説明

クリップ装置

【課題】ベース部材、開閉部材、及びダブルトーションばねを連結する作業工程を少なくすることができるクリップ装置の提供。
【解決手段】ベース部材1と開閉部材3が両方の軸受部11,15と支軸17を介して連結され、ベース部材1と開閉部材3との間に設けられたダブルトーションばね2により挟持部21が離間して付勢するクリップ装置において、ベース部材1は、ダブルトーションばね2を軸受部11間で圧縮保持する一対の軸受部11と、ダブルトーションばね2の巻回部2bの軸芯方向に直交する方向のうちベース部材1に平行する方向に対してダブルトーションばね2を位置決めする位置決め片12と、軸受部11と位置決め片12との間に穿設され、ダブルトーションばね2の先端を挿入する穴13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース部材と開閉部材が両方の軸受部と支軸を介して連結され、ベース部材と開閉部材との間に設けられた弾性付勢部材により挟持部が離間して付勢するクリップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクリップ装置の従来技術として、上挟持体と下挟持体の間にダブルトーション形のコイルばねを軸支し、上挟持体と下挟持体を重ね合わせると共に、コイルばねの中央折返し部を上摘部、下摘部の一方に当接させ、コイルばねの両巻端を上摘部、下摘部の他方に当接させた髪止めクリップが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この髪止めクリップに備えられるダブルトーション形のコイルばね、すなわちダブルトーションばねは、両端に形成され、下挟持体、すなわちベース部材に当接する固定部と、この固定部の一端に形成された巻回部と、これらの各巻回部を連結し、上挟持体、すなわち開閉部材に当接する中央折返し部、すなわち当接部とを有している。そして、髪止めクリップは、ベース部材の軸受部の貫通孔、開閉部材の軸受部の貫通孔、及びダブルトーションばねの巻回部の軸芯に支軸を挿通させることにより、ベース部材、開閉部材、及びダブルトーションばねが一体型となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された従来技術の髪止めクリップ装置の組立作業では、まずベース部材と開閉部材との間にダブルトーションばねを配置し、ダブルトーションばねの当接部を開閉部材に当接させると共に、ダブルトーションばねの各固定部の先端をベース部材に当接させる。そして、ベース部材の軸受部の貫通孔、開閉部材の軸受部の貫通孔、及びダブルトーションばねの各巻回部の軸芯が軸芯方向に重なるようにするために、ベース部材及び開閉部材を圧縮する。このとき、片手でベース部材と開閉部材をダブルトーションばねの抗力に対抗して圧縮しつつ、もう一方の片手で支軸をベース部材の取付片の貫通孔、開閉部材の取付片の貫通孔、及びダブルトーションばねの各巻回部の回転軸に挿通させる困難な作業を伴う。もしくは、専用の治具が必要となる。
【0006】
このように、片手によってベース部材と開閉部材を介してダブルトーションばねを押え付けた状態で作業を行うので、ダブルトーションばねはベース部材と開閉部材との間でずれ落ち易い不安定な状態で保持される。そのため、ダブルトーションばねへの力の伝達がベース部材の幅方向において均等に上手く伝わらないことがある。この場合、ダブルトーションばねの各巻回部が位置ずれして各巻回部の軸芯が軸芯方向に重ならないので、支軸をダブルトーションばねの各巻回部の軸芯に挿通させることが困難となる。その結果、ベース部材、開閉部材、及びダブルトーションばねを連結する作業が煩雑となっている。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、ベース部材、開閉部材、及びダブルトーションばねを連結する作業工程を少なくすることができるクリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のクリップ装置は、ベース部材と開閉部材が両方の軸受部と支軸を介して連結され、前記ベース部材と前記開閉部材との間に設けられた弾性付勢部材により挟持部が離間して付勢するクリップ装置において、前記弾性付勢部材はダブルトーションばねから成り、前記ベース部材は、前記ダブルトーションばねを前記軸受部間で圧縮保持する一対の前記軸受部と、前記ダブルトーションばねの巻回部の軸芯方向に直交する方向のうち前記ベース部材に平行する方向に対して前記ダブルトーションばねを位置決めする位置決め片と、前記一対の軸受部の内側に穿設され、前記ダブルトーションばねの先端を挿入する穴とを有することを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係るクリップ装置は、前記発明において、前記ベース部材は、前記開閉部材が取り付けられる筐体から成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のクリップ装置は、一工程でダブルトーションばねをベース部材の所定位置に保持させることが可能なので、作業工程を大幅に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るクリップ装置の第1実施形態の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す本発明の第1実施形態を正面から見た図である。
【図3】図1に示す本発明の第1実施形態を側面から見た図である。
【図4】本発明に係るクリップ装置の第2実施形態の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るクリップ装置を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0013】
[第1実施形態]
本発明に係るクリップ装置の第1実施形態は、例えば電子機器等の筐体に装着させるものであり、図1〜図3に示すように図示しない筐体に取り付けられるベース部材1と、一端が支軸17を介して連結される開閉部材3と、ベース部材1と開閉部材3との間に配置され、支軸17に介装される弾性付勢部材とを備えている。この弾性付勢部材は、ダブルトーションばね2から成り、ダブルトーションばね2は、両端に形成された固定部2aと、固定部2aの一端に形成された巻回部2bと、これらの各巻回部2bを連結し、開閉部材3に当接する当接部2cとを有している。
【0014】
ベース部材1は、ダブルトーションばね2を軸受部11間で圧縮保持する一対の第1の軸受部11と、ダブルトーションばね2の巻回部2bの軸芯方向に直交する方向のうちベース部材1に平行する方向に対してダブルトーションばね2を位置決めする位置決め片12と、一対の第1の軸受部11の内側、例えば第1の軸受部11と位置決め片12との間に穿設され、ダブルトーションばね2の固定部2aの先端を挿入する穴13とを有している。また、一対の第1の軸受部11の間の間隔は、ダブルトーションばね2の巻回部2bの軸芯方向に沿う幅の大きさよりも少し小さく設定されている。
【0015】
位置決め片12は、ダブルトーションばね2の巻回部2bの形状に沿って半円弧状に形成され、巻回部2bを嵌合する嵌合部12aを有している。開閉部材3は、一対の第1の軸受部11の外側にそれぞれ配置され、一対の第1の軸受部11にそれぞれ対向する一対の第2の軸受部15と、ダブルトーションばね2の当接部2cを支持する支持片20とを含んでいる。そして、ベース部材1の第1の軸受部11はダブルトーションばね2の巻回部2bの軸芯方向に沿う貫通孔11aを有し、開閉部材3の第2の軸受部15は巻回部2bの軸芯方向に沿う貫通孔15aを有している。すなわち、これらの貫通孔11a,15aの位置は、巻回部2bを位置決め片12の嵌合部12aに嵌合させたときに巻回部2bの軸芯と貫通孔11a,15aの軸芯が重なるように設定されている。なお、開閉部材3は、両端のうちベース部材1に対して開閉する側の一端がコ字型に形成され、ベース部材1と開閉部材3との間に配置された物を挟持する挟持部21を有している。
【0016】
そして、本発明の第1実施形態は、第1、第2の軸受部11,15の貫通孔11a,15a及びダブルトーションばね2の巻回部2bの軸芯に挿入する支軸17と、この支軸17を各貫通孔11a,15a及び巻回部2bの軸芯に挿入した状態で貫通孔15aに蓋をするキャップ18とを有している。支軸17は、筒状に形成され、軸芯方向に沿って割れ目が形成されて空芯の軸となっており、この空芯は当該軸の穴径にフィットした軸部品取り付け用の治具棒を通すために用いられる。
【0017】
次に、本発明に係るクリップ装置の第1実施形態の動作を説明する。
【0018】
本発明の第1実施形態では、ベース部材1、ダブルトーションばね2、及び開閉部材3を連結部材によって連結する場合、ベース部材1に備えられた第1の軸受部11間にダブルトーションばね2を配置すると、一対の第1の軸受部11の間隔はダブルトーションばね2の巻回部2bの軸芯方向に沿う幅の大きさよりも少し小さく設定されているので、ダブルトーションばね2が第1の軸受部11によって圧縮され、ベース部材1の幅方向に対して動かないように保持される。
【0019】
このとき、ベース部材1の位置決め片12に形成された半円弧状の嵌合部12aにダブルトーションばね2の各巻回部2bを嵌合させると、位置決め片12によってダブルトーションばね2が巻回部2bの軸芯方向に直交する方向のうちベース部材1に平行する方向に対して位置決めされる。これにより、ダブルトーションばね2の各巻回部2bは、軸芯が重なった状態で保持される。さらに、第1の軸受部11の貫通孔11aの位置は、ダブルトーションばね2の各巻回部2bを位置決め片12の嵌合部12aに嵌合させたときに各巻回部2bの軸芯と貫通孔11aの軸芯が重なるように設定されているので、各巻回部2bが位置決め片12に保持されると同時に、各巻回部2bの軸芯及び貫通孔11aの軸芯が重なる。
【0020】
また、ダブルトーションばね2の各固定部2aの先端を第1の軸受部11と位置決め片12との間に穿設された穴13に挿入することにより、第1の軸受部11の貫通孔11a、開閉部材3の第2の軸受部15の貫通孔15a、及びダブルトーションばね2の各巻回部2bの軸芯に支軸17を挿通させる作業中に各巻回部2bが位置決め片12の嵌合部12aから外れないように固定される。この状態で、開閉部材3の支持片20をダブルトーションばね2の当接部2に当接してダブルトーションばね2を圧縮し、第1、第2の軸受部11,15の貫通孔11a,15a及び各巻回部2bの軸芯に支軸17を挿通させる。そして、図2、図3に示すように、キャップ18によって貫通孔15aに蓋をする。
【0021】
このように構成した本発明の第1実施形態は、ベース部材1、ダブルトーションばね2、及び開閉部材3を連結する作業において、ベース部材1の第1の軸受部11間にダブルトーションばね2を圧縮保持させると共に、ベース部材1の位置決め片12の嵌合部12aにダブルトーションばね2の各巻回部2bを嵌合させる簡単な作業を行うだけで各巻回部2bの軸芯及び第1の軸受部11の貫通孔11aの軸芯が重なるようにダブルトーションばね2を配置することができる。
【0022】
そして、第2の軸受部15の貫通孔15aの軸芯を巻回部2bの軸芯と合わせるために、開閉部材3の支持片20がダブルトーションばね2の当接部2cを支持した状態で開閉部材3によってダブルトーションばね2をベース部材1に押え付けても、ダブルトーションばね2は、第1の軸受部11、位置決め片12の嵌合部12a、及び穴13に保持されて安定した状態を保つので、各巻回部2bが位置ずれすることなく第1、第2の軸受部11,15の貫通孔11a,15a及び各巻回部2bの軸芯に支軸17を容易に挿通させることができる。このように、ベース部材1、ダブルトーションばね2、及び開閉部材3を連結する作業の工程を少なくすることができ、組立作業を容易に行うことができる。
【0023】
また、本発明の第1実施形態は、支軸17は、筒状に形成されており、弾性を有するように軸芯方向に沿って割れ目が形成されているので、第1、第2の軸受部11,15の貫通孔11a,15a及び各巻回部2bの軸芯に支軸17を挿入させると、支軸17が弾性によって動かないように固定される。これにより、装置の安定した構造を実現することができる。
【0024】
また、本発明の第1実施形態は、支軸17を各貫通孔11a,15a及び巻回部2bの軸芯に挿入した状態で貫通孔15aにキャップ18で蓋をすることにより、装置の意匠性を良くすることができる。
【0025】
[第2実施形態]
図4は本発明に係るクリップ装置の第2実施形態の構成を示す斜視図である。
【0026】
本発明の第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態では、ベース部材1を電子機器等の図示しない筐体に装着させる場合について説明したが、図4に示すように第2実施形態では、ベース部材1は、開閉部材3が取り付けられる筐体22から成っていることである。そして、この筐体22は、上面に電波を受信するアンテナ23を有している。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0027】
このように構成した本発明の第2実施形態は、ベース部材1が、開閉部材3が取り付けられる筐体22から成っており、開閉部材3とダブルトーションばね2を筐体22に直接取り付けるだけで良いので、ベース部材1を筐体22に取り付ける作業工程を行わなくて済み、装置の組立工数を減らすことができる。これにより、組立作業の効率を向上させることができる。
【0028】
なお、本発明の第1、第2実施形態は、第1、第2の軸受部11,15の貫通孔11a,15a及びダブルトーションばね2の巻回部2bの軸芯に挿入する支軸17と、この支軸17を各貫通孔11a,15a及び巻回部2bの軸芯に挿入した状態で貫通孔15aに蓋をするキャップ18とを有している場合について説明したが、支軸17及びキャップ18の代わりに、例えばボルト及びナットを有してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 ベース部材
2 ダブルトーションばね
2a 固定部
2b 巻回部
2c 当接部
3 開閉部材
11 第1の軸受部
11a 貫通孔
12 位置決め片
12a 嵌合部
13 穴
15 第2の軸受部
15a 貫通孔
17 支軸
18 キャップ
20 支持片
21 挟持部
22 筐体
23 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と開閉部材が両方の軸受部と支軸を介して連結され、前記ベース部材と前記開閉部材との間に設けられた弾性付勢部材により挟持部が離間して付勢するクリップ装置において、
前記弾性付勢部材はダブルトーションばねから成り、
前記ベース部材は、前記ダブルトーションばねを前記軸受部間で圧縮保持する一対の前記軸受部と、前記ダブルトーションばねの巻回部の軸芯方向に直交する方向のうち前記ベース部材に平行する方向に対して前記ダブルトーションばねを位置決めする位置決め片と、前記一対の軸受部の内側に穿設され、前記ダブルトーションばねの先端を挿入する穴とを有することを特徴とするクリップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップ装置において、
前記ベース部材は、前記開閉部材が取り付けられる筐体から成ることを特徴とするクリップ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−190818(P2011−190818A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54890(P2010−54890)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(390033363)株式会社ゼネラル リサーチ オブ エレクトロニックス (32)
【Fターム(参考)】