説明

クリップ型集音装置

【課題】クリップで挟んだ加振対象物の極力離れたポイントにて振動音を発生させてもその振動音を集音することを可能とすること。
【解決手段】一方の端部に挟み付け部5が形成されるとともに他方の端部に操作部4が形成されたアーム部材2と、一方の端部に挟み付け部6が形成されるとともに他方の端部下面に操作部3が形成される本体部1とを具備し、アーム部材2側の挟み付け部5と本体部1側の挟み付け部6とが当接するように、ばね17で付勢されているクリップ型の形状とする。そして、本体部1側の挟み付け部6には平面視円形状の突起部15を形成し、この突起部15の表面にピエソ素子8を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打撃対象物を挟んで音出力を行うクリップ型の集音装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
クリップ型の音楽装置が提案されている。例えば、クリップ型の調律器はマイクロフォンを備えていて、このクリップで調律対象楽器を挟み込んでマイクロフォンで集音した音の周波数を検出するものである。例えば、握り部の一方の端部に調律器を取り付けるためのコネクタを備え、挟み付け部の一方の先端部に振動検出素子が取り付けられた調律器用クリップにおいて、振動検出素子が取り付けられた側の挟み付け部のアーム先端部の内側には、中実の滑り止めラバーを取り付けると共に、この挟み付け部の他方のアーム先端部の内側には、中空の滑り止めラバーを取り付けた装置が提案されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−284035号公報(第4−6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このクリップ型の調律器は、楽器の種類が何であってもその楽器の一部にホールド性を良くして取り付ける工夫はなされているものの、集音性についての工夫がなされていない。つまり、挟み付け部によって挟んだ物を打撃して、その振動音を集音するに際して、極力離れたポイントにて打撃による振動音を発生させてもその振動音を集音することの工夫がなされていたものではなかった。このため、例えば、机(挟み込み対象物)をクリップで挟み込んで、この机を打撃すると、このクリップでの挟み込み位置と打撃位置とが離れてしまうと直ぐに打撃による音を集音できなくなってしまっていた。
【0005】
本発明は、かかる従来の課題を解決するためになされたもので、クリップで挟んだ打撃対象物の極力離れたポイントにて打撃による打撃音を発生させてもその音を集音することを可能とする装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、一方の端部に挟み付け部(5)が形成されるとともに他方の端部に操作部(4)が形成されたアーム部材(2)と、一方の端部に挟み付け部(6)が形成されるとともに他方の端部下面に操作部(3)が形成される本体部(1)とを備え、前記アーム部材(2)側の挟み付け部(5)と前記本体部(1)側の挟み付け部(6)とが当接するように付勢手段(17)で付勢されているクリップ型の形状に構成して、
前記本体部(1)側の挟み付け部(6)には平面視円形状の突起部(15)が形成され、この突起部(15)の表面に圧電素子(8)が設けられていることを特徴とするようにした。
【0007】
この発明によれば、先ず、一方の端部に挟み付け部(5)が形成されるとともに他方の端部に操作部(4)が形成されたアーム部材(2)と、一方の端部に挟み付け部(6)が形成されるとともに他方の端部下面に操作部(3)が形成される本体部(1)とを備え、前記アーム部材(2)側の挟み付け部(5)と前記本体部(1)側の挟み付け部(6)とが当接するように付勢手段(17)で付勢されているクリップ型の形状とする。そして、本体部(1)側の挟み付け部(6)には平面視円形状の突起部(15)を形成し、この突起部(15)の表面に圧電素子(8)を設けている。この結果、集音可能な距離が従来よりも長くなることが発明者等によって確認されている。
【0008】
より具体的には、このクリップ型集音装置において、前記圧電素子(8)は、1対の円形状のクッション部材(7a、7b)に挟まれた状態で前記突起部(15)の表面に載置した構成や、このクリップ型集音装置において、前記1対の円形状のクッション部材(7a、7b)に挟まれた状態で前記突起部の表面に載置されている圧電素子(8)を前記クッション部材(7a、7b)も含めて覆うキャップ(9)を設けた構成とすれば、安定した状態で圧電素子を装着することが可能になる。また、アーム部材(2)側の挟み付け部(5)の裏面側には、その下面が円形状であるクリップヘッド(16)を装着した構成とすれば対象物の挟み込みが確実に行われるので好ましい。そして、上記装置において、前記本体部(1)はその両側面を幅方向に対向する側壁部(30a、30b)で囲まれると共にその後面を後壁部(31)で囲まれて、両側壁部(30a、30b)と後壁部(31)とを一体的に形成し、圧電素子(8)に半田付けされた配線を通しこれを保護する保護チューブ(25)を本体部(1)の後壁部(31)に設けた構成にすれば、当該配線を傷めない構造とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クリップで挟んだ打撃対象物の極力離れたポイントにて、打撃による打撃音を発生させても、その音を集音することを可能とするクリップ型集音装置を実現することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】クリップ型集音装置100の側面外観の説明図である。
【図2】クリップ型集音装置100を斜め前方より見た外観の説明図である。
【図3】本体部1を斜め後ろ側から見た平面外観の説明図である。
【図4】クリップ型集音装置100を斜め後ろ側から見た外観の説明図である。
【図5】アーム部材2側の組み立て状態の模式的な説明図である。
【図6】本体部1側の組み立て状態の模式的な説明図である。
【図7】挟み付け部材5の下面の側面構造の説明図である。
【図8】本発明の効果の説明図である。
【図9】本発明の効果を説明する模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1はクリップ型集音装置100の側面外観図、図2はクリップ型集音装置100を斜め前方より見た外観図、図3は本体部1を斜め後ろ側から見た平面外観図、図4はクリップ型集音装置100を斜め後ろ側から見た外観図、図5はアーム部材2側の組み立て状態の模式的な説明図、図6は本体部1側の組み立て状態の模式的な説明図、図7は挟み付け部材5の下面の側面構造の説明図である。なお、図1は操作部4、操作部3を用いて押圧操作した状態を示しており、この場合、挟み付け部5と挟み付け部6とが離れる状態にある。
【0012】
(構成)
本発明の実施形態のクリップ型集音装置100は、アーム部材2の一方の端部には挟み付け部5が形成されるとともに他方の端部には操作部4が形成されている。また、本体部1の一方の端部には、平面視円形状の挟み付け部6が形成されるとともに他方の端部下面に操作部3が形成されており、更に、アーム部材2側の挟み付け部5と本体部1側の挟み付け部6とが当接するようにばね17(付勢手段)で付勢されているクリップ型の形状をしている。
【0013】
本体部1は、その両側面が、本体部1の幅方向に対向するようにして、1対の側壁部30a、30bで囲まれていると共に、その後側面が後壁部31で囲まれていて、両側壁部30a、30bと後壁部31とが一体的に形成されている。圧電素子としての薄膜円形状のピエゾ素子8に半田付けされた配線(不図示)を通しこれを保護する端子保護チューブ25が後壁部31に設けられていて配線を傷めることなく通すことができる構造となっている。なお、不図示ではあるが、実際にはピエゾ素子8の外周縁の一端には被覆を施した電気線が半田付けされてこれが端子保護チューブ25を貫通して外部に延び、例えば増幅器に接続され、この増幅器によって増幅された電圧信号はスピーカから放音されるように電気系が構成されている。
【0014】
また、本体部1の前端部に設けられた平面視円形状の挟み付け部6には、その周囲に溝部12を形成しながら、薄肉で中空(中空の平面形状が円形)の平面視円形状の突起部15が形成されている。また、ピエゾ素子8は、弾力性の有る薄肉の中空(中空の平面形状が円形)の1対のクッション部材7a、7bで挟まれて突起部15に載置、固着(例えば接着等でもよい)されて、これらは、平面形状が円形状のキャップ9で覆われた状態で挟み付け部6に設けられる。つまり、挟み付け部6に設けられた1対の穴部11(図6では手前側が図示されていない)とキャップ9から突出された1対の突起部10(図6では手前側のみ図示)とが嵌り合った状態で装着される構成となっている。かくして、安定した状態でピエゾ素子8(圧電素子)を装着することができることとなる。
【0015】
また、上述した両側面部30a、30bには夫々、対応する位置にピン孔32a、32bが形成されている。そして、ばね17の一端側のばね端部18bを支持固定する一対のばね固定部23a、23bが、本体部1の幅方向で対向するように設けられた両側面部30a、30bの内側に設けられている。
【0016】
一方、側面視、中央部が屈曲しているアーム部材2の前端には挟み付け部5が形成されるとともに、後端には操作部4が形成されている。そして、その略中央部には1対の側面視、略半円状のピン受部24a、24bが幅方向に設けられていて、このピン受部24a、24bの夫々には対応する幅方向の位置にピン孔35が形成されている。また、ばね17は例えば鉄材をコイル状に巻回して構成されており、その両端部はL字型になっていて、一方の端部はばね端部18aとなっており他方の端部はばね端部18bとなっている。そして、ロッド状のピン22は、ばね17のコイル状の中空部に挿通され、このピン22は、両ピン受部24a、24bのピン孔24a、24bを貫通し更に、本体部1の両側壁面30a、30bのピン孔32a、32bに支持される。
【0017】
更に、ばね端子18bは本体部1のばね固定部23a、23bの上縁部に設けられた支持部に支持装着されると共に(図3等参照)、ばね端子18aはアーム部材2の後端部である操作部4の裏面に押さえ付けられるようになっている(図4参照)。ばね17(付勢手段)は、ばね端子18aとばね端子18bとが近接するに従って大きな復元力が働くので、このばね17によって、アーム部材2側の挟み付け部5と本体部1側の挟み付け部6とが当接するように付勢されている。
【0018】
また、その下面が円形状のクリップヘッド16の上面に設けられた軸19が、図7に示すように、アーム部材2の挟み付け部5の裏面側に設けられた係合部20によって係合されるようになっていて、対象物の挟み込みが確実に行われるようになっている。
【0019】
(作用)
先ず、操作部3と操作部4とを押圧して、挟み付け部5と挟み付け部6とを遠ざける。次に、打撃対象物をクリップヘッド16とキャップ9との間に挟み込んで、押圧操作を解除すると打撃対象物が両挟み付け部5、6(より具体的にはクリップヘッド16とキャップ9)により挟み込まれる。この状態で打撃対象物を打撃することによってこの打撃による振動がピエゾ素子8に伝達して、ピエゾ素子8から電圧信号が得られることになる。
【0020】
図8は効果の説明図である。横軸はピエゾ素子8の中心点と打撃ポイントとの距離、縦軸はピエゾ素子8からの出力電圧のレベルを示しており、符号aで示すグラフは本発明によるもの、符号bで示すグラフは従来品によるものである。なお、縦軸はピエゾ素子8の電圧を増幅器で増幅した電圧であり、単位は特に記載していない。例えば、打撃対象物を木製の机として机の端を本発明のクリップ型集音装置100で挟み込んだ場合の実測例を示している。図8を参照して分かるように、ピエゾ素子8の中心点と打撃ポイントとの距離が離れるにしたがってその集音効果に違いが出てくる。しかも出力レベルは距離が「50(cm)」の時、従来品の3倍以上になることを確認している。
【0021】
以上説明してきたように、本発明の実施形態のクリップ型集音装置100によれば、アーム部材2と、本体部1とを備え、アーム部材2側の挟み付け部5と本体部1側の挟み付け部6とが当接するようにばね17で付勢されているクリップ型の形状とする。そして、本体部1側の挟み付け部6には平面視円形状の突起部15を形成し、この突起部15の表面にピエゾ素子8を設けた構造としている。
【0022】
図9は本発明の効果を説明する模式的な説明図である。打撃面に装着したクリップマイク(クリップ型集音装置)では打撃面の振動を電圧信号に変換するが、この時、ピエゾ素子8の破損を防ぐためにはキャップ9内にクッション部材7a、7bを設ける必要がある。しかし、ピエゾ素子8がクッション部材7a、7bによって緩やかに打撃面と接触している状態では、クッション部材7a、7bによって打撃面の振動が減衰してしまうため、小さな振動をピエゾ素子8に伝えることができない。そのため、このようなクリップマイクではマイク近辺の大きな振動しか拾うことができない(図9の符号A参照)。なお、この図において「ケース」は具体的には挟み付け部6に相当する。そこで、ケース内の高さをクッション部材7a、7bの高さに比べて小さいものにして、ピエゾ素子8とクッション部材7a、7bがつぶれるようにした場合を考える(図9の符号B参照)。この場合、クッション部材7a、7bの緩衝効果は小さくなるため、ピエソ素子8に打撃面の振動は到達し易くなる。しかしながら、ピエゾ素子8全体が強く押し付けられた状態にあるため、打撃面の振動を受けたピエゾ素子8の振動は抑制される事になる。そのため、このような構造のクリップマイクでは打撃面の振動時に高域成分が伝わりにくいという欠点がある。
【0023】
そのため、符号Cで示すような、ピエゾ素子8の中心部分に突起を設けて、ピエゾ素子8の中心部分がクッション材7a、7bを介して押されるような構造とする。これによって、打撃面とピエゾ素子8との密着度は向上し、クッション部材7a、7bの緩衝効果は小さくなるものの、ピエゾ素子8の周辺部は比較的自由に振動することができるようになるため、小さな振動や高域成分の振動も拾うことが可能になる。このような構造のクリップマイクでは、打撃面の打撃した位置がクリップマイクから離れていっても、クリップマイクが受け取る打撃振動の信号が極端に小さくならず、打撃面の広い範囲の打撃音を広い周波数特性で拾うことができるようになる。この結果、集音距離が従来よりも長くなるという効果が生じる。しかも、圧電素子は一般に固有の音質を持つがこの固有の音質を持つことも軽減される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上説明してきたように、音楽分野等において打撃対象物を挟み込み集音するために利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 本体部
2 アーム部
3 操作部
4 操作部
5 挟み付け部
6 挟み付け部
7a、7b クッション部材
8 ピエゾ素子
9 キャップ
10 突起部
11 穴部
12 溝部
15 突起部
16 クリップヘッド
17 ばね
18a、18b ばね端子
19 軸
22 ピン
23a、23b ばね固定部
24a、24b ピン受部
25 端子保護チューブ
30a、30b 側壁部
31 後壁部
32a、32b ピン孔
35 ピン孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部に挟み付け部が形成されるとともに他方の端部に操作部が形成されたアーム部材と、一方の端部に挟み付け部が形成されるとともに他方の端部下面に操作部が形成される本体部とを備え、前記アーム部材側の前記挟み付け部と前記本体部側の前記挟み付け部とが当接するように付勢手段で付勢されているクリップ型の形状に構成して、
前記本体部側の前記挟み付け部には平面視円形状の突起部が形成され、この突起部の表面に圧電素子が設けられていることを特徴とするクリップ型集音装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップ型集音装置において、
前記圧電素子は、1対の円形状のクッション部材に挟まれた状態で前記突起部の表面に載置されていることを特徴とするクリップ型集音装置。
【請求項3】
請求項2に記載のクリップ型集音装置において、
前記1対の円形状のクッション部材に挟まれた状態で前記突起部の表面に載置されている圧電素子を前記クッション部材も含めて覆うキャップを設けたことを特徴とするクリップ型集音装置。
【請求項4】
請求項1、2および3の内のいずれか一項に記載のクリップ型集音装置において、
前記アーム部材側の挟み付け部の裏面側には、その下面が円形状であるクリップヘッドが装着されていることを特徴とするクリップ型集音装置。
【請求項5】
請求項1、2、3および4の内のいずれか一項に記載のクリップ型集音装置において、
前記本体部は、その両側面を幅方向に対向する側壁部で囲まれると共にその後面を後壁部で囲まれて、両側壁部と後壁部とが一体的に形成されており、
前記圧電素子に半田付けされた配線を通しこれを保護する保護チューブを前記本体部の後壁部に設けたことを特徴とするクリップ型集音装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−175307(P2012−175307A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34058(P2011−34058)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000130329)株式会社コルグ (111)
【Fターム(参考)】