説明

クランプ装置

【課題】緩衝器を固定するクランプ装置を提供する。
【解決手段】ベース部(11)と、ベース部(11)から突設された一対の腕部(13、14)の間に被固定部材(40)のアイ型ブラケット(41)が嵌装されるクランプ部(12)と、を備え、一対の腕部(13、14)は、それぞれ、他方の前記で部側に突設する爪部(13a、14a)が形成され、ベース部(11)には、アイ型ブラケットに向かって移動自在のロッド(20)が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被固定部材を固定するクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、一般的に貫通孔を有するアイ型ブラケットを備えており、このアイ型ブラケットにピンやボルト等を貫通させることによって緩衝器を固定して試験を行う試験装置が知られている。試験装置は、緩衝器に伸び及び縮み方向に振動を与えて、振動を与えた際の緩衝器に作用する荷重を検出する(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−28750号公報
【特許文献2】特開2005−106503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
緩衝器のアイ型ブラケットには振動等を緩和するためにゴム等のブッシュが内装されることが一般的である。
【0005】
前述の従来技術に記載されているように、ブッシュを有するアイ型ブラケットをピンやボルト等によって固定すると、緩衝器に与える振動がブッシュの撓みによって緩和され、緩衝器の性能に対する正確な試験結果が得られないという問題があった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、ゴムブッシュを介することなく被固定部材を固定できるクランプ装置を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ベース部と、ベース部から突設された一対の腕部の間に被固定部材のアイ型ブラケットが嵌装されるクランプ部と、を備え、一対の腕部は、それぞれ、他方の腕部側に突設する爪部が形成され、ベース部には、アイ型ブラケットに向かって移動自在のロッドが設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば緩衝器からなる被固定部材のアイ型ブラケットを一対の爪部とロッドとの間に嵌装して、ロッドをアイ型ブラケットに向かって移動させることで、当該アイ型ブラケットを把持することができる。これにより、アイ型ブラケットに内装されるブッシュを介することなく被固定部材を固定することができる。この結果、例えば被固定部材に振動を与えた場合にも、ブッシュの撓みが被固定部材に作用することを排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態のクランプ装置の説明図である。
【図2】本発明の実施形態のクランプ装置に緩衝器を装着した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1及び図2は、本発明の実施形態の試験装置のクランプ装置10の説明図である。図1は、クランプ装置10の四面図であり、図2は、クランプ装置10に緩衝器40が装着された状態の三面図である。
【0012】
なお、図1(A)はクランプ装置10の正面図、図1(B)はクランプ装置10の下側面図、図1(C)はクランプ装置10の左側面図、図1(D)はクランプ装置10の右側面図を、それぞれ示す。また、図2(A)はクランプ装置10の正面図、図2(B)はクランプ装置10の下側面図、図2(C)はクランプ装置10の左側面図を、それぞれ示す。
【0013】
クランプ装置10は、試験装置に備えられ、試験装置によって試験を行う被固定部材である緩衝器40を固定する。試験装置は、緩衝器40を伸縮可能に保持し、緩衝器40に対して振動を与えると共に緩衝器40に負荷を与え、緩衝器40に作用する荷重を検出することによって、緩衝器の試験を行う。
【0014】
緩衝器40は、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されたピストンと、ピストンに連結されてシリンダ内に移動自在に挿入されたロッドとを備える。シリンダ内には、液体又は気体が充填されている。
【0015】
図2において点線で示すように、緩衝器40において、シリンダ及びロッドの端部にはアイ型ブラケット41が設けられている。
【0016】
アイ型ブラケット41は、外周が曲面の円筒形状を有し、周の一部がシリンダ又はロッドと結合している。アイ型ブラケット41の円筒形状の内周側にはゴムブッシュ42及びカラー43が内装されている。
【0017】
図2(B)に示すように、アイ型ブラケット41は、円筒形状の軸方向と垂直な面の平面部44a及び44bを有する。これら平面部44a及び44bは互いに平行であり、かつ、緩衝器40の伸縮方向と平行に形成される。
【0018】
カラー43は、アイ型ブラケット41にゴムブッシュ42を介して貫通すると共に、平面部44a及び44bよりも円筒形状の軸方向に若干突設して設けられている。
【0019】
アイ型ブラケット41は、ゴムブッシュ42及びカラー43にピンやボルト等が挿入されることで、車両のフレーム等に固定可能に構成されている。
【0020】
試験装置は、緩衝器40のアイ型ブラケット41をクランプ装置10によって固定し、緩衝器40に振動、揺動を与える。試験装置は、このときの緩衝器40に作用する荷重を検出することによって、緩衝器40の性能を試験する。
【0021】
次に、試験装置のクランプ装置10の具体的な構造を説明する。
【0022】
前述のように、緩衝器40のアイ型ブラケット41は、ゴムブッシュ42及びカラー43が貫通されていることが一般的である。従来の試験装置は、このアイ型ブラケット41のゴムブッシュ42及びカラー43にピンやボルト等を貫通させ、このピンやボルトを試験装置側に締結することによって緩衝器40を固定していた。このような固定方法では、緩衝器40に対して加える振動や揺動にゴムブッシュ42の撓みが加わるため、正確な試験結果が得られないという問題があった。
【0023】
そこで、本発明の実施形態では,次に説明するように、アイ型ブラケット41のゴムブッシュ42を介することなく緩衝器40を固定するように構成した。
【0024】
図1に示すように、クランプ装置10は、ベース部11と、クランプ部12とから構成される。
【0025】
ベース部11は、内部に貫通孔11cを備える略円筒形状を有し、試験装置の固定部材50(図2参照)に固定されるフランジ部11aと、クランプ部12に結合されるフランジ部11bとを備えている。
【0026】
ベース部11の貫通孔11cは、図2に示すようにロッド20が貫装される。ロッド20は、後述するように、ピストン51の動作によって伸縮自在に構成されている。ロッド20の頂部20aは、アイ型ブラケット41の端部に沿う形状となっており、ロッド20が伸張したときに、アイ型ブラケット41をクランプ装置10に固定する。
【0027】
クランプ部12は、ベース部11のフランジ部11bから突設する一対の腕部13、14を備える。腕部13、14は、厚みのある平板によって形成され、ベース部11の軸方向と平行に延設される。
【0028】
腕部13、14は、ベース部11のフランジ部11bとでC字形状を形成する。C字形状の開口部分には、緩衝器40のアイ型ブラケット41が嵌装される。腕部13と腕部14との間隔は、アイ型ブラケット41の直径よりも大きく形成されており、この開にアイ型ブラケット41が嵌装される。
【0029】
クランプ部12の一対の腕部13、14の先端部分には、それぞれ爪部13a、14aが形成される。爪部13aは、一方の腕部13から他方の腕部14側に突設して形成されている。爪部14aは、他方の腕部14から一方の腕部13側に突設して形成されている。これら腕部13、14及び爪部13a、14aによって、C字形状が形成される。
【0030】
爪部13aと爪部14aとの間は、アイ型ブラケット41の直径よりも小さく形成されている。これにより、爪部13a、14aがアイ型ブラケット41の外周に当接し、後に説明するロッド20と共に爪部13a、14aがアイ型ブラケット41を把持する。
【0031】
クランプ部12の腕部13、14の厚み方向の一方の面である底面側には、腕部13、14と平行に延設される平板状のガイド部15を備える。ガイド部15は、腕部13、14と密接して形成されており、腕部13、14の厚み方向と垂直な面である平面部15aを有する。
【0032】
アイ型ブラケット41は、クランプ部12の正面側から腕部13、14の厚み方向にクランプ部12へと嵌装される。ガイド部15は、アイ型ブラケット41をクランプ部12の底面側から支持する。
【0033】
このとき、ガイド部15の平面部15aがアイ型ブラケット41の平面部44bと当接することにより、アイ型ブラケット41の円筒形状の軸方向の位置が規定される。
【0034】
好ましくは、アイ型ブラケット41の円筒形状の軸方向の略中央と、一対の腕部13、14の厚さ方向中央とが合致するように、クランプ部12とガイド部15との位置及び形状を決定する。
【0035】
ガイド部15は、その端側が半円状に切り欠かれた切り欠き部15bが形成されている。切り欠き部15bは、アイ型ブラケット41をクランプ部12に嵌装するときに、アイ型ブラケット41のカラー43の突設部分が当該切り欠き部15bに位置することにより、カラー43をガイド部15から逃がすためのものである。
【0036】
ベース部11のフランジ部11aは、図2に示すように、試験装置に備えられる固定部材50にボルト等を介して固定される。固定部材50は内部にシリンダ52を有する。シリンダ52にはピストン51が摺動自在に収装され、エア又は作動油等の作動流体を導くためのインレットポート53が備えられている。ピストン51は、ベース部11の貫通孔11cに貫装されるロッド20に連結されている。
【0037】
緩衝器40をクランプ装置10に固定するときは次のような動作が行われる。
【0038】
まず、オペレータは、緩衝器40を試験装置に装着する。試験装置には二箇所のクランプ装置10が設けられており、オペレータは、二箇所のクランプ装置10それぞれに、クランプ部12の正面側から、緩衝器40のシリンダ及びロッドの端部に設けられるアイ型ブラケット41を嵌装する。
【0039】
次に、オペレータは、試験装置に対して電気信号による指令又はレバーやロッド等による機械的な動作によって緩衝器40を固定するように指示する。試験装置は、これに応動してインレットポート53に作動流体を供給する。
【0040】
インレットポート53から作動流体がシリンダ52に供給されたときに、ピストン51がクランプ部12側に向かって摺動する。これにより、ロッド20は、その頂部20aがベース部11の貫通孔11cから伸張して、クランプ部12に嵌装されているアイ型ブラケット41の端部に当接する。図2(A)において、頂部20aが図中A位置からB位置へと移動する。
【0041】
このとき、ロッド20の頂部20aがアイ型ブラケット41の端部を押圧することによって、アイ型ブラケット41は、クランプ部12の爪部13a、14aに押し当てられ、爪部13a、14a及びロッド20によってアイ型ブラケット41が把持される。
【0042】
この結果、アイ型ブラケット41がクランプ装置10に固定されて、試験装置に緩衝器40が固定される。
【0043】
一方、緩衝器40をクランプ装置10から取り外すときは、オペレータは、試験装置に対して電気信号による指令又はレバーやロッド等による機械的な動作によって緩衝器40を取り外すように指示する。試験装置は、これに応動してインレットポート53から作動流体を排出する。
【0044】
シリンダ52から作動流体がインレットポート53を介して排出されたときに、ピストン51がクランプ部12の逆側に向かって摺動する。これにより、ロッド20の頂部20aがクランプ部12に嵌装されているアイ型ブラケット41から離間する。図2(A)において、頂部20aが図中B位置からA位置へと移動する。
【0045】
この結果、アイ型ブラケット41がクランプ装置10による把持から開放され、試験装置から緩衝器40を取り外すことができる。
【0046】
このように、インレットポート53を介してシリンダ52に作動流体が供給又は排出されてピストン51が摺動することによって、作動流体によるアクチュエータが構成される。
【0047】
以上の説明したように、本発明の実施形態のクランプ装置10は、ベース部11と、ベース部11から突設された一対の腕部13、14との間に被固定部材である緩衝器40のアイ型ブラケット41が嵌装されるクランプ部12と、を備える。一対の腕部13、14は、それぞれ、他方の腕部14、13側に突設する爪部13a、14aが形成されており、ベース部11は、伸縮自在のロッド20が内装されている。
【0048】
このような構成によって、緩衝器40のアイ型ブラケット41を、一対の爪部13a、14aとロッド20とによって把持するので、アイ型ブラケット41に内装されるゴムブッシュ42を介することなく、アイ型ブラケット41をクランプ装置10に固定することができる。
【0049】
特に、緩衝器40に振動等を与える試験装置にクランプ装置10を備えることによって、アイ型ブラケット41に内装されるゴムブッシュ42の撓みにより振動が緩和されること排除することができ、緩衝器40に対する正確な試験結果を得ることができる。
【0050】
また、クランプ部12の底面側に、一対の腕部13、14の厚み方向と垂直な面の平面部15aを有し、平面部15aによってアイ型ブラケット41の位置を規定するガイド部15を備えるので、アイ型ブラケット41を設置する際の位置決めが容易となり、作業効率が上昇する。
【0051】
また、固定部材50の内部にシリンダ52及びピストン51を備え、ロッド20がピストン51に固定され、充填される作動流体により摺動するピストン51によってロッド20が移動可能に構成されるので、爪部13a、14a及びロッド20の頂部20aによってアイ型ブラケット41を把持することができる。これにより、緩衝器40を試験装置に迅速にかつ確実に固定することができる。
【0052】
なお、本実施形態では緩衝器40に対する振動等の試験を行う試験装置に用いられるクランプ装置10を例に説明したが、これに限られるものではない。緩衝器40のアイ型ブラケット41に内装されるゴムブッシュ42の撓みを排除して緩衝器40を固定する装置に、本発明の実施形態のクランプ装置10を適用することができる。
【0053】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
10 クランプ装置
11 ベース部
12 クランプ部
13、14 腕部
13a、14a 爪部
15 ガイド部
20 ロッド
40 緩衝器
41 アイ型ブラケット
42 ゴムブッシュ
43 カラー
50 固定部材
51 ピストン
52 シリンダ
53 インレットポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、前記ベース部から突設された一対の腕部の間に被固定部材のアイ型ブラケットが嵌装されるクランプ部と、を備え、
前記一対の腕部は、それぞれ、他方の前記腕部側に突設する爪部が形成され、
前記ベース部には、前記アイ型ブラケットに向かって移動自在のロッドが設けられることを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
前記一対の腕部の突設方向と平行の平面部を有し、前記平面部によって前記アイ型ブラケットの位置を規定するガイド部を備えることを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記ベース部が固定される固定部材を備え、
前記固定部材は、シリンダと、前記シリンダに摺動可能に収装されるピストンと、を備え、
前記ロッドは、前記ピストンに連結され、前記シリンダに作動流体が供給されたときに、前記ピストンの動作によって前記アイ型ブラケットに向かって移動することを特徴とする請求項1又は2に記載のクランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−2596(P2013−2596A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136424(P2011−136424)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】