説明

クラッド材の材料の連続分離回収装置、および、クラッド材の材料の連続分離回収方法

【課題】クラッド材から、ろう材および芯材を効率的に回収することで、操業性、生産性に優れると共に、回収するろう材および芯材の品質に優れるクラッド材の材料の連続分離回収装置、および、クラッド材の材料の連続分離回収方法を提供する。
【解決手段】連続分離回収装置100は、処理槽10と、温度域区分け手段20と、処理液温度保持手段30と、クラッド材投入手段40と、クラッド材搬送手段50と、溶融ろう材回収手段60と、溶融芯材回収手段70と、を備え、クラッド材搬送手段50は、溶融ろう材を落下させる網目Mを有する筒体51と、筒体51を回転させる回転手段52と、を有し、筒体51は、低温域Z1の上方から、高温域Z2の下方に向けて傾斜するように設けられおり、温度域区分け手段20は、区切り板20が、貫通穴Hの周辺部位において、低温域Z1の上方から、高温域Z2の下方に向けて、傾斜するように設けられている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器等に使用されるアルミニウム合金クラッド材のスクラップを、ろう材と芯材とに分離して回収するクラッド材の材料の連続分離回収装置、および、クラッド材の材料の連続分離回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のラジエータ等の熱交換器においては、軽量化のためにアルミニウム合金化が進み、そのため、熱交換器に使用されるアルミニウム合金クラッド材(ブレージングシート)の生産も増加している。一方、クラッド材は、芯材とろう材とをクラッドしたものであるが、このようなクラッド材の製造過程においては、多量のスクラップ、すなわち、異種合金間の圧着工程および熱間圧延工程での前後端の不良部分を切落したクロップ材、あるいは熱間圧延・冷間圧延の各工程での幅方向両側の不良部分を切落したトリミング材、さらにはコイルでの寸法調整のために切落したオフゲージ部等が発生する。このような製造工程中で発生するスクラップの量は極めて多いため、再利用する際のコストが増え、事業コストを増大させる要因となっている。そのため、クラッド材の製造メーカーにおいては、スクラップを効率的に回収・処理し、再使用を図ることが重要な技術的課題となっている。
【0003】
ここで、一般にアルミニウム合金クラッド材に皮材として使用されているろう材は、7〜12質量%もの多量のSiを含有するアルミニウム合金であるのに対し、芯材としては、一般にAl−Mn系合金等が用いられており、両者の合金成分組成は全く異なる。また、クラッド材全質量に対して、芯材は通常60〜90質量%を占めている。このようなクラッド材のスクラップをそのまま再溶融させた場合には、芯材でもろう材でもない中途半端な合金組成の材料となり、そのため、回収材をクラッド材の芯材やろう材にそのまま再利用することはできず、他の低品位材料の用途に用いたり、あるいは部分的な配合材料として用いたりせざるを得ない状況であった。
【0004】
そこで、クラッド材のスクラップを、芯材やろう材に再利用する技術として、例えば、特許文献1には、芯材に皮材を接合してなるクラッド材を、皮材の液相線温度以上の雰囲気温度で加熱溶融し、クラッド材について皮材の材料成分を分離回収することにより、芯材と皮材の両方を分けて回収する技術が提案されている。また、特許文献2には、Al合金からなる芯材にAl合金からなるろう材がクラッドされたブレージングシートを、ろう材とほぼ同一組成の金属または合金からなり、芯材の融点より低い温度の溶湯中に浸して、ろう材を芯材から溶解分離させる技術が提案されている。さらに、特許文献3には、少なくともろう材とろう材より融点が高い芯材とからなるアルミニウム合金ブレージングシートのスクラップを、芯材の融点より低くろう材の融点より高い温度に保たれた、このろう材に対して比重が0.3以上異なる液体中に浸漬して、ろう材を芯材から溶融分離させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−218624号公報(段落0007)
【特許文献2】特開平07−34150号公報(段落0007)
【特許文献3】特開2001−3121号公報(段落0008〜0015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の技術においては、以下に示すような問題点を有している。
これらの技術は、いずれもろう材のみを部分溶解して除去する方法であり、残った芯材部分の溶解に関しては提案されていない。そのため、いずれの技術においても、残った芯材を再溶解する必要があり、酸化によるロスが発生し、また、再溶解前に、芯材の運搬や洗浄等を行う必要あり、手間がかかるという問題がある。
【0007】
また、特許文献1に記載の技術では、雰囲気炉にてろう材を分離するため、ろう材が溶融する温度になるまで時間がかかるという問題や、このために、ろう材と芯材の界面で合金化が起こり、ろう材および芯材の効率的な回収を妨げるという問題がある。さらに、この処理は、バッチ式であるため、連続的に操業することができず、操業性、生産性に劣るという問題がある。
【0008】
また、特許文献1、2に記載の技術では、いずれもスクラップを籠のような容器に入れて処理しているが、この技術においても、バッチ式であるため、連続的に操業することができず、操業性、生産性に劣るという問題がある。また、特許文献1に記載の技術では、ろう材のみならず、芯材まで溶解してしまう問題があり、少なくともろう材の厚さをある程度そろえる必要がある。さらに、いずれの場合でも、ろう材溶解に使用した液体が芯材表面に付着するため、溶解液の持ち出しがあり、ろう材を溶解した後に芯材を溶解する場合には、芯材溶解時に、その混入が避けられない。
【0009】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたもので、クラッド材から、ろう材および芯材を効率的に回収することで、操業性、生産性に優れると共に、回収するろう材および芯材の品質に優れるクラッド材の材料の連続分離回収装置、および、クラッド材の材料の連続分離回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係るクラッド材の材料の連続分離回収装置(以下、適宜、連続分離回収装置という)は、アルミニウム合金からなる芯材の表面に、少なくともアルミニウム合金からなるろう材を備えたクラッド材のスクラップを、前記ろう材、および、前記芯材よりも比重が小さい処理液であり、前記ろう材の液相線以上、前記芯材の液相線未満の温度に調整した前記処理液の領域に浸漬させた後、前記芯材の液相線以上の温度に調整した前記処理液の領域に浸漬させ、前記スクラップから、前記ろう材と前記芯材とを連続的に溶融し、分離させて回収するクラッド材の材料の連続分離回収装置であって、前記処理液を収容する処理槽と、前記処理槽内に設けられ、前記処理槽内を低温域と高温域の領域に区切る温度域区分け手段と、前記処理槽内における前記低温域の処理液および前記高温域の処理液を所定温度にそれぞれ保持する処理液温度保持手段と、前記処理槽の低温域に前記クラッド材を投入するクラッド材投入手段と、前記クラッド材投入手段で投入された前記クラッド材を収納し、予め設定された回転速度で回転させながら、前記ろう材と分離された前記芯材を前記高温域に搬送するクラッド材搬送手段と、前記低温域の処理液で溶融されて、前記低温域における前記処理槽の底部に沈殿した溶融ろう材を回収する溶融ろう材回収手段と、前記高温域の処理液で溶融されて、前記高温域における前記処理槽の底部に沈殿した溶融芯材を回収する溶融芯材回収手段と、を備え、前記クラッド材搬送手段は、溶融したろう材を落下させる網目を有する筒体と、この筒体を回転させる回転手段と、を有し、前記筒体は、前記処理槽内において、前記低温域の上方から、前記高温域の下方に向けて、傾斜するように設けられおり、前記温度域区分け手段は、前記筒体を貫通させる貫通穴を有する区切り板が、前記貫通穴の周辺部位において、前記低温域の上方から、前記高温域の下方に向けて、傾斜するように設けられている構成とした。
【0011】
このような構成によれば、温度域区分け手段により、処理槽内の低温域と高温域に、処理液が分けて収容される。その後、処理液温度保持手段により、低温域の処理液および高温域のそれぞれの処理液が所定温度に保持され、この処理槽の低温域に、クラッド材投入手段によりクラッド材が投入される。そして、クラッド材搬送手段により、クラッド材が前記処理槽内において前記低温域の上方から、前記高温域の下方に向けて搬送されながら、低温域の処理液によりろう材が溶融され、筒体の網目から溶融ろう材が落下すると共に、芯材は、高温域に搬送され、高温域の処理液により溶融される。次に、溶融ろう材回収手段により、沈殿した溶融ろう材が回収されると共に、溶融芯材回収手段により、沈殿した芯材が回収される。そして、このようなクラッド材搬送手段を用いることで、これらの作用が連続して行われる。
【0012】
請求項2に係る連続分離回収装置は、前記回転手段が、前記筒体を周期的に正逆回転させる正逆回転手段を備える構成とした。
このような構成によれば、筒体を周期的に正逆回転させることで、クラッド材が筒体内で、激しく撹拌され、溶融ろう材と芯材の分離が促進される。
【0013】
請求項3に係る連続分離回収装置は、前記クラッド材搬送手段が、前記筒体より短い長さの棒状部材を、前記筒体内に収納する構成とした。
このような構成によれば、筒体の回転と共に、棒状部材が筒体内を遊離自在に動き、筒体に振動を与える。これにより、溶融ろう材と芯材の分離が促進される。
【0014】
請求項4に係る連続分離回収装置は、前記クラッド材搬送手段が、前記筒体内における前記低温域と前記高温域の境界の上部近傍に遮断板を備え、前記遮断板は、板面が前記クラッド材の搬送方向に対面するように、前記処理槽の内壁に接続された固定手段を介して固定されて設けられている構成とした。
このような構成によれば、高温域に搬送された芯材が熱対流によって上部に舞い上がった際、この芯材が遮断板に当たることで、低温域に逆流するのが防止される。また、遮断板の部位において、低温域の処理液と高温域の処理液の接触が防止される。
【0015】
請求項5に係る連続分離回収装置は、前記低温域における前記処理槽内の底部の少なくとも一箇所に、前記筒体の傾斜による前記クラッド材の搬送方向に沿って、前記低温域において仕切り間を形成する仕切り板を有し、前記仕切り間毎に、前記溶融ろう材回収手段を備え、前記高温域における前記処理槽内の底部の少なくとも一箇所に、前記筒体の傾斜による前記クラッド材の搬送方向に沿って、前記高温域において仕切り間を形成する仕切り板を有し、前記仕切り間毎に、前記溶融芯材回収手段を備える構成とした。
【0016】
このような構成によれば、クラッド材がクラッド材搬送手段で搬送される際の処理時間(すなわち、クラッド材が低温域の処理液に浸漬している時間)に応じた溶融ろう材が仕切り間に堆積され、回収される。また、芯材がクラッド材搬送手段で搬送される際、および、クラッド材搬送手段から排出された際の処理時間(すなわち、芯材が高温域の処理液に浸漬している時間)に応じた溶融芯材が仕切り間に堆積され、回収される。
【0017】
請求項6に係る連続分離回収装置は、前記低温域における前記処理槽の底部が、中央または周縁が最深部となるテーパ形状をなし、前記溶融ろう材回収手段が、前記低温域における最深部に位置するように設けられており、前記高温域における前記処理槽の底部が、中央または周縁が最深部となるテーパ形状をなし、前記溶融芯材回収手段が、前記高温域における最深部に位置するように設けられている構成とした。
【0018】
このような構成によれば、低温域における処理槽の底部の中央または周縁が最深部となる部分に導かれて、沈殿した溶融ろう材が下方の底部先端に向けて集積する。また、高温域における処理槽の底部の中央または周縁が最深部となる部分に導かれて、沈殿した溶融芯材が下方の底部先端に向けて集積する。
【0019】
請求項7に係る連続分離回収装置は、前記低温域における前記仕切り間の底部が、前記仕切り間毎に、中央または周縁が最深部となるテーパ形状をなし、前記溶融ろう材回収手段が、前記仕切り間毎に、前記低温域における最深部に位置するように設けられており、前記高温域における前記仕切り間の底部が、前記仕切り間毎に、中央または周縁が最深部となるテーパ形状をなし、前記溶融芯材回収手段が、前記仕切り間毎に、前記高温域における最深部に位置するように設けられている構成とした。
【0020】
このような構成によれば、低温域の処理槽の仕切り間毎の底部における中央または周縁が最深部となる部分に導かれて、沈殿した溶融ろう材が下方の底部先端に向けて集積する。また、高温域の処理槽の仕切り間毎の底部における中央または周縁が最深部となる部分に導かれて、沈殿した溶融芯材が下方の底部先端に向けて集積する。
【0021】
請求項8に係る連続分離回収装置は、前記溶融ろう材回収手段が、前記低温域における前記処理槽内の底部またはその周縁に、前記溶融ろう材を排出する溶融ろう材排出口を備えると共に、前記溶融ろう材の回収を制御する溶融ろう材回収制御手段を備え、前記溶融ろう材回収制御手段は、前記低温域における前記処理槽内の底部近傍に設置された電極を介して、前記溶融ろう材および処理液の電気抵抗値を測定する電気抵抗値測定手段と、この電気抵抗値測定手段で測定された電気抵抗値が、前記溶融ろう材の電気抵抗値から、前記処理液の電気抵抗値へ変化したときに、この変化に基づいて、前記溶融ろう材排出口を塞ぐ溶融ろう材回収停止手段と、を備える構成とした。
【0022】
このような構成によれば、溶融ろう材の回収において、低温域の底部に溜まった溶融ろう材が少なくなった際、処理槽内の溶融ろう材および処理液における電気抵抗値の変化に基づいて、溶融ろう材回収制御手段により、溶融ろう材の回収が停止される。
【0023】
請求項9に係る連続分離回収装置は、前記溶融芯材回収手段が、前記高温域における前記処理槽内の底部またはその周縁に、前記溶融芯材を排出する溶融芯材排出口を備えると共に、前記溶融芯材の回収を制御する溶融芯材回収制御手段を備え、前記溶融芯材回収制御手段は、前記高温域における前記処理槽内の底部近傍に設置された電極を介して、前記溶融芯材および処理液の電気抵抗値を測定する電気抵抗値測定手段と、この電気抵抗値測定手段で測定された電気抵抗値が、前記溶融芯材の電気抵抗値から、前記処理液の電気抵抗値へ変化したときに、この変化に基づいて、前記溶融芯材排出口を塞ぐ溶融芯材回収停止手段と、を備える構成とした。
【0024】
このような構成によれば、溶融芯材の回収において、高温域の底部に溜まった溶融芯材が少なくなった際、処理槽内の溶融芯材および処理液における電気抵抗値の変化に基づいて、溶融芯材回収制御手段により、溶融芯材の回収が停止される。
【0025】
請求項10に係る連続分離回収装置は、前記処理液が、溶融塩である構成とした。
このような構成によれば、処理液として溶融塩を用いることで、ろう材および芯材の回収効率が高くなり、また、溶融塩は密度が小さいため、溶融ろう材および溶融芯材が沈降しやすくなる。
【0026】
請求項11に係るクラッド材の材料の連続分離回収方法(以下、適宜、連続分離回収方法という)は、アルミニウム合金からなる芯材の表面に、少なくともアルミニウム合金からなるろう材を備えたクラッド材のスクラップを、前記ろう材、および、前記芯材よりも比重が小さい処理液であり、前記ろう材の液相線以上、前記芯材の液相線未満の温度に調整した前記処理液の領域に浸漬させた後、前記芯材の液相線以上の温度に調整した前記処理液の領域に浸漬させ、前記スクラップから、前記ろう材と前記芯材とを連続的に溶融し、分離させて回収するクラッド材の材料の連続分離回収方法であって、処理液温度調整工程と、クラッド材投入工程と、クラッド材分離工程と、処理物回収工程と、を含むものである。
【0027】
このような方法によれば、処理液温度調整工程において、処理槽内における低温域と高温域の領域に区分けして収容された前記低温域の処理液および前記高温域のそれぞれの処理液の温度が調整され、クラッド材投入工程において、前記処理液の温度をそれぞれ調整した処理槽内の低温域に前記クラッド材が投入される。そして、クラッド材分離工程において、回転筒装置を用いることで、前記処理槽内において、前記低温域の上方から、前記高温域の下方に向けて、予め設定された回転速度で、傾斜して処理槽内に回転自在に設置させた筒体を回転させながらクラッド材が搬送されて、前記ろう材と分離した前記芯材が前記高温域に搬送され、前記処理液を介して、前記ろう材と前記芯材とに分離されると共に溶融される。次に、処理物回収工程において、前記低温域の処理液で溶融されて、前記低温域における前記処理槽の底部に沈殿した溶融ろう材が回収されると共に、前記高温域の処理液で溶融されて、前記高温域における前記処理槽の底部に沈殿した溶融芯材が回収される。そして、回転筒装置を用いることで、これらの作用が連続して行われる。
【0028】
請求項12に係る連続分離回収方法は、前記クラッド材分離工程において、前記筒体を周期的に正逆回転させることを特徴とする。
このような方法によれば、筒体が周期的に正逆回転することで、クラッド材が筒体内で、激しく撹拌され、溶融ろう材と芯材の分離が促進される。
【0029】
請求項13に係る連続分離回収方法は、前記クラッド材分離工程において、前記筒体内に、前記筒体より短い長さの棒状部材を収納し、前記棒状部材を収納した前記筒体を回転させることを特徴とする。
このような方法によれば、筒体の回転と共に、棒状部材が筒体内で遊離自在に動き、筒体に振動が与えられ、溶融ろう材と芯材の分離が促進される。
【発明の効果】
【0030】
本発明の請求項1に係る発明によれば、クラッド材を連続して処理することができるため、ろう材と芯材の回収効率が向上し、生産効率を向上させることができる。また、組成安定性に優れ、再利用する材料として高品質なろう材および芯材を回収することができる。
本発明の請求項2、3に係る発明によれば、溶融ろう材と芯材の分離が促進されるため、ろう材および芯材の分離・回収効率が向上する。また、回収される芯材に、ろう材成分が残存しにくくなるため、より高品質な芯材を回収することができる。
【0031】
本発明の請求項4に係る発明によれば、芯材の搬送途中において、芯材の逆流が防止されるため、クラッド材(芯材)の搬送が円滑に行われる。また、遮断板の部位において、低温の処理液と高温の処理液の接触が防止されるため、これらの混合が抑制される。
本発明の請求項5に係る発明によれば、処理時間に応じた溶融ろう材を回収することができるため、ろう材の回収後の成分の調整や、成分組成に応じたグレード分けを行いやすくなる。また、処理時間に応じた溶融芯材を回収することができるため、芯材の回収後の成分の調整や、成分組成に応じたグレード分けを行いやすくなる。
【0032】
本発明の請求項6に係る発明によれば、溶融ろう材や溶融芯材の回収がより行いやすくなる。また、溶融ろう材と共に低温域の処理液が回収されることや、溶融芯材と共に、高温域の処理液が回収されることを防止しやすくなる。
本発明の請求項7に係る発明によれば、仕切り間毎の溶融ろう材や溶融芯材の回収がより行いやすくなる。また、仕切り間毎において、溶融ろう材と共に低温域の処理液が回収されることや、仕切り間毎において、溶融芯材と共に、高温域の処理液が回収されることを防止しやすくなる。
【0033】
本発明の請求項8に係る発明によれば、溶融ろう材と共に、低温域の処理液が回収されるのを、より防止しやすくなる。
本発明の請求項9に係る発明によれば、溶融芯材と共に、高温域の処理液が回収されるのを、より防止しやすくなる。
本発明の請求項10に係る発明によれば、ろう材および芯材の回収効率が高くなる。
【0034】
本発明の請求項11に係る発明によれば、クラッド材を連続して処理することができるため、ろう材と芯材の回収効率が向上し、生産効率を向上させることができる。また、回収されたろう材および芯材は、組成安定性に優れているため、再利用する材料として、高品質なものとなる。
本発明の請求項12、13に係る発明によれば、溶融ろう材と芯材の分離を促進させることができ、ろう材および芯材の分離・回収効率の向上を図ることができる。また、回収される芯材に、ろう材成分が残存しにくくなるため、回収される芯材が、より高品質なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る連続分離回収装置を構成する主要部を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)は、本発明に係る連続分離回収装置を構成する主要部を模式的に示す断面図であり、(b)は、温度域区分け手段の構造を部分的に示す模式図であり、(c)は、温度域区分け手段の他の構造を説明するための模式図である。
【図3】筒体内に棒状部材を挿入した状態を示す模式図であり、(a)は、連続分離回収装置を構成する主要部を模式的に示す断面図、(b)は、棒状部材の形状を模式的に示す斜視図、(c)は、係止用突起を備えた筒体を模式的に示す斜視図、(d)は、棒状部材が、係止用突起を備えた筒体内を移動する様子を説明するための模式図である。
【図4】筒体内に遮断板を設けた状態を示す模式図であり、(a)は、連続分離回収装置を構成する主要部を模式的に示す断面図、(b)は、遮断板の形状を模式的に示す斜視図である。
【図5】処理槽の底部に仕切り板を設けた状態を示す模式図であり、(a)は、連続分離回収装置を構成する主要部を模式的に示す断面図、(b)は、処理槽の底部の状態を模式的に示す斜視図である。
【図6】処理槽の底部を、中央が最深部となるテーパ形状とした状態を示す模式図であり、(a)は、連続分離回収装置を構成する主要部を模式的に示す断面図、(b)は、処理槽の底部の状態を模式的に示す斜視図である。
【図7】処理槽の底部を、周縁が最深部となるテーパ形状とした状態を示す模式図であり、(a)は、処理槽の底部の状態を模式的に示す斜視図、(b)は、処理槽の底部の状態を模式的に示す側面図である。
【図8】仕切り間を設けた場合に、処理槽の底部を、テーパ形状とした状態を示す模式図であり、(a)は、処理槽の底部を、仕切り間毎に中央が最深部となるテーパ形状とした状態を示す斜視図、(b)は、処理槽の底部を、仕切り間毎に周縁が最深部となるテーパ形状とした状態を示す斜視図である。
【図9】(a)、(b)は、溶融ろう材回収制御手段、および、溶融芯材回収制御手段について説明するための模式図である。
【図10】比較例で用いる装置において、区切り板を水面に対して垂直に設けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、図面を参照して本発明に係るクラッド材の材料の連続分離回収装置およびクラッド材の材料の連続分離回収方法ついて詳細に説明する。
【0037】
≪クラッド材の材料の連続分離回収装置≫
図1、2に示すように、連続分離回収装置100は、クラッド材1のスクラップを、低温の処理液Wの領域(低温域Z1)に浸漬させた後、つづけて高温の処理液Wの領域(高温域Z2)に浸漬させ、スクラップから、ろう材(溶融ろう材)2と芯材(溶融芯材)3とに連続的に溶融・分離して回収するものであり、処理液Wと、処理槽10と、温度域区分け手段20と、処理液温度保持手段30と、クラッド材投入手段40と、クラッド材搬送手段50と、溶融ろう材回収手段60と、溶融芯材回収手段70と、を主に備える。
【0038】
なお、本発明の連続分離回収装置100において対象となるクラッド材1は、アルミニウム合金からなる芯材3の表面に、少なくともアルミニウム合金からなるろう材2を備えたクラッド材1のスクラップである。ここで、クラッド材1としては、芯材3の片面にろう材2を備えた2層のクラッド材1、芯材3の両面にろう材2を備えた3層のクラッド材1の他、さらに犠牲材や中間材等の側材を備えた4層構造以上のクラッド材1も対象となる。なお、芯材3は、犠牲材や中間材を含むクラッド材1の場合も含まないクラッド材1の場合も同様であり、犠牲材や中間材も、ろう材2の液相線温度と比較して十分に液相線温度が高く、芯材3と共に回収できることから、以下、代表して、芯材3について説明する。
【0039】
ここで、後記するように、ろう材2や芯材3は、使用用途により種々の成分組成の種類のものがあるが、液相線温度が同程度のろう材2と、液相線温度が同程度の芯材3との組み合わせのクラッド材1を、1つのグループとして処理することが好ましい。さらに、サイズも同程度で揃えて処理することが好ましい。なお、成分組成によるグループ分けは、低温域Z1の処理液W、および、高温域Z2の処理液Wの設定温度との兼ね合いを考慮して調整すればよい。例えば、芯材3に犠牲材や中間材を含むクラッド材1の場合にも、低温域Z1の処理液Wは、芯材3、犠牲材、中間材のいずれかの液相線温度のうち、いちばん低い液相線温度未満に設定すればよく、高温域Z2の処理液Wは、芯材3、犠牲材、中間材のいずれかの液相線温度のうち、いちばん高い液相線温度以上に設定すればよい。なお、比重についても、これらのうち、いちばん小さいものを基準とすればよい。また、サイズについては、処理するサイズにより、主に搬送速度を調整すればよい。なお、投入するクラッド材1の大きさは、厚さが0.2〜100mm程度、長さが30〜200mm程度であることが好ましい。この程度の大きさであれば、本装置において、より効率的に処理することができる。なお、図1、2においては、便宜上、クラッド材1等を見やすく図示している。
以下、各構成について説明する。
【0040】
<処理槽>
図1、2に示すように、処理槽10は、処理液Wを収容するものであり、後記するように、この処理槽10内において、クラッド材1をクラッド材搬送手段50で搬送しながら、ろう材2を溶融させ、この溶融したろう材(溶融ろう材)2を処理槽10の底部11(11a)に沈殿させると共に、芯材3を溶融させ、この溶融した芯材(溶融芯材)3を処理槽10の底部11(11b)に沈殿させる。処理槽10の大きさは、例えば、長さが5m程度、幅が1m程度、厚さ(深さ)が2m程度であればよいが、特に限定されるものではなく、他の構成との兼ね合いのもと、適宜大きさを決定すればよい。また、処理槽10の材質は、処理液Wに侵されない材料を用いたものであれば、特に限定されるものではないが、一般には、セラミックスや鋼で製造するのが好ましい。
【0041】
<処理液>
[低温域の処理液]
低温域Z1の処理液W(以下、適宜、低温処理液W1という)は、浸漬したクラッド材1について、ろう材2を溶融させることにより、ろう材2と芯材(ここでは、固体芯材)3とに分離するものである。
ろう材2と芯材3を分離するには、芯材3を固体として保持したまま、ろう材2を溶融して液体にしなければならない。よって、低温処理液W1は、ろう材2の液相線以上(ろう材2が完全に液体になる温度以上)、芯材3の液相線未満(芯材3が完全に液体になる温度未満)の温度である必要がある。
【0042】
ろう材2の液相線温度は、ろう材成分により異なり、Al−Si系ろう材の場合、SiのほかにMgやZnやCuが添加されていると低下する。また、Zn−Al系ろう材のように、さらに液相線温度の低いろう材も使用されつつある。このため、各ろう材の成分に応じた設定温度が必要である。ZnやCuが添加されていないAl−Siろう材では、一般的には580℃以上の温度で行えばいい。
【0043】
一方、芯材3としては、Al−Mn系合金が主に使用されている。この系の合金も添加元素により液相線温度は変化する。一般的に芯材として多く使用されている3003合金では、液相線温度は約650℃である。このため、一般的には580℃から630℃の範囲に低温処理液W1を加熱すればよい。なお、温度が高くなると、若干低温域で芯材3が溶融するため、好ましくは630℃以下に加熱することが好ましい。
【0044】
また、本発明に用いる低温処理液W1としては、溶融ろう材2よりも比重が小さい処理液である必要がある。低温処理液W1の比重が、溶融ろう材2以下であると、溶融ろう材2が低温処理液W1中で沈降せず、処理槽10の底部11(11a)に沈殿しないためである。また、比重が近いと、ろう材2の分離に時間がかかることから、低温処理液W1と溶融ろう材2の比重が、0.3程度以上離れていることが好ましい。例えば、Al−11質量%Si合金の600℃で溶融しているときの比重は約2.3であるため、このときの低温処理液W1の比重は、2.0程度以下が好ましい。
【0045】
[高温域の処理液]
高温域の処理液W(以下、適宜、高温処理液W2という)は、溶融ろう材2と分離されて、浸漬した芯材(固体芯材)3を溶融させるものである。
本装置では、芯材3を溶融芯材3として回収するため、固体芯材3を溶融して液体にしなければならない。よって、高温処理液W2は、溶融芯材3の液相線以上(芯材3が完全に液体になる温度以上)の温度である必要がある。
【0046】
前記のとおり、芯材3としては、Al−Mn系合金が主に使用されている。この系の合金も添加元素により液相線温度は変化する。一般的に芯材として多く使用されている3003合金では、液相線温度は約650℃である。このため、一般的には660〜800℃の範囲に高温処理液W2を加熱すればよい。なお、経済的な観点や操業上の便宜の観点等から、好ましくは750℃以下に加熱することが好ましい。
【0047】
また、本発明に用いる高温処理液W2としては、溶融芯材3よりも比重が小さい処理液である必要がある。高温処理液W2の比重が、溶融芯材3以下であると、溶融芯材3が高温処理液W2中で沈降せず、処理槽10の底部11(11b)に沈殿しないためである。また、比重が近いと、芯材3の沈降に時間がかかることから、高温処理液W2と溶融芯材3の比重が、0.3程度以上離れていることが好ましい。例えば、Al−1質量%Mn合金の670℃で溶融しているときの比重は約2.37であるため、このときの高温処理液W2の比重は、2.0程度以下が好ましい。
【0048】
処理液Wの種類としては、溶融金属や溶融塩が挙げられるが、溶融塩を用いることが好ましい。溶融塩は、アルミニウムに対する溶解度が非常に小さいため、ろう材2および芯材3の回収効率が高く、また、密度も小さいため、溶融ろう材2および溶融芯材3を沈降させやすい。溶融塩としては、例えば、NaCl−KCl−CaCl、KCl−NaCl−BaCl、KF−AlF等の混合塩が挙げられる。
【0049】
また、これら溶融塩に多少の添加物を添加した溶融塩でもよい。アルミニウム合金との腐食性を考慮すると硝酸塩が好ましいが、短時間で分離処理を行い、その後の洗浄を完全に行えば塩化物の溶融塩でもよい。このように、溶融ろう材2および溶融芯材3より比重の小さい処理液を用いることで、ろう材2と芯材3との分離が可能であり、また、溶融ろう材2および溶融芯材3を沈殿(沈降)させることができる。また、薄い板厚でもろう材2と芯材3との分離が可能となる。
【0050】
<温度域区分け手段>
図1、2に示すように、温度域区分け手段20は、処理槽10内に設けられ、処理槽10内を低温域Z1と高温域Z2の領域に区切る手段である。
温度域区分け手段20は、板状の部材(区切り板)であり、図2(a)に示すように、低温処理液W1と高温処理液W2が混ざらないように、処理槽10内の側壁と底面に接続させると共に、その高さが処理液Wの水面よりも上になるように配置する。温度域区分け手段(区切り板)20の材質は、処理液Wに侵されない材料を用いたものであれば、特に限定されるものではないが、熱伝導性がないものを用いるのが好ましい。また、区切り板20の大きさや、処理槽10内における配置の位置等も、処理槽10の大きさ、筒体51の長さ、回収する溶融ろう材2および溶融芯材3の用途、処理液Wの量等に応じて適宜調整すればよい。なお、クラッド材1の搬送経路を長くすることで、ろう材2を溶融させやすくするため、区切り板20は、貫通穴Hが処理槽10の中央よりも、やや高温域Z2側に位置するように設けるのが好ましい。
【0051】
ここで、図2(a)〜(c)に示すように、温度域区分け手段20は、筒体51を貫通させる貫通穴Hを有する区切り板20が、この貫通穴Hの周辺部位において、低温域Z1の上方から、高温域Z2の下方に向けて、傾斜するように設ける。
前記のとおり、温度域区分け手段20は、低温処理液W1と高温処理液W2が混ざらないようにするためのものであるが、ろう材2と分離した固体芯材3を低温域Z1から高温域Z2に搬送するため、筒体51が貫通する部分では、低温処理液W1と高温処理液W2とが接触し、この部分で混ざり合う。このため、低温処理液W1は次第に温度が上昇し、高温処理液W2は次第に温度が下降する傾向にあり、各温度の調整が困難となりやすい。しかし、前記のように、貫通穴Hの周辺部位において、低温域Z1の上方から、高温域Z2の下方に向けて、区切り板を傾斜して設けることで、低温の液体が高温の液体よりも沈降しやすい対流の原理を利用し、低温処理液W1と高温処理液W2の混合による低温域Z1および高温域Z2での温度変化を抑制することができる。具体的には、以下のとおりである。
【0052】
区切り板20を水面に対して垂直に設けた場合(図10参照)には、貫通穴Hが低温域Z1と高温域Z2の境界に対して水平に配置されるため、貫通穴Hの左横方に低温域Z1が存在し(すなわち、低温処理液W1が存在する)、貫通穴Hの右横方に高温域Z2が存在する(すなわち、高温処理液W2が存在する)ようになる。しかし、図2(a)に示すように、貫通穴Hが高温域Z2の斜め上方に向くように区切り板20を傾斜させると、貫通穴Hの左斜め下方に低温域Z1が存在し(すなわち、低温処理液W1が存在する)、貫通穴Hの右斜め上方に高温域Z2が存在する(すなわち、高温処理液W2が存在する)ようになる。
【0053】
ここで、低温処理液W1と高温処理液W2が接触した際、低温処理液W1は、熱対流により下方へ沈降し(沈降流)、高温処理液W2は、熱対流により上方へ上昇する(上昇流)。このため、筒体51内における低温処理液W1と高温処理液W2が接触する部分において、これらが接触した際、沈降流である低温処理液W1は、下方へ沈降するため、貫通穴Hの左斜め下方に存在する低温域Z1に戻りやすくなり、上昇流である高温処理液W2は、上方へ上昇するため、貫通穴Hの右斜め上方に存在する高温域Z2に戻りやすくなる。このため、低温処理液W1と高温処理液W2の混合による低温域Z1および高温域Z2での温度変化を抑制することができ、低温域Z1および高温域Z2の温度を、設定温度に保ちやすくなる。さらに、後記する処理液温度保持手段30aにおける低温処理液W1の加熱を抑制させると共に、処理液温度保持手段30bにおける高温処理液W2の加熱を促進させれば、これらの温度を、より設定温度に保ちやすくなる。
【0054】
なお、図2(a)では、温度域区分け手段20を一枚の平板な区切り板20とし、この区切り板20を傾斜させることで、貫通穴Hの周辺部位が傾斜するように、区切り板20を設けている。しかし、貫通穴Hの周辺部位を傾斜させることで、貫通穴Hが高温域Z2の斜め上方に向く構成とすれば、前記の作用が発揮されるため、図2(c)に示すように、区切り板20(20A)における貫通穴Hの周辺部位(貫通穴周辺部C)のみを傾斜させてもよい。
【0055】
<処理液温度保持手段>
図1に示すように、処理液温度保持手段30(30a,30b)は、処理槽10内における低温域Z1の処理液(低温処理液W1)および高温域Z2の処理液(高温処理液W2)を所定温度にそれぞれ保持する手段である。なお、処理液温度保持手段30aにより、低温処理液W1の温度を調整し、処理液温度保持手段30bにより、高温処理液W2の温度を調整する。
【0056】
前記したように、低温処理液W1は、ろう材2の液相線以上、芯材3の液相線未満の温度に保持する必要があり、また、高温処理液W2は、芯材3の液相線以上の温度に保持する必要があるため、処理槽10内の低温処理液W1および高温処理液W2の温度を制御することが必要である。処理液温度保持手段30による温度の制御方法としては、例えば、電気抵抗発熱ヒーターを処理槽10の壁面に取り付け、この壁面を介して、発熱板を処理槽10内の処理液Wに接触させ、処理液Wの温度を調整する方法が挙げられる。また、その他の方法として、加熱コイルを処理槽10の壁内に埋め込んだり、発熱板を処理液W内に挿入する投げ込み式のヒーターを使用したりしてもよい。なお、処理液Wを冷却する冷却器を併用して用いてもよい。また、図1では、処理液温度保持手段30として、低温処理液W1用と、高温処理液W2用の2つの装置に分けているが、低温処理液W1と高温処理液W2のそれぞれの温度調整を、1つの装置で行えるものであってもよい。
【0057】
<クラッド材投入手段>
図1、2に示すように、クラッド材投入手段40は、処理槽10の低温域Z1にクラッド材1を投入する手段である。
クラッド材投入手段40は、例えば筒状(とい状)の形態をしており、投入口41から投入されたクラッド材1を処理槽10内における筒体51の内部に投入できるように、その先端(クラッド材1の排出口42側)が低温域Z1の上方に位置する筒体51の先端(クラッド材1が投入される側)に位置するように設けられている。また、クラッド材投入手段40の投入口41側は、クラッド材1を投入しやすい位置に配置される構成とすればよい。
【0058】
クラッド材投入手段40の形態は、特に限定されるものではなく、クラッド材1を処理槽10内に投入できるものであれば、どのようなものでもよい。なお、クラッド材1の投入口41は、クラッド材1を投入しやすいように、やや大きめの口径をしている。また、図2(a)に示すように、クラッド材投入手段40の先端は、クラッド材1を筒体51の内部に投入しやすいように、筒体51内に向けて湾曲させるのが好ましい。そして、図1、2では、クラッド材1の搬送路は、真っ直ぐな形態としているが、クラッド材1の落下速度を落として投入の際の勢いを抑えるため、搬送路途中で傾斜させてもよい。また、投入口41や排出口42の位置等も、他の構成との兼ね合いのもと、適宜調整すればよい。クラッド材投入手段40の材質は、処理液Wに侵されない材料を用いたものであれば、特に限定されるものではない。
【0059】
<クラッド材搬送手段>
図1、2に示すように、クラッド材搬送手段50は、クラッド材投入手段40で投入されたクラッド材1を収納し、予め設定された回転速度で回転させながら、ろう材2と分離された芯材3を高温域Z2に搬送する手段である。クラッド材搬送手段50としては、回転筒装置50を用いる。回転筒装置50を用いることで、クラッド材1におけるろう材2と芯材3の分離を連続化することができる。
【0060】
クラッド材搬送手段(回転筒装置)50は、筒体51と、回転手段52と、を主に有している。
筒体51は、溶融したろう材2を落下させるための網目Mを有する網目状のものであり、この網目Mにより、クラッド材1の搬送中に、液体になったろう材(溶融ろう材)2と固体状の芯材3とに分離することができる。この網目Mの大きさは、芯材3(クラッド材1)が搬送中に落下しない大きさであれば、特に限定されるものではない。
【0061】
筒体51は、処理槽10内において、低温域Z1の上方から、高温域Z2の下方に向けて、傾斜して設置されている。
処理槽10内においては、この傾斜により、クラッド材投入手段40を介して筒体51内に投入されたクラッド材1が、溶融ろう材2を筒体51の網目Mから落下させながら、処理槽10の低温域Z1から、処理槽10の高温域Z2に向けて搬送される。なお、筒体51の後側(芯材3を排出する側)は、高温域Z2に配置されるため、ろう材2が溶融して除去された固体芯材3は、筒体51の後側における筒体51内、あるいは低温域Z1における処理槽10の底部11bで、高温処理液W2により溶融されて溶融芯材3となる。
【0062】
回転手段52は、筒体51を回転させるためのものであり、主に、軸53と、この軸53に接続された動力付与側歯車54と、この動力付与側歯車54と噛み合わせる動力受動側歯車55と、軸53に接続されたモータ56で構成された動力伝動装置である。回転手段52による筒体51の回転は、軸53をモータ56の駆動により一方向に回転させて動力付与側歯車54を回転させることで、この動力付与側歯車54と噛み合わされた動力受動側歯車55を回転させる。この動力受動側歯車55は、支持台P1を介して筒体51に接続されており、動力受動側歯車55が回転することで筒体51が一方向に回転する。
【0063】
ここで、回転手段52は、筒体51を周期的に正逆回転させる正逆回転手段57を備えるのが好ましい。筒体51を周期的に正逆回転させることで、クラッド材1が筒体51内で、激しく撹拌され、溶融ろう材2が芯材3と分離しやすくなり、分離・回収の効率が向上する。また、回収される芯材3にろう材2成分が残存しにくくなる。正逆回転手段57は、例えば、モータ56の駆動を制御し、軸53の回転を周期的に正逆にさせる装置を、モータ56に取り付ける(内蔵させる)ことで備えることができる。
【0064】
筒体51の回転速度は、ろう材2および芯材3の融点や、処理液Wの温度等を考慮して、適宜調整すればよい。この回転手段52の調整により、筒体51の回転速度を設定し、この予め設定された回転速度で、クラッド材1(芯材3)を回転させながら搬送することができる。なお、クラッド材搬送手段50を構成する各部材の材質は、処理液Wに侵されない材料を用いたものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、液相線温度が700℃以上の金属製で構成するのが好ましい。
【0065】
<溶融ろう材回収手段>
図1、2に示すように、溶融ろう材回収手段60は、低温域Z1の処理液W(低温処理液W1)で溶融されて、低温域Z1における処理槽10の底部11aに沈殿した溶融ろう材2を回収する手段である。
ろう材2を回収する方法としては、ポンプでの吸い上げや、受け皿によるくみ出し等でもよいが、沈殿した溶融ろう材2を容易に回収できるバルブ式のドレーン(排出口)60を、処理槽10の底部11aに設置するのが好ましい。ドレーン60の大きさや形状は特に限定されるものではなく、連続分離回収装置100の動作を妨げない程度に、連続的に溶融ろう材2を回収できるものであれば、どのようなものでもよい。ドレーン60の材質は、処理液Wに侵されない材料を用いたものであれば、特に限定されるものではない。なお、溶融ろう材2の回収と共に、低温処理液W1も回収される場合もあるが、低温処理液W1の少量の回収は特に問題はない。そして、ドレーン60を介して処理槽10から回収した溶融ろう材2は、冷却後、凝固した化合物塩が付着している場合には、それらを水に溶かしたり、機械的に粉砕したりして除去し、ろう材2のみを回収する。
【0066】
<溶融芯材回収手段>
図1、2に示すように、溶融芯材回収手段70は、高温域Z2の処理液W(高温処理液W2)で溶融されて、高温域Z2における処理槽10の底部11bに沈殿した溶融芯材3を回収する手段である。
芯材3を回収する方法としては、前記溶融ろう材2での回収方法と同様であるので、ここでは説明を省略する。なお、溶融芯材3の回収と共に、高温処理液W2も回収される場合もあるが、高温処理液W2の少量の回収は特に問題はない。また、処理槽10から回収した溶融芯材3は、冷却後、凝固した化合物塩が付着している場合には、それらを水に溶かしたり、機械的に粉砕したりして除去し、芯材3のみを回収する。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。
以下に、本発明の他の実施形態について、適宜、図面を参照しながら説明する。なお、すでに説明した同じ構成については、同じ番号を付して説明を省略する。
【0068】
[棒状部材]
図3(a)、(b)に示すように、クラッド材搬送手段50は、筒体51内に、筒体51より短い長さの棒状部材Bを収納するのが好ましい。
棒状部材Bは、筒体51内に遊離自在に収納されており、筒体51の回転と共に、筒体51内を任意に(遊離自在に)動き、筒体51に振動を与える。この棒状部材Bによる筒体51の振動により、溶融ろう材2が芯材3と分離しやすくなり、分離・回収の効率が向上する。また、回収される芯材3にろう材2成分が残存しにくくなる。棒状部材Bの長さは、筒体51の長さ以上であると、筒体51内での動作に支障をきたし、また、クラッド材投入手段40に接触し、これを破損させる恐れがあるため、筒体51より短い長さとする。その他のサイズは、筒体51の回転を阻害しないものであればどのようなサイズであってもよく、筒体51の大きさや筒体51の回転速度等、他の構成との兼ね合いのもと、適宜サイズを決定すればよい。また、棒状部材Bの材質は、処理液Wに侵されない材料を用いたものであれば、特に限定されるものではない。
【0069】
ここで、図3(c)、(d)に示すように、筒体51内には、筒体51の回転と共に、棒状部材Bが筒体51内を円滑に移動できるように、クラッド材1の搬送方向に沿って、係止用突起Fを備えていることが好ましい。この係止用突起Fを備えることで、棒状部材Bが筒体51の回転により、筒体51内の下部から上部に円滑に移動できる。そして、上部に移動した棒状部材Bは、重力により筒体51内の下部に落下する(図3(d)参照)。これにより、筒体51に、より確実に振動を与えることができる。なお、筒体51の傾斜により棒状部材Bが筒体51内から落下しないように、筒体51における芯材3の排出側近傍に、ストッパー(図示省略)備えてもよい。
【0070】
[遮断板]
図4(a)、(b)に示すように、クラッド材搬送手段50は、筒体51内における低温域Z1と高温域Z2の境界の上部近傍に遮断板80を備えるのが好ましい。遮断板80は、板面がクラッド材1の搬送方向に対面するように、処理槽10の内壁に接続された固定手段81を介して固定されて設けられている。なお、ここでの板面とは、遮断板80の表面または裏面のことをいい、側面(周囲の面)は含まない。
【0071】
前記のとおり、溶融ろう材2が分離した芯材3は、筒体51の回転により高温域Z2に搬送されるが、高温処理液W2の対流(上昇流)によって、この芯材3が上部に舞い上がり、舞い上がった芯材3が、低温域Z1に逆流する場合がある。しかし、遮断板80を設けることで、芯材3が遮断板80に遮られるため、芯材3が逆流するのを防止することができる。さらには、低温域Z1と高温域Z2の境界における貫通穴Hの開口面積が減少するため、遮断板80の部位において、低温処理液W1と高温処理液W2の接触が防止される。そのため、低温処理液W1と高温処理液W2の混合を、さらに抑制することができる。
遮断板80は、クラッド材1(芯材3)の搬送を妨げないようにするため、半円状とするのが好ましい。また、遮断板80は、処理槽10の壁面に接続した固定手段(柄)81を介して、筒体51内に設置すればよい。遮断板80の大きさは、クラッド材1(芯材3)の搬送を阻害しないものであればどのような大きさであってもよく、筒体51の大きさ等、他の構成との兼ね合いのもと、適宜大きさを決定すればよい。また、遮断板80(および柄81)の材質は、処理液Wに侵されない材料を用いたものであれば、特に限定されるものではない。
【0072】
[仕切り間の形成]
図5(a)、(b)に示すように、低温域Z1における処理槽10内の底部11aの少なくとも一箇所に、筒体51の傾斜によるクラッド材1の搬送方向に沿って、低温域Z1において仕切り間Sを形成する仕切り板90を有し、仕切り間S毎に、溶融ろう材回収手段60を備えるのが好ましい。また、高温域Z2における処理槽10内の底部11bの少なくとも一箇所に、筒体51の傾斜によるクラッド材1の搬送方向に沿って、高温域Z2において仕切り間Sを形成する仕切り板90を有し、仕切り間S毎に、溶融芯材回収手段70を備えるのが好ましい。
【0073】
処理液W中を、クラッド材1が回転筒装置50で搬送される際に、その処理時間に従い、分離される溶融ろう材2の組成が徐々に変化する。また、芯材3が回転筒装置50で搬送される際および筒体51から排出された後において、その処理時間に従い、溶融芯材3の組成が変化する。そのため、処理槽10の底部11a,11bに仕切り板90を設け、さらに仕切り間S毎に溶融ろう材回収手段60および溶融芯材回収手段70(ここでは、図5では、ドレーン60,70として図示しているが、ポンプでの吸い上げや、受け皿によるくみ出し等でもよい)を設けることによって、処理時間に応じた溶融ろう材2および溶融芯材3を回収することができる。これにより、成分組成に応じた溶融ろう材2および溶融芯材3を回収することができ、回収後の成分の調整や、成分組成に応じたグレード分けを行うのに有効となる。仕切り板90の材質は、処理液Wに侵されない材料(例えば耐火物等)を用いたものであれば、特に限定されるものではない。また、仕切り板90の数、間隔、処理槽10における高さ等も、処理槽10の大きさ、回収する溶融ろう材2および溶融芯材3の用途、処理槽10内における筒体51の高さ等に応じて適宜調整すればよい。なお、仕切り板90は、低温域Z1、高温域Z2のどちらか一方にのみ設けてもよいが、両方に設けるのが好ましい。
【0074】
[底部の形状]
図6(a)、(b)に示すように、低温域Z1における処理槽10の底部11aは、中央が最深部となるテーパ形状をなし、溶融ろう材回収手段60が、低温域Z1における最深部に位置するように設けられているのが好ましい。また、高温域Z2における処理槽10の底部11bは、中央が最深部となるテーパ形状をなし、溶融芯材回収手段70が、高温域Z2における最深部に位置するように設けられているのが好ましい。
【0075】
さらには、図7(a)、(b)に示すように、低温域Z1における処理槽10の底部11aは、周縁が最深部となるテーパ形状をなし、溶融ろう材回収手段60が、低温域Z1における最深部に位置するように設ける構成としてもよい。また、高温域Z2における処理槽10の底部11bは、周縁が最深部となるテーパ形状をなし、溶融芯材回収手段70が、高温域Z2における最深部に位置するように設ける構成としてもよい。
【0076】
そして、図8(a)、(b)に示すように、底部11a,11bに仕切り間を形成する場合には、低温域Z1における仕切り間Sの底部11aは、仕切り間S毎に、中央または周縁が最深部となるテーパ形状をなし、溶融ろう材回収手段60が、仕切り間S毎に、低温域Z1における最深部に位置するように設けるようにしてもよい。また、高温域Z2における仕切り間Sの底部は、仕切り間S毎に、中央または周縁が最深部となるテーパ形状をなし、溶融芯材回収手段70が、仕切り間S毎に、高温域Z2における最深部に位置するように設けるようにしてもよい。
【0077】
処理槽10の底部11a,11bを、下方に向けて中央または周縁が最深部となるテーパ形状とすることで、沈殿した溶融ろう材2、溶融芯材3が下方の底部先端に向けて集積する。そのため、溶融ろう材2、溶融芯材3の回収がより行いやすくなる。また、溶融ろう材2、溶融芯材3と共に、低温処理液W1、高温処理液W2が回収されるのを防止しやすくなる。さらに、底部11a,11bの周縁が最深部となるテーパ形状とすることで、図7(a)、(b)に示すように、ドレーン60(70)を処理槽10の外壁下方に設けることができ、溶融ろう材2、溶融芯材3の回収がより容易になる。また、仕切り間S毎にテーパ形状とすることで、仕切り間S毎の溶融ろう材2、溶融芯材3の回収がより行いやすくなり、仕切り間S毎に低温処理液W1、高温処理液W2が回収されるのを防止しやすくなる。なお、このテーパ形状の傾斜角度や、底部先端(最深部)の位置等は、他の要件との兼ね合いのもと、適宜調整すればよい。なお、低温域Z1、高温域Z2のどちらか一方のみテーパ形状としてもよいが、両方をテーパ形状とするのが好ましい。
【0078】
[溶融ろう材回収制御手段、溶融芯材回収制御手段]
図9(a)、(b)に示すように、溶融ろう材回収手段60は、低温域Z1における処理槽10内の底部11aまたはその周縁L1に、溶融ろう材2を排出する溶融ろう材排出口G1を備えると共に(図8では、周縁L1に備えている場合について図示している)、溶融ろう材2の回収を制御する溶融ろう材回収制御手段61を備え、溶融ろう材回収制御手段61は、低温域Z1における処理槽10内の底部11a近傍に設置された電極E,eを介して、溶融ろう材2および処理液W(低温処理液W1)の電気抵抗値を測定する電気抵抗値測定手段62と、電気抵抗値測定手段62で測定された電気抵抗値が、溶融ろう材2の電気抵抗値から、処理液W(低温処理液W1)の電気抵抗値へ変化したときに、この変化に基づいて、溶融ろう材排出口G1を塞ぐ溶融ろう材回収停止手段63と、を備えるのが好ましい。
【0079】
また、溶融芯材回収手段70は、高温域Z2における処理槽10内の底部11bまたはその周縁L2に、溶融芯材3を排出する溶融芯材排出口G2を備えると共に(図8では、周縁L2に備えている場合について図示している)、溶融芯材3の回収を制御する溶融芯材回収制御手段71を備え、溶融芯材回収制御手段71は、高温域Z2における処理槽10内の底部11b近傍に設置された電極E,eを介して、溶融芯材3および処理液W(高温処理液W2)の電気抵抗値を測定する電気抵抗値測定手段72と、電気抵抗値測定手段72で測定された電気抵抗値が、溶融芯材3の電気抵抗値から、処理液W(高温処理液W2)の電気抵抗値へ変化したときに、この変化に基づいて、溶融芯材排出口G2を塞ぐ溶融芯材回収停止手段73と、を備えるのが好ましい。
【0080】
図9(a)、(b)を参照し、溶融ろう材回収制御手段を例にして、溶融ろう材回収制御手段の一例について説明する。
溶融ろう材2(および溶融芯材3)は、アルミニウム合金からなるため、電気抵抗の小さな(約2×10−7Ωm)電導体であり、一方、処理液Wとして用いる溶融塩は、アルミニウム合金と比べ電気抵抗が非常に大きい(約4×10−3Ωm)電導体である。そのため、溶融ろう材2に電流を流すと、底部11aにおける溶融ろう材2の残量が多い場合には、電気抵抗値測定手段62における下部電極Eおよび上部電極e(第1上部電極e1,第2上部電極e2,第3上部電極e3)が溶融ろう材2に浸漬するため、下部電極Eと上部電極e(e1,e2,e3)との間で通電する。そして、電気抵抗値測定手段62における抵抗計R1,R2,R3が、溶融ろう材2の電位を検出して、処理槽10内の溶融ろう材2の電気抵抗を測定し、各電気抵抗値が電気抵抗値測定手段62における処理部Dに入力され、溶融ろう材2の電気抵抗値がほぼ0Ωと算出される。この電気抵抗値は、処理部Dで信号に変換されて、溶融ろう材回収停止手段63に出力される。
【0081】
しかし、溶融ろう材2の回収に伴い、溶融ろう材2の残量が減少すると、まず、第3上部電極e3が溶融塩(低温処理液W1)に浸漬し、下部電極Eと第3上部電極e3との間で通電が起こらなくなるため、電気抵抗が上昇する。さらに、第2上部電極e2が溶融塩に浸漬すると、さらに電気抵抗が上昇し、第1上部電極e1までが溶融塩に浸漬すると、下部電極Eと上部電極e(e1,e2,e3)との間で通電量が小さくなる。そして、抵抗計R1,R2,R3が、処理槽10内の溶融塩(低温処理液W1)の電気抵抗を測定することで、処理部Dにおいて、電気抵抗値がほぼ∞Ω(ろう材2だけの時の10000倍程度)と算出される。この電気抵抗値は処理部Dで信号に変換されて、溶融ろう材回収停止手段63に出力される。
【0082】
ここで、処理部Dにおいて、例えば、所定の電気抵抗値の場合には、溶融ろう材回収停止手段63に信号を送信して溶融ろう材排出口G1を開き、電気抵抗値がほぼ∞Ωの場合には、溶融ろう材排出口G1を塞ぐように設定しておくことで、電気抵抗値の変化に基づいて、溶融ろう材2の回収を制御することができる。このようにすることで、溶融ろう材2の回収を簡便に行うことが可能となり、また、低温処理液W1の流出防止効果をより向上させることができる。
【0083】
なお、処理液Wが、溶融塩以外の場合でも、処理部Dにおいて、溶融ろう材排出口G1を塞ぐような電気抵抗値を予め設定しておくことで、電気抵抗値の変化に基づき、溶融ろう材2の回収を止めることが可能である。これらについては、溶融芯材3を回収する場合も前記と同様の作用である。なお、溶融ろう材2および溶融芯材3の電位をより的確に検出し、かつ溶融ろう材回収手段60、および、溶融芯材回収手段70の構造を簡便なものにするには、溶融ろう材回収手段60、溶融芯材回収手段70の材質は、銅製が好ましく、また、アルミニウムの中でも純度の高い1000系(望ましくは、Al純度が99.0%以上)のアルミニウム製でもよい。また、前記の回収制御手段は、溶融ろう材回収手段60、溶融芯材回収手段70のどちらか一方にのみ備えてもよいが両方に備えるのが好ましい。
【0084】
また、図9(a)では、上部電極e(e1,e2,e3)の配線が、処理槽10の壁面を貫通しているが(図9(a)では、便宜上、上部電極e、抵抗計R1,R2,R3、処理部D等は、処理槽10の下部に図示しているが、これらは、処理槽10の側部に設ければよい)、図9(b)に示すように、配線が処理槽10の上部から処理槽10外へ出る構成としてもよい。このような構成とすることで、配線や壁面に導電性のあるアルミニウム合金(溶融ろう材2、溶融芯材3)が残存しにくくなり、残存したアルミニウム合金が原因で上部電極eに電流が流れることを防止することができる。
【0085】
[その他]
連続分離回収装置100において、筒体51を振動させる振動付与手段(図示省略)を支持台P2に設けてもよい。処理槽10内で、回転筒装置50によりクラッド材1を搬送する際、筒体51の回転に加え、筒体51に振動を付与するほうが、これらを分離しやすくなり、分離・回収の効率が向上する。また、回収される芯材3に、ろう材2成分が残存しにくくなる。なお、この場合は、筒体51に適切な振動を付与するため、棒状部材Bは、筒体51内に収納しないほうが好ましい。
さらに、例えば、分離した溶融ろう材2や溶融芯材3を冷却させる装置を、溶融ろう材回収手段60や溶融芯材回収手段70に、あるいは、前記した連続分離回収装置100の近傍に設けたり、回収したろう材2や芯材3を洗浄し、表面の溶融塩等を除去する装置等を、前記した連続分離回収装置100の近傍に設けたりしてもよい。また、ゴミの混入や処理液Wの温度の低下を防止できる構造とするために、回転筒装置50の稼動に支障をきたさない程度に、処理槽10に蓋を設けてもよい。
【0086】
次に、連続分離回収装置の動作について、図1〜9を参照して説明する。
まず、処理槽10内に区切り板20を所定の形状に設けて、低温域Z1と高温域Z2とに区分けした処理槽10内の低温域Z1に処理液Wを充填すると共に、高温域Z2に処理液Wを充填する。次に、処理液温度保持手段30により、低温域Z1の処理液Wおよび高温域Z2の処理液Wを、それぞれ所定の温度に調整する。次に、回転筒装置50を、筒体51の回転が所定の回転速度になるように設定して駆動させ、クラッド材投入手段40を介してクラッド材1を処理槽10内の低温域Z1における筒体51内に投入する。その際、正逆回転手段57を用いる場合には、筒体51を周期的に正逆回転させる。
【0087】
このクラッド材1は、回転筒装置50により、処理槽10内において、低温域Z1の上方から、高温2の下方に向けて搬送されながら、低温処理液W1を介して溶融ろう材2と固体芯材3に分離される。そして、溶融ろう材2は筒体51の網目Mを介して低温処理液W1中を沈降して低温域Z1における処理槽10の底部11aに沈殿し、固体芯材3は、筒体51内あるいは低温域Z1における処理槽10の底部11bで、高温処理液W2を介して溶融されて溶融芯材3となる。その際、棒状部材Bを用いる場合には、筒体51内に棒状部材Bを収納し、遮断板80を用いる場合には、遮断板80を、筒体51内における低温域Z1と高温域Z2の境界の上部近傍に、板面がクラッド材1の搬送方向に対面するように、処理槽10の内壁に接続された固定手段81を介して固定させて設置する。
【0088】
そして、低温域Z1における処理槽10の底部11aに沈殿した溶融ろう材2は、溶融ろう材回収手段60を介して回収される。また、高温域Z2における処理槽10の底部11bに沈殿した溶融芯材3は、溶融芯材回収手段70を介して回収される。その際、処理槽10の底部11に、仕切り板90により仕切り間Sを形成した場合には、仕切り間S毎に、成分組成の違いに応じて溶融ろう材2あるいは溶融芯材3が回収される。また、処理槽10の底部11をテーパ形状とした場合には、溶融ろう材2および溶融芯材3が処理槽10の底部11に集積するため、回収が容易となる。さらに、溶融ろう材回収手段60に溶融ろう材回収制御手段61を、溶融芯材回収手段70に溶融芯材回収制御手段71を設けた場合には、溶融ろう材2および溶融芯材3が回収された後、処理液Wが回収される前に溶融ろう材2および溶融芯材3の回収が自動的に止められる。これらの回収作業は、クラッド材1が連続して投入され、搬送されている間も継続して行うことが可能である。
このような動作を繰り返すことで、クラッド材1の投入から、ろう材2、芯材3の回収までを連続して行うことができ、クラッド材1の材料の分離・回収を連続化することができる。
【0089】
≪クラッド材の材料の連続分離回収方法≫
次に、クラッド材の材料の連続分離回収方法について、図1〜9を参照して説明する。なお、連続分離回収方法は、前記した連続分離回収装置100を用いて行うことができる。
クラッド材1の材料の連続分離回収方法は、クラッド材1のスクラップを、低温の処理液Wの領域(低温域Z1)に浸漬させた後、高温の処理液Wの領域(高温域Z2)に浸漬させ、スクラップから、ろう材(溶融ろう材)2と芯材(溶融芯材)3とに連続的に溶融・分離して回収するものであり、処理液温度調整工程と、クラッド材投入工程と、クラッド材分離工程と、処理物回収工程と、を含む。
以下、各工程について説明する。なお、本発明の方法において対象となるクラッド材1、処理液W、および、処理槽10については、前記連続分離回収装置100での説明と同様であるので、ここでは説明を省略する。また、処理液温度調整工程における処理液Wの温度の調整、クラッド材投入工程におけるクラッド材1の投入、クラッド材分離工程におけるろう材2と芯材3との分離、処理物回収工程におけるろう材2および芯材3の回収等については、前記連続分離回収装置100において説明したとおりであるので、ここでは、詳細な説明は省略する。
【0090】
<処理液温度調整工程>
処理液温度調整工程は、処理液Wを、低温域Z1と高温域のZ2領域に区分けした処理槽10内に収容し、処理槽10内における低温域Z1の処理液Wおよび高温域Z2の処理液Wの温度をそれぞれ調整する工程である。
【0091】
<クラッド材投入工程>
クラッド材投入工程は、処理液Wの温度を調整した処理槽10内の低温域Z1にクラッド材1を投入する工程である。
【0092】
<クラッド材分離工程>
クラッド材分離工程は、クラッド材投入工程で投入されたクラッド材1を、低温域Z1から高温域Z2に向かって、傾斜して処理槽10内に回転自在に設置させた筒体51を回転させながら搬送し、処理液Wを介して、ろう材2と芯材3とに分離して溶融させる工程である。
クラッド材分離工程は、回転筒装置50を用い、処理槽10内において、低温域Z1の上方から、高温域Z2の下方に向けて、予め設定された回転速度で筒体51を回転させながらクラッド材1を搬送し、ろう材2と分離した芯材3を高温域Z2に搬送することにより行う。また、クラッド材分離工程において、処理槽10内における回転筒装置50の筒体51を周期的に正逆回転させてもよく、筒体51内に、筒体51より短い長さの棒状部材Bを収納し、棒状部材Bを収納した筒体51を回転させてもよい。さらには、筒体51内における低温域Z1と高温域Z2の境界の上部近傍に、板面がクラッド材1の搬送方向に対面するように、処理槽10の内壁に接続された固定手段81を介して遮断板80を固定させるように設け、高温域Z2に搬送された芯材3が低温域Z1に逆流するのを防止すると共に、遮断板80の部位における低温域Z1と高温域Z2の接触を防止してもよい。
【0093】
<処理物回収工程>
処理物回収工程は、クラッド材分離工程で分離されたろう材2および芯材3を回収する工程である。
前記処理物回収工程は、低温域Z1の処理液Wで溶融されて、低温域Z1における処理槽10の底部11aに沈殿した溶融ろう材2を回収すると共に、高温域Z2の処理液Wで溶融されて、高温域Z2における処理槽10の底部11bに沈殿した溶融芯材3を回収することにより行う。また、低温域Z1における処理槽10内の底部11aの少なくとも一箇所に、筒体51の傾斜によるクラッド材1の搬送方向に沿って、低温域Z1において仕切り間Sを形成する仕切り板90を設け、仕切り間S毎に、溶融したろう材2を回収してもよく、高温域Z2における前記処理槽10内の底部11bの少なくとも一箇所に、筒体51の傾斜によるクラッド材1の搬送方向に沿って、高温域Z2において仕切り間Sを形成する仕切り板90を設け、仕切り間S毎に、溶融した芯材3を回収してもよい。
【0094】
また、低温域Z1における処理槽10の底部11aを、中央または周縁部が最深部となるテーパ形状とし、前記最深部に集積した溶融ろう材2を回収するようにしてもよい。また、高温域Z2における処理槽10の底部11bを、中央または周縁部が最深部となるテーパ形状とし、前記最深部に集積した溶融芯材3を回収するようにしてもよい。なお、底部11a,11bに仕切り間を形成する場合には、仕切り間S毎に、中央または周縁が最深部となるテーパ形状としてもよい。
【0095】
さらには、低温域Z1における処理槽10内の底部11a近傍に設置された電極E,eを介して、溶融ろう材2および低温処理液W1の電気抵抗値を測定し、この測定された電気抵抗値が、溶融ろう材2の電気抵抗値から、低温処理液W1の電気抵抗値へ変化したときに、この変化に基づいて、溶融ろう材2の回収経路を遮断して、溶融ろう材2の回収を制御するようにしてもよい。また、高温域Z2における処理槽10内の底部11b近傍に設置された電極E,eを介して、溶融芯材3および高温処理液W2の電気抵抗値を測定し、この測定された電気抵抗値が、溶融芯材3の電気抵抗値から、高温処理液W2の電気抵抗値へ変化したときに、この変化に基づいて、溶融芯材3の回収経路を遮断して、溶融芯材3の回収を制御するようにしてもよい。
【0096】
本発明に係る連続分離回収方法は以上説明したとおりであるが、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、例えば、投入するクラッド材1を所定の大きさにするクラッド材準備工程や、ごみ等の不要物を除去する不要物除去工程や、分離した溶融ろう材2や溶融芯材3を冷却させる処理物冷却工程や、これらを洗浄し、表面の溶融塩等を除去する処理物洗浄工程等、他の工程を含めてもよい。
【実施例】
【0097】
次に、本発明に係る連続分離回収装置および連続分離回収方法について、実施例、比較例を挙げて具体的に説明する。
実施例として、連続分離回収装置は、図1〜3、5の構成のものに、本発明の範囲内で適宜変更を加えたものを使用し、1tonのクラッド材を処理した。なお、比較例3では、図10に示すように、区切り板を水面に対して垂直に設けた装置200を使用した。そして、処理する前のクラッド材におけるろう材のSi量(ろう材の初期Si量)と、処理後のろう材のSi量(回収したろう材のSi量)から、回収したろう材の品質を調べた。また、処理する前のクラッド材における芯材のSi量(芯材の初期Si量)と、処理後の芯材のSi量(回収した芯材Si量)から、回収した芯材の品質を調べた。すなわち、ろう材と芯材の分離がうまく行われているかどうかを調べた。
【0098】
具体的には、「C=(回収したろう材のSi量)/(ろう材の初期Si量)×100」、「Co=(芯材の初期Si量)/(回収した芯材Si量)×100」とし、ろう材については、「0<C≦50:×、50<C≦80:○、80<C≦90:◎、90<C≦95:◎◎、95<C≦100:◎◎◎」とした。
また、芯材については、「0<Co≦50:×、50<Co≦80:○、80<Co≦90:◎、90<Co≦95:◎◎、95<Co≦100:◎◎◎」とした。
そして、「◎◎◎」を品質が優良、「◎◎」をやや優良、「◎」を良好、「○」をやや良好、「×」を不良とした。また、ろう材に芯材成分が混入したもの、回収が困難であったものも「×」とした。
クラッド材および処理液としては、表1に示す条件のものを使用した。
また、その他の条件および試験結果を表2に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
表2に示すように、実施例1〜4は、本発明の構成を満たしているため、ろう材、芯材ともに、品質がやや良好以上であった。
なお、実施例2は、筒体を正逆回転させているため、ろう材と芯材の分離が促進され、実施例1に比べて、回収されたろう材および芯材の品質がよかった。また、実施例3、4は、低温域および高温域のそれぞれに、3つの仕切り間を設けているため、仕切り間毎にろう材および芯材を回収できた。なお、実施例4は、筒体内に棒状部材を挿入しているため、ろう材と芯材の分離が促進され、実施例3に比べて、2つ目および3つ目の仕切り間で回収されたろう材の品質がよかった。
【0102】
一方、比較例1は、低温処理液の温度が芯材の液相線温度以上であるため、低温域でろう材が完全に溶融した後、芯材も溶融してしまったため、ろう材の品質が不良であった。比較例2は高温処理液の温度が芯材の液相線温度未満であるため、芯材が十分に溶融せず、溶融芯材の回収が困難であった。比較例3は、温度条件の設定を実施例1と同様にしたものであるが、区切り板を水面に対して垂直に設けているため、低温処理液と高温処理液の混合が多く、温度の調整が困難であった。そのため、高温処理液の温度が芯材の液相線温度未満となり、芯材が十分に溶融せず、溶融芯材の回収が困難であった。
【0103】
以上、本発明に係る連続分離回収装置および連続分離回収方法について最良の実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、その権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて改変・変更等することができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0104】
1 クラッド材
2 ろう材(溶融ろう材)
3 芯材(溶融芯材,固体芯材)
10 処理槽
11 底部
20 温度域区分け手段(区切り板)
30 処理液温度保持手段
40 クラッド材投入手段
50 クラッド材搬送手段(回転筒装置)
51 筒体
52 回転手段
57 正逆回転手段
60 溶融ろう材回収手段
61 溶融ろう材回収制御手段
62,72 電気抵抗値測定手段
63 溶融ろう材回収停止手段
70 溶融芯材回収手段
71 溶融芯材回収制御手段
73 溶融芯材回収停止手段
80 遮断板
81 固定手段
90 仕切り板
100 クラッド材の材料の連続分離回収装置
B 棒状部材
G1 溶融ろう材排出口
G2 溶融芯材排出口
H 貫通穴
L1,L2 周縁部
M 網目
S 仕切り間
W 処理液
Z1 低温域
Z2 高温域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金からなる芯材の表面に、少なくともアルミニウム合金からなるろう材を備えたクラッド材のスクラップを、前記ろう材、および、前記芯材よりも比重が小さい処理液であり、前記ろう材の液相線以上、前記芯材の液相線未満の温度に調整した前記処理液の領域に浸漬させた後、前記芯材の液相線以上の温度に調整した前記処理液の領域に浸漬させ、前記スクラップから、前記ろう材と前記芯材とを連続的に溶融し、分離させて回収するクラッド材の材料の連続分離回収装置であって、
前記処理液を収容する処理槽と、
前記処理槽内に設けられ、前記処理槽内を低温域と高温域の領域に区切る温度域区分け手段と、
前記処理槽内における前記低温域の処理液および前記高温域の処理液を所定温度にそれぞれ保持する処理液温度保持手段と、
前記処理槽の低温域に前記クラッド材を投入するクラッド材投入手段と、
前記クラッド材投入手段で投入された前記クラッド材を収納し、予め設定された回転速度で回転させながら、前記ろう材と分離された前記芯材を前記高温域に搬送するクラッド材搬送手段と、
前記低温域の処理液で溶融されて、前記低温域における前記処理槽の底部に沈殿した溶融ろう材を回収する溶融ろう材回収手段と、
前記高温域の処理液で溶融されて、前記高温域における前記処理槽の底部に沈殿した溶融芯材を回収する溶融芯材回収手段と、を備え、
前記クラッド材搬送手段は、溶融したろう材を落下させる網目を有する筒体と、この筒体を回転させる回転手段と、を有し、
前記筒体は、前記処理槽内において、前記低温域の上方から、前記高温域の下方に向けて、傾斜するように設けられおり、
前記温度域区分け手段は、前記筒体を貫通させる貫通穴を有する区切り板が、前記貫通穴の周辺部位において、前記低温域の上方から、前記高温域の下方に向けて、傾斜するように設けられていることを特徴とするクラッド材の材料の連続分離回収装置。
【請求項2】
前記回転手段は、前記筒体を周期的に正逆回転させる正逆回転手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のクラッド材の材料の連続分離回収装置。
【請求項3】
前記クラッド材搬送手段は、前記筒体より短い長さの棒状部材を、前記筒体内に収納することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクラッド材の材料の連続分離回収装置。
【請求項4】
前記クラッド材搬送手段は、前記筒体内における前記低温域と前記高温域の境界の上部近傍に遮断板を備え、
前記遮断板は、板面が前記クラッド材の搬送方向に対面するように、前記処理槽の内壁に接続された固定手段を介して固定されて設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のクラッド材の材料の連続分離回収装置。
【請求項5】
前記低温域における前記処理槽内の底部の少なくとも一箇所に、前記筒体の傾斜による前記クラッド材の搬送方向に沿って、前記低温域において仕切り間を形成する仕切り板を有し、前記仕切り間毎に、前記溶融ろう材回収手段を備え、前記高温域における前記処理槽内の底部の少なくとも一箇所に、前記筒体の傾斜による前記クラッド材の搬送方向に沿って、前記高温域において仕切り間を形成する仕切り板を有し、前記仕切り間毎に、前記溶融芯材回収手段を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のクラッド材の材料の連続分離回収装置。
【請求項6】
前記低温域における前記処理槽の底部は、中央または周縁が最深部となるテーパ形状をなし、前記溶融ろう材回収手段が、前記低温域における最深部に位置するように設けられており、前記高温域における前記処理槽の底部は、中央または周縁が最深部となるテーパ形状をなし、前記溶融芯材回収手段が、前記高温域における最深部に位置するように設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のクラッド材の材料の連続分離回収装置。
【請求項7】
前記低温域における前記仕切り間の底部は、前記仕切り間毎に、中央または周縁が最深部となるテーパ形状をなし、前記溶融ろう材回収手段が、前記仕切り間毎に、前記低温域における最深部に位置するように設けられており、前記高温域における前記仕切り間の底部は、前記仕切り間毎に、中央または周縁が最深部となるテーパ形状をなし、前記溶融芯材回収手段が、前記仕切り間毎に、前記高温域における最深部に位置するように設けられていることを特徴とする請求項5に記載のクラッド材の材料の連続分離回収装置。
【請求項8】
前記溶融ろう材回収手段は、前記低温域における前記処理槽内の底部またはその周縁に、前記溶融ろう材を排出する溶融ろう材排出口を備えると共に、前記溶融ろう材の回収を制御する溶融ろう材回収制御手段を備え、
前記溶融ろう材回収制御手段は、前記低温域における前記処理槽内の底部近傍に設置された電極を介して、前記溶融ろう材および処理液の電気抵抗値を測定する電気抵抗値測定手段と、この電気抵抗値測定手段で測定された電気抵抗値が、前記溶融ろう材の電気抵抗値から、前記処理液の電気抵抗値へ変化したときに、この変化に基づいて、前記溶融ろう材排出口を塞ぐ溶融ろう材回収停止手段と、を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のクラッド材の材料の連続分離回収装置。
【請求項9】
前記溶融芯材回収手段は、前記高温域における前記処理槽内の底部またはその周縁に、前記溶融芯材を排出する溶融芯材排出口を備えると共に、前記溶融芯材の回収を制御する溶融芯材回収制御手段を備え、
前記溶融芯材回収制御手段は、前記高温域における前記処理槽内の底部近傍に設置された電極を介して、前記溶融芯材および処理液の電気抵抗値を測定する電気抵抗値測定手段と、この電気抵抗値測定手段で測定された電気抵抗値が、前記溶融芯材の電気抵抗値から、前記処理液の電気抵抗値へ変化したときに、この変化に基づいて、前記溶融芯材排出口を塞ぐ溶融芯材回収停止手段と、を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のクラッド材の材料の連続分離回収装置。
【請求項10】
前記処理液が、溶融塩であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載のクラッド材の材料の連続分離回収装置。
【請求項11】
アルミニウム合金からなる芯材の表面に、少なくともアルミニウム合金からなるろう材を備えたクラッド材のスクラップを、前記ろう材、および、前記芯材よりも比重が小さい処理液であり、前記ろう材の液相線以上、前記芯材の液相線未満の温度に調整した前記処理液の領域に浸漬させた後、前記芯材の液相線以上の温度に調整した前記処理液の領域に浸漬させ、前記スクラップから、前記ろう材と前記芯材とを連続的に溶融し、分離させて回収するクラッド材の材料の連続分離回収方法であって、
前記処理液を、低温域と高温域の領域に区分けした処理槽内に収容し、前記処理槽内における前記低温域の処理液および前記高温域の処理液の温度をそれぞれ調整する処理液温度調整工程と、
前記処理液の温度を調整した処理槽内の低温域に前記クラッド材を投入するクラッド材投入工程と、
前記投入されたクラッド材を、前記低温域から前記高温域に向かって、傾斜して処理槽内に回転自在に設置させた筒体を回転させながら搬送し、前記処理液を介して、前記ろう材と前記芯材とに分離して溶融させるクラッド材分離工程と、
前記分離されたろう材および芯材を回収する処理物回収工程と、を含み、
前記クラッド材分離工程は、回転筒装置を用い、前記処理槽内において、前記低温域の上方から、前記高温域の下方に向けて、予め設定された回転速度で筒体を回転させながらクラッド材を搬送し、前記ろう材と分離した前記芯材を前記高温域に搬送することにより行い、
前記処理物回収工程は、前記低温域の処理液で溶融されて、前記低温域における前記処理槽の底部に沈殿した溶融ろう材を回収すると共に、前記高温域の処理液で溶融されて、前記高温域における前記処理槽の底部に沈殿した溶融芯材を回収することにより行うことを特徴とするクラッド材の材料の連続分離回収方法。
【請求項12】
前記クラッド材分離工程において、前記筒体を周期的に正逆回転させることを特徴とする請求項11に記載のクラッド材の材料の連続分離回収方法。
【請求項13】
前記クラッド材分離工程において、前記筒体内に、前記筒体より短い長さの棒状部材を収納し、前記棒状部材を収納した前記筒体を回転させることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のクラッド材の材料の連続分離回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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