説明

クリッピングおよび修正されたコンステレーションを用いるOFDMにおけるピーク低減

送信信号を発生させるために使用する誤り信号を入力信号に基づいて発生させる装置は、入力信号の歪み部分を得るために入力信号を歪ませる手段(103)と、歪み信号を得るために重み係数を用いて歪み部分に重み付けをする手段(105、201)と、誤り信号を得るために入力信号と重み付けをされた信号とを合成するコンバイナ(107)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気通信の分野に関し、特にマルチキャリア送信技術におけるピーク対平均(peak to average)の低減の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチキャリア送信は、広帯域幅にわたって送信することができ、高速で大容量のスループット性能を実現することができるため、例えば第4世代のモバイル通信システム(4G)において有望な変調方式である。マルチキャリア変調方式に関する問題の1つは、送信される時間領域信号における複数の周波数信号成分の重畳(super−position)によって生じるピーク対平均電力比(PAPR)の増加である。マルチキャリア変調スキームにおける高い信号ピークに関する問題は、高いPAPRがアナログデジタル変換器においてクリッピングまたは分解能不良を引き起こすとともに高出力増幅器(HPA)において非線形な歪みを引き起こし、それにより、隣接する信号を乱す重大な帯域外(OOB)放射が生じるという事実によって生じる。一般に、PAPRが高いと受信機における信号検出が難しくなり、したがって、ビット誤り率が増加する。
【0003】
マルチキャリア送信技術の中で、直交周波数分割多重化(OFDM)は頻繁に使用されている。送信機において、OFDM信号は、送信される複数のスペクトル値を、送信のために使用されるサブキャリアに対して割り当てることにより得られる。この場合、送信信号は、スペクトル値に対して適用される逆フーリエ変換によって得られる。スペクトル値は、情報値を複数の情報値を含むグループに分け、この情報値のグループを信号空間領域内の信号空間コンステレーションポイントへマッピングすることにより得られる。したがって、情報値のグループは、実数部分と虚数部分とを有するある信号空間コンステレーションポイントによって表わされる。マッピング演算は、例えば直交振幅変調(QAM)などの変調技術を使用して情報ビットのグループを変調し、変調技術に関連付けられた信号空間コンステレーションポイントの集合内のある信号空間コンステレーションポイントに対して、情報値のグループを割り当てることに相当する。
【0004】
OFDMの場合、高い信号ピークは、サブキャリアを重ね合わせる(superposing)ことによって生じる。高出力増幅器は、飽和状態に近い、または飽和状態を超えた全ての信号部分分を大きく歪ませる。歪みは、キャリア間干渉(ICI)および前述したOOB放射を引き起こす。ICIは、送信された信号を乱すとともにビット誤り率(BER)を悪化させ、OOB放射は、隣接する周波数帯域における信号を乱すため、避けなければならない。
【0005】
非線形な歪みの悪影響を緩和するために、既知のピーク低減技術が使用されている。選択的マッピング(SLM)、部分送信シーケンス(PTS)、および微分(derivative)のような歪みを用いない技術は、ピークが低いシンボルだけを送信することにより良好なピーク低減を実現することができる。SLM技術は、非特許文献1に開示されており、PTS技術は、非特許文献2に開示されている。
【0006】
サイド情報の送信は、歪みを用いない手法に関連する1つの問題であり、そのため、データ構造を変更しなければならない。既知の歪みを用いない手法は、ピークが最も低いシンボルを見つけるために送信機において多大な労力を要するとともに、信号を復元するために全ての受信機において更なる労力を必要とする。
【0007】
PAPRを減少させるために、非特許文献3に開示されているコーディング技術を使用することができる。コーディング技術は、そのコードワードが低いPAPRを有するコードを使用する。しかしながら、これは一般に、送信機の設計における自由度を制限する。また、チャネルコードが低PAPR用に設計されている場合には、チャネルおよび送信方式にコードを適合させてシステム性能を最適化するために同じものをそれ以上使用することができない。更に、OFDMのようなマルチキャリア送信技術の場合においてサブキャリアの数が多い場合には、大きなPAPR低減を実現するために、現在知られているピーク低減コードのコードレートは低くなければならない。
【0008】
非特許文献4に開示されている適応サブキャリア選択(ASuS)と任意に組み合わせて、非特許文献5および非特許文献6に開示されているピーク低減キャリアまたはトーン(PRCまたはPRT)を使用すると、データキャリアにおいてICIをもたらすことなくPAPRを減少させるために、ある程度の自由度が得られる。しかしながら、PAPRの強力な低減のためには、データ転送速度の著しい損失に対応して多くのピーク低減キャリアが必要となる。ASuSは、ピーク低減のために最も弱いサブキャリアを使用しており、したがってチャネル状態情報(CSI)に関して受信機からフィードバック情報を必要とする。しかしながら、到達する受信機が多くなればなるほど、全ての受信機にとって弱いサブキャリアを見つけられる可能性が少なくなる。
【0009】
クリッピング技術は、その多くが基本的に任意の変調方式において適用できるため、高い自由度を提供する。非特許文献7に開示されているような時間領域におけるクリッピングおよびフィルタリングは、低い実施コストでピーク低減を行なうのに対し、非特許文献8に開示されている反復的なクリッピングおよび周波数フィルタリングは、クリッピングによりもたらされる帯域外放射の部分を完全に除去することができる。しかしながら、ほとんどのクリッピング技術はICIをもたらす。この望ましくない影響は、低い帯域外放射を実現するためにクリッピング比を小さく選択すると大きくなる。
【0010】
フィルタリング演算、およびフィルタリングと組み合わせるピーク再生は、非特許文献9に開示されているようなソフトクリッピング、非特許文献10に開示されているようなピークウィンドウ機能、または、非特許文献11に開示されているようなピーク解除技術を使用する場合には避けることができる。しかしながら、これは、更なるICIを犠牲にして行なわれる。
【0011】
ICIの改善は、非特許文献12に開示されているように、信号を予め歪ませることにより送信機で行なうことができる。これは増幅器の非線形性を補償する。しかしながら、増幅器の飽和状態を超える信号ピークは依然として歪まされ、それにより、追加のピーク低減技術を使用しなければならない。補足的に、非特許文献13に開示されているように、歪まされて送信された信号をモデリングするとともに、受信機においてベイジアン推定器により制限されたダイナミックレンジを考慮することができる。
【0012】
1つの更なる可能性として、非特許文献14に開示されているコンパンディング技術を使用することができる。これらの技術は、送信機で信号を圧縮する送信処理部分と、低い複雑度で信号を当初のダイナミックレンジへと拡張させる受信処理部分とから構成されている。受信機の設計において更に重大な影響を与える他の技術は、非特許文献15に開示されている決定支援再構成(decision−aided reconstruction (DAR))、または非特許文献16に開示されている反復的な最尤検出である。しかしながら、これらの技術は、受信機においてかなり複雑な計算を必要とする。
【0013】
非特許文献17に開示されているアクティブコンステレーション拡張(ACE)技術は、受信機において何らの変更を伴うことなくICIを考慮する。信号空間(信号空間領域)内の外側のコンステレーションポイントは、PAPRを最小限に抑えるように拡張される。信号ピークのクリッピング後は、信号空間における望ましくない拡張方向がゼロに設定され、そのため、決定ボーダー(decision boarders)に決して近づかない。しかしながら、非常に低いOOB放射を達成することができず、これは、主に小さなコンステレーションサイズにおいて、例えば四相位相変調(QPSK)においては有効である。
【0014】
歪みを用いない技術の分野に属する、非特許文献18に開示されているトーンインジェクション技術は、信号コンステレーションを拡張するACEに代わるものであるが、高次のコンステレーションに更に適している。トーンインジェクションにより高次の信号コンステレーションが得られ、例えば16QAM振幅変調シンボルを144QAMシンボルへ変換することができる。これによりICIが回避されるが、平均シンボルエネルギーが増加し、そのため、必要な信号対雑音比(SNR)が増加する。
【0015】
以下、一例として、マルチキャリア変調方式の一例としての機能を果たす、複数のサブキャリアによる送信のためのOFDM変調について考える。dn(i)は、サブキャリアnにより時刻iに送信される複素データシンボルである。OFDM変調後に送信される信号
【数1】

は、N個のサブキャリアdn(i)から構成されている。ここで、
【数2】

は送信フィルタである。例えば、g(t)に関して二乗余弦インパルス形状(raised cosine impulse shapes)を選択することができる。
【0016】
例えば、HPAは、増幅特性
【数3】

を有する、非特許文献19に開示されているRappの固体素子増幅器(SSPA)モデルによって表わすことができる。ここで、P=10、
【数4】

は増幅された信号、Vは増幅係数と見なすことができる。また、
【数5】

は増幅器飽和電力である。
【0017】
ピークの非線形な歪みを低減するため、増幅器は出力バックオフ(OBO)で駆動する。OBOは、増幅器飽和電力と増幅器の出力信号の電力との比として定義される。
【数6】

【0018】
他の更なる手段を伴うことなく、OFDM信号は、時々、振幅器飽和状態を超える場合がある。OFDM信号s(t)のダイナミックレンジを低減するため、クリッピング技術を使用してピーク振幅をカットすることができる。
【0019】
図10は、PAPRを減少させるためにクリッピング技術を組み込んだOFDM送信機のブロック図である。
【0020】
図10の送信機は、非特許文献20に開示されているような非再帰的クリッピング(実線)を示している。また、送信機は、再帰的クリッピングを破線で示している。
【0021】
図10に示されている送信機は、ゼロパディングブロック1501の入力部に接続された出力部を有するデータシンボルソース1500を備えている。ゼロパディングブロック1501は、逆高速フーリエ変換器(IFFT)1503に接続している。IFFTの出力部は、高速フーリエ変換器(FFT)1507に接続した出力部を有するクリッピングブロック1505に接続している。FFT1507の出力部は、フィルタ1509に接続されており、フィルタ1509は、OFDM変調器1511に接続された出力部を有している。
【0022】
再帰的クリッピングを使用すると、フィルタ1509によって提供されるフィルタ処理された信号は、ゼロパディングブロック1501にフィードバックされる。
【0023】
サブキャリア
【数7】

におけるデータシンボルは、最初に、IFFTブロック1503を使用して時間領域信号に変換される。FFTの前のゼロパディングは、時間領域におけるオーバーサンプリングをもたらす。次に、信号がクリッピングレベルxmaxでクリッピングされる。クリッピング比CRは次のように定義される。
【数8】

【0024】
クリッピングされた信号は、元の周波数領域に変換される。FFT出力の最初のN個の要素は、振幅制限された時間信号に対応する新たなデータシンボルであるが、出力ベクトルの他の部分は、チャネルにおいてOOB放射として現れる相互変調積(intermodulation products)だけを含んでいる。これらの要素は、システムのフィルタリングブロック1509によって抑制される。
【0025】
クリッピングの欠点は、当初のデータシンボルと新たなデータベクトルとの間のエラーである。この違いは、前述したICIである。
【0026】
前述したクリッピングおよびシンボル毎のフィルタリングとは対照的に、再帰的クリッピングに関連付けられる反復的なクリッピングおよび周波数領域フィルタリングは、図10に破線で示されている。クリッピングされた信号の振幅はピーク低減されるが、フィルタリングは全ての高周波を除去し、ピークが再生する。このため、クリッピングおよびフィルタリングを繰り返すことが有利かもしれない。したがって、フィルタ処理された信号は、図10の破線で示されているようにフィードバックされる。任意の回数の反復が可能であるが、システムパラメータに応じて、殆どの場合、多くてもクリッピングおよびフィルタリングの1回の繰り返しが有利となることが、非特許文献21において明らかにされている。
【0027】
前述した技術に代わる技術は、先に述べたACEである。ACEの背後にある基本的な考え方は、一連の制約を適用しつつシンボル空間(信号空間領域)内でコンステレーションポイントを拡張するものとして要約することができる。制約により、シンボルが複素信号空間において決定ボーダーに近づくことを妨げる。
【0028】
図11は、ACE技術を使用する送信機のブロック図である。
【0029】
ACE送信機は、出力部1601を有するIFFT1600に接続されたデータシンボルソース1500を備えている。IFFT1600は、逆フーリエ変換およびオーバーサンプリングを行なうとともに、図10におけるゼロパディングブロック1501およびIFFTブロック1503と同じ機能を有している。出力部1601は、スイッチ1603を介して、減算器1605と、クリッピングブロック1607と、ACE制約ブロック1609と、SGPブロック1611(SGP=スマートグラディエントプロジェクト)と、加算器1613に接続されている。
【0030】
減算器1605の出力部は、ACE制約ブロック1609に接続した出力部を有するFFT1615に接続されている。FFT1615は、図10におけるブロック1507および1509の演算に相当するフーリエ変換およびフィルタリングを行なう。ACE制約ブロック1609は、IFFT1617に接続した出力部を有しており、IFFT1617は、乗算器1619に接続した出力部を有している。IFFT1617は、逆フーリエ変換およびオーバーサンプリングを行なう。乗算器1619は、SGP1611の出力部が接続した更なる入力部を有している。SGP1611は、IFFTの出力部が接続した更なる入力部を有している。乗算器1619の出力部は、加算器1613の入力部に接続されている。加算器1613の出力部は、スイッチ1621を介して、インパルス整形ブロック1623に接続されている。
【0031】
図11に示されているACE送信機は、スイッチ1603および1621が適切に切り換えられる際に、加算器1613の出力部と減算器1615の入力部とを接続するフィードバックループ1625を更に備えている。
【0032】
前述した他のクリッピングと同様に、IFFT1600により提供されるオーバーサンプリングされた時間信号は、クリッピングブロック1607によりクリッピングされる。特定の拡張方向だけが許容されるため、FFT1615によりクリッピングされた信号部分分が周波数領域に変換される。この場合、ACE制約ブロック1609において不要な拡張方向がゼロに設定される。元の時間領域に変換された後、IFFT1617によって提供される拡張ベクトルのμフォールト(μ−fault)は、元のクリッピングされていない信号に対して加えられる。
【0033】
重み係数μは、前述したスマートグラディエントプロジェクトアルゴリズムにより、次善(sub−optimum)ではあるが、計算効率の良い方法で決定され、それにより、ピーク低減を実現することができる。ピークを更に低減するため、処理を数回繰り返すことができる。実際には、1回または2回繰り返すことが妥当であると思われる。
【0034】
図12Aは、再帰的クリッピングの後におけるCR=3.1dBでの信号空間コンステレーションを示している。再帰的クリッピングがほぼ白色ガウスノイズ状の信号をサブキャリアに対して重ね合わせ(superposes)、ACEが干渉を整形し、それにより、信号点が決定ボーダーに近づかない。図12Bは、CR=5.0dBにおけるQPSK信号に関するACE後の信号空間コンステレーションを示している。図12Bに示されているように、許容しない拡張方向はゼロに設定されている。
【0035】
信号点が決定ボーダーに近づく場合には、拡張方向が許容されない。図4Aを参照すると、上部のサブキャリアはピーク低減に十分に寄与している。左上のサブキャリアだけが、虚数部分に寄与している。これは、拡張ベクトルの実数部分がゼロに設定されているからである。また、右下のサブキャリアだけが実数部分に寄与している。なぜなら、拡張ベクトルの虚数部分がゼロに設定されているからである。
【0036】
例えばクリッピングレベルが非常に低い場合には、数個の信号点だけが直角(right−angled)になったエリア内に残存し、それにより、僅かな信号点だけしかPAPR低減に寄与しない。しかしながら、許容されたエリア内に残存する信号点が少なければ少ないほど、実現できるPAPR低減は不十分となり得る。クリッピングレベルが高くなると、より多くの信号点が許容エリア内に入るが、この場合にはOOB放射が増加し、それにより、隣接する周波数帯域の他の送信機が乱される。
【0037】
【非特許文献1】S.H.Muller,R.W.Bauml,R.F.H.Fischer,J.B.Huber、「OFDM with Reduced Peak−to−Average Power Ratio by Multiple Signal Representation」,Annuals of Telecommunications、第52巻、No.1−2、1997年2月、p.1−9
【非特許文献2】S.H.Muller、J.B.Huber、「A Comparison of Peak Power Reduction schemes for OFDM」,Proc.Of Globecom、1997年11月、p.1−5
【非特許文献3】A.E.Jones,T.A.Wilkinson,S.K.Barton、「Block Coding Scheme for Reduction of Peak to Mean Envelope Power Ratio of Multicarrier Transmission Scheme」,El.Lett、第30巻、No.25、1994年12月、p.2098−2099
【非特許文献4】H.Schmidt、K.−D.Kammeyer、「Reducing the Peak to Average Power Ratio of Multicarrier Signals by Adaptive Subcarrier Selection」,Int.Conference on Universal Personal Communications、1998年1月、p.933−937
【非特許文献5】E.Lawrey、C.J.Kikkert、「Peak to Average Power Ration Reduction of OFDM Signals Using Peak Reduction Carriers」,Int.Symposium on signal Processing and its applications、1999年8月、p.737−740
【非特許文献6】J.Tellado、J.M.Cioffi、「Peak Power Reduction for Multicarrier Transmission」,Mini−Globecom、1999年
【非特許文献7】L.D.Kabulepa,T.Pionteck,A.Garcis,M.Glesner、「Design Space Exploration for Clipping and Filtering PAPR Reduction Techniques in OFDM Systems」,Proc.Int.OFDM−Workshop、第1巻、2003年10月、p.108−112
【非特許文献8】J.Armstrong、「Peak−to−Average power reduction for OFDM by repeated clipping and frequency domain filtering」,El.Lett,第38巻、No.5、2003年2月、p.246−247
【非特許文献9】H.−G.Ryu,B.−I Jin,I.−B.Kim、「PAPR Reduction Using Soft Clipping and ACI Rejection in OFDM Systems」,IEEE Trans.On Communications、第48巻、No.1、2002年2月、p.17−22
【非特許文献10】M.Pauli、H.− P.Kuchenbecker、「On the Reduction of the Out−of−Band Radiation of OFDM−Signals」,Int.Conference on Communications、第3巻、1998年、p.1304−1308
【非特許文献11】M.Lampe、H.Rohling、「Reducing out−of−band emissions due to nonlinearities in OFDM systems」,Vehicular Technology Conference,第3巻、1999年5月、p.2255−2259
【非特許文献12】A.Katz、「Linearization:Reducing Distortion in Power Amplifiers」,IEEE Microwave Magazine、第2巻、No.4、2001年12月、p.37−49
【非特許文献13】P.Zillmann,H.Nuszkowski,G.P.Fettweis、「A Novel Receive Algorithm for Clipped OFDM Signals」,Proc.Int.Symp.on Wireless Personal Multimedia Communications,第3巻、2003年10月、p.385−389
【非特許文献14】X,Wang,T.T.Tjhung,C.S.Ng、「Reduction of Peak−to Average Power Ratio of OFDM System Using a Companding Technique」,IEEE Trans.On Broadcasting、第45巻、No.3、1999年9月、p.303−307
【非特許文献15】D.Kim、G.L.Stuber、「Clipping Noise Mitigation for OFDM by Decision−Aided Reconstruction」,IEEE Communications Letters、第3巻、No.1、1999年1月、p.4−6
【非特許文献16】J.Tellado,L.M.C.Hoo,J.M.Cioffi、「Maximum−Likelihood Detection of Nonlinearly Distorted Multicarrier Symbols by Iterative Decoding」,IEEE Trans.On Communications、第51巻、No.2、2003年2月、p.218−228
【非特許文献17】B.S.Krongold、D.L.Jones、「PAR reduction in OFDM via Active Constellation Extension」,IEEE Trans.On Broadcasting、第49巻、No.3、2003年9月、p.258−268
【非特許文献18】J.Tellado、J.M.Cioffi、「Peak Power Reduction for Multicarrier Transmission」,Mini−Globecom,1999年
【非特許文献19】H.Atarashi、M.Nakagawa、「A Computational Cost Reduction scheme for a Post−Distortion Type Nonlinear Distortion Comensator of OFDM Signals」,IEICE Trans.On communications、第E81−B巻、No.12、1998年12月、p.2334−2342
【非特許文献20】J.Armstrong、「New OFDM Peak−to−Average Power Reduction Scheme」,Vehicular Technology Conference,第1巻、2001年春、p.756−760
【非特許文献21】A.Saul、「Analysis of Peak Reduction in OFDM Systems Based on Recursive Clipping」,Proc.Int.OFDM−Workshop、第1巻、2003年9月、p.103−107
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
本発明の目的は、送信信号の振幅ピークの低減に寄与するように、周波数領域において、数を増した複数のサブキャリアを用いて誤り信号を発生させるための概念を提供することである。
【0039】
この目的は、請求項1に係る誤り信号を発生させる装置、請求項23に係る送信信号を発生させる装置、請求項24に係る誤り信号を発生させる方法、請求項25に係る送信信号を発生させる方法、または、請求項26に係るコンピュータプログラムにより達成される。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本発明は、入力信号の歪み部分に重み付けをすることにより誤り信号を得る際に、ピーク低減に寄与する誤り信号に含まれるサブキャリアの数を所定の量だけ増加させることができるという見地に基づいている。
【0041】
例えば、時間領域信号である入力信号は、低減すべき信号ピークを含んでいる。信号ピークを低減するため、誤り信号と入力信号とを合成し、それにより、信号ピークが低減された送信信号が発生する。本発明によれば、最初に、歪ませることにより入力信号に基づいて誤り信号を発生させ、これにより、入力信号の歪み部分のサブキャリアに関連付けられた信号点のノイズ状の分布が生じる。
【0042】
より具体的には、入力信号の時間周波数変換されたものは、現在使用されているマッピング方式または一般的には変調方式、例えばQAMに関連付けられた、ある信号空間コンステレーションポイントへの複数の情報値のマッピングに関連付けられた複数のある信号空間コンステレーションポイントを含んでいる。歪ませた結果、入力信号の歪み部分は、信号空間領域にわたって少なくとも部分的に広がる信号空間コンステレーションポイントを含んでいる。入力信号の歪み部分に関連付けられた信号空間コンステレーションポイントの一部は、例えば、前述したACE技術により使用される許容領域内にある。しかしながら、複数の他の信号空間コンステレーションポイントは、許容領域の範囲を越えている。前述したACE技術は、受信機で誤った決定を行う確率を低減するために拡張方向をゼロに設定する。
【0043】
本発明においては、望ましくない全ての拡張方向をゼロに設定するのではなく、歪み信号を得るために重み係数を使用して歪み部分に重み付けをし、それにより、重み付けをした後、望ましくない拡張方向が少なくなる。重み付けの演算はエネルギースケーリングに相当し、そのため、小さいクリッピング比に起因してエネルギーが低減した信号空間コンステレーションポイントの一部が、許容領域へ移動する。
【0044】
本発明の利点は、クリッピング比を増加させることなく、PAPR低減に寄与する信号空間コンステレーションポイントの数を増加させることができるという点である。したがって、クリッピング比を非常に小さくすることができ、それにより、OOB放射が減少すると同時に、必要な数の信号空間コンステレーションポイントが導入され、その結果、時間領域において、結果として得られる歪み信号が複数のノイズ状の成分を有する。そのため、例えば歪み信号と入力信号とを重ね合わせること(superimposing)により、信号ピークを低減することができる。
【0045】
本発明は、ノイズ状の信号成分を発生させるために必要な歪み、例えばクリッピングによるダイナミックレンジの減少に関連付けられたエネルギー変化、例えばエネルギー損失またはエネルギー増加を補償するための一般的な概念を提供する。したがって、PAPR低減の性能を損なうことなく低いOOB放射を得るために、非常に小さいクリッピング比であっても使用することができる。
【0046】
本発明の更なる態様においては、入力信号と誤り信号との間の相関が最小化されるように重み係数を選択することができる。例えば、重み係数は、入力信号と誤り信号との間の相関が減少するように、または、入力信号のスペクトル表現と誤り信号のスペクトル表現との間の相関が減少するように決定することができる。
【0047】
本発明の更なる態様において、重み係数は、合成手法による解析に基づいて、または、例えばシミュレーションによって見つけられる誤り信号と入力信号とを無相関にする最適な重み係数が決定されるモンテカルロシミュレーションに基づいて決定することができる。
【0048】
本発明の更なる態様において、重み係数は、例えば重み係数を含んだ誤り信号と入力信号との間の相関を最小化することにより、または、誤り信号のエネルギーを最小限に抑えることにより解析的に決定することができる。
【0049】
本発明の更なる利点は、誤り信号と入力信号との間の相関の低下に起因して、ピーク低減に寄与する成分が理想的に入力信号と関連付けられないため、ピーク低減性能を高めることができるという点である。また、誤り信号と入力信号との間の相関の低下により、受信機において無相関信号成分を効果的に除去することができ、したがって、無相関信号成分がその後の検出プロセスに影響を与えないため、例えばビット誤り比に関してシステムの性能が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、図面を参照しながら、本発明の更なる実施形態について詳細に説明する。
【0051】
図1は、本発明の第1の実施形態にしたがって入力信号に基づいて誤り信号を発生させる装置のブロック図である。
【0052】
図1に示されている装置は、入力信号を入力する入力部101を備えている。入力部101は、歪ませる手段103の入力部に接続されている。歪ませる手段103は、重み付けをする手段105に接続された出力部を有しており、重み付けをする手段105は、コンバイナ107の入力部に接続された出力部を有している。コンバイナ107は、入力部101が接続した更なる入力部と、誤り信号を提供する出力部とを有している。
【0053】
図1に示されている装置によって提供される誤り信号は、入力信号と比較して振幅ピークが低い、すなわち、単なる一例としてPAPRが低い送信信号を発生させるために使用できる。
【0054】
歪ませる手段103は、入力信号の歪み部分を得るために、入力信号を歪ませる。例えば、歪ませる手段は、入力信号の振幅を制限する。または、歪ませる手段103は、制限関数を用いて入力信号に重み付けをするように構成されていてもよく、それにより、入力信号の振幅は、制限関数によって与えられる振幅制限曲線にしたがって制限される。更に、歪ませる手段は、入力信号をクリッピングすることができる。
【0055】
更に、歪ませる手段は、例えばハードなリミッティング、ソフトなリミッティング(クリッピング)、ソフトなクリッピング、圧縮、もしくは、他のピーク低減技術を適用することにより、または、これらの組み合わせにより、入力信号の動き、例えばダイナミックレンジを低減するように構成することができる。
【0056】
歪みにより、入力信号の歪み部分がエネルギー変化、例えばエネルギー損失を受ける場合がある。これは、振幅を制限する場合、振幅制限レベルが入力信号に含まれる最大ピーク振幅よりも小さいからである。エネルギー変化を少なくとも部分的に補償するため、重み付けをする手段105は、誤り信号を発生させるためにコンバイナ107により入力信号と合成する歪み信号を得るために、歪みに関連付けられたエネルギー損失の場合には1より大きい重み係数、または歪みに関連付けられたエネルギー増加の場合には1より大きい重み係数を用いて歪み部分に重み付けをする。しかしながら、入力信号は、歪み部分のエネルギーが増加するように歪ませることができる。この場合、重み係数は1より小さくてもよい。
【0057】
重み付けをする手段105は、入力信号の歪み部分に重み係数を掛け合わせる乗算器を備えていてもよい。この乗算は、時間領域で行なうことができる。ここで、乗算器は、この場合、時間領域信号である入力信号の歪み部分に重み係数を掛け合わせる。代わりに、乗算は、周波数領域で行なうことができる。この場合、入力信号の歪み部分は、例えばフーリエ変換を使用して周波数領域へ変換され、入力信号の歪み部分のスペクトル値には、入力信号の歪み部分のフーリエ変換に関連付けられたスペクトル値の集合の場合と同じであることが好ましい重み係数が掛け合わされる。重み係数は、歪みに関連付けられたエネルギー変化によって決まることが好ましい。
【0058】
重み付けをする手段105によって提供される歪み信号は、誤り信号を得るために、入力部101を介して提供される入力信号と合成される。コンバイナ107は、誤り信号を得るために入力信号と歪み信号との間の差分を決定する減算器を備えていてもよい。例えば、歪み信号を入力信号から差し引く。代わりに、入力信号を歪み信号から差し引いてもよい。加算器およびインバータを使用して減算を行なうことができるため、減算器は、例えば歪み信号を反転させるインバータと、入力信号と歪み信号の反転されたバージョンとを加える加算器とを備えていてもよく、またはその逆も同様である。
【0059】
入力信号と歪み信号とが時間領域で合成される場合、誤り信号は時間領域信号または周波数領域信号である。周波数領域誤り信号を得るため、コンバイナ107は、周波数領域の誤り信号を得るために、減算器によって提供される信号を周波数領域へ変換する時間周波数変換器、例えばフーリエ変換器を更に備えていてもよい。
【0060】
本発明の更なる態様において、コンバイナは、周波数領域信号を合成することができる。コンバイナ107に提供される信号の一つだけが時間領域信号である場合、他の信号は周波数領域信号であり、したがって、コンバイナ107は、時間領域信号を周波数領域へ変換する時間周波数変換器、例えばフーリエ変換器を更に備えていてもよい。両方の信号、すなわち、入力信号および歪み信号が時間領域信号である場合、コンバイナ107は、入力信号のスペクトル表現を提供する第1の時間周波数変換器と、歪み信号のスペクトル表現を提供する第2の時間周波数変換器と、誤り信号を得るために入力信号のスペクトル表現と歪み信号のスペクトル表現との間の差分を決定する減算器とを備えていてもよい。この場合、誤り信号は自動的に周波数領域で提供される。しかしながら、時間領域の誤り信号が必要な場合には、コンバイナは、誤り信号を時間領域へ変換する周波数時間変換器、例えばフーリエ逆変換器を更に備えていてもよい。
【0061】
2つの時間周波数変換器を使用する代わりに、コンバイナ107は、フーリエ変換を順次行なうことができるようにするため、入力信号のスペクトル表現および歪み信号のスペクトル表現を提供する1つのフーリエ変換器だけを備えていてもよい。
【0062】
重み付けをする手段105によって使用される重み係数は、歪ませる手段103によってもたらされるエネルギー変化が完全に補償されるように選択することができる。しかしながら、重み係数は、エネルギー変化が部分的にのみ補償されるように選択することもできる。重み係数は、歪ませる手段103によってもたらされる歪みの量に関連付けられた演算にしたがって選択することができる。この演算は、通常、経時的に変化する場合であっても既知であるからである。
【0063】
図1の実施形態と同様に、図2に示されている装置は、歪ませる手段103とコンバイナ107との間に接続された重み付けをする手段201を備えている。重み付けをする手段201は、重み係数を受信する更なる入力部203を備えている。
【0064】
この装置は、重み係数を提供する手段205を更に備えており、この手段205は、歪ませる手段103の出力部に接続された第1の入力部と、本発明に係る装置の入力部101に接続された第2の入力部とを有している。
【0065】
図2に示されているように、重み付けをする手段201は、重み係数を提供する手段205によって提供された重み係数を受信する。例えば、重み係数を提供する手段205は、入力信号のエネルギーと入力信号の歪み部分のエネルギーとのエネルギー比に基づいて重み係数を計算する。代わりに、重み係数を提供する手段205は、入力信号の電力と入力信号の歪み部分の電力との比に基づいて重み係数を計算することもできる。重み係数の計算については以下で詳しく扱う。
【0066】
本発明の更なる態様において、重み係数を提供する手段205は、例えば入力信号と誤り信号との間の相互相関が最小になるように入力信号および誤り信号を使用して重み係数を決定することができる。例えば、重み係数を決定する手段109は、例えば最小2乗法等のような統計上の最小化法を使用して重み係数を決定することができる。
【0067】
重み係数を提供する手段205は、各入力信号、すなわち各シンボルに対して重み係数を適応的に決定することができる。本発明の更なる態様において、重み係数を決定する手段109は、ある送信セッションにおいて重み係数を1回決定することができる。
【0068】
例えば、重み係数を提供する手段205は、入力信号と歪み部分との積または入力信号と歪み部分との積の期待値に基づいて重み係数を計算するように構成されている。
【0069】
本発明の更なる態様において、重み係数を提供する手段205は、入力信号と誤り信号との相互相関の最小化、または入力信号のスペクトル表現と誤り信号のスペクトル表現との相互相関の最小化に基づいて重み係数を決定するように構成することができる。本発明の更なる態様において、重み係数を提供する手段205は、誤り信号のスペクトル表現のエネルギーを最小化することにより重み係数を決定することができる。この場合、誤り信号は本質的に重み係数を含んでいる。好ましくは、重み係数を提供する手段205は、入力信号と歪み部分の複素共役との積、または入力信号と歪み部分の複素共役との積の期待値に基づいて重み係数の期待値を決定することができる。複素数量(complex quantity)であることを考慮すると、積は、第1のベクトルと第2のベクトルの共役および転置(conjugate transposed)との間にあるということに注意すべきである。それにもかかわらず、積は、第1のベクトルおよび第2のベクトルに基づいている。
【0070】
本発明の更なる態様において、重み係数を提供する手段205は、入力信号と歪み部分との積の実数部分、または入力信号と歪み部分との積の期待値の実数部分に基づいて重み係数を決定することができる。AWGN(AWGN=加法的白色ガウスノイズ)チャネルを介したN個のサブキャリアによるコード化されていないマルチキャリア送信を一例として想定する。以下、プライム(’)は変数の実数部分を表わしており、ダブルプライム(”)は虚数部分を表わしている。まず初めに、表記を簡略化するため、サブキャリア数に関するインデックスnを式中で省略できるように、1つのサブキャリアだけの信号を考慮する。
【0071】
考慮するサブキャリア上で複素QAMシンボル
【数9】

は、エネルギー
【数10】

と共に送信される。
【0072】
ピーク低減において、複素干渉項
【数11】

は、送信機で加えられる。干渉のエネルギーは以下のようになる。
【数12】

【0073】
ピークが低減された信号
【数13】

は、その後、等価なベースバンド周波数領域AWGNチャネルを介して送信される。ここで、電力2N0sを伴うノイズNAWGNが重畳(superposed)される。fsは、システムのサンプリングレートである。例えばHPAによって発生する信号の何らかの非線形な歪みが存在する場合、これは、受信機でほぼAWGNと見なすことができ、ノイズ電力N0中に含まれることになる。受信したサブキャリア
【数14】

は、その後、検出器で判定される。
【0074】
当然ながら、サブキャリア上のビット誤り確率は、信号コンステレーションによって決まる。以下の導出は、任意の信号コンステレーションに関して行なうことができるが、以下では一例としてグレイマップ4QAMを考慮する。この場合、実数部分がシンボルの第1のビットを送信し、虚数部分がシンボルの第2のビットを送信する。したがって、この実施形態において、1つの信号空間コンステレーションポイントは、2ビットを送信する。この場合、送信されたビットS’=d’+Δd’について受信されたビットR’が検出
(判定)されない確率は、正確には、
【数15】

であり、S’=−(d’+Δd’)が送信された場合も同様である。d’に関するビット
誤り確率Pb’およびd”に関するビット誤り確率Pb”は、
【数16】

となる。
【0075】
以下では、全てのサブキャリアを考慮する。すなわち、キャリアの番号を表すためにインデックスnを使用する。全てのサブキャリアが項Δdnによって分布する場合、OFD
Mシンボルの全エネルギーは以下のようになる。
【数17】

【0076】
各キャリアのビット誤り確率は以下のようになる。
【数18】

【0077】
上記式を用いると、全体のビット誤り確率は以下のようになる。
【数19】

【0078】
ICI Δdnの有利な分布を求めるためには、好ましくは、誤り確率Pbへの依存度
を想起しなければならない。そのためには、シナリオを簡略化するのが有益である。例えば、1つのサブキャリアに関してのみICIを許容するという近似、すなわち1つを除いて全てのサブキャリアに関してΔdn=0とすることにより、上記式中に現れる変数の数
を減らすことができる。そうすることにより、以下のように、1つの乱れたキャリアを用いたOFDM信号のビット誤り確率が得られる。
【数20】

【0079】
図3Aは、N=1024個のサブキャリアに関する上記式のグラフ表示である。この場合、Eb/N0=10dBであり、送信されたQPSKシンボルWLOGはd=(1+j)/√2である。歪まされていないQPSKシンボルΔd=0の位置には星印が付けられ
ている。すなわち、ビット誤り確率の等高線プロットは、結果として得られるビット誤り確率に関連付けられた信号空間領域のエリア(領域)を決定する。
【0080】
図3Bおよび図3Cにおいて、Eb/N0=5dBおよびEb/N0=0dBは、それぞれパラメータとして使用されている。
【0081】
図3Dは、大きなスケールのEb/N0=10dBすなわち大きい歪みΔdに関して、
図3Aと同じ曲線を示している。等高線は同じビット誤り確率の位置を示しており、x軸およびy軸はそれぞれ、歪まされたQPSKシンボルの実数部分d’+Δd’および虚数
部分d”+Δd”を示している。
【0082】
前述した等高線プロットの解釈を見出すためには、歪みΔdが誤り率に対して与える2
つの正反対の影響を考慮しなければならない。一方では、QPSKシンボルに対応する4QAMシンボルが決定ボーダーに近づく場合、この特定のサブキャリアの決定を誤る確率が増加する。他方では、歪まされたサブキャリアにおいて費やされるエネルギーが更に小さくなる可能性があり、それにより、他の全てのサブキャリアが僅かに大きいエネルギーで送信して所与のEs/N0に適合するとともに、他のサブキャリアの誤り確率が改善するようになる。歪みΔdが決定ボーダーから離れていく場合に関しても同じような議論を
行なうことができる。その場合、影響を受けたサブキャリアの誤り確率は減少し、一方、他のサブキャリアの誤り確率は僅かに悪くなる。
【0083】
図3Aに一例として示されているようにチャネルノイズ電力が弱い場合には、歪まされたサブキャリアにおけるビット誤り確率の増加の影響が、全体の誤り率を決定付ける。したがって、サブキャリアが決定ボーダーに対して非常に近づくことを回避することが有利である。一方、小さいEs/N0で送信する必要がある場合には、例えば図3Cに示されているように、歪まされたサブキャリアに関してあまり多くのエネルギー
【数21】

を浪費しないことも重要であり、また、更に円形の歪み分布が有益である。図3Dから分かるように、Es/N0が比較的高い場合であっても、歪みΔdについては限界がある。
【0084】
本発明のピーク低減技術は、全ての歪まされたサブキャリアが図3A〜図3Dに示されている曲線によって決定される領域(エリア)上または当該領域内に(ほぼ)位置するようにICIを整形することができるという事実を利用する。同時に、受信機のビット誤り率の悪化を制限することができる。
【0085】
以下では、前述したアクティブコンステレーション拡張技術について詳細に検討する。
【0086】
図11に示されているように、クリッピングされた信号
【数22】

がクリッピングされていない信号
【数23】

から差し引かれることにより、クリッピングされた信号部分
【数24】

が形成される。
【0087】
係数Lでオーバーサンプリングされた信号のクリッピングされた信号部分は、周波数領域へ変換されると同時にフィルタ処理される。これは、以下の成分を有するサイズがNxNLのフーリエ行列を用いた乗算によって行なわれる。
【数25】

【0088】
これにより、以下のベクトル
【数26】

が得られる。これは、周波数領域においてクリッピングされフィルタ処理された信号部分を含んでいる。
【0089】
前述したように、減算は周波数領域で行なうこともできる。この場合、クリッピングされた信号
【数27】

およびクリッピングされていない信号
【数28】

を別々に変換するために、2つのFFTおよびフィルタを行うブロックが使用される。
【0090】
少しの間、以下において、本発明に係る重み係数
【数29】

が1であると仮定する。ここで、lは入力信号の番号を表している。すなわち、入力信号は第l番目の入力信号である。周波数領域においては、以下の結果が得られる。
【数30】

【0091】
図4Aおよび図4Bは、クリッピング比が(1つのQPSKシンボルにつき)8dBおよび0dBにおける、クリッピングされた信号Xc0に関連付けられた信号空間コンステレーションポイントを示している。図に示されているように、クリッピング比が高い場合には、ピーク低減のために使用できるエリア401内にいくつかのサブキャリアを見つけることができる(外側角部の点)。これとは逆に、クリッピング比が小さい場合には、殆どのサブキャリアは、許容されない拡張方向に対応している。既知のACEアルゴリズムによれば、許容できない全ての拡張方向はゼロに設定され、したがってピーク低減に寄与しない。より具体的には、エリア401内のサブキャリアがピーク低減に十分に寄与する。エリア402内のサブキャリアは、ピーク低減に寄与しない。エリア403内のサブキャリアだけが、虚数部分をもってピーク低減に寄与する。これは、拡張ベクトルの実数部分がゼロに設定されているからである。拡張ベクトルの虚数部分がゼロに設定されているため、エリア404内のサブキャリアだけが実数部分をもって寄与する。
【0092】
しかしながら、低いOOB放射を実現しなければならない場合には、クリッピング比が小さいことが望ましい。その結果、既知のACE技術は非常に低いOOB放射を実現できない。
【0093】
図4Bから分かるように、小さいクリッピング比に関連する問題の理由は、クリッピングされフィルタ処理された信号の電力の低下である。電力の損失を補償するために本発明に係る重み係数
【数31】

が導入される。重み係数は、電力の損失
【数32】

の補償のために使用することができる。
【0094】
本発明に係る重み係数の他の解釈は、クリッピングされた信号部分
【数33】

(歪まされた信号部分)が、xcに対して無相関とならなければならないということである。すなわち、
【数34】

である。
【0095】
相関値がゼロではない場合、拡張ベクトル
【数35】

は、高いピークを有する元のシンボルxlによってバイアスがかけられる。そのため、バイアスも、低減されない高いピークを有する。
【0096】
無相関のサブキャリアの数Nが大きい場合、入力ベクトルxlは、少なくとも最初の反復においてガウス確率過程(Gaussian stochastic process)である。更に、
【数36】

であり、クリッピングされた信号を以下のように表わすことができる。
【数37】

ここで、nclはノイズ成分であり、α(l)は、クリッピング比およびxlの統計的な特性に応じた定数であり、nclはxlに対して無相関である。すなわち、
【数38】

である。
【0097】
上記式を使用すると、相関がある場合に以下の式が得られる。
【数39】

【0098】
この項は、α(l)=1の場合、単にゼロである。この特性を得るため、以下のように重み係数を選択することができる。
【数40】

【0099】
すなわち、前記重み係数は、クリッピングされた信号部分および入力信号が無相関となるように選択される。
【0100】
電力の損失を完全に補償する重み係数の別の選択は、以下のとおりである。
【数41】

ここで、Xlは第l番目の入力信号を表しており、
【数42】

は入力信号の第l番目の歪み部分を表しており、両方とも周波数領域におけるものである。また、xlは時間領域における第l番目の入力信号を表している。演算子Hは転置および共役(transposition and conjugation)を表している。
【0101】
前記重み係数を決定するためには、
【数43】

を決定するべくもう1つのFFTが各反復に対して必要である。
【0102】
これにより、フーリエ変換に関する計算の複雑度が約50%増加する。これ以上複雑になることを避けるため、フィルタリング演算に起因する電力の損失を無視することができる。この場合、重み係数を以下のように時間領域において計算することができる。
【数44】

【0103】
フィルタリングによる電力の損失は以下のように予測される。
【数45】

【0104】
したがって、重み係数
【数46】

は、ほぼ同じ計算コストで
【数47】

に関する前記式に更に近づくことになる。前記式において、xcは入力信号の歪み部分(例えばクリッピングされた部分)を表している。
【0105】
シンボルごとに重み係数を計算する代わりに以下の式から前述したエネルギー比の期待値を計算すると、計算上の複雑度の更なる低減が可能になる。
【数48】

【0106】
クリッピング比が非常に小さい場合には、例えば定数係数klを導入することにより前記重み係数を増加させることができる。
【数49】

【0107】
更なる定数係数kl>1を使用すると、ピーク低減のために更なるサブキャリアを利用することができ、また、kl<1の場合には、より少ないサブキャリアを使用することになる。klに関する最適な値は、選択されたクリッピング比および目標とするPSDのそれぞれによって決まる。また、重み係数は、反復番号lに応じて選択してもよい。以下では、本発明に係る更なる重み係数について説明する。ここで再び、ACE技術について若干詳しく検討する。表記を更に簡単にするため、我々は、以下の式における全てのベクトルに関して反復インデックス
【数50】

を省略する。また、クリッピングされた信号部分を決定する減算を周波数領域で行なうこともできる。図6に示されているように、クリッピングされた信号Xc=FZcおよびクリッピングされていない信号X=FZxを個々に変換するためにはFFTおよびフィルタを行うブロックが2つ必要である。差し当たり、図6において変数
【数51】

が1であると仮定する。したがって、同じCc=X−Xcを得る。FZのインデックスm,nにおける要素は、e-j2πmn/Nによって与えられる。
【0108】
図4Aおよび図4Bは、8dBおよび0dBのクリッピング比の場合のクリッピングされた信号Xc0を視覚化している。クリッピング比が大きい場合には、ピーク低減のために使用できるいくつかのサブキャリアを見つけることができる。図4Aの右上角部のサブキャリア(点)は、ピーク低減のために十分に利用できる。左上角部および右下角部のそれぞれにおけるサブキャリアに基づいて、直交位相部および同相部をそれぞれ利用できる。
【0109】
しかしながら、図4Bの場合のようにクリッピング比が小さい場合には、殆どのサブキャリアは、許容されない拡張方向に対応している。前述したACEアルゴリズムによれば、許容できない全ての拡張方向はゼロに設定され、ピーク低減に寄与しない。しかしながら、低いOOB放射を実現しなければならない場合には、クリッピング比が小さいことが望ましい。その結果、改良されていないACE技術は、非常に低いOOB放射を実現できない。
【0110】
図4Bから分かるように、小さいクリッピング比に関連する問題の理由は、クリッピングされフィルタ処理された信号の電力の低下である。したがって、電力の損失
【数52】

または同様に時間領域における電力の損失
【数53】

を補償するために重み係数
【数54】

を導入することを提案する。
【0111】
図5および図6は、改良されたACE技術における信号フローを示している。全ての式に対して
【数55】

が成り立つ。
【0112】
重み係数の他の解釈は、クリッピングされた信号部分ccが、xcに対して無相関となるべきであるということである。すなわち、
【数56】

ということである。ここで、0N×Nは、サイズがN×Nで、全ての成分が0の行列である。相関がゼロではない場合、拡張ベクトル
【数57】

は、高いピークを有する元のOFDMシンボルxによってバイアスがかけられる。そのため、バイアスも、低減されない高いピークを有する。
【0113】
時間領域において、
【数58】

を求めることができる。
【0114】
オーバーサンプリングの場合、すなわち、L>1の場合、上記式は等価ではない。これは、Ccが、Ccをフーリエ変換したバージョンだけではなくフィルタ処理したバージョンでもあるからである。特に、フィルタはxと相関がある成分を抑制する。
【0115】
無相関のサブキャリアの数Nが大きい場合、入力ベクトルxが少なくとも最初の反復においてガウス確率過程であることについては、例えば、非特許文献22に記載されている。また、この文献には更にE{x}=0NLの場合に、クリッピングされた信号を以下のように表わすことができることについても記載されている。
【数59】

ここで、
【数60】

は、クリッピング比およびxの統計的な特性に応じた定数であり、ncはxに対して無相関である。すなわち、
【数61】

である。
【0116】
上の式を用いると、相関関係について以下を得る。
【数62】

この項は、
【数63】

の場合、ゼロである。
【非特許文献22】R.Dinis、A.Gusmao、「On the Performance Evaluation of OFDM Transmission Using Clipping Techniques」,Vehicular Technology Conference,第5巻,1999年9月、p.2923−2928
【0117】
実際には、サブキャリアNを限られた数しか有しておらず、また、相関がゼロであることに関する上記仮定はほぼ妥当であるにすぎない。また、前の反復におけるピーク低減は、振幅の必要なガウス分布を乱す。したがって、一般に、ゼロ相関を実現することは不可能である。最適な重み係数を決定するための手法は、以下の相関を最小化することである。
【数64】

ここで、Tr{・}はトレース演算子である。上の式を用いると、
【数65】

を解くことができ、実数の重み係数
【数66】

を得ることができる。
【0118】
興味深い点として、フィルタ処理されクリッピングされた信号部分の電力を周波数領域で最小化することにより、すなわち、
【数67】

とすることにより、
【数68】

について同じ結果が得られることに注目すべきである。
【0119】
信号空間において、この結果は、クリッピングされた信号部分(図示せず)を得るために、全ての一連のクリッピングノイズを座標系の原点にシフトすることと解釈することができる。
【0120】
前記重み係数の欠点は、元のACEアルゴリズムと比較して、Xcを決定するためにもう1回更なるFFTが各反復において必要になるという点である。これにより、計算の複雑度が約50%増加する。したがって、重み係数を決定するための更に簡単な方法が望まれる。これは、フィルタリング演算を無視することにより実現できる。この場合には、以下のように時間領域において重み係数を計算することができる。
【数69】

【0121】
計算の複雑度の更なる低減は、重み係数をシンボル毎に計算せずに単に定数期待値
【数70】

を使用することにより可能となる。
【0122】
クリッピング比が非常に小さい場合、ACE技術は、非特許文献23に記載されているように、全てにおいて適切な拡張ベクトルを見つけなければならないという問題を有している。
【非特許文献23】A.Saul、「Comparison between Recursive Clipping and Active Constellation Extension for Peak Reduction in OFDM Systems」,Proc.Int.Symp.on Wireless Personal Multimedia Communications,vol.1,2003年10月、p.37−41
【0123】
この場合、重み係数
【数71】

を詳しく調べることが興味深い。
【0124】
定数係数k>1であることにより、更なるサブキャリアをピーク低減のために利用することができ、k<1の場合、使用するサブキャリアが少なくなる。しかしながら、相関はもはや最小限に抑えることができない。
【0125】
更に、周波数領域信号をフィルタ処理し、時間領域信号をオーバーサンプリングすることができる。オーバーサンプリングレートL=1という特定の場合においてのみ、オーバーサンプリングおよびフィルタリングは必要ではなくなる。
【0126】
更なる態様において、本発明は、入力信号に基づいて送信信号を発生させる装置を提供する。ここで、入力信号は、マルチキャリア変調方式に起因する複数の周波数信号の重ね合わせにより生じる振幅ピークを含んでいる。この装置は、前述したように入力信号に基づいて誤り信号を発生させる装置と、処理された誤り信号を得るために誤り信号を処理するプロセッサと、振幅ピークが低減された送信信号を得るために、処理された誤り信号と入力信号とを合成するコンバイナとを備えている。
【0127】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る送信信号を発生させる装置を示している。
【0128】
図11に示されている装置とは異なり、図5の装置は、クリッピング要素1607の出力部と減算器1605の入力部との間に接続された乗算器501を備えている。また、乗算器501は更なる入力部503を備えている。
【0129】
図5に示されているように、乗算器501は、入力信号の歪み部分に重み付けをするように構成されており、歪み部分はクリッピング要素1607によって提供される。重み係数は、乗算器501の更なる入力部503を介して提供され、前述したように予め記憶または予め計算することができる。減算器1605は、入力部1601を介して提供される入力信号から、重み付けをされた歪み部分(歪み信号)を減じることにより時間領域における誤り信号を提供する。クリッピング要素1607は前述した歪ませる手段に相当し、乗算器501は本発明に係る重み付けをする手段に備えられており、減算器1605は本発明に係るコンバイナに備えられている。
【0130】
図5に示されている装置は、時間領域における誤り信号を発生させるように構成されている。誤り信号は、その後、周波数領域における誤り信号を得るためにFFT1605により変換されてフィルタ処理される。前述したように、歪み信号および入力信号の両方が、差分を計算する前に周波数領域で変換される場合には、誤り信号が周波数領域において直接提供されてもよい。
【0131】
時間領域信号である送信信号は、加算器1613の出力部を介して提供される。この場合、加算器1613は、乗算器1619によって提供される、処理された誤り信号と入力信号とを合成して送信信号を得るコンバイナの一実施形態であり、送信信号はその後にインパルス整形器1623によって整形される。
【0132】
本発明に係るプロセッサは、要素1609、1611、1613、1617、1619、および1623を更に備えているという点に注意すべきである。
【0133】
図6は、本発明の更なる実施形態に係る誤り信号を発生させる装置の一実施形態を示している。
【0134】
図5に示されている装置とは異なり、図6の装置は、振幅制限要素1607と乗算器501との間に接続された第1のFFT601を備えている。また、この装置は、入力信号が提供される装置の入力部605と減算器1605との間に接続された第2のFFT603を備えている。
【0135】
第1のFFT601は、振幅制限要素1607によって提供される入力信号の歪み部分を周波数領域に変換するように構成されている。振幅制限要素1607は、一例として振幅のクリッピングを行なうように構成されている。したがって、第2のFFT603は、入力信号を周波数領域へ変換するように構成されている。図6に示されているように、乗算器501は、振幅制限要素1607によって提供される(例えば振幅制限された)歪み部分のスペクトル表現の値に対して重み係数を掛け合わせるように構成されている。第1および第2のFFTが更にフィルタリングを行なうことができる。
【0136】
乗算器501は、周波数領域の歪み信号を提供する。ここで、スペクトル値に対応するその係数は、同じ重み係数によって重み付けをされる。減算器1605は、周波数領域の歪み信号を、FFT603によって提供される入力信号のスペクトル表現から減ずることにより、周波数領域における誤り信号を直接提供するように構成されている。
【0137】
前述したように、クリッピングノイズの分布はBERに影響を与える。図12Bに示されている従来技術のACE技術の分布は、比較的大きいEb/N0について図3Aに示されている理論的な分布にほぼ対応している。一方、ノイズ電力が2つのシンボル間の最小距離との関係で更に強くなる場合、例えば、16QAM変調またはそれ以上のものが使用される場合には、図3Bおよび図3Cに示されているノイズ分布に類似する異なるノイズ分布により、性能が更に良くなる場合がある。また、非常に低いOOB放射が求められている場合には、非常に低いクリッピング比を選択しなければならず、そのため、クリッピングノイズ電力はかなり高い。したがって、図3Dに示されている直角ノイズ分布が、最適な選択とはならない場合がある。それ故、本発明は、例えばマルチキャリア信号の誤り率の合計を最小にするクリッピングノイズ分布を提供するための概念を提供する。
【0138】
図7は、本発明の更なる実施形態に係る送信信号を発生させる装置を示している。
【0139】
図5の実施形態とは異なり、図7に示されている装置は、誤り信号を得るために、FFT1615によって提供される予備誤り信号(preliminary error signal)を処理する手段701を備えている。本発明に係るプロセッサに備えられている、処理する手段701は、FFT1615とIFFT1617との間に接続されている。すなわち、手段701はACE制約ブロック1609に取って代わるものである。
【0140】
処理する手段701は、周波数領域の誤り信号を得るために、FFT1615によって提供される一連の予備誤り信号値の中のある予備誤り信号値を変化させるように構成されている。誤り信号は、その後、IFFT1617によって時間領域に変換される。図7に示されているように、処理する手段701は、予備誤り信号値の大きさをクリッピングすることができる。処理する手段は、信号、例えばマルチキャリア信号の誤り率の合計が低減するように予備誤り信号を変化させることができる。例えば、(複素)誤り信号値が、所定の一連の値の中にあってもよい。所定の一連の値は、一例として、所定の値の範囲から得ることができる。
【0141】
例えば、処理する手段は、誤り信号値が所定の値の範囲内に存在するように予備誤り信号値を変化させることができる。この場合、所定の値の範囲は、一例として、図3A〜図3Dに示されている誤り確率の計算から得ることができる。
【0142】
図5に示されている実施形態と比較して、周波数領域におけるACE制約は、周波数領域における予備誤り信号値の処理に置き換えられている。例えば、周波数領域におけるACE制約は、周波数領域においてクリッピングされた信号部分をクリップングすることに置き換えられている。ここで、クリッピングされた信号部分は、予備誤り信号に相当するものである。この例によれば、全てのサブキャリアにおけるクリッピングノイズ電力が、効果的に制限される。加算器1613の出力部において結果として得られる信号空間コンステレーションポイントの分布、すなわち、乗算器1619によって提供される時間領域の誤り信号のバージョンと入力信号とを合成した後の信号空間コンステレーションポイントの分布は、円形である。
【0143】
クリッピングノイズの分布は、受信機における誤り率に対して何らかの影響を与える。クリッピングノイズを整形することにより、ピーク低減を可能にする一方で良好な誤り率を期待できる信号コンステレーションを得ることができる。
【0144】
ある特定の場合におけるこの考えの1つの具体的な実施例が図7に示されている。図5と比べて、周波数領域におけるACE制約が、周波数領域におけるクリッピングされた信号部分のクリッピングに置き換えられていることが分かる。これにより、全てのサブキャリアのクリッピングノイズ電力が効果的に制限される。この結果得られる信号コンステレーションは、図8に示されているように円形である。
【0145】
直角分布に優る、例えば円形分布の更なる利点は、良好な歪みベクトル
【数72】

を決定する反復プロセス中に、ピークを最適に消すにはあまりにも大きい歪み項が、前の反復によって生じた場合に、一部のサブキャリアによってステップバックすることができるという点である。ステップバックとは、歪まされたQAMシンボルが自動的に信号平面における歪みのない位置に近づき、|Δd|が減少することを意味している。更に、全て
のサブキャリアをピーク低減のために利用できる。これは、16QAM以上のコンステレーションを伴うACEにおいては不可能である。これらの2つの特性は本発明の技術においても不可欠となる。これについては、QPSKマッピング(変調)の場合に関する次の節で紹介する。図8に示されているように、処理する手段は、信号空間領域内で円形分布が生じるように大きさを制限することにより予備信号誤り値を変化させる。しかしながら、分布は、矩形または前述した誤り確率曲線によって決まる形状である。
【0146】
直角分布と比較したときの例えば円形分布の更なる利点は、良好な歪みベクトル
【数73】

を決定する反復プロセス中に、ピークを最適に消すにはあまりにも大きい歪み項が、前の反復によって生じた場合に、一部のサブキャリアによってステップバックすることができるという点である。ステップバックとは、歪まされたQAM(QPSK)シンボルが自動的に信号平面(信号空間領域)における歪みのない位置に近づき、|Δd|が減少するこ
とを意味している。更に、全てのサブキャリアをピーク低減のために利用できる。これは、単なる一例であるが、16QAM以上のコンステレーションを伴う従来のACEアプローチでは不可能である。
【0147】
一般に、ACE制約を他の制約に置き換えることにより、クリッピングノイズの円形分布以外の分布を得ることができる。例えば、16QAM以上のマッピングの内部シンボルにおいて円形コンステレーションを使用することができ、また、外部シンボルにおいて通常のACE制約を使用することができる。ここで、用語「内部シンボル」とは、マッピング方式が使用する信号空間コンステレーションポイントの中で最も小さいものに関連付けられる信号空間コンステレーションポイントのことである。したがって、用語「外部シンボル」とは、内部シンボルの大きさよりも大きい信号空間コンステレーションポイントのことである。
【0148】
更に、クリッピングノイズに関して矩形コンステレーションを使用することができる。矩形コンステレーションは、クリッピングノイズの実数部分および虚数部分を別個にクリッピングすることにより、円形コンステレーションよりも低い計算複雑度で得ることができる。一般的に言えば、予備誤り信号値の実数部分および虚数部分をそれぞれ別個に処理することにより、円形コンステレーションとは異なるコンステレーションを得ることができる。
【0149】
本発明の更なる態様においては、サブキャリア毎に異なる制約を使用することができる。特に、変調方式(マッピング方式)が、時間と周波数のうちのいずれかまたは両方によって変化する適応変調の場合、信号マッピングにしたがって予備誤り信号値
【数74】

をクリッピングするための(例えば円形分布の場合の)クリッピングレベルは、例えば16QAMを伴うサブキャリアにおいては低いクリッピングレベルを使用し、QPSKを伴うサブキャリアにおいては高い異なるクリッピングレベルを使用することにより選択することができる。しかしながら、予備誤り信号値を具体的に処理してもよく、それにより、異なる分布を得ることができる。
【0150】
無論、これは、使用されないサブキャリアに関してクリッピングノイズの制限が行なわれない場合を含んでいる。
【0151】
更に適応化は、チャネル状態情報(CSI)、BERの目標値などのサービス品質(QOS)要件、他の基準または基準の組み合わせに関して行なうことができる。このような基準の1つとして、例えば、利用可能な帯域幅または時間遅延がある。
【0152】
本発明に係る改良版ACE技術および本発明に係るクリッピング技術の性能を、前述した3つの従来のクリッピング技術と比較する。性能比較は、非特許文献24および非特許文献25に記載されているような方法で行う。
【非特許文献24】A.Saulによる「Analysis of Peak Reduction in OFDM Systems Based on Recursive Clipping」,Proc.Int.OFDM−Workshop、第1巻、2003年9月、p.103−107
【非特許文献25】A.Saul、「Comparison between Recursive Clipping and Active Constellation Extension for Peak Reduction in OFDM Systems」,Proc.Int.Symp.on Wireless Personal Multimedia Communications,第1巻、2003年10月、p.37−41
【0153】
したがって、OOB放射およびICIに対する影響を詳しく調べるために、送信システムの等価なデジタルベースバンドモデルをシミュレーションし、2つの測定を行う。
【0154】
OOB放射を評価するため、HPAによる歪みの後に、変調されピーク低減された信号のPSDを推定する。更に、AWGNチャネルを介して歪み信号が送信されるとともに、従来のOFDM受信機の出力部におけるコード化されていないBERを測定する。この測定は、幾つかのクリッピング比において反復される。結果を比較するには、正規化周波数f/fs=0.6におけるPSDおよび例えば10-3または10-4といった目標とするBERを得るために必要なEb/N0を見れば十分である。
【0155】
システムパラメータは以下のようにして選択する。送信方式は、サブキャリアの数としてN=1024を使用するOFDMである。シンボルマッピングは、チャネルコーディングを伴わないQPSK、16QAMおよび64QAMである。チャネルはAWGNチャネルであると仮定する。この場合、オーバーサンプリングレート(クリッピング)は2に等しい。RappのSSPA(p=10)にしたがって増幅モデルを選択する。出力バックオフはOBO=6dBである。ガードインターバルは11.1%に等しく、ロールオフ係数は11.1%である。ミスマッチングは0.4dBに等しい。ここで、目標とするビット誤り率は10-3および10-4である。正規化周波数はf/fs=0.6であり、クリッピング比はCR=0dB...12dBである。
【0156】
シミュレーションにおいて前述の選択されたパラメータは、全てのクリッピング技術において共通である。また、再帰的クリッピングにおいては、考慮するシナリオにとって最適であると見なされる2回の反復を選択する。ACEおよび改良版ACEにおいては、最大で3回の反復が使用され、更なる反復は、低いPSDにおいて僅かな性能の向上をもたらす。本発明のクリッピング技術は、本発明に係る処理する手段によって行なわれるため、QPSKマッピングにおいては最大で3回の反復を選択する。16QAMおよび64QAMマッピングにおいては、性能の向上の殆どが2回の反復の後に既に得られているため、2回の反復だけを使用する。
【0157】
全ての手法の計算の複雑度は主にFFTの回数によって決まるため、FFTの数は反復回数の2倍となることもある。この点で、非再帰的クリッピングは、1回の反復に対応する。1回の反復は、ピーク低減処理を反復しないことを意味している。
【0158】
図9Aは、BER目標値10-3およびQPSK送信における性能比較を示している。y軸は、正規化周波数f/fs=0.6におけるPSDを表しており、x軸は、目標BER=10-3の条件下での歪みのない送信に対する損失ΔEb/N0を表している。全ての曲
線が集まるプロットの左上角は、最も高いクリッピング比CR=12dBに相当する。曲線を更に低いPSDおよび
【数75】

における更に大きい損失へと辿ると、クリッピング比が減少する。
【0159】
つまり、この時点で、従来のACE技術が、再帰的クリッピングよりも僅かに良好な性能をもって約−62dBという最も低いPSDを実現するのが分かる。本発明に係る改良されたACE技術は、PSD=−62dBにおいて僅かに良好な性能を実現するとともに、再帰的クリッピングよりも良好な性能をもって最大でPSD=−70dBを実現することができる。再帰的クリッピング技術は、PSD=−70dBとPSD=−77dBとの間で最良の性能を有している。特に、−77dB未満のPSDの場合、本発明のクリッピング技術は、ΔEb/N0>1.8dBの損失において、他の全ての技術よりも性能が優
れている。
【0160】
更に低い目標BER=10-4においては、図9Bに示されているように、本発明に係る改良されたACE技術および本発明に係るクリッピング技術が、調査した全ての従来技術よりも良好に機能している。特定のクリッピング比において同じOOB放射を実現することができるが、再帰的および非再帰的クリッピング技術では、誤り信号の整形に関連する本発明に係るクリッピング技術およびACE技術のそれぞれよりもEb/N0が大きく低下している。この場合、クリッピングノイズ分布は、低いPSD要件および高いPSD要件のそれぞれにおいて最適化されている。
【0161】
図9Cは、目標BER=10-3および16QAM送信における比較を示している。ACE技術は、ピーク低減のために一部のサブキャリアしか使用できないため、優れた性能を得ることはできない。また、シンボル間の最小距離が小さいことにより、クリッピングノイズの直角分布はあまり良好ではない。一方、本発明に係るクリッピング技術は、この事実を考慮し、このシナリオにおいて2番目に良い技術、つまり再帰的クリッピングよりも、例えば約0.5dBほど良好なEb/N0をPSD=−85dBの場合に実現している。
【0162】
目標BER=10-4において、本発明に係るクリッピング技術の性能の向上は非常に高く、これについては図9Eに示されている。調査したクリッピング技術によれば、これら困難な状況下であってもPSD=−65dB以下を実現できるのは、たった1つである。しかしながら、調査した技術の全てにおいて、数デシベルという著しいEb/N0の損失が生じる。また、本発明に係る改良されたACE技術は、PSD<−50dBにおいて、従来技術よりも最大で0.5dB有利なEb/N0を有している。
【0163】
図9Eは、64QAM送信方式の性能を示している。図から分かるように、既に目標BER=10-3においては、調査した全ての技術に関して、Eb/N0が大きく低下している。本発明に係るクリッピング技術は、調査した他の全ての技術よりも良好な性能を有しているが、PDSの低下はほんの僅かである。例えば、PSD=−45dBでは、本発明に係るクリッピング技術においてさえも、歪みのない送信と比べて、ΔEb/N0=6d
Bを超える損失が依然として存在する。
【0164】
図9Fは、様々な重み係数における性能比較を示しており、図9Gは、一定の重み係数を用いた重み付けの場合の性能比較を示しており、図9Hは、反復回数に応じた性能比較を示している。
【0165】
本発明は、前述したアクティブコンステレーション拡張技術の性能を向上させるために、クリッピングされた信号(一般には、歪み信号部分)のための重み係数を導入している。特に、重み係数の選択方法に関して、4つの特定の方法が提供されている。また、マルチキャリア信号の全誤り率を最小にするため、クリッピングノイズの整形をサブキャリア毎に行なうことができる。サブキャリア毎のクリッピングノイズの整形は、サブキャリア毎に異なる特定の形状(特定の所定のエリア)に関して行うことができる。また、前述した形状は、特定のサブキャリアにおける変調度を表す文字(modulation alphabet)、チャネル状態情報(CSI)、またはサービス品質(QOS)すなわち目標とする誤り率に対して適応させることができ、これらの3つの可能性の組み合わせまたは他の要件に対して適応させることもできる。
【0166】
更に本発明は、ノイズ電力、すなわちサブキャリア毎のクリッピング信号部分分の電力を制限することにより、クリッピングノイズ、すなわちクリッピングされた信号部分(歪み部分)を整形するための概念を提供する。また、サブキャリア毎のノイズ電力は、周波数領域でノイズをクリッピングすることにより制限することができる。本発明に係るクリッピング技術は、前述した重み係数、クリッピングノイズの整形、例えばスマートグラディエントプロジェクトアルゴリズムによるクリッピングノイズの重み付け、または再帰的信号処理による反復的なピーク低減を含むことができる。
【0167】
本発明の概念は、低い帯域外放射、質の良い送信、コスト低減をもたらす無線周波数部の設計に対する少ない要件、空間の削減および消費電力の低減に寄与する。他のクリッピング技術と比較して、特に本発明の改良は、スペクトルマスクが制限されている場合に、BERに対して高い要件と、多数のサブキャリアおよび多数の信号マッピング点、例えば16QAMに対応する高いデータレートとをもたらす。本発明の概念は、無線通信の他の分野、広帯域アクセスシステム、マルチキャリアシステム、送信機設計、非線形性、ピーク電力低減、クリッピング技術などにおいて使用することができる。
【0168】
本発明においては、オーバーサンプリングおよびフィルタリングが行なわれる。オーバーサンプリングは、ピークを見つけるために使用されることが好ましい。これは、オーバーサンプリングを行わないと、アナログ信号中に存在する一部のピークが、時間離散信号により消滅してしまうからである。オーバーサンプリングによって、アナログ信号が概算され、より多くのピークを見つけることができる。フィルタはオーバーサンプリングの後に行われる。オーバーサンプリングを行わないと、例えば図5のクリッピングブロック1607によって行なわれるダイナミックレンジの低減は、キャリア間干渉(ICI)のみを生み出す。オーバーサンプリングを用いると、ダイナミックレンジの低減は、フィルタ処理される帯域外放射およびICIを生み出す。
【0169】
更に、本発明の方法の特定の実施要件に応じて、本発明の方法をハードウェアまたはソフトウェアにおいて実施することができる。実施は、デジタル記憶媒体、特に電子的に読み取り可能な制御信号が記憶され、且つ本発明の方法が実行できるようにプログラム可能なコンピュータシステムと協働できるディスクまたはCDを使用して行なうことができる。したがって、一般に、本発明は、プログラムコードが機械的に読み取り可能なキャリア上に記憶されているコンピュータプログラム製品であり、前記プログラムコードは、コンピュータ上で本発明の方法を実行するように構成されている。したがって、言い換えると、本発明の方法は、コンピュータ上で本発明の方法を実行するプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】入力信号に基づいて誤り信号を発生させる本発明の第1の実施形態に係る装置のブロック図である。
【図2】入力信号に基づいて誤り信号を発生させる本発明の更なる実施形態に係る装置のブロック図である。
【図3】信号空間領域内のビット誤り確率の図である。
【図4】図4Aおよび図4Bは、信号空間コンステレーションポイントの分布を示している。
【図5】入力信号に基づいて送信信号を発生させる本発明の第1の実施形態に係る装置のブロック図である。
【図6】入力信号に基づいて誤り信号を発生させる本発明の更なる実施形態に係る装置のブロック図である。
【図7】入力信号に基づいて送信信号を発生させる本発明の更なる実施形態に係る装置のブロック図である。
【図8】信号空間コンステレーションポイントの分布を示している。
【図9】性能比較結果を示している。
【図10】従来のPAPR技術のブロック図である。
【図11】従来のACE技術のブロック図である。
【図12】図12Aおよび図12Bは、信号空間コンステレーションポイントの分布を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に基づいて誤り信号を発生させる装置であって、前記誤り信号は、送信信号を発生させるために使用されるものであり、
前記入力信号の歪み部分を得るために、前記入力信号を歪ませる手段(103)と、
歪み信号を得るために、重み係数を用いて前記歪み部分に重み付けをする手段(105、201)と、
前記誤り信号を得るために、前記入力信号と重み付けをされた信号とを合成するコンバイナ(107)と
を備える装置。
【請求項2】
前記歪ませる手段(103)は、前記入力信号の振幅を制限するものである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記重み付けをする手段(105、201)は、前記入力信号の前記歪み部分に前記重み係数を掛け合わせる乗算器を備えるものである、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記重み係数は、前記歪みに関連付けられたエネルギー変化に依存するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
重み係数を提供する手段(205)を更に備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記重み係数を提供する手段(205)は、前記入力信号のエネルギーと前記入力信号の前記歪み部分のエネルギーとのエネルギー比、または、前記入力信号の電力と前記入力信号の前記歪み部分の電力との電力比に基づいて前記重み係数を計算するものである、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記重み係数を提供する手段(205)は、
【数1】

に基づいて第l番目の入力信号に対する重み係数
【数2】

を計算するものであって、Xlは前記第l番目の入力信号xlの時間周波数変換されたものを表しており、
【数3】

は前記入力信号の第l番目の歪み部分xclの時間周波数変換されたものを表しており、Hは転置および共役を表すものである、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記重み係数を提供する手段(205)は、
【数4】

に基づいて第l番目の入力信号xlの重み係数
【数5】

を計算するものであって、xclは前記入力信号の第l番目の歪み部分を表すものである、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記重み係数を提供する手段(205)は、
【数6】

に基づいて前記エネルギー比の期待値から重み係数
【数7】

を計算するものであって、Xlは第l番目の入力信号xlの時間周波数変換されたものを表しており、
【数8】

は前記入力信号の第l番目の歪み部分xclの時間周波数変換されたものを表しており、Hは転置および共役を表しており、Eは期待値演算子を表すものである、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記重み係数を提供する手段(205)は、
【数9】

に基づいて前記エネルギー比の期待値から重み係数
【数10】

を計算するものであって、Xlは第l番目の入力信号xlの時間周波数変換されたものを表しており、
【数11】

は前記入力信号の第l番目の歪み部分xclの時間周波数変換されたものを表しており、Hは転置および共役を表しており、Eは期待値演算子を表すものである、請求項6に記載の装置。
【請求項11】
前記重み係数を提供する手段(205)は、前記重み係数として更なる重み係数を得るために、定数を用いて前記重み係数に重み付けをするものである、請求項6〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記重み係数を提供する手段(205)は、前記入力信号および前記歪み部分に基づく積、または、前記入力信号および前記歪み部分に基づく積の期待値に基づいて前記重み係数を決定するものである、請求項6に記載の装置。
【請求項13】
前記重み係数を提供する手段(205)は、前記入力信号および前記歪み部分に基づく積の実数部分、または、前記入力信号および前記歪み部分に基づく積の期待値の実数部分に基づいて前記重み係数を決定するものである、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記重み係数を提供する手段(205)は、
【数12】

に基づいて第l番目の入力信号から重み係数
【数13】

を決定するものであって、Xは前記入力信号のスペクトル表現を表しており、Xcは前記歪み部分のスペクトル表現を表しており、または、
前記重み係数を提供する手段(205)は、
【数14】

に基づいて時間領域における重み係数
【数15】

を決定するものであって、xは時間領域における入力信号を表しており、xcは前記歪み部分を表すものである、
請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
前記重み係数を提供する手段(205)は、
【数16】

に基づいて第l番目の入力信号に対する重み係数
【数17】

を決定するものであって、Xは前記入力信号のスペクトル表現を表しており、Xcは前記歪み部分のスペクトル表現を表しており、Hはエルミート演算子を表しており、Eは期待値演算子を表すものである、請求項12〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記重み係数を提供する手段(205)は、
【数18】

に基づいて重み係数
【数19】

を決定するものであって、kは定数係数である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記提供する手段(205)は、前記入力信号と前記誤り信号との相互相関の最小化、または、前記入力信号のスペクトル表現と前記誤り信号のスペクトル表現との相互相関の最小化に基づいて前記重み係数を決定するものである、請求項12〜16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記重み係数を提供する手段(205)は、前記誤り信号のスペクトル表現のエネルギーを最小化することにより前記重み係数を決定するものである、請求項12〜17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記コンバイナ(107)は、前記誤り信号を得るために前記入力信号と前記歪み信号との差分を決定する減算器を備えるものである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記コンバイナ(107)は、
前記入力信号のスペクトル表現を提供する第1の時間周波数変換器と、
前記歪み信号のスペクトル表現を提供する第2の時間周波数変換器と、
前記誤り信号を得るために、前記入力信号のスペクトル表現と前記歪み信号のスペクトル表現との差分を決定する減算器と
を備えるものである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記第1の時間周波数変換器および前記第2の時間周波数変換器はフーリエ変換器である、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記コンバイナ(107)は、
前記入力信号のスペクトル表現を提供し、前記歪み信号のスペクトル表現を提供するフーリエ変換器と、
前記誤り信号を得るために、前記歪み信号のスペクトル表現と前記入力信号のスペクトル表現との差分を決定する減算器と
を備えるものである、請求項1〜21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
入力信号に基づいて送信信号を発生させる装置であって、前記入力信号は、マルチキャリア変調スキームに起因する複数の周波数信号の重畳により生じる振幅ピークを含むものであり、
請求項1〜13のいずれか一項に記載の、前記入力信号に基づいて誤り信号を発生させる装置と、
処理された誤り信号を得るために、前記誤り信号を処理するプロセッサと、
低減された振幅ピークを有する前記送信信号を得るために、前記処理された誤り信号を前記入力信号と合成するコンバイナと
を備える装置。
【請求項24】
入力信号に基づいて誤り信号を発生させる方法であって、前記誤り信号は、送信信号を発生させるために使用されるものであり、
前記入力信号の歪み部分を得るために、前記入力信号を歪ませるステップと、
歪み信号を得るために、1より大きい重み係数を用いて前記入力信号の前記歪み部分に重み付けをするステップと、
前記誤り信号を得るために、前記入力信号と重み付けをされた信号とを合成するステップと
を含む方法。
【請求項25】
入力信号に基づいて送信信号を発生させる方法であって、前記入力信号は、マルチキャリア変調スキームに起因する複数の周波数信号の重畳により生じる振幅ピークを含むものであり、
請求項15に記載の、前記入力信号に基づいて誤り信号を発生させるステップと、
処理された誤り信号を得るために、前記誤り信号を処理するステップと、
低減された振幅ピークを有する前記送信信号を得るために、前記処理された誤り信号を前記入力信号と合成するステップと
を含む方法。
【請求項26】
コンピュータ上で、請求項24に記載の方法または請求項25に記載の方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3A−3B】
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【図3C−3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A−9B】
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【図9C−9D】
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【図9E−9F】
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【図9G−9H】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−529172(P2007−529172A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502197(P2007−502197)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007117
【国際公開番号】WO2005/096579
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】