説明

クリップを設けてなる筆記具

【課題】クリップによって係止した係止物の摩擦係数や厚さに関わらず、容易に抜け落ちすることなく、クリップが拡がったまま塑性変形しにくい、クリップを設けてなる筆記具を提供する。
【解決手段】軸筒またはキャップにクリップを設けてなる筆記具において、少なくとも、前記クリップの軸筒またはキャップに対面する箇所の、係止物と接触する部分である係止部を、常温付近で自らゴム状弾性を有する弾性体により形成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、衣服等に係止するためのクリップを設けてなる筆記具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、筆記具に設けるクリップは、例えば、衣服のポケット、書類等の比較的薄い部材からなる係止物を、クリップと、軸筒またはキャップ等の間に係止して使用していた。
【0003】ところで、クリップの材質は、係止時にクリップと軸筒あるいはキャップとの間隙を形成するため、クリップを拡開する必要があり、そのため、バネ特性の高い金属製あるいはポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート等のバネ特性の高い樹脂製で形成し、クリップに形成する係止部もクリップと一体に形成していたため、前記金属製あるいは樹脂製で形成していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、係止部が金属製あるいは樹脂製の場合、係止部の表面に特別な加工を施さない限り摩擦係数は低いものであり、薄い部材に対し、いくら軸筒またはキャップとの間隙を少なく設定しても抜け落ちし易かった。特に、係止物の表面の摩擦係数が低いものは、抜け落ちし易かった。また、係止物の厚さが厚い部材に対しては、クリップにバネ特性の高い材質を用いたとしても、係止状態を続けることによりクリップが拡がったまま塑性変形する恐れがあった。
【0005】本発明は上記問題を鑑み、クリップによって係止した係止物の摩擦係数や厚さに関わらず、容易に抜け落ちすることなく、クリップが拡がったまま塑性変形しにくい、クリップを設けてなる筆記具を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、軸筒またはキャップにクリップを設けてなる筆記具において、少なくとも、前記クリップの軸筒またはキャップに対面する箇所の、係止物と接触する部分である係止部を、常温付近で自らゴム状弾性を有する弾性体により形成したものである。
【0007】本発明の係止部とは、クリップに衣服や書類等の係止物を係止した際に、クリップの係止物に接触する部分のことであり、玉部等の突部を設けている場合には突部をいい、クリップ自体で押さえる場合には、クリップの係止物との接触面をいう。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明における係止部の形成用材として使用する弾性体とは、常温付近で自らゴム状弾性を有するものであって、例えばオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、ウレタン系エラストマー、天然ゴム、NBR、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエン、クロロプレン等のジエン系モノマーの重合体あるいはその共重合体、ブチレン−エチレン−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、オルガノポリシロキサン等のシリコーンゴム、ポリウレタン、軟質ポリ塩化ビニル等で形成され、適度の変形が可能で、元の形状に復元する弾性を有するものである。
【0009】係止部を前述したような弾性体で形成することにより、厚さの厚い係止物であっても係止部が変形可能なため、係止部が圧縮して拡がったクリップが元の位置あるいは元の位置に近い状態に戻ることができる。係止物の係止面が波形状やR形状であっても係止部が変形可能なため、係止物により密着することができるので、抜け落ちし難い。また、表面に特別な加工を施さない限り、金属や樹脂に比べ、弾性体のほうが遥かに摩擦係数が高いので抜け落ちし難い。
【0010】
【実施例】本発明の実施例を説明するが、本実施例では便宜上、ノック体3、カム部(図示せず)、回転カム4、カム溝(図示せず)による、ノック体を押圧することにより、軸筒2内に弾発部材(図示せず)により軸筒2の後端方向に付勢して収納してなるボールペンレフィル7を軸筒2の先端開口部(図示せず)より出没可能回転カム式のノック式ボールペンとして説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0011】本実施例1のクリップを有する筆記具1は、透明の軸筒2およびクリップ5をポリカーボネート樹脂(PC樹脂)で一体に成形する。
【0012】前記クリップ5の一部に、クリップ5より小径の段部8を形成してあり、段部8に、ニトリルゴムで形成した円柱状の弾性部材6を嵌め込み、弾性体の係止部7を有する、クリップを設けてなる筆記具1を作製した。
【0013】本実施例2のクリップ25を設けてなる筆記具21は、実施例1と同様に、先ず、透明の軸筒22およびクリップ25をポリカーボネート樹脂(PC樹脂)で一体に成形する。
【0014】次に前記クリップ25の先端に、予め嵌合孔を形成した略球形の弾性部材26を形成し、この弾性部材26の嵌合孔をクリップ25の先端に嵌合させ、弾性体の係止部27を有する、クリップ25を設けてなる筆記具21を作製した。この時使用する弾性体として、エチレンプロピレンゴムを用いた。
【0015】本実施例3のクリップ45を設けてなる筆記具41は、実施例2と同様に、先ずで、透明の軸筒22およびクリップ25をポリカーボネート樹脂(PC樹脂)で一体に成形する。このとき、クリップ45に通過孔8を形成してある。
【0016】次に前記クリップ45の通過孔に、予め形成した略鋲状の弾性部材26を形成し、この弾性部材26を通過させ、弾性体の係止部27を有する、クリップ45を設けてなる筆記具41を作製した。この時使用する弾性体として、イソプレンを用いた。
【0017】尚、クリップおよび係止部の形状は、本実施例に限るものではなく、少なくとも係止部が適度の変形が可能で、元の形状に復元する弾性体により構成してあればよい。弾性体の装着方法も同様に、本実施例に限るものではなく、凹凸嵌合や乗り越し嵌合あるいは2色成形法等、一般的に知られている装着方法を適宜選択して使用することができる。また、クリップ全体を弾性体で形成あるいはクリップ全体に弾性体を装着してあってもよい。
【0018】
【発明の効果】本発明による筆記具は、前述したような構成なので、クリップによって係止した係止物の摩擦係数や厚さや表面の状態に関わらず、容易に抜け落ちすることないクリップを設けてなる筆記具を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施例におけるクリップを設けてなる筆記具を示す、一部断面とした要部を示した図である。
【図2】図2おける一部省略したA−A拡大断面図である。
【図3】第2の実施例におけるクリップを設けてなる筆記具を示す、一部断面とした要部を示した図である。
【図4】第3の実施例におけるクリップを設けてなる筆記具を示す、一部断面とした要部を示した図である。
【符号の説明】
1、21、41 筆記具
2、22、42 軸筒
3 ノック体
4 回転カム
5、25、45 クリップ
6、26、46 弾性部材
7、27、47 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】軸筒またはキャップにクリップを設けてなる筆記具において、少なくとも、前記クリップの軸筒またはキャップに対面する箇所の、係止物と接触する部分である係止部を、常温付近で自らゴム状弾性を有する弾性体により形成したことを特徴とするクリップを設けてなる筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−191685(P2001−191685A)
【公開日】平成13年7月17日(2001.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−2244(P2000−2244)
【出願日】平成12年1月11日(2000.1.11)
【出願人】(000005027)株式会社パイロット (6)
【Fターム(参考)】