説明

クランク室油中の燃費向上剤および耐摩耗剤としての酒石酸誘導体およびそれらの調製物

【課題】燃費を向上させ、燃費と摩耗および摩擦低下とを保持する低イオウ、低灰分、低リン潤滑剤組成物および内燃機関を潤滑させる方法を提供すること。
【解決手段】低イオウ、低灰分および低リン潤滑剤中で本発明の酒石酸化合物を使用する調合物は、摩耗および摩擦を低下させ、そして燃費を向上させる。この低イオウ、低灰分および低リン潤滑油組成物は、1種またはそれ以上の基油から構成され、これらは、一般に、主要量(すなわち、約50重量パーセントより多い量)で存在している。本発明は、さらに、内燃機関を潤滑させる方法を提供し、該方法は、該内燃機関に、該潤滑剤組成物を供給する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、燃費を向上させ燃費と摩耗および摩擦低下とを保持する低イオウ、低灰分、低リン潤滑剤組成物および内燃機関を潤滑させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃費は、非常に重要であり、例えば、エンジン内の摩擦を低下させることにより燃費の向上を助長する潤滑剤は、非常に価値がある。本発明は、添加剤パッケージを含む低イオウ、低灰分、低リン潤滑剤組成物を提供し、これは、内燃機関における燃費の向上につながる。この向上は、摩擦調整剤成分が酒石酸イミド(tartrimide)または酒石酸アミド(tartramide)あるいはそれらの組み合わせだけからまたは主としてそれらからなる添加剤パッケージを提供することにより、引き起こされる。
【0003】
特許文献1(Barrer、1980年12月2日)は、きしみおよび摩擦の効果的な低下だけでなく燃費の向上のために潤滑剤および燃料中の添加剤として有用な酒石酸イミドを開示している。
【0004】
特許文献2(Davisら、1990年8月28日)は、以下を含有する内燃機関用潤滑油組成物を開示している:(A)潤滑粘性のあるオイル、(B)コハク酸アシル化剤と特定のアミンとを反応させることにより生成されるカルボン酸誘導体、および(C)スルホン酸またはカルボン酸の塩基性アルカリ金属塩。例証的な潤滑剤組成物(潤滑剤III)は、以下を含む基油を含有する:粘度指数調節剤;塩基性アルキル化ベンゼンスルホン酸マグネシウム;オーバーベース化アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム;塩基性アルキル化ベンゼンスルホン酸カルシウム;スクシンイミド分散剤;およびホスホロジチオ酸の亜鉛塩。
特許文献3(Chamberlin、1982年4月27日)は、内燃機関の燃費を向上させる潤滑剤組成物を開示している。この組成物は、特定の硫化組成物(これは、カルボン酸のエステルをベースにしている)および塩基性アルカリ金属スルホン酸塩を含有する。追加成分には、少なくとも1種の油分散可能清浄剤または分散剤、粘度向上剤、およびリン含有酸の特定の塩が挙げられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,237,022号明細書
【特許文献2】米国特許第4,952,328号明細書
【特許文献3】米国特許第4,326,972号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、内燃機関を潤滑させるのに適切な内燃機関で使用するのに適切な低イオウ、低リン、低灰分潤滑剤組成物を提供し、該組成物は、以下を含有する:
(a)潤滑粘性のあるオイル、および
(b)式Iで表わされる物質と約8個〜約30個の炭素原子を有するアルコールまたはアミンおよびそれらの組み合わせとの縮合生成物;
【0007】
【化4】

ここで、各Rは、別個に、H、またはヒドロカルビル基であるか、あるいは該R基は、一緒になって、環を形成する;そして、ここで、RがHである場合、該縮合生成物は、必要に応じて、アシル化またはホウ素化合物との反応により、さらに官能化される;
ここで、該潤滑剤組成物は、約1.0までの硫酸灰分値、約0.08重量パーセントまでのリン含量および約0.4重量パーセントまでのイオウ含量を有する。
【0008】
本発明は、さらに、内燃機関を潤滑させる方法を提供し、該方法は、該内燃機関に、該潤滑剤組成物を供給する工程を包含する。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
以下を含有する、内燃機関で使用するのに適切な低イオウ、低リン、低灰分潤滑剤組成物:
(a)潤滑粘性のあるオイル、および
(b)式Iで表わされる物質と約8個〜約30個の炭素原子を有するアルコールまたはアミンおよびそれらの組み合わせとの縮合生成物;
【化1】


ここで、各Rは、別個に、H、またはヒドロカルビル基であるか、あるいは該R基は、一緒になって、環を形成する;そして、ここで、RがHである場合、該縮合生成物は、必要に応じて、アシル化またはホウ素化合物との反応により、さらに官能化される;
ここで、該潤滑剤組成物は、約1.0までの硫酸灰分値、約0.08重量パーセントまでのリン含量および約0.4重量パーセントまでのイオウ含量を有する、
組成物。
(項目2)
前記縮合生成物の量が、約0.05〜約5.0重量パーセントである、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記縮合生成物の量が、約0.1〜約2.0重量パーセントである、項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記縮合生成物の量が、約0.25〜約1.25重量パーセントである、項目2に記載の組成物。
(項目5)
ジアルキルジチオリン酸金属をさらに含有する、項目1に記載の組成物。
(項目6)
前記ジアルキルジチオリン酸金属が、ジアルキルジチオリン酸亜鉛であり、ここで、それらのアルキル基の少なくとも約50パーセントが、第二級アルキル基である、項目1に記載の組成物。
(項目7)
分散剤をさらに含有する、項目1に記載の組成物。
(項目8)
前記分散剤が、スクシンイミドである、項目7に記載の組成物。
(項目9)
少なくとも1種のカルシウムオーバーベース化清浄剤をさらに含有する、項目1に記載の組成物。
(項目10)
前記カルシウムオーバーベース化清浄剤が、スルホン酸カルシウム、カルシウムフェネート、サリチル酸カルシウム、カルシウムサリキサレートおよびそれらの混合物からなる群より選択される、項目9に記載の組成物。
(項目11)
少なくとも1種の酸化防止剤をさらに含有する、項目1に記載の組成物。
(項目12)
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール、アリールアミンおよびそれらの混合物からなる群より選択される、項目11に記載の組成物。
(項目13)
(b)以外の追加摩擦調整剤をさらに含有する、項目1に記載の組成物。
(項目14)
前記追加摩擦調整剤が、グリセロールモノオレエート、オレイルアミド、ジエタノール脂肪アミンおよびそれらの混合物からなる群より選択される、項目13に記載の組成物。
(項目15)
消泡剤をさらに含有する、項目1に記載の組成物。
(項目16)
内燃機関を潤滑させる方法であって、該方法は、該内燃機関に、潤滑粘性のあるオイルと、式Iで表わされる物質と約8個〜約30個の炭素原子を有するアルコールまたはアミンおよびそれらの組み合わせとの縮合生成物とを供給する工程を包含する;
【化2】


ここで、該生成物において、各Rは、別個に、H、またはヒドロカルビル基であるか、あるいは該R基は、一緒になって、環を形成する;または、ここで、RがHである場合、得られたヒドロキシル基は、アシル化またはホウ素化合物との反応により、さらに官能化される;
ここで、該潤滑剤組成物は、約1.0までの硫酸灰分値、約0.08重量パーセントまでのリン含量および約0.4重量パーセントまでのイオウ含量を有する、
方法。
(項目17)
潤滑剤組成物を製造する方法であって、該方法は、以下の工程を包含する:
(a)潤滑粘性のあるオイルと、式Iで表わされる物質と約8個〜約30個の炭素原子を有するアルコールまたはアミンおよびそれらの組み合わせとの縮合生成物とをブレンドする工程;
【化3】


ここで、該生成物において、各Rは、別個に、H、またはヒドロカルビル基であるか、あるいは該R基は、一緒になって、環を形成する;または、ここで、RがHである場合、得られたヒドロキシル基は、アシル化またはホウ素化合物との反応により、さらに官能化される;
ここで、該潤滑剤組成物は、約1.0までの硫酸灰分値、約0.08重量パーセントまでのリン含量および約0.4重量パーセントまでのイオウ含量を有する潤滑剤組成物を得る、
方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
種々の好ましい特徴および実施形態は、非限定的な例によって、以下で記述する。
【0010】
本発明は、上記のような組成物を提供する。しばしば、この組成物は、1局面では、0.4重量パーセント未満、別の局面では、0.3重量パーセント未満、さらに別の局面では、0.2重量パーセント以下、さらに別の局面では、0.1重量パーセント以下の全イオウ含量を有する。しばしば、本発明の組成物中の主要イオウ源は、通常の希釈油から誘導される。この全イオウ含量に代表的な範囲は、0.1〜0.01重量パーセントである。
【0011】
しばしば、この組成物は、その組成物の800ppmに等しいかそれ未満、別の局面では、500ppmに等しいかそれ未満、さらに別の局面では、300ppmに等しいかそれ未満、さらに別の局面では、200ppmに等しいかそれ未満、さらに別の局面では、100ppmに等しいかそれ未満の全リン含量を有する。この全リン含量の代表的な範囲は、500〜100ppmである。
【0012】
しばしば、この組成物は、その組成物の1.0重量パーセント未満、1局面では、0.7重量パーセントに等しいかそれ未満、さらに別の局面では、0.4重量パーセントに等しいかそれ未満、さらに別の局面では、0.3重量パーセントに等しいかそれ未満、さらに別の局面では、0.05重量パーセントに等しいかそれ未満の全硫酸灰分含量(これは、ASTM D−874により、測定した)を有する。この全硫酸灰分含量の代表的な範囲は、0.7〜0.05重量パーセントである。
【0013】
(潤滑粘性のあるオイル)
この低イオウ、低リン、低灰分潤滑油組成物は、1種またはそれ以上の基油から構成され、これらは、一般に、主要量(すなわち、約50重量パーセントより多い量)で存在している。一般に、この基油は、この潤滑油組成物の約60重量パーセントより多い量、または約70重量パーセントより多い量、または約80重量パーセントより多い量で、存在している。この基油のイオウ含量は、代表的には、0.2重量パーセント未満である。
【0014】
この低イオウ、低リン、低灰分潤滑油組成物は、100℃で、約16.3mm/sまで、1実施形態では、100℃で、5〜16.3mm/s(cSt)、1実施形態では、100℃で、6〜13mm/s(cSt)の粘度を有し得る。1実施形態では、この潤滑油組成物は、0W、0W−20、0W−30、0W−40、0W−50、0W−60、5W、5W−20、5W−30、5W−40、5W−50、5W−60、10W、10W−20、10W−30、10W−40または10W−50のSAE Viscosity Gradeを有する。
【0015】
この低イオウ、低リン、低灰分潤滑油組成物は、4mm/s(cSt)まで、1実施形態では、3.7mm/s(cSt)まで、1実施形態では、2〜4mm/s(cSt)、1実施形態では、2.2〜3.7mm/s(cSt)、1実施形態では、2.7〜3.5mm/s(cSt)の150℃での高温/高剪断粘度(これは、ASTM D4683の手順により、測定される)を有し得る。
【0016】
この低イオウ、低リン、低灰分潤滑剤組成物で使用される基油は、天然油、合成油またはそれらの混合物であり得るが、但し、このようなオイルのイオウ含量は、本発明の低イオウ、低リン、低灰分潤滑油組成物に必要な上で確認したイオウ濃度限界を超えない。有用な天然油には、動物油および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)だけでなく、鉱物性潤滑油(例えば、液状の石油オイル、およびパラフィンタイプ、ナフテンタイプまたは混合したパラフィン−ナフテンタイプであって、かつ溶媒処理された鉱物性潤滑油または酸処理された鉱物性潤滑油)が挙げられる。石炭またはけつ岩から誘導される潤滑粘性のあるオイルもまた、有用である。合成の潤滑油には、炭化水素油、例えば、重合されたオレフィンおよびインターポリマー化されたオレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレン共重合体、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)、およびそれらの混合物);アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼンなど);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、およびアルキル化されたポリフェニルなど);アルキル化されたジフェニルエーテルおよびアルキル化されたジフェニルスルフィドおよびその誘導体、それらの類似物および同族体などが挙げられる。
【0017】
アルキレンオキシド重合体およびインターポリマーおよびそれらの誘導体(この誘導体では、その末端水酸基は、エステル化、エーテル化などにより修飾されている)は、使用され得る公知の種類の合成潤滑油を構成する。これらは、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合により調製されるオイル、これらポリオキシアルキレン重合体のアルキルエーテルおよびアリールエーテル(例えば、約1,000の平均分子量を有するメチルポリイソプロピレングリコールエーテル、約500〜1,000の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、約1,000〜1,500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジエチルエーテルなど)、またはそれらのモノ−およびポリカルボン酸エステル(例えば、テトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合したC3〜8脂肪酸エステルまたはカルボン酸ジエステル)により例示される。
【0018】
他の適切な種類の合成潤滑油には、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸など)と、種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコールなど)とのエステルが挙げられる。これらエステルの特定の例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸ダイマーの2−エチルヘキシルジエステル、セバシン酸1モルとテトラエチレングリコール2モルおよび2−エチルヘキサン酸2モルとの反応により形成される複合エステルなどが挙げられる。
【0019】
合成油として有用なエステルには、C〜C12モノカルボン酸と、ポリオールおよびポリオールエーテル(例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなど)とから製造されるエステルものが挙げられる。
【0020】
このオイルは、ポリ−α−オレフィン(PAO)であり得る。代表的には、これらのPAOは、4個〜30個、または4個〜20個、または6個〜16個の炭素原子を有するモノマーから誘導される。有用なPAOの例には、オクテン、デセン、それらの混合物などから誘導されたものが挙げられる。これらのPAOは、100℃で、2〜15mm/s(cSt)、または3〜12mm/s(cSt)、または4〜8mm/s(cSt)の粘度を有し得る。有用なPAOの例には、100℃で4mm/s(cSt)のポリ−α−オレフィン、100℃で6mm/s(cSt)のポリ−α−オレフィン、およびそれらの混合物が挙げられる。鉱油と1種またはそれ以上の前述のPAOとの混合物は、使用され得る。
【0021】
未精製油、精製油および再精製油(これは、上で開示のタイプの天然油または合成油のいずれか、およびこれらのいずれかの2種またはそれ以上の混合物である)は、本発明の潤滑剤中で用いられ得る。未精製油とは、天然原料または合成原料から、さらに精製処理することなく、直接得られるオイルである。例えば、レトルト操作から直接得られるけつ岩油、第1段の蒸留から直接得られる石油オイル、またはエステル化工程から直接得られ、かつさらに処理せずに用いられるエステル油は、未精製油である。精製油は、1種またはそれ以上の特性を改良するべく、1段またはそれ以上の精製段階でさらに処理されたこと以外は、未精製油と類似している。このような精製方法の多くは、当業者には周知である。この方法には、例えば、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、浸透などがある。再精製油は、すでに使用された精製油に、精製油を得るのに用いた工程と類似の工程を適用することにより、得られる。このような再精製油もまた、再生された油または再生加工された油として周知であり、そして消費された添加剤および油の分解生成物を除去するべく指示された方法により、しばしばさらに処理される。
【0022】
さらに、フィッシャー−トロプシュ気液合成手順により調製されたオイルは、当該技術分野で公知であり、そして使用できる。
【0023】
(摩擦調整剤)
本発明の酒石酸イミド、酒石酸アミドまたはそれらの組み合わせは、酒石酸と、1種またはそれ以上のアミン(これらは、例えば、式RR’NHを有し、ここで、RおよびR’は、それぞれ別個に、H、1個〜150個の炭素原子の炭化水素ベースの基を表わすが、但し、RおよびR’中の炭素原子の合計は、少なくとも8個であるか、または−R’’OR’’’を有し、ここで、R’’は、2個〜6個の炭素原子の二価アルキレンラジカルであり、そしてR’’’は、5個〜150個の炭素原子のヒドロカルビルラジカルである)との反応により、調製できる。
【0024】
本発明の酒石酸イミド、酒石酸アミドまたはそれらの組み合わせに適切なアミンには、式RR’NHで表わされるものが挙げられ、ここで、RおよびR’は、H、または1個〜150個の炭素原子の長鎖ヒドロカルビルラジカルを表わすが、但し、RおよびR’中の炭素原子の合計は、少なくとも8個である。1実施形態では、RまたはR’は、8個〜26個の炭素を含有し、別の実施形態では、12個〜18個の炭素原子を含有する。
【0025】
本発明の酒石酸イミド、酒石酸アミドまたはそれらの組み合わせは、酒石酸と1種またはそれ以上の対応するアミンとを反応させることにより、調製される。本発明の酒石酸イミドまたは酒石酸アミドを調製するのに使用される酒石酸は、市販の種類(これは、Sargent Welchから得られる)であり得、それは、おそらく、しばしば、その原料(天然)または合成方法(例えば、マレイン酸から)に依存して、1種またはそれ以上の異性体形状(例えば、d−酒石酸、l−酒石酸またはメソ酒石酸)で、存在している。これらの誘導体はまた、当業者に容易に明らかとなる二酸の官能性等価物(例えば、エステル、酸塩化物、無水物など)から調製できる。
【0026】
本発明の酒石酸イミド、酒石酸アミドまたはそれらの組み合わせは、これらの酒石酸イミドまたは酒石酸アミドを調製する際に使用される特定のアミンに依存して、固形物、半固形物、または油状物であり得る。潤滑組成物および燃料組成物を含めた油性組成物中での添加剤として使用するために、これらの酒石酸イミドまたは酒石酸アミドは、このような油性組成物に溶解性および/または安定に分散可能でなければならない。それゆえ、例えば、オイルで使用する組成物は、それらが使用されるオイルに油溶性および/または安定に分散可能である。本明細書中および添付の特許請求の範囲で使用する「油溶性」との用語は、必ずしも、全ての対象組成物が全てのオイルに全ての割合で混和性または溶解性であることを意味しない。むしろ、この組成物は、その溶液が所望の特性の1つまたはそれ以上を示すことを可能にする範囲まで機能する目的のオイル(鉱油、合成油など)に溶解性であることを意味する。同様に、このような「溶液」は、厳密な物理的または化学的な意味で、真の溶液である必要はない。それらは、その代わりに、マイクロエマルジョンまたはコロイド分散液であり得、これらは、本発明の目的のために、実用的な目的で、本発明の文脈内で、それらと交換可能であるように、真の溶液に十分に近い特性を示す。
【0027】
先に述べたように、本発明の酒石酸イミド、酒石酸アミドまたはそれらの組み合わせの組成物は、潤滑剤用の添加剤として有用であり、ここで、それらは、主として、錆および腐食防止剤、摩擦調整剤、耐摩耗剤および解乳化剤として、機能する。それらは、潤滑粘性のある多様なオイル(天然油および合成油ならびにそれらの混合物を含めて)をベースにした種々の潤滑剤中で、使用できる。これらの潤滑剤には、火花点火および圧縮点火内燃機関(自動車およびトラックのエンジン、2サイクルエンジン、航空機のピストンエンジン、船舶および鉄道ディーゼルエンジンなどを含めて)用のクランク室潤滑油が挙げられる。それらはまた、ガスエンジン、定置出力エンジンおよびタービンなどで使用できる。自動変速機油、トランスアクスル潤滑剤、ギア潤滑剤、金属加工潤滑剤、油圧作動液、ならびに他の潤滑油およびグリース組成物もまた、本発明の組成物を組み入れることにより、恩恵を受け得る。
【0028】
本発明の潤滑剤には、他の摩擦調整剤が存在し得、これらには、グリセロールモノオレエート、オレイルアミド、ジエタノール脂肪アミンおよびそれらの混合物を挙げることができる。摩擦調整剤の有用なリストは、米国特許第4,792,410号に含まれている。
【0029】
グリセロールの脂肪酸エステルは、当該技術分野で周知の種々の方法により、調製できる。これらのエステルの多く(例えば、グリセロールモノオレエートおよびグリセロールモノタロエート)は、商業規模で製造されている。本発明に有用なエステルは、油溶性であり、好ましくは、C〜C22脂肪酸またはそれらのエステル(例えば、天然産物で見られるもの)から調製される。この脂肪酸は、飽和または不飽和であり得る。天然原料に由来の酸に存在している特定の化合物には、リカン酸(licanic acid)(これは、1個のケト基を含有する)が挙げられ得る。有用なC〜C22脂肪酸には、式R−COOHのもの(ここで、Rは、アルキルまたはアルケニルである)がある。
【0030】
グリセロールの脂肪酸モノエステルは、有用である。モノおよびジエステルの混合物が使用され得る。モノおよびジエステルの混合物は、少なくとも約40%のモノエステルを含有する。約40重量%〜約60重量%のモノエステルを含有するグリセロールのモノ−およびジエステルが使用できる。例えば、45重量%〜55重量%のモノエステルおよび55重量%〜45重量%のジエステルの混合物を含有する市販のグリセロールモノオレエートが使用できる。
【0031】
有用な脂肪酸には、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、ラウリン酸、リノレン酸およびエレオステアリン酸、ならびに天然産物(獣脂、ヤシ油、オリーブ油、落花生油)に由来の酸がある。
【0032】
脂肪酸アミドは、米国特許第4,280,916号で詳細に論述されている。適切なアミドには、C〜C24脂肪族モノカルボン酸アミドがあり、これらは、周知である。この脂肪酸ベース化合物とアンモニアとを反応させると、この脂肪アミドが生成する。そこから誘導された脂肪酸およびアミドは、飽和または不飽和のいずれかであり得る。重要な脂肪酸には、ラウリン酸C12、パルミチン酸C16およびステアリン酸C18が挙げられる。他の重要な不飽和脂肪酸には、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸が挙げられ、それらの全ては、C18である。1実施形態では、本発明の脂肪アミドは、C18不飽和脂肪酸から誘導されたものである。
【0033】
これらの脂肪アミンおよびジエトキシル化長鎖アミン(例えばN,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−タロアミン)は、それ自体、一般に、本発明の成分として有用である。両方の種類のアミンは、市販されている。脂肪アミンおよびエトキシル化脂肪アミンは、米国特許第4,741,848号で、さらに詳細に記載されている。
【0034】
(種々のその他の事柄)
抗酸化剤(すなわち、酸化防止剤)には、フェノール性酸化防止剤(例えば、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、およびヒンダードフェノールエステル(例えば、次式で表わされる種類):
【0035】
【化5】

特定の実施形態では、
【0036】
【化6】

が挙げられ、ここで、Rは、2個〜10個の炭素原子、1実施形態では、2個〜4個の炭素原子、別の実施形態では、4個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖アルキル基である。1実施形態では、Rは、n−ブチル基である。別の実施形態では、Rは、Ciba製のIrganox L−135(商標)で見られるように、8個の炭素を有し得る。これらの酸化防止剤の調製は、米国特許第6,559,105号で見られる。
【0037】
さらに別の酸化防止剤には、第二級芳香族アミン酸化防止剤(例えば、ジアルキル(例えば、ジノニル)ジフェニルアミン、硫化フェノール酸化防止剤、油溶性銅化合物、リン含有酸化防止剤、モノブデン化合物(例えば、ジチオカルバミン酸Mo)、有機スルフィド、ジスルフィド、およびポリスルフィド(例えば、ブタジエンおよびアクリル酸ブチルの硫化ディールス−アルダー付加物)を挙げることができる。酸化防止剤の広範なリストは、米国特許第6,251,840号で見られる。
【0038】
本発明に関連して使用されるEP/耐摩耗剤は、代表的には、ジアルキルジチオリン酸亜鉛の形態である。このような作動液と関連して利用され得る極めて多数の異なる種類の耐摩耗剤が存在しているものの、本発明者は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛型耐摩耗剤が所望の特性を得るために他の成分と関連して特によく機能することを発見した。1実施形態では、このジアルキルジチオリン酸塩中のアルキル基(これらは、そのアルコールから誘導された)の少なくとも50%は、第二級基であり、すなわち、第二級アルコールに由来する。別の実施形態では、これらのアルキル基の少なくとも50%は、イソプロピルアルコールから誘導される。
【0039】
無灰清浄剤および分散剤は、それらの構成に依存して、燃焼すると、非揮発性物質(例えば、酸化ホウ素または五酸化リン)を生じ得る。しかしながら、無灰清浄剤および分散剤は、通常、金属を含有せず、従って、燃焼しても金属含有灰分を生じない。多くの種類の無灰分散剤は、当該技術分野で公知である。このような物質は、通例、その場で他の原料に由来の金属イオンと会合し得るとしても、無灰と呼ばれる。
【0040】
(1)「カルボン酸分散剤」は、少なくとも34個の炭素原子(好ましくは、少なくとも54個の炭素原子)を含有するカルボン酸アシル化剤(酸、無水物、エステルなど)と、窒素含有化合物(例えば、アミン)、有機ヒドロキシ化合物(例えば、一価および多価アルコールを含む脂肪族化合物、またはフェノールおよびナフトールを含む芳香族化合物)、および/または塩基性無機物質とを反応させた反応生成物である。これらの反応生成物には、カルボン酸エステル分散剤のイミド、アミドおよびエステル反応生成物がある。
【0041】
これらのカルボン酸アシル化剤には、脂肪酸、イソ脂肪族酸(例えば、8−メチル−オクタデカン酸)、ダイマー酸、不飽和脂肪酸と不飽和カルボン酸試薬との付加ジカルボン酸4+2および2+2付加生成物)、トリマー酸、付加トリカルボン酸s(Empol(登録商標)1040、Hystrene(登録商標)5460およびUnidyme(登録商標)60)、ならびにヒドロカルビル置換カルボン酸アシル化剤(これらは、オレフィンおよび/またはポリアルケンに由来する)が挙げられる。1実施形態では、このカルボン酸アシル化剤は、脂肪酸である。脂肪酸は、一般に、8個から30個まで、または12個から24個までの炭素原子を含有する。カルボン酸アシル化剤は、米国特許第2,444,328号、第3,219,666号、第4,234,435号および第6,077,909号で教示されている。
【0042】
このアミンは、モノアミンまたはポリアミンであり得る。これらのモノアミンは、一般に、1個〜約24個の炭素原子または1個〜12個の炭素原子を含有する少なくとも1個のヒドロカルビル基を有する。モノアミンの例には、脂肪(C8〜30)アミン(Armeens(商標))、第一級エーテルアミン(SURFAM(登録商標)アミン)、第三級脂肪族第一級アミン(Primene(商標))、ヒドロキシアミン(第一級、第二級または第三級アルカノールアミン)、エーテルN−(ヒドロキシヒドロカルビル)アミン、およびヒドロキシヒドロカルビルアミン(Ethomeen(商標)およびPropomeen(商標))が挙げられる。ポリアミンには、アルコキシル化ジアミン(Ethoduomeen(商標))、脂肪ジアミン(Duomeen(商標))、アルキレンポリアミン(エチレンポリアミン)、ヒドロキシ含有ポリアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン(Jeffamines(商標)))、縮合ポリアミン(少なくとも1種のヒドロキシ化合物と少なくとも1種のポリアミン反応物(これは、少なくとも1個の第一級または第二級アミノ基を含有する)との縮合生成物)、および複素環ポリアミンが挙げられる。有用なアミンには、米国特許第4,234,435号(Mainhart)および米国特許第5,230,714号(Steckel)で開示されたものが挙げられる。
【0043】
この分散剤が誘導されるポリアミンとしては、主に、大部分が以下の式に従うアルキレンアミンが挙げられる:
【0044】
【化7】

ここで、tは、代表的には、10未満の整数であり、Aは、水素、または代表的には、30個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、アルキレン基は、代表的には、8個未満の炭素原子を有するアルキレン基である。アルキレンアミンとしては、主に、メチレンアミン、エチレンアミン、ヘキシレンアミン、ヘプチレンアミン、オクチレンアミン、他のポリメチレンアミンが挙げられる。これらは、特に以下によって例示される:エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、デカメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ジ(ヘプタメチレン)トリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチレンジアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(トリメチレン)トリアミン。高級同族体(例えば、2種以上の上記のアルキレンアミンを同様に縮合することによって得られるもの)が有用である。テトラエチレンペンタミンは、特に有用である。
【0045】
エチレンアミン(ポリエチレンポリアミンとも称される)は、特に有用である。これらは、Encyclopedia of Chemical Technology,KirkおよびOthmer、第5巻、pp898−905、Interscience Publishers,New York(1950)において、「Ethylene Amines」との表題でいくぶん詳細に記載されている。
【0046】
ヒドロキシアルキル置換アルキレンアミン(すなわち、窒素原子上に1つ以上のヒドロキシアルキル置換基を有するアルキレンアミン)もまた同様に有用である。このようなアミンの例としては、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、モノヒドロキシプロピル)−ピペラジン、ジ−ヒドロキシプロピル置換テトラエチレンペンタミン、N−(3−ヒドロキシプロピル)−テトラ−メチレンジアミン、および2−ヘプタデシル−1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾリンが挙げられる。
【0047】
上記のアルキレンアミンまたはヒドロキシアルキル置換アルキレンアミンのアミノラジカルまたはヒドロキシラジカルによる凝集によって得られるような、より高い相同体は、同様に有用である。縮合ポリアミンは、少なくとも1種のヒドロキシ化合物と、少なくとも1種の一級または二級アミン基を含む少なくとも1種のポリアミン反応物との縮合反応によって形成され、そして米国特許第5,230,714号および第5,296,154号(Steckel)に記載される。
【0048】
これらの「カルボン酸分散剤」の例は、英国特許第1,306,529号および以下を含めた多くの米国特許で記載されている:第3,219,666号、第3,316,177号、第3,340,281号、第3,351,552号、第3,381,022号、第3,433,744号、第3,444,170号、第3,467,668号、第3,501,405号、第3,542,680号、第3,576,743号、第3,632,511号、第4,234,435号、第6,077,909号および第6,165,235号。
【0049】
(2)スクシンイミド分散剤は、カルボン酸分散剤の1種である。それらは、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤と、有機ヒドロキシ化合物、または窒素原子に結合した少なくとも1つの水素を含むアミン、またはこのヒドロキシ化合物とアミンの混合物との反応生成物である。用語「コハク酸アシル化剤」とは、炭化水素置換コハク酸またはコハク酸生成化合物(これはまた酸自体を包含する)をいう。このような物質は、代表的に、ヒドロカルビル置換コハク酸、無水物、エステル(ハーフエステルを含む)およびハライドを含む。
【0050】
コハク酸ベースの分散剤は、代表的に以下のような構造を含む種々の化学構造を有する:
【0051】
【化8】

上記の構造において、各Rは、別個に、ヒドロカルビル基(例えば、500または700〜10,000の数平均分子量を有するポリオレフィン由来の基)である。代表的に、ヒドロカルビル基は、アルキル基であり、しばしば、500または700〜5000の分子量、あるいは1500または2000〜5000の分子量を有するポリイソブチル基である。別の表現では、R基は、40個〜500個の炭素原子、例えば、少なくとも50個(例えば、50〜300個の炭素原子)、好ましくは脂肪族炭素原子を含み得る。Rは、アルキレン基、通常は、エチレン(C)基である。このような分子は、通常、アルケニルアシル化剤とポリアミンとの反応によって誘導され、そして上に示される単純なイミド構造に加えて2つの分子間の種々の結合が可能であり、これは、種々のアミドおよび4級アンモニウム塩を含む。スクシンイミド分散剤は、米国特許第4,234,435号、第3,172,892号および第6,165,235号により十分に記載される。
【0052】
置換基が誘導されるポリアルケンは、代表的に、2個〜16個の炭素原子、通常は2個〜6個の炭素原子の重合可能なオレフィンモノマーのホモポリマーまたはインターポリマーである。これらのコハク酸アシル化剤と反応してカルボン酸分散剤組成物を形成するアミンは、上記のようなモノアミンまたはポリアミンであり得る。
【0053】
このスクシンイミド分散剤は、通常、大部分がイミド官能基の形状で窒素を含有するので、そう呼ばれるものの、それは、アミン塩、アミド、イミダゾリンだけでなく、それらの混合物の形状であり得る。このスクシンイミド分散剤を調製するためには、1種またはそれ以上のコハク酸生成化合物および1種またはそれ以上のアミンは、必要に応じて、実質的に不活性で通常液状の有機液体溶媒/希釈剤の存在下にて、高温、一般に、約80℃から、その混合物または生成物の分解点までの温度(代表的には、100℃〜300℃)で、代表的には、水の除去を伴って、加熱される。
【0054】
本発明のスクシンイミド分散剤を調製する手順のさらなる詳細および例は、例えば、米国特許第3,172,892号、第3,219,666号、第3,272,746号、第4,234,435号、第6,440,905号および第6,165,235号に含まれる。
【0055】
(3)「アミン分散剤」とは、比較的高分子量の脂肪族ハロゲン化物と、アミン(好ましくは、ポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。それらの例は、例えば、以下の米国特許に記載されている:第3,275,554号、第3,438,757号、第3,454,555号、および第3,565,804号。
【0056】
(4)「マンニッヒ分散剤」とは、アルキルフェノール(ここで、このアルキル基は、少なくとも30個の炭素原子を有する)と、アルデヒド(特に、ホルムアルデヒド)およびアミン(特に、ポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。以下の米国特許に記載された物質は、例示である:第3,036,003号、第3,236,770号、第3,414,347号、第3,448,047号、第3,461,172号、第3,539,633号、第3,586,629号、第3,591,598号、第3,634,515号、第3,725,480号、第3,726,882号、および第3,980,569号。
【0057】
(5)後処理分散剤は、カルボン酸分散剤、アミン分散剤またはマンニッヒ分散剤を、以下のような試薬と反応させることにより得られる:ジメルカプトチアジアゾール、尿素、チオ尿素、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、ホウ素化合物、リン化合物など。この種の代表的な物質は、以下の米国特許に記載されている:第3,200,107号、第3,282,955号、第3,367,943号、第3,513,093号、第3,639,242号、第3,649,659号、第3,442,808号、第3,455,832号、第3,579,450号、第3,600,372号、第3,702,757号、および第3,708,422号。
【0058】
(6)重合体分散剤とは、油溶性モノマー(例えば、メタクリル酸デシル、ビニルデシルエーテル、および高分子量オレフィン)と、極性置換基を含有するモノマー(例えば、アクリル酸アミノアルキルまたはアクリルアミドおよびポリ(オキシエチレン)置換アクリル酸エステル)とのインターポリマー。重合体分散剤の例は、以下の米国特許で開示されている:第3,329,658号、第3449,250号、第3,519,656号、第3,666,730号、第3,687,849号、および第3,702,300号。
【0059】
この組成物はまた、1種またはそれ以上の清浄剤を含有でき、これらは、通常、塩(具体的には、オーバーベース化塩)である。オーバーベース化塩またはオーバーベース化物質は、単一相の均一なニュートン系であり、これは、その金属および金属と反応される特定の酸性有機化合物の化学量論に従って存在している金属含量よりも過剰の金属含量により、特徴付けられる。これらのオーバーベース化物質は、酸性物質(代表的には、無機酸または低級カルボン酸、好ましくは、二酸化炭素)と、以下を含有する混合物とを反応させることにより、調製される:酸性有機化合物、該酸性有機物質のための少なくとも1種の不活性有機溶媒を含む反応媒体(例えば、鉱油、ナフサ、トルエン、キシレン)、化学量論的に過剰な金属塩基、および促進剤。
【0060】
本発明のオーバーベース化組成物を製造する際に有用な酸性有機化合物には、カルボン酸、スルホン酸、リン含有酸、フェノールまたはそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、これらの酸性有機化合物は、カルボン酸またはスルホン酸(これは、スルホン酸基またはチオスルホン酸基を有する)(例えば、ヒドロカルビル置換ベンゼンスルホン酸)、およびヒドロカルビル置換サリチル酸である。本発明のオーバーベース化組成物らを製造する際に有用な他の種類の化合物には、サリキサレートがある。本発明で有用なサリキサレートの記載は、国際公開第WO 04/04850で見られる。
【0061】
これらのオーバーベース化塩を製造する際に有用な金属化合物は、一般に、第1族または第2族(CAS版の元素周期表)のいずれかの金属化合物である。この金属化合物の第1族金属には、第1a族アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム)および第1b族金属(例えば、銅)が挙げられる。第1族金属は、好ましくは、ナトリウム、カリウム、リチウムおよび銅であり、好ましくは、ナトリウムまたはカリウムであり、さらに好ましくは、ナトリウムである。この金属塩基の第2族金属には、第2a族アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム)だけでなく、第2b族金属(例えば、亜鉛またはカドミウム)が挙げられる。好ましくは、第2族金属は、マグネシウム、カルシウム、バリウムまたは亜鉛であり、好ましくは、マグネシウムまたはカルシウムであり、さらに好ましくは、カルシウムである。
【0062】
本発明のオーバーベース化清浄剤の例には、スルホン酸カルシウム、カルシウムフェネート、サリチル酸カルシウム、カルシウムサリキサレートおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
このオーバーベース化物質(すなわち、清浄剤)の量は、もし存在するなら、1実施形態では、この組成物の0.05〜3重量パーセント、または0.1〜3パーセント、または0.1〜1.5重量パーセント、または0.15〜1.5重量パーセントである。
【0064】
安定な泡の形成を少なくするか防止するのに使用される消泡剤には、シリコーンまたは有機重合体が挙げられる。これらの消泡組成物および他の消泡組成物の例は、Henry
T.Kernerによる「Foam Control Agents」(Noyes Data Corporation,1976)の125〜162ページで記載されている。
【0065】
本発明の組成物は、内燃機関の操作過程において、その潤滑剤が内燃機関の十分な部分に送達されて、それにより、内燃機関を潤滑させるように、この潤滑剤を内燃機関(例えば、定置ガス出力内燃機関)に供給することにより、潤滑剤として、実用的に使用される。
【0066】
本明細書中で使用する「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」との用語は、通常の意味で使用され、これは、当業者に周知である。具体的には、それは、分子の残部に直接結合した炭素原子を有しそして炭化水素的性質または主として炭化水素的な性質を有する基を意味する。ヒドロカルビル基の例には、以下が挙げられる:炭化水素置換基、すなわち、脂肪族置換基(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環族置換基(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)、および芳香族置換された芳香族置換基、脂肪族置換された芳香族置換基および脂環族置換された芳香族置換基などだけでなく、環状置換基。ここで、この環は、分子の他の部分により、完成されている(例えば、2個の置換基は、一緒になって、環を形成する);置換された炭化水素置換基、すなわち、非炭化水素基を含有する置換基。この非炭化水素基は、本発明の文脈では、置換基の主な炭化水素的性質を変化させない(例えば、ハロ(特に、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ);ヘテロ置換基、すなわち、本発明の文脈内では、主として炭化水素的性質を有しながら、環または鎖の中に存在する炭素以外の原子を有するが、その他は炭素原子で構成されている基。ヘテロ原子には、イオウ、酸素、窒素が挙げられ、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する。一般に、このヒドロカルビル基では、各10個の炭素原子に対し、2個以下の非炭化水素置換基、好ましくは、1個以下の非炭化水素置換基が存在する。代表的には、このヒドロカルビル基には、このような非炭化水素置換基は存在しない。
【0067】
上記物質のいくつかは、最終調合物と相互作用し得、その結果、最終調合物の成分は、最初に加えたものとは異なり得ることが知られている。例えば、金属イオン(例えば、清浄剤のもの)はも、他の分子の他の酸性部位またはアニオン性部位に移動できる。そのように形成された生成物は、本発明の組成物をその目的用途で使用すると形成される生成物を含めて、簡単に記述できない場合がある。それにもかかわらず、このような全ての改良および反応生成物は、本発明の範囲内に含まれる;本発明は、上記成分を混合することにより調製された組成物を包含する。
【実施例】
【0068】
本発明は、以下の実施例により、さらに例示されるが、これらの実施例は、特に有利な実施形態を示す。これらの実施例は、本発明を例示するために提供されているものの。本発明を限定するとは解釈されない。
【0069】
これらの潤滑剤を、燃費および耐久性について、ILSAC GF−4仕様で規定されるように、Sequence VIB燃費試験で評価する。
【0070】
潤滑粘性のあるオイルにおいて、以下の調合物を調製したが、この場合、それらの添加剤成分の量は、通常の希釈油を含めて、重量パーセントである。
【0071】
【表1】

n.p.=調合物にて存在せず。
【0072】
これらの結果は、低イオウ、灰分およびリンクランク室潤滑剤においてオレイルアミン酒石酸イミドを使用する調合物が、Sequence VIBエンジン試験で立証されるように、グリセロールモノオレエート、従来の摩擦調整剤を使用する調合物と比較して、燃費を著しく向上させることを示している。
【0073】
これらの潤滑剤を、さらに、摩耗および摩擦低下について、四級低リン/イオウ(四球低PS)試験、高周波数往復運動リグ1%クメンヒドロペルオキシド(HFRR 1%CHP)試験およびCameron−Plint高温往復運動摩耗試験で評価する。
【0074】
この四球低PS手順は、潤滑剤のプレストレス(pre−stress)としてクメンヒドロペルオキシド(CHP)を加えて、ASTM D4172と同じ試験条件を利用する。この四球摩耗試験の基本的な操作は、三角パターンでロックされた3個の固定0.5直径鋼球ベアリングとして、記述できる。4個目の鋼球ベアリングは、これらの3個の固定球と接して装填され、それらと接して回転される。顕微鏡を使用して、これらの3個の固定球の各々の摩耗傷跡が測定され、そして平均されて、平均摩耗傷跡直径(ミリメートル)が決定される。
【0075】
HFRR 1%CHP試験を使用して、リンおよびイオウのレベルを低下させた潤滑剤の摩擦および摩耗性能を評価する。鋼鉄製平板と接して滑る往復運動している鋼球ベアリングを使用することにより、摩耗傷跡直径および膜厚パーセントを測定する。この試験は、高周波数往復運動リグ(これは、トライボロジー試験装置の市販部品である)と併せて、1%クメンヒドロペルオキシド(CHP)を使用して、実行する。
【0076】
Cameron−Plint高温往復運動摩耗試験を使用して、潤滑剤の摩擦および摩耗性能を評価する。鋼鉄製平板と接して滑る往復運動している鋼球ベアリングを使用することにより、摩耗傷跡直径および膜厚パーセントを得る。この試験は、Cameron−Plint往復運動摩耗リグ(これは、トライボロジー試験装置の市販部品である)を使用して、実行する。
【0077】
潤滑粘性のあるオイル中にて、以下の調合物を調製するが、この場合、添加剤成分の量は、特に明記しない限り、重量パーセントである:0.15%の流動点降下剤(これは、約35%の希釈油を含有する)、8%の粘度指数向上剤(これは、約91%の希釈油を含有する)、0.89%の希釈油、5.1%のスクシンイミド分散剤(これは、約47%の希釈油を含有する)、0.48%のジアルキルジチオリン酸亜鉛(C3(これは、0.98%を含有する)を除く)(各々は、約9%の希釈油を含有する)、1.53%のオーバーベース化スルホン酸カルシウム清浄剤(これは、約42%の希釈油を含有する)、0.1%のグリセロールモノオレエート(これは、約0%の希釈油を含有する)、酸化防止剤(これは、約5%の希釈油を含有する)、90〜100ppmの市販の消泡剤、および残量の基油。
【0078】
上記調合物に、以下の表で示すように、これらの成分を加え、そして四球低PS試験、高周波数往復運動リグ1%クメンヒドロペルオキシド試験およびCameron−Plint高温往復運動摩耗試験を実行する。結果は、以下の表で示す。
【0079】
【表2】

注記:n.r.=報告なし。
【0080】
これらの結果は、低リン、灰分およびリン潤滑剤中で本発明の酒石酸誘導化合物を使用する処方(実施例5〜10)が、その組成物に0.05重量パーセントのリンを送達した低SAPS調合物(C4)(これは、酒石酸誘導化合物を含有しない)と比較して、摩耗を低下させることを示している。それらは、さらに、従来のGF−3処方(C3)(これは、より高いリンを含む)と比較して、同程度の摩耗保護を与える。
【0081】
上で引用した各文献の内容は、本明細書中で参考として援用されている。実施例を除いて、他に明らかに指示がなければ、物質の量を特定している本記述の全ての数値量、反応条件、分子量、炭素原子数などは、「約」という用語により修飾されることが分かる。他に指示がなければ、本明細書中で言及した各化学物質または組成物は、その異性体、副生成物、誘導体、および市販等級の物質中に存在すると通常考えられているような他のこのような物質を含有し得る、市販等級の物質であると解釈されるべきである。しかしながら、各化学成分の量は、他に指示がなければ、市販等級の物質に通例存在し得る溶媒または希釈油を除いて、提示されている。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかの範囲または量と併用できる。本明細書中で示した上限および下限の量、範囲および比は、別個に組み合わされ得ることが分かる。本明細書中で使用する「本質的になる」との表現には、問題の組成物の基本的で新規な特性に著しく影響を与えない物質が含まれていてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2012−87318(P2012−87318A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−21590(P2012−21590)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【分割の表示】特願2007−535908(P2007−535908)の分割
【原出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】