説明

クラゲタンパク質由来の新規ペプチドとその用途

【課題】クラゲタンパク質由来の新規ACE阻害物質を単離精製し、その構造を決定すると共に、当該ACE阻害物質さらにはそれを利用した食品、または医薬等を提供すること。
【解決手段】クラゲタンパク質由来の5種類の新規ACE阻害ペプチドを同定した。このうち2種類のペプチドは8個のアミノ酸からなり、残り3種類のペプチドはそれぞれ5,6,7個のアミノ酸からなる。いずれのペプチドもACE阻害活性を有するため、高血圧の予防に有効な機能性食品等として、また降圧剤等の医薬として利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラゲより見出された新規ペプチドとその用途に関し、より詳細には、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性を示す複数の新規ペプチド、これらペプチドを含有するペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末、その製造方法、これらペプチド又はそれらの濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を有効成分とするアンギオテンシン変換酵素阻害剤、これらペプチド又はそれらの濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を包含する機能性食品などの食品やサプルメント、および降圧剤や血圧調整剤などの医薬、その他健康食品組成物、降圧用又は血圧調整用医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンギオテンシン変換酵素(以下、「ACE」という。)は、前駆体ペプチドアンギオテンシンIから活性な昇圧ペプチド、アンギオテンシンIIの生成反応を触媒する。したがって、ACEの活性を阻害する物質は、降圧剤として高血圧症の予防および/または治療に用いることができる。実際に、ACE阻害剤であるカプトプリル等が高血圧症の治療薬として使用されている。また、ACE阻害剤は、心臓病(心不全など)や腎臓病(腎硬化症、糖尿病性腎症など)にも効果があると云われており、高血圧症以外の疾患治療薬としても利用可能性を有する。
【0003】
下記の特許文献1〜3には、豚肉や大豆蛋白に由来するACE阻害活性を有するペプチドが開示されている。また、下記の特許文献4には、クラゲにタンパク質分解酵素を作用させてクラゲを熟成させることによって、ACE阻害活性(血圧調整機能)を有するクラゲ加工食品およびACE阻害物質含有液を製造する方法などが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−217588号公報
【特許文献2】特開2004−67553号公報
【特許文献3】特開平7−70180号公報
【特許文献4】特開2002−370991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、クラゲを熟成させることによって、ACE阻害活性(血圧調整機能)を有するクラゲ加工食品およびACE阻害物質含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を製造することが可能であり、ACE阻害剤は高血圧の予防、改善、及び/又は治療などに有効である。
【0006】
高血圧に悩む人にとって、薬は有効な働きを持つと共に副作用も心配される。しかし、食品を由来として血圧調整に有効な物質が得られれば、安心して利用することができる。本発明者らは、高血圧に悩む人に、古くから食品として利用されてきたクラゲを由来とした、血圧調整に有効な物質を提供しようと考えた。
【0007】
また、クラゲは高価な食材とされ、血圧調整に有効なことが証明されても利用する側にとっては、費用面で大きな負担となる。そこで、その有効成分の物質構造を決定し、化学的に合成した安価で優れた医薬が提供されれば、その治療に大きく貢献できるといえよう。
【0008】
本発明は、上記の問題点に着目してなされたものであって、その目的は、クラゲタンパク質由来の新規ACE阻害物質を単離精製し、その構造を決定すると共に、当該ACE阻害物質さらにはそれを利用した食品、又は医薬等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意研究を進めた結果、(1)クラゲタンパク質をペプシンで所定時間加水分解し、その後カラムクロマトグラフィーにより活性画分を分離することによって、強いACE阻害活性を有する画分(ペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末)が得られること、(2)当該画分(ペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末)にはACE阻害活性を有する複数種類のペプチドが含まれ、これらのうち2種類のペプチドを単離精製し、その構造を決定したところ、それぞれ7個と5個のアミノ酸からなり、いずれも新規のACE阻害ペプチドであること、(3)さらに解析を進めた結果、新たに3種類のACE阻害ペプチドを同定したこと、等を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、産業上および医療上有用な発明として、下記A)〜O)の発明を包含するものである。
【0011】
A) 配列表の配列番号1〜5のいずれかに示されるペプチドおよびそのいずれかのペプチドのアミノ酸配列中の1又は複数のアミノ酸が置換もしくは欠失し、又は、同配列に1又は複数のアミノ酸が挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を有してなるペプチドからなる群から選ばれたペプチド。
【0012】
B) ペプチドが、配列番号1〜5のいずれかに示されるペプチドである、上記A)記載のペプチド。
【0013】
C) ペプチドが、配列番号1〜5のいずれかのペプチドのアミノ酸配列中の1又は複数のアミノ酸が置換もしくは欠失し、又は、同配列に1又は複数のアミノ酸が挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を有してなるペプチドである、上記A)記載のペプチド。
【0014】
D) 以下の(1)〜(5)のいずれかのアミノ酸配列からなり、アンギオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチド(本明細書では、これら(1)〜(5)のペプチドをそれぞれ「ペプチド1〜5」と称する)。
(1)Gln―Ala―Pro―Ala―Gln―Ala―Val「以下、ペプチド1」
(2)Pro―Trp―Met―Tyr―Tyr「以下、ペプチド2」
(3)Phe―Gly―Val―Asn―Pro―Lys―Tyr―Thr「以下、ペプチド3」
(4)Phe―Thr―Ala―Pro―Met―Asn「以下、ペプチド4」
(5)Ser―Thr―Lys―Ala―Ser―Gly―Lys―Leu「以下、ペプチド5」
【0015】
E) 上記ペプチド1〜5のいずれかのアミノ酸配列中の1又は複数のアミノ酸が置換もしくは欠失し、又は、同配列に1又は複数のアミノ酸が挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドであって、かつアンギオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチド。
【0016】
F) クラゲを原料とし、上記ペプチド1〜5のいずれかのペプチド及び/又は上記E)記載のいずれかのペプチドを含むペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末。
【0017】
G) ペプシンなどのタンパク質分解酵素によってクラゲタンパク質を加水分解後、ゲルろ過クロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィーを用いて、加水分解産物からアンギオテンシン変換酵素阻害活性の高い活性画分を分離する工程を含む、上記F)記載のペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末の製造方法。
【0018】
H) 酵素による加水分解を20〜50時間行う、上記G)記載の製造方法。
【0019】
I) 上記D)又はE)のいずれかに記載のペプチド、又は上記F)記載のペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を有効成分として含有するアンギオテンシン変換酵素阻害剤。
【0020】
J) 上記D)又はE)のいずれかに記載のペプチド、又は上記F)記載のペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を含有する食品。
【0021】
K) 上記D)又はE)のいずれかに記載のペプチド、又は上記F)記載のペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を有効成分として含有する医薬。
【0022】
L) 上記D)又はE)のいずれかに記載のペプチド、又は上記F)記載のペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を有効成分として含有する降圧剤。
【0023】
M) 上記A)〜E)のいずれかに記載のペプチド、又は上記F)記載のペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を有効成分として含有する健康食品組成物。
【0024】
N) 上記A)〜E)のいずれかに記載のペプチド、又は上記F)記載のペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を有効成分として含有するサプルメント。
【0025】
O)上記A)〜E)のいずれかに記載のペプチド、又は上記F)記載のペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を有効成分として含有する降圧用又は血圧調整用医薬組成物。
【発明の効果】
【0026】
本発明のペプチド又は当該ペプチドを含有する濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末は、ACE阻害活性を有するため、高血圧の予防、改善、及び/または治療に有効な機能性食品等の食品、降圧剤等の医薬として利用することができる。ペプチドは化学合成でき、安価に製造可能である。濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末は、精製工程を省略できるので、天然物から簡便な操作で効率よく得られ、しかも複数のACE阻害ペプチドが混合され高収量であるので、機能性食品等の食品に好適に利用することができる。特に、乾燥粉末とすることで、クラゲの特有臭がなくなり、良好な風味が得られるので、調味料などの食品又は食品組成物として好適に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい態様について説明する。なお、本明細書および図面において、アミノ酸等を略号で表記する場合、その表記はIUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものである。また、アミノ酸に関し光学異性体があり得る場合、特に明示しなければL体を表すものとする。
【0028】
上述のように、本発明者らは、クラゲタンパク質を加水分解後、カラムクロマトグラフィーにより得られた活性画分の中から5種類の新規ACE阻害ペプチド、即ち下記アミノ酸配列からなるペプチド1〜5を単離精製した。
ペプチド1:グルタミン−アラニン−プロリン−アラニン−グルタミン−アラニン−バリン(配列番号1に示される配列)
ペプチド2:プロリン−トリプトファン−メチオニン−チロシン−チロシン(配列番号2に示される配列)
ペプチド3:フェニルアラニン−グリシン−バリンーアスパラギン−プロリン−リジン−チロシン−スレオニン(配列番号3に示される配列)
ペプチド4:フェニルアラニン−スレオニン−アラニン−プロリン−メチオニン−アスパラギン(配列番号4に示される配列)
ペプチド5:セリン−スレオニン−リジン−アラニン−セリン−グリシン−リジン−ロイシン(配列番号5に示される配列)
【0029】
本発明に係るペプチド1〜5は、上記配列情報に基づき市販のペプチド合成機等を使用して簡易かつ安価に化学合成可能であるが、上記ペプチド1〜5を天然物から抽出し、精製することとしてもよい。例えば、クラゲから抽出し、精製する方法の一例について以下説明する。
【0030】
原料とするクラゲは特に限定されるものではないが、エチゼンクラゲ(Stomolophus nomurai)、ビゼンクラゲ(Rhopilema esculenta)、あるいは東南アジア産又は中国産の食用クラゲ等(例えば、ホワイトタイプ(Lobonema smithi又はLobonema gracilis)、プリギタイプ(Crambione mastigophora)、セミチャイナタイプ(Rhopilema esculentaの近縁種)、チラチャップタイプ(Crambionella属の一種)、キャノンボール(Stomolophus meleagris))が好適なものとして挙げられる。
【0031】
クラゲを原料に用いてペプチド1〜5を抽出し、精製する工程は、(1)クラゲにタンパク質分解酵素を作用させてクラゲを熟成させる工程、より具体的には、クラゲタンパク質をペプシン等の酵素で所定時間加水分解することによって、ACE阻害ペプチド含有液を調製する工程と、(2)カラムクロマトグラフィーを用いて活性画分を分離することによって、ACE阻害ペプチドを高濃度に含む画分(ペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末)を調製し、さらにACE阻害ペプチド1〜5を抽出し、精製する工程とに大別される。
【0032】
図13を参照して上記(1)の工程例について説明すると、まず、塩漬けされた又は塩漬けされていない生の原料か、乾燥原料を水で戻したクラゲ1kgをギロチンカッターによって適当な大きさに裁断する(a1)。次に、ミンチ機で原料クラゲを細かくすりつぶす(a2)。これは、後述する熟成工程を均等、且つ、十分に行うために有用な工程である。そして、塩分や特有の臭いを除くために、前記原料クラゲを洗浄機を用いて流水に1晩さらしたり、又は、何度か(例えば8回程度)もみ洗いする(a3)。
【0033】
余分な水分を水切りにて自然落下させて除き(a4)、前記ミンチ状のクラゲを小分けして耐熱性のポリ袋に収納する。各ポリ袋に収納されたミンチ状のクラゲの約1.5倍重量の水をそれぞれのポリ袋に加える(a5)。次に、pH調整剤を用いてpHを1以上4以下に調整する(a6)。pH調整剤としては、塩酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、等、食品添加物として認められている酸性物質の他、醸造酢等が挙げられる。この工程は、使用する酵素の種類により、中性付近での熟成のため、pH調整を行わないか、あるいはアルカリ側での処理のため、後のアルカリ性のpH調整剤と順序を逆にして処理することとしてもよい。
【0034】
タンパク質分解酵素を前記それぞれのポリ袋に収納されたクラゲに対して約1%ずつ添加する(a7)。クラゲの分解に用いるタンパク質分解酵素としては、手に入り易く、且つ、人体に悪影響を与えない酵素という意味で、ペプシン等の動物を由来原料とする動物性タンパク質分解酵素、パパイヤ等の植物を由来原料とする植物性タンパク質分解酵素、ブロメライン等の細菌を由来原料とする細菌性タンパク質分解酵素が挙げられる。このようなタンパク質分解酵素ならば、量の多少はあるもののクラゲを分解してACE阻害ペプチドを作り出すことができる。
【0035】
前記タンパク質分解酵素が加えられたクラゲを恒温機内に、温度30〜50℃、2時間超(より好ましくは後述のように20〜50時間)、保管して熟成させる(a8)。この熟成中に、クラゲタンパク質が加水分解されてACE阻害ペプチドが生成される。所定時間熟成後、恒温機から熟成クラゲを耐熱性のポリ袋に収納したままの状態で取り出す。熟成クラゲは、液状物と固形物とが混じりあった状態にあり、熟成時間が長くなるほど液状物の割合が増加し、固形物の割合が減少する。
【0036】
そして、前記熟成クラゲを収納したポリ袋中のタンパク質分解酵素を失活させるために、ポリ袋を沸騰水中で約10分間加熱する(a9)。その後、氷水で強制冷却する(a10)。なお、タンパク質分解酵素の働きを止める方法としては、恒温機内の温度を約10℃以下にして低温保管することによっても行える。ペプシンには、pH7付近にすることも有効である。その後、前記ポリ袋内の熟成クラゲを濾過して沈殿物を濾し採り(a11)、あるいは遠心分離後、上澄み液を回収することによりACE阻害ペプチド含有液を調製する。
【0037】
さらに必要に応じて、pHを中性付近に調整するために、この溶液にpH調整剤を加えてもよい(a12)。pH調整剤としては、苛性ソーダ(NaOH)、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム等、食品添加物として認められているアルカリ性の物質が挙げられる。
【0038】
勿論、上述の工程は種々の改変が可能であり、例えば特開2002−370991号公報に記載される他の方法や、後述の実施例に記載される方法によって、ACE阻害ペプチド含有液を調製してもよい。また、図1に示すように、ACE阻害率およびペプチド濃度ともに高い溶液を調製するため、ペプシンによる加水分解時間は1〜65時間が好ましく、より好ましくは8〜60時間、さらに好ましくは20〜50時間である。後述の実施例においては、反応時間48時間の加水分解産物からACE阻害ペプチド1〜5を良好に単離・精製することができたので、加水分解時間は40〜50時間程度に設定することが最適と考えられる。
【0039】
次に、上述の工程により得られたACE阻害ペプチド含有液から、カラムクロマトグラフィーを用いてACE阻害ペプチドを高濃度に含む画分(ペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末)を分離し、さらにACE阻害ペプチド1〜5を抽出し、精製する。ペプチド含有組成物およびペプチド1〜5を抽出し、精製する工程は、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、又はこれらのHPLC(高速液体クロマトグラフィー)システム等を用いたカラムクロマトグラフィーによって行うことが可能であり、複数のカラムを組み合わせて多段階の分画・抽出を行うことが望ましい。
【0040】
後述の実施例においては、ゲルろ過クロマトグラフィーにより分子量の大きさで分離することによって、まずACE阻害ペプチドを高濃度に含む画分F.2(ペプチド含有組成物)を分離した。得られたペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末はACE阻害活性が高く、そのACE50%阻害濃度(IC50)は0.22mg/ml(ペプチド濃度)であった(図4(a))。このペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末には、本発明の複数のACE阻害ペプチドが含まれ、ペプチド濃度が高く不純物が少ないため、機能性食品などに特に有用である。このようなペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末も本発明に含まれる。
【0041】
ペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末としては、そのACE50%阻害濃度(IC50)が0.30mg/ml以下(ペプチド濃度)のものが好ましく、より好ましくは0.28mg/ml以下、さらに好ましくは0.25mg/ml以下である。
【0042】
なお、ACE50%阻害濃度を算出するためのACE阻害活性試験は、例えば以下のような試験手順で行うことができる。出典は「食品中の生体機能調整物質研究法、川岸舜朗編著、学会出版センター、東京(1996)」である。
1.基質(Bz-Gly-His-LeuやHip-His-Leu)、アンギオテンシン変換酵素(ACE)をそれぞれ所定の緩衝液に溶解する。
2.最初に、試料液とアンギオテンシン変換酵素(ACE)を混合し放置した後、基質溶液を添加して、37℃で30分間作用させる。酵素作用は塩酸を添加して停止する。
3.所定の抽出処理を経て、基質から遊離してくる馬尿酸量を波長228nmの吸光度で測定し、試験値とする。
4.試料液の代わりに蒸留水で同様の処理を行った吸光度を、対照値とする。
5.先に塩酸液を添加して酵素の作用をゼロにしたときの吸光度を無作用値とする。
6.ACE阻害率は次の式で得られる。
阻害率(%)={(対照値−試験値)/(対照値−無作用値)}×100
【0043】
後述の実施例では、逆相HPLCを用いて、上記ペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末から濃度勾配(グラジエント)溶出さらに一定濃度(イソクラティック)溶出を行い、ACE阻害ペプチド1〜5を単離精製した。
【0044】
なお、本発明には、上記ペプチド1〜5のみならず、ペプチド1〜5のアミノ酸配列中の1又は複数(2,3個程度)のアミノ酸が置換もしくは欠失し、又は、同配列に1又は複数(2,3個程度)のアミノ酸が挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドであって、かつACE阻害活性を有するペプチドも含まれる。このような改変ペプチドのアミノ酸配列は、ペプチド1〜5のアミノ酸配列と70%以上、さらに好ましくは80%以上の相同性を有していることが好ましい。
【0045】
また、本発明には上記ペプチド1〜5、又は上述したこれら改変ペプチドの薬理学的に許容される塩も含まれる。このような薬理学的に許容される塩としては、フッ化水素酸塩、塩酸塩などのハロゲン化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの無機酸塩、スルホン酸塩などの有機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、などを例示することができる。
【0046】
本発明のペプチド又はその含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末は、ACE阻害活性を有するため、高血圧の予防、改善、及び/又は治療に有効な機能性食品等の食品、降圧剤等の医薬あるいはそのリード化合物として利用することができる。また、ACE阻害剤は、心臓病(心不全、狭心症、心筋梗塞など)や腎臓病(腎硬化症、糖尿病性腎症など)にも効果があるといわれており、高血圧症以外の疾患治療薬、機能性食品としても利用可能である。
【0047】
本発明のペプチド等を医薬品に用いる場合の一例について説明する。本発明のペプチド等は、これをそのまま、あるいは慣用の医薬製剤担体とともに医薬用組成物となし、ヒト(または動物)に投与することができる。医薬用組成物の剤形としては特に制限されるものではなく必要に応じて適宜選択すればよいが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口剤、注射剤、坐剤、塗布剤等の非経口剤が挙げられる。
【0048】
錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口剤は、例えば、デンプン、乳糖、白糖、トレハロース、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を用いて常法に従って製造される。これらの製剤中の本発明のペプチド等の配合量は特に限定されるものではなく適宜設定できる。この種の製剤には、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を適宜に使用することができる。
【0049】
非経口剤の場合、患者の年齢、体重、疾患の程度などに応じて用量を調節し、例えば、静注、点滴静注、皮下注射、筋肉注射などによって投与する。この非経口剤は常法に従って製造され、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水等を用いることができる。さらに必要に応じて、殺菌剤、防腐剤、安定剤を加えてもよい。また、この非経口剤は安定性の点から、バイアル等に充填後冷凍し、通常の凍結乾燥処理により水分を除き、使用直前に凍結乾燥物から液剤を再調製することもできる。さらに必要に応じて、等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤を加えてもよい。これら製剤中の本発明のペプチド等の配合量は特に限定されるものではなく任意に設定できる。その他の非経口剤の例として、外用液剤、軟膏等の塗布剤、直腸内投与のための坐剤等が挙げられ、これらも常法に従って製造される。
【0050】
なお、公知のDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)を利用し、例えば、本発明のペプチド等をリポソームなどの運搬体に封入して体内投与してもよい。このとき標的部位の細胞を特異的に認識する運搬体などを利用すれば、標的部位に本発明のペプチド等を効率よく運ぶことができ効果的である。
【0051】
本発明のペプチド又はその含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を食品(食用組成物)に用いる場合は、各種飲料や各種加工食品の原材料として本発明のペプチド又はその含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を飲食品に添加したり、必要に応じてデキストリン、乳糖、小麦粉でんぷん、コーンスターチ等の賦形剤や香料、色素等を混合し、ペレット、錠剤、顆粒等に成型加工したり、またゼラチン等でカプセルに充填して健康食品、保健食品やサプリメント等として利用できる。
【0052】
[製剤例1]カプセル剤
ペプチド1 10mg
乳糖 35mg
小麦粉でんぷん 55mg
合計 100mg
以上の成分を混合し、カプセルに充填し、100mgのカプセル剤とする。
【0053】
[製剤例2]錠剤
ペプチド2 5mg
乳糖 15mg
小麦粉でんぷん 80mg
合計 100mg
以上の成分を混合し、100mgの錠剤に成型する。
【0054】
[製剤例3]顆粒
ペプチド含有濃縮液 30mg
乳糖 50mg
小麦粉でんぷん 50mg
コーンスターチ 20mg
合計 150mg
以上の成分を混合し、150mgの顆粒とする。
【0055】
[製剤例4]カプセル剤
ペプチド含有濃縮液を凍結乾燥した粉末 30mg
乳糖 45mg
小麦粉でんぷん 25mg
合計 100mg
以上の成分を混合し、100mgのカプセル剤とする
【実施例】
【0056】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0057】
クラゲタンパク質からACE阻害作用を示す新規ペプチド等を、以下のような手順で調製および単離し、抽出して、その構造を決定した。
[1]実験材料と方法
[1-1]クラゲタンパク質の加水分解
【0058】
材料には、東南アジア近海産のクラゲ(Lobonema Smithii.又は、Lobonemoides Gracilisと推定されるもの)を使用した。このクラゲ200gを包丁で裁断し、2Lの蒸留水中に4℃で一晩攪拌し脱塩した。脱塩したクラゲに1Lの酢酸バッファー(pH4.5)を加えた。ワーリングブレンダーで8000rpm、15分間で破砕した。さらに、ポリトロンで30分破砕した。試料のロスを防ぐため、酢酸バッファー100mlで付着した試料を洗浄した。防腐剤として最終濃度0.02%となるアジ化ナトリウムを加えた。こうして得られたクラゲ懸濁液の1/500のペプシンを加え37℃で加水分解反応を行った。
【0059】
加水分解反応において、0,0.5,1,3,8,24,48,72時間ごとに150mlの反応液を取り出し、沸騰水浴で10分間煮沸して反応をとめた。各反応液について、12000rpmで15分間遠心分離を行い、上澄みを回収した。この上澄みを液体窒素で凍結して、凍結乾燥させた(東京理化器械株式会社製の凍結乾燥機(FDU−810型)を使用)。こうして得られた各粉末試料は、加水分解産物として−20℃で保存された。
[1-2]加水分解産物のゲルろ過
【0060】
ゲルろ過は、Sephadex G-25(アマシャム バイオサイエンス社製)を充填したカラム(5×90cm)を用いた。移動相は0.05M酢酸を用い、各粉末試料から調製したサンプル10ml(100mg/ml)をカラムに添加し流速は10ml/hで溶出した。溶出液は10mlずつ回収し、210nmと280nmの吸光度を測定した。溶出ピークごとに分けて集め凍結乾燥した。さらに、各ピークのACE阻害率を測定し、ACE阻害活性を示すピークのIC50(50%阻害濃度)を求めた。
[1-3]逆相HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いたペプチドの単離精製
【0061】
(1)濃度勾配(グラジエント)溶出
カラムは、ナカライテスク社製の5C18-AR-II(4.6×250mm)を使用し、検出波長は240nm、流速は1.4ml/minであった。移動相としてA液は0.1%TFA、B液は0.1%TFAを含むアセトニトリルを用いた。アセトニトリルの濃度勾配は30分で10%から55%まで上昇させた。試料は0.1%TFAで溶解し(10mg/ml)、100μlを注入した。溶出ピークごとに回収して凍結乾燥した。各ピークのACE阻害活性は、水(0.5ml)で溶解したサンプルのACE阻害率と210nmの吸光度から比活性を算出し、比較評価した。
【0062】
(2)一定濃度(イソクラティック)溶出
グラジエント溶出でACE阻害活性を示した画分に対して、さらにイソクラティック溶出を行った。0.1%TFAを含む移動相のアセトニトリル濃度をグラジエント溶出での濃度を参考に調整し、単一の活性ピークを得るまで溶出条件を改良した。
[1-4]ペプチドの配列決定
【0063】
精製したペプチドをメタノールで処理したPVDF膜にプロットし乾燥させ、分析用サンプルを作成した。エドマンによって考案されたフェニルイソシアナート法(PITC法、エドマン分解)に基づく自動ペプチドシーケンサー(ABI 490 Procise System)を用いて、N末端からアミノ酸配列を決定した。
[1-5]ACE阻害活性およびペプチド濃度の測定方法
【0064】
(1)ACE粗酵素液の調製
ウサギ肺アセトンパウダー(シグマ社製)5gに120mlの0.1M Na2B4O7バッファー(pH 8.3,0.1M NaCl含有)を加え、4℃で30分間攪拌した。これを10000×gで15分間遠心分離を行い、上澄みをACE粗酵素抽出液とした。Bz-Gly-His-Leu(ペプチド研究所製)を基質として用いたACE活性測定によって、粗酵素液のACE活性の測定のための最適濃度を決定した。1ml単位で小分けして−20℃で保存した。
【0065】
(2)ACE阻害活性の測定
試験管に0.1M Na2B4O7バッファー(pH 8.3, 0.1M NaCl)で溶かした基質Bz-Gly-His-Leu(5.83mM)150μlを正確にとり、同バッファーで溶かしたペプチド試料(2mg/ml)50μl、ACE粗酵素液50μlを加え、37℃で40分間反応させた。反応は250μlの1N HClを加えて停止させた。次に、正確に1.0mlの酢酸エチルを加えて十分に攪拌後、遠心分離し(3500rpm、10min)、分解物Bz-Glyを抽出した酢酸エチル層を正確に0.3ml回収した。遠心エバポレーターで酢酸エチルを蒸発除去後、0.3ml H2Oを加え、攪拌後、228nmの吸光度を測定した。同じ手順で試料抜きの対照も同時に測定した。試料の吸光度と対照の吸光度の差のパーセンテージをACE活性の阻害率とした。
【0066】
(3)ペプチド濃度の測定(TNBS法)
試験管にペプチド試料液0.5mlをとり、0.1M Na2B4O7バッファー(pH 9.2, 0.1M NaCl含有)2.0ml、0.01M Na2SO3液0.5ml、0.1% TNBS0.5mlを加え、37℃で1時間反応させた。420nmの吸光度を測定した。同時に同じ手順で0〜350μMのリジンおよびアラニンで作成した検量線からペプチド濃度を求めた。
[2]結果
【0067】
クラゲタンパク質はペプシンによる加水分解で、時間の経過に伴い、ACE阻害活性とペプチド濃度とともに増加した。しかし、ACE阻害率は48時間で最高値に達し、それ以降はペプチド濃度の増加に伴い、ACE阻害活性が減少した(図1)。最も高いACE阻害活性を示したのは48時間の加水分解産物であり、その活性はIC50=0.34mg/ml(図2)であった。そこで以下、この加水分解産物からACE阻害率を指標にACE阻害ペプチドの単離精製を行った。
【0068】
ペプシンによる加水分解開始後48時間の加水分解産物についてSephadex G-25ゲルろ過クロマトグラフィーを行った。カラムは5×90cmを用い、移動相は0.05M酢酸で、100mg/mlの試料を10ml添加し流速は10ml/hで溶出した。溶出液は1画分10mlずつで回収した。各画分の210および280nmの吸光度を測定した結果、5つのピーク(F.1〜F.5)に分離した(図3)。これら各ピークにおける画分のうち、F.2における画分(60〜71画分)で最も高いACE阻害活性が認められ、その阻害活性はIC50=0.22mg/mlであった(図4(a))。次に高いACE阻害活性が認められたのは、F.3における画分(72〜77画分)であり、その阻害活性はIC50=0.48mg/mlであった(図4(b))。図3には、F.1〜F.5の各ピーク画分のペプチド濃度0.4mg/mlにおけるACE阻害率(%)が示される。これらの結果から、ピーク画分F.2(60〜71画分)において、最もACE阻害活性が高くペプチドを大量に含むペプチド含有濃縮液が調製された。この濃縮液を上記凍結乾燥機を使用して凍結乾燥すると、粉末が得られた。
【0069】
上記ピーク画分F.2について、逆相HPLCによりさらに精製を進めた。移動相として、A液は0.1%TFA、B液は0.1%TFAを含むアセトニトリルを用いたグラジエント溶出を採用した。アセトニトリルの濃度勾配は30分で10%から55%まで上昇させた。主要な15個のピーク画分を回収した(図5)。このうち、画分1,4,9,10,12,13において有意なACE阻害活性が認められ、画分1,4,9,13においてより強いACE阻害活性が認められた。画分1,4,9,13の溶出時間は、それぞれ8.9,10.1,12.6,15.5分であった(図5)。以下、これらの画分1,4,9,13をF.2-1,F.2-4,F.2-9,F.2-13として、各画分に含まれるペプチドの単離精製を行った。
【0070】
各画分に含まれるペプチドの単離精製は、イソクラティック溶出を用いた逆相HPLCで活性ピークを検出することにより行った。画分F.2-1は21%のアセトニトリル濃度で溶出し、リテンションタイムは23.9分の1ピーク(画分F.2-1-4)でACE阻害活性を示した(図6)。単一ピークであることを確認するため、ピーク画分を濃縮後同条件でHPLCにかけたところ、溶出時間は24.3分で活性も保持していた(図7。画分F.2-1-4-2)。
【0071】
また、画分F.2-4を21%の均一濃度でHPLCにかけたところ、4.3分に1ピーク(画分F.2-4-3)として溶出し、ACE阻害活性も示した(図8)。単一であることを確認するため再び同条件でHPLCにかけた結果、溶出時間は4.3分であった(図9。画分F.2-4-3-1)。
【0072】
F.2-9画分は、アセニトリル28%の均一濃度で溶出たところ、13.1分に単一な活性ピークとして得られた(図10。画分F.2-9-2)。
【0073】
F.2-13画分は、アセニトリル30%の均一濃度で溶出したところ、3.4分に単一な活性ピークとして得られた(図11。画分F.2-13-1)。単一であることを確認するため同条件で再びHPLCにかけたところ、溶出時間は3.5分であった(図12。画分F.2-13-1-2)。
【0074】
上述の各画分のうち、画分F.2-1-4-2および画分F.2-4-3-1にそれぞれ単離されたペプチドについて、エドマン分解法によりアミノ酸配列の決定を行った。
【0075】
その結果、画分F.2-1-4-2に含まれるペプチドのアミノ酸配列は、
「QAPAQAV」即ち、グルタミン−アラニン−プロリン−アラニン−グルタミン−アラニン−バリン(配列番号1)
と決定された。
【0076】
一方、画分F.2-4-3-1に含まれるペプチドのアミノ酸配列は、
「PWMYY」即ち、プロリン−トリプトファン−メチオニン−チロシン−チロシン(配列番号2)
と決定された。
【0077】
データベースを検索したところ、前者のペプチド配列はダニオ類の魚のタンパク質中に、後者のペプチド配列はザリガニ類のタンパク質中に認められたが、ペプチドとしては新規なものであった。また図14には、これらペプチドのACE阻害活性について調査した結果が示される。
【0078】
さらに、同様の方法でACE阻害活性を有すると認められた他の画分に含まれるペプチドについて、上記と同様に配列解析を行った結果、新たなACE阻害ペプチドとして、下記配列からなる3つの新規ペプチド(ペプチド3〜5)を同定することができた。
ペプチド3:FGVNPKYT、即ち、フェニルアラニン−グリシン−バリンーアスパラギン−プロリン−リジン−チロシン−スレオニン(配列番号3)
ペプチド4:FTAPMN、即ち、フェニルアラニン−スレオニン−アラニン−プロリン−メチオニン−アスパラギン(配列番号4)
ペプチド5:STKASGKL、即ち、セリン−スレオニン−リジン−アラニン−セリン−グリシン−リジン−ロイシン(配列番号5)
【0079】
図15は、これらペプチド3〜5のACE阻害活性を示す図である。同図に示すように、いずれのペプチドにも高いACE阻害活性が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明のペプチド又はその含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末は、ACE阻害活性を有するため、高血圧の予防、改善、および/または治療に有効な機能性食品等の食品、降圧剤等の医薬として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】ペプシンによるクラゲタンパク質の加水分解時間と、得られた加水分解産物のACE阻害率、ペプチド濃度の関係を示すグラフである。
【図2】48時間反応後の加水分解産物のACE50%阻害濃度(IC50)を示すグラフである。
【図3】48時間反応後の加水分解産物のゲルろ過クロマトグラフィー分析結果と、得られた各ピーク画分F.1〜F.5のACE阻害活性を示すグラフである。
【図4】(a)(b)は、活性画分F.2とF.3のACE50%阻害濃度(IC50)を示すグラフである。
【図5】画分F.2のHPLC分析結果を示すグラフである。
【図6】画分F.2-1のHPLC分析結果を示すグラフである。
【図7】画分F.2-1-4のHPLCによるペプチドの精製結果を示すグラフである。
【図8】画分F.2-4のHPLC分析結果を示すグラフである。
【図9】画分F.2-4-3のHPLCによるペプチドの精製結果を示すグラフである。
【図10】画分F.2-9のHPLC分析結果を示すグラフである。
【図11】画分F.2-13のHPLC分析結果を示すグラフである。
【図12】画分F.2-13-1のHPLCによるペプチドの精製結果を示すグラフである。
【図13】原料クラゲからACE阻害ペプチド含有液を調製する工程を示すフローチャートである。
【図14】クラゲタンパク質由来新規ペプチド(ペプチド1・2)のACE阻害活性を示す図である。
【図15】クラゲタンパク質由来新規ペプチド(ペプチド3〜5)のACE阻害活性を示す図である。
【配列表フリーテキスト】
【0082】
配列番号1:クラゲタンパク質由来新規ペプチド1のアミノ酸配列
配列番号2:クラゲタンパク質由来新規ペプチド2のアミノ酸配列
配列番号3:クラゲタンパク質由来新規ペプチド3のアミノ酸配列
配列番号4:クラゲタンパク質由来新規ペプチド4のアミノ酸配列
配列番号5:クラゲタンパク質由来新規ペプチド5のアミノ酸配列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列表の配列番号1〜5のいずれかに示されるペプチドおよびそのいずれかのペプチドのアミノ酸配列中の1又は複数のアミノ酸が置換もしくは欠失し、又は、同配列に1又は複数のアミノ酸が挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を有してなるペプチドからなる群から選ばれたペプチド。
【請求項2】
ペプチドが、配列番号1〜5のいずれかに示されるペプチドである、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
ペプチドが、配列番号1〜5のいずれかのペプチドのアミノ酸配列中の1又は複数のアミノ酸が置換もしくは欠失し、又は、同配列に1又は複数のアミノ酸が挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を有してなるペプチドである、請求項1記載のペプチド。
【請求項4】
以下の(1)〜(5)のいずれかのアミノ酸配列からなり、アンギオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチド。
(1)Gln―Ala―Pro―Ala―Gln―Ala―Val
(2)Pro―Trp―Met―Tyr―Tyr
(3)Phe―Gly―Val―Asn―Pro―Lys―Tyr―Thr
(4)Phe―Thr―Ala―Pro―Met―Asn
(5)Ser―Thr―Lys―Ala―Ser―Gly―Lys―Leu
【請求項5】
請求項4記載のいずれかのペプチドのアミノ酸配列中の1又は複数のアミノ酸が置換もしくは欠失し、又は、同配列に1又は複数のアミノ酸が挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドであって、かつアンギオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチド。
【請求項6】
クラゲを原料とし、請求項4記載のいずれかのペプチド及び/又は請求項5記載のいずれかのペプチドを含む、ペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末。
【請求項7】
ペプシンなどのタンパク質分解酵素によってクラゲタンパク質を加水分解後、ゲルろ過クロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィーを用いて、加水分解産物からアンギオテンシン変換酵素阻害活性の高い活性画分を分離し、得られる濃縮液を凍結乾燥する工程を含む、請求項6記載のペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末の製造方法。
【請求項8】
酵素による加水分解を20〜50時間行う、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
請求項4又は5に記載のいずれかのペプチド、又は請求項6記載のペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を有効成分として包含するアンギオテンシン変換酵素阻害剤。
【請求項10】
請求項4又は5に記載のいずれかのペプチド、又は請求項6記載のペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を包含する食品。
【請求項11】
請求項4又は5に記載のいずれかのペプチド、又は請求項6記載のペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を有効成分として包含する医薬。
【請求項12】
請求項4又は5に記載のいずれかのペプチド、又は請求項6記載のペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を有効成分として包含する降圧剤。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド、又は請求項6記載のペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を有効成分として包含する健康食品組成物。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド、又は請求項6記載のペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を有効成分として包含するサプルメント。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド、又は請求項6記載のペプチド含有濃縮液もしくはこれを凍結乾燥した粉末を有効成分として包含する降圧用又は血圧調整用医薬組成物。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−265241(P2006−265241A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49749(P2006−49749)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(500098459)株式会社かね徳 (2)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】