説明

クリップ

【課題】装着パネルに取付けられる単一のクリップにおいて、その挟持部をボデーに安定した状態で結合することにより、車両の振動等に伴うクリップとボデーとの間のがたつきを抑える。
【解決手段】車両の装着パネルをボデー側に装着するためのクリップ10であって、装着パネルに取付けられるベース部12と、ボデーの端部をその両面から挟み付けた状態でボデーに結合される挟持部14とを備えている。挟持部14はボデーの挿入が可能な受入れ部分16を有し、この受入れ部分の内部にはボデーの挿入方向に沿って支持部材20が設けられている。支持部材20は、ボデーの挿入ストロークの半分以上にわたってボデーの表面に接触する。この支持部材20が、受入れ部分16に挿入されるボデーの板厚に応じて撓むように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるインストルメントパネル等の装着パネルをボデー側のカウルインナーパネル等に装着するためのクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクリップについては、例えば特許文献1に開示された技術が公知である。この技術では、インストルメントパネルに取付けられるパネルクリップと、ボデー側に取付けられるボデークリップとを用いている。そして、パネルクリップの挟持部にボデークリップを挿入し、この挟持部でボデークリップを両面から挟み付けた状態とすることにより、両クリップを結合している。また、両クリップを結合した状態での相互間でのがたつきを防止するために、ボデークリップの表面に不織布等を貼り付けることも実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−151022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、パネルクリップとボデークリップとの二部材を用いていることから、コストアップを招く。また、ボデー側の板厚や結合位置のばらつきを吸収する目的で、パネルクリップの挟持部に対するボデークリップの挿入荷重を高く設定しており、両クリップを結合するための作業負担が大きい。なお、ボデークリップの表面に不織布等を貼り付けた場合には、さらなるコストアップを招くとともに、不織布等が劣化してくると本来のがたつき防止性能が低下して異音の発生などを招く。
【0005】
この対策としてボデークリップを廃止した場合、インストルメントパネルに取付けたパネルクリップの挟持部によってボデーの端部をその両面から直接挟み付けて結合することになり、安定した結合状態を確保することが困難になる。その要因は、クリップの挟持部内においてボデーに接触して板厚公差を吸収するように撓む反発爪が、その先端の僅かな面積でボデーと接触していることである。この結果、ボデーの位置が車両の前後方向にばらついていると、挟持部内の反発爪がボデーに接触できない場合、あるいは接触代がさらに小さくなる場合が生る。
いずれにしても、ボデーと挟持部との接触代が小さいと、車両の振動等によってボデーとクリップとが相互の接触点を支点として回動(こじり)方向にがたつきを起こすことになる。
【0006】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、装着パネルに取付けられる単一のクリップにおいて、その挟持部をボデーに安定した状態で結合することにより、車両の振動等に伴うクリップとボデーとの間のがたつきを抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、車両の装着パネルをボデー側に装着するために用いるクリップであって、装着パネルに取付けられるベース部と、ボデーの端部をその両面から挟み付けた状態でボデーに結合される挟持部とを備えている。挟持部は、その開放端部からボデーを挿入することが可能な受入れ部分を有し、この受入れ部分の内部には該受入れ部分に対するボデーの挿入方向に沿って支持部材が設けられている。この支持部材はボデーの挿入ストロークの半分以上にわたってボデーの表面に接触することが可能である。そして、支持部材を基準とする受入れ部分の開口寸法が、ボデーにおける板厚公差の最小寸法よりも小さく設定され、受入れ部分に挿入されるボデーの板厚に応じて支持部材が撓むように構成されている。
【0008】
この構成によれば、装着パネルの搭載に際し、クリップの挟持部を結合するボデーの位置が車両の前後方向あるいは上下方向へばらついていても、挟持部の支持部材がボデーの挿入方向に沿った長い範囲でボデーの表面に接触することになるため、ボデーに対する挟持部の結合状態は、車両の振動等に伴うがたつきを抑えて安定したものとなる。
なお、装着パネルに取付けられる単一のクリップだけを用いて装着パネルをボデー側に装着する構造であるため、装着パネル(インストルメントパネル)に取付けられるパネルクリップと、ボデー側に取付けられるボデークリップとの二部材を用い、かつ、ボデークリップの表面にがたつき防止用の不織布等を貼り付けた構成とは異なり、コストの低減を図ることができるとともに、不織布等の経年劣化に伴うがたつきや異音の発生といった不具合を解消できる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、支持部材は、挟持部の内部において両側壁からボデーの挿入方向に対して直角方向に張り出した一対の撓み片と、両撓み片の先端に位置してボデーの表面に接触するリブとからなり、両撓み片およびそれぞれのリブがボデーの挿入ストロークの半分以上にわたって連続している。また、両撓み片が受入れ部分に挿入されるボデーの板厚に応じて個々に撓むように構成されている。
このように、支持部材を構成する一対の撓み片が挟持部の両側壁からボデーの挿入方向に対して直角方向に張り出した構成とすることにより、それぞれのリブがボデーに対してその挿入方向に沿った長い範囲で接触し、ボデーに対する挟持部の結合状態が安定する。また、支持部材が挟持部内の両側に分離して配置されることになるので、個々の撓み特性、つまりボデーの板厚の変化を吸収する特性が向上する。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、支持部材を構成している両リブにおいて、ボデーの表面に接触する先端面が円弧面になっている。
これにより、挟持部の受入れ部分にボデーを挿入するときの挿入荷重が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】クリップの外観を表した斜視図。
【図2】クリップの縦断面図。
【図3】クリップを先端側から見た正面図。
【図4】クリップによって装着パネルをボデー側に装着した状態の構成図。
【図5】クリップの一部を断面で表した図4の平面図。
【図6】ボデーに結合されたクリップの一部を拡大して表した側断面図。
【図7】ボデーに結合されたクリップの一部を拡大して表した正面図。
【図8】クリップの変更形状を表した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
クリップ10は樹脂による一体成形品であって、その全体構造はベース部12と挟持部14とに大別される。このクリップ10は、図4で示す車両のインストルメントパネル(以下「インパネ30」と略称する)と、カウルインナーパネル(以下「カウルパネル40」と略称する)とを結合するために供される。
図4で示すように、インパネ30の裏面には、クリップ10のベース部12を取付けるためのボス部32が一体に成形されている。一方、カウルパネル40は、クリップ10の挟持部14と結合されるフランジ42を備えている。なお、インパネ30およびカウルパネル40は、本発明の「装着パネル」および「ボデー」に相当する。
【0013】
クリップ10のベース部12は、図5から明らかなように位置決め凹部12aとビス挿通孔12bとを備えている。この位置決め凹部12aには、インパネ30におけるボス部32の端面に成形された突起32aが嵌り込み、ビス挿通孔12bにはビス46が挿通される(図5)。このビス46は、挟持部14の後述する受入れ部分16からビス挿通孔12bに挿入されて、ボス部32のビス孔32bにねじ込まれる。これにより、クリップ10のベース部12がボス部32に対し、所定の位置決め状態で締結される。
クリップ10の挟持部14は、上顎14aと下顎14bとからなる二股状に構成されている。これらの上顎14aと下顎14bとの間が、カウルパネル40のフランジ42を挿入することが可能な受入れ部分16になっている。この受入れ部分16の開放側である挟持部14の端面、つまり上顎14aおよび下顎14bの端面は、受入れ部分16に対するフランジ42の挿入を案内する斜面18になっている。
【0014】
受入れ部分16の内部には、挟持部14の幅方向に関して対をなす支持部材20がそれぞれ設けられている。これらの支持部材20は、下顎14bの両側壁から中央に向けてフランジ42の挿入方向と直角方向に張り出した一対の撓み片22と、両撓み片22の先端部から上方向(上顎14aの方向)へそれぞれ突出したリブ24とによって構成されている。
両撓み片22は、下顎14bの側壁に対して上下方向へ撓むように弾性変形することが可能である。両リブ24においては、個々の上縁に円弧面24aが形成されている(図3)。また、両リブ24の端面は、下顎14bの斜面18に続く斜面24bになっており(図2)、該斜面18と共に受入れ部分16に対するフランジ42の挿入を案内することができる。
【0015】
このように挟持部14の下顎14b側においては、該挟持部14の受入れ部分16にカウルパネル40のフランジ42を挿入するときの全ストロークの半分以上にわたって両支持部材20の撓み片22およびリブ24が連続している(図2、図6)。一方、挟持部14の上顎14aの側においては、該上顎14aの両側壁から下方向(下顎14bの方向)へそれぞれ突出したリブ15がフランジ42の全挿入ストロークにわたって連続している(図2、図6)。なお、両支持部材20のリブ24についても、上顎14aの両リブ15と同様に受入れ部分16に対するフランジ42の全挿入ストロークにわたって連続させることも可能である。
挟持部14における受入れ部分16の実質的な開口寸法は、両支持部材20のリブ24と、上顎14aの両リブ15との間の寸法S(図3)によって決定される。そして、この寸法Sは、カウルパネル40のフランジ42における板厚公差の最小寸法よりも小さく設定されている。
【0016】
受入れ部分16にカウルパネル40のフランジ42が挿入されたとき、該フランジ42の上面には挟持部14における上顎14aの両リブ15が接触し、フランジ42の下面には両支持部材20のリブ24が接触する(図6、図7)。そして、上顎14aの両リブ15および両支持部材20のリブ24は、受入れ部分16に対するフランジ42の挿入方向に沿った長い範囲でフランジ42の上下面に接触し、該フランジ42を上下両面から挟み付けている。これによってクリップ10の挟持部14が、カウルパネル40のフランジ42に結合される。
両支持部材20については、受入れ部分16に挿入されたフランジ42の板厚に応じて個々の撓み片22が撓んでおり、このときのフランジ42の下面には両リブ24の円弧面24aが接触している(図7)。このため、受入れ部分16に対するフランジ42の挿入荷重が軽減される。また、両撓み片22は、受入れ部分16に対するフランジ42の挿入方向と直角方向の両側を支点として撓むため、両リブ24の円弧面24aがフランジ42に対し、その挿入ストロークの半分以上にわたって常に接触した状態に保持される。
【0017】
つづいて、クリップ10によってインパネ30をカウルパネル40に装着する手順について説明する。
まず、クリップ10のベース部12をインパネ30のボス部32に取付ける。このとき、前述のようにベース部12の位置決め凹部12aにボス部32の突起32aを嵌め込むとともに、ベース部12のビス挿通孔12bを通じてボス部32のビス孔32bにビス46をねじ込んで締結する(図5)。なお、ベース部12のビス挿通孔12bは、図5で明らかなように挟持部14における両支持部材20の中間に設定されている。したがって、ビス46の締結位置がクリップ10の幅方向に偏在せず、ボス部32に対するクリップ10の結合状態が安定する。
【0018】
つぎに、インパネ30を搭載することによってクリップ10の挟持部14にカウルパネル40のフランジ42を相対的に挿入する。これに伴って既に説明したように、挟持部14における上顎14aの両リブ15と両支持部材20のリブ24とにより、フランジ42が上下両面から挟み付けられ、挟持部14とフランジ42とが結合される。そして、両支持部材20の撓み片22はフランジ42の板厚に応じて撓んでおり、個々の復帰弾力によってフランジ42が強力に挟み付けられる。これに加えて両支持部材20のリブ24は、フランジ42の下面に対し、その挿入ストロークの半分以上にわたって接触している。
【0019】
これらのことから、従来のパネルクリップおよびボデークリップといった二部材を用いることなく、クリップ10のみでインパネ30とカウルパネル40とを組付けることができる。また、支持部材20のリブ24がフランジ42に対し、その挿入ストロークに沿った長い範囲で接触していることから、車両の前後方向あるいは上下方向へのフランジ42の位置のばらつきに充分対応できる。この結果、挟持部14とフランジ42との結合状態が安定したものとなり、これら相互が車両の振動等によって回動(こじり)方向にがたつきを起こすことが防止される。
なお、一般にインパネ30のボス部32およびカウルパネル40のフランジ42は、それぞれ複数箇所に設けられ、これらの複数箇所においてクリップ10を用いてカウルパネル40にインパネ30が結合される。
【0020】
以上は本発明を実施するための最良の形態を図面に関連して説明したが、この実施の形態は本発明の趣旨から逸脱しない範囲で容易に変更または変形できるものである。
例えば、支持部材20の両撓み片22は、挟持部14の両側壁からフランジ42の挿入方向に対して直角方向に張り出した構成になっているが、この角度を90°よりも多少小さく設定することは可能である。また、両撓み片22の相対向する縁部は、必ずしも平行でなくてもよい。
さらに、両支持部材20の全体形状については、図8で示すように個々のリブ24を相互に連結することで、両側に分離した形式から一体形式に代えることも可能である。
【符号の説明】
【0021】
10 クリップ
12 ベース部
14 挟持部
16 受入れ部分
20 支持部材
22 撓み片
24 リブ
24a 円弧面
30 インパネ(装着パネル)
40 カウルパネル(ボデー)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の装着パネルをボデー側に装着するために用いるクリップであって、
装着パネルに取付けられるベース部と、ボデーの端部をその両面から挟み付けた状態でボデーに結合される挟持部とを備え、挟持部は、その開放端部からボデーを挿入することが可能な受入れ部分を有し、この受入れ部分の内部には該受入れ部分に対するボデーの挿入方向に沿って支持部材が設けられ、この支持部材はボデーの挿入ストロークの半分以上にわたってボデーの表面に接触することが可能であり、支持部材を基準とする受入れ部分の開口寸法が、ボデーにおける板厚公差の最小寸法よりも小さく設定され、受入れ部分に挿入されるボデーの板厚に応じて支持部材が撓むように構成されているクリップ。
【請求項2】
請求項1に記載されたクリップであって、
支持部材は、挟持部の内部において両側壁からボデーの挿入方向に対して直角方向に張り出した一対の撓み片と、両撓み片の先端からボデーの表面に接触するようにそれぞれ突出させたリブとからなり、両撓み片およびそれぞれのリブがボデーの挿入ストロークの半分以上にわたって連続しているとともに、受入れ部分に挿入されるボデーの板厚に応じて両撓み片が個々に撓むように構成されているクリップ。
【請求項3】
請求項2に記載されたクリップであって、
支持部材を構成している両リブにおいて、ボデーの表面に接触する先端面が円弧面になっているクリップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−203499(P2010−203499A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48240(P2009−48240)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】