説明

クリップ

【課題】取り付けに係る固定部材と被固定部材の構造がより単純でありながら、容易且つ確実に固定可能なクリップを提供する。
【解決手段】U字形状に一体連接された第1挟持片32と第2挟持片52とで被固定部材20に形成された平板状の被固定部位24を挟持し、被固定部材20に取り付けられる。第1挟持片32には、オーム(Ω)形状の挿入部40が突出して形成されている。挿入部40を構成する一対の帯板部材42,42の基端には幅狭部44が形成され幅広部48との間に段差部46が設けられている。固定部材10の貫通孔12に挿入部40の幅広部48が挿入されると帯板部材42,42が相対的に近づく方向に撓みながら貫通孔12を通過し、貫通孔12に幅狭部44が挿入されると帯板部材42,42が互いに離れて元に戻る方向へ変形し、段差部46が固定部材10の係止部位に抜け方向に対して係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被固定部材に取り付けられて、該被固定部材を固定部材に固定して取り付けるためのクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
2部材を相互に取り付けて連結する一つの技術が下記特許文献1に開示されている。下記特許文献1に開示の技術は、自動車に装備されたシートのシートクッションの裾を取り囲むように設けられた複数のフィニッシャの連結構造に関する。このフィニッシャの連結構造によれば、連結される一方のフィニッシャの端部には脚部が突設されており、その先端に矢じり部が形成されている。連結される他方のフィニッシャの端部には、一方のフィニッシャの脚部が挿入可能な開口が設けられており、該開口の周囲には脚部を挟み込むように付勢する一対の押圧部と該押圧部とは直角の関係にある位置で矢じり部を抜け止めする一対の停止部とが突出形成されている。これらのフィニッシャを連結するには、一方のフィニッシャの脚部を他方のフィニッシャの押圧部の付勢力に抗して開口内に挿入し、矢じり部が停止部を超えるまで押し込む。それにより、一方のフィニッシャに突出形成された脚部の矢じり部の抜け方向の荷重に対し、他方のフィニッシャに突出形成された停止部が抵抗することで、双方のフィニッシャが連結される。かかるフィニッシャの連結構造によれば、一方のフィニッシャの脚部を他方のフィニッシャの開口に挿入する容易な操作により、フィニッシャ同士を確実に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−80986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術によれば、連結される二部材の双方に特定形状の突起を設けなければならず、連結される双方の部材の形状が複雑化する問題があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、被固定部材を固定部材に固定して取り付けるにあたり、その取り付けに係る固定部材と被固定部材の構造がより単純でありながら、容易且つ確実に固定可能なクリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は次の手段を採用する。
本発明は、被固定部材に取り付けられて、該被固定部材を固定部材に固定して取り付けるためのクリップであって、前記被固定部材の平板状に形成された被固定部位の両面に対し挟持可能に配設される第1挟持片と第2挟持片とがU字形状に一体連接されて形成されており、該第1挟持片には、前記固定部材に形成された貫通孔に挿入して嵌合されるオーム(Ω)形状の挿入部が前記第2挟持片に対して離反する方向に突出して形成されており、該オーム(Ω)形状の挿入部の形状構成は、対向した状態で離間して配設された一対の帯板部材の挿入方向の先端が接続形成されて、該一対の帯板部材が互いに近づく方向へ撓むことのできる構成となっており、且つ、該一対の帯板部材の各々の基端には、前記固定部材の表面に対向して該固定部材に形成される貫通孔の外方へ張り出し、該貫通孔に挿通不能な鍔部が延設されているとともに、該一対の帯板部材の各々の基端には、両側部が切り欠かれて相対的に幅が狭くなった幅狭部が形成され、該幅狭部よりも先端側の相対的に幅が広い幅広部との間に段差部が設けられており、前記第1挟持片に形成された挿入部が前記固定部材の貫通孔に挿入されると、前記広幅部は前記一対の帯板部材が相対的に近づく方向に撓みながら前記貫通孔を通過し、該貫通孔に前記幅狭部が挿入されると前記一対の帯板部材が互いに離れて元に戻る方向への変形が許容されることにより前記段差部が前記固定部材の係止部位に抜け方向に対して係止されて当該挿入部が前記貫通孔に対して抜け止め状態となり前記固定部材に取り付けられることを特徴とするクリップである。
【0007】
このようなクリップによれば、第1挟持片と第2挟持片とで平板状の被固定部位を挟持することで被固定部材に取り付けられるため、被固定部材のクリップ取り付けに係る構成が単純である。また、クリップを固定部材に取り付けるに当たっては、第1挟持片に形成された挿入部を固定部材の貫通孔に挿入すると、挿入部を構成する一対の帯板部材は、幅広部が互いに近づく方向に撓みながら貫通孔を通過し、幅狭部が貫通孔に挿入されると互いに離れて元に戻る方向への変形するため、段差部が固定部材の裏面に回りこんで開口部から外方へ張り出す。それにより、段差部が固定部材の係止部位に抜け方向に対して係止されるため、固定部材に貫通孔さえ形成すれば、該貫通孔に対して抜け止め状態とすることができる。したがって、固定部材の構成を複雑化させることなく、第1挟持片に形成された挿入部を固定部材の貫通孔に挿入する容易な操作により確実に固定部材へ取り付けることが可能である。
【0008】
上記本発明のクリップは、前記第2挟持片には前記被固定部材の平板状に形成された被固定部位に形成された凹部と嵌合して該被固定部材に対する位置決めを行う凸部が形成されていることが好ましい。このようなクリップによれば、第2挟持片の凸部を被固定部材の被固定部位に形成された凹部に嵌合させることにより容易に位置決めを行うことができる。
【0009】
また、上記本発明のクリップは、好ましくは、前記第1挟持片において該第1挟持片に形成されるオーム(Ω)形状の挿入部から先に延設された他方の鍔部の先端側が拡開傾斜して形成される。このようなクリップによれば、特に、被固定部材に取り付けられた状態である場合において、挿入部を貫通孔に挿入し、挿入部を構成する一対の帯板部材を貫通孔の縁に沿わせることで撓ませようとすると、傾斜した他方の鍔部が被固定部材に沿って滑りながら回動可能であるため帯板部材が相互に近づく変形が助勢され得る。
【0010】
更に、前記第1挟持片と前記第2挟持片とで前記被固定部材の平板状に形成された被固定部位を挟持することで前記被固定部材に取り付けられ、前記挿入部が前記固定部材の貫通孔に挿入されると、前記先端側が拡開傾斜して形成されている他方の鍔部が前記被固定部材に形成された案内スロープに沿って摺動して該他方の鍔部が一方の鍔部に近づくことにより前記一対の帯板部材が相対的に近づく方向に撓むのが助勢される構成であれば一層好ましい。このようなクリップによれば、傾斜した他方の鍔部が案内スロープに沿って摺動して一方の鍔部に近づくため、帯板部材が相互に近づく変形が一層助勢されやすく、より容易に固定部材へ取り付けることが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクリップによれば、被固定部材を固定部材に固定して取り付けるにあたり、その取り付けに係る固定部材と被固定部材の構造がより単純でありながら、挿入部を固定部材の貫通孔に挿入する容易な操作によって確実に固定部材に固定することが可能である。
更に、第2挟持片に被固定部位に形成された凹部に嵌合する凸部が形成されていれば、被固定部位に対して容易に位置決めを行うことができる。
また、本発明のクリップは、挿入部から先に延設された他方の鍔部の先端側が拡開傾斜して形成されていれば、特に、被固定部材に取り付けられた状態である場合において、挿入部を構成する帯板部材が相互に近づく変形が助勢され得る。更に、被固定部材の固定部位に案内スロープが形成されていれば、帯板部材が相互に近づく変形が一層助勢され、より容易に固定部材へ取り付けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るカバー部材がアッパレールに取り付けられている状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカバー部材がアッパレールに取り付けられている状態を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るアッパレールの後端部を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るクリップの斜視図である。
【図5】図4に示されるクリップを矢印Vの方向から見たである。
【図6】図4に示されるクリップの平面図である。
【図7】図4に示されるクリップの側面図である。
【図8】図7に示されるクリップのA−A線断面をアッパレールに取り付けられている状態で示した図である。
【図9】図8に示されるクリップのIX−IX線断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係るクリップをアッパレールに取り付ける過程を示した図であり、クリップの拡幅部をアッパレールの貫通孔に挿入した状態を示す図である。
【図11】図10に示されるクリップのXI−XI線断面図である。
【図12】本発明の実施形態に係るクリップをアッパレールに取り付ける過程を示した図であり、クリップの幅広部をアッパレールの貫通孔に挿入した状態を示す図である。
【図13】図12に示されるクリップのXIII−XIII線断面図である。
【図14】本発明の実施形態の変更例を示す図であり、クリップをアッパレールに取り付ける過程を図10に示される断面に対応して示す図である。
【図15】図14に示される変更例においてクリップがアッパレールに取り付けられている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1に示されるように、本実施形態にかかるクリップ30は、自動車の運転席等を構成する車両用シートのアッパレール10にカバー部材20を固定して取り付けるのに用いられている。アッパレール10は、シート下部の両サイドに当該シートの前後方向に沿って設けられており、図2に示されるように、車両の床面Fに固定されたロアレール90に対して摺動可能に組み付けられ、シートを前後にスライドさせるスライド機構を構成するものである。このアッパレール10に対し、シートの座面となるシートクッションの骨格をなすクッションフレーム92が上下に昇降可能なリフター機構(図示省略)を介して固定されている。カバー部材20は、アッパレール10の後端部に固定され、クッションフレーム92の上昇によってクッションフレーム92の下部に生じる隙間の後方を覆うものである。アッパレール10が本発明の固定部材に相当し、カバー部材20が本発明の被固定部材に相当する。なお、各図において矢印で示すF,Uは前方,上方を示している。
【0014】
図3に示されるように、アッパレール10は、長手方向に直交する断面がハット状の長尺な部材である。アッパレール10の後端部の屋根部14にはクリップ30の取り付けられる円形の貫通孔12が形成されている。アッパレール10の後端はキャップ18で塞がれている。キャップ18は、アッパレール10の後端を塞ぐことのできる大きさの略四角形の本体部18aを備え、該本体部18aの前面には先端に側方へ張り出す係止爪19aを備えた一対の可撓性の脚部19を備えている。キャップ18は、脚部19,19の弾性力に抗して相互に近づく方向に撓ませながらアッパレール10の後端から該アッパレール10の内部へ挿入し、該脚部19,19の弾性力により各脚部19の先端に形成された係止爪19aがアッパレール10の後端部の両側壁16,16に形成された四角形の貫通孔16a,16aに嵌り込むまで押し込むことでアッパレール10の後端に取り付けられている。
【0015】
カバー部材20は、例えばポリプロピレン等の合成樹脂で形成されている。図1,2に示されるように、カバー部材20は、大別してベース部22とカバー部28とで構成されている。ベース部22はアッパレール10の屋根部14の表面14aに沿った状態でアッパレール10の屋根部14に固定されるベース本体22aと、該ベース本体22aから前方へ張り出して立設されたサイドカバー部22bとを備えている。なお、本実施形態の説明においてアッパレール10の屋根部14の表面14aとは外側に露出する面のことである。この表面14aとは反対側の面を裏面14b(図9等参照)と称する。カバー部材20のカバー部28は、屈曲部29aを介して接続形成されたカバー本体28aとフック29とを備えている。カバー本体28aは、クッションフレーム92の後部下方を覆うことが可能な板状であり、フック29が接続形成された先端とは反対側の基端28bがベース本体22aに対して回動可能に連結されている。図2に示されるように、フック29はクッションフレーム92の後部に左右方向に架設されたロッド94に引っ掛けられており、クッションフレーム92が上昇するとカバー本体28aが立ち上がりクッションフレーム92の後方下部を覆い、クッションフレーム92が降下するとカバー部28が屈曲してカバー本体28aが傾倒してクッションフレーム92の後方下部を覆う構成となっており、クッションフレーム92の昇降状態に関わらずクッションフレーム92の後方下部を覆うことが可能となっている。なお、図2においては、クッションフレーム92の上昇時の様子が示されている。図9に示されるように、このカバー部材20のベース本体22aには、略水平に設けられた平板状の被固定部位24が形成されている。この被固定部位24にクリップ30が取り付けられ、該クリップ30を介してアッパレール10に固定されている。
【0016】
クリップ30は、カバー部材20の平板状の被固定部位24を両面から挟み込むことのできるように配設された第1挟持片32と第2挟持片52とを備えており、第1挟持片32と第2挟持片52の基端はU字形状に一体連接されている。図4に示されるように、このクリップ30は、鋼材を曲げ加工して形成されており、帯板状の鋼材をU字状に折り返すことにより第1挟持片32と第2挟持片52とが設けられている。
【0017】
第1挟持片32は、曲げ加工により形成された挿入部40と鍔部34,36とで構成されている。挿入部40は、第2挟持片52に対して離反する方向に突出しており、アッパレール10の貫通孔12(図9参照)に挿入可能なオーム(Ω)形状に形成されている。挿入部40は、一対の帯板部材42,42の挿入方向の先端が接続形成されてオーム(Ω)のような形状を成しており、各帯板部材42,42の基端に鍔部34,36が延設されている。
【0018】
鍔部34,36は、挿入部40を挟んで相反する方向へ向かって貫通孔12の外方へ張り出しており、貫通孔12を挿通不能となっている。図4に示されるように、第2挟持片52と連接された一方の鍔部34は、第2挟持片52と略平行に第2挟持片52と同じ幅で形成されている。挿入部40は該一方の鍔部34よりも幅狭に形成されており、挿入部40を挟んで先に形成された他方の鍔部36は、この相対的に幅狭の挿入部40と同じ幅で形成されており、その先端36aが平面視でT字状に形成されている。図7に示されるように、他方の鍔部36は、第2挟持片52との間隙を拡開するように先端36a側が第2挟持片52から離反する方向へ傾斜して形成されている。図9等に示されるように、クリップ30は、第1挟持片32を構成する一方の鍔部34及び他方の鍔部36の基部36bと第2挟持片52とでカバー部材20の被固定部位24を挟持可能となっている。被固定部位24は前端24aが開放された端部として形成されており、該開放された前端24aから被固定部位24を第1挟持片32と第2挟持片52との間に差し込むことにより、クリップ30がカバー部材20に取り付けられる。クリップ30は他方の鍔部36の先端36aが第2挟持片52から離反する方向へ傾斜しており、被固定部位24は前端24aが肉薄に形成されているため、容易に被固定部位24を第1挟持片32と第2挟持片52との間に差し込むことができる。第2挟持片52には、被固定部位24に対向する面から突出する凸部54が形成されている。この凸部54が被固定部位24に貫通形成された凹部24bに嵌合することでクリップ30は被固定部位24に対して位置決めされる。
【0019】
図5に示されるように、挿入部40は、各帯板部材42の先端側から順に、基端に向けて徐々に幅が広くなっている拡幅部49、相対的に幅の広い幅広部48、該幅広部48が両側部から切り欠かれ相対的に幅の狭い幅狭部44が設けられており、幅広部48と幅狭部44との間に段差部46が形成されている。クリップ30は、挿入部40を剛体で形成されたアッパレール10の変形しない貫通孔12に挿入すると、該貫通孔12を幅広部48が通過するにあたり、一対の帯板部材42が相互に近づく方向に撓みながら通過する構成となっている。言い換えれば、貫通孔12は、挿入部40の幅広部48がそのままの状態で進入することは許容しないが、一対の帯板部材42,42が近づくことで進入を許容可能な大きさの円形形状に形成されている。図10,11に示されるように、アッパレール10の表面14a側から貫通孔12に挿入部40を差し込むと、拡幅部49の基端の側部が貫通孔12の縁に当たるが、それに抗して押し込むと、徐々に当該帯板部材42同士が近づく方向へ撓まされ、図12,13に示されるように、拡幅部49に連続する幅広部48を貫通孔12に通過させることができる。そして、図8,9に示されるように、相対的に幅の狭い幅狭部44を貫通孔12に挿入すると、帯板部材42,42が互いに離れて元に戻る方向への変形が許容される。つまり、幅狭部44は、貫通孔12における帯板部材42の幅方向で見て、相対的に幅の狭い部分を通過させることができるため、帯板部材42,42が互いに離れて元に戻る方向への変形が許容される。挿入部40は、幅狭部44の側端部が貫通孔12における相対的に幅の狭い部分の縁に当った状態で帯板部材42,42が互いに離れて元に戻る方向への変形が規制される。このとき、幅広部48との間に形成された段差部46は、アッパレール10の屋根部14の裏面14b側において貫通孔12から側方へ張り出す。挿入部40に形成された合計4つの段差部46がアッパレール10の屋根部14の裏面14bに係合することにより当該挿入部40の抜け方向への移動を規制され抜け止め状態とされる。これによりクリップ30がアッパレール10に固定される。
【0020】
カバー部材20をアッパレール10に固定する際には、先ずクリップ30をカバー部材20の被固定部位24に取り付けておき、クリップ30をアッパレール10に取り付けるのが好ましい。この場合、図13に示されるように、挿入部40を貫通孔12に挿入するにあたり挿入部40が撓まされて帯板部材42,42が相互に近づく際に、第2挟持片52との間隙を拡開するように先端36a側が52から離反する方向へ傾斜して形成されている他方の鍔部36が、基部36bを支点として被固定部位24に沿って滑りながら回動することにより帯板部材42,42が相互に近づく変形が助勢され得る。
【0021】
以上の構成のクリップ30によれば、以下の作用効果を奏する。
先ず、クリップ30は、第1挟持片32と第2挟持片52とで被固定部材であるカバー部材20の被固定部位24を挟持することにより容易にカバー部材20に取り付けることができる。しかも、第2挟持片52に形成された凸部54が被固定部位24の凹部24bに嵌合することにより被固定部位24に対して容易且つ確実に位置決めされる。
次に、クリップ30は、固定部材であるアッパレール10に単純な貫通孔12を形成するのみで取り付けることができる。しかも、クリップ30の挿入部40を貫通孔12に押し込む単純操作によって容易且つ確実にアッパレール10に取り付けることが可能である。したがって、アッパレール10とクッションフレーム92との間のような狭い取り付けスペースであっても、アッパレール10にカバー部材20を取り付けることが容易かつ確実に行うことができる。
【0022】
なお、本発明は、要旨を逸脱しない範囲内でその他種々の実施形態が考えられるものである。
例えば、図14,15に示されるように、カバー部材20の被固定部位24の第1挟持片32の他方の鍔部36と対向する箇所に、案内スロープ26を設けるのが好ましい。案内スロープ26は、挿入部40と対向する箇所に向けて拡開するように傾いて形成された斜面であり、例えば、湾曲した斜面として形成することができる。このような案内スロープ26によれば、図14に示されるように、クリップ30の挿入部40を貫通孔12に挿入するにあたり挿入部40が撓まされて帯板部材42,42が相互に近づく際に、他方の鍔部36が該案内スロープ26に案内されて挿入部40の方へ変位しやすくなるため、帯板部材42,42が相互に近づく変形が助勢され、より取り付け易い。
また、固定部材に形成される貫通孔12は、帯板部材42の幅方向に対応する幅が帯板部材42,42の近づく方向に向けて拡開した形状であれば、円形に限らず、楕円形や菱形などに適宜変形可能である。
また、クリップ30の材質は特に限定されず、合成樹脂等で形成してもよい。
また、クリップ30は、カバー部材20をアッパレール10に固定するに限らず、その他、固定部材に対して被固定部材を取り付ける構成に広く用いることが可能である。
【符号の説明】
【0023】
10 アッパレール
12 貫通孔
14 屋根部
14a 表面
14b 裏面
20 カバー部材
22 ベース部
22a ベース本体
24 被固定部位
24b 凹部
26 案内スロープ
30 クリップ
32 第1挟持片
34 一方の鍔部
36 他方の鍔部
36a 先端
40 挿入部
42 帯板部材
44 幅狭部
46 段差部
48 幅広部
52 第2挟持片
54 凸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定部材に取り付けられて、該被固定部材を固定部材に固定して取り付けるためのクリップであって、
前記被固定部材の平板状に形成された被固定部位の両面に対し挟持可能に配設される第1挟持片と第2挟持片とがU字形状に一体連接されて形成されており、
該第1挟持片には、前記固定部材に形成された貫通孔に挿入して嵌合されるオーム(Ω)形状の挿入部が前記第2挟持片に対して離反する方向に突出して形成されており、該オーム(Ω)形状の挿入部の形状構成は、対向した状態で離間して配設された一対の帯板部材の挿入方向の先端が接続形成されて、該一対の帯板部材が互いに近づく方向へ撓むことのできる構成となっており、且つ、該一対の帯板部材の各々の基端には、前記固定部材の表面に対向して該固定部材に形成される貫通孔の外方へ張り出し、該貫通孔に挿通不能な鍔部が延設されているとともに、該一対の帯板部材の各々の基端には、両側部が切り欠かれて相対的に幅が狭くなった幅狭部が形成され、該幅狭部よりも先端側の相対的に幅が広い幅広部との間に段差部が設けられており、
前記第1挟持片に形成された挿入部が前記固定部材の貫通孔に挿入されると、前記広幅部は前記一対の帯板部材が相対的に近づく方向に撓みながら前記貫通孔を通過し、該貫通孔に前記幅狭部が挿入されると前記一対の帯板部材が互いに離れて元に戻る方向への変形が許容されることにより前記段差部が前記固定部材の係止部位に抜け方向に対して係止されて当該挿入部が前記貫通孔に対して抜け止め状態となり前記固定部材に取り付けられることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップであって、
前記第2挟持片には前記被固定部材の平板状に形成された被固定部位に形成された凹部と嵌合して該被固定部材に対する位置決めを行う凸部が形成されていることを特徴とするクリップ。
【請求項3】
請求項2に記載のクリップであって、
前記第1挟持片において該第1挟持片に形成されるオーム(Ω)形状の挿入部から先に延設された他方の鍔部の先端側が拡開傾斜して形成されていることを特徴とするクリップ。
【請求項4】
請求項3に記載のクリップのであって、
前記第1挟持片と前記第2挟持片とで前記被固定部材の平板状に形成された被固定部位を挟持することで前記被固定部材に取り付けられ、前記挿入部が前記固定部材の貫通孔に挿入されると、前記先端側が拡開傾斜して形成されている他方の鍔部が前記被固定部材に形成された案内スロープに沿って摺動して該他方の鍔部が一方の鍔部に近づくことにより前記一対の帯板部材が相対的に近づく方向に撓むのが助勢されることを特徴とするクリップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−174925(P2010−174925A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15412(P2009−15412)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】