説明

クリップ

【課題】 簡素な構成で抜去力に対して大きな抵抗力を発生させることができるクリップを提供する。
【解決手段】 係止孔101,102が形成された車体パネル100にパイプ11,12を取り付けるためのパイプクランプ10であって、パイプを抱持する第1〜第4溝部24,25,61,62を備えた本体部(上本体部15,下本体部16)と、爪部39を備えて上本体部15に突設された弾性変形可能な係止脚部18,19と、本体部に第1位置と第2位置との間で回動可能に支持され、係止脚部が係止孔に挿入される際に車体パネルに押圧されて、第1位置から第2位置へと回動し、第2位置において係止脚部に当接し、係止孔の周縁部との間に係止脚部を挟持し、爪部が係止孔の周縁部に引っ掛った状態に維持する回動部材21,22とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係止孔が形成された基材に被取付部材を取り付けるためのクリップに係り、詳しくは係止孔とクリップとの係止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体パネル等の基材に、フィラーパイプやワイヤハーネス、室内灯、スピーカ等の被取付部材を取り付けるための締結具として、様々な構成のクリップが使用されている。例えば、車内灯をルーフライニングに取り付けるためのクリップとして、車内灯のケーシングに回動自在に支持された回動部材(回転係合部材)を設け、ケーシングのルーフライニングへの接近に伴うルーフライニングとの接触によって回動部材を回動させ、ルーフライニングの端縁に回動部材を引っ掛けるようにしたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−34181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のクリップでは、回動部材のみがルーフライニングと係合しているため、固定構造の剛性が比較的低く、抜去力に対して大きな抵抗力を発生させることが難しいという問題がある。また、回動部材は、回動の駆動力を得るためにルーフライニングによって押圧される部分と、ルーフライングに引っ掛かる部分と、ルーフライニングとの引っ掛かり状態を維持するためにケーシングと係合する部分とを備え、構造が複雑である。回動部材をルーフライニングとガタなく結合させるためには、各部分を高精度に形成する必要がある。
【0005】
本発明は、以上の問題を鑑みてなされたものであって、簡素な構成で抜去力に対して大きな抵抗力を発生させることができるクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の発明は、係止孔(101,102)が形成された基材(100)に被取付部材(11,12)を取り付けるためのクリップ(10)であって、前記被取付部材に連結可能な連結部(24,25,61,62)を備えた本体部(15,16)と、爪部(39)を備えて前記本体部に突設され、傾倒することによって前記係止孔に挿入されるとともに、前記係止孔に挿入された状態で前記爪部が前記係止孔の周縁部に引っ掛かる弾性変形可能な係止脚部(18,19)と、前記本体部に第1位置と第2位置との間で回動可能に支持され、前記係止脚部が前記係止孔に挿入される際に前記基材に押圧されて、第1位置から第2位置へと回動し、第2位置において前記係止脚部に当接し、前記係止孔の周縁部との間に前記係止脚部を挟持し、前記爪部が前記係止孔の周縁部に引っ掛った状態に維持する回動部材(21,22)とを有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、係止脚部が係止孔に挿入されると、係止脚部は回動部材と係止孔の周縁部との間に挟持され、傾倒が規制される。これにより、係止脚部の爪部が係止孔の周縁部に引っ掛かった状態が維持されるため、係止脚部を係止孔から抜き去る抜去力に対して、大きな抵抗力を生じさせることができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記本体部および前記回動部材の一方には、前記回動部材が第2位置に位置するときに、前記本体部および前記回動部材の他方に引っ掛かり、前記回動部材の第2位置から第1位置へと回動を禁止する弾発係止片(53,56)を備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、回動部材は第2位置に一度到達すると、第1位置への回動が規制されるため、係止脚部を係止孔の周縁部との間に挟持した状態を維持することができる。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記弾発係止片は、操作入力部(57)を備え、当該操作入力部に外力が加わることによって、前記本体部および前記回動部材の他方との引っ掛かりを解除する方向に弾性変形することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、使用者が指や工具を使用して操作入力部に外力を加えることにより、弾発係止片と本体部または回動部材との引っ掛かりを解除することができる。そのため、クリップは再使用が可能になる。
【0012】
第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記回動部材は、二股に分岐した形状を有し、その一端に前記基材に押圧される被押圧部(76)を備えるともに、その他端に前記係止脚部を押圧する押圧部(77)を備え、前記押圧部は、前記係止脚部の前記係止孔に対する挿入方向に対して垂直となる方向に前記係止脚部を押圧することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、爪部と係止孔の周縁部との引っ掛かりをより確実にすることができる。
【0014】
第5の発明は、第4の発明において、前記押圧部は、前記係止脚部の前記爪部が設けられた部分と相反する部分を押圧することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、爪部と係止孔の周縁部との引っ掛かりをより確実にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上の構成によれば、クリップは簡素な構成で抜去力に対して大きな抵抗力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係るパイプクランプの分解斜視図
【図2】実施形態に係るパイプクランプの斜視図
【図3】実施形態に係る上本体部の断面図
【図4】実施形態に係る下本体部の断面図
【図5】実施形態に係る上本体部および下本体部を組み合わせる際の回動部材および係止脚部の位置関係を示す斜視図
【図6】実施形態に係るパイプクランプを車体パネルに結合させる際の係止脚部および回動部材の動作を示す説明図
【図7】実施形態に係るパイプクランプを車体パネルに結合させる際の係止脚部および回動部材の動作を示す説明図
【図8】一部変形実施形態に係るパイプクランプを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明をパイプクランプに適用した一実施形態について詳細に説明する。実施形態に係るパイプクランプ(クリップ)10は、フューエルインレットパイプ(被取付部材)11およびブリーザチューブ(被取付部材)12の長手方向における中間部を車体パネル(基材)100に固定するために使用される。以下の説明では、各図に示す方向に基づいて説明する。
【0019】
図1および図2に示すように、パイプクランプ10は、上本体部15と下本体部16とからなる本体部と、上本体部15に突設された2つの係止脚部18,19と、下本体部16に回動自在に支持された2つの回動部材21,22とを主要構成要素としている。パイプクランプ10の全ての構成要素は、樹脂材料から形成されている。
【0020】
上本体部15は、左右方向に延在する基部23を備え、基部23の下面に下方に向けて開口する第1溝24および第2溝25を備えている。第1溝24および第2溝25は、それぞれ前後方向に延在して上本体部15の前面および後面に連続している。第1溝24は、フューエルインレットパイプ11の上半部の外形に一致するように断面が半円状に形成されており、第2溝25は、ブリーザチューブ12の上半部の外形に一致するように断面が半円状に形成されている。
【0021】
基部23の下面の第1溝(連結部)24と第2溝(連結部)25との間の部分には、四角柱状の連結凸部26が下方に向けて突設されている。連結凸部26の前側面および後側面のそれぞれには、連結凸部26の内方に向かって傾倒可能な係止爪27,27が形成されている。
【0022】
図1および図3に示すように、基部23の左端部には、基部23の左端に連続するとともに上下方向に貫通する切欠部31が形成されている。切欠部31は、平面視において、略矩形状を呈している。上本体部15の左端部の下面には、中空箱状の第1凸部32が突設されている。第1凸部32は、切欠部31の周縁部に沿って配置された前側壁33、右側壁34、後側壁35と、各側壁33〜35の下端を互いに連結する底板36とを有し、その左方および上方は開口した状態となっている。
【0023】
同様に、基部23の右端部には、右端に連続するとともに上下方向に貫通する切欠部41が形成されている。切欠部41は、平面視において、略矩形状を呈している。上本体部15の右端部の下面には、中空箱状の第2凸部42が突設されている。第2凸部42は、切欠部41の周縁部に沿って配置された前側壁43、右側壁44、後側壁45と、各側壁43〜45の下端を互いに連結する底板46とを有し、その右方および上方は開口した状態となっている。
【0024】
第1凸部32の底板36の下面右端および第2凸部42の底板46の下面左端には、互いに対称形となる係止脚部18,19がそれぞれ下方へと向けて突設されている。各係止脚部18,19は、主面が左右方向を向く板状をなし、その先端部37が基端部38に比べて前後方向に幅広となっている。第1凸部32の係止脚部18は、先端部37の左側面に左方へと向けて突出する爪部39を有し、第2凸部42の係止脚部19は、先端部37の右側面に右方へと向けて突出する爪部39を有している。各爪部39,39は、上端部にそれぞれ係止面40,40を備えている。各係止脚部18,19は、それぞれ可撓性を有し、左右方向に弾性変形することによって、上端を基点として傾倒可能となっている。
【0025】
第1凸部32および第2凸部42の底板36,46のそれぞれには、上下方向に貫通する貫通孔51,52が形成されている。貫通孔51の左端側の周縁部には、貫通孔51内を右方へと延出する片持ち梁状の弾発係止片53が形成されている。弾発係止片53は、下方へと突出するとともに、右端部に右方を向く係止面54が形成された爪部55を備えている。また、図3に示すように、弾発係止片53は、その先端部に上方へと突出する突片(操作入力部)57を備えている。同様に、貫通孔52の右端側の周縁部には、貫通孔52内を左方へと延出する片持ち梁状の弾発係止片56が形成されている。第2凸部42の弾発係止片56は、第1凸部32の弾発係止片53と同様の形状をなし、下方へと突出するとともに、左端部に左方を向く係止面54が形成された爪部55と、上方へと突出する突片57とを備えている。弾発係止片53,56は、弾性変形可能となっており、先端部が上方へと変形することによって傾倒可能になっている。
【0026】
図1および図4に示すように、下本体部16は、左右方向に延在する基部60を備え、基部60の上面に上方に向けて開口する第3溝(連結部)61および第4溝(連結部)62を備えている。第3溝61および第4溝62は、それぞれ前後方向に延在して下本体部16の前面および後面に連通している。第3溝61は、フューエルインレットパイプ11の下半部の外形に一致するように断面が半円状に形成されており、第4溝62は、ブリーザチューブ12の下半部の外形に一致するように断面が半円状に形成されている。
【0027】
下本体部16の基部60の下面は、後述する車体パネル100の表面105に対応するように、左側部が右側部よりも下方に延出しており、中央部は左側部と右側部とを連結するように傾斜している。基部60は、適所に肉盗み部63を備えており、肉盗み部63は下面へと開口している。図4に示すように、基部60の第3溝61と第4溝62との間の部分には、下本体部16の上面と肉盗み部63とを連通する連結孔64が形成されている。連結孔64は、断面が四角形状を呈する。
【0028】
基部60の左端部には、前後方向を向いて互いに対向する一対の平板状の左側支持壁65,65が、所定の間隔を突設されている。各左側支持壁65,65の左端下部には、それぞれ前後方向に貫通し、互いに同軸となる円形状の支持孔66,66が形成されている。同様に、基部60の右端部には、前後方向を向いて互いに対向する一対の平板状の右側支持壁67,67が、所定の間隔を突設されている。各右側支持壁67,67の右端下部には、それぞれ前後方向に貫通し、互いに同軸となる円形状の支持孔68,68が形成されている。支持孔66および支持孔68は、同径に形成されている。
【0029】
図1に示すように、回動部材21,22は同一の形状を有するため、回動部材21について説明し、回動部材22は回動部材21と同一の符号を付して説明を省略する。回動部材21は、前後一対のアーム部71,71と、各アーム部71,71を連結する連結部72と、各アーム部71,71にそれぞれ突設された一対の支持軸73,73とを備えている。
【0030】
前後一対のアーム部71,71は、互いに対称形となっており、前後方向に沿って見た側面視において、それぞれ二股に分岐した二股構造を呈しており、互いに重なり合っている。図1および図5〜図7に示すように、各アーム部71は、基部75から概ね直線状に延出した第1アーム76と、基部75から第1アーム76の延出方向に対して概ね直交する方向に延出した後に屈曲して概ね第1アーム76の延出方向と平行に延出する略L字状の第2アーム77とを備えている。第1アーム76の延出方向において、第2アーム77の先端は第1アーム76の先端よりも基部75からの延出長さが長くなっている。第1アーム76は、その先端部に延出方向に概ね直交する先端面78を備えている。第2アーム77は、第1アーム76側を向く部分に、第1アーム76の先端面78と概ね垂直となる側面79を備えている。
【0031】
各アーム部71は、基部75において連結部72によって互いに連結されており、各第1アーム76どうし、および各第2アーム77どうしは互いに離間している。各第1アーム76どうし、および各第2アーム77どうしの間の距離は、係止脚部18,19の基端部38の前後方向長さよりも長く、先端部37の前後方向長さよりも短く設定されている。
【0032】
連結部72は、その長手方向に沿って第1アーム76側と相反する方向に突出した凸部81を備えている。凸部81の先端部には凹部82が形成されている。
【0033】
各アーム部71の各基部75の連結部72と相反する部分には、円柱状の支持軸73,73が互いに同軸となるように突設されている。各支持軸73の直径は、支持孔66,68の内径と比較して略同一、または小さくなるように形成されている。
【0034】
図1に示すように、回動部材21は、各支持軸73が各左側支持壁65の各支持孔66に支持されることによって、下本体部16に回動可能に支持されている。同様に、回動部材22は、各支持軸73が各右側支持壁67の各支持孔68に支持されることによって、下本体部16に回動可能に支持されている。
【0035】
次に、パイプクランプ10を用いたフューエルインレットパイプ11およびブリーザチューブ12の車体パネル100への取付構造および取付方法について説明する。取付手順としては、パイプクランプ10でフューエルインレットパイプ11およびブリーザチューブ12を支持した後に、パイプクランプ10を車体パネル100に支持する。
【0036】
最初に、図1に示すように、上本体部15と、回動部材21,22が組み付けられた下本体部16とを、第1溝24および第3溝61、第2溝25および第4溝62のそれぞれが対向するように配置し、フューエルインレットパイプ11の長手方向における適所を第1溝24と第3溝61との間に配置し、ブリーザチューブ12の長手方向における適所を第2溝25と第4溝62との間に配置する。この状態から、上本体部15と下本体部16との間にフューエルインレットパイプ11およびブリーザチューブ12をそれぞれ挟持するべく、上本体部15と下本体部16とを接近させて組み合わせる。
【0037】
上本体部15と下本体部16とが接近すると、上本体部15の連結凸部26が、係止爪27,27を連結凸部26の内方に傾倒させつつ、下本体部16の連結孔64内に挿入される。同時に、上本体部15の係止脚部18が、基部60の左端部、各左側支持壁65,65、回動部材21によって画成された空間内に挿入され、係止脚部19が、基部60の右端部、各右側支持壁67,67、回動部材22によって画成された空間内に挿入される。上本体部15と下本体部16との組み合わせは、上本体部15の基部23の下面と、下本体部16の基部60の上面とが当接するまで行われる。
【0038】
図5に、係止脚部18が、基部60の左端部、各左側支持壁65,65、回動部材21によって画成された空間内に挿入される際の、係止脚部18および回動部材21の動作を、基部60の左端部、各左側支持壁65,65を取り除いて示す。図5(A)に示すように、係止脚部18の挿入を行う際には、回動部材21の第1アーム76および第2アーム77の先端部が概ね上方を向くように維持されている。この回動部材21の姿勢は、使用者の指等によって保持してもよいし、回動部材21と左側支持壁65との間に互いに係合する凸部および凹部を設け、これらを緩く結合させることによって保持してもよい。
【0039】
図5(A)に示す状態から、上本体部15の基部23と下本体部16の基部60とを近接させると、図5(B)に示すように、係止脚部18は、その爪部39において回動部材21の第1アーム76に押圧されて回動部材21から遠ざかる方向(右方)に弾性変形しつつ、下方へと変位する。このとき、回動部材21は、第1アーム76が係止脚部18に押圧されることによって、第2アーム77の先端部が係止脚部18の先端部37の右側面側へと回りこむ方向に回動する。係止脚部18の挿入が進み、上本体部15の基部23の下面と、下本体部16の基部60の上面とが当接した状態では、図5(C)に示すように、爪部39が第1アーム76よりも下方に位置し、係止脚部18は、上下方向に延在した状態に復帰する。このとき、回動部材21は、第2アーム77が係止脚部18の先端部37の上端部上を回り込んだ状態となっている。また、係止脚部18の基部28は、前後方向において、2つの第2アーム77,77の間に配置された状態となる。なお、この状態で、回動部材21の凸部81は、上本体部15の弾発係止片53の爪部55と離間している(図6(A)参照)。
【0040】
係止脚部19の基部60の右端部、各右側支持壁67,67、回動部材22によって画成された空間内への挿入も、上記の係止脚部18の挿入と同様に行われる。
【0041】
上本体部15と下本体部16との組み合わせが完了した状態では、連結凸部26の先端は、連結孔64の下端よりも下方に位置し、連結凸部26の係止爪27,27が連結孔64の下端縁に引っ掛かって抜け止めがなされる。図2に示すように、上本体部15と下本体部16との組み合わせが完了した状態では、第1溝24と第3溝61とが連続して1つの円孔を形成し、第2溝25と第4溝62とが連続して1つの円孔を形成する。図2では、フューエルインレットパイプ11およびブリーザチューブ12を省略しているが、フューエルインレットパイプ11は第1溝24と第3溝61との間に抱持され、ブリーザチューブ12は第2溝25と第4溝62との間に抱持される。以上のようにして、フューエルインレットパイプ11およびブリーザチューブ12がパイプクランプ10に支持される。
【0042】
次に、フューエルインレットパイプ11およびブリーザチューブ12を支持したパイプクランプ10を車体パネル100に取り付ける。パイプクランプ10の車体パネル100への取り付けは、係止脚部18,19を車体パネル100に形成された係止孔101,102に挿入し、引っ掛けることによって行う。
【0043】
図6および図7は、係止脚部18が係止孔101に挿入される際の係止脚部18、回動部材21、弾発係止片53の一連の動作を示す断面図である。図6(A)に示すように、係止脚部18が係止孔101に挿入される前の初期状態では、回動部材21の第1アーム76が係止脚部18の左方に位置し、第2アーム77が係止脚部18の右方に位置し、第1アーム76の先端部と第2アーム77の先端部との間に係止脚部18の先端部37が配置された状態となっている。回動部材21は、図6(A)中の時計回りの回動が、回動部材21の凸部81と弾発係止片53の爪部55との当接によって規制され、反時計回りの回動が、第1アーム76と係止脚部18の爪部39との当接によって規制されているため、初期状態における姿勢を維持することができる。この初期状態における回動部材21の位置を第1位置とする。初期状態においては、第1アーム76の先端面78は、車体パネル100の表面105に対して傾斜した状態となっている。
【0044】
図6(B)に示すように、係止脚部18を係止孔101に挿入させると、爪部39が係止孔101の周縁部に押圧されて、係止脚部19が右方へと傾倒(弾性変形)する。このとき、図示しないが係止脚部19も係止孔102に挿入されるため、各係止脚部18,19を各係止孔101,102に挿入させるためには、各係止脚部18,19が弾性変形する必要がある。
【0045】
図6(C)に示すように、係止脚部18の係止孔101への挿入が進むと、爪部39が係止孔101を通過し、係止脚部18は自身の弾発力によって上下方向に延在した状態に復帰しようとする。これにより、爪部39は、車体パネル100の裏面106側へと回りこみ、係止面40が係止孔101の周縁部に接触する。また、第1アーム76の先端面78の端部が車体パネル100の表面105に当接する。これにより、係止脚部18の係止孔101への挿入長さに応じて、回動部材21は車体パネル100に押圧され、支持軸73回りに時計回りに回動する。
【0046】
図6(D)に示すように、係止脚部18の係止孔101への挿入がさらに進み、回動部材21の時計回り方向への回動量が所定の値に達すると、回動部材21の凸部81が弾発係止片53の爪部55に接触する。その状態から回動部材21が時計回り方向にさらに回動すると、回動部材21は、爪部55を上方へと押圧し、弾発係止片53を上方へと弾性変形させて爪部55を上方に押し退けながら回動する。
【0047】
図6(E)に示すように、係止脚部18の係止孔101への挿入は、下本体部16の基部60の下縁が車体パネル100の表面105に当接した時点で終了する。この状態では、係止脚部18は上下方向に延在し、係止面40が車体パネル100の裏面106に対向している。第1アーム76の先端面78は、車体パネル100の表面105の当接する部分と平行になり、概ね全域にわたって接触している。第2アーム77は側面79において、係止脚部18の先端部37の右側面に当接している。このときの回動部材21の回動位置を第2位置とする。係止脚部18は、第2アーム77によって右方への弾性変形が規制されるとともに、第2アーム77と係止孔101の周縁部との間に挟持された状態となっている。これにより、爪部39と係止孔101の周縁部との引っ掛かり状態が維持され、係止脚部18の係止孔101からの抜け止めがなされる。
【0048】
第2アーム77は、係止脚部18の先端部37の爪部39が設けられた部分の裏側部分に当接し、係止脚部18の挿入方向(上下方向)と垂直となる方向に押圧するため、爪部39の右方への変位を確実に阻止することができる。また、第2アーム77は、側面79で係止脚部18に接触するため、係止脚部18を広範囲にわたって支持することができ、係止脚部18の傾倒を確実に規制することができる。
【0049】
また、図6(E)に示す状態では、弾発係止片53の爪部55は、凸部81に形成された凹部82内に侵入し、係止面54が凹部82の側壁と当接している。これにより、回動部材21の反時計回りの回動が規制される。これにより、係止脚部18が第2アーム77と係止孔101の周縁部との間に挟持された状態が維持され、爪部39と係止孔101の周縁部との引っ掛かり状態が維持される。なお、指や器具等によって突片57の先端部に外力を加えて左方側に変位させると、弾発係止片53が弾性変形され、爪部55と凹部82との引っ掛かりが解除される。
【0050】
係止脚部19と係止孔102への挿入および抜け止めも、以上に説明した係止脚部18の係止孔101への挿入と同様に行われる。係止脚部18の爪部39と係止脚部19の爪部39とは、互いに相反する方向に突設されており、回動部材21,22によって係止脚部18,19が互いに近接する方向への弾性変形が規制されるため、係止脚部18,19は係止孔101,102に係止され、パイプクランプ10は、車体パネル100に固定される。
【0051】
以上のように構成したことによって、係止脚部18,19は、係止孔101,102に挿入される際には弾性変形可能である一方、係止孔101,102から抜き出される際には、弾性変形が回動部材21,22によって規制され、各爪部39,39と係止孔101,102の周縁部との引っ掛かり状態が維持され、抜去に対して大きな抵抗力を発生させることができる。特に、係止脚部18,19の係止孔101,102への挿入に伴って、回動部材21,22が車体パネル100に回動させられるため、使用者は回動部材21,22の操作を行う必要がない。
【0052】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、図8に示すように、下本体部16の基部60の左端部から下方に向けて突出する突片91を設け、車体パネル100の係止孔111に、係止脚部18でなく突片91も係止孔111に挿入するようにしてもよい。この場合には、係止脚部18の右方向への変位が、突片91と係止孔111の周縁部との当接によって規制されるようになるため、係止脚部19を省略することができる。
【0053】
本実施形態では、本体部を上本体部15と下本体部16との分割構造にし、上本体部15と下本体部16との間にフューエルインレットパイプ11およびブリーザチューブ12を挟持するようにしたが、本体部を単一部材とし、本体部の適所にフューエルインレットパイプ11等を支持する構造を形成してもよい。なお、車体パネル等の基材に取り付けられる被取付部材は、パイプ等の管部材や棒部材に限られず、板部材や各種の部品や装置であってよい。
【0054】
本実施形態では、弾発係止片57を上本体部15に設け、回動部材21に弾発係止片57に引っ掛かる凹部82を設けたが、弾発係止片を回動部材21に設け、弾発係止片に引っ掛かる係止部を本体部に設けてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…パイプクランプ(クリップ)、11…フューエルインレットパイプ(被取付部材)、12…ブリーザチューブ(被取付部材)、15…上本体部(本体部)、16…下本体部(本体部)、18,19…係止脚部、21,22…回動部材、24…第1溝(連結部)、25…第2溝(連結部)、26…連結凸部、37…先端部、38…基端部、39…爪部、40…係止面、53,56…弾発係止片、54…係止面、55…爪部、57…突片(操作入力部)、61…第3溝(連結部)、62…第4溝(連結部)、64…連結孔、71…アーム部、72…連結部、73…支持軸、75…基部、76…第1アーム、77…第2アーム、78…先端面、79…側面、81…凸部、82…凹部、91…突片、100…車体パネル、101,102,111…係止孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
係止孔が形成された基材に被取付部材を取り付けるためのクリップであって、
前記被取付部材に連結可能な連結部を備えた本体部と、
爪部を備えて前記本体部に突設され、傾倒することによって前記係止孔に挿入されるとともに、前記係止孔に挿入された状態で前記爪部が前記係止孔の周縁部に引っ掛かる弾性変形可能な係止脚部と、
前記本体部に第1位置と第2位置との間で回動可能に支持され、前記係止脚部が前記係止孔に挿入される際に前記基材に押圧されて、第1位置から第2位置へと回動し、第2位置において前記係止脚部に当接し、前記係止孔の周縁部との間に前記係止脚部を挟持し、前記爪部が前記係止孔の周縁部に引っ掛った状態に維持する回動部材と
を有することを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記本体部および前記回動部材の一方には、前記回動部材が第2位置に位置するときに、前記本体部および前記回動部材の他方に引っ掛かり、前記回動部材の第2位置から第1位置へと回動を禁止する弾発係止片を備えることを特徴とする、請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記弾発係止片は、操作入力部を備え、当該操作入力部に外力が加わることによって、前記本体部および前記回動部材の他方との引っ掛かりを解除する方向に弾性変形することを特徴とする、請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記回動部材は、二股に分岐した形状を有し、その一端に前記基材に押圧される被押圧部を備えるともに、その他端に前記係止脚部を押圧する押圧部を備え、
前記押圧部は、前記係止脚部の前記係止孔に対する挿入方向に対して垂直となる方向に前記係止脚部を押圧することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載のクリップ。
【請求項5】
前記押圧部は、前記係止脚部の前記爪部が設けられた部分と相反する部分を押圧することを特徴とする、請求項4に記載のクリップ

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−99494(P2011−99494A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253872(P2009−253872)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】