説明

クリップガイド差込工具

【課題】エスカレータにおいて、クリップガイドの交換作業を容易にするクリップガイド差込工具を提供する。
【解決手段】クリップガイド差込工具50は、クリップガイド44の交換時に、コンベヤ乗降口に位置する手摺入り込み口21において手摺ガイドレール30と移動手摺18との間の隙間に手摺ガイドレール30の縁部を覆って設けられるクリップガイド44を差し込むための工具である。クリップガイド差込工具50は、把持部52と、把持部52から延伸する延伸部54と、延伸部54の先端に回動可能に取り付けら、手摺入り込み口21の外側近傍で手摺ガイドレール30に固定されるレール固定部58と、レール固定部58の取付位置から把持部52側に所定距離だけ離れて延伸部54に取り付けられ、クリップガイド44の連続部分を解放可能に固定するクリップ固定部56とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベヤについて用いられるクリップガイド差込工具に関し、特に、クリップガイドの交換時に、コンベヤ乗降口に位置する手摺入り込み口において手摺ガイドレールと移動手摺との間の隙間にクリップガイドを差し込むためのクリップガイド差込工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗客コンベヤの1つであるエスカレータは、階段状をなして移動するステップと同期してその両側の欄干部上を移動する移動手摺を有している。移動手摺は、下りエスカレータでは下層階の乗降口、上りエスカレータでは上層階の乗降口において、Uターンするように移動方向を反転してからトラスの手摺入り込み口内へと進入していく。
【0003】
この手摺入り込み口にハンドガードスイッチ(HGS)なる安全装置が設けられたエスカレータが知られている。このハンドガードスイッチ装置は、トラスの手摺入り込み口と移動手摺との間の隙間に移動手摺と共に幼児等の手が引きずり込まれるのを防止するためのもので、上記手摺入り込み口において移動手摺を若干の隙間を空けて覆うとともにトラス端面から外側に例えば数センチメートル程度突出して設けられるゴム製のブーツと、このブーツをトラス内側から付勢して所定位置に保持する付勢部材と、乗降口付近にいる子供(特に幼児)の手がブーツ端面にぶつかってブーツがトラス内側に移動したことを検出する検出スイッチとを備える。この検出スイッチで上記ブーツが移動したことを検出したとき、エスカレータの運転を非常停止させることによって上記手摺入り込み口への乗客の手の引き込みを防止している。
【0004】
一方、無端状をなす移動手摺は、金属板で形成されたガイドレールによってガイドされながらエスカレータの上層階と下層階との間を周回移動しているが、例えばウレタンゴム製の移動手摺の内面がガイドレールの縁部に摺接して磨耗や損傷するのを防止するために、例えば略U字状の断面形状を有する樹脂製のクリップガイドをガイドレールの縁部を覆って取り付けていることがある。このクリップガイドにより移動手摺の内面とガイドレールの縁部とが直に接触することはなくなるが、クリップガイドの外表面に対して移動手摺が摺接するためにクリップガイドが徐々に磨耗していく。そのため、クリップガイドは、消耗品として所定のタイミングで新品に交換する必要がある。
【0005】
手摺ガイドレールは、ステップの両側に下層階から上層階にかけて延伸して配置され、上下層階の各乗降口においては手摺入り込み部からトラス内の所定位置まで入り込んでいる。エスカレータが新設される際、クリップガイドは、エスカレータが手摺入り込み口にハンドガードスイッチ装置を組み付ける前に、露出した手摺ガイドレールの縁部にクリップガイドを側方から容易に嵌め込むことができる。
【0006】
一方、既設のエスカレータにおいてクリップガイドを交換するとき、エスカレータのトラス外に位置する手摺ガイドレールの部分については移動手摺を取り外すことで手摺ガイドレールを露出させてクリップガイドを比較的容易に交換できる。これに対し、手摺入り込み口からトラス内に延びる手摺ガイドレールの部分については、それを覆う移動手摺と、さらにその外側を覆って設けられたハンドガイドスイッチ装置のブーツが存在するため、トラスの一部およびハンドガイドスイッチ装置を分解せずに手摺ガイドレールを露出させることができず、これらの分解作業には相当の工数を要する。
【0007】
そのため、通常、トラス内に入り込んだ手摺ガイドレールの部分に取り付けられたクリップガイドの交換は、移動手摺を手摺入り込み口のところまでガイドレールから取り外した状態で、乗降口において古いクリップガイドを引き抜いた後、新品のクリップガイドの端部を手摺ガイドレールの縁部に嵌め込んだ状態で手摺ガイドレールと移動手摺との間の隙間にクリップガイドを押し込んでいくことを行っている。
【0008】
しかしながら、クリップガイドの挿入長さが長くなるに連れてクリープガイドの内面とガイドレールの縁部表面との摩擦力、および、クリープガイドの外面と移動手摺内面との摩擦力が大きくなってくるため、約半分程度の長さ又は深さまでは一人の作業員の手力で押し込めるものの、それ以上は所定長さまでクリップガイドを二人掛りで少しずつ押し込まなければならなかった。
【0009】
このように1ヶ所の手摺入り込み口における1本のクリップガイドの差し込みにも結構な時間と労力を要するのであるが、手摺ガイドレールは左右両側に2つのガイドレール部を有し、また、上下層階の各乗降口の両側に4ヶ所の手摺入り込み口が存在することから、上記のようなクリップガイドの差込作業を1基のエスカレータにつき合計8回行わなければならず、クリップガイドの交換にかなりの時間および労力が掛かっているのが現状である。
【0010】
なお、本願出願人が調査した限りにおいて、本発明に関連する先行技術文献を発見することはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、乗客コンベヤにおけるクリップガイドの交換時に、手摺入り込み部におけるクリップガイドの差し込みを容易に行うことができるクリップガイド差込工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るクリップガイド差込工具は、クリップガイドの交換時に、コンベヤ乗降口に位置する手摺入り込み口において手摺ガイドレールと移動手摺との間の隙間に手摺ガイドレールの縁部を覆って設けられるクリップガイドを差し込むための工具であって、把持部と、把持部から延伸する延伸部と、延伸部の先端に回動可能に取り付けら、手摺入り込み口の外側近傍で手摺ガイドレールに固定されるレール固定部と、レール固定部の取付位置から把持部側に所定距離だけ離れて延伸部に取り付けられ、前記隙間に差し込まれるクリップガイドの連続部分を解放可能に固定するクリップ固定部とを備える。
【0013】
本発明に係るクリップガイド差込工具において、クリップ固定部は延伸部に対して回動可能に取り付けられているのが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るクリップガイド差込工具において、クリップガイドはU字状断面を有して細長く連続する部材であり、クリップ固定部では、クリップガイド内に挿入板が挿入された状態でクリップガイドを上下から挟持して固定されてもよいし、あるいは、クリップガイドの上片部または下片部を挟持してクリップガイドが固定されてもよい。
【0015】
さらに、本発明に係るクリップガイド差込工具において、クリップ固定部におけるクリップガイドの挟持面が粗面化されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るクリップ差込工具によれば、手摺ガイドレールに固定されたレール固定部を支点、クリップガイドが固定されたクリップ固定部を作用点、および、作業者が握る把持部を力点として、把持部をクリップガイドの挿入方向に押すことで、てこ(第2種てこ)の原理によりクリップ固定部に固定されたクリップガイドの長手方向に大きな押し込み力を作用させて、手摺ガイドレールの縁部を覆った状態でクリップガイドを手摺入り込み口からトラス内部へ差し込むことができる。その結果、一人の作業者でもクリップ交換作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態のクリップガイド差込工具が用いられるエスカレータ乗降口を示す概略構成図である。
【図2】図1のエスカレータ乗降口を示す側面図である。
【図3】図1におけるB−B線拡大断面図(一部側面を含む)である。
【図4】クリップガイドの一端部を示す拡大斜視図である。
【図5】一実施形態であるクリップガイド差込工具の全体斜視図である。
【図6】クリップガイド差込工具のレール固定部を示す側面図である。
【図7】クリップガイド差込工具のクリップ固定部を示す側面図である。
【図8】クリップガイド差込工具の使用状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。
【0019】
なお、下記の説明では、乗客コンベヤの1つであるエスカレータを例に説明するが、これに限定されず、本発明に係るクリップガイド差込工具は例えば動く歩道等の他の乗客コンベヤでも使用可能である。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態であるクリップガイド差込工具がクリップガイド交換作業に用いられるエスカレータ10の乗降口12を示す図であり、図2は、図1のエスカレータ10の乗降口12の側面図である。
【0021】
エスカレータ10は、上層階と下層階との間で乗客を搬送する又は移動させる周知構成のものであり、階段状に連なって移動する多数のステップ14と、ステップ14の両側にステップ移動方向に延伸して立設される欄干部16と、欄干部16上に固定された手摺ガイドレール30(図3参照)によってガイドされながらステップ14の移動に同期して移動する例えばウレタンゴム製の無端状の移動手摺18とを備える。ここで、エスカレータ10は、ステップ14および移動手摺18が矢印A方向に移動する下りエスカレータとして運転されている。
【0022】
乗降口12近傍の欄干部16の内面には、スピーカ17が設置されている。このスピーカ17は、乗降口12にいる乗客やその他の人(例えば、その近傍で遊んでいる子供等)に対して、音声アナウンスや警報ブザーを発するためのものである。
【0023】
エスカレータ10の下層階側の乗降口12において、移動手摺18はUターン領域18aを有しており、このUターン領域18aにおいて移動方向を反転させた移動手摺18はトラス20に形成される手摺入り込み口21からトラス20内へと進入していく。それから、無端状の移動手摺18は、トラス20内を上層階側に向かって移動し、上層階側の乗降口においてトラス20から出た後、上記と同様にUターン領域を介して移動方向を反転させて再び矢印A方向へと移動する。このようにして移動手摺18は、下層階と上層階との間で周回移動する。
【0024】
図1,2に示すように、移動手摺18がトラス20内に進入する手摺入り込み口21には、上述したハンドガードスイッチ装置を構成するブーツ22が設けられている。ブーツ22は、略C字状横断面を有する移動手摺18と同様に略C字状の横断面を有し、移動手摺18の外側を若干の隙間(例えば1〜2mm程度)を空けて覆うとともにトラス20の端面から外側に例えば数センチメートル程度突出して配置されている。このブーツ22の外側端面に子供(特に幼児)の手等が当たってブーツ22がトラス20の内側へ移動したことがマイクロスイッチ等により検出されると、エスカレータ10の運転を非常停止させる制御が行われるようになっている。
【0025】
エスカレータ10の乗降口12の床部15には、例えばステンレス等の金属からなる長方形状の平板で構成される床板32が設置されている。床板32は、両側の移動手摺18の間隔にほぼ等しい幅を有しており、トラス20に設けられる支持部材(図示せず)上に載置または固定されて設置される。床板32のステップ14側の縁部には、コムプレート34が連設されている。コムプレート34には、ステップ14の踏板上に形成される多数のクリートに対して若干の隙間を空けた状態で噛合するコム36が固定されている。
【0026】
図3は、図1中の手摺入り込み部近傍におけるB−B線拡大断面図である。この図では、側端面として描かれるブーツ22以外のものが断面で示されている。手摺ガイドレール30は、金属板を曲げ加工して形成されることができ、U字状の断面を有する中央部38と、この中央部38から左右両側に張り出したガイドレール部40,42とを有する。ガイドレール部40,42の縁部は、例えばU字状又は略U字状の断面形状を有するクリップガイド44が嵌め込まれてそれぞれ覆われている。
【0027】
手摺ガイドレール30の外側には、略C字状断面を有する移動手摺18が配置されている。移動手摺18は、手摺ガイドレール30に沿って移動する際、その内面がクリップガイド44の外面に摺接することになる。また、移動手摺18のさらに外側には、略C字状の端面形状をなすブーツ22が移動手摺22との間に若干の隙間を空けて、かつ、奥行き方向に移動可能に設けられている。
【0028】
クリップガイド44は、例えばプラスチックを押出し成形することによって細長く連続する部材として形成されたものを、適当な長さに切断して使用することができる。また、図4に示すように、クリップガイド44は、上片部45aおよび下片部45bを含む略U字状の断面形状を有し、上片部45aと下片部45bとの間に開口46が形成されている。この開口46を介してクリップガイド44をガイドレール部40,42に側方から嵌め込むことができ、また、上記開口46を介してクリップガイド44内に後述する挿入板等を挿入することができる。
【0029】
続いて、図5〜8を参照して、本実施形態のクリップガイド差込工具50について説明する。図5はクリップガイド差込工具50の全体斜視図、図6はクリップガイド差込工具50のレール固定部58の側面図、図7はクリップガイド差込工具50のクリップ固定部56の側面図である。
【0030】
図5に示すように、クリップガイド差込工具50は、把持部52と、把持部52から延伸する延伸部54と、延伸部54の先端に回動可能に取り付けら、乗降口12の手摺入り込み口21(図2参照)の外側近傍で手摺ガイドレール30に固定されるレール固定部58と、レール固定部58の取付位置から把持部52側に所定距離だけ離れて延伸部54に回動可能に取り付けられ、クリップガイド44の連続部分を解放可能に固定するクリップ固定部56とを備える。
【0031】
把持部52は、この工具50を使用する作業者が手で掴んで把持する部分であり、握り易くするために延伸部54よりも少し太い円柱状に形成されている。ただし、把持部52は、このような形状に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。例えば、延伸部54を形成する細長い部材の端部またはその近傍がそのままの形状で把持部として使用されてもよい。
【0032】
延伸部54は、扁平断面を有する細長い金属部材によって好適に形成されることができる。ただし、延伸部54の断面形状は、扁平断面に限定されるものではなく、円形等の他の形状であってもよい。また、高剛性を有するプラスチック製の棒状部材が延伸部として用いられてもよい。
【0033】
図6に示すように、レール固定部58は、例えば、略U字状又は略コ字状の側面形状をなすように曲げ加工された金属板により好適に構成されることができる。また、レール固定部58は、延伸部54の先端部に形成された貫通穴60に挿通された支持ピン62に連結されており、これにより延伸部54に対して回動可能に支持されている。さらに、レール固定部58は、上板部64と下板部66とを有する。下板部66には、雌ねじ穴86が形成されている。この雌ねじ穴86には、蝶ねじ70が螺合されている。蝶ねじ70のクリップガイド44内に位置するねじ先端部には、挟持板72が固定されている。挟持板72の挟持面または上面73は、例えば、微小な凹凸を形成する、多数の溝を形成する、ローレット加工を施す、サンドペーパのような粗面部材を貼着する等の手法によって粗面化されている。
【0034】
このように構成されるレール固定部58では、蝶ねじ70を緩めた状態で上板部64と挟持板72とに間に手摺ガイドレール30のガイドレール部40(または42)を開口65から挿入し、蝶ねじ70を強く締め付けることによってガイドレール部40が上板部64と挟持板72との間に挟持され、これによりレール固定部58が手摺ガイドレール30に対して固定される。このとき、挟持板72の上面73が粗面化されていることで、レール固定部58が手摺ガイドレール30に対してずれるのが抑制され、その固定状態がより強固になる。なお、ガイドレール部40に対する挟持面となる上板部64の内面も、上記挟持板72の上面73と同様に粗面化してもよい。
【0035】
図7に示すように、クリップ固定部56は、上述したレール固定部58と同一の構成を有するため、同一要素には同一符合を付して、重複することとなる説明を援用により省略する。このようにクリップ固定部56が延伸部54に対して回動可能に取り付けてあることで、クリップガイド44の固定および押し込みの際の向き変更に柔軟に適合できる。ただし、クリップ固定部56は延伸部54に対して所定角度(例えば図5に示す程度の角度)をなして固定されていてもよい。
【0036】
クリップ固定部56では、蝶ねじ70を緩めた状態で上板部64と挟持板72とに間にクリップガイド44を開口46から挿入する。このときクリップガイド44内には、開口46の高さとほぼ等しい厚みを有する挿入板74を上板部64と下板部66との間に配置しておく。そして、蝶ねじ70を強く締め付けることによってクリップガイド44が上板部64と挟持板72との間に挟持され、これによりクリップガイド44がクリップ固定部56に固定される。
【0037】
このとき、挟持板72の上面73が粗面化されていることで、クリップ固定部56がクリップガイド44に対してずれるのが抑制され、その固定状態がより強固になる。また、クリップガイド44内には挿入板74が配置されているため、挟持によってクリップガイド44が押しつぶされることがない。一方、この固定状態から蝶ねじ70を緩めれば、クリップ固定部56からクリップガイド44を解放することが可能になる。なお、クリップガイド44に対する挟持面となる上板部64の内面も、上記挟持板72の上面73と同様に粗面化してもよい。
【0038】
次に、図8を参照して、上記構成からなるクリップガイド差込工具50の使用状態について説明する。
まず、クリップガイド44の交換を行う作業者は、ハンドガードスイッチ装置のブーツ22の端面近傍位置まで、適当な又は専用の工具を用いて移動手摺18を手摺ガイドレール30から取り外しておく。
【0039】
そして、クリップガイド44の端部をガイドレール部40に嵌め込んだ状態で、手摺入り込み口21における手摺ガイドレール40と移動手摺18との間の隙間にクリップガイド44を手で押し込めるところまで差し込んでいく。
【0040】
クリップガイド44を手力で押し込みづらくなってきたとき、そこからクリップガイド差込工具50を使用する。まず、クリップガイド差込工具50のレール固定部58をブーツ22の端面から適当な距離(例えば約15cm程度)だけ離れた位置でガイドレール部40上に固定し、次いでブーツ22の端面から適当な距離(例えば約20cm程度)だけ離れた位置でクリップガイド44の連続する部分をクリップ固定部56に固定する。
【0041】
そして、この状態で把持部52を矢印C方向に押し込む。すると、レール固定部58を支点、クリップ固定部56を作用点、把持部52を力点として、てこ(第2種てこ)の原理によりクリップ固定部56に固定されたクリップガイド44の長手方向に大きな押し込み力を作用させることができる。これにより、クリップガイド44を手摺入り込み口21から奥側のトラス20内へと押し込むことができる。一回の操作でクリップガイド44が例えば数cm程度押し込まれた後、クリップ固定部56からクリップガイド44を一旦解放し、ブーツ22の端面から適当な距離だけ離れた位置でクリップ固定部56にクリップガイド44を再度固定して同様に押し込む操作を行う。このような操作を何回か繰り返して、クリップガイド44の挿入側の端部が所定の当り部材(図示せず)に当接したところで、このクリップガイド44についての差込作業が終了する。
【0042】
それから、同じ手摺ガイドレール30のもう一方のガイドレール部42についても同様に、クリップガイド44の差込作業を行い、1基のエスカレータ10につき8ヶ所で同様のクリップガイド44の差込作業を行うことになる。
【0043】
このように本実施形態のクリップガイド差込工具50によれば、一人の作業者の手力では遂行が困難なクリップガイド44の差込作業を容易に行うことができ、クリップガイドの交換作業の効率を大きく向上させることができる。
【0044】
なお、本発明に係るクリップガイド差込工具は、上述した形態のものに限定されず、種々の変更や改良が可能である。
【0045】
例えば、上記においてはクリップ固定部56において挿入板74を内側にかませたクリップガイド44を上下から挟持するものとしたが、これに限定されるものではなく、クリップ固定部56においてクリップガイド44の上片部45aまたは下片部45bを挟持して固定してもよい。この場合、クリップ固定部56の開口65を把持部52側に向けるようにクリップ固定部56を回動させればよく、クリップガイド44の下片部45bを挟持する場合にはクリップ固定部56を延伸部54の上側に配置してもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 エスカレータ、11 制御盤、12 乗降口、14 ステップ、15 床部、16 欄干部、18 移動手摺、20 トラス、21 手摺入り込み口、22 ハンドガードスイッチ装置のブーツ、30 手摺ガイドレール、32 床板、34 コムプレート、36 コム、40,44 ガイドレール部、44 クリップガイド、50 クリップガイド差込工具、52 把持部、54 延伸部、56 クリップ固定部、58 レール固定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップガイドの交換時に、コンベヤ乗降口に位置する手摺入り込み口において手摺ガイドレールと移動手摺との間の隙間に手摺ガイドレールの縁部を覆って設けられるクリップガイドを差し込むための工具であって、
把持部と、
把持部から延伸する延伸部と、
延伸部の先端に回動可能に取り付けら、手摺入り込み口の外側近傍で手摺ガイドレールに固定されるレール固定部と、
レール固定部の取付位置から把持部側に所定距離だけ離れて延伸部に取り付けられ、前記隙間に差し込まれるクリップガイドの連続部分を解放可能に固定するクリップ固定部と
を備えることを特徴とするクリップガイド差込工具。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップガイド差込工具において、
クリップ固定部は延伸部に対して回動可能に取り付けられていることを特徴とするクリップガイド差込工具。
【請求項3】
請求項1または2に記載のクリップガイド差込工具において、
クリップガイドはU字状断面を有して細長く連続する部材であり、クリップ固定部では、クリップガイド内に挿入板が挿入された状態でクリップガイドを上下から挟持して固定されることを特徴とするクリップガイド差込工具。
【請求項4】
請求項1または2に記載のクリップガイド差込工具において、
クリップガイドはU字状断面を有して細長く連続する部材であり、クリップ固定部では、クリップガイドの上片部または下片部を挟持してクリップガイドが固定されることを特徴とするクリップガイド差込工具。
【請求項5】
請求項3または4に記載のクリップガイド差込工具において、
クリップ固定部におけるクリップガイドの挟持面が粗面化されていることを特徴とするクリップガイド差込工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−116518(P2011−116518A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276815(P2009−276815)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】