説明

クリップ

【課題】 スポーツ又はレジャーなどに用いる物品の一部を挟持する挟持片と、ベルト、衣服又は他の物品などに装着するための挟持片と、を備えたクリップであって、物品の生産性と、着脱の操作性及び安定性とを向上させたクリップを提供すること。
【解決手段】
本発明は、弾性変形可能な山形の屈曲部2を備えた本体部材1と、当該本体部材1の裏面側において本体部材1から折り返され、先端部が開閉することで本体部材1の裏面との間で物品20の一部を挟持するための第一の挟持片3と、前記第一の挟持片3に突設され、前記屈曲部2の裏面にて形成される谷部5と係合する係止突起4と、前記屈曲部2と隣接して設けられた軸受部にて回動可能に軸支され、前記本体部材1の表側面との間でベルト、衣服又は他の物品などを挟持するための第二の挟持片7と、当該第二の挟持片7を閉じる方向へ常時付勢する付勢手段9と、を備えたことを特徴とするクリップ10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップに関するものであって、より詳細には、主としてパターカバー(ゴルフクラブ用のパターヘッドカバー)、携帯電話入れ、小物入れ、バックパック、ゴルフバッグなどといったスポーツ又はレジャーの携行品(携帯電話、ラジオ、携帯型音楽プレイヤー、アクセサリー、衣服などを含む)などの物品に装着(固定)して使用するクリップに関するものである。
【0002】
本発明は、特に物品に対する固定作業が迅速かつ容易であって物品の生産性を向上させることができ、かつ、ベルト、衣服又は他の物品などに対する装着が容易であって着脱の際の操作性に優れるばかりか、ベルト、衣服又は他の物品などに対する装着状態が確実で安定しているクリップに関するものである。
なお、これらの物品については、クリップを装着することができるものであれば特に用途・機能などが限定されるものではなく、クリップによって挟持する物品についても特に限定されるものではない。
【背景技術】
【0003】
従来、小物入れなどの物品をベルト又は衣服などに装着するために物品に固定して使用するクリップとしては、図13に示す構造のクリップ90が提案されている。
【0004】
この従来公知のクリップ90は、本体部材91の基端部上面に山形の屈曲部92を形成し、当該本体部材91の裏面側において本体部材91から折り返すように第一の挟持片93を形成し、その第一の挟持片93の先端部を閉じることで当該第一の挟持片93に突設した係止突起94を前記屈曲部92の裏面に係合させ、本体部材91の裏面との間で物品の一部を挟持できるように構成するとともに、前記屈曲部92から第二の挟持片95を突設し、当該第二の挟持片95を開閉させることで前記本体部材91の表側面との間でベルト又は衣服などを挟持することができるように構成されている。
【0005】
かかる従来のクリップ90は、構造が簡単であり、かつ、第一の挟持片93を物品に設けた一対のスリットに挿通して物品の一部を挟んでから係止突起94を屈曲部92の裏面と係合させることで物品に対するクリップ90の固定作業を終えることができ、物品に対するクリップ90の縫い付け作業や、物品を裏返して内部からリベットやネジを装着する作業などが不要であり、物品の生産性を高めることができるという利点がある。
【0006】
しかしながら、物品に対するクリップ90の固定作業は容易であるものの、ベルト、衣服又は他の物品などを挟持するための第二の挟持片95の開閉操作を行い難く、ベルト、衣服又は他の物品に対する装着が行い難いばかりか、衣服のポケットなどから外れ易いという問題があった。
【0007】
そこで、ベルト、衣服又は他の物品などを挟持するための挟持片の開閉操作を行い易くしている従来技術としては、挟持片を回動可能に軸支する構造のクリップが提案されている(特許文献1〜特許文献6参照)。
【0008】
しかしながら、特許文献1〜特許文献6に記載のベルトクリップは、携帯電話などの硬い樹脂ケースからなる物品にクリップを固定するものであり、合皮又は布製の小物入れなどに対して直接簡易に固定できるものではない。
【0009】
特許文献7に記載の携帯品用ケースにおいては、クリップを携帯品用ケースに固定するためにリベットを用いており、予め組み立てられた状態のクリップを携帯品用ケースに固定することはできず、挟持片を取り外した状態でリベットを用いクリップ本体を携帯品用ケースに固定し、その後に挟持片をクリップ本体に組み付ける作業を要するため、携帯品用ケースの生産性が低下するという問題がある。
【0010】
かかる問題を解消するには、挟持片を一時的に90度ずらすように回動可能とする構造を採用し、リベットをかしめてから挟持片を元の位置に戻す構造を採用することも考えられるが、部品点数が増大したり構造が複雑になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開昭63−111041号公報
【特許文献2】特開平2−102905号公報
【特許文献3】実開平7−8317号公報
【特許文献4】特開平7−326869号公報
【特許文献5】特開平8−186385号公報
【特許文献6】特開2008−32159号公報
【特許文献7】特開2006−319433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、パターカバー、バックパック、携帯電話入れ又は小物入れなどの物品に対する固定作業が簡便であり、かつ、ベルト、衣服又は他の物品などに対する装着が容易であって操作性に優れ、しかもベルト、衣服又は他の物品などに対する装着状態が確実で安定しているクリップが提案されていないことである。
そして、本発明の目的は、物品に対する固定作業が迅速かつ容易であって物品の生産性を向上させることができ、かつ、ベルト、衣服又は他の物品などに対する装着が容易であって着脱の際の操作性に優れるばかりか、ベルト、衣服又は他の物品などに対する装着状態が確実で安定しているクリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、パターカバー、小物入れ、バックパックなどの物品をベルト、衣服又は他の物品などに装着するために使用するクリップであって、「弾性変形可能な山形の屈曲部を備えた本体部材と、当該本体部材の裏面側において本体部材から折り返され、先端部が開閉することで本体部材の裏面との間で物品の一部を挟持するための第一の挟持片と、前記第一の挟持片に突設され、前記屈曲部の裏面にて形成される谷部と係合する係止突起と、前記屈曲部と隣接して設けられた軸受部にて回動可能に軸支され、前記本体部材の表側面との間でベルト、衣服又は他の物品などを挟持するための第二の挟持片と、当該第二の挟持片を閉じる方向へ常時付勢する付勢手段と、当該付勢手段に抗して前記第二の挟持片を開閉操作するために前記第二の挟持片に設けられた操作部と、を備えたこと」を最も主要な特徴とするものである。
【0014】
本発明のクリップにおいて、前記付勢手段は、前記第二の挟持片を前記屈曲部側へ常時付勢するものであってもよく、前記屈曲部は、その上部が前記第二の挟持片の裏面と接触するように構成されていたり、その頂部が肉薄に形成されることで弾性変形し、谷部が開き易くするように構成されていてもよい。
【0015】
本発明のクリップにおいて、前記軸受部は、前記本体部材から突設されて前記屈曲部と連結されたリブと一体に形成されていてもよく、また、前記第一の挟持片は、前記本体部材と一体形成され、開いた先端部が弾性変形により閉じることができ、当該第一の挟持片の先端部に設けられた前記係止突起が前記谷部と係合するようになっていてもよい。
【0016】
さらに、前記係止突起は、前記第一の挟持片の先端部と直交する方向よりも先端が外方へ若干傾斜して突設されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
上記の構成により、本発明のクリップは、第一の挟持片と本体部材の裏面との間で物品の一部を挟持させ、前記第一の挟持片に突設された係止突起を、前記屈曲部の裏面にて形成される谷部と係合させることで、クリップを物品に固定する作業を簡便に行うことができるばかりか、前記第二の挟持片には操作部が設けられているため、付勢手段に抗して第二の挟持片を開閉操作することが容易である。
【0018】
従って、本発明は、物品に対する固定作業が迅速かつ容易であって物品の生産性を向上させることができ、かつ、ベルト、衣服又は他の物品などに対する装着が容易であって着脱の際の操作性に優れるばかりか、ベルト、衣服又は他の物品などに対する装着状態が確実で安定しているといった使い勝手のよいクリップを提供することができる。
【0019】
本発明のクリップにおいて、前記付勢手段が前記第二の挟持片を前記屈曲部側へ常時付勢するように構成することで、屈曲部の裏面の谷部を閉じる方向に付勢できるため、係止突起と谷部との係合状態を安定させるとともに屈曲部の補強作用を得ることができる。
さらに、屈曲部によって軸受部を保護することができ、第二の挟持片によって挟持されるベルトや衣服などの物品が軸受部に挟まれてしまうことを防ぐこともできる。
【0020】
本発明のクリップにおいて、前記屈曲部の上部が前記第二の挟持片の裏面と接触するように構成することで、第二の挟持片を押さえることにより、当該第二の挟持片の裏面にて屈曲部の上部を押さえながら屈曲部に無理な応力が加えられることを防止しつつ谷部の第一の挟持片側を開くように変形させることが可能となり、係止突起と谷部とをより一層迅速かつ容易に係合させることができる。
【0021】
本発明のクリップにおいて、前記軸受部が、前記本体部材から突設されて前記屈曲部と連結されたリブと一体に形成されることにより、応力が集中しやすい軸受部及び屈曲部の強度が高められ、クリップの耐久性を向上させることができるとともに、屈曲部の裏面の谷部による係止突起の係止状態を強固にし、クリップと物品との固定状態をより一層安定させることができる。
【0022】
本発明のクリップにおいて、前記屈曲部の頂部が肉薄に形成されることで、屈曲部を弾性変形させて谷部を開き、当該谷部に対して係止突起をより一層迅速かつ容易に係合させることができる。
【0023】
本発明のクリップにおいて、前記第一の挟持片が、前記本体部材と一体形成され、弾性変形により先端部が開閉し、当該第一の挟持片の先端部に設けられた前記係止突起が前記谷部と係合することで、前記係止突起を前記谷部と係合させて第一の挟持片によって物品の一部を保持する構成を簡潔なものとすることができ、クリップの取り付けも容易とすることができる。
【0024】
本発明のクリップにおいて、前記係止突起が、前記第一の挟持片の先端部と直交する方向よりも先端が外方へ若干傾斜して突設されることで、前記係止突起が谷部の内面側と強く係合することとなるため、前記係止突起と前記谷部との係合状態をさらに安定させることができ、また、谷部を開き易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は本発明を具体化したクリップを物品に装着して固定する様子を示す側面図である。
【図2】図2は本発明を具体化したクリップの第一の挟持片の係止突起を本体部材に係合させた様子を示す側面図である。
【図3】図3は本発明を具体化したクリップをベルトに装着する様子を示す側面図である。
【図4】図4は本発明を具体化したクリップ本体部材の表側面を示す斜視図である。
【図5】図5は本発明を具体化したクリップの付勢手段などを示す平面図である。
【図6】図6は本発明を具体化したクリップを固定するためのスリットを設けた物品と補強パッドを示す背面図である。
【図7】図7は本発明を具体化したクリップと物品を示す斜視図である。
【図8】図8は本発明を具体化したクリップを物品に固定した状態を示す側面図である。
【図9】図9は本発明を具体化したクリップを物品に固定した状態を示すクリップの正面図である。
【図10】図10は本発明を具体化したクリップをスリットを設けた物品に装着する様子を示す背面図である。
【図11】図11は本発明を具体化したクリップをバックパックに取り付けた状態を示す斜視図である。
【図12】図12は本発明を具体化したクリップの変形例を示す側面図である。
【図13】図13は従来のクリップを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、ゴルフのパターカバー、ゴルフバッグ、小物入れ、バックパックなどの物品に装着するために使用するクリップを「弾性変形可能な山形の屈曲部を備えた本体部材と、当該本体部材の裏面側において本体部材から折り返され、先端部が開閉することで本体部材の裏面との間で物品の一部を挟持するための第一の挟持片と、前記第一の挟持片に突設され、前記屈曲部の裏面にて形成される谷部と係合する係止突起と、前記屈曲部と隣接して設けられた軸受部にて回動可能に軸支され、前記本体部材の表側面との間でベルト、衣服又は他の物品などを挟持するための第二の挟持片と、当該第二の挟持片を閉じる方向へ常時付勢する付勢手段と、当該付勢手段に抗して前記第二の挟持片を開閉操作するために前記第二の挟持片に設けられた操作部と、を備える」ように構成することで、物品に対する固定作業が迅速かつ容易であって物品の生産性を向上させることができ、かつ、ベルト、衣服又は他の物品などに対する装着が容易であって着脱の際の操作性に優れるばかりか、ベルト、衣服又は他の物品などに対する装着状態が確実であるクリップを実現した。
【0027】
本発明のクリップにおいて、前記付勢手段が前記第二の挟持片を前記屈曲部側へ常時付勢するように構成することで、屈曲部の裏面の谷部を閉じる方向に付勢でき、係止突起と谷部との係合状態を安定させるとともに屈曲部の補強作用を得ることが可能となる。
【0028】
前記屈曲部は、第二の挟持片を閉じた状態において、屈曲部の上部が前記第二の挟持片の裏面と接触するように構成されていてもよい。かかる実施形態によれば、前記第一の挟持片に突設された係止突起を前記屈曲部の裏面の谷部と係合させる際に、第二の挟持片を押さえることにより、当該第二の挟持片の裏面にて屈曲部の上部を押さえながら屈曲部に無理な応力が加えられることを防止しつつ谷部の第一の挟持片側を開くように変形させることが可能となり、係止突起を谷部とをより一層迅速かつ容易に係合させることができる。
【0029】
前記軸受部は、前記本体部材から突設されて前記屈曲部と連結されたリブと一体に形成されていてもよく、かかる実施形態によれば、応力が集中しやすい軸受部及び屈曲部の強度が高められ、クリップの耐久性を向上させることができるとともに、屈曲部の裏面の谷部による係止突起の係止状態を強固にして安定させることができる。
【0030】
前記屈曲部は、その頂部が肉薄に形成されることで前記谷部が開き易く弾性変形するようにしてもよく、かかる実施形態によれば、屈曲部を弾性変形させて谷部を開き係止突起をより一層迅速かつ容易に係合させることができる。
【0031】
前記第一の挟持片は、前記本体部材と一体形成され、弾性変形により開いた先端部を閉じることができ、当該第一の挟持片の先端部に設けられた前記係止突起が前記谷部と係合するようにしてもよく、かかる実施形態によれば、前記係止突起を前記谷部と係合させて第一の挟持片によって物品の一部を保持する構成を簡潔なものとすることができ、クリップの取り付けも容易である。
【0032】
前記係止突起は、前記第一の挟持片の先端部と直交する方向よりも先端が外方へ若干傾斜して突設されていてもよく、かかる実施形態によれば、前記係止突起が谷部の外側の内面側と強く係合することとなるため、前記係止突起と前記谷部との係合状態を安定させることができる。
【実施例1】
【0033】
図1〜図3は、本発明を具体化したクリップ10の一実施例を示す側面図であって、当該クリップ10は、パターカバー又は小物入れなどの物品20をベルト30又は衣服のポケットなどに装着するために使用することができるものである。
【0034】
1は、弾性変形が可能であって強度に優れた合成樹脂(例えば、POM:ポリアセタール)から構成された本体部材であって、当該本体部材1の中央部より若干基端寄りの位置に本体部材1の長手方向と交差する方向に延びる弾性変形可能な山形の屈曲部2を備えている。
【0035】
3は、前記本体部材1の裏面側において本体部材1から折り返されるように本体部材1と一体形成され、図1に示すように先端部が開閉することで本体部材1の裏面との間で物品20の一部を挟持することができる第一の挟持片である。
【0036】
4は、前記第一の挟持片3の先端部上面に突設され、前記屈曲部2の裏面にて形成される谷部5と係合する板状の係止突起であって、前記第一の挟持片3の長手方向と交差する方向に沿って設けられている。
【0037】
この係止突起4は、前記第一の挟持片3の先端部上面と直交する方向よりも先端が外方へ若干傾斜して突設されることで、当該係止突起4が谷部5の内面側と強く係合するとともに、谷部5を開き易くするようになっている(即ち、図1において、角度θが約86度といった鋭角となるように係止突起4が突設されている。)。
【0038】
さらに、前記係止突起4の先端部には、図4に示すように外方又は内方に交互に突出するように係止段部4aが形成されており、当該係止段部4aと対応するように前記谷部5に形成された係止段部5aと互いに抜け止め状態で係合するようになっている。
【0039】
6は、前記屈曲部2の外方にて隣接して設けられた一対の軸受部であって、前記本体部材1から互いに平行となるように突設され、透孔6aが形成されている。前記軸受部6は、前記屈曲部2と連結されたリブ6bと一体に形成されている。なお、ここで屈曲部2と「隣接して」設けられた軸受部6について念のため付言すると、これは屈曲部2と軸受部6との間には特に余分な空間や他の構成要素を設けることが必須ではないことを意味するにすぎないものであり、本実施例における具体的な位置関係に限定されるものではない。
【0040】
7は、前記一対の軸受部6間に架設された軸ピン8にて回動可能に軸支され、先端側が開閉することで前記本体部材1の表側面との間でベルト30又は衣服などの他の物品を挟持するための第二の挟持片であって、前記本体部材1と同じく強度に優れた合成樹脂から構成されている。
【0041】
本実施例において、前記軸受部6は、前記屈曲部2の背後に配置されているため、屈曲部2によって保護されることとなり、また、第二の挟持片7によって挟持する物品を軸受部6が挟み込むことを防止することもできる。
【0042】
9は、前記第二の挟持片7を前記屈曲部2側へ常時付勢する付勢手段としてのコイルバネであって、図5に示すように前記軸ピン8に巻装配置され、当該第二の挟持片7の基部に設けられた操作部7aの裏面と本体部材1の基部の上面との間を開くように常時付勢するようになっている。
【0043】
よって、クリップ10が固定された物品20をベルト30などに装着したりベルト30などから取り外す際に、前記操作部7aを押さえることで、前記コイルバネ9に抗して前記第二の挟持片7を容易に開閉操作することができるように構成されている。
【0044】
なお、前記第二の挟持片7の先端部7bは、前記本体部材1側へ鉤形に折り曲げられており、さらに、当該本体部材1の先端部上面を若干窪ませて形成した延長部1aの上面と当接するようになっており、本体部材1の上面と第二の挟持片7との間にベルト30などを確実に保持できるようになっている。
ここで、前記第二の挟持片7によって主に挟むべき物品が肉厚のものである場合には前記先端部7bの長さを適宜大きくすればよい。
【0045】
次に、本発明のクリップ10の使用方法について説明する。
本発明のクリップ10を物品20に固定するには、図6及び図7に示すように物品20の背面に上下一対の上部スリット21及び下部スリット22を互いに平行となるように形成する。なお、これらのスリット21,22は、第一の挟持片3の基端部の位置から係止突起4の形成位置までの距離に合わせて形成する(図1参照)。
【0046】
さらに、クリップ10が固定される物品20の背面を構成する素材(天然皮革、合成皮革又は布など)の強度が十分でない場合には、合成樹脂などからなる補強パッド40を使用するとよい。当該補強パッド40には、予め前記スリット21,22と対応する位置にそれらのスリット21,22より若干大きめの上部補強スリット41及び下部補強スリット42を形成しておき、それらのスリット41,42を物品20のスリット21,22と対応させて物品20の背面内部に貼り付ける。
【0047】
そして、クリップ10の第一の挟持片3の先端部3a及び係止突起4を、物品20の前記下部スリット22及び下部補強スリット42に挿入し、さらに、図1に示すように上部補強スリット41及び上部スリット21から引き出すことで、物品20の背面の一部を第一の挟持片3によって挟み込む。
【0048】
その後、前記屈曲部2と対応する第二の挟持片7の上面位置を押さえることで、係止突起4を谷部5に押し込むようにして係合させる。この場合、第二の挟持片7を押さえることで、第二の挟持片7の裏面にて屈曲部2の上部を押さえながら屈曲部2に無理な応力が加えられることを防止しつつ谷部5の第一の挟持片3側を開くように弾性変形させることが可能となり、係止突起4を谷部5と迅速かつ容易に係合させることができる。
【0049】
従って、上記のとおりの簡便な方法でクリップ10を物品20に対して迅速かつ容易に固定する作業を終えることができ、クリップ10を備えた物品20の生産性を向上させることができる。
【0050】
即ち、本発明によるクリップ10においては、クリップ10を物品20に対して縫い付ける作業や、物品20を裏返して内部からリベットやネジを装着する作業などが不要であり、かつ、クリップ10を物品20に固定するために複雑な加工作業を行ったり、複雑な加工部品を用いる必要がない。
【0051】
物品20に固定されたクリップ10をベルト30などに装着したりベルト30などから取り外す際には、前記第二の挟持片7の操作部7aを押さえることで、前記コイルバネ9に抗して前記第二の挟持片7を開閉操作することを容易に行うことができるため、ベルト30などに対する物品20の着脱操作を容易かつ速やかに行うことができる。
【0052】
しかも、前記第二の挟持片7は、コイルバネ9により常時閉じるように付勢されており、かつ、前記第二の挟持片7の先端部7bが鉤形に折り曲げられて本体部材1の延長部1aの上面と当接するようになっているため、本体部材1の上面と第二の挟持片7との間にベルト30などを確実に保持できるようになっている。
【0053】
前記実施例においては、クリップ10を構成する軸ピン8及びコイルバネ9を金属から構成し、その他の構成部分を合成樹脂(POM)から構成したが、本発明のクリップ10を構成するための合成樹脂材料としては、他にPA(ポリアミド:各種ナイロン)、PP(ポリプロピレン)といった結晶性樹脂(高分子結晶をつくるタイプ)又はPC(ポリカーボネート樹脂)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、AS(樹脂アクリロニトリルスチレン)、HI−PS(耐衝撃性ポリスチレン)といった非晶性樹脂(結晶にならないタイプ)などが好適である。
【0054】
また、本発明のクリップ10を物品に20に装着して固定する方法としては、図10に示すように、上部スリット21のみを設けた布片25の下辺以外の3辺を物品20に縫い付けて布片25を物品20と一体化し、その布片25の下方からクリップ10の係止突起4を挿入し、上部スリット21から引き出すことで、第一の挟持片3にて物品20の一部を挟持するようにして実施してもよい。
【0055】
なお、図11に示すように、本発明のクリップ10を装着して固定する物品をバックパック50とした場合においては、第二の挟持片7によって帽子31、カメラ、コンパスその他の物品を挟持できる。
【0056】
さらに、本発明のクリップが第一の挟持片3にて装着される物品は特に限定されないので、本発明のクリップ10をゴルフバッグ、衣服、ベルトなどの物品に装着して実施してもよい。また、第二の挟持片7によって挟持される他の物品も特に限定されないので、ハンカチや紙片といった薄いものを挟持しやすくするため、図12に示すクリップ11のように、本体部材1の上面を平坦な状態とし、第二の挟持片7の先端部7cについても本体部材1の先端部と沿うように平坦な状態として実施してもよい。
【0057】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本体部材1と第二の挟持片7の形状を挟持する物品に応じてそれらを挟持しやすく変更して実施してもよい。
また、前記係止突起4の外方に延びる第一の挟持片3の先端部3aを長くすることで物品20との連結強度を高めるようにしたり、逆に当該先端部3aを短くすることでスリット21,22への挿入作業を容易にするなど適宜変更して実施してもよい。
【0058】
あるいは、屈曲部2及び軸受部6の位置関係を逆にして実施してもよい。この場合、屈曲部2が第二の挟持片7の開閉操作の邪魔にならないように、屈曲部2の大きさを小さくするとか、軸受部6の設置位置を屈曲部2からやや離間させるなどの変更が適宜必要となる。
【0059】
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で前記クリップ10の材質、形状、寸法、強度などを適宜変更したり、本体部材と第一の挟持片とを別体にて構成したり、各部の形状、設置位置、厚さ、大きさ、数などを適宜変更して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、クリップ及びクリップを備えた各種の物品の製造において好適に利用可能であるが、クリップが取り付けられる物品及びクリップによって挟む物品については特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0061】
1 本体部材
1a 延長部
2 屈曲部
3 第一の挟持片
3a 先端部
4 係止突起
4a 係止段部
5 谷部
5a 係止段部
6 軸受部
6a 透孔
6b リブ
7 第二の挟持片
7a 操作部
7b 先端部
7c 先端部
8 軸ピン
9 コイルバネ(付勢手段)
10 クリップ
11 クリップ
20 物品(小物入れ)
21 上部スリット
22 下部スリット
25 布片
30 ベルト
31 帽子
40 補強パッド
41 上部補強スリット
42 下部補強スリット
50 物品(バックパック)
90 クリップ(従来技術)
91 本体部材
92 屈曲部
93 第一の挟持片
94 係止突起
95 第二の挟持片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能な山形の屈曲部を備えた本体部材と、
当該本体部材の裏面側において本体部材から折り返され、先端部が開閉することで本体部材の裏面との間で物品の一部を挟持するための第一の挟持片と、
前記第一の挟持片に突設され、前記屈曲部の裏面にて形成される谷部と係合する係止突起と、
前記屈曲部と隣接して設けられた軸受部にて回動可能に軸支され、前記本体部材の表側面との間でベルト、衣服又は他の物品などを挟持するための第二の挟持片と、
当該第二の挟持片を閉じる方向へ常時付勢する付勢手段と、
当該付勢手段に抗して前記第二の挟持片を開閉操作するために前記第二の挟持片に設けられた操作部と、
を備えたことを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記付勢手段は、前記第二の挟持片を前記屈曲部側へ常時付勢するものであることを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記屈曲部は、その上部が前記第二の挟持片の裏面と接触するように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記軸受部は、前記本体部材から突設されて前記屈曲部と連結されたリブと一体に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のクリップ。
【請求項5】
前記屈曲部は、その頂部が肉薄に形成されることで前記谷部が開き易く弾性変形することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のクリップ。
【請求項6】
前記第一の挟持片は、前記本体部材と一体形成され、弾性変形により先端部が開閉し、当該第一の挟持片の先端部に設けられた前記係止突起が前記谷部と係合することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のクリップ。
【請求項7】
前記係止突起は、前記第一の挟持片の先端部と直交する方向よりも先端が外方へ若干傾斜して突設されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−117537(P2011−117537A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275669(P2009−275669)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(303011275)株式会社ジャパーナ (43)
【Fターム(参考)】