説明

クランプ装置

【課題】クランプを締め付ける際のクランプ荷重を低減し、作業性を向上させることができるクランプ装置を提供する。
【解決手段】クランプ装置10は、第1ケース11の端部に第2ケース12が装着され、その状態でクランプ13により第2ケース12を第1ケース11に固定するためのものである。第1ケース11には支軸14が設けられ、該支軸14にクランプ13基端部の円弧状係合部13bが係合されてクランプ13が回動可能に支持されている。クランプ13先端部の係止凹部13cは第2ケース12の受け部16に係止されるように構成されている。クランプ13基端部にはクランプ側リブ15が設けられ、第2ケース12には該第2ケース12を第1ケース11に装着する際にクランプ側リブ15を押圧してクランプ13を回動させる第2ケース側リブ18が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンの吸気系統において、エンジンの燃焼室に吸引される空気を清浄化するためのエアフィルタが収容されたハウジングにおいて、そのハウジングを構成する第1ケースと第2ケースとを固定するためのクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エアフィルタが収容されるハウジングの第1ケースに第2ケースを固定するための構成を以下に示す。すなわち、図5(b)に示すように、第1ケース21に設けられた支軸22にはクランプ23の基端部23aが回動可能に支持され、第2ケース24が第1ケース21に装着された後、クランプ23が支軸22を中心にして手動で回動される。そして、図5(a)に示すように、クランプ23の先端部23bが第2ケース24の受け部25に係止され、第2ケース24が第1ケース21に固定されるようになっている。
【0003】
この種のクランプ装置としては、例えば特許文献1に記載されたクランプ用フックが知られている。すなわち、該クランプ用フックは、本体部と、該本体部の両端に同じ方向に突出するように曲げ形成された係合部と、両係合部の少なくとも一方に連接された摘み片とを備え、前記本体部には補強リブが形成されている。そして、一方の係合部をケース本体の係合凹所に嵌め込んだ状態で、摘み片をカバー体に向かって押し付け、他方の係合部がカバー体の環状突起を乗り越えることにより、カバー体がケース本体に固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−70815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図5(a),(b)に示されているクランプ装置又は特許文献1に記載されているクランプ用フックでは、クランプを締め付ける場合、作業者の力で直接クランプを押圧し、さらにクランプを引き伸ばしながら第2ケースの被係合部に係合させる必要がある。クランプを締め付ける場合には、クランプの端部が第2ケースの被係合部を乗り越えるときのクランプ荷重が大きいことから、クランプ時における作業性が悪く、作業者に与える負荷が過大になるという欠点があった。
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、クランプを締め付ける際のクランプ荷重を低減し、作業性を向上させることができるクランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明のクランプ装置では、開閉可能な第1ケースと第2ケースとを閉鎖状態に固定するためのクランプ装置であって、前記第1ケースには支軸を介してクランプの基端部が回動可能に支持されるとともに、クランプの先端部が第2ケースの受け部に係止されるように構成され、前記クランプの基端部には被当接部を設け、第2ケースには該第2ケースを第1ケースに装着する際に前記被当接部に当接してクランプを回動させる当接部を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明のクランプ装置は、請求項1に係る発明において、前記被当接部は上に凸となる断面円弧状に形成され、その外周面に当接部が上方から当接するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明のクランプ装置は、請求項2に係る発明において、前記被当接部は支軸に係合される円弧状係合部からクランプ本体とは反対方向へ円弧状に延びるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明のクランプ装置は、請求項2又は請求項3に係る発明において、前記当接部はリブ状をなし、第2ケースの開閉移動方向に向かって突出形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明のクランプ装置は、請求項1から請求項4のいずれか1項に係る発明において、前記第2ケースの外周部には、第2ケースの受け部に対するクランプ先端部の係止を案内するガイド部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明のクランプ装置では、第2ケースを第1ケースに装着してクランプで固定する場合には、まず第2ケースを第1ケースに被せる。このとき、当接部がクランプ基端部の被当接部に当接してクランプを回動させる。そして、クランプの先端部が第2ケースの受け部に達したとき、クランプの先端部を手で軽く押圧することにより、クランプの先端部が受け部を乗り越えて該受け部に簡単に係合させることができる。このように、当接部が被当接部に当接してクランプをクランプ方向に回動させることができるため、手動操作に要する力が軽減される。
【0013】
従って、本発明のクランプ装置によれば、クランプを締め付ける際のクランプ荷重を低減させることができ、クランプ時の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態におけるクランプ装置を示し、クランプ締め付け後の状態のクランプ装置を示す断面図。
【図2】(a)はクランプ締め付け前の状態のクランプ装置を示す断面図、(b)はクランプの先端部が第2ケースのガイドリブに達した状態のクランプ装置を示す断面図。
【図3】(a)はクランプを示す側面図、(b)はクランプを示す正面図。
【図4】(a)は第2ケースを示す側面図、(b)は第2ケースを示す正面図。
【図5】従来のクランプ装置を示す図であって、(a)はクランプを締め付けた状態を示す断面図、(b)はクランプを締め付ける前の状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜図4に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、エアクリーナのハウジングにおける第1ケース11の開口部には第2ケース12が開閉可能に装着され、第1ケース11と第2ケース12との間にはエアフィルタ20が保持されている。そのエアフィルタ20の保持状態でクランプ装置10を構成するクランプ13により第2ケース12と第1ケース11とが固定されている。第1ケース11の外周部には水平方向に延びる支軸14が設けられている。前記クランプ13は短冊状の金属板によりそのクランプ本体13aが外方へ凸となる断面円弧状に形成されるとともに、基端部における一対の円弧状係合部13bが前記支軸14の外周に係合されてクランプ13が回動可能に支持されている。
【0016】
図1及び図3(a),(b)に示すように、クランプ13の基端部が円弧状に曲げ形成されて前記一対の円弧状係合部13bが形成されるとともに、中間部分が円弧状に切り出されて被当接部としてのクランプ側リブ15が形成されている。このクランプ側リブ15はクランプ本体13aとはほぼ180度反対方向へ延び、上に凸となる断面円弧状に形成されている。
【0017】
クランプ13の先端部における係止凹部13cは、第2ケース12の外周部に立設された受け部16に係止されるように構成されている。このクランプ13先端部には外方へ屈曲する屈曲部13dが形成されるとともに、その最先端部が斜め外方に延びる操作部13eとなっている。なお、クランプ13の屈曲部13dには貫通孔17が設けられている。
【0018】
図4(a),(b)に示すように、第2ケース12の外周下部には当接部としての第2ケース側リブ18が垂下されている。この第2ケース側リブ18は、前記クランプ側リブ15に係合するように長さが設定されている。この第2ケース側リブ18は、第2ケース12を第1ケース11に装着する方向である下向きに延びるように突出形成されている。
【0019】
そして、図1に示すように、第2ケース12を第1ケース11に装着する際に第2ケース側リブ18の下端面がクランプ側リブ15の外周面に上方から当接し、クランプ13が支軸14を中心にして図1の反時計方向に回動するように構成されている。この場合、クランプ13の回動に伴って第2ケース側リブ18の下端面がクランプ側リブ15の外周面上を摺動するようになっている。
【0020】
前記第2ケース12の受け部16より外方側には、第2ケース12の受け部16に対するクランプ13の係止凹部13cの係止を案内するガイド部としてのガイドリブ19が設けられている。このガイドリブ19の上端面は、クランプ13の先端部を案内しやすいように傾斜状に形成されたガイド面19aとなっている。クランプ装置10は、前述したクランプ本体13a、クランプ13基端部の円弧状係合部13b、クランプ13先端部の係止凹部13c、第1ケース11の支軸14及び第2ケース12の受け部16等により構成されている。
【0021】
次に、上記のように構成されたクランプ装置10の作用について説明する。
図2(a)に示すように、エアフィルタを装着した状態で第2ケース12を第1ケース11に組付ける場合には、第2ケース12を第1ケース11に向けて下ろすと、第2ケース12下端部の第2ケース側リブ18がクランプ13のクランプ側リブ15に当たってクランプ側リブ15の先端側を押下げる。このとき、第2ケース側リブ18は第2ケース12の開閉移動方向に向かって突出形成されていることから、第2ケース12の押圧力が直接クランプ側リブ15に作用する。このため、クランプ13基端部の円弧状係合部13bは支軸14を中心にして反時計方向へ回動する。
【0022】
従って、図2(b)に示すように、クランプ13全体が反時計方向に回動し、その先端部が第2ケース12のガイドリブ19のガイド面19a上を摺接する。このとき、ガイド面19aは受け部16の上端部に連なるように傾斜状に形成されていることから、クランプ13の先端部は第2ケース12の受け部16へと案内される。その後、クランプ13の操作部13eを指で内方へ軽く押すことにより、図1に示すように、クランプ13先端部の係止凹部13cが第2ケース12の受け部16に係止され、第1ケース11に第2ケース12が締め付け固定される。
【0023】
以上のように構成された実施形態のクランプ装置10により発揮される効果について以下にまとめて説明する。
(1) 本実施形態のクランプ装置10では、クランプ13の基端部にクランプ側リブ15が設けられるとともに、第2ケース12にはクランプ側リブ15を当接してクランプ13を回動させる第2ケース側リブ18が設けられている。このため、第2ケース12を第1ケース11に装着してクランプ13で固定する場合には、第2ケース12を第1ケース11に被せると、第2ケース側リブ18とクランプ側リブ15との当接を介してクランプ13が回動される。
【0024】
従って、第2ケース12を第1ケース11に装着するときの力を利用し、クランプ13の係止凹部13cを第2ケース12の受け部16に簡単に係合させることができる。このように、第2ケース12を装着する動作を利用してクランプ13を回動させることができるため、手動操作に要する力は大幅に軽減される。
【0025】
よって、本実施形態のクランプ装置10によれば、クランプ13を締め付ける際のクランプ荷重を著しく低減させることができ、クランプ時の作業性を格段に向上させることができる。言い換えれば、クランプ荷重を増大させて第1ケース11に対する第2ケース12のシール性能を高めたい場合にも、クランプ時の作業性を損なうことなく、実施することができる。
【0026】
(2) 前記クランプ側リブ15は上に凸となる断面円弧状に形成され、その外周面に第2ケース側リブ18が上方から当接するように構成されている。このため、第2ケース側リブ18の下端面がクランプ側リブ15の外周面上を摺動しながら第2ケース側リブ18の押圧力をクランプ側リブ15に有効に伝達してクランプ13を円滑に回動させることができる。
【0027】
(3) 前記クランプ側リブ15は、クランプ本体13aとは反対方向へ円弧状に延びるように形成されている。従って、円弧状係合部13bの支軸14回りの回動に支障を来たすことなく、第2ケース側リブ18の下端面及びクランプ側リブ15の外周面の摺動部と支軸14との距離を確保することができ、クランプ13の十分な回動力を得ることができる。
【0028】
(4) 前記第2ケース側リブ18は第2ケース12の装着方向に延びるように突出形成されているため、第2ケース12の移動力をそのままクランプ側リブ15に作用させることができ、クランプ13を効果的に回動させることができる。
【0029】
(5) 前記第2ケース12の外周部には、第2ケース12の受け部16に対するクランプ13の係止凹部13cの係止を案内するガイドリブ19が設けられていることから、クランプ13の先端部を第2ケース12の受け部16に容易に導くことができる。
【0030】
(6) クランプ装置10は第2ケース12に第2ケース側リブ18を設け、クランプ13にクランプ側リブ15を設けるだけでよいことから、部品点数を増やすことなくクランプ機能を発揮させることができる。
【0031】
なお、前記実施形態を次のように変更して実施することも可能である。
・ 本発明のクランプ装置10を、例えば機械部品を収容する第1ケース11とそれを覆う第2ケース12とを固定するための装置等として使用することもできる。
【0032】
・ 前記クランプ側リブ15及び第2ケース側リブ18をそれぞれ2つ以上設け、クランプ側リブ15と第2ケース側リブ18を各々当接させるように構成することも可能である。
【0033】
・ クランプ側リブ15基端部の円弧状係合部13bを、支軸14の外周に嵌合されるように円環状に形成することもできる。
【符号の説明】
【0034】
10…クランプ装置、11…第1ケース、12…第2ケース、13…クランプ、13a…クランプ本体、13b…円弧状係合部、14…支軸、15…被当接部としてのクランプ側リブ、16…受け部、18…当接部としての第2ケース側リブ、19…ガイド部としてのガイドリブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な第1ケースと第2ケースとを閉鎖状態に固定するためのクランプ装置であって、
前記第1ケースには支軸を介してクランプの基端部が回動可能に支持されるとともに、クランプの先端部が第2ケースの受け部に係止されるように構成され、前記クランプの基端部には被当接部を設け、第2ケースには該第2ケースを第1ケースに装着する際に前記被当接部に当接してクランプを回動させる当接部を設けたことを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
前記被当接部は上に凸となる断面円弧状に形成され、その外周面に当接部が上方から当接するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記被当接部は支軸に係合される円弧状係合部からクランプ本体とは反対方向へ円弧状に延びるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記当接部はリブ状をなし、第2ケースの開閉移動方向に向かって突出形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のクランプ装置。
【請求項5】
前記第2ケースの外周部には、第2ケースの受け部に対するクランプ先端部の係止を案内するガイド部を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のクランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−247354(P2011−247354A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121397(P2010−121397)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】