説明

クリップ付ワイヤハーネス、該クリップ付ワイヤハーネスを備えたワイヤハーネス

【課題】本発明は、ワイヤハーネスの製造にかかる所要時間を短時間化するとともに、配線用クリップの取付位置の取付精度を高精度化するクリップ付ワイヤハーネス、および、前記クリップ付ワイヤハーネスを備えたワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】クリップ付ワイヤハーネス1は、電線3に一体成形されたクリップ2が、電線3に対する相対的な位置がパネル51の取付孔52に係止可能な位置に設けられ、オフセット片9の先端部には、前記電線3の周囲に一体成形されて該電線3を固定する電線固定部11と、複数本の電線32が束ねられた電線束31に引掛かる鉤状部12と、が設けられ、前記鉤状部12が、前記オフセット片9の先端部側が本体部5に対して略直交する方向に曲げられているとともに該先端部から該本体部5側に突出され当該本体部5に対して略平行する方向に突出されて形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルの取付孔と係止可能に形成されたクリップが電線に一体成形されたクリップ付ワイヤハーネス、および前記クリップ付ワイヤハーネスを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、種々の電子機器が搭載されている。これらの電子機器にバッテリなどの電源等からの電力や制御信号などを伝達する手段として、複数の電線を束ねて形成されたワイヤハーネスが用いられている。
【0003】
このようなワイヤハーネスは、一般的に、電線を支持および分岐する布線治具が立設された布線板上の布線パターンに沿って、端末にコネクタなどが設けられた複数本の電線が所定の形態かつ所定の順序で布線されるとともに、所定の位置に配線用クリップが設けられ、前記布線板上に布線された複数本の電線と前記配線用クリップとが粘着テープで捲回されて、所望の配索形態に形成されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−356064号公報
【特許文献2】特開2010−233295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1および前記特許文献2に示された従来のワイヤハーネスは、配線用クリップを所定の位置に取り付けるために、作業員が調整治具などを用いて、一つ一つの配線用クリップについてその取付位置の位置合わせを行っている。このため、配線用クリップの取付位置の調整にかかる作業時間が長時間化するとともに調整作業が煩雑となる。したがって、ワイヤハーネスの製造にかかる所要時間が長時間化するという問題があった。
【0006】
また、前記従来のワイヤハーネスは、一つ一つの配線用クリップが、電線束に捲回した粘着テープで該電線束に固定されるため、作業員の熟練度によっては、配線用クリップの取付位置の取付精度が低下したり、取付精度が不規則となったりする虞があるという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる問題を解決することを目的とするものである。即ち、本発明は、ワイヤハーネスの製造にかかる所要時間を短時間化するとともに、配線用クリップの取付位置の取付精度を高精度化するクリップ付ワイヤハーネス、および、前記クリップ付ワイヤハーネスを備えたワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、パネルの取付孔に係止されるクリップが電線に一体成形されたクリップ付ワイヤハーネスであって、前記クリップが、前記電線に対する相対的な位置が前記パネルの取付孔に係止可能な位置に設けられ、前記クリップが、本体部と、前記本体部から立設されて前記取付孔に係止される係止部と、前記本体部の一端から延長されたオフセット片と、を備え、前記オフセット片の先端部には、前記電線の周囲に一体成形されて該電線を固定する電線固定部と、複数本の電線が束ねられた電線束に引掛かる鉤状部と、が設けられ、前記鉤状部が、前記オフセット片の先端部側が前記本体部に対して略直交する方向に曲げられているとともに該先端部から該本体部側に突出され当該本体部に対して略平行する方向に突出されて形成されていることを特徴とするクリップ付ワイヤハーネスである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、前記鉤状部には、前記電線と係合する係合爪が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のクリップ付ワイヤハーネスである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、複数本の電線が束ねられた電線束に、請求項1または請求項2に記載のクリップ付ワイヤハーネスが設けられていることを特徴とするワイヤハーネスである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、前記電線束および前記電線固定部が、粘着テープで捲回されて互いに固定されていることを特徴とする請求項3に記載のワイヤハーネスである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、クリップ付ワイヤハーネスは、電線にクリップを一体成形するとともに、前記電線に対する相対的な位置がパネルの取付孔に係止可能な位置に前記クリップを設けたため、クリップの取付位置がパネルの取付孔に係止される位置となる。
【0013】
このため、調整治具などでクリップの取付位置を位置合わせする作業が不要となる。したがって、クリップの取付位置の調整にかかっていた時間を削減して、クリップ付ワイヤハーネスの製造にかかる所要時間を短時間化することができる。
【0014】
また、クリップ付ワイヤハーネスは、調整治具などでクリップの取付位置を位置合わせする作業が不要となるため、作業員の熟練度に影響を受けることなく、クリップの取付位置の取付精度を維持することができる。このため、クリップの取付位置の取付精度を高精度化することができる。
【0015】
請求項2に記載された発明によれば、クリップ付ワイヤハーネスは、電線と係合する係合爪を鉤状部に設けたため、前記電線を強く引っ張ることで、前記係合爪と前記電線との係合状態を解除することができる。
【0016】
このため、前記電線を強く引っ張って、前記鉤状部から前記電線を分離することができる。したがって、電線固定部と前記鉤状部との間をニッパ等の工具で切断して、前記電線をパネルから取り外すことができる。よって、前記パネルから前記電線を取り外して、メンテナンスや修理、リサイクルなどが比較的容易に行うことができる。
【0017】
請求項3に記載された発明によれば、ワイヤハーネスは、電線に対する相対的な位置がパネルの取付孔に係止可能な位置に一体成形されたクリップを備えたクリップ付ワイヤハーネスが設けられているため、クリップの取付位置がパネルの取付孔に係止される位置となる。
【0018】
このため、一つ一つのクリップの取付位置の位置合わせが不要となり、ワイヤハーネスの製造にかかる所要時間を短時間化することができる。
【0019】
また、ワイヤハーネスは、クリップの取付位置がパネルの取付孔に係止される位置となるため、一つ一つのクリップの取付位置の位置合わせが不要となる。このため、作業員の熟練度に影響を受けることなく、クリップの取付位置の取付精度を維持することができる。したがって、クリップの取付位置の取付精度を高精度化することができる。
【0020】
請求項4に記載された発明によれば、ワイヤハーネスは、電線束およびクリップ付ワイヤハーネスの電線固定具を粘着テープで捲回して互いに固定するため、前記クリップを前記電線束に強固に固定することができる。また、オフセット片の彎曲した形状によって、電線を束にする際に、クリップに電線を集めやすくなるので、電線束にしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態にかかるワイヤハーネスの構成を説明するための斜視図である。
【図2】図1に示すワイヤハーネスのII−II矢視断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるクリップ付ワイヤハーネスの構成を説明するための斜視図である。
【図4】図3に示すクリップ付ワイヤハーネスのクリップの構成を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図1ないし図4を参照して説明する。
【0023】
本発明の一実施形態にかかるワイヤハーネス10は、図1および図2に示すように、本発明にかかるクリップ付ワイヤハーネス1と、複数本の電線32が束ねられた電線束31と、を備えている。ワイヤハーネス10は、クリップ付ワイヤハーネス1および電線束31に粘着テープ41が捲回され、前記クリップ付ワイヤハーネス1と前記電線束31とが互いに固定されて形成されている。電線束31は、複数本の電線32の周囲に粘着テープ35が捲回されて形成されている。粘着テープ35,41は、ワイヤハーネス用テープなどのビニルテープが用いられている。
【0024】
クリップ付ワイヤハーネス1は、電線3と、自動車などのパネル51の取付孔52に係止可能に形成されたクリップ2と、を備えている。クリップ付ワイヤハーネス1は、前記電線3に前記クリップ2が射出成形によって一体成形されて形成されている。
【0025】
電線3,32は、図2に示すように、導電性の芯線と、絶縁性の被覆部とを備えている。芯線は、複数本の導電性の金属製の導線が撚られて形成されている。被覆部は、前記芯線を被覆しており、ポリ塩化ビニル樹脂などの電気絶縁性の合成樹脂によって形成されている。なお、芯線は、一本の芯線から構成されていても良い。
【0026】
クリップ2は、本体部5と、前記本体部5から立設されて前記パネル51の取付孔52に係止される係止部6と、前記係止部6の基端部に設けられて前記パネル51を押圧する押圧部7と、前記本体部5の一端から延長されたオフセット片9と、前記オフセット片9の先端部に設けられて前記電線3を固定する電線固定部11と、前記オフセット片9の先端部に設けられて前記電線束31に引掛かる鉤状部12と、を備えている。クリップ2は、可撓性を有するポリプロピレン樹脂などの合成樹脂によって形成されている。
【0027】
本体部5は、図3に示すように、薄板状の長方形状に形成されている。本体部5は、前記パネル51の取付孔52の孔径よりも大形に形成されている。本体部5には、後述するオフセット片9に連なる厚肉部が設けられている。このため、本体部5の一端から延長されたオフセット片9の強度が高められる。
【0028】
係止部6は、図4に示すように、前記本体部5から立設されて前記パネル51の取付孔52に挿通される柱状部26,26と、前記柱状部26,26の先端部のそれぞれに設けられて前記取付孔52に挿通され該取付孔52の周縁部に係止される係止片24,24と、を備えている。
【0029】
柱状部26,26は、前記本体部5の下面から立設されている。柱状部26,26は、先端部側が先細りするとともに基端部側が幅広に形成されている。柱状部26,26には、前記先端部から前記基端部側に向かって延長され、前記パネル51の取付孔52の周縁部と係止される係止片24,24が設けられている。
【0030】
係止片24,24は、先端部に向かって互いに離れる方向に傾斜して形成されているとともに、互いに近づく方向に平行に揺動可能に形成されている。係止片24,24の先端部には、図4に示すように、前記係止片24,24が前記取付孔52の周縁部と係止された際に、前記取付孔52の内周面と該取付孔52の周縁部とに係合する係合段部24aが複数段(図示例では、三段)設けられている。このため、係止片24,24は、複数の板厚のパネル51の取付孔52に対応することができる。
【0031】
押圧部7は、図1に示すように、前記柱状部26,26の基端部に設けられている。押圧部7は、楕円状に拡径されているとともに、前記柱状部26,26の先端部側に向かって僅かに傾斜して形成されている。押圧部7は、前記係止部6が前記パネル51の取付孔52と係止された際に、前記パネル51を押圧するように、前記柱状部26,26の先端部側に向かって延長されている。
【0032】
オフセット片9は、図2および図3に示すように、前記本体部5の一端から延長されて形成されている。オフセット片9の先端部には、前記電線3を固定する電線固定部11と、前記電線束31を引掛ける鉤状部12と、が設けられている。オフセット片9は、前記係止部6と前記電線固定部11とを離間している。
【0033】
このため、オフセット片9によって、電線3の配索経路がパネル51の取付孔52から偏倚している場合であっても、前記電線3を所要の配索経路で前記パネル51に取り付けることができる。なお、オフセット片9を前記パネル51の形状に沿って形成することで、クリップ2をパネル51にフィットするようにしても良い。
【0034】
電線固定部11は、前記鉤状部12の一端に設けられているとともに、前記電線3に沿って設けられている。電線固定部11は、該電線固定部11の一端に設けられた連結部20を介して前記鉤状部12と連なって形成されている。電線固定部11は、前記電線3に沿って該電線3の同心円状に形成されている。電線固定部11の他端には、前記電線3の長手方向に対して略直交する方向に突出された突起部21が設けられている。電線固定部11は、図2に示すように、後述する前記鉤状部12に保持された電線束31と前記電線固定部11とに粘着テープ41が捲回される。
【0035】
このため、電線固定部11によって、前記鉤状部12に確実かつ強固に前記電線束31を固定することができる。なお、前記電線束31と電線固定部11とに同じ粘着テープ35を捲回することによって、前記電線束31を粘着テープ35で束ねるとともに、前記電線束31を電線固定部11に固定するようにしても良い。
【0036】
連結部20は、前記鉤状部12から前記固定部11に向かって幅が縮小されて形成されている。連結部20は、前記電線3を露出して形成されている。このため、後述する鉤状部12から前記電線3を分離した際に、ニッパなどの工具によって前記連結部20を切断して、前記電線3をオフセット片9から取り外すことができる。なお、連結部20は、手作業(ひねる、ねじる、まげる、ひっぱる等)によっても分離可能である。
【0037】
突起部21は、図2および図3に示すように、前記電線3の同心円状の扇形状に形成されている。突起部21は、前記電線束31と前記電線固定部11とが粘着テープ41で捲回された際に、前記粘着テープ41の肉厚よりも十分の厚さとなる突出量で形成されている。このため、作業員が粘着テープ41を前記電線束31と前記電線固定部11とに捲回するテープ巻き作業の作業性が向上する。
【0038】
鉤状部12は、前記オフセット片9の先端部側が前記本体部5に対して略直交する方向に湾曲されているとともに、前記オフセット片9の先端部が前記本体部5側かつ該本体部5に対して略直交する方向に突出されて形成されている。このため、オフセット片9がJ字形状とされる。鉤状部12には、図3および図4に示すように、前記電線3に沿って形成された溝部15と、前記電線3と係合される係合爪16と、前記電線束31に引掛かる突起部18と、が設けられている。
【0039】
溝部15は、前記電線3の外形に沿った半円形状に形成されている溝部15は、前記鉤状部12の前記電線3の長手方向の全長に亘って設けられている。このため、電線3の長手方向に対して略直交する方向の張力を該電線3に作用させた際には、前記電線3が前記溝部15から引き抜かれる。
【0040】
係合爪16は、前記鉤状部12の一端に設けられている。係合爪16は、前記電線3の外形に沿った弧状に形成されているとともに、先端部側から前記電線3が露出するように形成されている。このため、前記電線3を該電線3の長手方向に略直交する方向に強く引張ることによって、係合爪16を塑性変形させて前記電線3との係合状態が解除される。また、係合爪16との係合状態が解除された電線3が、前記溝部15から引き抜かれる。よって、前記電線3が前記鉤状部12から分離される。
【0041】
突起部18は、前記鉤状部12の前記電線3の長手方向の全長に亘って設けられている。突起部18は、前記電線束31に前記鉤状部12が引掛かる突出量で突出して形成されている。このため、図2に示すように、前記鉤状部12によって、前記電線束31を前記クリップ2に安定して保持することができる。
【0042】
次に、上述の如く構成されたワイヤハーネス10のクリップ付ワイヤハーネス1を成形する金型について説明する。
【0043】
金型には、前記電線3の外形に沿って形成された電線用キャビティと、前記クリップ2の外形に沿って形成されたクリップ用キャビティと、が設けられている。金型は、作業員が前記電線3を前記電線用キャビティ内に配したり、前記電線3にクリップ2が一体成形されたクリップ付ワイヤハーネス1を取り出したりする作業性の良い水平割金型とされている。なお、金型は、垂直割金型を用いることができる。
【0044】
金型の金型分割面は、前記係止部6の前記本体部5に対して略直交するとともに前記電線3に対して略平行する方向の中心を通る平面と、前記平面に連なっているとともに前記オフセット片9の延長方向に沿って該オフセット片9の厚さ方向の中心を通る彎曲面と、を備えている。このため、射出成形によって、電線3にクリップ2を一体成形することができる。また、金型内に形成されたクリップ付ワイヤハーネス1を金型から型抜きすることができる。
【0045】
なお、前述した金型の他に、前記クリップ用キャビティを複数個設けた金型を用いても良い。この場合の金型は、複数個のクリップ用キャビティが、クリップ付ワイヤハーネス1を前記パネル51に取り付けるときに、複数のクリップ2が前記パネル51の複数の取付孔52のそれぞれに係止可能となる位置に配置される。即ち、複数のクリップ2は、前記電線3に対する相対的な位置が前記パネル51の複数の取付孔52に係止可能となる位置に設けられている。
【0046】
本発明でいう、電線3に対する複数のクリップ2の相対的な位置がパネル51の取付孔52に係止可能となる位置に設けられているとは、電線用キャビティに対してクリップ付ワイヤハーネス1の設計時の相対的な位置に保たれたクリップ用キャビティ内に溶融樹脂を射出成形して得られたクリップ付ワイヤハーネス1において、電線3に対する複数のクリップ2の相対的な位置が、射出成形時に生じる誤差を除くと、設計時に定められた位置となっていることをいう。
【0047】
このため、複数のクリップ2が設けられたクリップ付ワイヤハーネス1と電線束31とを粘着テープ41で固定することによって、パネル51の取付孔52に係止可能となる位置に複数のクリップ2が設けられたワイヤハーネス10を形成することができる。したがって、調整治具で複数のクリップ2の取付位置を合わせる作業が不要となり、ワイヤハーネスの製造にかかる所要時間が短縮される。また、調整治具で複数のクリップ2の取付位置を合わせる作業が不要となるため、作業員の熟練度の影響を受けずに、複数のクリップ2の取付精度が高精度となる。
【0048】
なお、前記取付孔52に係止可能となる位置に複数のクリップ2が設けられたクリップ付ワイヤハーネス1についても、調整治具で複数のクリップ2の取付位置を合わせる作業が不要となる。
【0049】
次に、前述の如く構成されたワイヤハーネス10の製造方法について説明する。
【0050】
まずは、端末にコネクタが設けられた電線3にクリップ2を一体成形したクリップ付ワイヤハーネス1を、布線板上の布線パターンに従って布線治具に配する。次いで、複数本の電線32を粘着テープ35でテープ巻きして形成された電線束31を、前記布線パターンに従って布線されたクリップ付ワイヤハーネス1に沿って布線する。
【0051】
次いで、図1に示すように、クリップ2の電線固定部11と電線束31とに粘着テープ41をテープ巻きして、前記電線固定部11に前記電線束31を固定し、ワイヤハーネス10を製造する。なお、クリップ付ワイヤハーネス1の電線3と電線束31とに粘着テープ41をテープ巻きしても良い。このように、調整治具によってクリップ2の位置を調整する必要がないため、簡単な手順および作業でワイヤハーネス10が製造される。
【0052】
次に、前述の如く構成されたワイヤハーネス10を、自動車等のパネル51の取付孔52に取り付ける方法について説明する。
【0053】
まずは、ワイヤハーネス10に設けられているクリップ付ワイヤハーネス1の係止部6をパネル51の取付孔52内に挿通させる。このとき、係止片24のそれぞれの自由端部が互いに近づく方向に弾性変形される。
【0054】
次いで、前記係止部6が前記取付孔52を通過すると、前記係止片6のそれぞれの自由端部が弾性回復力によって、互いに離れる方向に変位する。そして、押圧部6がパネル51を押圧するとともに、係止片24のそれぞれの自由端部の係合段部24aが、前記取付孔52の周縁部に係合する。
【0055】
そして、メンテナンスや修理等でワイヤハーネス10を前記パネル51から取り外す場合には、パネル51に対して略直交する方向かつ該パネル51から遠ざかる方向に前記電線束31および前記電線3を引張って、該電線3を鉤状部12から引き離す。次いで、連結部20をニッパなどの工具で切断し、前記電線3および前記電線固定部11を前記鉤状部12から分離して、電線束31および電線3をパネル51から取り外す。
【0056】
本実施形態によれば、クリップ付ワイヤハーネス1は、パネル51の取付孔52に係止されるクリップ2が電線3に一体成形されたクリップ付ワイヤハーネス1であって、前記クリップ2が、前記電線3に対する相対的な位置が前記パネル51の取付孔52に係止可能な位置に設けられ、前記クリップ2が、本体部5と、前記本体部5から立設されて前記取付孔52に係止される係止部6と、前記係止部6の基端部に設けられて前記パネル51を押圧する押圧部7と、前記本体部5の一端から延長されたオフセット片9と、を備え、前記オフセット片9の先端部には、前記電線3の周囲に一体成形されて該電線3を固定する電線固定部11と、複数本の電線32が束ねられた電線束31に引掛かる鉤状部12と、が設けられ、前記鉤状部12が、前記オフセット片8の先端部側が前記本体部5に対して略直交する方向に曲げられているとともに該先端部から該本体部5側に突出され当該本体部5に対して略平行する方向に突出されて形成されている。
【0057】
このため、クリップ付ワイヤハーネス1は、電線3にクリップ2を一体成形するとともに、前記電線3に対する相対的な位置がパネル51の取付孔52に係止可能な位置に前記クリップ2を設けているので、クリップ2の取付位置がパネル51の取付孔52に係止される位置となる。
【0058】
このため、クリップ付ワイヤハーネス1は、調整治具などでクリップ2の取付位置を位置合わせする作業が不要となる。したがって、クリップ2の取付位置の調整にかかっていた時間を削減して、クリップ付ワイヤハーネス1の製造にかかる所要時間を短時間化することができる。
【0059】
また、クリップ付ワイヤハーネス1は、調整治具などでクリップ2の取付位置を位置合わせする作業が不要となるため、作業員の熟練度に影響を受けることなく、クリップ2の取付位置の取付精度を維持することができる。このため、クリップ2の取付位置の取付精度を高精度化することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、クリップ付ワイヤハーネス1は、前記鉤状部12には、前記電線3と係合する係合爪16が設けられているので、前記電線3を強く引っ張ることで、前記係合爪16と前記電線3との係合状態を解除することができる。
【0061】
このため、クリップ付ワイヤハーネス1は、前記電線3を強く引っ張って、前記鉤状部12から前記電線3を分離することができる。したがって、電線固定部11と前記鉤状部12との間をニッパ等の工具で切断して、前記電線3をパネル51から取り外すことができる。よって、前記パネル51から前記電線3を取り外して、メンテナンスや修理、リサイクルなどが比較的容易に行うことができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、ワイヤハーネス10は、複数本の電線32が束ねられた電線束31に、前述したクリップ付ワイヤハーネス1が設けられている。
【0063】
このため、ワイヤハーネス10は、電線3に対する相対的な位置がパネル51の取付孔52に係止可能な位置に一体成形されたクリップ2を備えたクリップ付ワイヤハーネス1が設けられているので、クリップ2の取付位置がパネル51の取付孔52に係止される位置となる。
【0064】
このため、ワイヤハーネス10は、一つ一つのクリップ2の取付位置の位置合わせが不要となり、ワイヤハーネス10の製造にかかる所要時間を短時間化することができる。
【0065】
また、ワイヤハーネス10は、クリップ2の取付位置がパネル51の取付孔52に係止される位置となるため、一つ一つのクリップ2の取付位置の位置合わせが不要となる。このため、作業員の熟練度に影響を受けることなく、クリップ2の取付位置の取付精度を維持することができる。したがって、クリップ2の取付位置の取付精度を高精度化することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、ワイヤハーネス10は、前記電線束31および前記電線固定部11が、粘着テープ41で捲回されて互いに固定されている。
【0067】
このため、ワイヤハーネス10は、クリップ付ワイヤハーネス1の電線固定具11および電線束31を粘着テープ41で捲回して互いに固定しているので、前記クリップ2を前記電線束31に強固に固定することができる。また、オフセット片6の彎曲した形状によって、電線32を束ねる際に、クリップ2に電線32を束ねやすく、電線束31にしやすい。
【0068】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 クリップ付ワイヤハーネス
2 クリップ
3 電線
5 本体部
6 係止部
7 押圧部
9 オフセット片
10 ワイヤハーネス
11 電線固定部
12 鉤状部
16 係合爪
31 電線束
41 粘着テープ
51 パネル
52 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの取付孔に係止されるクリップが電線に一体成形されたクリップ付ワイヤハーネスであって、
前記クリップが、前記電線に対する相対的な位置が前記パネルの取付孔に係止可能な位置に設けられ、
前記クリップが、本体部と、前記本体部から立設されて前記取付孔に係止される係止部と、前記本体部の一端から延長されたオフセット片と、を備え、
前記オフセット片の先端部には、前記電線の周囲に一体成形されて該電線を固定する電線固定部と、複数本の電線が束ねられた電線束に引掛かる鉤状部と、が設けられ、
前記鉤状部が、前記オフセット片の先端部側が前記本体部に対して略直交する方向に曲げられているとともに該先端部から該本体部側に突出され当該本体部に対して略平行する方向に突出されて形成されていることを特徴とするクリップ付ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記鉤状部には、前記電線と係合する係合爪が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のクリップ付ワイヤハーネス。
【請求項3】
複数本の電線が束ねられた電線束に、請求項1または請求項2に記載のクリップ付ワイヤハーネスが設けられていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項4】
前記電線束および前記電線固定部が、粘着テープで捲回されて互いに固定されていることを特徴とする請求項3に記載のワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−115857(P2013−115857A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257397(P2011−257397)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】