説明

クラッド材及びその製造方法

【課題】長手方向に二種類以上の金属材が並接されたクラッド材を効率良く製造することができ、接合強度の向上を図ると共に、生産性及び歩留まりの向上を図り、製造コストの低減化を図ることのできるクラッド材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、性質の異なる二種類以上の金属材11,12,31,32が長手方向に並接されるように接合されたクラッド材10,30であって、一方の金属材11,31の端部に凸部13,33が形成され、他方の金属材12,32に凸部13,33を上下から挟み込むように凹部14,34が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、性質の異なる二種類以上の金属材を接合して形成されるクラッド材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子部品の接点材等にクラッド材が幅広く使用されており、この種のクラッド材は、例えば銅とアルミニウムのように、性質の異なる二種類以上の金属材を重ね合わせ、貼り合わせて接合することにより形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来のクラッド材としては、例えば、図14の(a),(b),(c),(d)に示すように一方の金属材1の表面に部分的に他方の金属材2が接合されたインレイクラッド材3や、図15の(a)及び(b)に示すように一方の金属材1の表面全体に他方の金属材2が接合されたオーバーレイクラッド材4や、図16の(a)及び(b)に示すように一方の金属材1の表面端部に他方の金属材2が接合されたエッジレイクラッド材5等が知られている。
【0004】
また、従来のクラッド材の製造方法としては、例えば、二種類以上の金属材を重ね合わせて真空中で冷間圧延又は熱間圧延のいずれかで圧延してクラッド材を製造する方法(例えば、特許文献2参照)や、二種類以上の金属材を重ね合わせて火薬を爆発させて接着面を拡散接合させてクラッド材を製造する方法(例えば、特許文献3の背景技術の欄参照)や、ろう付け用クラッド材を使用してクラッド材を製造する方法(例えば、特許文献4参照)や、はんだクラッド材を使用してクラッド材を製造する方法(例えば、特許文献5参照)や、二枚の金属材の接触面の外周縁部を真空中において電子ビーム溶接により接合してクラッド材を製造する方法(例えば、特許文献6参照)等、種々の製造方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−212659号公報
【特許文献2】特開2005−66677号公報
【特許文献3】特開2005−205449号公報
【特許文献4】特開2009−195981号公報
【特許文献5】特開2007−185688号公報
【特許文献6】特開2005−161321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の二種の金属材を溶接等で接着する製造方法では、接合される金属材同士の相性や固有抵抗の違い等により接合不良が発生し、生産性の低下や歩留まりの低下を招き、コストアップの要因となるといった問題があった。
【0007】
また、上記した従来のクラッド材の製造方法では、長手方向に二種類以上の金属材が並接されたクラッド材を製造することが難しく、例え製造できたとしても、作業効率が悪く、良好な接合強度を得られないといった問題があった。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、長手方向に二種類以上の金属材が並接されたクラッド材を効率良く製造することができ、接合強度の向上を図ると共に、生産性及び歩留まりの向上を図り、製造コストの低減化を図ることのできるクラッド材及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明は、性質の異なる二種類以上の金属材が長手方向に並接されるように接合されたクラッド材であって、一方の金属材の端部に凸部が形成され、他方の金属材に前記凸部を上下から挟み込むように凹部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
そして、本発明に係るクラッド材において、前記一方の金属材の凸部は先端が拡幅された形状を有していてもよい。
【0011】
また、本発明は、性質の異なる三種類の金属材が長手方向に並接されるように接合されたクラッド材であって、中央の金属材の両端部に凸部が形成され、両側の金属材に前記凸部を挟み込むように凹部が形成されていてもよい。
【0012】
さらに、本発明に係るクラッド材において、前記凸部と前記凹部の間に別の金属材が中間層として介装されていてもよい。
【0013】
さらにまた、本発明に係るクラッド材において、前記別の金属材は前記凸部と前記凹部のいずれか一方に予めメッキされていてもよい。
【0014】
さらに、本発明に係るクラッド材において、前記二種類以上の金属材の境界部分に絶縁膜が形成されていてもよい。
【0015】
また、本発明は、性質の異なる二種類以上の金属材が長手方向に並接されるように接合されたクラッド材を製造する方法であって、一方の金属材の端部に形成された凸部を他方の金属材の凹部で上下から挟み込む工程と、前記ニ種類以上の金属材を圧延する工程と、該圧延された二種類以上の金属材に熱処理を行う工程と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、長手方向に二種類以上の金属材が並接されたクラッド材を効率良く製造することができ、接合強度の向上を図ると共に、生産性及び歩留まりの向上を図り、製造コストの低減化を図ることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るクラッド材を示す断面図である。
【図2】(a)及び(b)は本発明の第1の実施の形態に係るクラッド材の変形例を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るクラッド材の別の変形例を示す断面図である。
【図4】(a),(b),(c),(d)は本発明の第1の実施の形態に係るクラッド材の製造方法を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るクラッド材の製造方法により製造したクラッド材の断面写真である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るクラッド材の製造方法により製造したクラッド材の曲げ試験後の境界部分を示す断面写真である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るクラッド材の製造方法の変形例を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るクラッド材を示す断面図である。
【図9】(a),(b),(c),(d)は本発明の第2の実施の形態に係るクラッド材の製造方法を示す断面図である。
【図10】(a),(b),(c),(d)は本発明の第2の実施の形態に係るクラッド材の製造方法の変形例を示す断面図である。
【図11】(a),(b),(c)は本発明の第2の実施の形態に係るクラッド材の製造方法の別の変形例を示す断面図である。
【図12】(a),(b),(c)は本発明の第2の実施の形態に係るクラッド材の製造方法のさらに別の変形例を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態に係るクラッド材の金属材の境界部分に絶縁膜を形成させた例を示す断面図である。
【図14】(a),(b),(c),(d)は従来のインレイクラッド材を示す断面図である。
【図15】(a),(b)は従来のオーバーレイクラッド材を示す断面図である。
【図16】(a),(b)は従来のエッジレイクラッド材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
先ず、図1〜図7を参照しつつ、本発明の第1の実施の形態に係るクラッド材及びその製造方法について説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態に係るクラッド材10は、性質の異なる二種類の金属材11,12を接合して成るものであり、一方の金属材の端部11には側方に延出するように凸部13が形成されている。また、他方の金属材12には、この凸部13を上下から挟み込むように凹部14が形成されており、凹部14が凸部13を挟持した状態で両金属材11,12を接合させることにより、長手方向に二種類の金属材11,12が並接されるようになっている。
【0021】
なお、一方の金属材11の凸部13は、図2の(a),(b)に示すように、先端が拡幅された形状を有していてもよく、これにより、両金属材11,12をより密着させ、接合強度を一段と高めることができる。
【0022】
また、上記した実施の形態では、性質の異なる二種類の金属材11,12から成るクラッド材10について説明したが、これは単なる例示に過ぎず、例えば、図3に示すように、中央の金属材15の両端部に凸部16を形成し、性質の異なる両側の金属材17,18に凸部16を挟み込むようにそれぞれ凹部19,20を形成させて三種類の金属材15、17,18が長手方向に並接されるように構成する等、三種類以上の金属材が長手方向に並接されるように構成されていてもよい。
【0023】
図4(a),(b),(c),(d)は凸部13の先端が拡幅された形状を有する本実施の形態に係るクラッド材10の製造方法を順に示している。先ず、図4(a)に示すように、一方の金属材11(例えば、厚み2mmの銅)の凸部13を上下に均等に分割された他方の金属材12a,12b(例えば、それぞれ厚み1mmのアルミニウム)の各凹部14a,14bにより上下から挟み込み、組み付けたものを圧延機等により圧力を加えて初期の板厚の30%以上の加工率で(例えば、厚み1.4mm程度まで)挟接する(図4(b)参照)。
【0024】
次いで、このように挟接した金属材11,12を冷間圧延及び熱間圧延により、所定の板厚(例えば、0.5mm)まで圧延する(図4(c)参照)。
【0025】
その後、このように圧延された金属材11,12それぞれの金属が合金層を形成できる温度と時間をかけて熱処理(例えば、200℃以上の高温で30分以上、より好ましくは、300℃以上の高温で2時間以上の熱処理)を行い、密着力を高める。但し、用途によっては熱処理を行わなくてもよい場合もある。
【0026】
図5はこのようにして製造した銅11とアルミニウム12とから成るクラッド材10の接合部分(図4(d)中の楕円印部分)の断面写真を示しており、この断面写真によれば、上下のアルミニウム12同士の接合面が密着されて一体化されていると共に、銅11とアルミニウム12の接合面が一様に密着されていることが確認できる。
【0027】
また、図6はこのようにして製造した銅11とアルミニウム12とから成るクラッド材10を曲げ半径0.4mmで90度折り曲げて曲げ試験した後の境界部分21の断面写真を示しており、この断面写真によれば、境界部分21は強固に密着されており、剥がれもなく、良好な接合強度が得られることが確認できる。
【0028】
なお、図7は本実施の形態に係るクラッド材10の製造方法の変形例を示す断面図であり、図7に示すように、他方の金属材12a,12bは必ずしも上下に均等に分割されていなくてもよい。
【0029】
次に、図8〜図12を参照しつつ、本発明の第2の実施の形態に係るクラッド材及びその製造方法について説明する。
【0030】
図8に示すように、本実施の形態に係るクラッド材30は、接合される一方の金属材31の凸部33と他方の金属材32の凹部34の間に別の金属材35が中間層として介装されていることを特徴とするものであり、凹部34が凸部33を挟持した状態で両金属材31,32を接合させることにより、長手方向に二種類の金属材31,32が並接されるようになっている。
【0031】
この場合の別の金属材35は、例えば、一方の金属材31がSPCC等の鉄系の合金で、他方の金属材32がステンレス鋼の場合のように、一方の金属材31と他方の金属材32との相性が悪く、密着強度が低い場合に、一方の金属材31の凸部33と他方の金属材32の凹部34の間に中間層として介装される。例えば、この中間層の金属材35としては、ニッケルや銅等が使用される。
【0032】
なお、本実施の形態に係るクラッド材30において、一方の金属材31の凸部33の先端が拡幅された形状を有していてもよいことや、三種類以上の金属材が長手方向に並接されるように構成されていてもよいことは、上記した本発明の第1の実施の形態に係るクラッド材11の場合と同様である。
【0033】
図9(a),(b),(c),(d)は凸部33の先端が拡幅された形状を有する本実施の形態に係るクラッド材30の製造方法を順に示している。先ず、図9(a)に示すように、一方の金属材31の凸部33と、上下に均等に分割された他方の金属材32a,32bの各凹部34a,34bとの間にそれぞれ別の金属材35を介装した上で、凸部13を各凹部34a,34bによって上下から挟み込み、組み付けたものを圧延機等により圧力を加えて初期の板厚の30%以上の加工率で(例えば、厚み1.4mm程度まで)挟接する(図9(b)参照)。
【0034】
次いで、このように挟接した金属材31,32を冷間圧延及び熱間圧延により、所定の板厚(例えば、0.5mm)まで圧延する(図9(c)参照)。
【0035】
その後、圧延された金属材31,32それぞれの金属が合金層を形成できる温度と時間をかけて熱処理(例えば、200℃以上の高温で30分以上、より好ましくは、300℃以上の高温で2時間以上の熱処理)を行い、密着力を高める。但し、用途によっては熱処理を行わなくてもよい場合もある。
【0036】
なお、図10(a),(b),(c),(d)は本実施の形態に係るクラッド材30の製造方法の変形例を示す断面図であり、図10(a),(b),(c),(d)に示すように、他方の金属材32a,32bは上下に均等に分割されていなくてもよい。
【0037】
また、中間層としての別の金属材35は、図11(a),(b),(c)に示すように一方の金属材31の凸部33に予めメッキしておいたり、図12(a),(b),(c)に示すように他方の金属材32a,32bの凹部34a,34bに予めメッキしておいたりしてもよい。これにより、クラッド材30の製造工数を削減することができ、製造作業の簡素化を図ることができると共に、凸部13と凹部34a,34bの間に別の金属材35を確実に介装することができる。
【0038】
さらに、上記した本発明の第1の実施の形態に係るクラッド材10及び第2の実施の形態に係るクラッド材30のいずれの場合においても、接合する二種以上の金属材11,12,31,32間の標準起電力差が著しく大きく、実際の使用環境上、電池反応による腐食が発生する可能性がある場合には、上記したようにクラッド材10、30を製造後、図13(a),(b)に示すように、クラッド材10,30の金属材11,12,31,32の境界部分に絶縁膜40を形成させてもよい。なお、絶縁膜40を形成する方法としては、エポキシ樹脂等の有機系樹脂をコーティングする方法や絶縁テープを巻く方法等がある。
【0039】
上記したように本発明の第1及び第2の実施の形態によれば、長手方向に二種類以上の金属材11,12,31,32が並接されたクラッド材10,30を効率良く製造することができ、接合強度の向上を図ると共に、生産性及び歩留まりの向上を図り、製造コストの低減化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、民生用二次電池や車載用ハイブリッドカー用バッテリー或いはキャパシタ等の電極材料等に使用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 クラッド材
11 一方の金属材
12 他方の金属材
13 凸部
14 凹部
15 中央の金属材
17,18 両側の金属材
30 クラッド材
31 一方の金属材
32 他方の金属材
33 凸部
34 凹部
35 別の金属材
40 絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
性質の異なる二種類以上の金属材が長手方向に並接されるように接合されたクラッド材であって、
一方の金属材の端部に凸部が形成され、他方の金属材に前記凸部を上下から挟み込むように凹部が形成されていることを特徴とするクラッド材。
【請求項2】
前記一方の金属材の凸部は先端が拡幅された形状を有している請求項1に記載のクラッド材。
【請求項3】
性質の異なる三種類の金属材が長手方向に並接されるように接合されたクラッド材であって、
中央の金属材の両端部に凸部が形成され、両側の金属材に前記凸部を挟み込むように凹部が形成されている請求項1又は2に記載のクラッド材。
【請求項4】
前記凸部と前記凹部の間に別の金属材が中間層として介装されている請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載のクラッド材。
【請求項5】
前記別の金属材は前記凸部と前記凹部のいずれか一方に予めメッキされている請求項4に記載のクラッド材。
【請求項6】
前記二種類以上の金属材の境界部分に絶縁膜が形成されている請求項1〜5のいずれか1の請求項に記載のクラッド材。
【請求項7】
性質の異なる二種類以上の金属材が長手方向に並接されるように接合されたクラッド材を製造する方法であって、
一方の金属材の端部に形成された凸部を他方の金属材の凹部で上下から挟み込む工程と、
前記二種類以上の金属材を圧延する工程と、
該圧延された二種類以上の金属材に熱処理を行う工程と、
を備えていることを特徴とするクラッド材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−148164(P2011−148164A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10486(P2010−10486)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(510019646)
【出願人】(510019325)
【Fターム(参考)】