説明

クリセン誘導体、及び、有機EL素子

【課題】青色発光波長の短波化を図れる発光層に対して電子を適切に注入可能な電子輸送層を有する有機EL素子の提供。
【解決手段】有機EL素子の電子輸送層として、アントラセンよりもエネルギーギャップが大きいクリセン誘導体を含む構成を適用した。このため、有機EL素子の発光層として青色発光波長の短波化を図れるエネルギーギャップが大きいものを適用した場合であっても、この発光層に対して大きな電圧を必要とすることなく電子を適切に注入することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリセン誘導体、及び、有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
陽極と陰極との間に有機発光層を備え、有機発光層に注入された正孔と電子との再結合によって生じる励起子(エキシトン)エネルギーから発光を得る有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)が知られている。
このような有機EL素子は、自発光型素子としての利点を活かし、発光効率、画質、消費電力さらには薄型のデザイン性に優れた発光素子として期待されている。
【0003】
ところで、近年、色再現性の高いディスプレイ用途などを考えた場合に、より短波長化された青色発光素子が求められている。
このような短波長化を指向する場合、発光層のエネルギーギャップを大きくすることが必要である。
ここで、発光層のエネルギーギャップが大きくなる分、発光層のアフィニティ準位も低くなるため、発光層への電子注入障壁が大きくなり、駆動電圧の上昇につながるという問題がある。
そのため、良好な短波長の青色発光を示し、かつ、駆動性能が良好な素子が求められている。
なお、駆動電圧を低下させるために特許文献1には電子輸送性能が高い含窒素複素環誘導体化合物を電子輸送層として利用することが開示されている。
しかしながら、発光層がワイドギャップになった場合には前記特許文献に開示される材料ではまだ不十分であるという問題がある。
一方、特許文献2には、クリセン系化合物の開示があり、有機EL素子の発光材料や正孔輸送材料として用いることにより、発光効率が高い青色発光が可能である旨、記載されている。しかしながら、本発明のクリセン誘導体についての開示はない。
【0004】
【特許文献1】特開2007−153778
【特許文献2】特開2004−75567
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新規なクリセン誘導体を提供することにある。
さらに、短波長の青色発光を示す発光層に対しする電子注入輸送材として好適なクリセン誘導体、および、これを用いた有機EL素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意研究したところ、エネルギーギャップが大きく、すなわち、アフィニティ準位が低い発光層に対して、大きな電圧を必要とすることなく電子を適切に注入可能な電子輸送層として、クリセンを含むものを適用できることを見出した。
【0007】
ここで、エネルギーギャップとは、伝導レベルと価電子レベルとの差をいい、例えば、ベンゼン中の吸収スペクトルの吸収端から測定した値により規定することができる。具体的には、市販の可視紫外分光光度計を用いて吸収スペクトルを測定し、その吸収スペクトルが立ち上がり始める波長から算出する。
ただし、上記の規定によらず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でエネルギーギャップとして定義できる値であればよい。
【0008】
また、アフィニティ準位Af(電子親和力)とは、材料の分子に電子を一つ与えた時に放出または吸収されるエネルギーをいい、放出の場合は正、吸収の場合は負と定義する。
アフィニティ準位Afは、イオン化ポテンシャルIpと光学エネルギーギャップEgとにより次のように規定する。
Af=Ip−Eg
ここで、イオン化ポテンシャルIpは、各材料の化合物から電子を取り去ってイオン化するために要するエネルギーを意味し、例えば、本願では、紫外線光電子分光分析装置(AC−3、理研(株)計器)で測定した値を用いることができる。
ただし、上記の規定によらず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でアフィニティ準位として定義できる値であればよい。
【0009】
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明のクリセン誘導体は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0011】
【化1】

【0012】
一般式(1)において、Chは置換もしくは無置換のクリセンを示し、Ar、Arはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数5〜40のアリール基または、置換もしくは無置換の核原子数5〜40のヘテロアリール含有基を示す。ただし、Ar、Arの少なくとも一つが置換もしくは無置換の核原子数5〜40のヘテロアリール含有基である。
【0013】
また、本発明のクリセン誘導体は、下記一般式(2)で表されることを特徴とする。
【0014】
【化2】

【0015】
一般式(2)において、Ar、Arはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数5〜40のアリール基または、置換もしくは無置換の核原子数5〜40のヘテロアリール含有基を示す。ただし、Ar、Arの少なくとも一つが置換もしくは無置換の核原子数5〜40のヘテロアリール含有基である。R〜R10は水素原子または置換基を表す。
【0016】
そして、本発明のクリセン誘導体では、ヘテロアリール基が含窒素ヘテロ環である構成が好ましい。
【0017】
また、本発明のクリセン誘導体では、ヘテロアリール基が含窒素5員環誘導体である構成が好ましい。
【0018】
さらに、本発明のクリセン誘導体では、ヘテロアリール基が含窒素6員環誘導体である構成が好ましい。
【0019】
そして、本発明のクリセン誘導体では、ヘテロアリール基が下記一般式(3)〜(9)の構造である構成が好ましい。
【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
【化6】

【0024】
【化7】

【0025】
【化8】

【0026】
【化9】

【0027】
一般式(3)〜(9)において、L〜Lはそれぞれ置換または無置換の核炭素数6〜30のアリーレン基を示し、a〜fはそれぞれ0〜3の整数を示す。R11〜R16は水素原子または置換基を示す。kは1〜4の整数である。なお、kが2以上のときは、R11同士は同じであってもよいし、異なっていてもよい。lは1〜3の整数である。なお、lが2以上のときは、R12同士は同じであってもよいし、異なっていてもよい。mは1〜2の整数である。なお、mが2のときは、R13同士は同じであってもよいし、異なっていてもよい。nは1〜5の整数である。なお、nが2以上のときは、R14同士は同じであってもよいし、異なっていてもよい。R11〜R16は隣接する置換基同士で結合し、飽和または不飽和の環を形成してもよい。
【0028】
本発明の有機EL素子は、陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機EL素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、上述したクリセン誘導体を単独もしくは混合物の成分として含有することを特徴とする。
【0029】
そして、本発明の有機EL素子では、前記有機薄膜層が電子注入層又は電子輸送層を有し、該電子注入層又は該電子輸送層が、上述したクリセン誘導体を単独もしくは混合物の成分として含有する構成が好ましい。
【0030】
また、本発明の有機EL素子では、前記発光層が上述したクリセン誘導体を単独又は混合物の成分として含有する構成が好ましい。
【0031】
さらに、本発明の有機EL素子では、前記クリセン誘導体を含有する電子注入層又は電子輸送層が、還元性ドーパントを含有する構成が好ましい。
【0032】
また、本発明の有機EL素子では、前記還元性ドーパントが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体及び希土類金属の有機錯体からなる群から選択される1種又は2種以上の物質である構成が好ましい。
【0033】
そして、本発明の有機EL素子では、前記発光層は、以下の一般式(10)で表されるホストと、ドーパントとからなる構成が好ましい。
【0034】
【化10】

【0035】
一般式(10)において、R42〜R53は、水素原子または置換基を表す。ただし、R42〜R53のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換もしくは無置換の核炭素数6〜60のアリール基を表す。
【0036】
このようなクリセン誘導体を電子輸送材に用いることにより、ワイドギャップな発光層のホストに対して小さなエネルギー障壁で電子注入できる。
すなわち、発光層のアフィニティ準位が小さくなる分、それにあわせて電子輸送層のアフィニティ準位も小さくしてやればよい。
例えば、ワイドギャップな発光層のホストとしてはクリセン誘導体が例として挙げられるため、それにあわせて電子輸送層もクリセン誘導体とすることで伝道レベルを同程度にして電子注入障壁を下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0038】
〔有機EL素子の構成〕
まず、有機EL素子の素子構成について説明する。
有機EL素子の代表的な素子構成としては、
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(5)陽極/有機半導体層/発光層/陰極
(6)陽極/有機半導体層/電子障壁層/発光層/陰極
(7)陽極/有機半導体層/発光層/付着改善層/陰極
(8)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(9)陽極/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(10)陽極/無機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(11)陽極/有機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(12)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
(13)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
などの構造を挙げることができる。
本実施形態の有機EL素子は、少なくとも、陽極と、正孔注入層と、発光層と、電子輸送層と、陰極と、をこの順で備える。
これらの中で通常(8)の構成が好ましく用いられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0039】
(透光性基板)
有機EL素子は、透光性の基板上に作製する。ここでいう透光性基板は有機EL素子を支持する基板であり、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上で平滑な基板が好ましい。
具体的には、ガラス板、ポリマー板等が挙げられる。
ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等が挙げられる。
またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。
【0040】
(陽極)
有機EL素子の陽極は、正孔を正孔輸送層又は発光層に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが効果的である。陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、酸化インジウム亜鉛酸化物、金、銀、白金、銅等が適用できる。また、陽極としては、電子輸送層又は発光層に電子を注入する目的で、仕事関数の小さい材料が好ましい。
陽極はこれらの電極物質を蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。
このように発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の発光に対する透過率が10%より大きくすることが好ましい。また、陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選択される。
【0041】
(発光層)
有機EL素子の発光層は以下の機能を併せ持つものである。
すなわち、
(1)注入機能;電界印加時に陽極又は正孔注入層より正孔を注入することができ、陰極又は電子注入層より電子を注入することができる機能、
(2)輸送機能;注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能、
(3)発光機能;電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能、
がある。
ただし、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさに違いがあってもよく、また、正孔と電子の移動度で表される輸送能に大小があってもよいが、どちらか一方の電荷を移動することが好ましい。
この発光層を形成する方法としては、例えば蒸着法、スピンコート法、LB法等の公知の方法を適用することができる。
発光層は、分子堆積膜であることが好ましい。
ここで分子堆積膜とは、気相状態の材料化合物から沈着され形成された薄膜や、溶液状態又は液相状態の材料化合物から固体化され形成された膜のことであり、通常この分子堆積膜は、LB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区分することができる。
また、特開昭57−51781号公報に開示されているように、樹脂等の結着剤と材料化合物とを溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法等により薄膜化することによっても、発光層を形成することができる。
さらに、発光層の膜厚は、好ましくは5〜50nm、より好ましくは7〜50nm、最も好ましくは10〜50nmである。5nm未満では発光層形成が困難となり、色度の調整が困難となる恐れがあり、50nmを超えると駆動電圧が上昇する恐れがある。
【0042】
本実施形態の有機EL素子において、発光層は、ホストと、ドーパントとを含んで構成されている。
そして、ホストの具体例としては、以下の一般式(11)で表される化合物が挙げられる。
【0043】
【化11】

【0044】
一般式(11)において、R42〜R53は、水素原子または置換基を表す。ただし、R42〜R53のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換もしくは無置換の核炭素数6〜60のアリール基を表す。
【0045】
また、一般式(11)で表される他の化合物を以下に示す。
【0046】
【化12】

【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
【化15】

【0050】
【化16】

【0051】
上記のクリセン誘導体が好ましいが、これら以外に、ポリフェニレン誘導体、フルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、フェナントレン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体など、従来有機EL用発光材料として用いられてきた発光材料を用いることができる。
【0052】
また、ドーパントの具体例としては、以下の一般式(12)で表されるベンジジンを含む化合物が挙げられる。
【0053】
【化17】

【0054】
一般式(12)において、Ar21〜Ar24は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の核炭素数6〜14のアリール基を表す。L11は、置換もしくは無置換のベンゼン、ナフタレン、フルオレン、フェナントレンを表す。pは、独立に1〜6の整数であり、pが2以上の場合、L11同士は、同一でも異なっていてもよい。また、pが2以上の場合、L11同士は、置換位置が同一でも異なっていてもよい。sは、0または1である。
【0055】
なお、ドーパントとしては、上記一般式(12)で表される化合物の代わりに、以下の一般式(13)で表されるクリセンを含む化合物を用いてもよい。
【0056】
【化18】

【0057】
一般式(13)において、Ar25〜Ar28は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のフェニル基、ナフチル基、フェナントレンを表す。L12,L13は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のベンゼン、ナフタレン、フェナントレンを表す。
【0058】
さらに、ドーパントとしては、以下の一般式(14)〜(17)のいずれかの構造を有する化合物から導かれる一価の基であるフルオランテン構造のものを用いてもよい。
【0059】
【化19】

【0060】
【化20】

【0061】
【化21】

【0062】
【化22】

【0063】
一般式(14)〜(17)において、X〜X52は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の直鎖、分岐もしくは環状の炭素原子数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の直鎖、分岐もしくは環状の炭素原子数1〜30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の直鎖、分岐もしくは環状の炭素原子数1〜30のアルキルチオ基、置換もしくは無置換の直鎖、分岐もしくは環状の炭素原子数2〜30のアルケニル基、置換もしくは無置換の直鎖、分岐もしくは環状の炭素原子数2〜30のアルケニルオキシ基、置換もしくは無置換の直鎖、分岐もしくは環状の炭素原子数2〜30のアルケニルチオ基、置換もしくは無置換の炭素原子数7〜30のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数7〜30のアラルキルオキシ基、置換もしくは無置換の炭素原子数7〜30のアラルキルチオ基、置換もしくは無置換の炭素原子数6〜20のアリール基、置換もしくは無置換の炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素原子数6〜20のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素原子数2〜30のアミノ基、シアノ基、シリル基、水酸基、−COOR1e基(基中、R1eは水素原子、置換もしくは無置換の直鎖、分岐もしくは環状の炭素原子数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の直鎖、分岐もしくは環状の炭素原子数2〜30のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素原子数7〜30のアラルキル基、または、置換もしくは無置換の炭素原子数6〜30のアリール基を表す)、−COR2e基(基中、R2eは水素原子、置換もしくは無置換の直鎖、分岐もしくは環状の炭素原子数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の直鎖、分岐もしくは環状の炭素原子数2〜30のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素原子数7〜30のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数6〜30のアリール基、または、アミノ基を表す)、−OCOR3e基(基中、R3eは置換もしくは無置換の直鎖、分岐もしくは環状の炭素原子数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の直鎖、分岐もしくは環状の炭素原子数2〜30のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素原子数7〜30のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数6〜30のアリール基を表す)を表し、さらに、X〜X52のうち、隣接する基及び各基の置換基は、互いに結合して、置換もしくは無置換の炭素環を形成していてもよい。
【0064】
そして、上述したようなクリセンを含むホストと、ベンジジン、クリセン、フルオランテンのうちのいずれかを含むドーパントとを含んで発光層を構成することにより、ドーパントのエネルギーギャップが大きくなるとともに、ドーパントのアフィニティ準位がホストのアフィニティ準位よりも低くなる。よって、ワイドギャップドーパントを用いることによる青色発光波長の短波長化と、ドーパントへの電子注入抑制による長寿命化とを図れる。
【0065】
(正孔注入・輸送層(正孔輸送帯域))
正孔注入・輸送層は発光層への正孔注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.5eV以下と小さい。このような正孔注入・輸送層としては、より低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば10〜10V/cmの電界印加時に、少なくとも10−4cm/Vsであれば好ましい。
【0066】
このような正孔注入層又は正孔輸送層の形成材料としては、具体的には、例えばトリアゾール誘導体(米国特許3,112,197号明細書等参照)、オキサジアゾール誘導体(米国特許3,189,447号明細書等参照)、イミダゾール誘導体(特公昭37−16096号公報等参照)、ポリアリールアルカン誘導体(米国特許3,615,402号明細書、同第3,820,989号明細書、同第3,542,544号明細書、特公昭45−555号公報、同51−10983号公報、特開昭51−93224号公報、同55−17105号公報、同56−4148号公報、同55−108667号公報、同55−156953号公報、同56−36656号公報等参照)、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体(米国特許第3,180,729号明細書、同第4,278,746号明細書、特開昭55−88064号公報、同55−88065号公報、同49−105537号公報、同55−51086号公報、同56−80051号公報、同56−88141号公報、同57−45545号公報、同54−112637号公報、同55−74546号公報等参照)、フェニレンジアミン誘導体(米国特許第3,615,404号明細書、特公昭51−10105号公報、同46−3712号公報、同47−25336号公報、特開昭54−53435号公報、同54−110536号公報、同54−119925号公報等参照)、アリールアミン誘導体(米国特許第3,567,450号明細書、同第3,180,703号明細書、同第3,240,597号明細書、同第3,658,520号明細書、同第4,232,103号明細書、同第4,175,961号明細書、同第4,012,376号明細書、特公昭49−35702号公報、同39−27577号公報、特開昭55−144250号公報、同56−119132号公報、同56−22437号公報、西独特許第1,110,518号明細書等参照)、アミノ置換カルコン誘導体(米国特許第3,526,501号明細書等参照)、オキサゾール誘導体(米国特許第3,257,203号明細書等に開示のもの)、スチリルアントラセン誘導体(特開昭56−46234号公報等参照)、フルオレノン誘導体(特開昭54−110837号公報等参照)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462号明細書、特開昭54−59143号公報、同55−52063号公報、同55−52064号公報、同55−46760号公報、同55−85495号公報、同57−11350号公報、同57−148749号公報、特開平2−311591号公報等参照)、スチルベン誘導体(特開昭61−210363号公報、同第61−228451号公報、同61−14642号公報、同61−72255号公報、同62−47646号公報、同62−36674号公報、同62−10652号公報、同62−30255号公報、同60−93455号公報、同60−94462号公報、同60−174749号公報、同60−175052号公報等参照)、シラザン誘導体(米国特許第4,950,950号明細書)、ポリシラン系(特開平2−204996号公報)、アニリン系共重合体(特開平2−282263号公報)、特開平1−211399号公報に開示されている導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)等を挙げることができる。
正孔注入層又は正孔輸送層の材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物(特開昭63−295695号公報等に開示のもの)、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物(米国特許第4,127,412号明細書、特開昭53−27033号公報、同54−58445号公報、同54−149634号公報、同54−64299号公報、同55−79450号公報、同55−144250号公報、同56−119132号公報、同61−295558号公報、同61−98353号公報、同63−295695号公報等参照)、芳香族第三級アミン化合物を用いることもできる。また米国特許第5,061,569号に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有する、例えば4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル、また特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4"−トリス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン等を挙げることができる。また、特許公報第3614405号、3571977号または米国特許4,780,536に記載されているヘキサアザトリフェニレン誘導体等も正孔注入性の材料として好適に用いることができる。さらに、発光層の材料として示した前述の芳香族ジメチリディン系化合物の他、p型Si、p型SiC等の無機化合物も正孔注入層又は正孔輸送層の材料として使用することができる。
この正孔注入層又は正孔輸送層は、上述した材料の1種または2種以上からなる一層で構成されてもよいし、また、正孔注入層又は正孔輸送層とは別種の化合物からなる正孔注入層又は正孔輸送層を積層したものであってもよい。正孔注入層又は正孔輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは、20〜200nmである。
【0067】
(有機半導体層)
有機半導体層は、発光層への正孔注入または電子注入を助ける層であって、10-10 S/cm以上の導電率を有するものが好適である。このような有機半導体層の材料としては、含チオフェンオリゴマーや特開平8−193191号公報に記載の含アリールアミンオリゴマー等の導電性オリゴマー、含アリールアミンデンドリマー等の導電性デンドリマー等を用いることができる。有機半導体層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは、10〜1,000nmである。
【0068】
(電子注入・輸送層(電子輸送帯域))
有機発光層と陰極の間には電子注入・輸送層をさらに積層していても良い。電子注入・輸送層は発光層への電子の注入を助ける層であって、電子移動度が大きい。
有機ELは発光した光が電極(この場合は陰極)により反射するため、直接陽極から取り出される発光と、電極による反射を経由して取り出される発光とが干渉することが知られている。この干渉効果を効率的に利用するため、電子輸送層は数nm〜数μmの膜厚で適宜選ばれるが、特に膜厚が厚いとき、電圧上昇を避けるために、10〜10V/cmの電界印加時に電子移動度が少なくとも10−5cm/Vs以上であることが望ましい。
【0069】
本実施形態の有機EL素子において、電子輸送層は、2.5×10V/cmの電界強度において、電子移動度、1×10−4〜1×10−2cm/Vsの化合物を含有する。
そして、電子輸送層の具体例としては、以下の一般式(18)で表される化合物が挙げられる。
【0070】
【化23】

【0071】
なお、電子輸送層としては、上記一般式(18)で表される化合物として、さらに好ましくは、以下の一般式(19)で表される化合物を用いるとよい。
【0072】
【化24】

【0073】
一般式(19)において、Ar、Arはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数5〜40のアリール基または、置換もしくは無置換の核原子数5〜40のヘテロアリール含有基を示す。ただし、Ar、Arの少なくとも一つが置換もしくは無置換の核原子数5〜40のヘテロアリール含有基である。R〜R10は水素原子または置換基を表す。
【0074】
そして、一般式(18)または(19)で表される化合物において、ヘテロアリール基は、含窒素ヘテロ環、含窒素5員環誘導体、含窒素6員環誘導体であってもよいし、以下の一般式(20)〜(26)の構造を有していてもよい。
【0075】
【化25】

【0076】
【化26】

【0077】
【化27】

【0078】
【化28】

【0079】
【化29】

【0080】
【化30】

【0081】
【化31】

【0082】
一般式(20)〜(26)において、L〜Lはそれぞれ置換または無置換の核炭素数6〜30のアリーレン基を示し、a〜fはそれぞれ0〜3の整数を示す。R11〜R16は水素原子または置換基を示す。kは1〜4の整数である。なお、kが2以上のときは、R11同士は同じであってもよいし、異なっていてもよい。lは1〜3の整数である。なお、lが2以上のときは、R12同士は同じであってもよいし、異なっていてもよい。mは1〜2の整数である。なお、mが2のときは、R13同士は同じであってもよいし、異なっていてもよい。nは1〜5の整数である。なお、nが2以上のときは、R14同士は同じであってもよいし、異なっていてもよい。R11〜R16は隣接する置換基同士で結合し、飽和または不飽和の環を形成してもよい。
【0083】
そして、一般式(18)、(19)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0084】
【化32】

【0085】
【化33】

【0086】
【化34】

【0087】
【化35】

【0088】
有機EL素子の好ましい形態に、電子を輸送する領域又は陰極と有機層の界面領域に、還元性ドーパントを含有する素子がある。ここで、還元性ドーパントとは、電子輸送性化合物を還元ができる物質と定義される。
したがって、一定の還元性を有するものであれば、様々なものが用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物または希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体、希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも一つの物質を好適に使用することができる。
【0089】
また、より具体的に、好ましい還元性ドーパントとしては、Li(仕事関数:2.9eV)、Na(仕事関数:2.36eV)、K(仕事関数:2.28eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)及びCs(仕事関数:1.95eV)からなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ金属や、Ca(仕事関数:2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0〜2.5eV)、及びBa(仕事関数:2.52eV)からなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ土類金属が挙げられる仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。
これらのうち、より好ましい還元性ドーパントは、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ金属であり、さらに好ましくは、RbまたはCsであり、最も好ましいのは、Csである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子注入域への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントとして、これら2種以上のアルカリ金属の組合せも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRbあるいはCsとNaとKとの組み合わせであることが好ましい。Csを組み合わせて含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子注入域への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
【0090】
陰極と有機層の間に絶縁体や半導体で構成される電子注入層をさらに設けても良い。この時、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。
このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも1つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲニド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲニドとしては、例えば、LiO、KO、NaS、NaSe及びNaOが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲニドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF及びBeFといったフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0091】
(陰極)
陰極としては、電子注入・輸送層又は発光層に電子を注入するため、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム・カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム・銀合金、アルミニウム/酸化アルミニウム、アルミニウム・リチウム合金、インジウム、希土類金属などが挙げられる。
この陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
ここで発光層からの発光を陰極から取り出す場合、陰極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。
また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmである。
【0092】
(絶縁層)
有機EL素子は超薄膜に電界を印加するために、リークやショートによる画素欠陥が生じやすい。これを防止するために、一対の電極間に絶縁性の薄膜層を挿入することが好ましい。
絶縁層に用いられる材料としては例えば酸化アルミニウム、弗化リチウム、酸化リチウム、弗化セシウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、弗化マグネシウム、酸化カルシウム、弗化カルシウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化ゲルマニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化バナジウム等が挙げられる。
これらの混合物や積層物を用いてもよい。
【0093】
〔有機EL素子の製造方法〕
次に、有機EL素子の製造方法について説明する。
【0094】
以上例示した材料及び形成方法により陽極、発光層、必要に応じて正孔注入層、及び必要に応じて電子注入層を形成し、さらに陰極を形成することにより有機EL素子を作製することができる。また陰極から陽極へ、前記と逆の順序で有機EL素子を作製することもできる。
【0095】
以下、透光性基板上に陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極が順次設けられた構成の有機EL素子の作製例を記載する。
【0096】
まず適当な透光性基板上に陽極材料からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように蒸着やスパッタリング等の方法により形成して陽極を作製する。
次にこの陽極上に正孔注入層を設ける。
正孔注入層の形成は、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の方法により行うことができる。膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜選択することが好ましい。
【0097】
次に、正孔注入層上に設ける発光層の形成は、所望の有機発光材料を用いて真空蒸着法に代表されるドライプロセスや、スピンコート法、キャスト法等のウエットプロセスにより有機発光材料を薄膜化することにより形成できる。
【0098】
次に、この発光層上に電子注入層を設ける。
真空蒸着法により形成することが例として挙げられる。
【0099】
最後に陰極を積層して有機EL素子を得ることができる。
陰極は金属から構成されるもので、蒸着法、スパッタリングを用いることができる。
しかし下地の有機物層を製膜時の損傷から守るためには真空蒸着法が好ましい。
【0100】
有機EL素子の各層の形成方法は特に限定されない。
従来公知の真空蒸着法、スピンコーティング法等による形成方法を用いることができ、すなわち、有機薄膜層は、真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)あるいは溶媒に解かした溶液のディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法、インクジェット法等の塗布法による公知の方法で形成することができる。
有機EL素子の各有機層の膜厚は特に制限されないが、一般に膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常は数nmから1μmの範囲が好ましい。
なお、有機EL素子に直流電圧を印加する場合、陽極を+、陰極を−の極性にして、5〜40Vの電圧を印加すると発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れず、発光は全く生じない。さらに交流電圧を印加した場合には陽極が+、陰極が−の極性になった時のみ均一な発光が観測される。印加する交流の波形は任意でよい。
【実施例1】
【0101】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0102】
〔化合物の合成〕
まず、実施例の試料の作成に用いる化合物の合成について説明する。
【0103】
(2−(4−ブロモフェニル)−1−フェニル−1H−ベンズイミダゾールの合成)
2−(4−ブロモフェニル)−1−フェニル−1H−ベンズイミダゾールの合成は、下記スキームに従い実施した。
【0104】
【化36】

【0105】
4−ブロモ安息香酸3.0g(15mmol)を1,2−ジクロロエタン30mLに懸濁させ、塩化チオニル2.7g(23mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド3滴を加え、原料の安息香酸が消失するまで、1時間30分間、約50℃で加熱撹拌した。反応終了後、溶媒、過剰の塩化チオニルを留去し、得られた酸クロリドをN−メチルピロリドン30mLに溶かし、N−フェニル−1,2−フェニレンジアミン2.8g(15mmol)を加え、室温で1晩撹拌した。反応終了後、水を加え、析出した固体をろ過し、さらに水で洗浄し、減圧下で乾燥することにより、4−ブロモ−N−(2−フェニルアミノ−フェニル)−ベンズアミド5.2gを得た。
このベンズアミドを減圧下(約20mmHg)で、約300℃で30分間、加熱撹拌した。反応終了後、ジクロロメタンに溶かし、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製することで、2−(4−ブロモフェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール3.5g(収率80%)を得た。
【0106】
(5−ブロモ−1,2−ジフェニル−1H−ベンズイミダゾールの合成)
5−ブロモ−1,2−ジフェニル−1H−ベンズイミダゾールの合成は、下記スキームに従い実施した。
【0107】
【化37】

【0108】
2,5−ジブロモニトロベンゼン10g(35.6mmol)、酢酸ナトリウム8.8g(107mmol) 、アニリン6.6g(71mmol)を窒素雰囲気下160℃で9時間加熱攪拌した。反応溶液を室温まで冷却し、酢酸エチルで薄め、ろ過した。ろ液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し、4−ブロモ−2−ニトロジフェニルアミン9.9g(収率63%)を得た。
4−ブロモ−2−ニトロジフェニルアミン9.9g(33.8mmol)をテトラヒドロフラン75mLに溶解させ、窒素雰囲気下、室温で攪拌しているところに、ハイドロサルファイトナトリウム30g(170mmol)/水100mLの溶液を滴下した。さらにメタノール10mLを加えて、3時間攪拌した。次に、酢酸エチル75mLを加えて、炭酸水素ナトリウム5.7g(67.8mmol)/水60mLの溶液を加えた。さらにベンゾイルクロリド4.8g(34mmol)/酢酸エチル25mLの溶液を滴下し、室温で5時間攪拌した。酢酸エチルで抽出し、水、10%炭酸カリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、5−ブロモ−2−フェニルアミノベンズアニリド5.6g(収率45%)を得た。
5−ブロモ−2−フェニルアミノベンズアニリド5.6g(15mmol)をキシレン60mL中に懸濁させ、p−トルエンスルホン酸1水和物0.88g(4.6mmol)を加え、5時間加熱還流させながら共沸脱水を行った。反応溶液を室温まで冷却し、溶媒を減圧留去した。得られた固体をエタノールで洗浄し、5−ブロモ−1,2−ジフェニル−1H−ベンズイミダゾール2.5g(収率46%)を得た。
【0109】
(1−(4−ブロモフェニル)−2−フェニル−1H−ベンズイミダゾールの合成)
1−(4−ブロモフェニル)−2−フェニル−1H−ベンズイミダゾールの合成は、下記スキームに従い実施した。
【0110】
【化38】

【0111】
2−ブロモニトロベンゼン100g(495mmol)、酢酸ナトリウム130g(1.63mol)、4−ブロモアニリン100g(590mmol)をアルゴン雰囲気下180℃で8時間加熱攪拌した。反応溶液を室温まで冷却し、酢酸エチルで薄め、ろ過した。ろ液を濃縮後、残査をメタノールで洗浄することで、(4−ブロモフェニル)−(2−ニトロフェニル)アミン38gをオレンジ色結晶として得た(収率22%)。
(4−ブロモフェニル)−(2−ニトロフェニル)アミン38g(130mmol)をテトラヒドロフラン300mLに溶解させ、アルゴン雰囲気下、室温で攪拌しているところに、ハイドロサルファイトナトリウム110g(640mmol)/水300mLの溶液を滴下した。5時間攪拌した後、酢酸エチル200mLを加えて、炭酸水素ナトリウム22g(260mmol)/水200mLの溶液を加えた。さらにベンゾイルクロリド25g(180mmol)/酢酸エチル100mLの溶液を滴下し、室温で1時間攪拌した。酢酸エチルで抽出し、10%炭酸カリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、N−[2−(4−ブロモフェニルアミノ)フェニル]ベンズアミド21g(収率45%)を得た。
N−[2−(4−ブロモフェニルアミノ)フェニル]ベンズアミド21g(57mmol)をキシレン300mL中に懸濁させ、p−トルエンスルホン酸1水和物6g(29mmol)を加え、3時間加熱還流させながら共沸脱水を行った。放冷後、反応溶液に酢酸エチル、塩化メチレン、水を加え、不溶物をろ別した。母液から有機層を抽出し、水、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し、1−(4−ブロモフェニル)−2−フェニル−1H−ベンズイミダゾール10gを白色結晶として得た(収率52%)。
【0112】
(2−ブロモ−6−フェニルピリジンの合成)
2−ブロモ−6−フェニルピリジンの合成は、下記スキームに従い実施した。
【0113】
【化39】

【0114】
2−アミノ−6−ブロモピリジン10g(58mmol)、フェニルボロン酸8.5g(70mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.3g(1.2mmol)を1,2−ジメトキシエタン60mLに溶解させ、2.0M炭酸ナトリウム水溶液30mLを加え、アルゴン雰囲気下8時間加熱還流した。反応終了後、水層を除去した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、2−アミノ−6−フェニルピリジン6.9g(収率70%)を得た。
2−アミノ−6−フェニルピリジン6.9g(40mmol)に48%HBr50mLを加え撹拌した。溶液を−20℃まで冷却し、臭素7.7g(48mmol)を滴下した。さらに亜硝酸ナトリウム2.8g(40mmol)を滴下した。室温まで昇温しながら3時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、水層を除去した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、2−ブロモ−6−フェニルピリジン7.5g(収率80%)を得た。
【0115】
(2−ブロモ−4,6−ジフェニルピリミジンの合成)
2−ブロモ−4,6−ジフェニルピリミジンの合成は、下記スキームに従い実施した。
【0116】
【化40】

【0117】
2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン9.5g(58mmol)、フェニルボロン酸17g(140mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム2.7g(2.3mmol)を1,2−ジメトキシエタン120mLに溶解させ、2.0M炭酸ナトリウム水溶液60mLを加え、アルゴン雰囲気下8時間加熱還流した。反応終了後、水層を除去した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、2−アミノ−4,6−ジフェニルピリミジン11g(収率77%)を得た。
2−アミノ−4,6−ジフェニルピリミジン11g(44mmol)に48%HBr50mLを加え撹拌した。溶液を−20℃まで冷却し、臭素8.5g(53mmol)を滴下した。さらに亜硝酸ナトリウム3.1g(44mmol)を滴下した。室温まで昇温しながら3時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、水層を除去した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、2−ブロモ−4,6−ジフェニルピリミジン11g(収率82%)を得た。
【0118】
(4−ブロモフェニル−2,6−ジフェニルピリジンの合成)
4−ブロモフェニル−2,6−ジフェニルピリジンの合成は、下記スキームに従い実施した。
【0119】
【化41】

【0120】
4−ブロモベンズアルデヒド15.0g(81mmol)、アセトフェノン9.7g(81mmol)をエタノール300mLに溶解し、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液16.6mL(81mmol)を加え、室温で9時間攪拌した。反応終了後、析出した結晶を濾過してエタノールで洗浄し、合成中間体(エノン)19.6g(収率84%)を得た。
合成中間体(エノン)9.0g(31mmol)、1−フェナシルピリジニウムブロミド8.7g(31mmol)、酢酸アンモニウム19.3g(250mmol)を酢酸27mLに懸濁し、12時間加熱環流した。反応溶液を室温まで冷却し、トルエン、水を加え、二層分離した後、有機層を10%水酸化ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機溶媒を減圧留去後、エタノール27mLを加え、析出した結晶を濾過し、エタノールで洗浄し、4−ブロモフェニル−2,6−ジフェニルピリジン10.6g(収率88%)を得た。
【0121】
(4−(4−ブロモフェニル)−2,6−ジフェニルピリミジンの合成)
4−(4−ブロモフェニル)−2,6−ジフェニルピリミジンの合成は、下記スキームに従い実施した。
【0122】
【化42】

【0123】
4−ブロモアセトフェノン19.9g(100mmol)とベンズアルデヒド10.6g(100mmol)とを入れ、アルゴン置換を行った。次いで、エタノール200mLと1Nナトリウムメトキシド/メタノール溶液10mLを添加し、室温で5時間攪拌した。その後、70℃のオイルバスにて昇温しエタノールを還流させながらさらに4時間反応した。次いで、ベンズアミジン・塩酸塩9.40g(60mmol)、水酸化ナトリウム8.00g(200mmol)を添加して、70℃のオイルバスにて昇温し5時間反応した。反応終了後、析出物をろ別し、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、4−(4−ブロモフェニル)−2,6−ジフェニルピリミジン13.6g(収率35%)を得た。
【0124】
(2−(4−ブロモフェニル)−イミダゾ[1,2−a]ピリジンの合成)
2−(4−ブロモフェニル)−イミダゾ[1,2−a]ピリジンの合成は、下記スキームに従い実施した。
【0125】
【化43】

【0126】
2,4’−ジブロモアセトフェノン15g(54mmol)、2−アミノピリジン5.2g(55mmol)をエタノール100mLに溶解し、炭酸水素ナトリウム7.0gを加え、6時間加熱還流した。反応終了後、生成した結晶をろ別し、水、エタノールで洗浄し、2−(4−ブロモフェニル)−イミダゾ[1,2−a]ピリジン12.5g(収率85%)を得た。
【0127】
(12−(2−ナフチル)クリセン−6−ボロン酸の合成)
12−(2−ナフチル)クリセン−6−ボロン酸の合成は、下記スキームに従い実施した。
【0128】
【化44】

【0129】
クリセン22.8g(100mmol)のDMF1L溶液にN−ブロモスクシンイミド17.8g(100mmol)のDMF100mL溶液を加え、室温で20時間攪拌した。反応終了後、水2Lに反応溶液を加え、析出した結晶を濾取した。得られた個体を水、メタノール、ヘキサンで順次洗浄し、減圧下乾燥させ、6−ブロモクリセン28.5g(収率93%)を得た。
アルゴン雰囲気下、6−ブロモクリセン6.14g(20.0mmol)、2−ナフタレンボロン酸4.10g(24.0mmol)、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)0.462g(0.400mmol)にDME80mL、2M炭酸ナトリウム水溶液40mLを加え、16時間加熱還流した。
反応終了後、析出晶を濾取し、得られた結晶を水、メタノール、ヘキサンで洗浄した。得られた個体をトルエンで再結晶し、6−(2−ナフチル)クリセン4.25g(収率60%)を得た。
6−ブロモクリセン4.25g(12.0mmol)のDMF100mL溶液にN−ブロモスクシンイミド2.56g(14.4mmol)のDMF10mL溶液を加え、室温で20時間攪拌した。反応終了後、水200mLに反応溶液を加え、析出した結晶を濾取した。得られた個体を水、メタノール、ヘキサンで順次洗浄し、減圧下乾燥させ、6−ブロモ−12−(2−ナフチル)クリセン4.68g(収率90%)を得た。
6−ブロモ−12−(2−ナフチル)クリセン4.68g(10.8mmol)に無水THF100mLを加え、−10℃で撹拌中に、1.6M n−ブチルリチウムのヘキサン溶液7.4mL(11.9mmol)を加えた。反応溶液を0℃まで加温しながら2時間攪拌した。反応溶液を再び−78℃まで冷却し、ホウ酸トリイソプロピル6.09g(32.4mmol)を滴下した。反応溶液を室温で17時間攪拌した。水100mLを加え、1時間攪拌後、析出晶を濾取した。得られた固体をトルエンで洗浄し、12−(2−ナフチル)クリセン−6−ボロン酸2.56g(収率60%)を得た。
【0130】
(化合物1の合成)
化合物1の合成は、下記スキームに従い実施した。
【0131】
【化45】

【0132】
アルゴン雰囲気下、2−(4−ブロモフェニル)−1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール1.75g(5.0mmol)、12−(2−ナフチル)クリセン−6−ボロン酸2.38g(6.00mmol)、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)0.115g(0.100mmol)にDME20mL、2M炭酸ナトリウム水溶液10mLを加え、16時間加熱還流した。反応終了後、析出晶を濾取し、得られた結晶を水、メタノール、ヘキサンで洗浄した。得られた個体をトルエンで再結晶し、白色結晶2.49gを得た。このものは、マススペクトル分析の結果、目的物であり、分子量622.24に対し、m/e=622であった。
【0133】
(化合物2の合成)
下記スキームに従い、化合物1と同様の方法で合成した。このものは、マススペクトル分析の結果、目的物であり、分子量622.24に対し、m/e=622であった。
【0134】
【化46】

【0135】
(化合物3の合成)
下記スキームに従い、化合物1と同様の方法で合成した。このものは、マススペクトル分析の結果、目的物であり、分子量622.24に対し、m/e=622であった。
【0136】
【化47】


【0137】
(化合物4の合成)
下記スキームに従い、化合物1と同様の方法で合成した。このものは、マススペクトル分析の結果、目的物であり、分子量507.20に対し、m/e=507であった。
【0138】
【化48】

【0139】
(化合物5の合成)
下記スキームに従い、化合物1と同様の方法で合成した。このものは、マススペクトル分析の結果、目的物であり、分子量584.23に対し、m/e=584であった。
【0140】
【化49】

【0141】
(化合物6の合成)
下記スキームに従い、化合物1と同様の方法で合成した。このものは、マススペクトル分析の結果、目的物であり、分子量659.26に対し、m/e=659であった。
【0142】
【化50】

【0143】
(化合物7の合成)
下記スキームに従い、化合物1と同様の方法で合成した。このものは、マススペクトル分析の結果、目的物であり、分子量660.26に対し、m/e=660であった。
【0144】
【化51】

【0145】
(化合物8の合成)
下記スキームに従い、化合物1と同様の方法で合成した。このものは、マススペクトル分析の結果、目的物であり、分子量546.21に対し、m/e=546であった。
【0146】
【化52】

【0147】
〔試料の構成〕
次に、試料の構成について説明する。
【0148】
(実施例1)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極(陽極)付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして膜厚75nmの下記化合物A−1を成膜した。
さらに、このA−1膜上に膜厚40nmで下記化合物H−1と下記化合物D−1を40:2の膜厚比で成膜し青色系発光層とした。化合物H−1はホスト、D−1はドーパントとして機能する。
この膜上に電子輸送層として膜厚20nmで本発明の化合物1を蒸着により成膜した。この後、LiFを膜厚1nmで成膜した。このLiF膜上に金属Alを150nm蒸着させ金属陰極を形成し有機EL素子を形成した。
【0149】
【化53】

【0150】
(実施例2)
実施例1において、化合物1の代わりに化合物2を用いて同様の方法で有機EL素子を作成した。
【0151】
(実施例3)
実施例1において、化合物1の代わりに化合物3を用いて同様の方法で有機EL素子を作成した。
【0152】
(実施例4)
実施例1において、化合物1の代わりに化合物4を用いて同様の方法で有機EL素子を作成した。
【0153】
(実施例5)
実施例1において、化合物1の代わりに化合物5を用いて同様の方法で有機EL素子を作成した。
【0154】
(実施例6)
実施例1において、化合物1の代わりに化合物6を用いて同様の方法で有機EL素子を作成した。
【0155】
(実施例7)
実施例1において、化合物1の代わりに化合物7を用いて同様の方法で有機EL素子を作成した。
【0156】
(実施例8)
実施例1において、化合物1の代わりに化合物8を用いて同様の方法で有機EL素子を作成した。
【0157】
(比較例1)
実施例1において、化合物1の代わりに下記構造の化合物Aを用いて同様の方法で有機EL素子を作成した。
【0158】
【化54】

【0159】
(比較例2)
実施例1において、化合物1の代わりに下記構造の化合物Bを用いて同様の方法で有機EL素子を作成した。
【0160】
【化55】

【0161】
〔評価方法〕
次に、評価方法について説明する。
【0162】
上述した実施例1〜8、比較例1〜2の有機EL素子について、電流密度10mA/cm駆動時の素子性能である駆動電圧、外部量子収率を測定した。これらの結果を、表1に示す。
【0163】
【表1】

【0164】
〔評価結果〕
表1に示すように、駆動電圧について、実施例1〜8は、比較例1〜2よりも小さくなることが確認できた。
また、外部量子収率について、実施例1〜8は、比較例1〜2よりも大きくなることが確認できた。
つまり、本発明の構成の電子輸送層を用いることにより、発光層として青色発光波長の短波化を図れるエネルギーギャップが大きいものを適用した場合であっても、この発光層に対して大きな電圧を必要とすることなく電子を適切に注入することが可能な有機EL素子を得ることができることが確認できた。
【0165】
なお、本発明は、上記の説明に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変更は本発明に含まれる。
例えば次のような変更も本発明の好適な変形例である。
本発明では、前記発光層が電荷注入補助材を含有していることが好ましい。
上述のようなエネルギーギャップが広いホスト材料を用いて蛍光発光層を形成した場合、ホスト材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と正孔注入・輸送層等のIpとの差が大きくなり、蛍光発光層への正孔の注入が困難となり、十分な輝度を得るための駆動電圧が上昇するおそれがある。
このような場合、蛍光発光層に、正孔注入・輸送性の電荷注入補助剤を含有させることで、蛍光発光層への正孔注入を容易にし、駆動電圧を低下させることができる。
電荷注入補助剤としては、例えば、一般的な正孔注入・輸送材料等が利用できる。
具体例としては、トリアゾール誘導体(米国特許3,112,197号明細書等参照)、オキサジアゾール誘導体(米国特許3,189,447号明細書等参照)、イミダゾール誘導体(特公昭37−16096号公報等参照)、ポリアリールアルカン誘導体(米国特許3,615,402号明細書、同第3,820,989号明細書、同第3,542,544号明細書、特公昭45−555号公報、同51−10983号公報、特開昭51−93224号公報、同55−17105号公報、同56−4148号公報、同55−108667号公報、同55−156953号公報、同 56−36656号公報等参照)、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体(米国特許第3,180,729号明細書、同第4,278,746号明細書、特開昭55−88064号公報、同55−88065号公報、同49−105537号公報、同55−51086号公報、同56−80051号公報、同56−88141号公報、同57−45545号公報、同54−112637号公報、同55−74546号公報等参照)、フェニレンジアミン誘導体(米国特許第3,615,404号明細書、特公昭51−10105号公報、同46−3712号公報、同47−25336号公報、特開昭54−53435号公報、同54−110536号公報、同54−119925号公報等参照)、アリールアミン誘導体(米国特許第3,567,450号明細書、同第3,180,703号明細書、同第3,240,597号明細書、同第3,658,520号明細書、同第4,232,103号明細書、同第4,175,961号明細書、同第4,012,376号明細書、特公昭49−35702号公報、同39−27577号公報、特開昭55−144250号公報、同56−119132号公報、同56−22437号公報、西独特許第1,110,518号明細書等参照)、アミノ置換カルコン誘導体(米国特許第3,526,501号明細書等参照)、オキサゾール誘導体(米国特許第3,257,203号明細書等に開示のもの)、スチリルアントラセン誘導体(特開昭56−46234号公報等参照)、フルオレノン誘導体(特開昭54−110837号公報等参照)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462号明細書、特開昭54−59143号公報、同55−52063号公報、同55−52064号公報、同55−46760号公報、同55−85495号公報、同57−11350号公報、同57−148749号公報、特開平2−311591号公報等参照)、スチルベン誘導体(特開昭61−210363号公報、同第61−228451号公報、同61−14642号公報、同61−72255号公報、同62−47646号公報、同62−36674号公報、同62−10652号公報、同62−30255号公報、同60−93455号公報、同60−94462号公報、同60−174749号公報、同60−175052号公報等参照)、シラザン誘導体(米国特許第4,950,950号明細書)、ポリシラン系(特開平2−204996号公報)、アニリン系共重合体(特開平2−282263号公報)、特開平1−211399号公報に開示されている導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)等を挙げることができる。
【0166】
正孔注入性の材料としては上記のものを挙げることができるが、ポルフィリン化合物(特開昭63−295695号公報等に開示のもの)、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物(米国特許第4,127,412号明細書、特開昭53−27033号公報、同54−58445号公報、同54−149634号公報、同54−64299号公報、同55−79450号公報、同55−144250号公報、同56−119132号公報、同61−295558号公報、同61−98353号公報、同63−295695号公報等参照)、特に芳香族第三級アミン化合物が好ましい。
また、米国特許第5,061,569号に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有する、例えば、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(以下NPDと略記する)、また特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(以下MTDATAと略記する)等を挙げることができる。
また、p型Si、p型SiC等の無機化合物も正孔注入材料として使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明は、表示装置などに用いるクリセン誘導体及び有機EL素子に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴としたクリセン誘導体。
【化1】


一般式(1)において、Chは置換もしくは無置換のクリセンを示し、Ar、Arはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数5〜40のアリール基または、置換もしくは無置換の核原子数5〜40のヘテロアリール含有基を示す。ただし、Ar、Arの少なくとも一つが置換もしくは無置換の核原子数5〜40のヘテロアリール含有基である。
【請求項2】
下記一般式(2)で表されることを特徴としたクリセン誘導体。
【化2】


一般式(2)において、Ar、Arはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数5〜40のアリール基または、置換もしくは無置換の核原子数5〜40のヘテロアリール含有基を示す。ただし、Ar、Arの少なくとも一つが置換もしくは無置換の核原子数5〜40のヘテロアリール含有基である。R〜R10は水素原子または置換基を表す。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のクリセン誘導体であって、
ヘテロアリール基が含窒素ヘテロ環である
ことを特徴としたクリセン誘導体。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のクリセン誘導体であって、
ヘテロアリール基が含窒素5員環誘導体である
ことを特徴としたクリセン誘導体。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のクリセン誘導体であって、
ヘテロアリール基が含窒素6員環誘導体である
ことを特徴としたクリセン誘導体。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のクリセン誘導体であって、
ヘテロアリール基が下記一般式(3)〜(9)の構造である
ことを特徴としたクリセン誘導体。
【化3】


【化4】


【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


【化9】


一般式(3)〜(9)において、L〜Lはそれぞれ置換または無置換の核炭素数6〜30のアリーレン基を示し、a〜fはそれぞれ0〜3の整数を示す。R11〜R16は水素原子または置換基を示す。kは1〜4の整数である。なお、kが2以上のときは、R11同士は同じであってもよいし、異なっていてもよい。lは1〜3の整数である。なお、lが2以上のときは、R12同士は同じであってもよいし、異なっていてもよい。mは1〜2の整数である。なお、mが2のときは、R13同士は同じであってもよいし、異なっていてもよい。nは1〜5の整数である。なお、nが2以上のときは、R14同士は同じであってもよいし、異なっていてもよい。R11〜R16は隣接する置換基同士で結合し、飽和または不飽和の環を形成してもよい。
【請求項7】
陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機EL素子において、
該有機薄膜層の少なくとも1層が、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のクリセン誘導体を単独もしくは混合物の成分として含有する
ことを特徴とした有機EL素子。
【請求項8】
請求項7に記載の有機EL素子であって、
前記有機薄膜層が電子注入層又は電子輸送層を有し、該電子注入層又は該電子輸送層が、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のクリセン誘導体を単独もしくは混合物の成分として含有する
ことを特徴とした有機EL素子。
【請求項9】
請求項7に記載の有機EL素子であって、
前記発光層が請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のクリセン誘導体を単独又は混合物の成分として含有する
ことを特徴とした有機EL素子。
【請求項10】
請求項8に記載の有機EL素子であって、
前記クリセン誘導体を含有する電子注入層又は電子輸送層が、還元性ドーパントを含有する
ことを特徴とした有機EL素子。
【請求項11】
請求項10に記載の有機EL素子であって、
前記還元性ドーパントが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体及び希土類金属の有機錯体からなる群から選択される1種又は2種以上の物質である
ことを特徴とした有機EL素子。
【請求項12】
請求項7ないし請求項11のいずれかに記載の有機EL素子であって、
前記発光層は、以下の一般式(10)で表されるホストと、ドーパントとからなる
ことを特徴とした有機EL素子。
【化10】


一般式(10)において、R42〜R53は、水素原子または置換基を表す。ただし、R42〜R53のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換もしくは無置換の核炭素数6〜60のアリール基を表す。

【公開番号】特開2010−241687(P2010−241687A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179118(P2007−179118)
【出願日】平成19年7月7日(2007.7.7)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】