説明

クランプ付きシールド導電体およびクランプ

【課題】シールド導電体を車体に固定する作業に要する人員を減らす。
【解決手段】クランプ20付きシールド導電体10は、電線11を金属製のシールドパイプ14に挿通させてなり、車体Bdに固定するためのクランプ20を備える。クランプ20は、車体Bdに固定される固定部21と、シールド導電体10を把持するとともに、把持状態のシールド導電体10の移動を許容する可動性の把持部30と、を有することを特徴とする。本発明においては、クランプ20が可動性の把持部30を有するのでシールド導電体10を車体Bdに固定する作業を一人で行うことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ付きシールド導電体およびクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車や電気自動車では、バッテリとインバーターなどの装置とを接続するシールド導電体が、車体の床下などに配索される場合が多い。このようなシールド導電体は、金属製の電線を金属製のシールドパイプに挿通させてなるものであり、たとえば、特許文献1に記載されているような、クランプを用いて車体の床板などに取り付け固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−215010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されているクランプは、車体の床板に取り付けられる金属製の車体固定部と、車体固定部の一端を湾曲させて円弧状に形成したグロメット保持部とを有しており、グロメット保持部に取り付けたグロメットによりシールド導電体が保持されるようになっている。つまり、上記特許文献1に記載のクランプでは、車体固定部の一端にシールド導電体を保持する部分(グロメット保持部)が設けられているので、車体固定部が車体に固定されると、シールド導電体を保持する部分も固定される(動きが規制される)。
【0005】
シールド導電体は、硬くたわまないという性質を有しているため、上述の特許文献1に記載のクランプのように車体固定部とともに固定されるシールド導電体保持部分を有するクランプを用いる場合、クランプを取り付けたシールド導電体を車体の床板の板面に対して略平行に配置しないと、シールド導電体を車体に固定することができない。そのうえ、シールド導電体は、上記特許文献1の図1に記載されているように、車体の前後方向に長い形状をなしていることが多い。したがって、上記特許文献1に記載のクランプを用いて車体の床板にシールド導電体を固定する作業の際には、シールド導電体を床板の板面に対して略水平に配するために二人以上の作業者が必要であった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シールド導電体を車体に固定する作業に要する人員を減らすことができるクランプ付きシールド導電体およびクランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するものとして、本発明は、電線を金属製のシールドパイプに挿通させてなり、車体に固定するためのクランプを備えるクランプ付きシールド導電体であって、前記クランプは、前記車体に固定される固定部と、前記シールド導電体を把持するとともに、把持状態の前記シールド導電体の移動を許容する可動性の把持部と、を有するところに特徴を有する。
【0008】
また、本発明は、電線を金属製のシールドパイプに挿通させてなるシールド導電体を車体に固定するためのクランプであって、前記車体に固定される固定部と、前記シールド導電体を把持するとともに、把持状態の前記シールド導電体の移動を許容する可動性の把持部と、を有するところに特徴を有する。
【0009】
本発明において、シールド導電体は、たとえば以下のような方法により車体の床板に固定される。まず、シールド導電体の一端部を本発明のクランプにより車体の床板に固定すると、クランプにより車体の床板に取り付けられた一端部と反対側の端部(他端部)は下方に傾くが、本発明において、クランプは車体に固定される固定部と、シールド導電体を把持するとともに把持状態のシールド導電体の移動を許容する可動性の把持部とを有しているので、シールド導電体の下方への移動に合わせて把持部も移動し、クランプの把持部に保持された状態でシールド導電体は下方に傾く。
【0010】
次に、シールド導電体の他端部を車体の床板に固定すべく、上方に動かすと、シールド導電体の上方への移動に合わせて把持部も移動し、車体の床板に対してシールド導電体の他端部を取り付け固定することができる。
【0011】
したがって、本発明によれば、シールド導電体のシールド導電体が傾いたとしても、クランプの把持部がシールド導電体とともに移動するので、車体への固定作業が可能であり、シールド導電体を数人がかりで車体の床板の板面に対して平行に配さなくてもよい。その結果、本発明によれば、一人の作業者によりシールド導電体を車体に固定することができるので、シールド導電体の車体への固定作業に要する人員を減らすことができる。
【0012】
本発明は以下の構成としてもよい。
前記把持部は、前記シールド導電体に外嵌される筒状部と、前記筒状部に設けられ、前記筒状部の一部を開閉可能な扉部と、を有していてもよい。
【0013】
このような構成とすると、筒状部の扉部を開いてシールド導電体を筒状部内に嵌めこんだ後に、扉部を閉めるだけでシールド導電体が把持部により把持されるので、クランプをシールド導電体に取り付ける作業を簡易なものとすることができ、作業性に優れる。
【0014】
前記固定部は、その一端部が前記把持部とヒンジを介して連なる一方、前記一端部とは反対側の端部に前記把持部と係合する係合部を有していてもよい。
【0015】
このような構成において、固定部と把持部とを非係合状態としておき、把持部にシールド導電体の一端部を把持させて、固定部を車体に固定する。このとき、ヒンジを介して固定部に連なっている把持部は移動を許容された状態となっているのでシールド導電体の他端部とともに下方に傾く。次に、下方に傾いたシールド導電体の他端部を車体に取り付けるべく上方に動かすと、把持部も上方に移動するので、他端部を車体に取り付け固定することができる。シールド導電体の両端部を車体に固定した後、クランプの把持部と固定部とを係合すると、把持部は移動が規制された状態となる。
その結果、このような構成によれば、シールド導電体に取り付けた把持部と、車体に固定した固定部とを係合させるだけで把持部の移動を規制することが可能であるので、作業性に優れる。またこのような構成では、固定部と把持部とが一体的となっているので、部品点数を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シールド導電体を車体に固定する作業に要する人員を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1のクランプ付きシールド導電体が配索された電気自動車を概念的に示す側面図
【図2】クランプの斜視図
【図3】クランプ付きシールド導電体の断面図(図2のクランプをシールド導電体に取り付けたときのX−X線における断面図)
【図4】車体に固定したクランプ付きシールド導電体の側面図
【図5】車体に固定したクランプ付きシールド導電体の把持部を下方に回動した状態を示す側面図
【図6】実施形態2のクランプの背面図
【図7】固定部と把持部とが非係合状態にあるときのクランプの斜視図
【図8】図7のY−Y線における断面図
【図9】固定部と把持部とが係合状態にあるときのクランプの断面図(図8と同様の位置における断面図)
【図10】車体に固定したクランプ付きシールド導電体の側面図
【図11】車体に固定したクランプ付きシールド導電体の把持部を下方に回動した状態を示す側面図
【図12】他の実施形態で説明するクランプの側面図
【図13】図12のクランプの断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1ないし図4を参照して説明する。 図1に示すように、ハイブリッド車Evの車体Bdの前部にはエンジンルームが設けられ、エンジンルーム内には、走行用モータMoを駆動するための動力回路を構成するインバータIvやガソリン駆動用のエンジンEg等が収容されている。車体Bdの後部(例えば、トランクルーム)には動力回路を構成するバッテリBt等が搭載されている。
【0019】
本実施形態のクランプ付きシールド導電体10は車体Bdの床下、すなわち床板Fpの下面に略平行に配索され、シールド導電体10の前後両端部からインバータIvおよびバッテリBtまでの間には、3本の電線(図示せず)を筒状のシールド部材2で包囲して一括シールドした部材(サブシールド部1という)が、それぞれ配索されている。
【0020】
サブシールド部1は、インバータIvが収容されているエンジンルーム内やバッテリBtが配置されている収容室内において、屈曲して配索されている。サブシールド部1の端部にはコネクタ(図示せず)が取り付けられており、このコネクタがインバータIvおよびバッテリBtにそれぞれ嵌合されている。なお、インバータIvとモータMoも、サブシールド部1により接続されている。
【0021】
サブシールド部1を構成する電線の導体は、金属細線を螺旋状に撚り合わせてなる銅合金製の撚り線からなり、単芯線のものに比べて高い可撓性を備えている。サブシールド部1を構成する筒状のシールド部材2は、金属細線をメッシュ状に編み込んだ編組線からなり、サブシールド部1は屈曲されやすくなっている。
【0022】
シールド導電体10は、図3に示すように、3本の電線11を、円筒状のシールドパイプ14内に挿通させてなるものである。3本の電線11を包囲しているシールドパイプ14は金属製(例えばアルミニウム合金、銅合金、あるいはステンレス鋼など)であり、図1に示すように、全体として前後に長い形状をなしている。シールドパイプ14は、大部分を床板Fpの下側に露出させた状態で配索されている。シールドパイプ14は、その前側の端部が床板Fpの下面に沿って前方に向かって上る形態をなす一方、その後側の端部が後方位置において上方に向かって曲げられ、その上端部が床板Fpに設けられた配索孔(図示せず)を貫通して車室内に至るようにされている。シールドパイプ14の後側の端部は、シールドパイプ14の表面から外側方向に張り出すフランジ部15を床板Fpにボルト18止めすることで車体Bdに固定されている。シールドパイプ14のフランジ部15から先端側は車室内に導入されている。
【0023】
シールドパイプ14の車室内側の端部および車室外側の端部にはそれぞれ、図1に示すように、車室内側キャップ16および車室外側キャップ17が被せられている。両キャップ16,17は弾性部材よりなり、シールドパイプ14の開口に対しそれぞれ気密状に密着している。各キャップ16,17には、このキャップ16,17を電線11の配索方向に貫通する貫通口(図示せず)が3個ずつ形成されている。この貫通口に電線11が1本ずつ貫通され、電線11はシールドパイプ14の両端縁から導出されている。なお、電線11の外周と貫通口の内周もそれぞれ気密状に密着している。
【0024】
このシールドパイプ14内を挿通している電線11は、金属製(例えばアルミニウム合金や銅合金など)の単芯線からなる導体12の外周を合成樹脂製の絶縁被覆13で包囲したものである。3本の電線11は、シールドパイプ14内において、俵積み状(電線11の中心を結んだときにほぼ正三角形を描く形態)をなすように配されており、電線11同士および電線11とシールドパイプ14との間には隙間が空けられている。各電線11の両端部は、シールドパイプ14の両端縁から導出されており、その両端には一対のカシメ片を備えた金属製の接続部材(図示せず)がそれぞれ固着されている。このカシメ片にサブシールド部1の電線(図示せず)の導体が締め付けられており、サブシールド部1の電線とシールド導電体10の電線11とが接続されている。
【0025】
シールドパイプ14は、図1に示すように、金属製のクランプ20により床板Fpの下側に吊り下げられた状態で固定されている。このクランプ20は、図4に示すように、床板Fpに固定される固定部21と、この固定部21の下方に配される把持部30とを備えている。
【0026】
クランプ20の固定部21は図3に示すように、断面視略C字状をなしており、上側端部から上方に突出形成された割りピン22を床板Fpに設けたクランプ固定孔Kに嵌めこむことにより床板Fpに固定されている。固定部21の下端部には把持部30の装着孔38に装着される装着突部23が設けられている。
【0027】
固定部21の装着突部23は、固定部21の下端部から側方に突出する足部24と、足部24よりも径寸法の大きい円盤状の頭部25とから構成される。装着突部23の足部24は把持部30の装着孔38に挿通可能な幅寸法に設定されており、装着突部23の足部24は把持部30の装着孔38に抜け止め可能な幅寸法に設定されている。
【0028】
把持部30はシールドパイプ14(シールド導電体10)に外嵌する円筒状の筒状部31と、筒状部31に並列して固定部21が装着される装着部36とを備える(図2および図3を参照)。筒状部31の下側壁は筒状部31を開閉可能な扉部32である。扉部32は、筒状部31の図3における右側の側壁(第1側壁33という)とヒンジ35を介して連なっている。
【0029】
扉部32には、上方に突出形成されたロック爪32Aが設けられており、このロック爪32Aは筒状部31の図3における左側の側壁34(第2側壁34という)の下部に設けた孔34A(ロック爪収容孔34Aとする)内に設けたロック突部34Bにより係止されるようになっている。
【0030】
装着部36には固定部21の装着突部23の足部24が挿通可能な装着孔38が設けられている。装着孔38は筒状部31の第2側壁34と並んで形成された壁37(装着壁部37という)の一部を切り欠くことにより形成されている。
【0031】
装着孔38は図3に示すように、装着部36の下端部から上方に伸びて形成されており、装着突部23の足部24が上下に移動可能とされる。装着孔38の幅寸法は固定部21の装着突部23の足部24が挿通可能であり、かつ、装着突部23の頭部25が抜け落ちないように設定されている。装着壁部37と筒状部31の第2側壁34との間には、装着突部23の頭部25を収容可能なスペースが設けられている。把持部30の装着孔38内で、固定部21の装着突部23は上下方向ならびに左右方向への移動が許容されている。
【0032】
次に、シールド導電体10を車体Bdの床板Fpに固定する方法について説明する。まず、クランプ20をシールド導電体10の前端部に取り付ける。クランプ20の把持部30の扉部32を開いた状態にしておき、装着壁部37に設けた装着孔38に、固定部21の装着突部23の足部24を差し込んで上方に移動させると、装着突部23の頭部25が装着壁部37と第2側壁34との間のスペースに配される。
【0033】
次に、筒状部31の内壁にシールド導電体10を添わせるように配してから、扉部32のロック爪32Aをロック爪収容孔34A内のロック突部34Bに係止させることにより扉部32を閉める。これにより、シールド導電体10が把持部30に把持された状態となり、かつ、装着突部23の頭部25が抜け止めされて固定部21が把持部30に装着され、クランプ20をシールド導電体10の一端に取り付ける作業が完了する。
【0034】
次に、クランプ20付きのシールド導電体10を車体Bdの床板Fpの前端側に設けたクランプ固定孔Kに取り付ける。具体的には、クランプ20の固定部21の上端の割りピン22を車体Bdの床板Fpの下面側からクランプ固定孔Kに差し込むと、割りピン22は縮径しながらクランプ固定孔Kに挿入される。割りピン22をその下端部が床板Fpの上面に至る位置まで挿入すると、割りピン22が弾性復帰して、割りピン22の下端部が床板Fpの上面に当接し、クランプ固定孔Kに抜け止めされる。これによりシールド導電体10の前側の端部を車体Bdの床板Fpに固定する作業が完了する。
【0035】
このとき、本実施形態で用いるシールド導電体10の前側の端部を床板Fpに固定することで、図5に示すように、シールド導電体10の後側の端部は下方に傾く。本実施形態では、シールド導電体10を把持する把持部30の装着孔38内で固定部21の装着突部23は上下方向への移動が許容されているので、シールド導電体10の下方への移動に伴い、シールド導電体10を把持する把持部30も下方へ傾く。
【0036】
次に、シールド導電体10の後側の端部を車体Bdの床板Fpに固定すべく、上方に動かすと、シールド導電体10の上方への移動に合わせて把持部30も移動する。そして、シールド導電体10の後側の端部を床板Fpにボルト18止めする。具体的には、シールド導電体10の後端部において、床板Fpに設けたパイプ挿通孔にシールドパイプ14の先端部を挿通させた後、シールドパイプ14表面から外側方向に張り出すフランジ部15を床板Fpにボルト18止めすると、図4に示すように、シールド導電体10が床板Fpに対して略並行に配され、シールド導電体10の車体Bdへの固定作業が完了する。
【0037】
次に、本実施形態の効果について説明する。上述したように、本実施形態において、クランプ20は、車体Bdに固定される固定部21と、シールド導電体10を把持するとともに把持状態のシールド導電体10の移動を許容する可動性の把持部30とを有しているので、シールド導電体10の移動に合わせて把持部30も移動するようになっており、シールド導電体10を一か所ずつ固定することが可能である。
その結果、本実施形態によれば、一人の作業者によりシールド導電体10を車体Bdに固定することができるので、シールド導電体10の車体Bdへの固定作業に要する人員を減らすことができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、把持部30は、シールド導電体10に外嵌される筒状部31と、筒状部31に設けられ、筒状部31の一部を開閉可能な扉部32と、を有しているから、筒状部31の扉部32を開いてシールド導電体10を筒状部31内に嵌めこんだ後に、扉部32を閉めるだけでシールド導電体10が把持部30により把持されるので、クランプ20をシールド導電体10に取り付ける作業を簡易なものとすることができ、作業性に優れる。
【0039】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図6ないし図11によって説明する。
本実施形態のクランプ40は、図6および図7に示すように、固定部41と把持部50とが一体的であるという点で、実施形態1のクランプ20と相違する。上記実施形態1と同様の構成については同一符号を付して重複する記載は省略する。
【0040】
本実施形態において、クランプ40の固定部41の図8に示す右端部は、ヒンジ44を介して把持部50と連なっている。固定部41は、図7および図8に示すように平板状をなしており、その上面41Aには、車体Bdに固定される割りピン42が突出形成されている。固定部41の下面41Bには、把持部50の上壁55に設けた係合孔55Aと係合可能な係合爪43(係合部43の一例)が下方に向けて突出形成されている。この固定部41の係合爪43はヒンジ44とは反対側の端部(図8に示す左端部)に形成されている。本実施形態において、固定部41と把持部50とが非係合状態のときには、把持部50が上下方向に移動自在であり(図8および図11を参照)、固定部41と把持部50とが係合状態のときには把持部50の移動が規制される(図9および図10を参照)。
【0041】
把持部50は全体として略角筒状をなしている。把持部50の内壁51は、シールド導電体10に外嵌可能に円筒状をなしている(筒状部51の一例)。把持部50の上壁55には、固定部41の係合爪43に対応して係合孔55Aが貫通して形成されており、固定部41の係合爪43が係合孔55Aの孔縁55Bに係止されるようになっている。
【0042】
把持部50の下壁52は開閉可能な扉部52である。扉部52は、把持部50の図7における左側の側壁53(第3側壁53)とヒンジ56を介して連なっている。扉部52には、実施形態1と同様に、上方に突出形成されたロック爪52Aが設けられており、このロック爪52Aは把持部50の図7における右側の側壁54(第4側壁54)の下部に設けたロック爪収容孔54A内に設けたロック突部(図示せず)により係止されるようになっている。
【0043】
次に、本実施形態のクランプ40付きシールド導電体10を車体Bdの床板Fpに固定する方法について説明する。
まず、クランプ40をシールド導電体10の前端部に取り付ける。クランプ40の把持部50と固定部41とを非係合状態とするとともに把持部50の扉部52を開いた状態にしておき、把持部50の内壁にシールド導電体10を添わせるように配してから、扉部52のロック爪52Aをロック爪収容孔54A内のロック突部に係止させることにより扉部52を閉める。これにより、シールド導電体10が把持部50に把持された状態となり、クランプ40をシールド導電体10の一端に取り付ける作業が完了する。
【0044】
次に、クランプ40付きのシールド導電体10を車体Bdの床板Fpの前端側に設けたクランプ固定孔Kに取り付ける。具体的には、クランプ40の固定部41の上端の割りピン42を車体Bdの床板Fpの下面側からクランプ固定孔Kに差し込むと、割りピン42は縮径しながらクランプ固定孔Kに挿入される。割りピン42をその下端部が床板Fpの上面に至る位置まで挿入すると、割りピン42が弾性復帰して、割りピン42の下端部が床板Fpの上面に当接し、クランプ固定孔Kに抜け止めされる。これにより図11に示すように、シールド導電体10の前側の端部を車体Bdの床板Fpに固定する作業が完了する。
【0045】
このとき、本実施形態で用いるシールド導電体10の前側の端部をクランプ40で固定することで、図11に示すように、シールド導電体10の後側の端部は下方に傾く。また、把持部50と固定部41とが非係合状態にあるので、シールド導電体10を把持する把持部50は上下方向への移動が許容されており、シールド導電体10の下方への移動に伴い、シールド導電体10を把持する把持部50も下方へ傾く。
【0046】
次に、シールド導電体10の後側の端部を車体Bdの床板Fpに固定すべく、上方に動かすと、シールド導電体10の上方への移動に合わせて把持部50も移動する。そして、シールド導電体10の後端部において、床板Fpに設けたパイプ挿通孔にシールドパイプ14の先端部を挿通させた後、シールドパイプ14表面から外側方向に張り出すフランジ部15を床板Fpにボルト18止めする。
次に、固定部41の係合爪43を把持部50の係合孔55Aに挿入し、係合爪43が係合孔55Aの孔縁55Bに係止されると、固定部41と把持部50とが係合状態となり、把持部50の移動が規制され、図10に示すように、シールド導電体10が床板Fpに対して略並行に配され、シールド導電体10の車体Bdへの固定作業が完了する。
【0047】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においても、実施形態1と同様に、クランプ40は、車体Bdに固定される固定部41と、シールド導電体10を把持するとともに把持状態のシールド導電体10の移動を許容する可動性の把持部50とを有しているので、シールド導電体10の下方への移動に合わせて把持部50も移動するようになっており、シールド導電体10を一か所ずつ固定することが可能である。
その結果、本実施形態によれば、一人の作業者によりシールド導電体10を車体Bdに固定することができるので、シールド導電体10の車体Bdへの固定作業に要する人員を減らすことができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、把持部50は、シールド導電体10に外嵌される筒状の内壁51(筒状部51)と、把持部50に設けられ、把持部50の一部を開閉可能な扉部52と、を有しているから、扉部52を開いてシールド導電体10を内壁51内に嵌めこんだ後に、扉部52を閉めるだけでシールド導電体10が把持部50により把持されるので、クランプ40をシールド導電体10に取り付ける作業を簡易なものとすることができ、作業性に優れる。
【0049】
さらに本実施形態によれば、固定部41は、その一端部が把持部50とヒンジ44を介して連なる一方、一端部とは反対側の端部に把持部50の係合孔55Aと係合する係合爪43を有しているから、シールド導電体11に取り付けた把持部50と、車体Bdに固定した固定部41とを係合させるだけで把持部50の移動を規制することが可能であり、作業性に優れる。また、固定部41と把持部50とが一体的となっているので、部品点数を少なくすることができる。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1では、固定部21に設けた装着突部23の頭部25が円盤状のものを示したが、これに限定されない。たとえば、図12に示すように、球面状をなす頭部25を備える装着突部23を有する固定部21であってもよいし、装着突部21が球関節状であってもよい。図12に示すクランプ60は、装着突部23の頭部25の形状と装着突部23の内部が図13に示すように空洞Sとなっている点で実施形態1で説明したクランプ20と相違しているが、その他の構成は概ね実施形態1で説明したクランプ20と同様である。図12および図13において実施形態1と同様の構成については同じ符号を付した。
【0051】
(2)上記実施形態1では固定部21に装着突部23を設け、把持部30に装着孔38を設けたものを示したが、把持部に装着突部を設け、固定部に装着孔を設けてもよい。
【0052】
(3)上記実施形態では扉部を備える筒状部を有する把持部を示したが、シールド導電体10を把持可能であれば、扉部を有していない筒状部を備えるものであってもよい。
(4)上記実施形態では、クランプを1つ備えるシールドパイプを示したが、クランプの数は2以上であってもよい。また、本発明のクランプとともに他のクランプを併用してもよいが、車体の前方の端部に固定するためのクランプとしては、本発明のクランプを用いるのが好ましい。
(5)上記実施形態ではハイブリッド車にクランプ付きシールド導電体を用いた例を示したが、電気自動車に用いてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…シールド導電体
11…電線
14…シールドパイプ
20,40…クランプ
21,41…固定部
30,50…把持部
31…筒状部
32,52…扉部
32A,52A…ロック爪
34A,54A…ロック爪収容孔
34B…ロック突部
43…係合爪(係合部)
44…(固定部と把持部とを連結する)ヒンジ
51…把持部の内壁(筒状部)
55…把持部の上壁
55A…係合孔
55B…(係合孔の)孔縁
Bd…車体
Fp…床板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を金属製のシールドパイプに挿通させてなり、車体に固定するためのクランプを備えるクランプ付きシールド導電体であって、
前記クランプは、前記車体に固定される固定部と、前記シールド導電体を把持するとともに、把持状態の前記シールド導電体の移動を許容する可動性の把持部と、を有することを特徴とするクランプ付きシールド導電体。
【請求項2】
前記把持部は、前記シールド導電体に外嵌される筒状部と、前記筒状部に設けられ、前記筒状部の一部を開閉可能な扉部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のクランプ付きシールド導電体。
【請求項3】
前記固定部は、その一端部が前記把持部とヒンジを介して連なる一方、前記一端部とは反対側の端部に前記把持部と係合する係合部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクランプ付きシールド導電体。
【請求項4】
電線を金属製のシールドパイプに挿通させてなるシールド導電体を車体に固定するためのクランプであって、
前記車体に固定される固定部と、前記シールド導電体を把持するとともに、把持状態の前記シールド導電体の移動を許容する可動性の把持部と、を有することを特徴とするクランプ。
【請求項5】
前記把持部は、前記シールド導電体に外嵌される筒状部と、前記筒状部に設けられ、前記筒状部の一部を開閉可能な扉部と、を有することを特徴とする請求項4に記載のクランプ。
【請求項6】
前記固定部は、その一端部が前記把持部とヒンジを介して連なる一方、前記一端部とは反対側の端部に前記把持部と係合する係合部を有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−178941(P2012−178941A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41359(P2011−41359)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】