説明

クラフトリグニンを利用した分散剤および新規なリグニン誘導体

【課題】パルプ製造時に排出されるクラフトリグニンを原料として得られるリグニン誘導体を使用して、高い分散性能を発揮する分散剤を提供すること、ならびに、クラフトリグニンから新規なリグニン誘導体を提供すること。
【解決手段】本発明の分散剤は、クラフトリグニンおよび/またはその塩由来の少なくとも1種の構成単位と少なくとも1種の水溶性単量体由来の少なくとも1種の構成単位とを有するリグニン誘導体を含有する。本発明の新規なリグニン誘導体は、クラフトリグニンおよび/またはその塩由来の少なくとも1種の構成単位と少なくとも1種のポリアルキレンオキシド鎖と少なくとも1種のアニオン性官能基とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラフトリグニンを利用した分散剤と、クラフトリグニンから得られる新規なリグニン誘導体とに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、木材の主成分の1つであるリグニンは、様々な変性を施すことにより、リグニン誘導体の形態で、多くの用途に利用されてきた。例えば、リグニンスルホン酸は、セメント分散剤として広く使用されている。また、例えば、特許文献1には、リグニンスルホン酸をセメント分散剤として使用するにあたり、さらにアクリル系やビニル系のモノマーで変性した誘導体の形態にすることが開示されている。一方、特許文献2には、主にバインダー用として、クラフトリグニンにアクリル酸をグラフトさせて得られるポリマーをさらにアルデヒド類で架橋して得られる樹脂組成物が開示されている。さらに、特許文献3には、リグニン類、例えば、リグニンスルホン酸にビニルモノマーをグラフトさせて得られる、分散剤やスケール防止剤として特に好適な樹脂組成物が開示されている。
【0003】
しかし、上記従来のリグニン誘導体、例えば、リグニンスルホン酸などは、分散剤として使用した場合、例えば、セメントを分散させる能力がそれほど高くないという問題点があった。それゆえ、リグニン骨格が本来備える分散性能を化学的修飾によって効果的に高めて、リグニン誘導体を高い分散性能を発揮する分散剤として有効活用することが求められている。また、パルプ工場の燃料としてのみ使用されているクラフトリグニンから新規なリグニン誘導体を開発することも求められている。
【特許文献1】特開平1−145358号公報
【特許文献2】米国特許第2002/0065400号公報
【特許文献3】米国特許第4891415号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、パルプ製造時に排出されるクラフトリグニンを原料として得られるリグニン誘導体を使用して、高い分散性能を発揮する分散剤を提供すること、ならびに、クラフトリグニンから新規なリグニン誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、種々検討の結果、クラフトリグニンから得られる特定のリグニン誘導体が高い分散性能を発揮することを見出し、また、クラフトリグニンから新規なリグニン誘導体が得られ、同様に高い分散性能を発揮することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、クラフトリグニンおよび/またはその塩由来の少なくとも1種の構成単位と少なくとも1種の水溶性単量体由来の少なくとも1種の構成単位とを有するリグニン誘導体を含有することを特徴とする分散剤を提供する。本発明の分散剤において、前記リグニン誘導体は、好ましくは、クラフトリグニンおよび/またはその塩の存在下で少なくとも1種の水溶性単量体を反応させて得られる。また、本発明の分散剤において、前記リグニン誘導体は、好ましくは、少なくとも1種のアニオン性官能基を有するか、および/または、少なくとも1種のポリアルキレンオキシド鎖を有する。本発明の分散剤は、例えば、セメント分散剤として好適である。
【0007】
また、本発明は、クラフトリグニンおよび/またはその塩由来の少なくとも1種の構成単位と少なくとも1種のポリアルキレンオキシド鎖と少なくとも1種のアニオン性官能基とを有することを特徴とするリグニン誘導体を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の分散剤は、従来のリグニンスルホン酸などの分散剤に比べて、高い分散性能を発揮することができる。それゆえ、例えば、セメント分散剤に使用すれば、練りあがったモルタルやコンクリートの粘性が低くなり、作業性が向上できる。本発明の新規なリグニン誘導体は、同様に高い分散性能を発揮することができ、例えば、分散剤、キレート剤、洗浄剤、凝集剤、増粘剤、コーティング剤、塗料、接着剤、吸水性樹脂などに幅広くに使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
≪分散剤≫
本発明の分散剤は、クラフトリグニンおよび/またはその塩由来の少なくとも1種の構成単位と少なくとも1種の水溶性単量体由来の少なくとも1種の構成単位とを有するリグニン誘導体を含有することを特徴とする。ここで、「クラフトリグニン」とは、木材に水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムとの混合水溶液を作用させて得られる水に不溶の化合物であって、ヒドロキシフェニルプロパンを基本単位とし、フェノール性ヒドロキシ基やアルコール性ヒドロキシ基、チオール基などの官能基を有する化合物を意味する。また、「クラフトリグニンおよび/またはその塩由来の構成単位」とは、リグニン誘導体の分子構造のうち、原料となるクラフトリグニンおよび/またはその塩に由来する部分を意味する。さらに、「水溶性単量体由来の構成単位」とは、リグニン誘導体の分子構造のうち、原料となるクラフトリグニンおよび/またはその塩に反応させる水溶性単量体に由来する部分を意味する。
【0010】
<リグニン誘導体>
また、「リグニン誘導体」とは、クラフトリグニンおよび/またはその塩に含まれるフェノール性ヒドロキシ基やアルコール性ヒドロキシ基、チオール基などの官能基に水溶性単量体を反応させるか、あるいはクラフトリグニンおよび/またはその塩にラジカル開始剤を作用させてラジカルを発生させてから水溶性単量体を反応させることにより得られる化合物であって、クラフトリグニンおよび/またはその塩由来の構成単位と水溶性単量体由来の構成単位とを有する化合物を意味する。なお、上記水溶性単量体が重合性の2重結合を有する場合、水溶性単量体由来の構成単位とは、各単量体の重合性2重結合が開いた構造(2重結合(C=C)が単結合(−C−C−)になった構造)に相当する。
【0011】
リグニン誘導体の質量平均分子量は、特に限定されるものではないが、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下「GPC」ということがある。)で測定した値として、ポリエチレングリコール換算で、好ましくは1,000以上、500,000以下、より好ましくは5,000以上、300,000以下、さらに好ましくは10,000以上、150,000以下である。このような質量平均分子量を有するリグニン誘導体を使用すれば、より高い分散性能を発揮する分散剤が得られる。
【0012】
本発明の分散剤におけるリグニン誘導体の配合量は、分散剤の全質量に対して、好ましくは50質量%以上、100質量%以下、より好ましくは70質量%以上、100質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上、100質量%以下である。リグニン誘導体の配合量が50質量%未満であると、リグニン誘導体の高い分散性能を充分に発揮することができないことがある。
【0013】
<リグニン誘導体の製造>
リグニン誘導体の原料となるクラフトリグニンおよび/またはその塩は、木材に水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムとの混合水溶液を作用させて得られるものである限り、特に限定されるものではない。クラフトリグニンおよび/またはその塩の原料となる木材としては、エゾマツ、アカマツ、スギ、ヒノキなどの針葉樹や、シラカバ、ブナなどの広葉樹が挙げられる。これらの木材は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0014】
リグニン誘導体を製造するには、上記したように、例えば、クラフトリグニンおよび/またはその塩に含まれるフェノール性ヒドロキシ基やアルコール性ヒドロキシ基、チオール基などの官能基に水溶性単量体を反応させればよい。かくして、リグニン誘導体にクラフトリグニンおよび/またはその塩由来の構成単位と水溶性単量体由来の構成単位とが導入される。
【0015】
クラフトリグニンおよび/またはその塩に含まれる官能基のうち、フェノール性ヒドロキシ基やアルコール性ヒドロキシ基と反応する水溶性単量体としては、例えば、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド類などが挙げられる。他方、チオール基と反応する水溶性単量体としては、例えば、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド類;エチレンイミンやプロピレンイミンなどのアルキレンイミン類;などが挙げられる。これらの水溶性単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
あるいは、クラフトリグニンおよび/またはその塩に含まれるフェノール性ヒドロキシ基やアルコール性ヒドロキシ基、チオール基などの官能基に、ラジカル重合性の水溶性単量体を反応させてもよい。ラジカル重合性の水溶性単量体としては、例えば、下記の(1)〜(4)に列挙したものを使用することができる。これらのラジカル重合性の水溶性単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0017】
(1)アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸類、およびこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類、およびこれらの無水物、一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類と、炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類と、炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;炭素原子数1〜30のアルコールや炭素原子数1〜30のアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類と、炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリル酸、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネートなどの、不飽和モノカルボン酸類と、炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;炭素原子数1〜30のアルコールに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレートなどの、(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加物類。
【0018】
(2)ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウムなどの不飽和スルホン酸類、ならびに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩および有機アンモニウム塩。
【0019】
(3)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどの不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジンなどの不飽和アミン類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテルなどのアリル類;N−ビニルコハクイミド、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニル化合物;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどのビニルエーテル類。
【0020】
(4)アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどの不飽和アルコールにアルキレンオキシドを2〜300モル付加して得られる不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加化合物類。
【0021】
また、リグニン誘導体に水溶性単量体由来の構成単位を導入するための反応点としては、クラフトリグニンおよび/またはその塩に含まれるフェノール性ヒドロキシ基やアルコール性ヒドロキシ基、チオール基の他に、ラジカル開始剤を作用させた際に水素ラジカルが引き抜かれ、ラジカルを発生する箇所も含まれる。クラフトリグニンにラジカル開始剤を作用させてラジカルを発生させてから反応させ得る水溶性単量体としては、上に列挙したラジカル重合性の水溶性単量体を使用することができる。
【0022】
クラフトリグニンおよび/またはその塩に反応させる(あるいは、クラフトリグニンおよび/またはその塩の存在下で反応させる)水溶性単量体の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、クラフトリグニンおよび/またはその塩と水溶性単量体との合計質量に対して、好ましくは1.0質量%以上、99.9質量%以下、より好ましくは、20.0質量%以上、99.5%質量%以下、さらに好ましくは40.0質量%以上、99.0質量%以下である。水溶性単量体の使用量が1.0質量%未満であると、得られたリグニン誘導体の水溶性が充分ではなく、例えば、水を分散媒に使用した場合に、分散性能が劣ることがある。逆に、水溶性単量体の使用量が99.9質量%を超えると、リグニン骨格が有する性能、すなわち分散性を向上させる効果や、セメント分散剤に使用した場合には、コンクリートの粘性低減効果が発現しないことがある。
【0023】
クラフトリグニンおよび/またはその塩に、例えば、アルキレンオキシドやアルキレンイミンを反応させる際には、必要に応じて、溶媒を使用してもよい。この反応に溶媒を使用する場合、使用可能な溶媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの芳香族もしくは脂肪族炭化水素類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
また、上記反応には、必要に応じて、触媒を使用してもよい。上記反応に触媒を使用する場合、酸触媒および塩基触媒のいずれを使用してもよいが、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが好適である。触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、クラフトリグニンおよび/またはその塩と水溶性単量体との合計質量に対して、好ましくは0.001質量%以上、20質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上、10質量%以下である。
【0025】
上記反応の反応温度は、使用する溶媒の種類に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、通常、0℃以上、200℃以内である。また、特にエチレンオキシドやエチレンイミンなどの低沸点化合物を反応させる場合には、反応速度を向上させるために、オートクレーブを使用して加圧下で反応させてもよい。
【0026】
ラジカル重合性の水溶性単量体を用いる場合には、重合開始剤を用いて、前記単量体を含む単量体成分をグラフト重合させればよい。グラフト重合は、溶液重合や塊状重合などの方法により行うことができる。溶液重合は、回分式または連続式のいずれでも行うことができる。
【0027】
グラフト重合に使用される溶媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの芳香族もしくは脂肪族炭化水素類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いて2種以上を併用してもよい。
【0028】
なお、マレイン酸系単量体として無水マレイン酸を用いる場合、酸無水物基の開裂を避けるために、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの芳香族もしくは脂肪族炭化水素類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などの不活性溶媒を使用することが好ましい。他方、マレイン酸系単量体としてマレイン酸および/またはその塩を使用する場合、水および炭素原子数1〜4の低級アルコールからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を使用することが好ましい。特に、水を溶媒に使用することが、脱溶剤工程を省略できる点で、より好ましい。
【0029】
水を溶媒に用いて溶液重合を行う場合には、ラジカル重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素;2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩などのアゾアミジン化合物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩などの環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリルなどのアゾニトリル化合物などの水溶性アゾ系開始剤;などが使用される。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、重合開始剤の使用量は、水溶性単量体の種類や量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、使用する全水溶性単量体に対して、好ましくは0.01モル%以上、50モル%以下、より好ましくは1モル%以上、20モル%以下である。
【0030】
この際、亜硫酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜リン酸ナトリウム、モール塩などのFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸またはその塩、エリソルビン酸またはその塩などの促進剤(還元剤)を併用することもできる。これらの促進剤(還元剤)は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。特に、過酸化水素と有機系還元剤との組み合わせが好ましく、有機系還元剤としては、L−アスコルビン酸またはその塩、L−アスコルビン酸エステル、エリソルビン酸またはその塩、エリソルビン酸エステルなどが好適である。なお、促進剤(還元剤)の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、使用する重合開始剤に対して、好ましくは0.1モル%以上、500モル%以下、より好ましくは1モル%以上、200モル%%以下、さらに好ましくは10モル%以上、100モル%以下である。
【0031】
また、低級アルコール類、芳香族もしくは脂肪族炭化水素類、エステル類またはケトン類を溶媒に用いて溶液重合を行う場合、あるいは、塊状重合を行う場合には、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシドなどのパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシドなどのハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;などがラジカル重合開始剤として使用される。これらのラジカル重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、ラジカル重合開始剤の使用量は、水溶性単量体の種類や量に応じて、適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、使用する全水溶性単量体に対して、好ましくは0.01モル%以上、50モル%以下、より好ましくは1モル%以上、20モル%以下である。
【0032】
この際、アミン化合物などの促進剤を併用することもできる。さらに、水と低級アルコールとの混合溶媒を用いる場合には、上記ラジカル重合開始剤、または、上記ラジカル重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択して用いることができる。なお、促進剤の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、使用するラジカル重合開始剤に対して、好ましくは0.1モル%以上、500モル%以下、より好ましくは1モル%以上、200モル%以下、さらに好ましくは10モル%以上、100モル%以下である。
【0033】
上記グラフト重合の重合温度は、使用する溶媒や重合開始剤の種類に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは0℃以上、150℃以下、より好ましくは30℃以上、120℃以下、さらに好ましくは50℃以上、100℃以下である。
【0034】
各単量体の反応容器への投入方法は、特に限定されるものではなく、全量を反応容器に初期に一括投入する方法、全量を反応容器に分割もしくは連続投入する方法、一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割もしくは連続投入する方法のいずれでもよい。なお、ラジカル重合開始剤は、反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また、目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
【0035】
得られるリグニン誘導体の分子量を調整するために、必要に応じて、連鎖移動剤を使用してもよい。重合反応に連鎖移動剤を使用する場合、使用可能な連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸などのチオール系連鎖移動剤;イソプロピルアルコールなどの2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウムなど)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムなど)の低級酸化物およびその塩;などの従来公知の親水性連鎖移動剤が挙げられる。さらに、疎水性連鎖移動剤を使用すると、セメント分散剤に使用する場合には、コンクリート組成物の粘性改善に有効である。疎水性連鎖移動剤としては、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチルなどの炭素原子数3以上の炭化水素基を有するチオール系連鎖移動剤が好適である。これらの親水性連鎖移動剤および疎水性連鎖移動剤は、いずれも単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、親水性連鎖移動剤と疎水性連鎖移動剤とを組み合わせて用いてもよい。さらに、分子量を調整するためには、(メタ)アリルスルホン酸およびその塩類などの連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。なお、連鎖移動剤の使用量は、水溶性単量体の種類や量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、使用する全水溶性単量体に対して、好ましくは0.1モル%以上、50モル%以下、より好ましくは1モル%以上、20モル%以下である。
【0036】
上記グラフト重合において、所定の分子量を有するグラフト重合体を再現性よく得るには、重合反応を安定に進行させることが必要である。それゆえ、溶液重合する場合には、使用する溶媒の25℃における溶存酸素濃度を、好ましくは5ppm以下、より好ましくは0.01ppm以上、4ppm以下、さらに好ましくは0.01ppm以上、2ppm以下、最も好ましくは0.01ppm以上、1ppm以下とする。なお、溶媒に単量体を添加後、窒素置換などを行う場合には、単量体をも含んだ系の溶存酸素濃度を上記濃度とする。
【0037】
上記溶媒の溶存酸素濃度の調整は、重合反応槽で行ってもよく、予め溶存酸素量を調整したものを用いてもよく、溶媒中の酸素を追い出す方法としては、例えば、下記の(1)〜(5)の方法が挙げられる。
【0038】
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素などの不活性ガスを加圧充填後、密閉容器内の圧力を下げることで溶媒中の酸素の分圧を低くする。窒素気流下で、密閉容器内の圧力を下げてもよい。
【0039】
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素などの不活性ガスで置換したまま液相部分を長時間激しく攪拌する。
【0040】
(3)容器内に入れた溶媒に窒素などの不活性ガスを長時間バブリングする。
【0041】
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素などの不活性ガス雰囲気下で冷却する。
【0042】
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素などの不活性ガスを混合する。
【0043】
上記グラフト重合により得られたリグニン誘導体を、例えば、セメント分散剤に使用する場合、取り扱い性の観点から、水溶液状態で弱酸性以上のpHに調整しておくことが好ましく、より好ましくはpH4以上、さらに好ましくはpH5以上、特に好ましくはpH6以上である。pH調整は、例えば、一価金属または二価金属の水酸化物や炭酸塩などの無機塩;アンモニア;有機アミン;などのアルカリ性物質を用いて行うことができる。これらのアルカリ性物質は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、pHを下げる必要がある場合、特に、重合の際にpH調整が必要な場合は、リン酸、硫酸、硝酸、アルキルリン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、(アルキル)ベンゼンスルホン酸などの酸性物質を用いて、pH調整を行うことができる。これらの酸性物質は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの酸性物質のうち、pH緩衝作用がある点などから、リン酸が特に好適である。また、反応終了後、必要に応じて、濃度調整を行うこともできる。
【0044】
なお、リグニン誘導体を製造するために、上記の方法では、クラフトリグニンおよび/またはその塩に水溶性単量体を反応させたが、アルキル化、アルコキシル化、スルホン化、硫酸化、アルコキシ硫酸化、スルホメチル化、アミノメチル化などのような方法で化学的に修飾されたクラフトリグニンおよび/またはその塩に対して、水溶性単量体を反応させてもよいし、クラフトリグニンおよび/またはその塩に水溶性単量体を反応させてから、上記の化学的修飾を行ってもよい。また、水溶性単量体を反応させた後に、ホルムアルデヒドや多官能性の架橋剤を用いて架橋してもよい。
【0045】
<消泡剤>
本発明の分散剤には、その分散性能を阻害しない範囲で、従来公知の添加剤を配合してもよい。従来公知の添加剤としては、具体的には、消泡剤、空気連行剤、湿潤剤、防水剤、粘度調節剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0046】
以下、代表的な添加剤である消泡剤について説明する。
【0047】
本発明の分散剤に消泡剤を配合する場合、消泡剤は、リグニン誘導体を製造した後に添加してもよいし、クラフトリグニンおよび/またはその塩と水溶性単量体とを反応させる前、あるいは、反応中に添加してもよい。使用可能な消泡剤としては、例えば、(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物などのポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物などのポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オールなどのアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステルなどの(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステルなどのポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンステアリルリン酸エステルなどのポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンラウリルアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物など)、アルキレンオキシドを付加させた硬化牛脂アミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物など)などのポリオキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド;などが挙げられる。これらの消泡剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0048】
消泡剤の配合量は、リグニン誘導体の質量に対して、好ましくは0.0001質量%以上、10質量%以下、より好ましくは0.001質量%以上、8質量以下である。消泡剤の配合量が0.0001質量%未満であると、消泡効果が充分に発揮されないことがある。逆に、消泡剤の配合量が20質量%を超えると、消泡する効果が実質的に飽和することに加え、必要以上に消泡剤を使用することになり、製造コストが上昇することがある。
【0049】
<被分散体>
本発明の分散剤を使用して分散させる被分散体は、特に限定されるものではないが、種々の有機物質や無機物質が挙げられる。被分散体の形状としては、特に限定されるものではないが、例えば、粉体状、粒子状、顆粒状、繊維状、平板状などが挙げられる。
【0050】
有機物質の具体例としては、例えば、フォストイエロー、ジスアゾイエロー、ジスアゾオレンジ、ナフトールレッド、銅フタロシアニン系顔料、リンモリブデンタングステン酸塩、タンニン酸塩、カタノール、タモールレーキ、イソインドリノンエローグリーニッシュ、イソインドリニンエトーレディシュ、キナクリドン、ジオキサジンバイオレット、ペリノンオレンジ、ペリレンバーミリオン、ペリレンスカレーット、ペリレンレッド、ペリレンマルーンなどの有機顔料;ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、フッ素樹脂などの合成樹脂;ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛・ステアリン酸カルシウム複合体、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛などの金属石鹸などが挙げられる。これらの有機物質は、その平均粒子径が一般的には100μm以下、好ましくは0.1μm以上、50μm以下である。これらの有機物質は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0051】
無機物質の具体例としては、例えば、カオリン、ケイ酸アルミニウム、クレー、タルク、マイカ、ケイ酸カルシウム、セリサイト、ベントナイトなどのケイ酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸鉛などの炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;ストロンチウムクロメート、ピグメントイエローなどのクロム酸塩;モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウムなどのモリブデン酸塩;アルミナ、酸化アンチモン、酸化チタニウム、酸化コバルト、四酸化三鉄、三酸化二鉄、四酸化三鉛、一酸化鉛、酸化クロムグリーン、三酸化タングステン、酸化イットリウムなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、メタチタン酸などの金属水酸化物;炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化ホウ素、炭化チタンなどの金属炭化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、チタン酸バリウム、サチンホワイト、カーボンブラック、グラファイト、クロムイエロー、硫化水銀、ウルトラマリン、パリスブルー、チタニウムイエロー、クロムバーミリオン、リトポン、アセト亜ヒ酸銅、ニッケル、銀、パラジウム、チタン酸ジルコン酸鉛などが挙げられる。これらの無機物質は、その平均粒子径が一般的には100μm以下、好ましくは0.1μm以上、50μm以下である。これらの無機物質は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0052】
本発明の分散剤を用いて上記の有機物質および/または無機物質を分散させる分散媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水;灯油、軽油、ケロシンなどの燃料油類;ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾールなどの芳香族炭化水素類;エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコールなどのアルコール類;酢酸エチル、ジオクチルフタレートなどのエステル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、カルビトール、モノグライム、ジグライム、テトラグライム、メチルセルソルブ、ブチルセルソルブなどのエーテル類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどのジオール類;1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ジクロロエチレン、クロロジフルオロメタンなどのハロゲン化炭化水素類;メチルイソアミルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ターピネオール、流動パラフィン、ミネラルスピリット、N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドン、グリセリンなどが挙げられる。これらの分散媒のうち、水が特に好適である。これらの分散媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0053】
本発明の分散剤を使用する場合、分散媒に混合する方法は、特に限定されるものではない。例えば、本発明の分散剤を分散媒と混合してから被分散体を添加してもよく、本発明の分散剤を分散媒に被分散体と同時にまたは逐次に添加してもよい。あるいは、予め分散媒に被分散体を混合してから本発明の分散剤を後から添加してもよい。
【0054】
本発明の分散剤の使用量としては、被分散体の種類や量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、被分散体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、10質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上、5質量部以下である。分散媒は、通常、被分散体100質量部に対して、20質量部以上、1,000質量部以下で使用する。
【0055】
≪セメント分散剤≫
本発明の分散剤は、種々の用途に利用することができるが、特にセメント分散剤として好適である。そこで、以下に、本発明の分散剤をセメント分散剤として使用する場合について詳しく説明する。
【0056】
本発明の分散剤をセメント分散剤として使用する場合は、水溶液の形態で使用してもよいし、または、反応後にカルシウム、マグネシウムなどの二価金属の水酸化物で中和して多価金属塩とした後に乾燥させたり、シリカ系微粉末などの無機粉体に担持して乾燥させたり、ドラム型乾燥装置、ディスク型乾燥装置またはベルト式乾燥装置を用いて支持体上に薄膜状に乾燥固化させた後に粉砕したり、スプレードライヤーによって乾燥固化させたりすることにより粉体化して使用してもよい。また、粉体化した本発明の分散剤を予めセメント粉末やドライモルタルのような水を含まないセメント組成物に配合して、左官、床仕上げ、グラウトなどに用いるプレミックス製品として使用してもよいし、セメント組成物の混練時に配合してもよい。
【0057】
本発明の分散剤は、セメント分散剤として有用であり、各種水硬性材料、すなわち、セメントや石膏などのセメント組成物やそれ以外の水硬性材料に用いることができる。このような水硬性材料と水と本発明のセメント分散剤とを含有し、さらに必要に応じて、細骨材(砂など)や粗骨材(砕石など)を含む水硬性組成物の具体例としては、例えば、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスターなどが挙げられる。
【0058】
上記水硬性組成物の中では、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物が最も一般的であり、セメント組成物は、本発明の分散剤、セメントおよび水を必須成分として含有する。このようなセメント組成物は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0059】
セメント組成物に使用されるセメントは、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩、およびそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)などが挙げられる。さらに、セメント組成物には、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末などの微粉体や石膏などを添加してもよい。また、骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材など以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質などの耐火骨材を使用することができる。
【0060】
上記セメント組成物においては、その1mあたりの単位水量、セメント使用量および水/セメント比(質量比)は、単位水量が好ましくは100kg/m以上、185kg/m以下、より好ましくは120kg/m以上、175kg/m以下であり、使用セメント量が好ましくは200kg/m以上、800kg/m以下、より好ましくは250kg/m以上、800kg/m以下であり、水/セメント比(質量比)が好ましくは0.1以上、0.7以下、より好ましくは0.2以上、0.65以下であり、貧配合から富配合まで幅広く使用可能である。本発明の分散剤は、高減水率領域、すなわち、水/セメント比(質量比)が0.15以上、0.5以下(好ましくは0.15以上、0.4以下)といった水/セメント比の低い領域においても使用可能であり、さらに、単位セメント量が多く水/セメント比が小さい高強度コンクリートや、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
【0061】
上記セメント組成物において、本発明の分散剤の配合量は、例えば、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリートなどに使用する場合には、固形分換算で、セメントの質量に対して、好ましくは0.01質量%以上、10.0質量%以下、より好ましくは0.02質量%以上、5.0質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以上、3.0質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以上、2.0質量%以下である。このような配合量により、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上などの各種の好ましい諸効果がもたらされる。本発明の分散剤の配合量が0.01質量%未満であると、分散性能を充分に発揮することができないことがある。逆に、本発明の分散剤の配合量が10.0質量%を超えると、分散性を向上させる効果が実質的に飽和することに加え、必要以上に本発明の分散剤を使用することになり、製造コストが上昇することがある。
【0062】
上記セメント組成物は、高減水率領域においても高い分散性と分散保持性能を有し、かつ、低温時においても十分な初期分散性と粘性低減性とを発揮し、優れたワーカビリティを有することから、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり、さらに、中流動コンクリート(スランプ値が22cm以上、25cm以下のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50cm以上、70cm以下のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材などの高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0063】
さらには、本発明のセメント分散剤には、従来公知のセメント分散剤を併用することができ、例えば、以下のものを使用することができる。
【0064】
リグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;特開平1−113419号公報に記載のような、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物などのアミノスルホン酸系;特開平7−267705号公報に記載のような、(a)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系化合物と(メタ)アクリル酸系化合物との共重合体および/またはその塩と、(b)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物と無水マレイン酸との共重合体および/またはその加水分解物、ならびに/あるいは、その塩と、(c)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物とポリアルキレングリコール系化合物のマレイン酸エステルとの共重合体および/またはその塩とを含むセメント分散剤;特許第2508113号明細書に記載のような、A成分として、(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステルと(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体、B成分として、特定のポリエチレングリコールポリプロピレングリコール系化合物、C成分として、特定の界面活性剤からなるコンクリート混和剤;特開昭62−216950号公報に記載のような、(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステルもしくはポリエチレン(プロピレン)グリコールモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、ならびに、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体;特開平1−226757号公報に記載のような、(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、および、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体;特公平5−36377号公報に記載のような、(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)もしくはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、ならびに、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体;特開平4−149056号公報に記載のような、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとマレイン酸(塩)との共重合体;特開平5−170501号公報に記載のような、(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)、アルカンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、および、分子中にアミド基を有するα,β−不飽和単量体からなる共重合体;特開平6−191918号公報に記載のような、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(塩)、ならびに、(メタ)アリルスルホン酸(塩)もしくはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)からなる共重合体;特開平5−43288号公報に記載のような、アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、もしくは、その加水分解物、または、その塩;特公昭58−38380号公報に記載のような、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、マレイン酸、および、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体、もしくは、その塩、または、そのエステル;特公昭59−18338号公報に記載のような、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、および、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体;特開昭62−119147号公報に記載のような、スルホン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび必要によりこれと共重合可能な単量体からなる共重合体、または、その塩;特開平6−271347号公報に記載のようなアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と、末端にアルケニル基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物;特開平6−298555号公報に記載のような、アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と、末端にヒドロキシ基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物;特開昭62−68806号公報に記載のような、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどの特定の不飽和アルコールにエチレンオキシドなどを付加したアルケニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、および、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体、または、その塩などのポリカルボン酸(塩)。これらの従来公知のセメント分散剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0065】
本発明の分散剤は、上記の従来公知のセメント分散剤以外に、オキシカルボン酸系化合物を併用することができる。オキシカルボン酸系化合物を含有させることにより、高温の環境下においても、より高い分散保持性能を発揮することができる。オキシカルボン酸系化合物としては、炭素原子数4〜10のオキシカルボン酸またはその塩が好ましく、具体的には、例えば、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸や、これらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミンなどの無機塩または有機塩などが挙げられる。これらのオキシカルボン酸系化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのオキシカルボン酸系化合物のうち、グルコン酸またはその塩が特に好適である。特に、貧配合コンクリートの場合には、分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤としてリグニンスルホン酸塩系の分散剤を使用し、オキシカルボン酸系化合物としてグルコン酸もしくはその塩を使用することが好ましい。
【0066】
本発明の分散剤と従来公知のセメント分散剤とを併用する場合、本発明の分散剤と従来公知のセメント分散剤との配合比率(すなわち、固形分換算による本発明の分散剤/従来公知のセメント分散剤:質量比)は、好ましくは1〜99/99〜1、より好ましくは5〜95/95〜5、さらに好ましくは10〜90/90〜10、特に好ましくは20〜80/80〜20である。また、本発明の分散剤とオキシカルボン酸系化合物とを併用する場合、本発明の分散剤とオキシカルボン酸系化合物との配合比率(すなわち、固形分換算における本発明の分散剤/オキシカルボン酸系化合物:質量比)は、好ましくは1〜99/99〜1、より好ましくは5〜95/95〜5、さらに好ましくは10〜90/90〜10、特に好ましくは20〜80/80〜20である。さらに、本発明の分散剤、従来公知のセメント分散剤およびオキシカルボン酸系化合物の3成分を併用する場合、本発明の分散剤、従来公知のセメント分散剤およびオキシカルボン酸系化合物の配合比率(すなわち、固形分換算による本発明の分散剤/従来公知のセメント分散剤/オキシカルボン酸系化合物:質量比)は、好ましくは1〜98/1〜98/1〜98、より好ましくは5〜90/5〜90/5〜90、さらに好ましくは10〜90/5〜85/5〜85、特に好ましくは20〜80/10〜70/10〜70である。
【0067】
また、上記セメント組成物は、下記の(1)〜(11)に例示するような他の従来公知のセメント添加剤(材)を含有することができる。
【0068】
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩などの不飽和カルボン酸重合物;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの非イオン性セルロースエーテル類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの多糖類のアルキル化またはヒドロキシアルキル化誘導体の一部または全部のヒドロキシ基の水素原子が、炭素原子数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基またはそれらの塩を部分構造として有するイオン性親水性置換基で置換されてなる多糖誘導体;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナランなど)などの微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマーおよびその四級化合物など。
【0069】
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキルなどの各種ビニル単量体の共重合物など。
【0070】
(3)オキシカルボン酸系化合物以外の硬化遅延剤:グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖などの単糖類や、二糖、三糖などのオリゴ糖、またはデキストリンなどのオリゴ糖、またはデキストランなどの多糖類、これらを含む糖蜜などの糖類;ソルビトールなどの糖アルコール;ケイフッ化マグネシウム;リン酸およびその塩またはホウ酸エステル類;アミノカルボン酸およびその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリンなどの多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)およびこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などのホスホン酸およびその誘導体など。
【0071】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウムなどの可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウムなどの塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸およびギ酸カルシウムなどのギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケートなど。
【0072】
(5)オキシアルキレン系以外の消泡剤:燈油、流動パラフィンなどの鉱油系消泡剤;動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物などの油脂系消泡剤;オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物などの脂肪酸系消泡剤;グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックスなどの脂肪酸エステル系消泡剤;オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類などのアルコール系消泡剤;アクリレートポリアミンなどのアミド系消泡剤;リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェートなどのリン酸エステル系消泡剤;アルミニウムステアレート、カルシウムオレエートなどの金属石鹸系消泡剤;ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサンなどのポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油などのシリコーン系消泡剤など。
【0073】
(6)AE剤:樹脂石鹸、飽和もしくは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステルまたはその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステルまたはその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネートなど。
【0074】
(7)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコールなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコールなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタンなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノールなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミンなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸などの分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基またはアルコキシ基を置換基として有してもよい、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドなどの各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤;など。
【0075】
(8)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックスなど。
【0076】
(9)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛など。
【0077】
(10)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテルなど。
【0078】
(11)膨張材;エトリンガイト系、石炭系など。
【0079】
その他の従来公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤などを挙げることができる。これらの従来公知のセメント添加剤(材)は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0080】
上記セメント組成物において、セメントおよび水以外の成分についての特に好適な実施形態としては、下記の(1)〜(4)が挙げられる。
【0081】
(1)本発明の分散剤とオキシアルキレン系消泡剤との2成分を必須とする組合せ。オキシアルキレン系消泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類などが挙げられる。これらのオキシアルキレン系消泡剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのオキシアルキレン系消泡剤のうち、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が特に好適である。オキシアルキレン系消泡剤の配合量は、本発明の分散剤に含有されるリグニン誘導体の質量に対して、好ましくは、0.01質量%以上、20質量%以下である。
【0082】
(2)本発明の分散剤と材料分離低減剤との2成分を必須とする組合せ。材料分離低減剤としては、例えば、非イオン性セルロースエーテル類などの各種増粘剤、部分構造として炭素原子数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物などが挙げられる。これらの材料分離低減剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。本発明の分散剤と材料分離低減剤との配合質量比は、好ましくは10/90〜99.99/0.01、より好ましくは50/50〜99.9/0.1である。この組合せのセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適である。
【0083】
(3)本発明の分散剤と促進剤との2成分を必須とする組合せ。促進剤としては、例えば、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウムなどの可溶性カルシウム塩類;塩化鉄、塩化マグネシウムなどの塩化物類;チオ硫酸塩;ギ酸およびギ酸カルシウムなどのギ酸塩類;などが挙げられる。これらの促進剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。本発明の分散剤と促進剤との配合質量比は、好ましくは10/90〜99.9/0.1、より好ましくは20/80〜99/1である。
【0084】
(4)本発明の分散剤とオキシアルキレン系消泡剤とAE剤との3成分を必須とする組合せ。オキシアルキレン系消泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類などが挙げられる。これらのオキシアルキレン系消泡剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのオキシアルキレン系消泡剤のうち、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が特に好適である。オキシアルキレン系消泡剤の配合量は、本発明の分散剤に含有されるリグニン誘導体の質量に対して、好ましくは0.01質量%以上、20質量%以下である。他方、AE剤の配合量は、セメントの質量に対して、好ましくは0.001質量%以上、2質量%以下である。
【0085】
≪新規なリグニン誘導体≫
本発明の分散剤に配合されるリグニン誘導体のうち、クラフトリグニンおよび/またはその塩に、水溶性単量体として、例えば、炭素原子数1〜30のアルコールや炭素原子数1〜30のアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類と、炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;炭素原子数1〜30のアルコールに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレートなどの、(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加物類などを反応させて得られたリグニン誘導体は、クラフトリグニンおよび/またはその塩由来の少なくとも1種の構成単位と少なくとも1種のポリアルキレンオキシド鎖と少なくとも1種のアニオン性官能基とを有することから、新規なリグニン誘導体である。
【0086】
すなわち、本発明の新規なリグニン誘導体は、クラフトリグニンおよび/またはその塩由来の少なくとも1種の構成単位と少なくとも1種のポリアルキレンオキシド鎖と少なくとも1種のアニオン性官能基とを有することを特徴とする。もちろん、本発明の新規なリグニン誘導体は、上記のような製法に限定されるものではない。
【0087】
本発明の新規なリグニン誘導体は、その質量平均分子量が、特に限定されるものではないが、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下「GPC」ということがある。)で測定した値として、ポリエチレングリコール換算で、好ましくは1,000以上、500,000以下、より好ましくは5,000以上、300,000以下、さらに好ましくは10,000以上、150,000以下である。
【0088】
本発明の新規なリグニン誘導体は、同様に高い分散性能を発揮することから、例えば、分散剤として特に好適であるが、ポリアルキレンオキシド鎖やアニオン性官能基を有することから、種々の用途に使用することができる。その用途としては、具体的には、例えば、キレート剤、洗浄剤、凝集剤、増粘剤、コーティング剤、塗料、接着剤、吸水性樹脂などが挙げられる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0090】
リグニン誘導体の分子量は、実施例1および比較例1では下記の測定条件(a)を用いて、実施例2では測定条件(b)を用いて測定した。
【0091】
<測定条件(a)>
使用カラム:東ソー社製、TSK guard column SWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL;
溶離液:水10,999g、アセトニトリル6,001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、さらに酢酸でpH6.0に調整した溶液を使用した;
サンプル打ち込み量:100μL;
流速:0.8mL/min;
カラム温度:40℃;
検出器:日本Waters社製、2414 示差屈折検出器;
解析ソフト:日本Waters社製、Empower Software;
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール[ピークトップ分子量(Mp)272,500、219,300、107,000、50,000、26,840、11,840、7,100、4,250、1,470];
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した;
重合体(水溶液)を上記溶離液で重合体濃度が0.5質量%となるように溶解させたものをサンプルとした。
【0092】
<測定条件(b)>
使用カラム:東ソー社製、TSK guard column αと、TSKgel α−5000と、α−4000と、α−3000とを、この順で連結させたもの;
溶離液:アセトニトリル1,000.0g、水8,938.4gの溶液に、ホウ酸27.9g、塩化カリウム33.8gを溶解し、さらに30%NaOH水溶液でpH9.0に調整した溶液を使用した;
サンプル打ち込み量:100μL;
流速:0.6mL/min;
カラム温度:40℃;
検出器:日本Waters社製、2414 示差屈折検出器;
解析ソフト:日本Waters社製、Empower Software;
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール[ピークトップ分子量(Mp)685,000、272,500、219,300、107,000、50,000、26,840、11,840、7,100、4,250、1,470];
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基準にして3次式で作成した;
重合体(水溶液)を上記溶離液で重合体濃度が0.5質量%となるように溶解させたものをサンプルとした。
【0093】
≪実施例1≫
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管および還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、水98.7g、ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル(エチレンオキシドの平均付加モル数50)152.4g、アクリル酸0.3gおよびクラフトリグニン(アルドリッチ社製、商品番号:37095−9)2.1gを仕込み、撹拌下で反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に加熱した。液温が58℃に達した後、30%過酸化水素水溶液0.5gを水6.3gで希釈した水溶液を加え、直ちにアクリル酸9.2gを水21.5gで希釈したモノマー水溶液と、L−アスコルビン酸0.2gおよび連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.4gを混合した連鎖移動剤水溶液32.6gとを滴下開始した。モノマー水溶液は3時間、連鎖移動剤水溶液は3時間30分かけて滴下した。連鎖移動剤水溶液を滴下終了後、2時間引き続いて、58℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、本発明の新規なリグリン誘導体として、質量平均分子量33,000のポリカルボン酸系重合体(1)を得た。得られたポリカルボン酸系重合体(1)のGPCチャート(示差屈折検出器により測定)を図1に、GPCチャート(波長230nmにおいて紫外吸収度検出器により測定)を図2に示す。なお、図1および2において、縦軸は検出強度を表し、横軸は保持時間を表す。
【0094】
≪比較例1≫
実施例1において、クラフトリグニンを使用しないこと以外は、同様の操作を行うことにより、質量平均分子量33,000のリグニン骨格を有しないポリカルボン酸系比較重合体(1)を得た。得られたポリカルボン酸系比較重合体(1)のGPCチャート(示差屈折検出器により測定)を図3に、GPCチャート(波長230nmにおいて紫外吸収度検出器により測定)を図4に示す。なお、図3および4において、縦軸は検出強度を表し、横軸は保持時間を表す。
【0095】
図1と図3とのRIで測定したGPCチャートを見ると、ほぼ同等のポリマーが生成していることが分かる。次に、図2と図4とのUVで測定したGPCチャートを見ると、クラフトリグニン存在下で重合したポリカルボン酸系重合体(1)の保持時間26分あたりのポリマーのUV吸収が、ポリカルボン酸系比較重合体(1)の保持時間26分あたりのポリマーのUV吸収と比べて、はるかに大きいことが分かる。このことにより、ポリカルボン酸系重合体(1)は、ポリマー骨格にUV吸収の大きな芳香環を含むクラフトリグニン骨格が導入されていることが分かる。かくして、本発明の新規なリグニン誘導体は、クラフトリグニンおよび/またはその塩由来の構成単位とポリアルキレンオキシド鎖とアニオン性官能基とを有する。
【0096】
≪試験例1≫
<モルタルの配合と混練方法>
モルタルの混練は、以下のとおり実施した。
【0097】
ホバート型モルタルミキサー(型番N−50、ホバート社製)に、太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメント1,080gおよびセメント強さ試験用標準砂(JIS R 5201−1997附属書2の5.1.3に規定)1,350gを入れ、低速回転で、10秒間空練りした後、表1に示す所定量の分散剤の主成分および消泡剤(NMB社製の商品名「MA404」の1%水溶液を21.6g)を秤量して水で希釈したもの324gを、10〜20秒間かけてミキサーに投入する。空練り開始から5分30秒後まで低速で混練し、回転を停止した。空練り開始から6分30秒後に、フローコーン(JIS R 5201−1997に記載)に2層に分けて練りあがったモルタルを詰め、空練り開始から10分後に、コーンを引き上げ、広がったモルタルのフローを測定し、これを0分後のフローとした。フローの測定は、JIS R 5201−1997に準じて行った。なお、フローの値は、数値が大きい程、分散性が高いことを示す。モルタル試験の結果を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
表1から明らかなように、リグニン誘導体であるポリカルボン酸系重合体(1)と、リグニン誘導体ではないポリカルボン酸系比較重合体(1)とを比較した場合、同一添加量において、クラフトリグニン骨格が導入されたポリカルボン酸系重合体(1)を用いて得られたモルタルのフロー値が大きい。すなわち、リグニン誘導体であるポリカルボン酸系重合体(1)の方がセメントに対する分散性能に優れていることがわかる。
【0100】
≪実施例2≫
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管および還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、クラフトリグニン水溶液16.0g(固形分:21.5%)および水64.0gを仕込み、攪拌下で反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。液温が80℃に達した後、37%アクリル酸ナトリウム水溶液160.0gおよび10%過硫酸ナトリウム水溶液80.0gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、グラフト反応を完結させ、リグニン誘導体であるグラフト体(1)を得た。得られたグラフト体(1)のGPCチャート(示差屈折検出器により測定)を図5に示す。また、示差屈折検出器での測定により、グラフト体(1)の質量平均分子量は59,200であることが分かった。また、図6に波長230nmにおいて紫外吸収度検出器により測定したグラフト体(1)のGPCチャートを示した。
【0101】
また、図7に波長230nmにおいて紫外吸収度検出器により測定した、実施例2で原料として使用したクラフトリグニンのGPCチャートを、図8に波長230nmにおいて紫外吸収度検出器により測定した市販のポリアクリル酸ナトリウム(質量平均分子量:約5,000)のGPCチャートを示す。
【0102】
図6を見ると、原料のクラフトリグニンのGPCチャートである図7には見られなかった高分子量体のピーク(ピークトップの保持時間:約36分付近)が存在することが分かる。また、この高分子量体のピークトップの紫外吸収度は約0.024AUである。
【0103】
図6のGPC測定の際と同様のポリマー濃度で調整して測定したポリアクリル酸ナトリウムのGPCチャート(図8)から、そのピークトップの紫外吸収度は約0.006AUであることが分かる。
【0104】
このことから、実施例2において得られたグラフト体(1)は高分子量を有し、かつ紫外吸収度の大きいクラフトリグニン骨格を有するポリアクリル酸系ポリマーであることが分かる。
【0105】
≪試験例2≫
<モルタルの配合と混練方法>
モルタルの混練は、以下のとおり実施した。
【0106】
ホバート型モルタルミキサー(型番N−50、ホバート社製)に、太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメント707.5gおよび豊浦標準砂540gを入れ、低速回転で、10秒間空練りし、攪拌を停止する。再度低速回転で混練を開始すると同時に、表2に示す所定量の分散剤および消泡剤(NMB社製の商品名「MA404」の1%水溶液を28.3g)を秤量して水で希釈したもの375.5gを、15秒間かけてミキサーに投入する。そのままの混練速度で30秒間混練した後、5秒間かけてセメント強さ試験用標準砂(JIS R 5201−1997附属書2の5.1.3に規定)1,350gをミキサーに投入する。さらにそのままの混練速度で60秒間混練を続けた後、中速回転に切り替えてさらに30秒間混練し、回転を停止する。回転を停止してから15秒間で壁面に付着したモルタルを掻き落とし、回転を停止してから30秒後に再度中速回転で混練を再開し、1分間混練し、回転を停止した。ミニスランプコーン(JIS A 1173に記載)に3層に分けて練りあがったモルタルを詰め、モルタルのスランプ値を測定した。なお、モルタルのスランプ値は、数値が大きい程、分散性が高いことを示す。モルタル試験の結果を表2に示す。
【0107】
【表2】

【0108】
表2から明らかなように、リグニン誘導体であるグラフト体(1)を分散剤として使用した場合は、いずれもモルタルの練りあがり直後から30分後まで高いスランプ値を示した。これに対し、リグニンスルホン酸を分散剤として使用した場合は、モルタルの練りあがり直後は高いスランプ値を示したものの、練りあがり30分後にはスランプ値が半減した。また、クラフトリグニンを分散剤として使用した場合は、練りあがり直後は高いスランプ値を示したものの、練りあがり30分後にはモルタルが硬すぎるので測定しなかった。このように、クラフトリグニンおよび/またはその塩由来の構成単位と水溶性単量体(実施例2では、アクリル酸)由来の構成単位とを有するリグニン誘導体は、高い分散性能を発揮することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の分散剤は、従来のリグニンスルホン酸などの分散剤に比べて、高い分散性能を発揮することができる。それゆえ、本発明の分散剤は、様々な被分散体を分散させるのに有用である。本発明の新規なリグニン誘導体は、同様に高い分散性能を発揮することができ、例えば、分散剤、キレート剤、洗浄剤、凝集剤、増粘剤、コーティング剤、塗料、接着剤、吸水性樹脂などに幅広くに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】実施例1で得られたリグニン誘導体のRIで測定したGPCチャートである。
【図2】実施例1で得られたリグニン誘導体のUVで測定したGPCチャートである。
【図3】比較例1で得られた比較重合体のRIで測定したGPCチャートである。
【図4】比較例1で得られた比較重合体のUVで測定したGPCチャートである。
【図5】実施例2で得られたリグニン誘導体のRIで測定したGPCチャートである。
【図6】実施例2で得られたリグニン誘導体のUVで測定したGPCチャートである。
【図7】実施例2で原料として使用したクラフトリグニンのUVで測定したGPCチャートである。
【図8】市販のポリアクリル酸ナトリウムのUVで測定したGPCチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラフトリグニンおよび/またはその塩由来の構成単位と水溶性単量体由来の構成単位とを有するリグニン誘導体を含有することを特徴とする分散剤。
【請求項2】
前記リグニン誘導体がクラフトリグニンおよび/またはその塩に水溶性単量体を反応させて得られる請求項1記載の分散剤。
【請求項3】
前記リグニン誘導体がアニオン性官能基を有する請求項1または2記載の分散剤。
【請求項4】
前記リグニン誘導体がポリアルキレンオキシド鎖を有する請求項1〜3のいずれか1項記載の分散剤。
【請求項5】
セメント分散剤である請求項1〜4のいずれか1項記載の分散剤。
【請求項6】
クラフトリグニンおよび/またはその塩由来の構成単位とポリアルキレンオキシド鎖とアニオン性官能基とを有することを特徴とするリグニン誘導体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−514402(P2008−514402A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533110(P2007−533110)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【国際出願番号】PCT/JP2005/018048
【国際公開番号】WO2006/033464
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】