説明

クラスタービーム発生装置、基板処理装置、クラスタービーム発生方法及び基板処理方法

【課題】液体原料のクラスターと気体原料のクラスターの比率を容易に制御することのできるクラスタービーム合せい装置を提供する。
【解決手段】クラスタービーム26を発生させるクラスタービーム発生装置10において、気体原料と液体原料とを混合する混合器40と、前記混合器40において混合された前記気体原料及び前記液体原料をクラスターとして供給するノズル21と、前記ノズル21の温度を調整する温度調整部23と、を有し、前記温度調整部23により、前記ノズルの温度を変化させることにより、前記クラスターにおける前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率を調整することを特徴とするクラスタービーム発生装置10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラスタービーム発生装置、基板処理装置、クラスタービーム発生方法及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個の原子等が凝集してできるガスクラスターは特異な物理化学的挙動を示し、広い分野における利用が検討されている。即ち、ガスクラスターからなるクラスターイオンビームは、従来困難であった固体表面から数ナノメートルの深さの領域で、イオン注入、表面加工、薄膜形成を行うプロセスに適している。
【0003】
このようなガスクラスター発生装置においては、加圧ガスの供給を受けて原子の数が数100〜数1000となるクラスターを発生させることが可能である。
【0004】
また、このようなガスクラスター発生装置においては、原料としては気体のみならず常温では液体である原料のクラスターが要求される場合があり、特許文献1では、常温で液体となる材料のクラスターを生成するクラスターイオンビーム装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−143700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、液体のクラスターを用いて基板等の処理を行う場合には、液体のクラスターと気体のクラスターとの混合比率を迅速に変化させたい場合がある。この場合、マスフローコントローラ等により混合比率を変化させようとすると、ノズル等より供給される液体のクラスターと気体のクラスターとの比率が安定化するまでに時間を要し、また、安定化するまでに、流される原料となる液体及び気体の材料が無駄になってしまう。
【0007】
一方、気体のクラスターと液体のクラスターとを用いて複数のプロセスを行う場合、同一のクラスタービーム発生装置を用いることができれば、同一チャンバー内において複数の基板処理のプロセスを行うことができスループットが向上し、基板等におけるコンタミネーションを防止することができる。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、液体のクラスターと気体のクラスターとの混合比率を迅速に変化させることのできるクラスタービーム発生装置及び基板処理装置を提供することであり、更に、このクラスタービーム発生装置及び基板処理装置を用いた複数のプロセスを行うクラスタービーム発生方法及び基板処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、クラスタービームを発生させるクラスタービーム発生装置において、気体原料と液体原料とを混合する混合器と、前記混合器において混合された前記気体原料及び前記液体原料をクラスタービームとして供給するノズルと、前記ノズルの温度を調整する温度調整部と、を有し、前記温度調整部により、前記ノズルの温度を変化させることにより、前記クラスタービームにおける前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率を調整することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、クラスタービームを発生させるクラスタービーム発生装置において、気体原料と液体原料とを混合する混合器と、前記混合器において混合された前記気体原料及び前記液体原料をクラスタービームとして供給するノズルと、前記ノズルの温度を調整する温度調整部と、を有し、前記温度調整部により、前記ノズルの温度を変化させることにより、前記クラスタービームにおける前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率を調整するものであって、前記ノズルの温度は、前記クラスターのサイズが所望のサイズとなるように定められていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、クラスタービームを発生させるクラスタービーム発生装置において、気体原料と液体原料とを混合する混合器と、前記混合器において混合された前記気体原料及び前記液体原料をクラスタービームとして供給する複数のノズルと、
前記ノズルの温度を調整する温度調整部と、を有し、前記温度調整部により、前記ノズルの温度を変化させることにより、前記クラスタービームにおける前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率を調整するものであって、前記複数のノズルは、各々のノズルにおける温度設定が異なるものであり、前記複数のノズルは選択して切り換えられるものであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記温度調整部により前記ノズルの温度を制御する制御部を有しており、前記制御部は前記温度調整部により前記ノズルを第1の温度及び第2の温度に設定することができ、前記第1の温度と前記第2の温度とは異なる温度であって、前記第1の温度におけるクラスタービームの前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率と、前記第2の温度におけるクラスタービームの前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率とは、異なる値であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記クラスターは所定のサイズの範囲内であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記記載のクラスタービーム発生装置を有し、前記クラスタービーム発生装置において発生した前記クラスタービームを基板に照射し、前記基板における基板処理を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記制御部において、前記ノズルを前記第1の温度に設定し、第1の基板処理を行い、前記第1の基板処理の後、前記第2の温度に設定し、第2の基板処理を行う制御を行うことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記第1の温度は、前記クラスタービームにおいて、前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターのうち、一方が多く含まれる温度であって、前記第2の温度は、前記クラスタービームにおいて、前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターのうち、他方が多く含まれる温度であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記基板処理は、洗浄、レジストの除去、基板表面の平坦化、エッチング残渣の除去、絶縁膜の除去のうち、1または2以上の処理を行うものであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、クラスタービームを発生させるクラスタービーム発生方法において、前記クラスタービームは、気体原料と液体原料とを混合する混合器と、前記混合器において混合された前記気体原料及び前記液体原料をクラスタービームとして供給するノズルと、前記ノズルの温度を調整する温度調整部とを有するクラスタービーム発生装置により発生されるものであって、前記温度調整部により、前記ノズルの温度を変化させることにより、前記クラスタービームにおける前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率を調整することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、クラスタービームを発生させるクラスタービーム発生方法において、前記クラスタービームは、気体原料と液体原料とを混合する混合器と、前記混合器において混合された前記気体原料及び前記液体原料をクラスタービームとして供給するノズルと、前記ノズルの温度を調整する温度調整部とを有するクラスタービーム発生装置により発生されるものであって、前記温度調整部により、前記ノズルの温度を変化させることにより、前記クラスタービームにおける前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率を調整するものであり、前記ノズルの温度は、前記クラスターのサイズが所望のサイズとなるように定められていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、クラスタービームを発生させるクラスタービーム発生方法において、前記クラスタービームは、気体原料と液体原料とを混合する混合器と、前記混合器において混合された前記気体原料及び前記液体原料をクラスタービームとして供給する複数のノズルと、前記ノズルの温度を調整する温度調整部とを有するクラスタービーム発生装置により発生されるものであって、前記温度調整部により、前記ノズルの温度を変化させることにより、前記クラスタービームにおける前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率を調整するものであり、前記複数のノズルは、各々のノズルにおける温度設定が異なるものであり、前記複数のノズルは選択して切り換えられるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、液体のクラスターと気体のクラスターとの混合比率を迅速に変化させることのできるクラスタービーム発生装置及び基板処理装置を提供することができ、更に、このクラスタービーム発生装置及び基板処理装置を用いた複数のプロセスを行うクラスタービーム発生方法及び基板処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施の形態におけるクラスタービーム発生装置及び基板処理装置の構成図
【図2】第1の実施の形態における原料供給部分の構成図
【図3】温度を変化させた場合における四重極質量分析スペクトル
【図4】ノズルの温度とクラスターにおける分圧との相関図
【図5】ノズルの温度とクラスターにおけるメタノールの分圧比との相関図
【図6】ノズルの温度とクラスターの大きさとの相関図
【図7】第2の実施の形態における基板処理方法のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。
【0024】
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態におけるクラスタービーム発生装置及び基板処理装置について説明する。本実施の形態におけるクラスタービーム発生装置は、常温で気体の原料のクラスターと常温では液体の原料のクラスターを発生させることができるものであり、容易に気体原料のクラスターと液体原料のクラスターとの比率を容易に変化させることができるものである。また、本実施の形態における基板処理装置は、本実施の形態におけるクラスタービーム発生装置を用いて基板処理を行うためのものである。
【0025】
本実施の形態におけるクラスタービーム発生装置及び基板処理装置として、図1及び図2に基づきクラスターイオンビーム発生装置10について説明する。
【0026】
図1に示すように、このクラスターイオンビーム発生装置10は、ノズルチャンバー20とメインチャンバー30とを有している。ノズルチャンバー20にはクラスターを発生させるノズル21が設けられており、また、発生したクラスターを選別するためのスキマー22を有しており、このスキマー22を通過したクラスターがメインチャンバー30内に導入される。メインチャンバー30では、クラスターをイオン化するためのイオン化部31が設けられており、イオン化されたクラスターは加速部32において加速され、電極部33においてイオン化したクラスターを選別して、基板34に照射させる。このように基板34にクラスターからなるクラスタービーム26を照射することにより基板処理を行うことができる。ノズル21には、ヒーター等の温度調節可能な温度調節部23が設けられており、温度調節部23における温度制御は温度制御部24において行われる。また、ノズル21には、クラスターの原料となる液体原料と気体原料とが混合器40において混合されたものが供給されている。尚、ノズルチャンバー20とメインチャンバー30との間には、シャッター23が設けられており、シャッター25を開閉することにより、メインチャンバー30内へのクラスターの導入を制御することができる。
【0027】
図2に示すように、混合器40には、常温で気体である原料(気体原料)がマスフローコントローラ41を介し供給されており、また、常温で液体である原料(液体原料)がポンプ42及び液体用フローコントローラ43を介し供給されている。本実施の形態では、常温で気体である原料としてアルゴン(Ar)が用いされており、常温で液体である原料としてメタノール(CHOH)が用いられている。常温で気体である原料のアルゴンは、マスフローコントローラ41において200sccmの流量となるように調節されて混合器40に供給されている。また、常温で液体である原料のメタノールは、液体用フローコントローラ43において0.02sccmの流量となるように調節されて混合器40に供給されている。図1に示すように混合器40にはヒーター44が設けられており、所定の温度に加熱されており、常温で液体であるメタノールは気化した状態となっている。この状態で、アルゴン及び気化したメタノールはノズル21に供給されている。
【0028】
次に、本実施の形態におけるクラスタービーム発生装置において、温度調節部23における温度を変化させた場合について説明する。図3は、温度調節部23における温度を変化させた場合における四重極質量分析スペクトルを示す。この図3に示すグラフは、ヒーター44の温度を150℃に設定した場合において、メインチャンバー30に接続された不図示の四重極質量分析装置により内部の状態を測定したものである。図3に示されるように、温度調節部23における温度、即ち、ノズル21の温度を変化させると、クラスタービーム26におけるアルゴンのクラスターとメタノールのクラスターとの比率を変化させることができる。具体的には、温度調節部23における温度が低い場合、例えば、温度調節部23における温度が30℃である場合には、アルゴンのクラスターは極めて多く存在しており、メタノールのクラスターは少ない。しかしながら、温度調節部23における温度を上昇させることにより、アルゴンのクラスターは急激に減少し、メタノールのクラスターが増加する。
【0029】
図4は、クラスター(クラスタービーム26)におけるアルゴンとメタノールの分圧を示すものであり、図5は、メタノールのクラスターの分圧比を示すものである。図4及び図5に示されるように、温度調節部23における温度、即ち、ノズル21の温度を変化させることにより、メタノールのクラスターの分圧比を変化させ調節することができる。
【0030】
このように、メタノールのクラスターの分圧比をノズル21の温度を変化させることにより調節することができるため、迅速にメタノールのクラスターの分圧比の調節を行うことが可能である。即ち、マスフローコントローラ等による流量制御により、メタノールのクラスターの分圧制御を行う場合には、マスフローコントローラからノズルまで距離があるため、メインチャンバー30において、メタノールのクラスターが所望の分圧になるまでに時間を要し、また、この間、供給される原料は無駄なものとなってしまう。しかしながら、本実施の形態におけるクラスターイオンビーム発生装置では、ノズル21における温度制御を行うことにより、メタノールのクラスターの分圧制御を行うことができるため、短時間で迅速にメタノールのクラスターを所望の分圧にすることができ、また、供給される原料の無駄をできるだけ防ぐことができる。よって、基板処理等におけるスループットを向上させることができ、更には、低コストで基板処理等を行うことができる。
【0031】
次に、図6に基づき、ノズル21の温度とクラスターの平均的な大きさとの関係について説明する。図6に示されるように、本実施の形態におけるクラスターイオンビーム発生装置では、ノズル21の温度、即ち、温度調節部23において温度を変化させても、ノズル21より供給されるクラスターの大きさは、約1000〜1400の間であり、略同じ大きさのクラスターが生成される。よって、クラスターの大きさを変えることなく、メタノールの分圧比、または、アルゴンの分圧比を変化させることができる。
【0032】
尚、本実施の形態における説明では、クラスターをイオン化させたクラスターイオンビーム発生装置について説明したが、図1に示されるクラスターイオンビーム発生装置10より、イオン化部31、加速部32及び電極部33を取り除いた構成とすることにより、中性のクラスターを発生させるクラスタービーム発生装置とすることも可能である。
【0033】
また、本実施の形態におけるクラスタービーム発生装置は、ノズル21を複数配置し、各々のノズル21の温度が異なるものであって、温度の異なるノズル21を用途に応じて選択し切り換えるものであってもよい。
【0034】
また、本実施の形態における説明では、常温で気体である原料としてアルゴンを用い、常温で液体である原料としてメタノールを用いた場合について説明したが、常温で気体である原料及び常温で液体である原料であれば、どのような原料を用いてもよい。
【0035】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態におけるクラスターイオンビーム発生装置及び基板処理装置を用いた基板処理方法である。
【0036】
図7に基づき本実施の形態における基板処理方法について説明する。本実施の形態における基板処理方法は、ステップ102(S102)において、温度調節部23によりノズル21の温度を第1の温度に設定し、第1の基板処理を行い、その後、ステップ104(S104)において、温度調節部23によりノズル21の温度を第2の温度に設定し、第2の基板処理を行うものである。尚、第1の温度と第2の温度は異なる温度であり、第1の基板処理と第2の基板処理は異なるプロセスの基板処理である。
【0037】
本実施の形態における基板処理方法としては、具体的には、以下の基板処理方法が挙げられる。
【0038】
第1の方法は、基板の表面の洗浄を行った後、平坦化を行う基板処理方法である。第1の方法では、液体原料としてエタノールを用い、気体原料としてアルゴンを用いる。最初に、第1の基板処理工程として、ノズル21の温度を150℃等の高温に設定し、クラスタービームに、エタノールのクラスターが多く含まれる条件で、基板の洗浄を行うプロセスを行う。次に、第2の基板処理工程として、ノズル21の温度を30℃等の低温に設定し、クラスタービームに、アルゴンのクラスターが多く含まれる条件で、基板表面の平坦化を行うプロセスを行う。これにより、洗浄と平坦化とを一つのチャンバー内で行うことができる。
【0039】
次に、第2の方法について説明する。第2の方法は、基板に付着しているレジストを除去するための基板処理方法であり、液体原料としてイソプロピルアルコール(IPA;Isopropyl alcohol:CO)を用い、気体原料としてアルゴンまたは窒素(N)を用いる。最初に、第1の基板処理工程として、ノズル21の温度を高温に設定し、クラスタービームに、IPAのクラスターが多く含まれる条件で、基板表面に付着しているレジストを溶解するプロセスを行う。次に、第2の基板処理工程として、ノズル21の温度を低温に設定し、クラスタービームに、アルゴンまたは窒素のクラスターが多く含まれる条件で、基板に付着しているレジストの残渣の除去を行うプロセスを行う。これにより、レジストの溶解と残渣の除去とを一つのチャンバー内で行うことができる。
【0040】
次に、第3の方法について説明する。第3の方法は、基板におけるエッチング後の残渣を除去するための基板処理方法であり、液体原料としては、ハロゲン系残渣の場合は、水(HO)を用い、または、CF系残渣の場合には、イソプロピルアルコール(IPA)を用い、更に、気体原料としてアルゴンまたは窒素(N)を用いる。最初に、第1の基板処理工程として、ノズル21の温度を高温に設定し、クラスタービームに、水またはIPAのクラスターが多く含まれる条件で、基板表面に付着している残渣を溶解するプロセスを行う。次に、第2の基板処理工程として、ノズル21の温度を低温に設定し、クラスタービームに、アルゴンまたは窒素のクラスターが多く含まれる条件で、基板に付着している残渣の除去を行うプロセスを行う。これにより、エッチング後の残渣の溶解と除去を一つのチャンバー内で行うことができる。
【0041】
次に、第4の方法について説明する。第4の方法は、基板に付着しているHigh−k材料を除去するための基板処理方法であり、液体原料としては、アンモニア水(NHOH)を用い、気体原料として塩化水素(HCl)を用いる。最初に、第1の基板処理工程として、ノズル21の温度を高温に設定し、クラスタービームに、アンモニア水のクラスターが多く含まれる条件で、基板表面に付着しているHigh−k材料を還元するプロセスを行う。次に、第2の基板処理工程として、ノズル21の温度を低温に設定し、クラスタービームに、塩化水素のクラスターが多く含まれる条件で、基板に付着しているHigh−k材料を塩化し気化させるプロセスを行う。これにより、基板表面に付着しているHigh−k材料の除去を一つのチャンバー内で行うことができる。
【0042】
次に、第5の方法について説明する。第5の方法は、図7には不図示の第3の基板処理工程を含むものであり、基板に付着している高ドーズレジストの残渣を除去するための基板処理方法である。液体原料としてイソプロピルアルコール(IPA)を用い、気体原料として二酸化炭素(CO)とアルゴンまたは窒素を用いる。最初に、第1の基板処理工程として、ノズル21の温度を低温に設定し、クラスタービームに、二酸化炭素のクラスターが多く含まれる条件で、高ドーズレジストの表面のクラスト(Crust)層を破壊するプロセスを行う。次に、第2の基板処理工程として、ノズル21の温度を高温に設定し、クラスタービームに、IPAのクラスターが多く含まれる条件で、基板表面に付着しているレジストを溶解するプロセスを行う。次に、図7には不図示の第3の基板処理工程を行う。第3の基板処理工程では、ノズル21の温度を低温に設定し、クラスタービームに、アルゴンまたは窒素のクラスターが多く含まれる条件で、基板に付着しているレジストの残渣の除去を行うプロセスを行う。このように、第1の基板処理工程から第3の基板処理工程を行うことにより、高ドーズレジストの残渣の除去を一つのチャンバー内で行うことができる。
【0043】
尚、本実施の形態では、2工程及び3工程における基板処理を行う場合について説明したが、4工程以上の基板処理を行う場合についても、同様の方法により連続して行うことが可能である。
【0044】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0045】
10 クラスターイオンビーム発生装置
20 ノズルチャンバー
21 ノズル
22 スキマー
23 温度調節部
24 温度制御部
25 シャッター
26 クラスタービーム
30 メインチャンバー
31 イオン化部
32 加速部
33 電極部
34 基板
40 混合器
41 マスフローコントローラ
42 ポンプ
43 液体用フローコントローラ
44 ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラスタービームを発生させるクラスタービーム発生装置において、
気体原料と液体原料とを混合する混合器と、
前記混合器において混合された前記気体原料及び前記液体原料をクラスタービームとして供給するノズルと、
前記ノズルの温度を調整する温度調整部と、
を有し、
前記温度調整部により、前記ノズルの温度を変化させることにより、前記クラスタービームにおける前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率を調整することを特徴とするクラスタービーム発生装置。
【請求項2】
クラスタービームを発生させるクラスタービーム発生装置において、
気体原料と液体原料とを混合する混合器と、
前記混合器において混合された前記気体原料及び前記液体原料をクラスタービームとして供給するノズルと、
前記ノズルの温度を調整する温度調整部と、
を有し、
前記温度調整部により、前記ノズルの温度を変化させることにより、前記クラスタービームにおける前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率を調整するものであって、
前記ノズルの温度は、前記クラスターのサイズが所望のサイズとなるように定められていることを特徴とするクラスタービーム発生装置。
【請求項3】
クラスタービームを発生させるクラスタービーム発生装置において、
気体原料と液体原料とを混合する混合器と、
前記混合器において混合された前記気体原料及び前記液体原料をクラスタービームとして供給する複数のノズルと、
前記ノズルの温度を調整する温度調整部と、
を有し、
前記温度調整部により、前記ノズルの温度を変化させることにより、前記クラスタービームにおける前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率を調整するものであって、
前記複数のノズルは、各々のノズルにおける温度設定が異なるものであり、前記複数のノズルは選択して切り換えられるものであることを特徴とするクラスタービーム発生装置。
【請求項4】
前記温度調整部により前記ノズルの温度を制御する制御部を有しており、
前記制御部は前記温度調整部により前記ノズルを第1の温度及び第2の温度に設定することができ、前記第1の温度と前記第2の温度とは異なる温度であって、
前記第1の温度におけるクラスタービームの前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率と、前記第2の温度におけるクラスタービームの前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率とは、異なる値であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のクラスタービーム発生装置。
【請求項5】
前記クラスターは所定のサイズの範囲内であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のクラスタービーム発生装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のクラスタービーム発生装置を有し、
前記クラスタービーム発生装置において発生した前記クラスタービームを基板に照射し、前記基板における基板処理を行うことを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
前記制御部において、前記ノズルを前記第1の温度に設定し、第1の基板処理を行い、前記第1の基板処理の後、前記第2の温度に設定し、第2の基板処理を行う制御を行うことを特徴とする請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第1の温度は、前記クラスタービームにおいて、前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターのうち、一方が多く含まれる温度であって、
前記第2の温度は、前記クラスタービームにおいて、前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターのうち、他方が多く含まれる温度であることを特徴とする請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基板処理は、洗浄、レジストの除去、基板表面の平坦化、エッチング残渣の除去、絶縁膜の除去のうち、1または2以上の処理を行うものであることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項10】
クラスタービームを発生させるクラスタービーム発生方法において、
前記クラスタービームは、気体原料と液体原料とを混合する混合器と、前記混合器において混合された前記気体原料及び前記液体原料をクラスタービームとして供給するノズルと、前記ノズルの温度を調整する温度調整部とを有するクラスタービーム発生装置により発生されるものであって、
前記温度調整部により、前記ノズルの温度を変化させることにより、前記クラスタービームにおける前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率を調整することを特徴とするクラスタービーム発生方法。
【請求項11】
クラスタービームを発生させるクラスタービーム発生方法において、
前記クラスタービームは、気体原料と液体原料とを混合する混合器と、前記混合器において混合された前記気体原料及び前記液体原料をクラスタービームとして供給するノズルと、前記ノズルの温度を調整する温度調整部とを有するクラスタービーム発生装置により発生されるものであって、
前記温度調整部により、前記ノズルの温度を変化させることにより、前記クラスタービームにおける前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率を調整するものであり、
前記ノズルの温度は、前記クラスターのサイズが所望のサイズとなるように定められていることを特徴とするクラスタービーム発生方法。
【請求項12】
クラスタービームを発生させるクラスタービーム発生方法において、
前記クラスタービームは、気体原料と液体原料とを混合する混合器と、前記混合器において混合された前記気体原料及び前記液体原料をクラスタービームとして供給する複数のノズルと、前記ノズルの温度を調整する温度調整部とを有するクラスタービーム発生装置により発生されるものであって、
前記温度調整部により、前記ノズルの温度を変化させることにより、前記クラスタービームにおける前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率を調整するものであり、
前記複数のノズルは、各々のノズルにおける温度設定が異なるものであり、前記複数のノズルは選択して切り換えられるものであることを特徴とするクラスタービーム発生方法。
【請求項13】
前記温度調整部により前記ノズルの温度を制御する制御部を有しており、
前記制御部は前記温度調整部により前記ノズルを第1の温度及び第2の温度に設定することができ、前記第1の温度と前記第2の温度とは異なる温度であって、
前記第1の温度におけるクラスタービームの前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率と、前記第2の温度におけるクラスタービームの前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターとの比率とは、異なる値であることを特徴とする請求項10から12のいずれかに記載のクラスタービーム発生方法。
【請求項14】
前記クラスターは所定のサイズの範囲内であることを特徴とする請求項10から13のいずれかに記載のクラスタービーム発生方法。
【請求項15】
請求項10から14のいずれかに記載のクラスタービーム発生方法において発生した前記クラスタービームを基板に照射し、前記基板における基板処理を行うことを特徴とする基板処理方法。
【請求項16】
前記ノズルを前記第1の温度に設定し、第1の基板処理を行う工程と、
前記第1の基板処理の後、前記第2の温度に設定し、第2の基板処理を行う工程と、
を有することを特徴とする請求項15に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記第1の温度は、前記クラスタービームにおいて、前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターのうち、一方が多く含まれる温度であって、
前記第2の温度は、前記クラスタービームにおいて、前記液体原料のクラスターと前記気体原料のクラスターのうち、他方が多く含まれる温度であることを特徴とする請求項15または16に記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記基板処理は、洗浄、レジストの除去、基板表面の平坦化、エッチング残渣の除去、絶縁膜の除去のうち、1または2以上の処理を行うものであることを特徴とする請求項15から17のいずれかに基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−249544(P2011−249544A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120919(P2010−120919)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】