と混合されたペプチド錯体は、医薬組成物の約60%〜約99.975%、通常は70%〜約99%、及び最も多くの場合は約85重量%〜約98重量%を構成するだろう。
【0189】
医薬用及び/又は診断用組成物は、単独で、又は頬側膜及び/又は舌下膜のような口腔粘膜等の標的粘膜と薬物移動関係性にあるペプチド製剤を維持する薬物送達系の一部として投与することができる。そのため、ペプチド製剤は、例えば、以下の米国特許に記載されているような、液体、ゲル、クリーム、泡、軟膏、又は半固体等の、形態が自由なものであってもよく、又は噴霧、錠剤、貼付剤、及びトローチ剤等の形状が定まっている物理的形態のデバイスを含んでいてもよい:米国特許第4,226,848号;第4,250,163号;第4,292,299号;第4,517,173号;第4,552,751号;第4,572,832号;第4,615,697号;第4,713,243号;第4,900,554号;第4,915,948号;第5,047,244号;第5,081,157号;第5,081,158号;第5,137,729号;第5,192,802号;第5,298,258号;第5,314,915号;第5,458,879号;第5,462,749号;第5,578,315号;第5,624,677号;第5,750,134号;第5,750,136号;第5,766,620号;第5,780,045号;第5,800,832号;第5,827,525号;第5,849,322号;第5,855,908号;第5,861,174号;第5,863,555号;第5,869,082号;第5,888,534号;第5,908,637号;第5,955,097号;第5,955,098号;第6,103,226号;第6,103,266号;第6,110,486号;第6,117,446号;及び第6,159,498号、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0190】
興味深い実施形態では、本開示の医薬用及び/又は診断用組成物は、この状況では、賦形剤としての他の活性剤と組み合わせて使用することもでき、これには、ペプチド活性を非ペプチド活性剤に組み込むこと、又は2つ以上のペプチド活性剤等を同じ組成物中に組み込むことが含まれる。
【0191】
また、本開示の医薬用及び/又は診断用組成物は、口腔粘膜、気道表面、及び腸等を含む粘膜表面が関与する特定の投与経路に、より有益な使用を見出すことができる。例えば、ある実施形態では、口腔粘膜送達用の医薬組成物、特に頬側及び/又は舌下送達用の医薬組成物が特に興味深い。したがって、口腔粘膜送達媒体中の安定的に水和されたペプチド活性剤を含む本開示の医薬用及び/又は診断用組成物が、特に興味深い。
【0192】
当業者であれば、対象体又は宿主、例えばその必要性のある患者に、本開示の製剤を投与するための様々な好適な方法が利用可能であり、特定の製剤を投与するために複数の経路を使用することができるが、特定の経路は、別の経路よりも、より速効性で、より有効な反応を提供することができる(例えば、頬側スプレー対舌下ゲル)ことを理解するだろう。したがって、医薬用及び/又は診断用組成物は、随意に、他の薬学的に及び/又は診断学的に許容される成分、そのような緩衝剤、界面活性剤、酸化防止剤、静菌剤、粘度調整剤、懸濁化剤、可溶化剤、安定化剤、及び保存剤等を含有していてもよい。これら成分の各々は、当技術分野で周知である。例えば、米国特許第6,193,997号;第6,214,375号;第6,221,378号;第6,231,882号;第6,271,200号;第6,290,987号;第6,294,153号;第6,312,665号;第6,315,984号;第6,350,432号;第6,350,458号;第6,375,975号;第6,432,383号;第6,436,367号;第6,451,286号;第7,070,799号;第7,087,215号;第7,115,561号;及び第7,255,102号を参照されたい。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。本開示の製剤で使用するに好適な他の成分は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995に見出すことができる。
【0193】
製剤は、アンプル及びバイアル、噴霧容器、及び錠剤等の単位用量又は多用量密閉容器
に提供してもよく、又は使用直前に好適な無菌液体賦形剤を添加するだけでよいフリーズドライされた(凍結乾燥された)状態で保管してもよい。即時調合溶媒及び懸濁剤は、以前に記述されている種類の無菌散剤、果粒剤、及び錠剤から調製することができる。例えば、半固形剤、ゲル剤、シロップ剤、エリキシル剤、錠剤、及び懸濁剤等の経口投与用の単位剤形が提供されてもよく、各容量単位、例えば、茶さじ量、食さじ量、又は錠剤は、粘膜送達媒体中にペプチド活性剤を含有する所定量の組成物を含有する。
【0194】
用語「単位剤形」は、本明細書で使用される場合、ヒト及び動物対象体用の単一用量として好適な物理的に個別の単位を指し、各単位は、薬学的に許容される希釈剤、担体、又は媒体と共に所望の効果を生じさせるのに十分な量の計算された所定量の本開示の化合物を含有する。本開示の新規単位剤形の仕様は、使用される特定の化合物、及び達成しようとする効果、及び宿主中の各化合物に関する薬物力学に依存する。
【0195】
当業者であれば、用量レベルは、特定の化合物及び送達媒体の性質等に応じて変動する場合があることを容易に認識するだろう。所与の化合物に好適な用量は、様々な手段により当業者により容易に決定可能である。
【0196】
本開示の状況で動物、特にヒトに投与される用量は、合理的な時間枠にわたって動物中で予防的又は治療的効果を引き起こすのに十分であるべきである。当業者であれば、用量は、使用される特定の化合物の強さ、動物の状態、及び動物の体重、並びに疾病の重症度及び疾患の病期を含む様々な要因に依存することになることを認識するだろう。また、用量のサイズは、特定の化合物の投与に伴う場合がある任意の有害副作用の存在、性質、及び程度により決定されるだろう。好適な用量及び投与計画は、所望の応答を引き起こすことが知られている作用剤との比較により決定することができる。
【0197】
ある実施形態では、粘膜送達組成物は、頬側、舌下、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される剤形として構成される。
【0198】
応用
主題方法は、様々な応用に使用が見出される。例には、試薬、診断薬、及び目的の宿主を治療するための医薬品が含まれる。ある実施形態では、治療の方法は、ペプチド活性剤により治療可能な疾患又は状態を罹患している宿主を治療するため等、本開示の組成物をその必要性のある宿主の粘膜に投与することを伴う。主題方法の一態様は、有効量の組成物を投与して、有効量のペプチド活性剤を宿主の血流に送達することである。特徴的な実施形態では、粘膜送達組成物は、口腔粘膜送達組成物であり、粘膜は、口腔粘膜である。
【0199】
また、有効量のペプチド活性剤をその必要性のある宿主に粘膜送達する方法であって、有効量の本開示の粘膜送達組成物及び/又はペプチド錯体を宿主の粘膜に投与することを含み、投与が、有効量のペプチド活性剤を宿主の血流に送達する方法が提供される。ある実施形態では、粘膜は、頬側、舌下、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される口腔粘膜等の口腔粘膜である。特に興味深いのは、組成物の舌下投与が、胸膜腔内(pl)投与と比べて、約10%より大きな、好ましくは約15%より大きな、及びより好ましくは約20%以上のペプチド活性剤の薬理学的生物学的利用能を結果としてもたらす場合である。
【0200】
上述のように、ペプチド活性剤は、一般的に、主題製剤中の粘膜送達が可能である作用剤である。ある応用では、この方法は、ペプチド活性剤に関連する少なくとも1つの細胞機能を調節する方法である。この点で、主題方法及び組成物は、ペプチド活性剤を使用して治療可能な疾患又は障害を治療する場合等の、多数のペプチド活性剤の既知応用に使用が見出される。本開示の主題組成物の使用は、例えば、注射を必要とせずに、効果が徐々
に(例えば、胃腸粘膜送達)又は迅速に(例えば、口腔粘膜送達)開始されることが望まれる疾患及び障害を治療するために、特に有用である。
【0201】
そのため、主題方法及び組成物は、所与のペプチド活性剤の投与が適用される治療応用に特定の使用が見出される。多数の実施形態では、ペプチド活性剤は、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、グルカゴン様ペプチド等のインクレチン模倣体ペプチド等のペプチドホルモンである。代表的な治療応用は、本開示の組成物を使用する糖尿病、肥満、及び関連状態の治療であり、ペプチド活性剤は、例えばインスリン、及び/又はエキセンディン−4若しくはリラグルチド等のインクレチン模倣体ペプチドである。
【0202】
「治療」とは、宿主を苦しめる状態に関連する徴候の少なくとも寛解が達成されることを意味し、寛解は広い意味で使用され、治療されている状態に関連するパラメーター、例えば徴候の大きさの少なくとも低減を指す。そのため、治療は、宿主が、もはやその状態又はその状態を特徴付ける少なくとも徴候を罹患しないように、病態又はそれに伴う少なくとも徴候を完全に抑制し、例えば発生を防止するか又は停止、例えば消失させる状況も含む。
【0203】
目的の特定の応用は、本開示の粘膜送達媒体組成物中のペプチド活性剤、特にインスリン、エキセンディン−4、グルカゴン様ペプチド1、リラグルチド、及びそれらの類似体/誘導体を使用して、宿主の血糖レベルを減少させることである。関連実施形態では、状態は、II型糖尿病である。目的の別の特定の応用は、本開示の粘膜送達媒体組成物中のペプチド活性剤、特にエキセンディン−4、リラグルチド、及びそれらの類似体/誘導体を使用して、宿主の体重を低減させることである。したがって、ある実施形態では、インスリン、エキセンディン−4、リラグルチド、グルカゴン様ペプチド1、及びそれらの類似体/誘導体から選択されるペプチド活性剤を含む有効量の本開示の医薬品で、その必要性がある宿主を治療するための方法が提供される。
【0204】
血糖レベルの低減は、高血糖レベルの上昇に起因する高血糖症の発症可能性の予防、緩和、又は低減を特徴とする。体重の低減は、高血糖レベル、胃内容排出、及び食物摂取量の上昇の1つ又は複数に起因する肥満又は体重増加の発症可能性の予防、緩和、又は低減を特徴とする。これには、例えば、本開示の粘膜送達媒体中の有効量のGLP活性剤で、その必要性がある宿主を治療して、宿主の血糖レベルを低減、胃内容排出を遅延、及び/又は食物摂取量を減少させることが含まれる。「GLP活性剤」とは、目的のエキセンディン−4、リラグルチド、及びそれらの薬学的に許容される類似体/誘導体である。
【0205】
例えば、高血糖症は、血糖レベルの測定による等、当技術分野で公知の標準的技術により容易に評価することができる。同様に、胃内容排出、食物摂取量の減少、及び宿主の体重は、容易に決定することができる。したがって、GLP活性薬剤による治療効果は、これらの試験系のいずれか又は全てを使用して容易に決定することができる。
【0206】
様々な宿主(又は対象体)が、主題方法により治療可能である。一般的に、そのような宿主は、「哺乳動物」又は「哺乳類」であり、これらの用語は、肉食目(例えば、イヌ及びネコ)、げっ歯目(例えば、マウス、モルモット、及びラット)、及び霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、及びサル)を含む哺乳綱内にある生物を記述するために広く使用される。多数の実施形態では、対象体は、ヒトであろう。
【0207】
ある実施形態では、宿主は、診断が決定されており、したがって活性剤の投与を必要とする対象体であろう。ある実施形態では、本方法は、ペプチド活性剤の投与により治療される疾患状態の存在について、対象体を診断することを含んでいてもよい。
【0208】
上記に示されているように、本開示の状況で動物、特にヒトに投与される用量は、合理的な時間枠にわたって動物中で予防的又は治療的効果を引き起こすのに十分であるべきである。当業者であれば、用量は、使用される特定のペプチド活性剤の強さ、ペプチド活性剤の用量、ペプチド活性剤の投薬計画、動物の状態、及び動物の体重、並びに疾病の重症度及び疾患の病期を含む様々な要因に依存することになると認識するだろう。
【0209】
また、用量のサイズは、特定のペプチド活性剤の投与に伴う場合がある任意の有害副作用の存在、性質、及び程度により決定されるだろう。これは、一般的に、ペプチド活性剤が適用される状態を治療するための用量及び投薬特性によるか、及び/又は日常的な方法により経験的に決定されるだろう。
【0210】
本開示の化合物による幾つかの個体の治療では、標準的療法と併用した高用量投薬計画を使用することが望ましい場合がある。例えば、エキセンディン−4及びリラグルチドは、メトホルミン、スルホニル尿素、又はチアゾリジンジオンと組み合わせて、並びにII型糖尿病の血糖レベルを管理する標準的インスリン療法と併用して使用することができる。そのような治療計画は、当業者に周知である。
【0211】
特徴的な実施形態は、本開示の口腔粘膜送達組成物である粘膜送達組成物の使用であり、口腔粘膜送達組成物は、その必要性のある宿主を治療するために、例えば、これら化合物について上述された1つ又は複数の状態を治療するために、インスリン、エキセンディン−4、リラグルチド、グルカゴン様ペプチド1、及びそれらの類似体/誘導体から選択されるペプチド活性剤を含む。
【0212】
主題方法及び組成物が使用を見出す特定の応用には、以下の米国特許に記載のものが含まれる:米国特許第5,118,666号;第5,120,712号;第5,187,154号;第5,264,372号;第5,376;637号;第5,424,286号;第5,512,549号;第5,545,618号;第5,552,520号;第5,574,008号;第5,614,492号;第5,631,224号;第5,686,511号;第5,846,937号;第5,958,909号;第6,162,907号;第6,191,102号;第6,288,343号;第6,284,727号;第6,358,924号;第6,448,045号;第6,458,924号;第6,506,724号;第6,528,486号;第6,703,359号;第6,706,689号;第6,723,530号;第6,767,887号;第6,828,303号;第6,849,708号;第6,852,690号;第6,858,576号;第6,872,700号;第6,884,585号;第6,899,883号;第6,902,744号;第6,911,324号;第6,924,264号;第6,956,026号;第6,982,248号;第6,989,148号;第6,989,366号;第7,022,674号;第7,056,734号;第7,056,887号;第7,078,375号;第7,084,243号;第7,115,569号;第7,119,168号;第7,138,375号;第7,138,486号;第7,153,825号;第7,157,555号;第7,164,005号;第7,220,721号;第7,223,725号;第7,226,990号;第7,259,234号;第7,273,850号;第7,297,761号;第7,307,148号;これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0213】
キット及び系
また、本開示の1つ又は複数の組成物、並びに上述の主題方法の実施に使用が見出されるものを含むキット及び系が提供される。1つの実施形態では、キットは、有効量の粘膜送達組成物、並びに/又は混合時に粘膜送達組成物を形成することが可能な有効量でキット中に、別々に及び/若しくは種々の組み合わせで、各々個々に提供されるその成分を含
む。例えば、1つの実施形態では、キットは、(i)クラウン化合物及び対イオンと錯体化された安定的に水和されたペプチド活性剤を含む第1の組成物、及び(ii)非水性疎水性媒体を含む第2の組成物を含む。別の実施形態では、キットは、(i)対イオン及び非水性疎水性媒体と錯体化された安定的に水和されたペプチド活性剤を含む第1の組成物、及び(ii)クラウン化合物を含む第2の組成物を含む。他の有効な組み合わせが可能である。
【0214】
主題方法を実施するためのキット及び系は、1つ又は複数の医薬用及び/又は診断用製剤を含んでいてもよい。そのため、ある実施形態では、キットは、1つ又は複数の単位用量として存在する単一の医薬用及び/又は診断用組成物を含んでいてもよく、組成物は、粘膜送達組成物に事前に配合されたペプチド活性剤を含む。他の実施形態では、キットは、複数の別々の医薬用及び/又は診断用組成物を含んでいてもよく、各々は、クラウン及び対イオンとの錯体中の安定的に水和されたペプチド活性剤、又は非水性疎水性組成物のいずれか、及びその任意の有効な変形体を含有する。特定の実施形態では、本開示のキット及び系に使用される、又は本開示のキット及び系により形成可能な粘膜送達組成物は、口腔粘膜送達組成物である。
【0215】
上記の成分に加えて、主題キットは、主題方法を実施するための説明書を更に含んでいてもよい。これら説明書は、様々な形態で主題キットに存在してもよく、それらの1つ又は複数は、キット中に存在していてもよい。これら説明書が存在していてもよい1つの形態は、好適な媒体又は基材、例えば、情報が印刷される1枚又は複数枚の紙に印刷された情報として、キットの容器に、添付文書等に存在してもよい。更に別の手段は、情報が記録されたコンピューター読取可能な媒体、例えば、ディスク、CD等であろう。存在してもよい更に別の手段は、インターネットを通じて遠隔地点で情報にアクセスするために使用することができるウェブサイトアドレスである。いかなる便利な手段が、キットに存在してもよい。例えば、1つの実施形態によるキットは、第1の構成要素(a)本開示の医薬用及び/又は診断用組成物を使用するための説明書、及び第2の構成要素(b)本開示の医薬用及び/又は診断用組成物を含む。
【0216】
特に興味深いキットは、本開示の医薬用及び/又は診断用組成物を含み、宿主の血糖レベルを低減、胃内容排出を遅延、及び/又は食物摂取量を低減させるために等、本開示の主題方法の実施に好適なものである
【0217】
本明細書で使用される用語「系」は、主題方法を実施するために一緒にされた、単一の又は別々の組成物で存在する本開示のペプチド製剤の成分の集合体を指す。例えば、本開示により宿主に投与するための、別々に得られたペプチド又は粘膜送達媒体若しくはその成分と一緒にされ及び混合されたペプチドの形態は、本開示による系である。
【0218】
粘膜によりペプチドを直接送達するための主題方法及び組成物は、他の投与経路に対して利点を提供する。上記に示したように、目的の特定経路は、口腔粘膜送達による。例えば、口腔粘膜により投与された薬物は、迅速な作用開始を示し、治療的血漿レベルを提供し、肝代謝の初回通過効果を回避し、苛酷なGl環境への薬物の曝露を回避する。追加の利点には、粘膜部位への接近が容易であり、そのため薬物を容易に塗布、局在化、及び除去することができることが含まれる。更に、これら膜を通して大型分子を持続的に送達する能力は、良好である。
【0219】
加えて、一般的に口腔粘膜は、優れた接近性、平滑筋の広がり、及び比較的運動不能の粘膜を有し、したがって保持性剤形の投与に好適である。内頚静脈による体循環への直接的接近は、薬物の肝臓初回通過代謝の迂回を可能にし、高い生物学的利用能に結び付く。他の利点には、酵素活性が低いこと、粘膜の損傷又は刺激が軽度であり可逆的である薬物
賦形剤に適合すること、投与が無痛であること、休薬が容易であること、透過促進剤/酵素阻害剤又はpH変更剤を製剤に含む能力があること、及び局所作用又は全身作用用の多方向性又は一方向性放出系の設計に多用途性があることが含まれる。したがって、口腔を内層する粘膜は、本開示に従ってペプチド等の大型治療用化合物を送達するための重要な局所経路である。
【0220】
以下の例は、本開示の代表的なペプチド活性剤の有効な口腔粘膜投与を例示しており、血液に対して一定の予測可能な薬物濃度を含む、活性ペプチドの所望の生物学的効果を例示している。したがって、口腔粘膜又は他の粘膜送達経路による本開示によるこれら及び他のペプチドの投与は、利便性及び送達速度、並びにコンプライアンス問題及び注射による送達に伴う副作用の低減又は解消を含む、注射及び他の投与経路に対するある利点を提供する。
【0221】
したがって、以下の例は、本開示を更に例示するものであり、いかなる点でもその範囲を制限すると解釈されるべきでない。
【0222】
実験結果
I.粘膜送達製剤を調製するための基本手順
ステップ1:脱塩による代替的なペプチド溶解度の向上
ペプチドを、随意に、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)(溶媒は、1%酢酸の存在下の水及びアセトニトリルだった)により脱塩し、凍結乾燥した(つまり、室温未満でフリーズドライした)。分子は、分子のpIに応じて、凍結乾燥された形態そのままで、又は必要に応じて水若しくは水/アセトニトリル混合物に再溶解若しくは懸濁された形態のいずれかで使用する。その後、得られた溶液又は懸濁液のpHを、pHが分子のpIと著しく異なるように4〜7.5の範囲の所望の値にもっていき、その後の対イオン交換及び/又は錯体化反応に使用される種々の溶媒中での溶解度を保証した。例えば、エキセンディン−4及びリラグルチド等のグルカゴン様ペプチドの場合、注意深く及び/又は徐々に塩基を添加することにより調製して、所望のpHを得た(例えば、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウム、Lys又はArg等のアミノ酸、及びNアセチル化及び/又はアミノ化型等の保護誘導体)。所望のpHに到達したら、得られた溶液又は懸濁液を、必要に応じて、0.45μmフィルターでろ過し、4〜7.5の範囲のこの所与のpHで凍結乾燥した。この処理は、種々の溶媒又は溶媒混合物(例えば、水/アセトニトリル混合物、メタノール又はエタノールとしての有機溶媒)における更なるペプチド溶解度に重要であることが見出された。
【0223】
また、マンニトール等の安定化賦形剤が、RP−HPLC用の溶媒及び/又はRP−HPLC後の水/アセトニトリル混合物中に含まれていてもよく、ただし賦形剤(複数可)は、混合物に溶解する量(典型的には0.1〜20%)で添加する。
【0224】
ステップ2:代替的な対イオン交換
代替的に、ペプチド対イオン(通常は、酢酸塩対イオン)を、サリチル酸等の酸性化合物、様々な置換又は非置換安息香酸誘導体、シュウ酸、スルホン酸塩、ラウリル硫酸塩等の硫酸塩、ジラウリルホスファチジルグリセロール(DLPG)等のホスファチジルグリセロール誘導体、リン酸、トリフルオロ酢酸、又は塩化物に置換した。この対イオン交換は、タンパク質/ペプチド溶解度及び/又はin vivo活性に影響を及ぼすことが見出された。
【0225】
例えば、ペプチド酢酸塩を、以下の処理によりサリチル酸塩に変換した。サリチル酸(138.12g/mol)を、ACN/H2O 50/50混合物に溶解して母溶液を得
た。この後者の溶液の一定容積(ペプチド/タンパク質の塩基性アミノ酸含有量に関して
、1対n当量の比率の一定量のサリチル酸を含有する)を、ACN/H2O 50/50
に溶解されたペプチド酢酸塩に添加した。幾つかの場合、ベータ−D−オクチルグルコシド(0.05%〜10%、より好ましくは0.1%〜5%)、マンニトール(製剤混合物中での終濃度が10〜20%)、及び/又はグリセロール(製剤混合物中での終濃度が1%)等の少量の非イオン性界面活性剤を混合物に添加した。得られた溶液を、遠心蒸発器/SpeedVacを使用して1時間乾燥/濃縮し(25℃〜40℃で、典型的には約35℃で)、その後、ACN/H2O 50/50を添加し、この溶液をSpeedVac
で(25℃〜40℃で、典型的には約35℃で)更に1時間乾燥/濃縮して、白色固形物としてペプチドサリチル酸塩を得た。
【0226】
ステップ3:ペプチド−クラウン化合物錯体の調製
ペプチド塩を、MeOH又はMeOH/H2O混合物(1〜15%の範囲の含水量)に
溶解し、MeOH又はMeOH/H2O混合物に溶解された適切な量の環状クラウン化合
物を添加した(ペプチド/タンパク質の塩基性アミノ酸に関して、1対n当量の比率の一定量のクラウン化合物を含有する)。得られた溶液を、SpeedVacで1時間乾燥/濃縮して(25℃〜40℃で、典型的には約35℃で)、ペプチド塩−クラウン化合物錯体を含む油状残渣を生成した。或いは、幾つかの場合、クラウン化合物の有機溶媒(DMSO、NMP、又はプロピレングリコール等)を、乾燥ペプチド塩に添加し、その結果生じた混合物を、製剤媒体の添加前に約10〜15分間インキュベートした。
【0227】
ステップ4:最終製剤の調製
粘性の非水性疎水性製剤媒体を、ペプチド−クラウン化合物錯体に添加し、その結果生じた混合物をボルテックスし、その後40℃で10分間加熱した。その後、得られた透明な調製物を、+4℃で保管した。
【0228】
製剤1:製剤媒体は、デカノイルグリセロール(130mg)に、NMP(20μl)、オレイン酸(40μl)を添加し、その後ノナン酸(50μl)を添加することにより調製した。得られた混合物を、水浴にて40〜45℃に加熱して、完全に可溶化した。酸化に弱い残基を含むタンパク質/ペプチド配列の場合には、100μlの製剤混合物につき0.25mgのN−アセチル−メチオニン(Ac−Met−OH)(191.25g/mol)を酸化防止剤として添加してもよく、混合物を、透明な溶液が得られるまで、水浴にて40〜45℃に加熱した。混合物は、3.0〜5.0のpHを有し(典型的には、約3.5〜4.0、酸性であるAc−Met−OH酸化防止剤の添加に依存する)、ペプチドのpIに応じて酸又は塩基を添加することにより調整及び/又は緩衝化することができ、それをペプチド−クラウン錯体に添加した。
【0229】
特定の場合、製剤1aでは、NMPを、14μlのプロピレン−グリコール又はグリセロール、又はこの2つと有機溶媒中にその場で形成されたペプチド錯体の混合物で置換することができる。その後、オレイン酸(40μl)、ノナン酸(50μl)、及びデカノイルグリセロール(130mg)を含む媒体を、ポリオール有機混合物中のペプチド錯体に添加する。
【0230】
製剤2:製剤媒体は、デカノイルグリセロール(130mg)に、NMP(25μl)、クレモフォアEL(35μl)を添加し、その後ノナン酸(50μl)を添加することにより調製した。得られた混合物を、水浴にて40〜45℃に加熱して、完全に可溶化した。酸化に弱い残基を含むペプチド配列の場合には、その後、100μlの製剤混合物につき0.25mgのAc−Met−OH(191.25g/mol)を酸化防止剤として添加して、混合物を、透明な溶液が得られるまで、水浴にて40〜45℃に加熱した。ペプチドを含んでいない混合物は、4.0〜6.0のpHを有し、ペプチドのpIに応じて酸又は塩基を添加することにより調整及び/又は緩衝化することができ、それを、ペプチ
ド−クラウン錯体に添加した。
【0231】
製剤3:製剤媒体を、デカノイルグリセロール(130mg)に、オクタノイルグリセロール(50mg)、NMP(25μl)、及びビタミンE(50μl)を添加することにより調製した。得られた混合物を、水浴にて40〜45℃に加熱して、完全に可溶化した。酸化に弱い残基を含むペプチド配列の場合には、その後、100μlの製剤混合物につき0.25mgのN−アセチル−メチオニン−アミド(Ac−Met−NH2)(19
0.27g/mol)を酸化防止剤として添加し、混合物を、透明な溶液が得られるまで、水浴にて40〜45℃に加熱した。ペプチドを含んでいない混合物は、5.5〜7.0の推定pHを有し、ペプチドのpIに応じて酸又は塩基を添加することにより調整及び/又は緩衝化することができ、それを、ペプチド−クラウン錯体に添加した。
【0232】
製剤4:製剤媒体は、デカノイルグリセロール(110mg)に、span20(60μl)及びオレイン酸(50μl)を添加することにより調製した。得られた混合物を、水浴にて約45℃に加熱して、完全に可溶化した。この場合、クラウン化合物を含有する14μlのプロピレングリコールにペプチドを溶解することにより、ペプチド錯体を得た。室温で15mn後、製剤媒体を、プロピレングリコール中のペプチド−クラウン錯体に添加した。
【0233】
製剤5:製剤媒体は、span20(60μl)、モノリノレイン(リノール酸のモノアシルグリセロール)(50μl)、及びデカノイルグリセロール(110mg)の混合物を添加することにより調製した。得られた混合物を、水浴にて約45℃に加熱して、完全に可溶化した。この場合、クラウン化合物を含有する14μlのプロピレングリコールにペプチドを溶解することにより、ペプチド錯体を得た。室温で15分後、製剤媒体を、プロピレングリコール中のペプチド−クラウン錯体に添加した。
【0234】
上記の非水性疎水性媒体(つまり、製剤1〜5)の場合、1つ又は複数の成分を除去してもよく、又は他の製剤用の類似化合物と取替えてもよい。例えば、ビオチン、ビオチンエチルエステル、又はビタミンC等の他の酸化防止剤を使用することができる。
【0235】
II.試験物質
副甲状腺ホルモン、エキセンディン−4、リラグルチド、又はヒトインスリンを含有する粘膜送達製剤を、一般的に種々のクラウン化合物、対イオン、及び非水性疎水性媒体を使用して、溶解度、安定性、並びに/又はマウス及び/若しくはラットでの舌下粘膜送達についてスクリーニングした。代表的なクラウン化合物には、18−クラウン−6、オキソ−(18−クラウン−6)、オキソ−(18−クラウン−6)−ジエチルタルトラート、及びオキソ−(18−クラウン−6)−ジグリセロールタルトラートが含まれていた。代表的な対イオンには、TFA、酢酸塩、サリチル酸、DLPG、C1225OSO3H、
1429SO3H、及びC1837SO3Hが含まれていた。代表的な非水性疎水性媒体には、媒体製剤1、2、及び3が含まれていた。ペプチドは全て、血流中に異なる度合いで検出された。
【0236】
エキセンディン−4(約5.0の等電点計算値を有する)を、更なる詳細な研究用に選択し、研究は、別様の指定がない限り、実験セクションIに上述した手順及び製剤に従って実行した。例示的な研究を下記に報告する。
【0237】
III.代表的な粘膜送達製剤による動物研究
これらの研究で使用されるマウス又はラットは全て、各々個々の研究につき、同じ同腹子又は家族に由来し、年齢及び性が一致していた。手順は全て、標準的手続きに従って、承認されたプロトコール及びガイドラインにより実施した。マウス研究は、下記に詳述さ
れており、ラット研究を代表するものである。
【0238】
腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)を、一晩の断食(およそ16〜18時間)後に実施した。t=−40分の時点で、マウスに麻酔をかけた。t=−30分の時点で、試験物質又は生理食塩水対照を、舌下投与(SubL)又は腹腔内投与(IP)した。t=0分の時点で、IP keta−xyla 100μl+IPグルコースを投与した。実験中に必要な場合、150ulの追加の麻酔薬を投与した。麻酔をかけたマウスは、3〜5μlの容積の粘膜送達製剤媒体中の5〜10nmolのペプチド試験物質SubL、又は1nmolのペプチド対照IPのいずれかを受容した。
【0239】
処置後の種々の時点で血液試料を収集し、標準的手順に従ってグルコースオキシダーゼ法により、血糖レベルを決定した。動物は全て、血液収集の全体にわたって麻酔がかかったままだった。マウスの血漿グルコースの変化を使用して、生物活性量のペプチド試験物質の出現を示した。
【0240】
試験物質を4℃で保管し、その後投与前に37℃に温めた。データを分析し、別様の指定がない限り、平均±S.E.M.として報告した。
【0241】
対イオン
図1は、クラウン化合物として18−クラウン−6を有する媒体製剤1中の様々な対イオン(F1=酢酸対イオン;F2=DLPG対イオン;F3=サリチル酸対イオン)で構築されたエキセンディン−4について、マウスで得られた結果を示す。DLPG及びサリチル酸(SA)は、酢酸よりも酸性であることが留意される(DLPG pKa<2、SA pKa2.97、及び水中の酢酸 pKa4.76)。
【0242】
図1に示されているデータの場合、以下のプロトコールを使用した:
ステップA.エキセンディン−4塩の調製:
(i)酢酸塩:市販のByetta製剤(pH4.5)に各々3.6mgのエキセンディン−4を含有する2.4mlの6つの試料を混合及び凍結乾燥した。得られた物質を、1%酢酸の存在下の水及びアセトニトリル中で逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)にかけ、その後凍結乾燥した。凍結乾燥した物質を、SepPack C18カートリッジ(1%酢酸を含有する水アセトニトリル混合物を用いたペプチドの溶出)を使用して更に精製し、純粋なエキセンディン−4を得、それをそのまま使用するか、又は下記のステップA(ii)又はステップA(iii)で対イオン交換にかけた。
【0243】
(ii)DLPG(610g/mol、0.66mg):0.66mgのDLPG(ジラウリルホスファチジルグリセロール)を、100μlのACN/H2O 50/50に
溶解した。この溶液を、50μlのACN/H2O 50/50中の0.76mgエキセ
ンディン−4酢酸塩に添加し、その後それを、およそ35℃で1時間speedvacによる濃縮にかけた。その後、ACN/H2O 50/50の追加の等量を添加し、およそ
35℃で1時間speedvacにより乾燥した。
【0244】
(iii)サリチル酸(138.12g/mol、0.15mg):1.5mgのサリチル酸を、100μlのACN/H2O 50/50混合物に溶解して母溶液を得た。そ
の後、10μLのこの後者の溶液を、50μlのACN/H2O 50/50に溶解され
た0.76mgのエキセンディン−4酢酸塩に添加し、上記のようにおよそ35℃で1時間のspeedvacを2回行って、白色固形物としてエキセンディン−4サリチル酸塩を得た。
【0245】
ステップB.エキセンディン−4塩−18−クラウン−6錯体の調製:
ステップAからのエキセンディン−4塩をMeOH(50μl)に溶解し、100μlのMeOH中の10mgの18−クラウン−6を添加し、その後およそ35℃で1時間のspeedvacを行って、油状残渣を得た。およそ80μlの媒体製剤1を、ステップAからのエキセンディン−4−クラウン錯体に添加して、およそ90μlの製剤F1、F2、及びF3を得、それをボルテックスし、その後10分間40℃で加熱した。その後、得られた透明な調製物を、使用まで+4℃で保管した。動物研究の場合、製剤を37℃に温め、その後3μl(およそ6nmolのエキセンディン−4試験物質)のF1、F2、及びF3混合物を、マウスに舌下投与した。
【0246】
表1の投与された粘膜送達組成物(図1に示されたデータと共に):ペプチドに対して208化学量論当量のクラウン(つまり、1塩基性アミノ基当たりおよそ35個のクラウン分子)、ペプチドに対して6化学量論当量の対イオン(つまり、1塩基性アミノ基当たり1個の対イオン)、1対イオン当たり35個のクラウンの比率が結果としてもたらされる。
【0247】
【表1】

【0248】
図1に示されているように、サリチル酸対イオンが、最も良好な活性を示した。
【0249】
媒体pH及び組成物
図2は、非水性疎水性媒体及び組成物のpHの変更が、エキセンディン−4の舌下投与に与える効果を示す。図2 凡例:F4=MeOH100%中で形成され、およそ35℃で1時間speedvacを行い、その後製剤3に組み込んだ、酢酸塩対イオン及びオキソ−(18−クラウン−6)−ジエチルタルトラート(「ST5」)クラウン化合物を有するエキセンディン−4ペプチド。表2の投与された粘膜送達組成物(図2に示されたデータと共に):ペプチドに対して50化学量論当量のクラウン化合物(つまり、1塩基性アミノ基当たりおよそ8個のクラウン分子)、ペプチドに対して12化学量論当量の対イオン(つまり、1塩基性アミノ基当たり2個の対イオン)、1対イオン当たり4個のクラウンの比率が結果としてもたらされる。
【0250】
【表2】

【0251】
図2に示されている結果は、媒体製剤3中のエキセンディン−4ペプチド錯体が、製剤1等のより酸性の媒体に製剤化された場合と比較して、舌下送達の低減をその結果としてもたらされることを示し、後者も、ペプチドのpIから更に離れている。
【0252】
また、製剤1〜3並びにその他複数を比較する研究により、生分解性クラウン化合物オキソ−(18−クラウン−6)−ジエチルタルトラート及びサリチル酸対イオンを使用する場合、製剤1がエキセンディン−4に好適であり、胸膜腔内投与と比べて、同様の薬物動態及び約20%の薬理学的生物学的利用能を示すことが明らかになる。これらの研究に基づき、オキソ−(18−クラウン−6)−ジエチルタルトラート及びサリチル酸対イオンと錯体化され、媒体製剤1で製剤化されたエキセンディン−4を、より詳しく研究した。代表的な結果は、以下の実験に報告されている。
【0253】
1塩基性アミノ基当たりのクラウン化合物及び対イオンのモル当量
エキセンディン−4は、酸性条件下で、4つの第一級アミン(N末端に1つ、リジンに2つ、及びアルギニンに1つ)及び2つの第二級アミン(ヒスチジンに1つ、及びアルギニンに1つ)、合計6つのイオン化可能な塩基性アミノ基を含有する。エキセンディン−4のアミノ酸配列は以下の通りである:
HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS−NH2
【0254】
図3は、対イオン及びクラウン化合物(オキソ−(18−クラウン−6)ジエチルタルトラート)の化学量論当量の変更が、媒体製剤1での粘膜送達に及ぼす結果を示す。投与された粘膜送達組成物の概要は、表3に提供されている。表3 凡例:F1=ペプチドに対して24化学量論当量のクラウン(つまり、1塩基性アミノ基当たり4個のクラウン分子)、ペプチドに対して6化学量論当量の対イオン(つまり、1塩基性アミノ基当たり1個の対イオン)、1対イオン当たり4個のクラウンの比率が結果としてもたらされる。F2=ペプチドに対して12化学量論当量のクラウン(つまり、1塩基性アミノ基当たり2個のクラウン分子)、ペプチドに対して6化学量論当量の対イオン(つまり、1塩基性アミノ基当たり1個の対イオン)、1対イオン当たり2個のクラウンの比率が結果としてもたらされる。結果は、クラウン化合物及び対イオンが粘膜送達に与える効果を実証し、F2がより良好な性能を示す。
【0255】
【表3】

【0256】
含水量
図4は、含水量が、エキセンディン−4の粘膜送達に与える効果を示す。図4 凡例:F1=MeOH100%中で形成され、およそ35℃で1時間speedvacを行い、その後製剤1に組み込んだエキセンディン−4ペプチド錯体。F2=MeOH100%中で形成され、およそ35℃で1時間20分間speedvacを行い、その後製剤1に組み込んだエキセンディン−4ペプチド錯体。F3=MeOH5%中で形成され、およそ3
5℃で1時間speedvacを行い、その後製剤1に組み込んだエキセンディン−4ペプチド錯体。表4の投与された粘膜送達組成物(図4に示されたデータと共に):ペプチドに対して12化学量論当量のクラウン(つまり、1塩基性アミノ基当たりおよそ2個のクラウン分子)、ペプチドに対して6化学量論当量の対イオン(つまり、1塩基性アミノ基当たり1個の対イオン)、1対イオン当たり2個のクラウンの比率が結果としてもたらされる。
【0257】
【表4】

【0258】
データは、標準的又はより長時間の遠心蒸発により含水量を低減することが、混合メタノール水溶液中でのペプチド錯体形成と比較して、生物活性を低下させたことを示す。また、含水量の低減は、系のpH及び/又はペプチド活性剤のpIを変更する場合がある。複数の追加データセットにより、ペプチド及び/又はペプチド錯体が、ペプチドのpIとは異なるpH、典型的にはペプチドのpIから離れたpHを有する溶液又は懸濁液から乾燥される場合、有機溶媒及び非水性疎水性媒体中での溶解度の向上を含む活性に、ペプチドの含水量及び系のpH/pIが重要であるという知見と一致する同様の結果が明らかにされた。
【0259】
加えて、結果は、クラウン化合物、対イオン、対イオン及びペプチドのイオン化可能なアミノ基に対するクラウンの量及び比率、並びに非水性疎水性媒体の成分及びその量、特定の賦形及び酸化防止剤等の含有の選択を探究して、保管安定性及び剤形等の他の態様の中でも特に、ペプチドの粘膜送達を向上又は増強することができることを実証する。これらの知見の根本的な性質によると、組成物は、多数の異なるペプチド及び応用に容易に適合させることができることは明白である。
【0260】
先述の開示は、理解の明瞭化のために例示及び例により、ある程度詳細に記述されているが、本開示の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱せずに、ある変更及び改変がそれに行われてもよいことは、当業者であれば直ちに明白である。
【0261】
したがって、上記は、単に本開示の原理を例示するに過ぎない。当業者であれば、本明細書に明示的に記述又は示されていないが、本開示の原理を具現化し、その趣旨及び範囲内に含まれる種々の配置を考案することができるであるだろうと認識するだろう。更に、本明細書に記述された例及び条件的言語は全て、主に読者が、本発明者らにより技術の進歩に寄付された本開示及び概念の原理を理解する助けになるように意図されており、そのような具体的に記述された例及び条件に限定されることはないと解釈されるべきである。更に、本開示の原理、態様、及び実施形態、並びにその具体的な例を本明細書に記述する記載は全て、その構造的及び機能的均等物を両方とも包含ことが意図される。加えて、そ
のような均等物は、現行の公知の均等物、及び将来に開発される均等物、つまり構造に関わらず、同じ機能を行うように開発される任意の要素を両方とも含むことが意図される。したがって、本開示の範囲は、本明細書に表示及び記述されている例示的な実施形態に制限されるとは意図されていない。むしろ、本開示の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具現化される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド活性剤の等電点(pI)とは異なるpHの非水性疎水性媒体に可溶化されたクラウン化合物及び/又は対イオンと複合体化された有効量の安定的に水和された前記ペプチド活性剤を含む粘膜送達組成物。
【請求項2】
前記安定的に水和されたペプチド活性剤が、約1重量%〜約50重量%の含水量を有する、請求項1に記載の粘膜送達組成物。
【請求項3】
前記pHが、前記ペプチド活性剤のpIから約0.5〜約4pH単位、好ましくは前記ペプチド活性剤のpIから約1〜約2pH単位である、請求項1に記載の粘膜送達組成物。
【請求項4】
前記クラウン化合物及び/又は前記対イオンと複合体化された前記安定的に水和されたペプチド活性剤が、前記ペプチド活性剤のpIとは異なるpH、随意に前記ペプチド活性剤の等電点から離れたpHを有する溶液又は懸濁液からの乾燥ペプチドとして事前に形成されている、請求項1に記載の粘膜送達組成物。
【請求項5】
前記溶液又は懸濁液が、水性溶媒、有機溶媒、及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒として構成されている、請求項4に記載の粘膜送達組成物。
【請求項6】
前記有機溶媒が、アルコール又は極性非プロトン溶媒である、請求項5に記載の粘膜送達組成物。
【請求項7】
前記極性非プロトン溶媒が、アセトニトリルであり、前記アルコールが、メタノール及びエタノールからなる群から選択される、請求項6に記載の粘膜送達組成物。
【請求項8】
前記混合物が、約1%〜約20%、好ましくは約1%〜約10%の含水量を有する水性メタノール溶液又は懸濁液であるか、又は約30%〜約70%、好ましくは約40%〜約60%の含水量を有する水性アセトニトリル溶液又は懸濁液である、請求項5に記載の粘膜送達組成物。
【請求項9】
前記事前に形成された乾燥ペプチドが、保管安定的である、請求項4に記載の粘膜送達組成物。
【請求項10】
前記組成物が、保管安定的である、請求項1に記載の粘膜送達組成物。
【請求項11】
前記組成物を舌下投与した際の前記ペプチド活性剤が、胸膜腔内投与と比べて約10%より高い薬理学的生物学的利用能を有する、請求項1に記載の粘膜送達組成物。
【請求項12】
前記ペプチド活性剤が、1つ又は複数の陽イオン基を含み、前記クラウン化合物が、陽イオン結合性クラウン化合物であり、前記対イオンが、陰イオン性対イオンである、請求項1に記載の粘膜送達組成物。
【請求項13】
前記1つ又は複数の陽イオン基が、第一級アミン、第二級アミン、グアニジウム基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の粘膜送達組成物。
【請求項14】
前記陽イオン結合性クラウン化合物及び前記陰イオン性対イオンが、各々個々に、第一級アミン、第二級アミン、及び/又はグアニジウム基1つ当たり約0.5〜10化学量論当量で存在する、請求項13に記載の粘膜送達組成物。
【請求項15】
前記陽イオン結合性クラウン化合物が、第一級アミン、第二級アミン、及び/又はグアニジウム基1つ当たり約2〜4化学量論当量で存在する、請求項14に記載の粘膜送達組成物。
【請求項16】
前記陽イオン性対イオンが、第一級アミン、第二級アミン、及び/又はグアニジウム基1つ当たり約1〜2化学量論当量で存在する、請求項14に記載の粘膜送達組成物。
【請求項17】
前記陽イオン結合性クラウン化合物が、第一級アミン、第二級アミン、及び/又はグアニジウム基1つ当たり約2化学量論当量で存在し、前記陽イオン性対イオンが、第一級アミン、第二級アミン、及び/又はグアニジウム基1つ当たり約1化学量論当量で存在する、請求項14に記載の粘膜送達組成物。
【請求項18】
前記クラウン化合物が、生分解性結合を含む、請求項1に記載の粘膜送達組成物。
【請求項19】
前記生分解性結合が、エステル結合である、請求項18に記載の粘膜送達組成物。
【請求項20】
前記クラウン化合物が、オキソ−(18−クラウン−6)化合物及びその類似体/誘導体からなる群から選択される、請求項19に記載の粘膜送達組成物。
【請求項21】
前記クラウン化合物が、オキソ−(18−クラウン−6)、オキソ−(18−クラウン−6)−ジエチルタルトラート、及びオキソ−(18−クラウン−6)−ジグリセロールタルトラートからなる群から選択される、請求項20に記載の粘膜送達組成物。
【請求項22】
前記対イオンが、サリチル酸、酢酸、リン酸、酒石酸、N−アセチル−リジン−アミド、N−アセチル−アルギニン−アミド、安息香酸及びその類似体/誘導体、シュウ酸、スルホン酸塩、ラウリル硫酸塩等の硫酸塩、ジラウリルホスファチジルグリセロール等のホスファチジルグリセロール誘導体、リン酸、トリフルオロ酢酸、又は塩化物、並びにそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の粘膜送達組成物。
【請求項23】
前記組成物が、緩衝剤、保存剤、等張剤、及び酸化防止剤からなる群から選択される薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項1に記載の粘膜送達組成物。
【請求項24】
前記非水性疎水性媒体が、(i)前記クラウン化合物及び前記対イオンと錯体化された前記安定的に水和されたペプチド活性剤を可溶化し、(ii)前記ペプチド活性剤の粘膜送達を増強するのに有効な量で各々個々に存在する、少なくとも1つのアシルグリセロール、及び少なくとも1つの有機溶媒、及び/又は少なくとも1つの脂質を含む、請求項1に記載の粘膜送達組成物。
【請求項25】
前記非水性疎水性媒体が、少なくとも1つの有機溶媒を含む、請求項24に記載の粘膜送達組成物。
【請求項26】
前記少なくとも1つの有機溶媒が、水溶性有機溶媒である、請求項25に記載の粘膜送達組成物。
【請求項27】
前記非水性疎水性媒体が、酸性であり、少なくとも1つのアシルグリセロールが、中鎖アシルグリセロールであり、少なくとも1つの脂質が、短鎖脂肪酸及び/又は中鎖脂肪酸を含み、少なくとも1つの水溶性有機溶媒が、極性非プロトン溶媒である、請求項26に記載の粘膜送達組成物。
【請求項28】
前記中鎖アシルグリセロールが、モノ−デカノイルグリセロールであり、前記短鎖脂肪酸が、ノナン酸であり、前記中鎖脂肪酸が、オレイン酸であり、前記極性非プロトン溶媒が、N−メチル−2−ピロリドンである、請求項27に記載の粘膜送達組成物。
【請求項29】
前記非水性疎水性媒体が、中性であり、少なくとも1つのアシルグリセロールが、中鎖アシルグリセロールであり、少なくとも1つの脂質が、中性脂質であり、少なくとも1つの水溶性有機溶媒が、極性非プロトン溶媒である、請求項26に記載の粘膜送達組成物。
【請求項30】
前記中鎖アシルグリセロールが、モノ−デカノイルグリセロール、オクタノイルグリセロール、又はそれらの混合物であり、前記中性脂質が、ビタミンEであり、前記水溶性有機溶媒が、N−メチル−2−ピロリドンである、請求項29に記載の粘膜送達組成物。
【請求項31】
前記酸化防止剤が、N−アセチル−メチオニン、ビオチン、ビオチンエチルエステル、及びアスコルビン酸からなる群から選択される、請求項23に記載の粘膜送達組成物。
【請求項32】
前記ペプチド活性剤が、ペプチドホルモンである、請求項1に記載の粘膜送達組成物。
【請求項33】
前記ペプチドホルモンが、グルカゴン様ペプチド及びその類似体/誘導体である、請求項32に記載の粘膜送達組成物。
【請求項34】
前記グルカゴン様ペプチドが、グルカゴン様ペプチド1、エクセナチド、リラグルチド、及びそれらの類似体/誘導体である、請求項33に記載の粘膜送達組成物。
【請求項35】
前記粘膜送達組成物が、バッカル、舌下、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される剤形として構成されている、請求項1に記載の粘膜送達組成物。
【請求項36】
前記組成物が、ミセルである、請求項1に記載の粘膜送達組成物。
【請求項37】
前記ミセルが、逆ミセルである、請求項1に記載の粘膜送達組成物。
【請求項38】
宿主の血流へのペプチド活性剤の粘膜送達に使用される粘膜送達組成物を生産する方法であって、
前記ペプチド活性剤の等電点(pI)とは異なるpHの非水性疎水性媒体中で可溶性ペプチド錯体を形成し、前記ペプチド錯体が、クラウン化合物及び対イオンと複合体化された有効量の安定的に水和されたペプチド活性剤を含む方法。
【請求項39】
前記形成が、有効量の(i)前記非水性疎水性媒体及び(ii)前記ペプチド錯体を混合することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ペプチド錯体が、水性有機溶液又は懸濁液を乾燥することにより取得可能な乾燥粉末又は残渣であり、前記水性有機溶液又は懸濁液が、その中の成分として、前記ペプチド活性剤、前記クラウン化合物、及び対イオンを含み、前記乾燥が、前記ペプチド錯体を生産するために、前記ペプチド活性剤と結合した十分な量の水が保持される条件下である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記水性有機溶液又は懸濁液が、前記ペプチド活性剤の等電点とは異なるpH、随意に前記ペプチド活性剤の等電点から離れたpHである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ペプチド活性剤及び前記対イオンが、ペプチド塩として事前に形成される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ペプチド塩が、その中の成分として前記ペプチド活性剤及び前記対イオンを含む溶液又は懸濁液を乾燥することにより取得可能な乾燥粉末又は残渣であり、前記溶液又は懸濁液が、前記ペプチド活性剤の等電点とは異なるpH、随意に前記ペプチド活性剤の等電点から離れたpHを有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記形成が、有効量の(i)対イオンと錯体化された安定的に水和された有効量のペプチド活性剤を有する非水性疎水性媒体及び(ii)クラウン化合物を混合すること含む、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記対イオンと錯体化された前記ペプチド活性剤が、ペプチド塩として事前に形成される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ペプチド塩が、その中の成分として前記ペプチド活性剤及び前記対イオンを含む溶液又は懸濁液を乾燥することにより取得可能な乾燥粉末又は残渣であり、前記溶液又は懸濁液が、前記ペプチド活性剤の等電点とは異なるpH、随意に前記ペプチド活性剤の等電点から離れたpHを有する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
有効量のペプチド活性剤を、その必要性のある宿主に粘膜送達するための方法であって、
有効量の請求項1に記載の粘膜送達組成物を、宿主の粘膜に投与し、前記投与が、有効量の前記ペプチド活性剤を前記宿主の血流に送達する方法。
【請求項48】
前記粘膜が、口腔粘膜である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記口腔粘膜が、頬側、舌下、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記組成物の舌下投与が、胸膜腔内投与と比べて、約10%より大きな前記ペプチド活性剤の薬理学的生物学的利用能を結果としてもたらす、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
クラウン化合物及び対イオンと錯体化された安定的に水和されたペプチド活性剤を含み、前記ペプチド活性剤の等電点とは異なるpH、随意に前記ペプチド活性剤の等電点から離れたpHを有する溶液又は懸濁液から乾燥される、事前に形成されたペプチド錯体。
【請求項52】
前記溶液又は懸濁液が、水性溶媒、有機溶媒、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項51に記載の事前に形成されたペプチド錯体。
【請求項53】
前記有機溶媒が、アルコール又は極性非プロトン溶媒である、請求項53に記載の事前に形成されたペプチド錯体。
【請求項54】
前記極性非プロトン溶媒が、アセトニトリルであり、前記アルコールが、メタノール及びエタノールからなる群から選択される、請求項57に記載の事前に形成されたペプチド錯体。
【請求項55】
前記混合物が、約1%〜約20%、好ましくは約1%〜約10%の含水量を有する水性メタノール溶液又は懸濁液であるか、又は約30%〜約70%、好ましくは約40%〜約60%の含水量を有する水性アセトニトリル溶液又は懸濁液である、請求項56に記載の事前に形成されたペプチド錯体。
【請求項56】
前記事前に形成されたペプチド錯体が、保管安定的である、事前に形成されたペプチド錯体。
【請求項57】
宿主の血流へのペプチド活性剤の粘膜送達に使用されるキットであって、有効量の請求項1に記載の粘膜送達組成物及び/又はその成分を、前記粘膜送達組成物の形成可能な組み合わせで含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−512226(P2013−512226A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540439(P2012−540439)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068257
【国際公開番号】WO2011/064316
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(512137980)アリスジェン ソシエテ アノニム (2)
【Fターム(参考)】