説明

クリップ部材及びエアバッグモジュール装備シート

【課題】エアバッグの高い展開性能を保ったまま、力布の取付部周辺がコンパクトで、取付の容易なクリップ部材及びこのクリップ部材を備えたエアバッグモジュール装備シートを提供する。
【解決手段】引張力を伝達する布状体32に接続されるクリップ部材50である。クリップ部材50は、布状体32の一端に接続される接続部55と、被取付部10の端部12に係止される溝53を備える。クリップ部材50は、被取付部10の端部12に係止したときに、布状体32から伝達される引張力により接続部55に生じる回転力を減らすように設けられ、布状体32と被取付部10とを連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップ部材及びエアバッグモジュール装備シートに係り、シートバックの側部に設けられたエアバッグモジュールを包み込む力布を係止するクリップ部材及びエアバッグモジュール装備シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグモジュール装備シートとしては、シートバックフレームのサイドフレームにエアバッグモジュールを取り付けたシートであって、トリムカバーの各端末と二枚の力布の片端末を共縫いしてトリムカバーの破断部を形成し、破断部からトリムカバーの内側に引き込んだ二枚の力布でエアバッグモジュールを包み込んで、このエアバッグモジュールを含むシートバック全体をトリムカバーで被包するものが提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、サイドフレームのエアバッグモジュール逆側に、二つのリスティングワイヤが、知恵の輪状に相絡み合うように設けられている。破断部からエアバッグモジュールの両側に引き込まれた2枚の力布の端末は、エアバッグモジュールを包み込むようにして二つのリスティングワイヤまで伸ばされ、リスティングワイヤのそれぞれに取り付けられている。
特許文献1の発明によれば、力布でエアバッグモジュールを直接包み込めると共に、各力布を端部に備えるリスティングワイヤで確実に引張止着できるため、力布により、エアバッグの膨張圧をトリムカバーの破断部となる縫い合わせ目に、効率よく集中させることができ、エアバッグの高い展開性能が達成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4543270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の発明では、リスティングワイヤを知恵の輪状に絡み合うように設けているため、リスティングワイヤの構造が複雑であり、取付工程も煩雑であった。また、力布をサイドフレームに取り付けるためにリスティングワイヤを要するため、サイドフレーム周辺が大型になり、よりコンパクトな構成が求められていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、エアバッグの高い展開性能を保ったまま、力布の取付部周辺がコンパクトで、取付の容易なクリップ部材及びこのクリップ部材を備えたエアバッグモジュール装備シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、請求項1のクリップ部材によれば、引張力を伝達する布状体に接続されるクリップ部材であって、該クリップ部材は、前記布状体の一端に接続される接続部と、被取付部の端部に係止される溝と、を備え、前記被取付部の前記端部に係止したときに、前記布状体から伝達される引張力により前記接続部に生じる回転力を減らすように設けられ、前記布状体と前記被取付部とを連結すること、により解決される。
【0008】
このように、引張力を伝達する布状体に接続したクリップ部材で布状体と被取付部とを連結するため、布状体と被取付部との接続が解除されるときに、布状体の引き摺りや撚れを生じることがなく、かつ、布状体の取付部周辺をコンパクトにすることができる。また、クリップ部材は、被取付部の端部に係止したときに、布状体から伝達される引張力により接続部に生じる回転力を減らすように設けられるため、布状体と被取付部との接続状態において、クリップ部材が必要以上に回転して、布状体が被取付部から外れてしまうことを防ぐことができる。
また、布状体とクリップ部材と被取付部のみにより、布状体と被取付部を連結できるため、構成が単純で、組み付け作業も簡単になる。更に、被取付部の構成が変化しても、形状変更等を行うことなく、同じ部品を利用できる。
【0009】
また、前記課題は、請求項2のクリップ部材によれば、エアバッグモジュール装備シートのトリムカバーの破断部に端部が取り付けられる力布に接続されるクリップ部材であって、該クリップ部材は、前記力布の一端に接続される接続部と、前記シートのシートバックフレームのサイドフレームの端部に係止される溝と、を備え、前記サイドフレームの前記端部に係止したときに、前記力布から伝達される引張力により前記接続部に生じる回転力を減らすように設けられ、前記力布と前記サイドフレームとを連結すること、により解決される。
このように構成しているため、本発明のクリップ部材を、エアバッグモジュールをサイドフレームに取り付けたシートに適用できる。
【0010】
また、力布の他端部に取り付けたクリップ部材で力布とサイドフレームとを連結するため、エアバッグの膨張展開を阻害せずに高い展開性能を保持しつつ、力布の取付部周辺をコンパクトにすることができる。また、クリップ部材は、フレームの端部に係止したときに、布状体から伝達される引張力により接続部に生じる回転力を減らすように設けられるため、エアバッグの非展開時に、クリップ部材が必要以上に回転して、力布がサイドフレームから外れてしまうことを防ぐことができる。その結果、エアバッグの非展開時において、クリップ部材を介して力布とサイドフレームとの間の十分な連結力を維持するという作用を、単純な構成により達成できる。
また、力布とクリップ部材とサイドフレームのみにより、力布とサイドフレームを連結できるため、構成が単純で、組み付け作業も簡単になる。更に、エアバッグ展開部やエアバッグの形状が変化しても、形状変更等を行うことなく、同じ部品を利用できる。
【0011】
このとき、請求項3のように、前記クリップ部材は、前記布状体から伝達される引張力を吸収して前記回転力を減じる引張力吸収部を備えていると好適である。
このように構成しているため、接続部を中心として生じる回転力を減じることができ、簡単な構成で、エアバッグの非展開時に力布がサイドフレームから外れ難くすることができる。
【0012】
このとき、請求項4のように、前記サイドフレームは、端部に、湾曲したフランジを備え、前記クリップ部材には、前記フランジと前記サイドフレームとに囲まれる領域の形状に略沿った幅広部が、前記溝に隣接して形成されていると好適である。
このように、クリップ部材には、フランジの内壁面の形状に略沿った幅広部が、溝に隣接して形成されているため、幅広部がフランジの内壁面内部で動くことを規制でき、クリップ部材のがたつきを防止できる。
【0013】
このとき、請求項5のように、前記力布の前記端部には、トリムプレートが固定され、前記幅広部には、前記トリムプレートを係止するための係止部が設けられ、前記トリムプレートは前記エアバッグが膨張展開する力により前記係止部から脱離可能に構成されていると好適である。
このように構成しているため、トリムプレートが係止部から外れることにより、エアバッグの膨張展開時、力布をサイドフレームから容易に解放できる。また、トリムプレートの強度やトリムプレートと係止部の形状等を適宜選択することにより、どの程度の力が掛かったときに力布をサイドフレームから解放するかを容易に設定できる。
【0014】
このとき、請求項6のように、前記係止部は、前記幅広部の前記サイドフレーム端部逆側に設けられた溝であると好適である。
このように構成しているため、力布がサイドフレームとクリップ部材との間に挟まれず、エアバッグの素早い膨張展開が可能となる。また、エアバッグの膨張展開時に、力布とサイドフレーム,クリップ部材との間の摩擦により力布が引き摺られることを防止できる。
【0015】
このとき、請求項7のように、前記フランジ及び前記幅広部の一方は、前記フランジと前記幅広部とを相互に固定するための突起を有し、他方は、前記突起に対応する位置に、前記突起に係合する凹部を有すると好適である。
このように構成しているため、クリップ部材がフランジの内壁面内部で動くことを規制でき、クリップ部材のがたつきを防止できる。
【0016】
このとき、請求項8のように、前記サイドフレームは、前記幅広部に当接して前記クリップ部材の回転を規制する回転規制部を有すると好適である。
このように構成しているため、クリップ部材が抜け落ちる方向への回転が規制でき、エアバッグが膨張展開していない非展開時の抜け落ちを防止できる。
【0017】
このとき、請求項9のように、前記クリップ部材は、一体成形されてなると好適である。
このように構成しているため、シートに組み付けたときのクリップ部材による雑音発生が防止できる。
【0018】
前記課題は、請求項10のエアバッグモジュール装備シートによれば、エアバッグを格納するエアバッグモジュールを装備したシートであって、該シートのサイド部に沿って延出するサイドフレームと、該サイドフレームに取り付けられる前記エアバッグモジュールと、前記シートのトリムカバーと、該トリムカバーの破断部に端部が取付けられる力布と、を有し、前記力布には、クリップ部材が接続され、該クリップ部材は、前記力布の一端に接続される接続部と、前記サイドフレームの端部に係止される溝と、を備え、前記サイドフレームの前記端部に係止したときに、前記力布から伝達される引張力により前記接続部に生じる回転力を減らすように設けられ、前記力布と前記サイドフレームとを連結すること、により解決される。
【0019】
このとき、請求項11のように、前記サイドフレームによって、前記クリップ部材が係止される位置で前記引張力を受け止め可能に構成されていると好適である。
このように構成しているため、エアバッグの非展開時において、力布とサイドフレームとの間の十分な連結力を維持することができる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、引張力を伝達する布状体に接続したクリップ部材で布状体と被取付部とを連結するため、布状体と被取付部との接続が解除される瞬間に、布状体の引き摺りや撚れを生じることがなく、かつ、布状体の取付部周辺をコンパクトにすることができる。また、クリップ部材は、被取付部の端部に係止したときに、布状体から伝達される引張力により接続部に生じる回転力を減らすように設けられるため、布状体と被取付部との接続状態において、クリップ部材が必要以上に回転して、布状体が被取付部から外れてしまうことを防ぐことができる。その結果、エアバッグの非展開時において、クリップ部材を介して布状体と被取付部との間の十分な連結力を維持するという作用を、単純な構成により達成できる。
また、布状体とクリップ部材と被取付部のみにより、布状体と被取付部を連結できるため、構成が単純で、組み付け作業も簡単になる。更に、被取付部の構成が変化しても、形状変更等を行うことなく、同じ部品を利用できる。
【0021】
請求項2及び10の発明によれば、力布の他端部に取り付けたクリップ部材で力布とサイドフレームとを連結するため、エアバッグの膨張展開を阻害せずに高い展開性能を保持しつつ、力布の取付部周辺をコンパクトにすることができる。また、クリップ部材は、フレームの端部に係止したときに、布状体から伝達される引張力により接続部に生じる回転力を減らすように設けられるため、エアバッグの非展開時に、クリップ部材が必要以上に回転して、力布がサイドフレームから外れてしまうことを防ぐことができる。
また、力布とクリップ部材とサイドフレームのみにより、力布とサイドフレームを連結できるため、構成が単純で、組み付け作業も簡単になる。更に、エアバッグ展開部やエアバッグの形状が変化しても、形状変更等を行うことなく、同じ部品を利用できる。
【0022】
請求項3の発明によれば、接続部を中心として生じる回転力を減じることができ、簡単な構成で、エアバッグの非展開時に力布がサイドフレームから外れ難くすることができる。
請求項4の発明によれば、クリップ部材には、フランジの内壁面の形状に略沿った幅広部が、溝に隣接して形成されているため、幅広部がフランジの内壁面内部で動くことを規制でき、クリップ部材のがたつきを防止できる。
【0023】
請求項5の発明によれば、トリムプレートが係止部から外れることにより、エアバッグの膨張展開時、力布をサイドフレームから容易に解放できる。また、トリムプレートの強度やトリムプレートと係止部の形状等を適宜選択することにより、どの程度の力が掛かったときに力布をサイドフレームから解放するかを容易に設定できる。
請求項6の発明によれば、力布がサイドフレームとクリップ部材との間に挟まれないため、エアバッグの素早い膨張展開が可能となる。また、エアバッグの膨張展開時に、力布とサイドフレーム,クリップ部材との間の摩擦により力布が引き摺られることを防止できる。
【0024】
請求項7の発明によれば、クリップ部材がフランジの内壁面内部で動くことを規制でき、クリップ部材のがたつきを防止できる。
請求項8の発明によれば、クリップ部材が抜け落ちる方向への回転が規制でき、エアバッグが膨張展開していない非展開時の抜け落ちを防止できる。
請求項9の発明によれば、シートに組み付けたときのクリップ部材による雑音発生が防止できる。
請求項11の発明によれば、エアバッグの非展開時において、力布とサイドフレームとの間の十分な連結力を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係るエアバッグモジュール装備シートの外観図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るエアバッグモジュール装備シートのシートフレームの斜視図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るトリムカバーと力布を破断部で共縫いした状態を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るクリップ部材を介して力布をシートバックフレームに連結した状態を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るクリップ部材をシートバックフレームに設置した状態を示す断面説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るクリップ部材を介して力布をシートバックフレームに連結した状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るクリップ部材の摺動,回転を阻止する突起を示す説明図である。
【図9】クリップ部材の変形例を示す断面図である。
【図10】クリップ部材の他の変形例を示す断面図である。
【図11】クリップ部材の更に他の変形例を示す断面図である。
【図12】クリップ部材の更に他の変形例を示す断面図である。
【図13】クリップ部材の更に他の変形例を示す断面図である。
【図14】クリップ部材の更に他の変形例を示す断面図である。
【図15】クリップ部材の更に他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係るクリップ部材及びエアバッグモジュール装備シートについて、図1〜図15を参照しながら説明する。
以下、被取付部の一例としてサイドフレーム10に適用した場合について説明するが、被取付部は、これに限定されるものではなく、車両の他のフレームや、パイプ状部材の端部等にも適用可能である。また、被取付部は、車両の部材に限定されるものでなく、例えば、店頭やレジ前の行列管理に用いられるベルトパーテーションにおいて、ベルトを係止するポールの係止部等にも適用可能である。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係るエアバッグモジュール装備シートの外観図である。図2は、本発明の一実施形態に係るエアバッグモジュール装備シートのシートフレームの斜視図である。図3は、図1のA−A断面図である。図4は、本発明の一実施形態に係るトリムカバーと力布を破断部で共縫いした状態を示す説明図である。図5は、本発明の一実施形態に係るクリップ部材を介して力布をシートバックフレームに連結した状態を示す説明図である。図6は、本発明の一実施形態に係るクリップ部材をシートバックフレームに設置した状態を示す断面説明図である。図7は、本発明の一実施形態に係るクリップ部材を介して力布をシートバックフレームに連結した状態を示す斜視図である。図8は、本発明の一実施形態に係るクリップ部材の摺動,回転を阻止する突起を示す説明図である。図9は、クリップ部材の変形例を示す断面図である。図10は、クリップ部材の他の変形例を示す断面図である。図11は、クリップ部材の更に他の変形例を示す断面図である。図12は、クリップ部材の更に他の変形例を示す断面図である。図13は、クリップ部材の更に他の変形例を示す断面図である。図14は、クリップ部材の更に他の変形例を示す断面図である。図15は、クリップ部材の更に他の変形例を示す断面図である。
【0028】
本実施の形態に係る車両用シートSは、図1で示すように、シートバックS1、着座部S2、ヘッドレストS3より構成されている。
【0029】
車両用シートSの中には、図2に示すようなシートフレームFが設けられている。シートフレームFは、シートバックS1のフレームであるシートバックフレーム1と、着座部S2のフレームである着座フレーム2とから構成されている。着座フレーム2とシートバックフレーム1は、リクライニング機構3を介して連結されている。シートバックフレーム1および着座フレーム2の外側には、クッションおよびトリムカバーが設けられることで、シートバックS1および着座部S2が構成される。
【0030】
シートバックS1は、図1,図2に示すように、シートバックフレーム1と、シートバックフレーム1上に載置されるクッションパッド5と、シートバックフレーム1及びクッションパッド5を覆うトリムカバー4と、トリムカバー4の破断部40に一端が縫い付けられた一対の力布31,32を主要構成要素とする。
シートバックフレーム1は、図1,図2に示すように、左右に離間して配置され上下方向に延在するサイドフレーム10と、このサイドフレーム10の上端部を連結する上部フレーム21と、下端部を連結する下部フレーム22とにより枠状に構成されている。
上部フレーム21には、ピラー支持部23が設けられ、ピラー支持部23には、図示しないヘッドレストフレームが設けられる。ヘッドレストフレームの外側にクッション部材を設けることでヘッドレストS3が構成される。
【0031】
サイドフレーム10は、板金をプレス加工して成形され、図3に示すように、ほぼ平板状の側板11と、この側板11の前端部を内側にU字状に折り返してなる前縁部12と、後端部をL字型に内側に屈曲させた後縁部13とを有している。前縁部12が、特許請求の範囲のフランジに該当する。
サイドフレーム10には、エアバッグモジュール6が固定されている。
【0032】
エアバッグモジュール6は、公知の構成からなり、特に図示しないが、インフレータをリテーナで保持し、そのリテーナの締付けボルトをエアバッグより外部に突出させて、インフレータをリテーナと一体にエアバッグの取付基部寄り内部に組み付け、更に、リテーナの締付けボルトを外部に突出させて全体をモジュールケースの内部に収容し、衝撃センサー等の関連機器と回路構成するのに必要なハーネス,コネクタを備えることにより組み立てられている。
【0033】
モジュールケースとしては、開閉可能なリッドをケース本体にヒンジ接続したもの、または、V溝等による脆弱部を前部面に設けたケース本体とロアプレートとからなるハウジングにより、エアバッグの膨張圧で開放可能なものが備え付けられている。
クッションパッド5には、図3に示すように、エアバッグモジュール6を格納するための空間7が形成されている。
【0034】
トリムカバー4は、公知の材料からなり、座面中央から左右の土手面を被包する前面マチ部41と周側面から背面に至る側面マチ部42とを縫い合わせ、更に、不図示の背面マチ部を不図示のスライドファスナーで側面マチ部42に対して開閉自在に連結することにより袋状に縫製されている。
トリムカバー4には、前面マチ部41と側面マチ部42との土手部において膨出した頂点に、破断部40が形成されている。破断部40は、前面マチ部41と側面マチ部42の端部を、通常の使い勝手に耐えられる強度を保ちつつ、エアバッグの膨張による引張力で裂断可能なように、相互に縫製されている。
【0035】
第一の力布31,第二の力布32は、伸縮性の小さい布状素材からなり、エアバッグの膨張による応力を破断部40に伝達する役割を果たす。
第一の力布31は、図4に示すように、引張力が掛かる方向に長くなった略矩形の布からなり、一端は、破断部40で、トリムカバー4の前面マチ部41と側面マチ部42の端部及び第二の力布32の一端と共縫いされている。第一の力布31の他端には、樹脂製からなり断面略J字状で長尺の係止部材33が縫い付けられている。
【0036】
第二の力布32は、図4に示すように、破断部40側の辺34と破断部40逆側の辺35とが略平行で、破断部40側の辺34が長く形成された略台形の布からなる。破断部40逆側の辺35は、矩形状に突出したトリムプレート37取付用の取付部36が、複数設けられている。
第二の力布32の破断部40側の辺34は、破断部40で、トリムカバー4の前面マチ部41と側面マチ部42の端部及び第一の力布31の一端と共縫いされている。第二の力布32逆側の辺35の取付部36には、それぞれ、図4,図5に示すように、トリムプレート37が縫い付けられている。
トリムプレート37は、硬質樹脂製からなる矩形の板体である。
【0037】
第一の力布31,第二の力布32は、図3に示すように、破断部40より空間7へ引き込まれている。第一の力布31の他端の係止部材33は、サイドフレーム10の後縁部13に係止され、第二の力布32の他端のトリムプレート37は、クリップ部材50を介してサイドフレーム10の前縁部12に係止されている。
【0038】
クリップ部材50は、硬質樹脂から一体成形されてなり、図5,図6に示すように、サイドフレーム10の前縁部12の内壁の形状に略沿った形状を有する幅広部51と、幅広部51の前縁部12の端部側に形成されたクリップ部52と、クリップ部52の幅広部51逆側の端部が第二の力布32の伸びる側へ延出し、前縁部12の外側の面に覆い被さるように設けられた延出部54と、第二の力布32から伝達される引張力を吸収して前記接続部に生じる回転力を減じる引張力吸収部56,57を備えている。
クリップ部52には、幅広部51の前縁部12端部側に、溝53が、幅広部51から連続して形成されている。溝53は、前縁部12の端部を挟持している。
【0039】
幅広部51には、前縁部12の開口側に、トリムプレート37を係止する係止部55が形成されている。係止部55は、断面略長方形で、トリムプレート37を内部に係止可能な大きさの溝からなる。係止部55は、特許請求の範囲の接続部に該当する。
【0040】
トリムプレート37は、図3乃至図5に示すように、係止部55に挿入されて係止され、第二の力布32は、係止部55から引き出されて、クリップ部52及び延出部54の外面を包み込むように被覆して延出し、破断部40まで導かれている。
このように係止された第二の力布32は、図7に示すように配置される。
【0041】
引張力吸収部56,57は、図5に示すように、クリップ部52の外面が90°〜120°の範囲内で屈曲した領域からなる。
第二の力布32が取り付けられたトリムプレート37が係止部55に係止され、クリップ部材50が前縁部12に取付けられたとき、係止部55から引張力吸収部56を経て引張力吸収部57までの部分は、図5に示すように、第二の力布32によって被覆される。第二の力布32は、エアバッグがの非展開時及び膨張展開中において、引張力吸収部56に接した箇所から破断部40方向である矢印D1方向の引張力を受けている。
クリップ部材50は、硬質樹脂よりなるため、引張力吸収部56,57は、若干の弾性を備えており、外部から圧力がかかったときに、内側に向かって収縮する。そのため、矢印D1方向の引張力は、第二の力布32が引張力吸収部56,57の外面で順次延出方向が曲げられた箇所において、引張力吸収部56,57が内側へ収縮することで、弱められる。
【0042】
従って、図5の矢印D3の方向に第二の力布32が延出する場合と対比して、矢印D1,D2の方向に第二の力布32が延出する場合には、第二の力布32にかかる引張力は、引張力吸収部56,57において弱められ、その結果、第二の力布32がクリップ部材50に接続される係止部55に生じる回転力Rが減ぜられる。
【0043】
また、サイドフレーム10の側板11には、図8に示すように、クリップ部材50の幅広部51と側板11とが接触する面の両側に、クリップ部材50の前縁部12に沿った摺動と、溝53を軸とした回転を阻止するために、一対の突起14を設けてもよい。この突起14は、先端がクリップ部材50の内側を向くように、クリップ部材50が側板11に沿って摺動可能な方向に対して傾斜している。また、クリップ部材50の溝53を軸とした回転を阻止するよう、クリップ部材50が溝53を軸として回転する方向に対して角度を持っている。
【0044】
本実施形態では、本発明のクリップ部材としてクリップ部材50を用いているが、その代わりに、図9乃至図15に示すクリップ部材50a〜50f,50iとして構成してもよい。
図9のクリップ部材50aは、トリムプレート37を係止する係止部55aが、幅広部51の前縁部12に対向する面に設けられている。その他の構成は、クリップ部材50と同様である。
【0045】
図10のクリップ部材50bは、トリムプレート37を係止する係止部を備えず、第二の力布32の端部が延出部54に縫い付けられている。その他の構成は、クリップ部材50と同様である。
図11のクリップ部材50cは、図10のクリップ部材50bと同様に、トリムプレート37を係止する係止部を備えず、第二の力布32の端部が延出部54に縫い付けられている。幅広部51は、サイドフレーム10の前縁部12に対向する面に突起51pを備え、この突起51pは、前縁部12の端部の近くに設けられた孔12hに係合するように構成されている。その他の構成は、クリップ部材50と同様である。
【0046】
図12のクリップ部材50dは、図10のクリップ部材50bと同様に、トリムプレート37を係止する係止部を備えず、延出部54に、延出部54の延出方向に対して略直角に延びるスリット54sが形成されている。第二の力布32の端部は、スリット54sに挿入された後折り返されて、重なった部分を縫い付けることにより固定されている。その他の構成は、クリップ部材50と同様である。
【0047】
図13のクリップ部材50eは、硬質の樹脂を屈曲させた断面略n字状からなり、前縁部12の内壁に略沿った形状からなる幅広部51eと、前縁部12の端部を溝53eで挟持するクリップ部52eと、クリップ部52eの幅広部51e逆側の端部が第二の力布32の伸びる側へ延出し、前縁部12の外側の面に覆い被さるように設けられた延出部54eと、を備えている。
延出部54eには、延出部54eの延長方向に第二の力布32が延出するよう、インサート成形により第二の力布32の端部が固定されている。その他の構成は、クリップ部材50と同様である。
【0048】
図14のクリップ部材50fは、第一クリップ50gと第二クリップ50hに第二の力布32の端部を挟持するように形成されている。
第一クリップ50gは、硬質の樹脂を屈曲させた断面略n字状からなり、前縁部12の内壁に略沿った形状からなる幅広部51gと、前縁部12の端部を溝53gで挟持するクリップ部52gと、クリップ部52gの幅広部51g逆側の端部が第二の力布32の伸びる側へ延出し、前縁部12の外側の面に覆い被さるように設けられた延出部54gと、を備えている。
幅広部51gは、前縁部12の開口側に凹部58gを備え、凹部58gの面に、第二クリップ50hの突起58hが係止する溝59gを備えている。
【0049】
第二クリップ50hは、硬質の樹脂製で、内壁の形状が第一クリップ50gの外面形状と略同じ形状からなる断面略コ字状からなる。第二クリップ50hは、対向する一対の壁部のうち一方の壁部が、第一クリップ50gの幅広部51gの凹部58g内に配置される。また、この一方の壁部には、突起58hが設けられ、第一クリップ50gと第二クリップ50hとの間に第二の力布32を挟持させ、突起58hが第一クリップ50gの溝59gに係合することにより、クリップ部材50fに第二の力布32の端部が連結されている。
【0050】
図15のクリップ部材50iは、硬質樹脂から一体成形されてなり、図15に示すように、サイドフレーム10の前縁部12の内壁の形状に略沿った形状を有する幅広部51iと、幅広部51iの前縁部12の端部側に形成されたクリップ部52iと、クリップ部52iの幅広部51i逆側の端部が第二の力布32の伸びる側へ延出し、前縁部12の外側の面に覆い被さるように設けられた延出部54iを備えている。
クリップ部52iには、幅広部51iの前縁部12端部側に、溝53iが、幅広部51iから連続して形成されている。溝53iは、前縁部12の端部を挟持している。
【0051】
幅広部51iには、トリムプレート37を係止する係止部55iが形成されている。係止部55iは、断面略長方形で、トリムプレート37を内部に係止可能な大きさの溝からなり、係止部55iの開口は、前縁部12の開口側に形成されている。
係止部55iの開口側には、第一の壁部59iと、第二の壁部60iが設けられている。第一の壁部59iは、トリムプレート37の一端側に当接する係止部55iの面から延長しており、第二の壁部60iは、トリムプレート37の他端側に当接する係止部55iの面から延長している。第一の壁部59iと第二の壁部60iとは、第一の壁部59iの外側の面と第二の壁部60iの内側の面が、相互に一定の間隔を置いて対向しており、かつ、相互に逆方向に延長している。
【0052】
第二の壁部60iは、第一の壁部59iの端部を外側から覆い隠している。第二の壁部60iは、サイドフレーム10の側板11に当接して延出した後、側板から略垂直に立ち上がるように形成されている。第二の壁部60iの端部は、第一の壁部59iの端部よりも、サイドフレーム10の側板11逆方向に位置している。
第一の壁部59iと第二の壁部60iとの間の間隔は、図15に示すように、第二の力布32の通路となり、第二の力布32は、第一の壁部59iの外面に押し付けられるように密着して延びている。
【0053】
第二の壁部60iの外面とサイドフレーム10とが接触する領域の前縁部12逆側の端部には、サイドフレーム10の内面に、第二の壁部60iに当接する突起14´が形成されている。突起14´は、サイドフレーム10の切り起こしにより形成され、端部が、第二の壁部60iが側板11から立ち上がる位置を支持するよう、第二の壁部60iが立ち上がる部分に平行に延びている。この突起14´により、クリップ部材50iの前縁部12に沿った摺動と、溝53を軸とした回転を阻止可能となる。
クリップ部材50iのその他の構成は、クリップ部材50と同様である。
クリップ部材50iは、第二の壁部60iが、第一の壁部59iの端部を外側から覆い隠すように設けられ、第一の壁部59iと第二の壁部60iとの間の隙間が、第二の力布32の通路として形成されているため、第二の力布32から伝達される引張力によりトリムプレート37に生じる回転力を、更に強く減らすことが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
S1 シートバック
S2 着座部
S3 ヘッドレスト
F シートフレーム
D1,D2,D3 矢印
R 回転力
1 シートバックフレーム
2 着座フレーム
3 リクライニング機構
4 トリムカバー
5 クッションパッド
6 エアバッグモジュール
7 空間
10 サイドフレーム
11 側板
12 前縁部
12h 孔
13 後縁部
14,14´,51p,58h 突起
21 上部フレーム
22 下部フレーム
23 ピラー支持部
31 第一の力布
32 第二の力布
33 係止部材
34 破断部側の辺
35 破断部逆側の辺
36 取付部
37 トリムプレート
40 破断部
41 前面マチ部
42 側面マチ部
50,50a,50b,50c,50d,50e,50f,50i クリップ部材
50g 第一クリップ
50h 第二クリップ
51,51e,51g,51i 幅広部
52,52e,52g,52i クリップ部
53,53g,53i,59g 溝
54,54e,54g,54i 延出部
54s スリット
55,55a,55i 係止部
56,57 引張力吸収部
58g 凹部
59i 第一の壁部
60i 第二の壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張力を伝達する布状体に接続されるクリップ部材であって、
該クリップ部材は、前記布状体の一端に接続される接続部と、被取付部の端部に係止される溝と、を備え、
前記被取付部の前記端部に係止したときに、前記布状体から伝達される引張力により前記接続部に生じる回転力を減らすように設けられ、
前記布状体と前記被取付部とを連結することを特徴とするクリップ部材。
【請求項2】
エアバッグモジュール装備シートのトリムカバーの破断部に端部が取り付けられる力布に接続されるクリップ部材であって、
該クリップ部材は、前記力布の一端に接続される接続部と、前記シートのシートバックフレームのサイドフレームの端部に係止される溝と、を備え、
前記サイドフレームの前記端部に係止したときに、前記力布から伝達される引張力により前記接続部に生じる回転力を減らすように設けられ、
前記力布と前記サイドフレームとを連結することを特徴とするクリップ部材。
【請求項3】
前記クリップ部材は、前記力布から伝達される引張力を吸収して前記回転力を減じる引張力吸収部を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のクリップ部材。
【請求項4】
前記サイドフレームは、端部に、湾曲したフランジを備え、
前記クリップ部材には、前記フランジと前記サイドフレームとに囲まれる領域の形状に略沿った幅広部が、前記溝に隣接して形成されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載のクリップ部材。
【請求項5】
前記力布の前記端部には、トリムプレートが固定され、
前記幅広部には、前記トリムプレートを係止するための係止部が設けられ、
前記トリムプレートは前記エアバッグが膨張展開する力により前記係止部から脱離可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載のクリップ部材。
【請求項6】
前記係止部は、前記幅広部の前記サイドフレーム端部逆側に設けられた溝であることを特徴とする請求項5記載のクリップ部材。
【請求項7】
前記フランジ及び前記幅広部の一方は、前記フランジと前記幅広部とを相互に固定するための突起を有し、他方は、前記突起に対応する位置に、前記突起に係合する凹部を有することを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載のクリップ部材。
【請求項8】
前記サイドフレームは、前記幅広部に当接して前記クリップ部材の回転を規制する回転規制部を有することを特徴とする請求項1乃至7いずれか記載のクリップ部材。
【請求項9】
前記クリップ部材は、一体成形されてなることを特徴とする請求項1乃至8いずれか記載のクリップ部材。
【請求項10】
エアバッグを格納するエアバッグモジュールを装備したシートであって、
該シートのサイド部に沿って延出するサイドフレームと、
該サイドフレームに取り付けられる前記エアバッグモジュールと、
前記シートのトリムカバーと、
該トリムカバーの破断部に端部が取付けられる力布と、を有し、
前記力布には、クリップ部材が接続され、
該クリップ部材は、前記力布の一端に接続される接続部と、前記サイドフレームの端部に係止される溝と、を備え、
前記サイドフレームの前記端部に係止したときに、前記力布から伝達される引張力により前記接続部に生じる回転力を減らすように設けられ、
前記力布と前記サイドフレームとを連結することを特徴とするエアバッグモジュール装備シート。
【請求項11】
前記サイドフレームによって、前記クリップ部材が係止される位置で前記引張力を受け止め可能に構成されていることを特徴とする請求項10記載のエアバッグモジュール装備シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−112186(P2013−112186A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260623(P2011−260623)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】