説明

クランプ

【課題】 基材上に容易に形成することのできる、長物状部材を固定するためのクランプを提供することを目的とする。
【解決手段】 クランプ2は熱可塑性樹脂材料にて一体に形成され、トリムボード1にワイヤーハーネスWHを固定する。クランプ2は、トリムボード1との間にキャビティを形成するように、トリムボード1上に成形型を配置し、キャビティ内に溶融樹脂を供給することにより、トリムボード1上に結合するように形成される。クランプ2はワイヤーハーネスWHを保持するために、一対の保持部21A、21Bを有しており、これらは、その取付面であるトリムボード1上において、ワイヤーハーネスWHの横方向に対して、互いに位置ずれしているため、保持されたワイヤーハーネスWHは屈曲しており、外部から荷重を受けても、クランプ2に対して、その長さ方向にずれることが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に取り付けられ、長物状部材を保持して、基材上に長物状部材を固定するためのクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアトリム上にワイヤーハーネス等を取り付けるための、クランプに関する従来技術として、合成樹脂製のドアトリムに、ワイヤーハーネスを保持する複数の弾性片を一体に形成したものがあった(例えば、特許文献1参照)。これは、ドアトリムの成形と同時にハーネス用クランプが形成されるため、ワイヤーハーネスを保持する別体のクランプを、取付ビス等によってドアトリム上に固定するものに比べて、その製造工程を格段に簡素化でき、製造コストを大幅に低減可能であった。
【特許文献1】特開平9−48295号公報(第1図および第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したように、基材に対してクランプを一体に形成するためには、基材が合成樹脂材料のみにて形成されている必要があり、基材が植物繊維を含んだような材料で形成されている場合には、上述した従来技術を適用することが困難であった。本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、基材上に容易に形成することのできる、長物状部材を固定するためのクランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、植物繊維を含んだ合成樹脂材料により形成された基材上に取り付けられ、長物状部材を保持して、前記基材上に前記長物状部材を固定するためのクランプにおいて、前記基材との間でキャビティを形成するように、前記基材上に成形型を配置し、前記キャビティ内に合成樹脂材料を供給して、前記基材と結合させて形成したことを特徴とするクランプとした。
【0005】
請求項2の発明は、前記長物状部材を保持する一対の保持部を備え、一対の前記保持部は、前記基材の取付面上において互いに位置ずれしていることにより、前記保持部に保持された前記長物状部材が屈曲することを特徴とする請求項1記載のクランプとした。
【0006】
請求項3の発明は、前記基材上に取り付けられる座部と、この座部の一端において撓み可能に連結されるとともに、前記座部の上方に位置するように延びた保持片を備え、前記長物状部材を前記座部と前記保持片との間に介装することにより、前記保持片が前記長物状部材を前記座部との間で弾発的に保持することを特徴とする請求項1記載のクランプとした。
【0007】
請求項4の発明は、ループ状を呈するとともに、上方に開口部が形成された囲繞部が、前記基材上に立設され、前記開口部を形成する前記囲繞部の一対の端部は互いに重なり合っているとともに、前記囲繞部からは内方へ弾性片が突出しており、前記囲繞部の端部を押し下げて、前記長物状部材を前記開口部から前記囲繞部内に押し込み、前記弾性片によって、前記長物状部材を弾発的に保持することを特徴とする請求項1記載のクランプとした。
【0008】
請求項5の発明は、前記基材に取り付けられた固定部と、この固定部と連結されるとともに上方に延びて、前記固定部に対して所定距離を有しながら対向する覆い部を備え、この覆い部の両端部からは撓み可能な一対の押え部が延びており、前記長物状部材を前記固定部上に載置することにより、一対の前記押え部が、前記長物状部材の長さ方向の互いに異なる部位を、それぞれ前記基材に向けて弾発的に押えることにより保持し、前記長物状部材は前記押え部から突出した突片と係合することにより、その前記押え部との係合が外れることを防止することを特徴とする請求項1記載のクランプとした。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
基材との間でキャビティを形成するように、基材上に成形型を配置し、キャビティ内に合成樹脂材料を供給して、基材と結合させて形成したことにより、基材が植物繊維を含んだような材料で形成されていても、基材と強固に結合したクランプを、基材上に容易に形成することができる。
【0010】
<請求項2の発明>
長物状部材を保持する一対の保持部を備え、一対の保持部は、基材の取付面上において互いに位置ずれしていることにより、保持部に保持された長物状部材が屈曲するため、クランプからその長さ方向にずれることを防止できる。
【0011】
<請求項3の発明>
基材上に取り付けられる座部と、この座部の一端において撓み可能に連結されるとともに、座部の上方に位置するように延びた保持片を備え、長物状部材を座部と保持片との間に介装することにより、保持片が長物状部材を座部との間で弾発的に保持するため、長物状部材を座部と保持片との間に挿入するのみで、基材上にずれないように安定して固定することができる。
【0012】
<請求項4の発明>
ループ状を呈するとともに、上方に開口部が形成された囲繞部が、基材上に立設され、開口部を形成する囲繞部の一対の端部は互いに重なり合っているとともに、囲繞部からは内方へ弾性片が突出しており、囲繞部の端部を押し下げて、長物状部材を開口部から囲繞部内に押し込み、弾性片によって、長物状部材を弾発的に保持するため、長物状部材を囲繞部内に押し込むのみで、基材上にずれないように安定して固定することができる。
【0013】
<請求項5の発明>
基材に取り付けられた固定部と、この固定部と連結されるとともに上方に延びて、固定部に対して所定距離を有しながら対向する覆い部を備え、この覆い部の両端部からは撓み可能な一対の押え部が延びており、長物状部材を固定部上に載置することにより、一対の押え部が、長物状部材の長さ方向の互いに異なる部位を、それぞれ基材に向けて弾発的に押えることにより保持し、長物状部材は押え部から突出した突片と係合することにより、その押え部との係合が外れることを防止するため、長物状部材を固定部上に載置するのみで、基材上にずれないように安定して固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1乃至図7によって説明する。図5における上方を、説明中の上方とする。図1に示すように、本実施形態によるクランプ2は、長物状部材であるワイヤーハーネスWH等を保持して、車両ドアのトリムボード1(本発明の基材に該当する)上に固定するものであって、トリムボード1の車室外側面上に固定されている。トリムボード1は、ポリプロピレン等の熱可塑性の合成樹脂材料にて形成された基板11と、その片面に接合された表皮12とを備えている。基板11にはケナフ等の靭皮植物繊維が含まれており、合成樹脂材料はそのバインダーとしての機能を有する。
【0015】
クランプ2はポリプロピレン等のトリムボード1の基板11と同種の熱可塑性樹脂材料にて一体に形成され、上方から見て互いに点対称に配置された一対の保持部21A、21Bを有している。各保持部21A、21Bは、トリムボード1の基板11に結合された平坦な固定部22A、22Bと、これから延びたクランプ部23A、23Bとを備えている。クランプ部23A、23Bは、ワイヤーハーネスWHを装着するために湾曲しているとともに、外方に撓み可能で、それぞれの背面からは、その強度向上のために梁部24A、24Bが突出し、これらは基板11に接合されている。クランプ部23A、23Bの開口端部は、ワイヤーハーネスWHを挿入しやすくすることを考慮して、上方に跳ね上がった形状をしており、また、保持部21A、21Bの間には、所定の高さを有するリブ25が延びている。
【0016】
ワイヤーハーネスWHをクランプ2に保持させる場合、ワイヤーハーネスWHをその径方向に接近させて、最初に、保持部21Aのクランプ部23Aを、上方へ撓ませて拡径させた後、その開口部からクランプ部23A内へ押し込んでいく(図7示)。その後、保持部21Aから出ているワイヤーハーネスWHの部位を移動させて、他側の保持部21Bの上方を超えさせた後、クランプ部23Bを上方へ撓ませて、その開口部からクランプ部23B内へ押し込み、クランプ2に固定する。ワイヤーハーネスWHは、クランプ部23A、23Bから、その弾発力によって押圧されることにより保持される。
【0017】
図4および図6に示したように、保持部21A、21Bは、クランプ2の取付面である基板11上において、ワイヤーハーネスWHの径方向に対して、互いに位置ずれしているため、保持されたワイヤーハーネスWHは長さ方向に屈曲しており、外部から荷重を受けても、クランプ2に対して、その長さ方向にずれることが防止される。また、図5および図6に示すように、ワイヤーハーネスWHは、保持部21A、21Bを連結したリブ25を乗越え、保持部21A、21Bにより、リブ25に押し付けられているため、高さ方向にも屈曲させられ、その位置ずれを更に防いでいる。
【0018】
トリムボード1上でのクランプ2の成形方法については、トリムボード1の基板11との間でキャビティを形成するように、トリムボード1上に成形型を配置し、成形型に設けられたゲート孔から、トリムボード1と同種の溶融した合成樹脂材料をキャビティ内に射出する。溶融した合成樹脂材料は、熱によりトリムボード1に含まれる樹脂材料を溶かして互いに混融し、かつ、植物繊維間の隙間に入り込み、硬化後にトリムボード1と強固に結合する。これにより、クランプ2が、トリムボード1上に固定される。この成形方法については、公開特許公報である特開2003−231181にも記載されている。また、トリムボード1に含まれる合成樹脂材料と、クランプ2の合成樹脂材料を異質のものとしても、キャビティ内に射出された合成樹脂材料が、植物繊維間の隙間に入り込み、トリムボード1とクランプ2を結合することができる。更に、トリムボード1上にスタッドボルト等を立てて固定し、これを包むようにクランプ2をトリムボード1上にインサート成形すれば、スタッドボルトのアンカー効果により、クランプ2のトリムボード1に対する結合強度を増大させることができる。
【0019】
本実施形態によれば、トリムボード1との間でキャビティを形成するように、トリムボード1上に成形型を配置し、キャビティ内に合成樹脂材料を供給して、トリムボード1と結合させて形成したことにより、トリムボード1が植物繊維を含んだような材料で形成されていても、トリムボード1と強固に結合したクランプ2を、トリムボード1上に容易に形成することができる。
【0020】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図8乃至図19によって説明する。図11における上方を、説明中の上方とする。図8に示すように、本実施形態によるクランプ3は、実施形態1によるクランプ2と同様に、ワイヤーハーネスWHをトリムボード1上に固定するもので、トリムボード1の基板11上に結合されている。クランプ3は合成樹脂材料にて一体に形成され、基板11上に固定される一対の座部31と、これの一端に上下方向に撓み可能に連結され、座部31の上方に位置するように延びた保持片32を備えている。
【0021】
一対の座部31は互いに平行に延び、その一端には、それぞれワイヤーハーネスWHと係合して、その抜け止めを行う一対の三角板状をしたストッパ31aが形成されている。各々の座部31は、他端において保持片32と連結され、その両端部間には、ワイヤーハーネスWHが係合して位置決めされるように、その上面に溝部31bが複数個設けられて波形に形成されている。座部31と連結された保持片32は、その幅方向において座部31の間に位置しており、その端部は、ワイヤーハーネスWHを挿入しやすくすることを考慮して、上方への跳ね上がり部32aが形成されている。
【0022】
ワイヤーハーネスWHをクランプ3に保持させる場合、ワイヤーハーネスWHを径方向に接近させて、ストッパ31aの斜面に乗り上がらせる。その後、ワイヤーハーネスWHを跳ね上げ部32aに当接させて、保持片32を上方に撓ませた後、座部31と保持片32との間に挿入していく。座部31と保持片32との間に介装されたワイヤーハーネスWHは、座部31の溝部31bと係合するとともに、上方から保持片32によって弾発的に押圧されることにより、クランプ3に保持される(図11(A)示)。平面視において、保持片32は座部31の間に配置されているため、図11において左方から見た場合、双方の間に介装されたワイヤーハーネスWHは屈曲した状態になっており、その長さ方向の位置ずれが防止される。
【0023】
尚、図11(B)に示したように、外径の大きいワイヤーハーネスWBをクランプ3に保持させた場合、保持片32の上方への撓み量を大きくすることができ、そのため、保持片32がワイヤーハーネスWBを押圧する荷重を大きくすることができるため、その保持をいっそう強固にすることが可能である。尚、本実施形態によるクランプ3の成形方法は、実施形態1によるクランプ2と同様であるため、説明は省略する。
【0024】
本実施形態によれば、トリムボード1上に取り付けられる座部31と、この座部31の一端において撓み可能に連結されるとともに、座部31の上方に位置するように延びた保持片32を備え、ワイヤーハーネスWHを座部31と保持片32との間に介装することにより、保持片32がワイヤーハーネスWHを座部31との間で弾発的に保持するため、ワイヤーハーネスWHを座部31と保持片32との間に挿入するのみで、トリムボード1上にずれないように安定して固定することができる。
【0025】
本実施形態の変形例1として、図12に示すクランプ3Aのように、保持片32Aの座部31と接続された根元部分について、先端部分に比べてその幅を小さくし、保持片32Aの側端面を徐変させてもよい。こうすることにより、保持したワイヤーハーネスWHが、保持片32Aの側端部に斜めに当接し、ワイヤーハーネスWHがその抜け方向(図12おいて左方)に位置ずれすることを防止できる。
【0026】
実施形態2の変形例2として、図13に示すクランプ4のように、座部41の上面に所定幅の平坦部41cを形成してもよい。本変形例によれば、平坦部41c上にフルフラットケーブルFFC、あるいはフレキシブルプリントケーブル等の平板状のケーブルを載置することにより、これらを位置ずれなく保持することができる。
【0027】
変形例2に対する更なる変形例として、図14および図15に示すクランプ4Aのように、座部41の平坦部41c上に、ピン41dを立設させてもよい。本変形例によれば、フルフラットケーブルFFC、あるいはフレキシブルプリントケーブルに位置決め穴FFC1を開け、この中にピン41dを挿入させることにより、その位置ずれを防ぐことができる(図15(A)示)。また、ピン41dの両側に、軸状のワイヤーハーネスWH、WBを載置して位置決めしてもよい(図15(B)示)。
【0028】
実施形態2の変形例3として、図16に示すクランプ5のように、座部51を1本のみとし、その上方に延びるように、その前端部が閉じた、リング状の保持片52を形成してもよい。クランプ5においては、座部51の上面に形成された溝部51bに加え、保持片52の下面に複数の突部52aが設けられている(図17示)。座部51と保持片52との間にワイヤーハーネスWHを介装すると、溝部51bと突部52aの間で弾発的に保持される。
【0029】
また、図18に示したように、複数のワイヤーハーネスWHを結束テープTPにて束ね、結束テープTPが、保持片52の一対の側辺52b間に位置するように、座部51と保持片52との間に介装すれば、ワイヤーハーネスWHに外部から長さ方向の荷重が加わっても、結束テープTPの端部が側辺52bに当接して、その位置ずれを防止することができる。また、図17に示すように、保持片52の座部51との連結部位に、太径のワイヤーハーネスWBを保持するためのカール部52cを形成してもよい。
【0030】
その平面視において、クランプ5の座部51は保持片52の間に配置されているため、図18において左方から見た場合、双方の間に介装されたワイヤーハーネスWHは屈曲され、その長さ方向の位置ずれが防止される。また、クランプ5においては、ワイヤーハーネスWHを座部51と保持片52との間に介装する場合に、1個のストッパ51aのみを乗越えさせればよいため、その作業性が向上する。
【0031】
変形例3に対する更なる変形例として、図19(A)に示すクランプ5Aのように、保持片52にカール部52cを形成しないものであってもよい。また、図19(B)に示すクランプ5Bのように、保持片52の突部52aを、座部51の溝部51bよりも低く形成すれば、座部51と保持片52との間に介装されたワイヤーハーネスWHの屈曲量を増大でき、その保持力を向上できる。
【0032】
<実施形態3>
図20乃至図22は本発明の実施形態3を示す。図22における上方を、説明中の上方とする。図20に示すように、本実施形態によるクランプ6は、実施形態1によるクランプ2と同様に、ワイヤーハーネスWHをトリムボード1上に固定するもので、トリムボード1の基板11上に結合されている。クランプ6は合成樹脂材料にて一体に形成され、基板11上に固定される平板状の固定部61と、これの上方に延びることにより、トリムボード1上に立設された囲繞部62を備えている。囲繞部62はループ状に形成され、その上方が開口しており、その開口部を形成する一対の端部62a、62bは撓み可能に形成され、これらは互いに重なり合っている(図21示)。また、囲繞部62には、その内方へ突出するとともに、撓み可能な一対の弾性片62c、62dが形成されている。
【0033】
ワイヤーハーネスWHをクランプ6に保持させる場合、端部62a、62bをともに押し下げて、ワイヤーハーネスWHを開口部から囲繞部62内に押し込み(図22(A)示)、更に、弾性片62c、62dの間に挿入する(図22(B)示)。ワイヤーハーネスWHは、弾性片62c、62dにより弾発的に挟圧され、クランプ6に保持される。ワイヤーハーネスWHは、弾性片62c、62dにより弾発的に保持されることにより、その長さ方向および横方向に位置ずれしないように保持され、また、振動等によるワイヤーハーネスWHとクランプ6間の異音の発生をも防ぐことが可能である。
【0034】
クランプ6に保持されたワイヤーハーネスWHに対し、上方へ引き上げる方向に外部から荷重が加わった場合、端部62a、62bが互いに重なり合っているため、ワイヤーハーネスWHが囲繞部62から抜け出ることを防いでいる。本実施形態によるクランプ6において、弾性片を1個にして、それと囲繞部62の内周面との間において、ワイヤーハーネスWHを保持するようにしてもよい。尚、本実施形態によるクランプ6の成形方法は、実施形態1によるクランプ2と同様であるため、説明は省略する。
【0035】
本実施形態によれば、ループ状を呈するとともに、上方に開口部が形成された囲繞部62が、トリムボード1上に立設され、開口部を形成する囲繞部62の一対の端部62a、62bは互いに重なり合っているとともに、囲繞部62からは内方へ弾性片62c、62dが突出しており、囲繞部62の端部62a、62bを押し下げて、ワイヤーハーネスWHを開口部から囲繞部62内に押し込み、弾性片62c、62dによりワイヤーハーネスWHを弾発的に保持するため、ワイヤーハーネスWHを囲繞部62内に押し込むのみで、トリムボード1上にずれないように安定して固定することができる。
【0036】
<実施形態4>
図23乃至図29は本発明の実施形態4を示す。図25における上方を、説明中の上方とする。図に示すように、本実施形態によるクランプ7は、実施形態1によるクランプ2と同様に、ワイヤーハーネスWHをトリムボード1上に固定するもので、トリムボード1の基板11上に結合されている。クランプ7は合成樹脂材料にて一体に形成され、基板11上に固定される平板状の固定部71と、この固定部71と連結され、上方へと延びた後、固定部71に対して所定距離を有しながら対向する覆い部72を備えている。覆い部72の側端部からは、上下方向に撓み可能な、薄板状の一対の押え部73が、斜め下方へと延びており、各々の押え部73の先端部においては、突片74がその幅方向の端部から突出している。
【0037】
ワイヤーハーネスWHをクランプ7に保持させる場合、ワイヤーハーネスWHを横方向に接近させて、図25(B)の二点鎖線にてに示すように、押え部73を上方へ撓ませながら固定部71上に載置する。上方へ撓んだ一対の押え部73は、その復元力により、ワイヤーハーネスWH上の長さ方向の異なる2箇所の部位を、トリムボード1に向けて弾発的に押えて保持する。また、ワイヤーハーネスWHは突片74と係合することにより、押え部73から外れることを防止している(図25示)。尚、突片74の側端は、ワイヤーハーネスWHを当接させて、押え部73を上方へ逃げやすくために、傾斜面74aとされている。
【0038】
ワイヤーハーネスWHは押え部73からの押圧力により、その外周面に発生する摩擦力によって、その長さ方向の移動を防いでもよいし、ワイヤーハーネスWHの外周の、2箇所に巻かれた結束テープTPの端部を、押え部73の先端部に当接させることにより、ワイヤーハーネスWHの長さ方向の移動を防止してもよい(図25(A)示)。また、図26に示すように、フルフラットケーブルFFCあるいはフレキシブルプリントケーブルの位置決め穴FFC1に、突片74を挿入して、これらを位置ずれしないように保持してもよい。尚、本実施形態によるクランプ7の成形方法は、実施形態1によるクランプ2と同様であるため、説明は省略する。
【0039】
本実施形態によれば、トリムボード1に取付けられた固定部71と、この固定部71と連結されるとともに上方に延びて、固定部71に対して所定距離を有しながら対向する覆い部72を備え、この覆い部72の両端部からは撓み可能な一対の押え部73が延びており、ワイヤーハーネスWHを固定部71上に載置することにより、一対の押え部73が、ワイヤーハーネスWHの長さ方向の互いに異なる部位を、それぞれトリムボード1に向けて弾発的に押えることにより保持し、ワイヤーハーネスWHは押え部73から突出した突片74と係合することにより、その押え部73との係合が外れることを防止するため、ワイヤーハーネスWHを固定部71上に載置するのみで、トリムボード1上にずれないように安定して固定することができる。また、押え部73は撓み可能であるため、外径の異なる多種のワイヤーハーネスWHを、保持することが可能である。また、図24(B)に示すように、覆い部72の角部内面には、所定の半径を有するコーナー部72aが形成されているため肉厚となり、クランプ2の成形の際に、樹脂収縮により覆い部72が下方へ垂れる状態となり、ワイヤーハーネスWH、WBを保持した場合、覆い部72の先端付近でワイヤーハーネスWH、WBの外周面と当接させることで、その位置ずれ防止を一部担っている。
【0040】
本実施形態の変形例1として、図27に示すクランプ7Aのように、各々の突片74の側端から、下方に向けて係合片75を突出させてもよい。こうすることにより、外径の大きいワイヤーハーネスWBを保持する場合に、押え部73の上方への撓み角度が大きくなり、突片74とワイヤーハーネスWBとの係り代が少なくなっても、係合片75がワイヤーハーネスWBと係合することにより、その外れを防止できる(図27(A)示)。また、図27(B)に示すように、クランプ7Aにより、フルフラットケーブルFFCあるいは細径のワイヤーハーネスWHを保持することも可能である。
【0041】
本実施形態の変形例2として、図28に示すクランプ8のように、ワイヤーハーネスWHの長さ方向に覆い部82を長く延ばし、その端部から、一対の押え部83を互いに長手方向の内方に延ばし、その先端部から突片84を下方へ突出させてもよい。こうすることにより、押え部83により細径のワイヤーハーネスWHを押えることができるとともに(図28示)、外径の大きいワイヤーハーネスWBを押えることも可能であり(図29(A)示)、あるいは、フルフラットケーブルFFCを押えることもでき(図29(B)示)、いずれの場合も突片84によって、その外れを防止することができる。クランプ8によりワイヤーハーネスWHを保持する場合、外周の1箇所に巻かれた結束テープTPに押え部83の端部を当接させることにより、ワイヤーハーネスWHを長さ方向に保持することが可能である。
【0042】
<関連発明>
上述した本発明に関連する発明として、例えば金属等の、樹脂材料以外の材質によって形成された基材に、スタッドボルトを立てて固定し、これを包むようにインサート成形して、クランプを基材上に取り付けることもできる。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)本発明によるクランプは、植物繊維を含まない合成樹脂製の基材上にも形成可能である。
(2)クランプの成形方法には、射出成形のみならず、圧縮成形もしくはトランスファ成形等のあらゆる樹脂成形が適用可能である。
(3)本発明によるクランプは、トリムボード以外のあらゆる基材に取り付け可能である。
(4)本発明によるクランプは、チューブ、ホース、ケーブル等のワイヤーハーネス以外の長物状部材も保持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】トリムボード上に取り付けられた実施形態1によるクランプの斜視図である。
【図2】図1に示したクランプの平面図である。
【図3】図1に示したクランプの正面図である。
【図4】図1に示したクランプによってワイヤーハーネスを保持したところを示した平面図である。
【図5】図4の正面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】図1に示したクランプにワイヤーハーネスを挿入するところを示した側面図である。
【図8】トリムボード上に取り付けられた実施形態2によるクランプの斜視図である。
【図9】図8に示したクランプの平面図(A)および正面図(B)である。
【図10】図8に示したクランプによってワイヤーハーネスを保持したところを示した平面図である。
【図11】図10の正面図(A)、および図8に示したクランプによって太径のワイヤーハーネスを保持したところを示した正面図(B)である。
【図12】実施形態2によるクランプの変形例1を示した平面図である。
【図13】実施形態2によるクランプの変形例2によってフルフラットケーブルを保持したところを示した平面図(A)および正面図(B)である。
【図14】図13に示したクランプの更なる変形例によってフルフラットケーブルを保持したところを示した平面図である。
【図15】図14の正面図(A)および図14に示したクランプによって太径および細径のワイヤーハーネスを保持したところを示した正面図(B)である。
【図16】実施形態2によるクランプの変形例3を示した平面図である。
【図17】図16に示したクランプの正面図(A)、図16のB−B断面図(B)および図16のC−C断面図(C)である。
【図18】図16に示したクランプによって結束したワイヤーハーネスを保持したところを示した平面図である。
【図19】図16に示したクランプの更なる変形例を示した平面図(A)および(B)である。
【図20】トリムボード上に取り付けられた実施形態3によるクランプの斜視図である。
【図21】図20に示したクランプの正面図である。
【図22】図20に示したクランプにワイヤーハーネスを挿入するところを示した正面図(A)およびワイヤーハーネスを保持したところを示した正面図(B)である。
【図23】トリムボード上に取り付けられた実施形態4によるクランプの斜視図である。
【図24】図23に示したクランプの正面図(A)および側面図(B)である。
【図25】図23に示したクランプによってワイヤーハーネスを保持したところを示した正面図(A)および側面図(B)である。
【図26】図23に示したクランプによってフルフラットケーブルを保持したところを示した斜視図である。
【図27】実施形態4によるクランプの変形例1によって太径のワイヤーハーネスを保持したところを示した正面図(A)およびフルフラットケーブルを保持したところを示した側面図(B)である。
【図28】実施形態4によるクランプの変形例2によってワイヤーハーネスを保持したところを示した正面図(A)および側面図(B)である。
【図29】図28に示したクランプによって太径のワイヤーハーネスを保持したところを示した正面図(A)およびフルフラットケーブルを保持したところを示した側面図(B)である。
【符号の説明】
【0045】
1…トリムボード
2、3、3A、4、、4A、5、5A、5B、6、7、7A、8…クランプ
21A、21B…保持部
31、41、51…座部
32、32A、42、52…保持片
62…囲繞部
62a、62b…開口部の端部
62c、62d…弾性片
71、81…固定部
72、82…覆い部
73、83…押え部
74、84…突片
FFC…フルフラットケーブル
WB、WH…ワイヤーハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物繊維を含んだ合成樹脂材料により形成された基材上に取り付けられ、長物状部材を保持して、前記基材上に前記長物状部材を固定するためのクランプにおいて、
前記基材との間でキャビティを形成するように、前記基材上に成形型を配置し、前記キャビティ内に合成樹脂材料を供給して、前記基材と結合させて形成したことを特徴とするクランプ。
【請求項2】
前記長物状部材を保持する一対の保持部を備え、一対の前記保持部は、前記基材の取付面上において互いに位置ずれしていることにより、前記保持部に保持された前記長物状部材が屈曲することを特徴とする請求項1記載のクランプ。
【請求項3】
前記基材上に取り付けられる座部と、この座部の一端において撓み可能に連結されるとともに、前記座部の上方に位置するように延びた保持片を備え、前記長物状部材を前記座部と前記保持片との間に介装することにより、前記保持片が前記長物状部材を前記座部との間で弾発的に保持することを特徴とする請求項1記載のクランプ。
【請求項4】
ループ状を呈するとともに、上方に開口部が形成された囲繞部が、前記基材上に立設され、前記開口部を形成する前記囲繞部の一対の端部は互いに重なり合っているとともに、前記囲繞部からは内方へ弾性片が突出しており、前記囲繞部の端部を押し下げて、前記長物状部材を前記開口部から前記囲繞部内に押し込み、前記弾性片によって、前記長物状部材を弾発的に保持することを特徴とする請求項1記載のクランプ。
【請求項5】
前記基材に取り付けられた固定部と、この固定部と連結されるとともに上方に延びて、前記固定部に対して所定距離を有しながら対向する覆い部を備え、この覆い部の両端部からは撓み可能な一対の押え部が延びており、前記長物状部材を前記固定部上に載置することにより、一対の前記押え部が、前記長物状部材の長さ方向の互いに異なる部位を、それぞれ前記基材に向けて弾発的に押えることにより保持し、前記長物状部材は前記押え部から突出した突片と係合することにより、その前記押え部との係合が外れることを防止することを特徴とする請求項1記載のクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2006−325340(P2006−325340A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146633(P2005−146633)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000208293)大和化成工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】