説明

クリプトスポリジウム・パルブムの抗原と他の病原体の抗原とを含む組成物及びワクチン

クリプトスポリジウムパルブム抗原(1種又は複数)若しくは対象のエピトープ(1種又は複数)と、腸管感染症及び/又は腸管症状を引き起こす病原体由来の他の少なくとも1種の抗原若しくは対象のエピトープ、及び/又はこのような抗原(1種又は複数)若しくは対象のエピトープ(1種又は複数)を発現する組換体(1種又は複数)及び/又はベクター(1種又は複数)及び/又はプラスミド(1種又は複数)とを含む混合組成物、並びに妊娠中の哺乳動物及び/又は新生若しくは幼若の哺乳動物、例えば妊娠中の雌牛及び/又は生後1カ月以内などの子牛などに対するこのような組成物の投与が開示され請求される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1999年12月21日出願の米国特許仮出願第60/171399号の優先権を主張する、2000年12月20日出願の米国特許出願第09/742512号の一部継続出願である。本出願はまた、2003年8月14日出願の米国特許仮出願第60/495045号の優先権を主張するものである。
【0002】
本明細書で引用する各出願及び特許、並びにその各出願及び特許で引用されている各文献又は参考文献(係争中の各特許を含む;「出願引用文献」)、並びにこうした出願及び特許のいずれにも対応する、且つ/又はそれらの優先権を主張するPCT及び外国の各出願又は特許、並びに各出願引用文献で引用又は参照されている各文献を、参照により本明細書に組み込む。より一般的に、文献又は参考文献を、本明細書、つまり特許請求の範囲の前にある参考文献リスト又は明細書自体のいずれかで引用するが、こうした各文献又は参考文献(「本明細書で引用する参考文献」)、並びに本明細書で引用する各参考文献で引用されている各文献又は参考文献(製造元の仕様書、使用説明書なども含む)を参照により本明細書に組み込む。
【0003】
本発明は、クリプトスポリジウム・パルブム(Cryptosporidium parvum)及び/又は腸管病原体(他の腸管病原体など)の抗原(1種又は複数)/エピトープ(1種又は複数)、並びにクリプトスポリジウム・パルブム及び/又は腸管感染症に対する免疫応答を誘発するための、或いはそれらを予防、治療、又は制御するためのその抗原(1種又は複数)/エピトープ(1種又は複数)を含む、又は使用する組成物及び方法、並びにそれらの使用に関する。
【0004】
本発明はさらに、動物、例えば、ウシ、ネコ、イヌ若しくはウマ又はそれらの種などの哺乳動物における腸管感染症に対する免疫応答を誘発し、且つ/又はその感染症を予防し、且つ/又は治療し、且つ/又は制御するための方法及び/又は組成物及び/又はこのような組成物の使用若しくはこのような組成物を配合する際のその成分の使用に関する。
【0005】
本発明はまた、クリプトスポリジウム・パルブムによる感染に対する免疫応答を誘発し、且つ/又はその感染を予防し、且つ/又は治療し、且つ/又は制御するための、方法及び/又は組成物及び/又はこのような組成物の使用若しくはこのような組成物を配合する際の成分の使用に関する。
【0006】
本発明はまた、単価のクリプトスポリジウム・パルブムワクチンと、腸管病原体、例えばウシの腸管病原体(例えば、ロタ/コロナウイルス、大腸菌(E. coli))ワクチンとの同時使用、及び/又はクリプトスポリジウム・パルブムと、ロタ/コロナウイルス若しくは大腸菌とを含む混合ワクチンの使用、並びに腸管疾患、例えばウシの腸管疾患の、クリプトスポリジウム・パルブムとの重感染による増悪を予防、制御、又は治療すること、或いは免疫応答を誘発してそれを減少させることに関するものであり得る。クリプトスポリジウム・パルブムに対するワクチン接種によって誘発される免疫により、本明細書に記載の腸管病原体によって誘発される疾患の重篤度が有意に軽減され得る。クリプトスポリジウム・パルブムを含む混合ワクチンは、ロタ及びコロナウイルス、並びに大腸菌K99やF41によって引き起こされる、子牛などの新生動物の多病因性の腸管疾患のより完全な予防に有用である。
【0007】
本発明はまた、他の腸管病原体、例えばウシ腸管病原体に対するクリプトスポリジウム・パルブムの重感染の影響に関する。クリプトスポリジウム・パルブムは通常、哺乳動物、例えば子牛などの新生動物の糞便に存在する。クリプトスポリジウム・パルブムは、他の潜在的に病原性のあるウイルス及び細菌の腸管での有無にかかわらず、それ自体で腸管疾患の臨床症状を生じさせることができる。コロナウイルスなどのウイルス、及び大腸菌、例えばF41などの細菌は、現場では非常に病原性の高いものとして認識されているが、実験的チャレンジモデルでは疾患の重大な臨床症状を引き起こすことはできない。したがって、重感染によりコロナウイルス、ロタウイルス、及び大腸菌、例えばF41など、他の病原体によって引き起こされる疾患が増悪するので、本発明は、クリプトスポリジウム・パルブムとのウシの重感染に対処することに関するものであり得る。
【背景技術】
【0008】
ウシの腸管疾患は、なんらかの下痢という形で現れることが多い、腸管病原体による腸管感染の結果である。この疾患は、一般に新生子牛下痢症とも称し、農業における実質的な経済損失の原因となっている。子牛の疾病率は、その治療的介入の必要性、及び動物に対するその長期間の有害な影響と共に農場経営者の経済的負担の原因となる主要な要素である。ある推定では、3週齢未満の乳用子牛の死因の約75%が新生子牛下痢症であるとされている。Radostits, OM, et al., Herd Health Food Animal Production Medicine, 2nd ed., Sounders, Philadelphia, pp. 184-213, 1994。新生子牛下痢症の管理は多くの理由から困難であり、その最も重要な理由には、(1)疾患の発生機序に対する複数の病因の関与、(2)臨床症状の非特異性、(3)感染症には無症候性のものがあり得るという知見、及び(4)栄養及び内因性免疫など宿主要因の関与が含まれる。Moon, HW, et al., JAVMA 173 (5): 577-583 (1978)。Viring, S. et al., Acta Vet. Scand. 34: 271-279 (1999)。
【0009】
感染中に複数の腸管病原体が存在することが知られているが、どの病原体又はどの病原体の組合せが実際にその疾患の原因となっているのかが分からないため、ウシの腸管疾患を予防又は治療する戦略を構築することは非常に困難となっている。米国並びに世界の他の国々における疫学的研究から、新生子牛下痢症に関連する最も流行している腸管病原体には、それだけには限らないが、クリプトスポリジウム・パルブム、ロタウイルス、コロナウイルス、及び大腸菌が含まれることが分かっている。ほとんどの場合、こうした腸管病原体の数種は疾患の大発生から分離されているが、各病茵の有病率は、単一の罹患集団内で、又は複数の感染群間で一致しない。
【0010】
従来の研究では、ロタウイルスが下痢の子牛において最も流行している腸管病原体であることが発見された。例えば、英国における下痢の子牛に関する研究では、集団中の42%及び23%でロタウイルス及びクリプトスポリジウム・パルブムがそれぞれ検出された。この集団の子牛の20%が複数の病原体に感染していた。しかし、より最近の報告では、クリプトスポリジウム・パルブムがウシの腸管感染症において主要な病原体となっている。クリプトスポリジウム・パルブム、及び新生子牛の他の主要な腸管病原体による同時感染を評価したより最近の研究では、クリプトスポリジウム・パルブムが集団中の52.3%に見られた唯一の腸管病原体であり、続いてロタウイルスによる単独感染が42.7%に見られた。de la Fuente et al., Preventive Veterinary Medicine 36: 145-152 (1998)。2種の病因による同時感染はこの研究群の21.6%で生じたが、3種及び4種の病原体による感染はそれぞれ6%及び0.5%で見られた。この研究における最も一般的な混合感染は、クリプトスポリジウムとロタウイルスの組合せであった。新生子牛下痢症における個々の腸管病原体の役割に関して入手できる情報は限られている。さらに、新生動物におけるウシの腸管疾患の発症の基礎となる、ウイルス、細菌、及び原生動物病因の複合機序についてはなおさら理解されていない。しかし、この病因の機序の理解に欠けているかどうかに関係なく、複数の病原体による感染は、単一の腸管病原体による感染よりも重篤な臨床結果をもたらす傾向にある。
【0011】
現在、新生子牛下痢症に対して十分に防御できる治療方法はない。この疾患の治療に有用な単一の薬物、又は化学治療剤の組合せもない。ウシの腸管疾患を標的とするワクチンは入手可能であるが、成功し受け入れられているものは限られている。現在入手可能なワクチンは、この疾患に関連していることが分かっている3種の腸内病原体、即ちロタウイルス、コロナウイルス、及び大腸菌の抗原を含むものである。これら市販のウシ腸管病原体ワクチン(ロタ/コロナ、大腸菌)の個々の成分は、実験的チャレンジモデルで防御効果があることが示されている。このようなワクチンが入手可能であるにもかかわらず、現場の条件下で、新生子牛下痢症、子牛下痢症、及び冬季赤痢は、肉牛、フィードロット、及び乳用子牛の事業に影響を与え続けている。米国市場での腸管病原体用混合ワクチンの使用量が少ないこと(この製品を毎年ワクチン接種しているのは妊娠した動物の4%だけである)によって反映されるように、大腸菌K99、ロタウイルス、及びコロナウイルスを含む現在の腸管病原体ワクチンの実地条件下での有効性に生産者らは疑問を持ち続けている。
【0012】
より最近では、クリプトスポリジウム・パルブムに対する実験的な単価ワクチンが開発されており、クリプトスポリジウム・パルブムの実験的チャレンジに対して防御することが示されている。しかし、腸管疾患に関与する多数の腸管病原体を、クリプトスポリジウム・パルブムワクチン単独での治療によって克服することはできない。また、腸管病原体による感染症は普遍的であり、即ち世界中で発見されており、さらに大部分の脊椎動物がこのような感染症を起こしやすい。したがって、腸管病原体による感染症と闘う必要性は、ウシ種に限られたものではない。さらに、腸管疾患は、制御することが困難で、おそらく多因性である可能性が高い。即ち、クリプトスポリジウム・パルブムは一因子となり得るが、これまでクリプトスポリジウム・パルブムが実際に腸管疾患を増悪すること、又はクリプトスポリジウム・パルブムを混合免疫原性組成物、混合免疫組成物、又は混合ワクチン組成物に使用すると腸内疾患の予防が増強されることを示した決定的なものはない。
【0013】
さらに、混合ワクチンを調製及び使用する際に直面する問題は、「有効性干渉(efficacy interference)」と呼ばれる現象で、組合せのうちの一方の抗原の有効性が低下又は減少することである。これは混合ワクチンの一方の抗原が優勢になるためと考えられている。Paolettiらの米国特許第5843456号を参照のこと。この現象は、大腸菌の1種又は複数の抗原を使用する混合ワクチンに認められ、例えば、単数又は複数の細菌の抗原が混合ワクチンの他の抗原に干渉する。
【特許文献1】米国特許第5843456号
【非特許文献1】Radostits, OM, et al., Herd Health Food Animal Production Medicine, 2nd ed., Sounders, Philadelphia, pp. 184-213, 1994
【非特許文献2】Moon, HW, et al., JAVMA 173 (5): 577-583 (1978)
【非特許文献3】Viring, S. et al., Acta Vet. Scand. 34: 271-279 (1999)
【非特許文献4】de la Fuente et al., Preventive Veterinary Medicine 36: 145-152 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、クリプトスポリジウム・パルブムが腸管感染症及び腸管症状の一因となる問題、又はこの問題に対するここでの対処の仕方、例えば、目的の(of interest)クリプトスポリジウム・パルブム抗原(1種又は複数)若しくはエピトープ(1種又は複数)と、腸管感染症及び/又は腸管症状を引き起こす病原体由来の他の少なくとも1種の目的の抗原若しくはエピトープ、及び/又は目的となるこのような抗原(1種又は複数)若しくはエピトープ(1種又は複数)を発現する組換体(1種又は複数)及び/又はベクター(1種又は複数)及び/又はプラスミド(1種又は複数)とを含む混合組成物、並びに妊娠中の雌牛など妊娠中の哺乳動物及び/又は生後1カ月以内の子牛など新生若しくは幼若の哺乳動物に対するこのような組成物の投与、並びに有効性干渉の潜在的なあらゆる問題に対する取り組みはこれまで開示又は示唆されていないと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一目的は、腸管病原体の改良された免疫組成物又はワクチン組成物、特に、獣医学の分野で、例えば、ウシ、イヌ、ネコ若しくはウマ又はそれらの種などの哺乳動物において使用することができる組成物とすることができる。
【0016】
本発明の別の目的は、新生動物、例えば哺乳動物、例えば、ウシ、イヌ、ネコ若しくはウマ又はそれらの種、有利にはウシに受動免疫を与えるなど、新生動物及び/又は幼若動物を免疫するのに効果的に使用することができるこのような免疫組成物或いはワクチン組成物とすることができる。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、クリプトスポリジウム・パルブムに対する改良された免疫組成物又はワクチン組成物、例えば、哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ若しくはウマ又はそれらの種、特にウシ又はそれらの種で使用するなどのための、特に獣医学の分野で使用する組成物とすることができる。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、新生動物、例えば、イヌ、ネコ若しくはウマ又はそれらの種、特にウシ又はそれらの種などの哺乳動物に受動免疫を与えるなど、新生動物及び/又は幼若動物を免疫するための改良方法とすることができる。
【0019】
本発明のさらなる目的は、クリプトスポリジウム・パルブム、又はクリプトスポリジウム・パルブムを含めた腸管病原体に対する免疫応答を誘発する方法、又はクリプトスポリジウム・パルブムを含めた腸管感染症及び/又は腸管症状を制御、予防、及び/又は治療する方法、例えば、本発明の組成物を投与することを含む方法、並びにこのような組成物を調製する方法、とりわけこのような組成物を配合するためのこのような組成物の成分の使用を含むものとすることができる。
【0020】
クリプトスポリジウム・パルブムを含めた腸管病原体など、腸管病原体に対するワクチン接種又は免疫化は、少なくとも2種のクリプトスポリジウム・パルブム抗原若しくはそのエピトープ、及び/又は少なくとも2種のクリプトスポリジウム・パルブム抗原若しくはそのエピトープを発現するベクター(1種又は複数)の組合せ、例えば、P21若しくはそのエピトープ及び/又はP21若しくはそのエピトープを発現するベクターと、或いはCp23若しくはそのエピトープ及び/又はCp23若しくはそのエピトープを発現するベクターと、Cp15/60若しくはそのエピトープ及び/又はCp15/60を発現するベクターとの組合せを含めた、免疫組成物又はワクチン組成物(例えば、Cp23の少なくとも1種のエピトープと、Cp15/60の少なくとも1種のエピトープとを含む組成物;ここで、Cp23抗原若しくはタンパク質にはP21が含まれ得ることに留意されたい)を使用することによって大きく予想外に改良される。
【0021】
2種の抗原(若しくは目的のエピトープ(1種又は複数)、及び/又はこの抗原及び/又はエピトープ(1種又は複数)を発現するベクター)を混合することにより、クリプトスポリジウム・パルブムに対する抗体が非常に多く産生されるなど、クリプトスポリジウム・パルブム及び/又は腸管感染症、又は腸管病原体、又は腸管症状に対する免疫応答、例えば抗体、細胞性応答、又はその両方が改善され有用に生じるという相乗効果がもたらされる。また、この組合せにより、新生動物若しくは幼若動物、又は哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ若しくはウマ又はそれらの種、特にウシを防御するのに有用である効率的な免疫組成物或いはワクチン組成物を調製することができる。例えば、有利には、目的とする抗原及び/又はエピトープ(1種又は複数)を含む組成物を、例えば、まだ生まれていない子孫に、また新生動物若しくは幼若動物に離乳期のミルク又は初乳を介して伝えられる免疫応答を誘発するために、母獣又は妊娠中の雌に接種するのに使用することができ、有利には、目的とする抗原及び/又はエピトープ(1種又は複数)を発現するベクター(1種又は複数)を含む組成物を、あらゆる年齢の雄及び雌、例えば、妊娠していない雌及び/又は新生動物若しくは幼若動物の雄及び雌に接種するのに使用することができ、また、例えば、幼若動物若しくは新生動物が授乳期のミルク又は初乳を介して抗体又は他の免疫作用物質を受け取る間この動物に免疫応答を生じさせるために、新生動物若しくは幼若動物への接種を単独で、又は有利には母獣又は妊娠中の雌への接種と組み合わせて実施することができる。
【0022】
免疫組成物又はワクチン組成物において、クリプトスポリジウム・パルブムに対する目的の抗原(1種又は複数)及び/又はエピトープ(1種又は複数)を、動物種の他の少なくとも1種の腸管病原体に対する他の少なくとも1種の目的の抗原若しくはエピトープ(有利には、複数の病原体、例えば腸管病原体由来の複数の抗原及び/又は対象(of interest)のエピトープ)を組み合わせると、腸管疾患に対する防御を有意に増大させることができる。
【0023】
特に有利な本発明の免疫組成物又はワクチン組成物は、クリプトスポリジウム・パルブムを防御するものとすることができ、(i)目的となる少なくとも1種のCp23抗原若しくはエピトープ及び/又は目的となる少なくとも1種のCp23抗原若しくはエピトープを発現する少なくとも1種のベクター、或いは目的となる少なくとも1種のP21抗原若しくはエピトープ及び/又は目的となる少なくとも1種のP21抗原若しくはエピトープを発現する少なくとも1種のベクターと、(ii)目的となる少なくとも1種のCp15/60抗原若しくはエピトープ及び/又は少なくとも1種のCp15/60を発現する少なくとも1種のベクターとを含むことができる。有利には、この組成物はさらに、別の腸管病原体由来の目的となる追加の少なくとも1種の抗原若しくはエピトープ及び/又は追加の少なくとも1種の抗原を発現するベクター(これは、目的となるCp23若しくはP21抗原又はエピトープ、及び/又は目的となるCp15/60抗原若しくはエピトープを発現する同じベクターとすることができ、例えば、この組成物は、目的となるCp23若しくはP21抗原又はエピトープと、目的となるCp15/60抗原若しくはエピトープと、場合によっては追加の任意の目的とする抗原若しくはエピトープとを共発現するベクターを含むことができる)を含むことができる。
【0024】
別のクリプトスポリジウム・パルブム抗原は、Mark C. Jenkins et al., Clinical and Diagnostic Laboratory Immunology, Nov. 1999, 6, 6: 912-920に記載するCP41抗原である。本発明による免疫組成物又はワクチン組成物は、この目的となる抗原若しくはエピトープ、及び/又は前記抗原若しくはそのエピトープを発現するベクターを、場合によっては好ましくは、Cp23、P21、及びCp15/60など本明細書に記載の他の少なくとも1種のクリプトスポリジウム・パルブムと組み合わせて、例えば、Cp23若しくはP21、及び/又はCp15/60と組み合わせて含むことができる。この抗原を発現させるために、本明細書の図2で表すヌクレオチド配列の上流に開始コドンを、この配列の下流に終止コドンを付加することができる。
【0025】
また、目的とするクリプトスポリジウム・パルブム抗原若しくはエピトープとして、Cp23若しくはそのエピトープ又はこの抗原若しくはエピトープを発現するベクター、或いはP21若しくはそのエピトープ又はこの抗原若しくはエピトープを発現するベクター、或いはCp15/60若しくはそのエピトープ又はこの抗原若しくはエピトープを発現するベクター、或いはCP41若しくはそのエピトープ又はこの抗原若しくはエピトープを発現するベクターのうちの1種だけを、有利には、目的となる他の少なくとも1種のクリプトスポリジウム・パルブム抗原若しくはエピトープ又は目的となる抗原若しくはエピトープを発現するベクターと組み合わせて使用することにより、腸炎に対して有効な免疫組成物又はワクチン組成物が産生される。この組成物はさらに、別の腸管病原体由来の追加の目的となる少なくとも1種の抗原若しくはエピトープ、及び/又は追加の少なくとも1種の抗原を発現するベクター(このベクターは抗原(1種又は複数)及び/又はエピトープ(1種又は複数)を共発現することができる)を含むことができる。
【0026】
本発明はさらに、クリプトスポリジウム・パルブムを含めた腸管病原体若しくは腸管感染症若しくは腸管症状に対する免疫応答又は防御(ワクチン)応答を誘発し、或いはこれらを制御、予防、及び/又は治療する方法を包含するものであり、例えば、この方法は、本発明の組成物を投与することを含む。
【0027】
本発明の組成物は、未経産雌牛又は雌牛(以下雌牛と称する)、イヌ、ネコ、ウマなどの妊娠中の哺乳動物に、その妊娠期間、例えば一般的な妊娠期間(雌牛の妊娠期間は一般的に9カ月又は170日)中に1回又は2回投与することができる。例えば、出産の約1〜約2.5又は3カ月前に1回目の投与、出産近く、例えば出産前の3週間、好ましくは出産の約3〜15日前に2回目又は単独の投与を実施する。このようにすると、この雌は、新生仔、例えば出生後の子牛にミルク又は初乳を介して受動免疫を伝えることができる。有利には、妊娠中の哺乳動物には、抗体応答が誘発されることが望ましいので、抗原(1種又は複数)及び/又はそのエピトープ(1種又は複数)を含む組成物(ベクター(1種又は複数)、組換え体(1種又は複数)、及び/又はDNAプラスミド(1種又は複数)を含む組成物ではなく)を投与する。また、有利には、これとは対照的に、新生動物及び/又は非常に幼若な動物の腸管の状態、腸管感染症、及び/又は腸管症状を予防、治療、及び/又は制御するのには細胞性応答及び/又は抗体応答が有用であるので、新生の、若しくは非常に幼若な哺乳動物(例えば、生後約1カ月以内のウシなど、腸管疾患に感染しやすい哺乳動物、及び類似の生後の期間の他の哺乳動物)には、抗原(1種又は複数)及び/又はそのエピトープ(1種又は複数)をin vivoで発現するベクター(1種又は複数)、組換え体(1種又は複数)及び/又はDNAプラスミド(1種又は複数)を含む組成物を投与する。新生動物及び/又は非常に幼若な動物は、感染しやすい期間に抗原組成物及び/又はエピトープ組成物及び/又はベクター/組換え体/DNAプラスミド組成物の追加投与を受けることができ、またその母獣も、場合によってはまた有利には、新生動物及び/又は非常に幼若な動物が直接的且つ受動的な投与で免疫応答を受けることができるように、本明細書に記載の通り妊娠中にワクチン接種を受けることができる。
【0028】
本発明の特定の組成物は、1種又は複数の大腸菌抗原(例えば、K99、Y、31A及び/又はF41などの線毛を有する不活化大腸菌、及び/又はサブユニットの形の、又は組換え体によりin vivoで発現されるこうした線毛)、及び/又は1種又は複数のロタウイルス抗原(例えば、有利には不活化ロタウイルス)、及び/又はコロナウイルス抗原(例えば、ウシコロナウイルス抗原、有利には不活化コロナウイルスなど)を、P21及び/又はCp23及び/又はCp15/60など1種又は複数のクリプトスポリジウム・パルブム抗原と組み合わせて含むことができる(また先に述べたように、このような抗原のうち1種又は複数は、この目的とする抗原内に含まれるエピトープとすることもでき、このような目的となる抗原若しくはエピトープのうち1種又は複数を組換え体又はプラスミドによりin vivoで発現させることもできる)。
【0029】
したがって、本発明の特定の組成物は、(i)P21及び/又はCp23及び/又はCp15/60及び/又はCP41、有利にはP21及び/又はCp23及びCp15/60など1種又は複数のクリプトスポリジウム・パルブム抗原と、(ii)少なくとも1種の大腸菌抗原(例えば、K99、Y、31A、F41、及び/又は不活化大腸菌の有する他の線毛、又はサブユニットの、又はin vivoで発現される他の線毛のうち少なくとも1種又はすべて;K99及び/又はF41が存在することが好ましく、Y及び/又は31Aも存在することが有利である)、及び/又はコロナウイルス抗原、及び/又はロタウイルス抗原とを含むことができる。例えば、P21及び/又はCp23及び/又はCp15/60及び/又はCP41、有利にはP21及び/又はCp23及びCp15/60などの1種又は複数のクリプトスポリジウム・パルブム抗原と、不活化ロタウイルスなどの1種又は複数のロタウイルス抗原とを含む、或いはP21及び/又はCp23及び/又はCp15/60及び/又はCP41、有利にはP21及び/又はCp23及びCp15/60などの1種又は複数のクリプトスポリジウム・パルブム抗原と、不活化コロナウイルス、例えばウシ不活化コロナウイルスなどの1種又は複数のコロナウイルス抗原とを含む、或いはP21及び/又はCp23及び/又はCp15/60及び/又はCP41、有利にはP21及び/又はCp23及びCp15/60などの1種又は複数のクリプトスポリジウム・パルブム抗原と、K99、Y、31A、F41、及び/又は不活化大腸菌の有する他の線毛、又はサブユニットの、又はin vivoで発現される他の線毛などの1種又は複数の大腸菌抗原、例えば、K99、Y、31A、及び/又はF41の組合せとを含むことができる。大腸菌の線毛が有効性干渉を避けることができるため、本発明で有用である例示的な大腸菌抗原は線毛とすることができる。例示的な組成物は、P21及び/又はCp23及び/又はCp15/60及び/又はCP41、有利にはP21及び/又はCp23及びCp15/60などの1種又は複数のクリプトスポリジウム・パルブム抗原と、少なくとも1種の大腸菌抗原と、少なくとも1種のコロナウイルス抗原と、少なくとも1種のロタウイルス抗原とを含むことができる。例えば、P21及び/又はCp23及び/又はCp15/60及び/又はCP41、有利にはP21及び/又はCp23及びCp15/60と、不活化ロタウイルスと、不活化コロナウイルスと、少なくとも1種の大腸菌抗原、有利には線毛、又は好ましくはK99、Y、31A及びF41のうち少なくとも1種又は複数、又はK99、Y、31A及びF41の組合せとを含むことができる(また先に述べたように、このような抗原のうち1種又は複数を、この抗原内に含まれる目的となるエピトープとすることもでき、このような目的となる抗原若しくはエピトープのうち1種又は複数を組換え体又はプラスミドによりin vivoで発現させることもできる)。単数又は複数の細菌による潜在的な有効性干渉に関して、本発明者らは、混合ワクチンに存在する他の抗原の量を増加させることにより、潜在的などんな有効性干渉も避けられ、また大腸菌抗原として線毛を使用しても有効性干渉を避けられることを発見した。
【0030】
本発明のこのような組成物では、単一用量は、腸管病原体に対するワクチンに通常見られる量、例えばモルモットで少なくとも0.9log10の血清力価が得られる量で存在する大腸菌抗原(又は、複数の大腸菌抗原の場合、各大腸菌抗原)を有し、ロタウイルス抗原は、腸管病原体に対するワクチンに通常見られる量、例えばモルモットで少なくとも2.0log10の血清力価が得られる量で存在することができ、コロナウイルス抗原は、腸管病原体に対するワクチンに通常見られる量、例えばモルモットで少なくとも1.5log10の血清力価が得られる量で存在することができる。また、本発明の組成物は、水酸化アルミニウムなどのアジュバントを含むことができ、これは、単一用量中に、好ましくは約0.7〜約0.9mgなどワクチンで通常見られる量で存在することができる。
【0031】
したがって、一態様では、本発明は、クリプトスポリジウム・パルブム由来の目的となる第1抗原若しくはエピトープ及び/又は目的となる第1抗原若しくはエピトープを発現する第1ベクターと、目的となる他の腸管病原体由来の第2抗原若しくはエピトープ、及び/又は目的となる第1抗原若しくはエピトープを発現し目的となる第2抗原若しくはエピトープも発現する第1ベクター、及び/又は目的となる第2抗原若しくはエピトープを発現する第2ベクターと、製薬上許容されるビヒクルとを含む腸管の混合免疫組成物、混合免疫原性組成物、又は混合ワクチン組成物を提供する。
【0032】
この組成物は、クリプトスポリジウム・パルブム由来の抗原と、他の腸管病原体由来の抗原とを含むことができる。この組成物は、クリプトスポリジウム・パルブム由来の抗原と、ウシ種、イヌ種、ネコ種、又はウマ種の他の腸管病原体由来の抗原とを含むことができる。この腸管病原体由来の抗原は、大腸菌、ロタウイルス、コロナウイルス、クロストリジウム属菌(Clostridium spp.)、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。この腸管病原体は大腸菌とすることができる。大腸菌由来の抗原は、K99抗原を有する大腸菌、F41抗原を有する大腸菌、Y抗原を有する大腸菌、31A抗原を有する大腸菌、K99抗原、F41抗原、Y抗原、31A抗原、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0033】
この腸管病原体は、ウシコロナウイルス及び/又はウシロタウイルス及び/又はウェルシュ菌(Clostridium perfringens)を含むことができる。この腸管病原体の抗原は、ウェルシュ菌C型及びD型のトキソイドを含むことができる。いくつかの実施形態では、この腸管病原体は、大腸菌と、ウシロタウイルスと、ウシコロナウイルスと、ウェルシュ菌とを含む、或いは大腸菌と、ウシロタウイルスと、ウシコロナウイルスとを含むことができる。
【0034】
さらに、いくつかの態様では、本発明は、この腸管病原体の抗原が、K99抗原を有する大腸菌、F41抗原を有する大腸菌、Y抗原を有する大腸菌、31A抗原を有する大腸菌、K99抗原、F41抗原、Y抗原、31A抗原、及びそれらの混合物からなる群から選択される大腸菌抗原と、ウシ不活化コロナウイルスと、ウシ不活化ロタウイルスと、ウェルシュ菌C型及びD型のトキソイドとを含む組成物、或いはK99抗原を有する大腸菌、F41抗原を有する大腸菌、Y抗原を有する大腸菌、31A抗原を有する大腸菌、K99抗原、F41抗原、Y抗原、31A抗原、及びそれらの混合物からなる群から選択される大腸菌抗原と、ウシ不活化コロナウイルスと、ウシ不活化ロタウイルスとを含む、組成物を含むことができる。
【0035】
有利には、本発明の組成物は、Cp23とCp15/60、又はP21とCp15/60など、P21、Cp23、Cp15/60、CP41、及びそれらの混合物からなる群から選択されるサブユニットのクリプトスポリジウム・パルブム抗原を含むことができる。
【0036】
クリプトスポリジウム・パルブムと他の少なくとも1種の腸管病原体由来の抗原とを組み合わせた本発明の組成物では、このクリプトスポリジウム・パルブム抗原はまた、不活化若しくは弱毒生オーシスト、又はオーシストから得られるサブユニットを含む、又はこれらから構成することができる。
【0037】
本発明の組成物は、サポニンや水酸化アルミニウムなどのアジュバントを含むことができ、また本発明の組成物は、水中油型エマルジョンの形とすることができる。
【0038】
本発明はさらに、クリプトスポリジウム・パルブムに対する免疫組成物、免疫原性組成物、又はワクチン組成物を想定したものであり、この組成物は、P21若しくはCp23抗原又はそれらのエピトープ、又はこの第1抗原を発現する第1ベクターを含む第1抗原と、Cp15/60抗原又はそのエピトープ、又は第1抗原及び第2抗原の両方を発現する第1ベクター、又は第2抗原を発現する第2ベクターを含む第2抗原と、製薬上許容されるビヒクルとを含む。この組成物は、別々の融合タンパク質の形である、Cp23とCp15/60抗原を含むことができる。この組成物は、Cp23とCp15/60とを発現するベクターを含むことができる。この組成物は、Cp23を発現する第1組換えベクターと、Cp15/60を発現する第2組換えベクターとを含むことができる。また、この組成物は、P21とCp15/60を含むことができる。こうした組み換え体はさらに、アジュバントを含むこともできる。
【0039】
さらに、本発明は、クリプトスポリジウム・パルブムに対する免疫組成物、免疫原性組成物、又はワクチン組成物を包含するものであり、この組成物は、P21、Cp23、Cp15/60若しくはCP41抗原又はそれらのエピトープ或いはこの第1抗原を発現する第1ベクターを含む第1抗原と、クリプトスポリジウム・パルブム由来の第2抗原又はそのエピトープ或いは第1抗原及び第2抗原を両方発現する第1ベクター又は第2抗原を発現する第2ベクターを含む第2抗原と、製薬上許容されるビヒクルとを含む。ただし、第1抗原と第2抗原は互いに異なる抗原である。
【0040】
本発明はまた、腸管疾患に対する新生子牛の免疫化方法を包含するものであり、この方法は、新生子牛が初乳及び/又はミルクを介してクリプトスポリジウム・パルブムに対する移行抗体を受け取るように、本発明の組成物を出産前の妊娠中の雌の子牛に投与することを含む。この方法はさらに、妊娠中にこの組成物を投与された雌牛(1種又は複数)の初乳及び/又はミルクを新生子牛に与えることを含む。この方法は、この組成物を新生子牛に投与することを含むことができる。妊娠中の雌に投与する組成物は、抗原若しくはそのエピトープを含むことができ、子牛に投与する組成物はベクターを含むことができる。したがって、本発明はまた、成牛及び新生子牛の能動免疫法を想定したものであり、この方法は、子牛に本発明の組成物を投与することを含む。
【0041】
本発明はまた、新生子牛の免疫化方法を包含するものであり、この方法は、妊娠中にこの組成物を投与された雌牛の初乳及び/又はミルクを新生子牛に与えることを含む。同様に、より広義には、本発明は、新生哺乳動物の免疫化方法を包含するものであり、この方法は、妊娠中にこの組成物を投与された雌の哺乳動物の初乳及び/又はミルクをその新生仔に与えることを含み、有利には、この哺乳動物は、ウシ、ネコ、イヌ、又はウマである。さらに、本発明は、本発明の組成物を調製する方法を包含するものであり、この方法は、抗原若しくはエピトープ又はベクター、及び担体を混合することを含む。
【0042】
さらに、本発明は、それぞれ別々の容器(1種又は複数)に入れた、抗原、エピトープ、又はベクターを含む本発明の組成物を調製するためのキットを含み(クリプトスポリジウム・パルブムの抗原、エピトープ、又はベクターなど、抗原、エピトープ、又はベクターを1つの容器に一緒に入れることができるものもあれば、抗原、エピトープ、又はベクターを1つ又は複数の容器に入れることができるものもあり、或いは担体、希釈剤、及び/又アジュバントを別々の容器に入れることができる)、このキットは、場合によっては1つのパッケージにし、さらに場合によっては混合及び/又は投与に関する説明書を含むことができる。
【0043】
本開示では、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(containing)」、「有する(having)」などは、米国特許法においてそれぞれに付与されている意味を有し、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」などを意味することができる。「本質的に〜からなっている(consisting essentially of)」又は「本質的に〜からなる(consists essentially)」も同様に、米国特許法においてそれぞれに付与されている意味を有し、この用語はオープンエンド型であり、したがって記載されているものの基本的且つ新規な特徴が、記載されているもの以外のものの存在によって変更されず、従来技術の実施形態を排除する限りにおいて、記載されているもの以外のものの存在が許容される。
【0044】
本発明の他の態様は、以下の開示において記載されており、或いは以下の開示から自明である(また本発明の範囲に含まれる)。
【0045】
以下の詳細な説明は、例として挙げたものであり、本発明を特定の実施形態に限定するものではなく、参照により本明細書に組み込む添付の図面と併せ読めば理解されよう。次に、本発明の様々な好ましい特徴及び実施形態を、添付の図面を参照しながら非限定的な例として説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
したがって、本発明の一態様は、好ましくはクリプトスポリジウム・パルブムを含めた少なくとも1種のクリプトスポリジウム属原虫由来の少なくとも1種の目的となる抗原若しくはエピトープと、他の少なくとも1種の腸管病原体、有利にはイヌ、ネコ、ウマ、ウシの種、より有利にはウシ種などの防御すべき動物種に感染する病原体由来の目的となる少なくとも1種の抗原、並びに/或いはクリプトスポリジウム属原虫抗原若しくはエピトープ及び/又は目的となる他の少なくとも1種の腸管病原体の抗原(1種又は複数)若しくはエピトープ(1種又は複数)を発現するベクター(1種又は複数)及び/又は組換え体(1種又は複数)及び/又はプラスミド(1種又は複数)と、製薬上許容されるビヒクルとを含む腸管病原体の混合免疫組成物、混合免疫原性組成物、又は混合ワクチン組成物である。また、腸管病原体は数種(複数)の動物種に感染することが多いため、万能の免疫組成物、免疫原性組成物、又はワクチン組成物が想定される。
【0047】
免疫組成物は、局所又は全身の免疫応答を誘発する。免疫原性組成物も同様に、局所又は全身の免疫応答を誘発する。ワクチン組成物は、局所又は全身の防御応答を誘発する。したがって、用語「免疫組成物」及び「免疫原性組成物」は、「ワクチン組成物」を含む(前者の2つの用語は防御組成物とすることができるため)。
【0048】
本発明で使用することができるクリプトスポリジウム・パルブム抗原は、好ましくは、(1)Cp15/60と呼ばれる148アミノ酸のタンパク質(例えば米国特許第5591434号を参照のこと。このタンパク質は、米国特許第5591434号では、メチオニン(Met)の上流の5’末端に10個のアミノ酸がさらに付加された配列番号2で表される。そのエピトープ、有利には防御を誘発するエピトープ、又は配列全長が免疫原性を有するエピトープを含む、CP15/60の148アミノ酸配列、又はこれら148アミノ酸を含むより長いアミノ酸配列、例えば米国特許第5591434号の配列番号2で表される配列全体、又は148若しくは158アミノ酸配列の断片を含む任意のポリペプチドを含む、或いは本質的にそれらからなる抗原を使用することは本発明の範囲内である。)、及び/又は(2)Cp23及び/又はP21(Cp23は約23kDaの抗原である。Perryman et al., Molec Biochem Parasitol 80:137-147 (1996)、国際公開第9807320号、及びL. E. Perryman et al., Vaccine 17 (1999) 2142-2149を参照のこと。このタンパク質(187アミノ酸)の主要部分は、本明細書においてP21と称し、国際公開第9807320号で配列番号12として開示されているタンパク質C7のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を有する。発現させるために、Met−、Met−Gly−、又は同様のアミノ酸など、1種又は2種以上のアミノ酸をP21の末端に添加することができる。そのエピトープ、有利には防御を誘発するエピトープ、又は配列全長が免疫原性を有するエピトープを含む、187アミノ酸配列、又はより長いアミノ酸配列、又は187アミノ酸配列の断片を含むポリペプチドを含む、或いは本質的にそれらからなる、或いはそれらからなる抗原を使用することは本発明の範囲内である。Cp23のアミノ酸配列全体、及び相当するヌクレオチド配列は容易に入手可能である。P21タンパク質は、Cp23の主要部分及びC末端である。P21のヌクレオチド配列は、DNAライブラリー、例えば実施例1で開示するライブラリーをスクリーニングするためのプロープとして使用することができる。この方法は当分野の技術者に周知である。Cp23の分子量に基づくと、Cp23のアミノ酸配列を完全なものとするには、P21のN末端に約25〜35アミノ酸が欠けていると断言することができる。当分野の技術者であれば、この情報から開始コドンを、したがってCp23のヌクレオチド配列の5’末端及びアミノ酸配列のN末端を容易に見いだす手段を得る。)を含む。
【0049】
本発明の組成物中で目的となる諸抗原若しくはエピトープを個別に、又は混合して使用することができる。例えば、本発明の組成物は、(1)又は(2)、或いは(1)及び(2)の両方を含むことができる。
【0050】
他の使用可能な抗原は、先に開示したCP41抗原である。
【0051】
好ましい実施形態によれば、これらの目的となる抗原若しくはエピトープをタンパク質、即ちサブユニット抗原として本発明の組成物中に組み込む。こうした抗原は、化学合成又はin vitro発現によって産生することができる。Cp15/60及びP21をコードする配列を獲得する方法、及びそれらを発現するベクターを構築する方法については、実施例で説明する。これらの配列を適切なクローニングベクター又は発現ベクター中にクローニングすることができる。次いで、これらのベクターを使用して適切な宿主細胞にトランスフェクトする。このベクター中に挿入するヌクレオチド配列によってコードされる抗原、例えばCp23及び/又はP21及び/又はCp15/60は、この抗原が産生されるような条件下で、この発現ベクターによって形質転換させた宿主細胞を増殖させることによって産生する。この方法は当分野の技術者に周知である。宿主細胞は、原核細胞でも真核細胞でもよく、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの酵母、動物細胞、特に動物細胞系でもよい。所与の宿主細胞と一緒に使用することができるベクターは、当分野の技術者に知られている。融合タンパク質を産生するようなベクターを選択すると、次いでこの融合タンパク質を使用して抗原を容易に回収することができる。
【0052】
さらに、配列に関しては、目的となるクリプトスポリジウム・パルブム抗原若しくはエピトープを発現させるのに有用な核酸配列には、高いストリンジェンシー条件下でハイブリッド形成することができる核酸配列、又は本発明に使用する核酸分子との高い相同性を有する核酸配列(例えば本明細書に記載する文献中の核酸分子)が含まれ得る。「高いストリンジェンシー条件下でハイブリッド形成する」とは、当技術分野で周知である用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」と同義であり得る。例えば、ともに参照により本明細書に組み込む、Sambrook et al., "Molecular Cloning, A Laboratory Manual" second ed., CSH Press, Cold Spring Harbor, 1989及び"Nucleic Acid Hybridisation, A Practical Approach", Flames and Higgins eds., IRL Press, Oxford, 1985を参照のこと。
【0053】
本発明の実施に使用することができる核酸分子及びポリペプチドに関しては、この核酸分子及びポリペプチドが、本明細書で引用する文献に記載の配列(本明細書に記載のそれらの部分配列を含む)に対して、少なくとも約75%以上の相同性又は同一性、有利には80%以上の相同性又は同一性、より有利には、少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%の相同性又は同一性など85%以上の相同性又は同一性、例えば、少なくとも約91%、約92%、約93%、約94%の相同性又は同一性など少なくとも約90%以上の相同性又は同一性、より有利には、少なくとも約95%以上の相同性又は同一性など少なくとも約95%〜99%の相同性又は同一性、例えば、少なくとも約96%、約97%、約98%、約99%、さらには約100%の相同性又は同一性、或いは約75%〜約100%、有利には約85%〜約100%、或いは約90%〜約99%若しくは約90%〜約100%、或いは約95%〜約99%若しくは約95%〜約100%の相同性又は同一性を有することが有利である。したがって、本発明は、クリプトスポリジウム・パルブム分離株のエピトープ若しくはエピトープ領域をコードするベクター、或いはこのようなエピトープを含む組成物又はクリプトスポリジウム・パルブム分離株のエピトープ若しくはエピトープ領域を含む組成物、並びにこのようなベクター及び組成物を生成し使用する方法を包含する。例えば、本発明はまた、こうした核酸分子及びポリペプチドが、本明細書に記載の核酸分子とそれらの断片及びポリペプチドと同じ方法で使用することができることを包含する。
【0054】
ヌクレオチド配列の相同性は、NCBIで入手可能である、MyersとMillerによる「整列」プログラム(参照により本明細書に組み込む"Optimal Alignments in Linear Space", CABIOS 4, 11-17, 1988)を使用して決定することができる。その代わりに、又はそれに加えて、例えばヌクレオチド配列又はアミノ酸配列に関する用語「相同性」又は「同一性」は、2種の配列間の相同性の定量的測度を示すことができる。この配列相同率(percent sequence homology)は、(Nref−Ndif100/Nrefとして計算することができ、ここで、Ndifは、2種の配列を整列した際の同一でない残基の総数であり、Nrefは、両配列のうち一方の残基数である。したがって、DNA配列AGTCAGTCは、配列AATCAATCと75%の配列類似性を有する(Nref=8、Ndif=2)。
【0055】
その代わりに、又はそれに加えて、配列に関する「相同性」又は「同一性」とは、同一のヌクレオチド又はアミノ酸を有する位置の数を、2種の配列のうち短いほうの配列中のヌクレオチド数又はアミノ酸数で割って表す。ここで、2種の配列のアラインメントをWilburとLipmanのアルゴリズム(参照により本明細書に組み込むWilbur and Lipman, 1983 PNAS USA 80:726)に従って、例えば20ヌクレオチドのウィンドウサイズ、4ヌクレオチドの語長、及び4のギャップペナルティを使用して決定することができ、好都合には、市販のプログラム(例えば、Intelligenetics(商標)スート、Intelligenetics社製、カリフォルニア州)を使用して、アラインメントを含む配列データのコンピュータ支援の解析及び解釈を行うことができる。RNA配列がDNA配列と類似であるか、又はある程度配列同一性若しくは配列相同性を有するといわれる場合、DNA配列中のチミジン(T)はRNA配列中のウラシル(U)に等しいとみなされる。本発明の範囲に含まれるRNA配列は、DNA配列中のチミジン(T)をRNA配列中のウラシル(U)に等しいとみなすことによりDNA配列から導き出すことができる。
【0056】
その代わりに、又はそれに加えて、アミノ酸配列の類似性、同一性、又は相同性は、NCBI(付録Iに示すように配列相同性を決定する際に使用する。実施例も参照のこと。)で入手可能であるBlastPプログラム(参照により本明細書に組み込むAltschul et al., Nucl. Acids Res. 25, 3389-3402)を使用して決定することができる。以下の文献(それぞれ参照により本明細書に組み込む)も、2種のタンパク質のアミノ酸残基の相対的な同一性又は相同性を比較するためのアルゴリズムを提供し、前述のことの代わりに、又はそれに加えて、こうした文献中の教示を用いて、相同率又は同一率を決定することができる。Needleman SB and Wunsch CD, "A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequences of two proteins," J. Mol. Biol. 48:444-453 (1970)、Smith TF and Waterman MS, "Comparison of Biosequences," Advances in Applied Mathematics 2:482-489 (1981)、Smith TF, Waterman MS and Sadler JR, "Statistical characterization of nucleic acid sequence functional domains," Nucleic Acids Res., 11:2205-2220 (1983)、Feng DF and Dolittle RF, "Progressive sequence alignment as a prerequisite to correct phylogenetic trees," J. of Molec. Evol., 25:351-360 (1987)、Higgins DG and Sharp PM, "Fast and sensitive multiple sequence alignment on a microcomputer," CABIOS, 5: 151-153 (1989)、Thompson JD, Higgins DG and Gibson TJ, "ClusterW: improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighing, positions-specific gap penalties and weight matrix choice, Nucleic Acid Res., 22:4673-480 (1994)、及びDevereux J, Haeberlie P and Smithies O, "A comprehensive set of sequence analysis program for the VAX," Nucl. Acids Res., 12: 387-395 (1984)。
【0057】
さらに、本発明で使用する核酸分子(例えば本発明で引用する文献中にある)に関して、本発明は、コドンが対応する核酸分子の使用を包含する。例えば、本発明が、アミノ酸配列「A」を有し核酸分子「N」によってコードされる「X」タンパク質(例えば、P21及び/又はCp23及び/又はCp15/60及び/又はCP41)を包含する場合、本発明は、核酸分子N中のコドンとは異なる1種又は複数のコドンによりタンパク質Xをコードする核酸分子も包含する。
【0058】
本発明を実施する際に使用する目的となる抗原若しくはエピトープは、特定の抗原(1種又は複数)、例えば、クリプトスポリジウム・パルブム、大腸菌、ロタウイルス、コロナウイルスなどから獲得することができ、或いは遺伝子(1種又は複数)若しくはそれらの一部のin vitro及び/又はin vivo組換え発現から獲得することもできる。発現用のベクター(若しくは組換え体)を使用及び/又は作成する方法は、以下に開示する方法によるもの、又はそれらに類似するものとすることができる。米国特許第4603112号、第4769330号、第5174993号、第5505941号、第5338683号、第5494807号、第4722848号及び第5942235号、PCT国際公開第94/16716号及び第96/39491号、Paoletti, "Applications of pox virus vectors to vaccination: An update," PNAS USA 93:11349-11353, October 1996、Moss, "Genetically engineered poxviruses for recombinant gene expression, vaccination, and safety," PNAS USA 93:11341-11348, October 1996、Smithらの米国特許第4745051号(組換えバキュロウイルス)、Richardson, C.D. (Editor), Methods in Molecular Biology 39, "Baculovirus Expression Protocols" (1995 Humana Press Inc.)、Smith et al., "Production of Huma Beta Interferon in Insect Cells Infected with a Baculovirus Expression Vector," Molecular and Cellular Biology, Dec., 1983, Vol. 3, No. 12, p. 2156-2165、Pennock et al., "Strong and Regulated Expression of Escherichia coli B-Galactosidase in Infect Cells with a Baculovirus vector," Molecular and Cellular Biology Mar. 1984, Vol. 4, No. 3, p. 399-406、欧州特許出願公開第0370573号、1986年10月16日出願の米国特許出願第920197号、欧州特許出願公開第265785号、米国特許第4769331号(組換えヘルペスウイルス)、Roizman, "The function of herpes simplex virus genes: A primer for genetic engineering of novel vectors," PNAS USA 93:11307-11312, October 1996、Andreansky et al., "The application of genetically engineered herpes simplex viruses to the treatment of experimental brain tumors," PNAS USA 93:11313-11318, October 1996、Robertson et al. "Epstein-Barr virus vectors for gene delivery to B lymphocytes," PNAS USA 93:11334-11340, October 1996、Frolov et al., "Alphavirus-based expression vectors: Strategies and applications," PNAS USA 93:11371-11377, October 1996、Kitson et al., J. Virol. 65, 3068-3075, 1991、米国特許第5591439号、5552143号、1996年7月3日出願の特許査定済み米国特許出願第08/675556号及び米国特許出願第08/675566号(組換えアデノウイルス)、Grunhaus et al., 1992, "Adenovirus as cloning vectors," Seminars in Virology (Vol. 3) p. 237-52, 1993、Ballay et al. EMBO Journal, vol. 4, p. 3861-65, Graham, Tibtech 8, 85-87, April, 1990、Prevec et al., J. Gen Virol. 70, 429-434、PCT国際公開第91/11525号、Felgner et al. (1994), J. Biol. Chem. 269, 2550-2561、Science, 259:1745-49, 1993、並びにMcClements et al., "Immunization with DNA vaccines encoding glycoprotein D or glycoprotein B, alone or in combination, induces protective immunity in animal models of herpes simplex virus-2 disease," PNAS USA 93:11414-11420, October 1996、並びにDNA発現ベクターに関する米国特許第5591639号、第5589466号及び第5580859号など。国際公開第98/33510号、Ju et al., Diabetologia, 41:736-739, 1998(レンチウイルス発現系)、Sanfordらの米国特許第4945050号、Fischbachら(Intracel社)の国際公開第90/01543号、Robinson et al., seminars in IMMUNOLOGY, vol. 9, pp.271-283 (1997)(DNAベクター系)、Szokaらの米国特許第4394448号(DNAを生細胞に挿入する方法)、McCormickらの米国特許第5677178号(細胞変性ウイルスの使用)、米国特許第5928913号(遺伝子導入用ベクター)、及びTartagliaらの米国特許第5990091号(増強発現を有するベクター)、並びに本明細書で引用する他の文献も参照のこと。本発明を実施する際、特にin vivo発現の場合には、例えば、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、及びポックスウイルス、特にワクシニアウイルス、アビポックスウイルス、又はカナリア痘ウイルスから選択されるウイルスベクター、並びにDNAベクター(DNAプラスミド)を使用することが有利である(in vitro発現の場合には、細菌系及び酵母系を使用することが有利である)。
【0059】
宿主とベクターの組合せにより抗原が排出なしに産生される場合、抗原の産生及びその回収の便宜上、こうした抗原を融合タンパク質の形(HISタグ)にすることが好ましい。即ち、この抗原は、抗原自体と外来のアミノ酸を含むことができる。
【0060】
本発明を実施する際、とりわけ本開示及び本明細書で引用する文献による、タンパク質を精製及び/又は単離するための技法を、当分野の技術者であれば過度の実験なしで使用して、組換え体又はベクターの発現産物及び/又は抗原(1種又は複数)を精製し且つ/又は単離することができ、このような技法には通常、とりわけ、様々な塩濃度における目的となるタンパク質の溶解度を利用する沈殿、有機溶剤、ポリマー及び他の材料を用いた沈殿、アフィニティー沈殿及び選択的変性;高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、又は色素−リガンドクロマトグラフィーを含めたカラムクロマトグラフィー;免疫沈降、並びにゲル濾過法、電気泳動法、限外濾過法、及び等電点電気泳動法の使用が含まれ得る。
【0061】
本明細書に記載の通り、別の態様によれば、本発明は、目的となる抗原及び/又はエピトープをサブユニットとして組成物中に組み込まずにin vivoで発現させることを包含する。例えば、本発明は、この組成物が、動物に投与すると諸抗原をin vivoで発現する組換えベクター(1種又は複数)を含むことを包含する。このベクターは、DNAプラスミド、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、又はワクシニアウイルス、アビポックスウイルス、カナリア痘ウイルス、豚痘ウイルスなどを含めたポックスウイルスを含むことができる。ベクターベースの諸組成物は、発現すべき抗原、例えばクリプトスポリジウム・パルブムのCp15/60及び/又はCp23のヌクレオチド配列を含み発現するベクターを含むことができる。
【0062】
プラスミドという用語は、発現すべき配列を含むポリヌクレオチド配列の形の任意のDNA転写単位を含むものとする。有利には、このプラスミドは、その発現、例えばin vivo発現に必要な要素を含む。スーパーコイル状のものであれそうでないものであれ、環状プラスミドの形が有利である。直鎖状のものも本発明の範囲に含まれる。このプラスミドは、裸のプラスミドでも、例えば脂質又はリポソーム、例えばカチオン性リポソーム内部に配合されたプラスミドでもよい(例えば、国際公開第90/11082号、第92/19183号、第96/21797号及び第95/20660号を参照のこと)。プラスミドの免疫組成物又はワクチン組成物は、遺伝子銃を用いて、又は筋肉内に、又は経鼻的に、又はin vivo発現を、有利には免疫応答若しくは防御応答を可能にする他のどんな手段によっても投与することができる。また、それぞれ1999年1月15日出願の(参照により本明細書に組み込む)、米国特許出願第09/232278号、第09/232468号、第09/232477号、第09/232279号、第09/232478号、及び第09/232469号、並びにそれぞれ1999年6月10日出願の(参照により本明細書に組み込む)、米国特許出願第60/138,352号及び第60/138,478号も参照のこと。こうした出願は、ネコ、イヌ、ウシ及びウマ用のDNA及び/又はベクターのワクチン組成物、免疫組成物、或いは免疫原性組成物を含むため、本発明の組成物は、こうした出願のDNA及び/又はベクターのワクチン組成物、免疫原性組成物、或いは免疫組成物を含むことができ、且つ/或いは本発明の組成物は、こうした出願の組成物に類似の形で調製及び/又は配合及び/又は投与することができる。
【0063】
本発明で使用する組成物は、獣医学、薬学又は医学の分野の技術者に周知の標準的な技法に従って調製することができる。このような組成物は、動物の年齢、性別、体重、状態及び特定の治療、並びに投与経路などの要素を考慮に入れて、獣医学分野の技術者に周知の用量及び技法によって投与することができる。本発明の組成物の諸成分は、単独投与することができ、或いは他の組成物と、又は他の予防用組成物若しくは治療用組成物(例えば、他の免疫原性組成物、免疫組成物、又はワクチン組成物)と同時投与又は順次投与することができる(例えば、クリプトスポリジウム・パルブム抗原(1種又は複数)及び/又はエピトープ(1種又は複数)を単独投与し、続いて他の腸管病原体の抗原(1種又は複数)及び/又はエピトープ(1種又は複数)を順次投与することができ、或いは腸管病原体の抗原(1種又は複数)若しくはエピトープ(1種又は複数)を含む諸組成物に、同じ、若しくは異なる腸管病原体抗原(1種又は複数)若しくはエピトープ(1種又は複数)を発現するベクター又は組換え体又はプラスミドを含めることもできる)。したがって、本発明は、多価組成物、「カクテル」組成物又は混合組成物、及びそれらの組成物を使用する方法を提供する。投与成分及び投与方法(順次投与、例えば、プライム−ブーストレジメン(prime-boost regimen)の一環として、又は年1回、季節毎、年2回などのブースタープログラムなど、免疫原性組成物、免疫組成物若しくはワクチン組成物を動物の生涯の間に定期的に投与するブースタープログラムの一環として、或いは同時投与)、並びに投与量は、動物、例えば雌牛の年齢、性別、体重、状態及び特定の治療、並びに投与経路などの要素を考慮に入れて決定することができる。このことに関しては、参照により本明細書に組み込む、狂犬病用の組成物及び混合組成物、並びにそれらの使用を対象とする米国特許第5843456号を参照のこと。
【0064】
本発明の組成物は、非経口投与又は粘膜投与に、好ましくは、皮内、皮下、又は筋肉内経路で使用することができる。粘膜投与を用いる場合、経口経路、経鼻経路、又は経膣経路を用いることができる。
【0065】
このような組成物では、ベクター(1種又は複数)、抗原(1種又は複数)、又は対象(1種又は複数)のエピトープ(1種又は複数)を、滅菌水、生理食塩水、グルコースなど、適当な担体、希釈剤、又は賦形剤と混合することができる。これらの組成物はまた、凍結乾燥することもできる。これらの組成物は、所望の投与経路及び調製方法に応じて、pH緩衝剤、アジュバント、保存剤、粘膜経路に使用されるポリマー賦形剤などの補助剤を含むことができる。
【0066】
参照により本明細書に組み込む"REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE", 17th edition, 1985など標準のテキストを参考にして、過度の実験なしに適当な製剤を調製することができる。適当な投与量も、このテキスト及びそこで引用する文献に基づくものとすることができる。
【0067】
アジュバントは、抗原に対する免疫応答を増強する物質である。アジュバントには、とりわけ、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム、サポニン類、例えばQuil A、鉱油エマルジョン;鉱油エマルジョン又は代謝可能な油エマルジョンを含むプルロニックポリマー;油中水型アジュバント、水中油型アジュバント、合成ポリマー(例えば、抗原をカプセル化したマイクロスフェア、例えば生分解性マイクロスフェアを生成するのに使用されている、乳酸及びグリコール酸のホモポリマー及びコポリマー、Eldridge et al., Mel. Immunol. 28:287-294 (1993)を参照のこと)、非イオン性ブロックコポリマー、油ベースのエマルジョン中の低分子量コポリマー(Hunter et al., The Theory and Practical Application of Adjuvants (Ed. Stewart-Tull, D.E.S.), John Wiley and Sons, NY, pp51-94 (1995)を参照のこと)、水性製剤中の高分子量コポリマー(Todd et al., Vaccine 15:564-570 (1997))、IL−2及びIL−12などのサイトカイン(例えば米国特許第5334379号参照)、並びにGM−CSF(顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子;一般に米国特許第4999291号及び第5461663号を参照、Clark et al., Science 1987, 230:1229、Grant et al., Drugs, 1992, 53:516も参照)、有利にはワクチン接種すべき動物種由来のGM−CSFが含まれる。ある種のアジュバント、例えば、サイトカイン、GM−CSFは、抗原(1種又は複数)及び/又はエピトープ(1種又は複数)と共にin vivoで発現させることができる(例えば、ウシGM−CSFに関するC. R. Maliszewski et al. Molec Immunol 25(9): 843-50 (1988)、S.R. Leong, Vet Immunol and Immunopath 21:261-78 (1989)を参照のこと。GM−CSFをコードするプラスミドは、本発明によるウシの病原体由来の抗原及び/又はそのエピトープをコードするDNAを、場合によっては他のウシ病原体の抗原及び/又はエピトープをコードするDNAも共に含み発現するように改変することができ、或いはこのようなプラスミドと組み合わせて使用することもできる。)。
【0068】
アジュバントのさらなる例は、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマー、及び無水マレイン酸とアルケニル誘導体のコポリマーから選択される化合物である。有利なアジュバント化合物は、特に、糖若しくは多価アルコールのポリアルケニルエーテルで架橋された、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマーである。このような化合物は、カルボマーという用語で知られている(Phameuropa Vol. 8, No. 2, June 1996)。当分野の技術者であれば、このようなアクリル酸ポリマーを記載する米国特許第2909462号(参照により本明細書に組み込む)も参照することができ、それらは、少なくとも3個、好ましくは8個以下のヒドロキシル基を有し、その少なくとも3個のヒドロキシル基の水素原子が少なくとも2個の炭素原子を有する不飽和脂肪族基で置換されたポリヒドロキシル化化合物で架橋されている。好ましい基は、2〜4個の炭素原子を含むもの、例えば、ビニル基、アリル基、及び他のエチレン性不飽和基である。この不飽和基は、それ自体メチル基など他の置換基を含むことができる。特に、Carbopol(登録商標)(BF Goodrich社製、米国オハイオ州)という名称で市販されている製品は適切である。これらの製品は、アリルスクロース又はアリルペンタエリトリトールで架橋されている。その例として、Carbopol(登録商標)974P、934P及び971Pを挙げることができる。無水マレイン酸とアルケニル誘導体のコポリマーには、線状の又は架橋された、例えばジビニルエーテルで架橋された、無水マレイン酸とエチレンのコポリマーであるコポリマーEMA(登録商標)(モンサント社製)が好ましい。参照により本明細書に組み込むJ. Fields et al., Nature, 186: 778-780, 4 June 1960を参照することができる。
【0069】
それらの構造の点から、アクリル酸若しくはメタクリル酸のポリマー、及びコポリマーEMA(登録商標)は、次式の基本単位
【0070】
【化1】

で形成することが好ましく、上式で、R及びRは、同一であるか又は異なっており、H又はCHを表し、
x=0又は1、好ましくはx=1であり、且つ
y=1又は2であり、但しx+y=2である。
【0071】
コポリマーEMA(登録商標)では、x=0及びy=2である。カルボマーでは、x=y=1である。
【0072】
こうしたポリマーを水に溶解すると酸性溶液となるが、これを好ましくは生理的pHまで中和してアジュバント溶液にし、その中に免疫原性組成物、免疫組成物、又はワクチン組成物自体を含める。このとき、このポリマーのカルボキシル基は一部がCOOの形である。
【0073】
好ましくは、本発明によるアジュバント、特にカルボマーの溶液を、好ましくは塩化ナトリウムの存在下、蒸留水中で調製し、得られる溶液は酸性pHとなる。この原液を、(所望の最終濃度を得るため)所望の量又はほぼ所望の量の、NaClを加えた水、好ましくは生理食塩水(NaCl9g/l)に一度に、数回に分け添加して希釈し、同時若しくは後に好ましくはNaOHで中和する(pH7.3〜7.4)。この生理的pHの溶液をそのまま使用してワクチンと混合し、このワクチンは特に、凍結乾燥、液体、又は凍結の形で保存することができる。
【0074】
最終ワクチン組成物中のポリマー濃度は、0.01%〜2%(w/v)、例えば0.06〜1%(w/v)、0.1〜0.6%(w/v)などとすることができる。
【0075】
本発明による、アジュバントを含む免疫原性組成物及びワクチン組成物はまた、エマルジョン、特に水中油型エマルジョン、例えば"Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach" edited by M. Powell, M. Newman, Plenum Press 1995の147頁に記載するSPTエマルジョンなどのエマルジョン、又は同書の183頁に記載するエマルジョンMF59の形にそれらを配合して生成することができる。具体的には、水中油型エマルジョンは、軽質流動パラフィン油(欧州薬局方による);スクアラン、スクアレンなどのイソプレノイド;アルケンの、特に、イソブチレン又はデセン(decene)のオリゴマー化によって得られる油;線状のアルキル基を有する酸若しくはアルコールエステル、特に、植物油、オレイン酸エチル、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロピレングリコール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセロール、又はジオレイン酸プロピレングリコール;分枝脂肪酸又はアルコールのエステル、特にイソステアリン酸エステルに基づくものとすることができる。この油を乳化剤と組み合わせて使用してエマルジョンを形成させる。乳化剤は、非イオン界面活性剤、特にソルビタンエステル、マンニドエステル(mannide ester)、グリセロールエステル、ポリグリセロールエステル、プロピレングリコールエステル、或いはオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸、又はヒドロキシステアリン酸のエステル、場合によってはエトキシ化されたもの、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンなどのブロックコポリマー、特にPluronic(プルロニック)と呼ばれる製品、即ちPluronic L121であることが好ましい。
【0076】
本開示及び当技術分野の知識があれば、当業者は過度の実験なしに、必要に応じて本発明による免疫組成物、免疫原性組成物、又はワクチン組成物中に使用するのに適したアジュバント及びその量を選択することができる。
【0077】
本発明による免疫組成物、免疫原性組成物、又はワクチン組成物を、少なくとも1種の弱毒生ワクチン、不活化ワクチン、又はサブユニットワクチン、或いは他の病原体由来の目的となる少なくとも1種の免疫原、抗原、又はエピトープを発現する組換えワクチン(例えば、ベクター又はDNAプラスミドとしてのポックスウイルス)と組み合わせることができる。
【0078】
様々な投与経路用の形の組成物は、本発明によって想定される。さらに、有効な投与量及び投与経路は、年齢、体重など既知の要素によって決まる。各有効薬剤、例えば、目的となる各クリプトスポリジウム・パルブム抗原若しくはエピトープ、及び/又は各腸管病原体由来の各抗原若しくはエピトープの投与量は、本明細書で引用する文献、又は本明細書にその他の形で記載する文献の通りにすることができ、且つ/又は1又は数マイクログラム〜数百又は数千マイクログラムの範囲、例えば、サブユニットの免疫原性組成物、免疫組成物、又はワクチン組成物の場合には1μg〜1mg、不活化免疫原性組成物、不活化免疫組成物、又は不活化ワクチン組成物の場合には、不活化前で10〜1010TCID50、有利には10〜10TCID50の範囲とすることができる。
【0079】
組換え体又はベクターを、本明細書及び/又は本明細書で引用する文献に記載の投与に対応するin vivo発現を得るのに適した量で投与することができる。例えば、ウイルス懸濁液に適した範囲は経験的に決めることができる。本発明のウイルスベクター又は組換え体を、少なくとも約10pfu、より好ましくは約10pfu〜約1010pfu、例えば約10pfu〜約10pfu、例えば約10pfu〜約10pfuの量で動物に投与し、又は細胞中に感染させる若しくはトランスフェクトすることができる。用量は通常、約10〜約1010の範囲、好ましくは約1010pfuの単位投与量であり、有利には、約1ml〜約5ml、有利には約2mlの投与量につき約10pfuである。複数の遺伝子産物を複数の組換え体によって発現させる場合、このような量で各組換え体を投与することができ、或いは組み合わせる際には、組換え体の総量がこのような量となるように各組換え体を投与することもできる。本発明に使用するプラスミド組成物の投与量は、本明細書に引用する文献又は本明細書に記載の通りにすることができる。有利なことには、この投与量は、目的となる抗原(1種又は複数)若しくはエピトープが直接に存在している組成物と類似の応答を誘発する、或いはこのような組成物の投与に類似の発現を生じる、或いは組換え組成物によりin vivoで得られる発現に類似の発現を生じるのに十分な量のプラスミドとすべきである。例えば、プラスミド組成物中の各プラスミドDNAの適当な量は、1μg〜2mg、好ましくは50μg〜1mgとすることができる。当分野の技術者であれば、本明細書で引用する、DNAプラスミドベクターに関する文献を参考にして、過度の実験なしに、本発明のDNAプラスミドベクター組成物に適した他の投与を確定することができる。
【0080】
しかし、適当な免疫応答を誘発する、組成物(1種又は複数)の投与量、その成分の濃度、及び組成物(1種又は複数)を投与するタイミングは、血清の抗体価測定、例えば、ELISA及び/又は血清中和(seroneutralization)及び/又はセロプロテクション試験分析(seroprotection assay analysis)などの方法によって決定することができる。当分野の技術者の知識、本開示、及び本明細書で引用する文献があれば、このような決定に過度の実験は必要ない。さらに、順次投与についての時間も同様に、本開示、及び当技術分野の知識から確定可能な方法により過度の実験なしに確定することができる。
【0081】
腸管病原体の混合免疫組成物、混合免疫原性組成物、又は混合ワクチン組成物は、両方の成分が前記で定義したクリプトスポリジウム・パルブム抗原を含むことが好ましい。
【0082】
クリプトスポリジウム抗原(1種又は複数)若しくはエピトープ(1種又は複数)(有利には、P21又はCp23及びCp15/60などP21及び/又はCp23及び/又はCp15/60及び/又はCP41、或いはそれらのエピトープ(1種又は複数))と組み合わせることが有利な、腸管病原体の抗原若しくはエピトープは、大腸菌及び/又はロタウイルス及び/又はコロナウイルス及び/又はウェルシュ菌などのクロストリジウム属菌由来の1種又は複数の抗原若しくは対象のエピトープを含むことが好ましい。好ましくは、大腸菌由来の抗原は、K99、F41、Y、31Aと呼ばれる抗原及び/又はそのエピトープのうちの1種、好ましくは数種(複数)、より好ましくはすべてを含む。好ましい抗原はK99及びF41である。したがって、組成物は、K99及びF41のうちの一方、好ましくはその両方を含むことが有利である。組成物はまた、Y及び/又は31A、有利にはY及び31Aも含むことが好ましい。例えば、こうした抗原は、サブユニットとして組み込むか、或いは大腸菌が有するものでもよい。好ましくは、本発明による組成物は、K99抗原を有する大腸菌、F41抗原を有する大腸菌、Y抗原を有する大腸菌、31A抗原を有する大腸菌、K99抗原、F41抗原、Y抗原、31A抗原、及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される少なくとも1種の抗原を含む。
【0083】
本明細書に記載の通り、大腸菌を使用してクリプトスポリジウム・パルブム抗原若しくはエピトープを産生することができる。大腸菌抗原及びクリプトスポリジウム・パルブム抗原が同時発現するように、このクリプトスポリジウム・パルブム抗原若しくはエピトープを、大腸菌の諸抗原のうちの少なくとも1種を発現する大腸菌株中で発現させることができる。in vitro発現の場合には、次いで、細胞を通常通りに分裂させ、大腸菌抗原及びクリプトスポリジウム・パルブム抗原、又はエピトープを回収することができる。有利なことには、抗原若しくはエピトープが内部即ち表面以外で発現する場合、抗原若しくはエピトープを融合タンパク質として、又はタグ、例えばHISタグ付で発現させる。in vivo発現の場合には、抗原若しくはエピトープが細胞外で発現するように、発現抗原若しくはエピトープを発現する核酸分子をシグナル配列と連結させることが有利であり、この大腸菌は、非病原性であることが有利である。したがって、いくつかの実施形態では、大腸菌をベクター及び抗原若しくはそのエピトープとすることができる。
【0084】
ウェルシュ菌由来の抗原は、C型及び/又はD型のトキソイド、より好ましくはC型及びD型のトキソイドであることが好ましい。
【0085】
本発明の具体的な一態様は、ウシ種の腸管病原体の混合免疫組成物、混合免疫原性組成物、又は混合ワクチン組成物であり、この組成物は、好ましくはクリプトスポリジウム・パルブムを含めた少なくとも1種のクリプトスポリジウム属原虫由来の少なくとも1種の抗原若しくはエピトープ、有利にはP21又はCp23及びCp15/60などP21及び/又はCp23及び/又はCp15/60及び/又はCP41及び/又はその対象のエピトープと、好ましくは、大腸菌、ウシロタウイルス、ウシコロナウイルス及びウェルシュ菌の各病原体由来の少なくとも1種の抗原若しくはエピトープ、或いは大腸菌、ロタウイルス、及びコロナウイルス由来の少なくとも1種の抗原若しくはエピトープを含めて、こうした病原体又はそれらの組合せなど、追加の少なくとも1種のウシ腸管病原体由来の少なくとも1種の抗原若しくはエピトープとを含む。所望の目的となる抗原のエピトープ、及び抗原のどの部分が目的となるエピトープであるかを決定する方法に関しては、米国特許第5990091号、及び米国特許出願第08/675566号、第08/675556号、並びに本明細書で引用する他の文献を参照のこと。本明細書で引用する文献など、本明細書の開示及び当技術分野の知識があれば、目的となるエピトープを確定し、或いは抗原(1種又は複数)及び/又はエピトープ(1種又は複数)、及び/又は抗原(1種又は複数)及び/又はエピトープ(1種又は複数)を発現するベクター(1種又は複数)を含む本発明の組成物を配合するのに過度の実験は必要ない。
【0086】
好ましい実施形態によれば、本発明は、ウシの腸管病原体の免疫組成物、免疫原性組成物、又はワクチン組成物を提供するものであり、この組成物は、抗原K99、F41、Y、及び31A、並びにウシ不活化コロナウイルス、ウシ不活化ロタウイルスなど、本明細書に記載の大腸菌抗原を含む。この組成物はさらに、ウェルシュ菌C型及びD型のトキソイドを含むこともできる。好ましくは、この大腸菌結合価は、K99抗原を有する不活化大腸菌、F41抗原を有する不活化大腸菌、Y抗原を有する不活化大腸菌、及び31A抗原を有する不活化大腸菌、或いはK99抗原、F41抗原、Y抗原、及び31A抗原のいずれかを含む。
【0087】
本発明の別の態様は、クリプトスポリジウム・パルブムに対する免疫組成物、免疫原性組成物、又はワクチン組成物であり、この組成物は、Cp23又はP21及びCp15/60抗原或いはそれらのエピトープと、製薬上許容されるビヒクルとを含む。
【0088】
有利な実施形態によれば、こうした抗原をタンパク質又はサブユニット抗原としてこの組成物中に組み込む。こうした抗原は、化学合成又はin vitro発現によって産生することができる。適当な宿主中での発現による産生、及びその抗原の回収の便宜上、こうした抗原を融合タンパク質(例えばHISタグ付き)の形にすることが好ましい。即ち、この抗原は、抗原自体と外来のアミノ酸を含むことができる。
【0089】
他の実施形態によれば、こうした抗原をサブユニットとして組成物中に組み込まず、この組成物は、動物に投与すると抗原(1種又は複数)若しくはエピトープ(1種又は複数)をin vivoで発現するような、Cp23若しくはP21及びCp15/60又はそれらのエピトープを発現する組換えベクター、或いはCp23若しくはP21又はそのエピトープを発現する組換えベクターと、Cp15/60又はそのエピトープを発現する組換えベクターとを含む。この組成物は、ある抗原若しくはエピトープと、他の抗原若しくはエピトープとを発現するベクターを含むことができる。
【0090】
本発明のさらなる態様は、標的動物に、本発明による、クリプトスポリジウム・パルブムに対する腸管病原体の混合免疫組成物、混合ワクチン組成物、混合免疫組成物、又は混合ワクチン組成物を投与するというワクチン接種の方法である。本発明は、腸管疾患に対する新生子牛の免疫化方法に関するものとすることができ、この方法は、新生子牛がクリプトスポリジウム・パルブムに対する移行抗体を有するように、Cp23若しくはP21及びCp15/60クリプトスポリジウム・パルブム抗原又はそれらのエピトープと、製薬上許容されるビヒクルとを含む免疫組成物又はワクチン組成物を、出産前の妊娠中の雌牛又は妊娠中の未経産雌牛に投与することを含む。好ましくは、この方法は、そのようにワクチン接種された雌牛、例えば母獣から初乳及び/又はミルクを新生子牛に与えることを含む。腸管疾患に対するワクチン接種又は免疫化では、様々な結合価を含む、混合ワクチン組成物、混合免疫原性組成物、又は混合免疫組成物を使用するだけでなく、ワクチン組成物、免疫原性組成物、又は免疫組成物を分けて、別々に投与、例えば順次投与することもでき、或いは使用前に混合することもできる。
【0091】
本発明の組成物及び方法に有用な目的となる抗原及びエピトープは、当分野の技術者が利用可能ないずれかの方法を使用して、例えば、米国特許第5591434号及び国際公開第98/07320号における方法を使用して産生することができる。さらに、他の腸管病原体の抗原は、TRIVACTON(登録商標)6など市販の供給源から入手することができる。例えば、Cp23及び/又はP21及び/又はCp15/60或いはそれらのエピトープ、例えば、P21若しくはCp23及びCp15/60又はそれらのエピトープ、或いはこうした抗原(1種又は複数)若しくはエピトープ(1種又は複数)を発現するベクターを本明細書で指定する量で、TRIVACTON(登録商標)6に添加することができる。有利には、ウェルシュ菌C型及びD型のトキソイドをTRIVACTON(登録商標)6に添加することができる。また、TRIVACTON(登録商標)6中で、線毛を有する不活化大腸菌を分離された線毛で置き換えることができる。また、クリプトスポリジウム・パルブム抗原(1種又は複数)若しくはエピトープ(1種又は複数)、及び/又はウェルシュ菌抗原(1種又は複数)若しくはエピトープ(1種又は複数)を添加したこのようなワクチン組成物、免疫原性組成物、又は免疫組成物(不活化大腸菌又は分離された線毛を有する)、並びにこのような組成物及びそのキットを生成し使用する方法も本発明に含まれる。
【0092】
さらに、本発明を実施するのに有用な大腸菌結合価及び/又は抗原(1種又は複数)及び/又はエピトープ(1種又は複数)については、欧州特許出願公開第80412号、欧州特許出願公開第60129号、英国特許出願公開第2094314号、並びに米国特許第4298597号、第5804198号、第4788056号、第3975517号、第4237115号、第3907987号、第4338298号、第4443547号、第4343792号、第4788056号及び第4311797号を参照のこと。ロタウイルス抗原(1種又は複数)及び/又はエピトープ(1種又は複数)については、P.S. Paul and Y.S. Lyoo, Vet Microb 37:299-317 (1993)、並びに米国特許第3914408号及び第5620896号を参照のこと。コロナウイルス抗原(1種又は複数)及び/又はエピトープ(1種又は複数)に関しては、国際公開第98/40097号、国際公開第96/41874号、並びに米国特許第3914408号及び第3919413号を参照のこと。クロストリジウム属菌、例えばウェルシュ菌抗原(1種又は複数)及び/又はエピトープ(1種又は複数)については、国際公開第94/22476号、欧州特許出願公開第734731号、国際公開第98/27964号、英国特許出願公開第2050830号、英国特許出願公開第1128325号、D. Calmels and Ph. Desmettre, IV Symposium of the Commission for the study of animal diseases caused by anaerobes, Paris, Nov. 16-18, 1982、米国特許第5178860号、第4981684号及び第4292307号、さらにIMOTOXAN(登録商標)(MERIAL社製、仏国リヨン)(B型、C型、D型ウェルシュ菌、悪性水腫菌(Cl. septicum)、ノビイ菌(Cl. novyi)、破傷風菌(Cl. tetani)、及び気腫疽菌(Cl. chauvoei)培養物のトキソイドを含む)を参照されたい。さらに、TRIVACTON(登録商標)6に加えて、本発明に従ってクリプトスポリジウム・パルブム結合価を加えることができる他の市販の混合ワクチン、例えば、ウシ不活化ロタウイルス及びコロナウイルス、K99大腸菌Bacterin(バクテリン)、並びにウェルシュ菌C型トキソイドを含むSCOURGUARD 3 (K)/C(登録商標)(SmithKline Beecham社製)を使用することもできる。
【0093】
目的となる抗原若しくはエピトープを獲得する好ましい方法は、目的となる抗原若しくはエピトープをコードするDNA配列を融合若しくは非融合プラスミド中にクローニングし、それを大腸菌中で発現させることである。融合プラスミド(例えば、Hisタグなど、タグ付きの抗原(1種又は複数)若しくはエピトープ(1種又は複数)を発現する)は、産生した抗原を容易に回収できるようにするので好ましい。適当なプラスミドを実施例に記載する。化学合成による抗原の生成も本発明の範囲に含まれる。
【0094】
本発明はさらに、本明細書に記載の、抗原若しくはエピトープ又はこのような抗原若しくはエピトープを発現するベクターを使用して、例えば、この抗原、エピトープ、又はベクターを、適当な、若しくは許容される担体又は希釈剤と、場合によってはアジュバントとも混合することにより、例えばクリプトスポリジウム・パルブム又は腸管疾患に対するワクチン組成物、免疫組成物、又は免疫原性組成物を調製する方法を包含する。この組成物は、凍結乾燥して溶解することもできる。本発明はさらに、本発明の組成物を調製するためのキットを包含する。このキットは、抗原(1種又は複数)、エピトープ(1種又は複数)、及び/又はベクター(1種又は複数)、担体、及び/又は希釈剤、並びに場合によってはアジュバントを含むことができる。その諸成分を別々の容器に入れることができる。その諸成分を含むこの容器は、1種又は複数のパッケージにすることができ、さらに、このキットは、諸成分を混合し、且つ/又はワクチン組成物、免疫原性組成物、若しくは免疫組成物を投与するための説明書を含むことができる。
【0095】
本発明の他の態様は、例えば、本発明の組成物(1種又は複数)(例えば、本発明による、クリプトスポリジウム・パルブム組成物又は腸管病原体の混合組成物)を少なくとも1回、有利には少なくとも2回、より有利には少なくとも3回投与することによる、妊娠中の雌の動物(雌牛など)の高度免疫化により高度免疫初乳及び/又はミルクを産生することである。場合によっては、ただし有利には、次いで、このようにして産生された初乳及び/又はミルクを処理して、免疫グロブリンを濃縮し、所望の免疫応答、免疫原性応答、及び/又はワクチン応答、或いは初乳又はミルクの栄養価に寄与しない、初乳又はミルクの諸成分を除去することができる。有利には、この処理は、例えば、レンネットと、回収した免疫グロブリンを含有する液相とを使用して、初乳又はミルクを凝固させることを含むことができる。本発明はまた、高度免疫初乳若しくはミルク又はそれらの混合物、及び/又は高度免疫初乳若しくはミルク又はそれらの混合物を含む組成物を包含する。さらに、本発明は、高度免疫初乳若しくはミルク又はそれらの混合物、或いはそれを含む組成物を使用して、新生仔などの幼若動物、例えば子牛のクリプトスポリジウム・パルブム及び/又は腸管感染症を予防又は治療することを想定したものである。
【0096】
以下の実施例は、本発明の諸細胞を生成及び使用する方法の完全な開示及び説明を当分野の技術者に提供するように述べたものであり、本発明者が本発明とみなすものの範囲を限定するものではない。
[実施例]
【0097】
配列リスト:
配列番号1 オリゴヌクレオチドJCA295
配列番号2 オリゴヌクレオチドJCA296
配列番号3 オリゴヌクレオチドJCA297
配列番号4 オリゴヌクレオチドJCA298
配列番号5 オリゴヌクレオチドJCA299
配列番号6 オリゴヌクレオチドJCA300
配列番号7 オリゴヌクレオチドJCA301
配列番号8 オリゴヌクレオチドJCA302
配列番号9 オリゴヌクレオチドJCA303
配列番号10 オリゴヌクレオチドJCA304
【0098】
プラスミド構築体はすべて、Sambrook J. et al.(Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd Edition. Cold Spring Harbor Laboratory. Cold Spring Harbor. New York. 1989)に記載の通り、標準的な分子生物学的技法(クローニング、制限消化、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))を使用して作成した。本発明のために生成し使用するDNA制限断片、並びにPCR断片はすべて、「Geneclean(登録商標)」キット(BIO101社製、カリフォルニア州ラホーヤ)を使用して単離及び精製した。
【実施例1】
【0099】
クリプトスポリジウム・パルブムP21及びCp15/60遺伝子のクローニング
Sagodira S.らによる記載(Vaccine. 1999. 17. 2346-2355)の通り、クリプトスポリジウム・パルブムのオーシストを、感染させた子牛から単離し、ウシの糞便試料から精製する。次いで、精製したオーシストを蒸留水中で+4℃で保存する。PCR反応のための鋳型として使用するため、Iochmann S.らによる記載(Microbial Pathogenesis 1999. 26. 307-315)の通り、精製したオーシストからゲノムDNAを放出させる。
【0100】
クリプトスポリジウム・パルブムDNAの代替の供給源は、ATCC(American Tissue Culture Collection米国組織培養株保存機構)から入手可能なクリプトスポリジウム・パルブムのIowa(A)、Iowa(I)、KSU−1、及びKSU−2分離株(ATCC番号はそれぞれ87667、87668、87439及び87664)のEcoRIゲノムライブラリーによって構成されている。特定のP21及びCp15/60遺伝子を以下の通りに単離する。
【0101】
クリプトスポリジウム・パルブムDNA、並びにプライマー、即ち
オリゴヌクレオチドJCA295(35mer)配列番号1
5' TTT TTT CCA TGG GGC TCG AGT TTT CGC TTG TGT TG 3'
及びオリゴヌクレオチドJCA296(33mer)配列番号2
5' TTT TTT GAA TTC TTA GGC ATC AGC TGG CTT GTC 3'
を使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりP21タンパク質をコードする配列を増幅する。
【0102】
このPCRにより約585bpのPCR断片の断片が生成される。次いで、このPCR断片を制限酵素NcoI及びEcoRIで消化して、アガロースゲル電気泳動後、GeneCleanキット(BIO101社製)を用いて575bpのNcoI-EooRI制限断片(=断片A)を単離し回収する。この断片の配列は、国際公開第98/07320号(PCT/US97/14834)中の配列番号12として記載する配列と相同なタンパク質をコードしている。
【0103】
第2のPCRを実施して、Cp15/60タンパク質をコードする配列を増幅し、後のクローニングのために5’及び3’末端に制限部位を付加する。クリプトスポリジウム・パルブムDNA、並びにプライマー、即ち
オリゴヌクレオチドJCA297(35mer)配列番号3
5' TTT TTT CTC GAG ATG GGT AAC TTG AAA TCC TGT TG 3'
及びオリゴヌクレオチドJCA298(42mer)配列番号4
5' TTT TIT GAA TTC TTA GTT AAA GTT TGG TTT GAA TTT GTT TGC 3'
を使用してこのPCRを実施する。
【0104】
このPCRにより約465bpの断片が生成される。この断片を精製し、次いで、XhoI及びEcoRIで消化して、アガロースゲル電気泳動後、GeneCleanキット(BIO101社製)を用いて453bpのXhoI-EcoRI断片(=断片B)を採取し回収する。この増幅配列は、米国特許第5591434号中の配列番号1のヌクレオチド#31〜#528で定義される配列、並びにGenBankにアクセッション番号U22892及びAAC47447として寄託されている配列と相同である。
【実施例2】
【0105】
プラスミドpJCA155の構築(ベクターpBAD/HisAにおけるGST−P21融合タンパク質)
GST−P21融合タンパク質を発現するのに必要な配列をPCRによって増幅して、pBAD/HisA発現プラスミドベクター(カタログ番号V430−01、InVitrogen社製、92008米国カリフォルニア州カールズバッド)中に容易にクローニングすることができる2種の断片を生成する。プラスミドpGEX-2TK(カタログ番号27−4587−01、Amersham-Pharmacia Biotech社製)、並びにプライマー、即ち
オリゴヌクレオチドJCA299(35mer)配列番号5
5' TTT TTT CCA TGG GGT CCC CTA TAC TAG GTT ATT GG 3'
及びオリゴヌクレオチドJCA300(45mer)配列番号6
5' TTT TTT CTC GAG CCT GCA GCC CGG GGA TCC AAC AGA TGC ACG ACG 3'
を使用して第1のPCRを実施する。
【0106】
このPCRにより、pBAD/HisA中にクローニングする目的で5’末端にNcoI制限部位を付加した、GST部分をコードする約720bpの断片が生成される。この修飾によりグリシンコドンがGST−P21融合タンパク質に付加される)。次いで、このPCR断片をNcoI及びXhoIで消化して、アガロースゲル電気泳動後、GeneCleanキット(BIO101社製)を用いて710bpのNcoI-XhoI断片(=断片C)を採取し回収する。
【0107】
クリプトスポリジウム・パルブムDNA、並びにプライマー、即ち
オリゴヌクレオチドJCA301(33mer)配列番号7
5' TTT TTT CTC GAG TTT TCG CTT GTG TTG TAC AGC 3'
及びオリゴヌクレオチドJCA296(33mer)配列番号2
を使用して第2のPCRを実施する。
【0108】
このPCRにより、5’及び3’末端にXhoI及びEcoRI制限部位をそれぞれ付加した、P21部分をコードする約580bpの断片が生成される。次いで、このPCR断片をXhol及びEcoRlで消化して、アガロースゲル電気泳動後、GeneCleanキット(BIO101社製)を用いて572bpのXhoI-EcoRI断片(=断片D)を採取し回収する。
【0109】
プラスミドpBAD/HisA(カタログ番号V430−01、InVitrogen社製)をNcoI及びEcoRIで消化する。この消化断片をアガロースゲル電気泳動によって分離して、#3960bpのNcoI-EcoRI制限断片(=断片E)を回収する(GeneCleanキット、BIO101社製)。
【0110】
次いで、断片C、D及びEを連結してプラスミドpJCA155を作成する。このプラスミドは、全サイズが5243bpであり(図1)、425アミノ酸のGST−P21融合タンパク質をコードしている。
【実施例3】
【0111】
プラスミドpJCA156の構築(ベクターpBAD/HisAにおけるHis6−P21融合タンパク質)
ベクターpBAD/HisA(カタログ番号V430−01、InVitrogen社製)をNcoI及びEcoRIで消化し、実施例2に記載の通り、#3960bpのNcoI-EcoRI制限断片(=断片E)を回収し単離する。
【0112】
PCRを実施して、His6−P21融合物をコードする配列を増幅し、5’及び3’末端にNcoI及びEcoRI制限部位をそれぞれ付加して、このPCR断片をプラスミドベクターpBAD/HisA中にサブクローニングする。
【0113】
クリプトスポリジウム・パルブムDNA、並びにプライマー、即ち
オリゴヌクレオチドJCA302(65mer)配列番号8
5' TIT TTT CCA TGG GGG GTT CTC ATC ATC ATC ATC ATC ATG GTC TCG AGT TTT CGC TTG TGT TGT AC 3'
及びオリゴヌクレオチドJCA296(33mer)配列番号2
を使用してPCRを実施する。
【0114】
このPCRにより約610bpの断片が生成される。この断片を精製し、次いでNcoI及びEcoRIで消化して、アガロースゲル電気泳動後、GeneCleanキット(BIO101社製)を用いて600bpのNcoI-EcoRI断片(=断片F)を単離し回収する。
【0115】
断片E及びFを連結してプラスミドpJCA156を作成する。このプラスミドは、全サイズが4562bpであり(図2)、199アミノ酸のHis−6/P21融合タンパク質をコードしている。
【実施例4】
【0116】
プラスミドpJCA157の構築(ベクターpBAD/HisAにおける単独のP21タンパク質)
ベクターpBAD/HisA(カタログ番号V430−01、InVitrogen社製)をNcoI及びEcoRIで消化し、実施例3に記載の通り、#3960bpのNcoI-EcoRI制限断片(=断片E)を回収し単離する。
【0117】
PCRを実施して、P21タンパク質をコードする配列を増幅し、5’及び3’末端にNcoI及びEcoRI制限断片をそれぞれ付加して、このPCR断片をプラスミドベクターpBAD/HisA中にサブクローニングする。クリプトスポリジウム・パルブムDNA、並びにプライマー、即ち
オリゴヌクレオチドJCA295(35mer)配列番号1
及びオリゴヌクレオチドJCA296(33mer)配列番号2
を使用してPCRを実施して、実施例1に記載の通り575bpのNcoI-EcoRI断片(断片A)を獲得する。
【0118】
断片E及びAを連結してプラスミドpJCA157を作成する。このプラスミドは、全サイズが4535bpであり(図3)、P21タンパク質を含む189アミノ酸をコードしている。
【実施例5】
【0119】
プラスミドpJCA158の構築(ベクターpBAD/HisAにおけるGST−Cp15/60融合タンパク質)
PCRを実施して、GSTタンパク質をコードする配列を増幅し、5’及び3’末端に好都合な制限部位を付加して、このPCR断片を、最後のプラスミドベクターpBAD/HisA中にサブクローニングする。このPCRでは、鋳型としてのプラスミドpGEX-2TK(カタログ番号27−4587−01、Amersham-Pharmacia Biotech社製)のDNA、並びにプライマー、即ち
オリゴヌクレオチドJCA299(35mer)配列番号5
及びオリゴヌクレオチドJCA300(45mer)配列番号6
を使用して、実施例2に記載の通り710bpのNcoI-XhoI断片(=断片C)を獲得する。
【0120】
ベクターpBAD/HisA(カタログ番号V430−01、InVitrogen社製)をNcoI及びEcoRIで消化し、実施例2に記載の通り#3960bpのNcoI-EcoRI制限断片(=断片E)を回収し単離する。
【0121】
断片C、E及びB(実施例1)を連結してプラスミドpJCA158を作成する。このプラスミドは、全サイズが5132bpであり(図4)、388アミノ酸のGST−Cp15/60融合タンパク質を発現する。
【実施例6】
【0122】
プラスミドpJCA159(ベクターpBAD/HisAにおけるHis6−Cp15/60融合タンパク質)の構築
ベクターpBAD/HisA(カタログ番号V430−01、InVitrogen社製)をNcoI及びEcoRIで消化し、実施例2に記載の通り#3960bpのNcoI-EcoRI制限断片(=断片E)を回収し単離する。
【0123】
PCRを実施して、His6−Cp15/60融合をコードする配列を増幅し、5’及び3’末端に好都合な制限部位を付加して、このPCR断片をプラスミドベクターpBAD/HisA中にサブクローニングする。クリプトスポリジウム・パルブムDNA、並びにプライマー、即ち
オリゴヌクレオチドJCA303(64mer)配列番号9
5' TTT TTT CCA TGG GGG GTT CTC ATC ATC ATC ATC ATC ATG GTA TGG GTA ACT TGA AAT CCT GTT G 3'
及びオリゴヌクレオチドJCA298(42mer)配列番号4
をいずれも使用してPCRを実施する。
【0124】
このPCRにより約495bpの断片が生成される。この断片を精製し、次いでNcoI及びEcoRIで消化して、アガロースゲル電気泳動後483bpのNcoI-EcoRI断片(=断片G)が得られ、この断片をGeneCleanキット(BIO101社製)で回収する。
【0125】
断片E及びGを連結してプラスミドpJCA159を作成する。このプラスミドは、全サイズが4445bpであり(図5)、159アミノ酸のHis−6/Cp15/60融合タンパク質を発現する。
【実施例7】
【0126】
プラスミドpJCA160(ベクターpBAD/HisAにおける単独のCp15/60タンパク質)の構築
ベクターpBAD/HisA(カタログ番号V430−01、InVitrogen社製)をNcoI及びEcoRIで消化し、実施例2に記載の通り#3960bpのNcoI-EcoRI制限断片(=断片E)を回収し単離する。
【0127】
PCRを実施して、Cp15/60タンパク質をコードする配列を増幅し、5’及び3’末端に好都合な制限部位を付加して、このPCR断片をプラスミドベクターpBAD/HisA中にサブクローニングする。
【0128】
クリプトスポリジウム・パルブムDNA、並びにプライマー、即ち
オリゴヌクレオチドJCA304(31mer)配列番号10
5' TTT TTT CCA TGG GTA ACT TGA AAT CCT GTT G 3'
及びオリゴヌクレオチドJCA298(42mer)配列番号4
を使用してPCRを実施する。
【0129】
このPCRにより約460bpの断片が生成される。この断片を精製し、次いでNcoI及びEcoRIで消化して、アガロースゲル電気泳動後450bpのNcoI-EcoRI断片(=断片H)が得られ、この断片をGeneCleanキット(BIO101社製)で回収する。
【0130】
断片E及びHを連結してプラスミドpJCA160を作成する。このプラスミドは、全サイズが4412bpであり(図6)、148アミノ酸のCp15/60タンパク質を発現する。
【実施例8】
【0131】
大腸菌組換えクローンの培養及び組換えタンパク質の誘発
プラスミドDNA(実施例2〜7)で大腸菌DH5α(又は大腸菌TOP10(カタログ番号C4040−03、InVitrogen社製)など、当分野の技術者に周知の他のいずれかの適当な大腸菌K12株)を形質転換し、50μg/mlのアンピシリンを含むLB(Luria-Bertani)寒天培地プレート上で増殖させる。大腸菌集団を形質転換した各プラスミドにつき1個のコロニーを採取し、アンピシリン(又は他の適切な抗生物質)を含む10mlのLB培地中に置き、一晩増殖させる。一晩置いた培養物のうち1mlを1リットルのLB培地に添加し、OD600nmが約3.0に達するまで+30℃で増殖させる。
【0132】
様々な終濃度(0.002%〜0.2%の範囲で最適の収量を得るための濃度を決定する)のDL−アラビノース(カタログ番号A9524、Sigma社製、ミズーリ州セントルイス)を培養物に添加し、+30℃で4〜6時間インキュベートして、タンパク質の産生を誘発する。
【実施例9】
【0133】
組換え融合タンパク質の抽出及び精製
この誘発(実施例8)の最後に、細胞を遠心分離(3000g、+4℃で10分間)によって回収し、溶解緩衝液(50mMのトリスpH8.0、1mMのEDTA、1μMのPMSF、1mg/mlのリゾチーム)中で再懸濁させ、超音波処理により破砕を30秒間ずつ、1分間の休止を挟み25回行う。Triton X-100を終濃度0.1%になるように添加する。遠心分離によって細片を除去する。
【0134】
必要に応じて、代替の技法(当分野の技術者に知られている)を使用して細菌細胞を溶解することもできる。
【0135】
9.1.GST−融合組換えタンパク質
グルタチオン−アガロース(カタログ番号G4510、Sigma社製)又はグルタチオン−セファロース4B(カタログ番号17−0756−01、Amersham-Phharmacia Biotech社製)を使用して、実施例8に記載の通り調製した細菌ライセートから組換えGST−融合タンパク質(プラスミドpJCA155若しくはpJCA158で形質転換させた大腸菌によって産生される)をアフィニティー精製した。細菌ライセート及びグルタチオン−アガロースを+4℃で4時間インキュベートした。次いで、10mM還元型グルタチオン(カタログ番号G4705、Sigma社製)を用いて、温和な条件下でアガロースからGST−融合タンパク質をバッチ式で溶出した(K. Johnson and D. Smith Gene. 1988. 67. 31-40)(Anonymous. GST gene fusion system : technical manual. 3rd edition. Arlington Heights, IL: Amersham-Pharmacia Biotech, 1997を参照のこと)。当分野の技術者なら、本開示及び当技術分野の知識があれば過度の実験なしに、大量のGST−融合タンパク質を精製するこの方法をスケールアップすることができよう。
【0136】
9.2.His6−融合組換えタンパク質
ProBond(商標)ニッケル−キレート樹脂(カタログ番号R801−15、InVitrogen社製)を製造元の使用説明書に従って使用して、組換えHis6−融合タンパク質をすべて調製及び精製した。
【0137】
ネイティブな大腸菌細胞ライセートの調製(可溶性組換えタンパク質)
1リットルの大腸菌(プラスミドpJCA156若しくはpJCA159で形質転換させた)培養物から遠心分離(3000g、5分間)により大腸菌細胞を回収する。このペレットを200mlのNative Binding Buffer(ネイティブ結合緩衝液)(20mMのリン酸塩、500mMのNaCl、pH7.8)中で再懸濁させる。次いで、再懸濁させたペレットを、卵のリゾチームと一緒に終濃度100μg/mlで氷上で15分間インキュベートする。次いで、この懸濁液を氷上に置いたまま、この混合物を、超音波処理により中程度の強度で破砕を10秒間ずつ、2〜3回行う。次いで、この混合物を、一連の凍結/解凍サイクルに供して溶解を完了させ、最後に不溶性の細片を3000g、15分間の遠心分離によって除去する。このライセートを0.8μmフィルターで濾過して清澄化させ、精製まで氷上又は−20℃で保存する。
【0138】
清澄化ライセートのアリコート100mlを2つ使用して、このライセート中に存在する可溶性の組換えHis6−融合タンパク質を、事前に平衡化した50mlのProBond(商標)樹脂カラム(カタログ番号R640−50及びR801−15、InVitrogen社製)にバッチ式で結合させる。カラムを静かに10分間振盪して樹脂を再懸濁させ、ポリヒスチジンタグ付きのタンパク質を十分に結合させる。この樹脂を重力又は低速遠心分離(800g)によって沈殿させ、その上清を注意深く吸引する。第2のアリコートを用いて同じサイクルを繰り返す。
【0139】
カラム洗浄及び溶出
製造元の使用説明書(Anonymous. Xpresss(商標)System Protein Purification-A Manual of Methods for Purification of Polyhistidine-Containing Recombinant Proteins. InVitrogen Corp. Editor. Version D. 1998)に従って、4つの連続するステップを実施する。
1.カラムを100mlのNative Binding Buffer、pH7.8で洗浄した後、樹脂を再懸濁させ、2分間振盪し、次いで重力又は遠心分離により樹脂と上清に分離する。この手順をもう2回繰り返す(全部で3回の洗浄)。
2.カラムを100mlのNative Wash Buffer(ネイティブ洗浄緩衝液)、pH5.5で洗浄した後、樹脂を再懸濁させ、2分間振盪し、次いで重力又は遠心分離により樹脂と上清に分離する。この手順を、OD280が0.01未満になるまで少なくとも3回繰り返す。
3.カラムを100mlのNative Wash Buffer(ネイティブ洗浄緩衝液)、pH5.5で洗浄した後、樹脂を再懸濁させ、2分間振盪し、次いで重力又は遠心分離により樹脂と上清に分離する。この手順を、もう1回繰り返す(全部で2回の洗浄)。
4.次いで、カラムを垂直位に固定し、その下端キャップを取り外す。150mlのNative pH Elution Buffer(ネイティブpH溶出緩衝液)を用いて、組換えタンパク質を溶出させる。10mlの画分を回収する。その画分のOD280値を測定することにより溶出をモニターする。
必要に応じて、溶出したこの組換えタンパク質を、透析、又は硫酸アンモニウムによる沈殿のいずれかによって濃縮することができる。
【0140】
組換えタンパク質のバッチの終濃度をOD280値によって測定する。
【0141】
当分野の技術者なら、本開示及び当技術分野の知識があれば過度の実験なしに、大量のHis6−融合タンパク質を精製するこの方法をスケールアップすることができよう。
【実施例10】
【0142】
クリプトスポリジウム・パルブムP21及びCp15組換え非融合タンパク質の抽出及び精製
大腸菌の細胞(プラスミドpJCA157若しくはpJCA160で形質転換させた)を、4リットルのM9最小培地(適切なアミノ酸を補充した)中でOD600nmがおよそ3.0に達するまで30℃で培養し(Sambrook J. et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd Edition. Cold Spring Harbor Laboratory. Cold Spring Harbor. New York. 1989)、実施例8に記載の通り誘発を行う。次いで、この細菌の細胞を、最大流量毎時10リットル、使用圧力0〜1000バールの、高圧のRANNIEホモジナイザーMini-Lab、8.30H型に通して粉砕する。このライセートをCUNOフィルターZeta plus、LP型で濾過することにより清澄化させ、次いで、限外濾過器PALL Filtron(参照番号OS010G01)UF(限外濾過量)10kDaで50倍に濃縮する。このタンパク質懸濁液の濃縮物を、カラム容量の2〜3%に相当する量のHigh Resolution Sephacryl(高分解能セファクリル)S-100ゲルを用いて、ゲル濾過クロマトグラフィーのカラムにロードする。PBS緩衝液を用いて溶出させる。サブユニットワクチンタンパク質の予想の分子量に相当する回収画分を、中空繊維カートリッジA/G Technology、Midgeカートリッジ型、UFP-10-B-MB01モデル(又はUFP-10-C-MB01モデル又はUFP-10-E-MB01モデル)で10倍に濃縮する。この濃縮試料を、使用するまで−70℃で保存する。次いで、特定のクリプトスポリジウム・パルブム組換えタンパク質を、最終的に組み合わせたワクチンに対して適切な比率で混合することができる(実施例11参照)。
【実施例11】
【0143】
ワクチンの配合、妊娠中の雌牛へのワクチン接種、並びに新生子牛における受動免疫化及びチャレンジ実験
産生物(アジュバントを含む、又は含まない)を、筋肉内(IM)、皮下(SQ)又は皮内(ID)に投与して、クリプトスポリジウムパルバムに対する血清抗体反応を誘発する。これを妊娠中の動物に2回投与すると、血清抗体反応が誘発され、これはその新生仔に初乳及びミルクを介して受動的に伝達される。妊娠中の動物に対するワクチン接種プロトコルは、処置慣行に応じて(ただし、以下のスケジュールは最大の有効性に有利に働く)、妊娠と診断された時から出産までの間に、例えば出産の1カ月前と出産の約3〜5日前に2回投与すること、或いは出産の2カ月前(乳牛の乾乳期と一致する)に投与し、さらに出産前(例えば出産の1〜3週間前のいつか)に追加免疫することを含むことができる。現在の処置慣行では、出産前の3カ月間に産生物を投与することが好ましい。産生物の量は1〜5ml、例えば2mlとすることができる。混合ワクチンは、凍結乾燥部分及び液体部分を有し、注入前にこれらを混合することができる。現場条件下で最大の防御をもたらすために、クリプトスポリジウム抗原を大腸菌/ロタ/コロナ混合ワクチンの成分として添加することができる。
【0144】
下記の試験を実施する。
【0145】
試験A:クリプトスポリジウム・パルブムは、腸管ウイルス及び/又は腸管細菌の病原性を増悪させる。
実験的チャレンジは下記の各群につき3頭の新生子牛を使用する。
1.コロナウイルスのみ
2.コロナウイルス+クリプトスポリジウム・パルブム
3.大腸菌F41のみ
4.大腸菌F41+クリプトスポリジウム・パルブム
5.クリプトスポリジウム・パルブムのみ
6.未処置の対照群
【0146】
生後24時間以内の子牛に経口経路でチャレンジする。使用するチャレンジ材料の量は、臨床症状(機能低下、下痢、脱水など)を引き起こすのに必要な量とし、動物の種類(純粋隔離群の人工哺育子牛又は母獣からの授乳で育つ通常の子牛)によって変わり得る。一般的な臨床症状(体温、様子、脱水、下痢の臨床スコアなど)を収集する。さらに、血清及び排泄の情報も収集する。
【0147】
結果
コロナウイルス又は大腸菌F41の単価による実験的チャレンジでは、新生子牛における腸管疾患の臨床症状は生じない。コロナウイルス又は大腸菌F41とクリプトスポリジウム・パルブムとを、通常臨床疾患を引き起こさないクリプトスポリジウム・パルブムの用量で2重投与すると、腸管疾患の重大な臨床症状を引き起こす。
【0148】
試験B:クリプトスポリジウム・パルブムを含む混合ワクチン(大腸菌K99/F41、ロタウイルス及びコロナウイルス)は、新生子牛における複数の腸管ウイルス及び/又は腸管細菌の同時感染による腸管疾患の病因に対する防御を増強する。
処置群は、下記の通りワクチン接種された30頭の妊娠中の雌牛である。
1.混合(ロタ及びコロナウイルス、大腸菌K99及びF41)、8頭
2.混合+クリプトスポリジウム、8頭
3.未処置の対照群、14頭
実験的チャレンジは下記の通りである。
1.多回チャレンジ(コロナウイルス及びF41+無症状レベルのクリプトスポリジウム・パルブム)
2.歩哨動物
3.未処置
【0149】
子牛に初乳(人工哺乳によるか、又は母獣から授乳される)を与え、チャレンジすべき子牛に生後24時間以内に経口経路でチャレンジする。チャレンジ材料の量は、臨床症状を引き起こすのに必要な量(例えば試験Aで決定した通り)であり、試験Aに記載の通り、使用する動物の種類(純粋隔離群の人工哺育子牛又は母獣からの授乳で育つ通常の子牛)によって変わり得る。一般的な臨床症状(体温、様子、下痢のスコアなど)を収集する。さらに、血清及び排泄の情報も収集する。
計画
ワクチン接種した(混合、混合+クリプトスポリジウム)雌牛、又は対照群の雌牛から生まれた6頭の子牛に、3種の成分(コロナウイルス及びF41+クリプトスポリジウム・パルブム)を含むチャレンジ材料を投与し、3頭の子牛(ワクチン接種していない対照群の雌牛から生まれた)を歩哨動物として残しておく。
【0150】
結果
多回チャレンジ(コロナウイルス及び大腸菌F41+無症状用量のクリプトスポリジウム・パルブム)の状況下で、クリプトスポリジウム・パルブムを含む混合ワクチンを使用すると、混合ワクチン単独よりも優れた防御が得られる。
【実施例12】
【0151】
新生子牛の実験的チャレンジモデルにおけるクリプトスポリジウム・パルブム及びウシロタウイルスによる2重感染の影響
クリプトスポリジウム・パルブム又はウシロタウイルスを単価でチャレンジした後の子牛の臨床症状の重篤度並びに糞便中排泄を、ウシロタウイルス及びクリプトスポリジウム・パルブムで2重チャレンジした後の子牛と比較するようにこの試験を計画する。
【0152】
6頭の子牛からなる4つの群を使用して、4つの群間の臨床症状の発生率の違いを検出することができる十分なデータを収集する。
【0153】
雌牛は、牛舎又は小放牧地内に個別に収容する。新生子牛は、生後できるだけ早くその母獣から引き離し、検査して子牛に付いた糞便又は汚れを除去し、臍の緒を約7%のヨードチンキに浸漬する。次いで、これらの子牛をすぐに収容施設に移し、代謝枠箱(metabolic crate)に個別に収容する。生後6時間以内に子ウシにチャレンジする。
【0154】
子牛に、30%の初乳代用物を含む市販の子牛用ミルクリプレイサーを、全試験について授乳毎に1〜2クォート又は体重の10%の量で1日2回与える。チャレンジの前後2時間以内にミルクを投与することは避けるよう特に注意する。
【0155】
自然の感染経路は経口であるため、チャレンジ物質はすべて食道管を使用して経口投与する。
【0156】
A群:未処置の対照子牛。
B群:抗生物質なしの市販の豆乳60mlで希釈した1〜3×10個のクリプトスポリジウムパルバムオーシスト(Beltsville菌株)。
C群:抗生物質なしの市販の豆乳60mlで希釈した1〜3×10個のクリプトスポリジウムパルバムオーシスト(Beltsville菌株)と、PBS40mlで希釈した10mlのウシロタウイルス接種菌(IND BRV G6P5菌株)との同時接種。
D群:PBS40mlで稀釈した、ウシロタウイルス(IND BRV G6P5菌株)を感染させた子ウシ由来の10mlの糞便濾過物。
【0157】
糞便試料は、代表的な試料が得られるように完全に混合した後、回収用便器から1日1回回収する。
【0158】
スクロースクッション上での遠心分離により、オーシストを子ウシの糞便から分離し、顕微鏡下で細胞計数板(血球計)を使用して計数する。ロタウイルスの排泄については、その糞便を緩衝液で希釈し、Le Centre d'Economie Rurale(CER)社、1 rue du Carmel, B6900 Marloie, BelgiumのELISAキットを使用してロタウイルス抗原を定量する。
【0159】
子牛の臨床症状を、チャレンジ前に、次いでチャレンジ後10日間1日2回観察する。観察項目には、直腸温、全身状態、食欲不振、下痢、脱水、及び死亡が含まれる。
【0160】
機能低下、下痢、及び脱水症状は下記のように分類する。
【0161】
【表1】

【0162】
【表2】

【0163】
【表3】

【0164】
食欲不振は、子牛が2リットル未満しかミルクを飲まないかどうかに基づいて判定する。生後の最初の48時間は、食道管経由で子牛に給餌することができる。各疾患範疇毎に臨床症状がある(1と定める)か、又はない(0と定める)かに基づいて毎日各子牛のスコアを導き出す。直腸温は華氏温度で記録する。
【0165】
死亡した子牛は、C群では7日目と8日目に2頭、B群では7日目に2頭、D群では0頭、A群では3日目に1頭みられた。結果は図7〜13に示される。2種の微生物を投与すると、1種の投与と比べて、臨床的症状及び糞便中の微生物排泄に対する相乗効果が観察される。
【実施例13】
【0166】
大腸菌によって発現されたクリプトスポリジウム・パルブムサブユニットタンパク質C7(P21)及び/又はCP15/60に対する抗体を含むウシ初乳の産生
4つの異なる群れからの妊娠中の乳用子牛を、6つのワクチン接種群、即ちGST−P21、6His−P21、GST−CP15/60、6His−CP15/60、GST−P21+GST−CP15/60、及びプラセボ対照のうちの1つに無作為に割り当てた。乾乳期に入ると、各雌牛に、割り当てられたワクチンを5mlの用量で14日置きに3回皮下投与した。初乳を各雌牛から出産後最初の24〜36時間に3回採取し、標識した。10〜20mlの試料を回収し、その残りを各採取時に個々の容器中で凍結させた。RIDAにより初乳の全IgGレベルを試験した。ELISAによりP21とCp15/60のサブユニットタンパク質の抗体を試験した。ワクチン接種の直後と出産時の両方に、同じサブユニットタンパク質抗体についてELISAによる血清分析を行った。ワクチン接種前に糞便を採取し、ProSpect試験キットを用いてクリプトスポリジウム・パルブムの有無について試験した。試験された試料はすべて、クリプトスポリジウム・パルブムに対して陰性であった。
【0167】
P21に対する初乳抗体
P21抗原を接種したすべての群でP21に特異的な抗体応答が検出された。それとは対照的に、CP15/60を接種した群、及びプラセボ群では、P21に対する抗体応答は検出できなかった(図14参照)。興味深いことに、「混合」群(0.25mgのGST−P21を0.25mgのGST−CP15/60と組み合わせてワクチン接種する)は、GST−P21単価の群(0.5mgのGST−P21をワクチン接種する)と比較したとき、非常に類似するP21応答を示した。0.5mgのHis−P21を投与した群は、0.5mgのGST−P21を投与した群よりもわずかではあるが常に低いP21応答を有し、最も大きな差は搾乳2回目で見られた。個々の値をさらに分析すると、His−P21群では、2頭の非応答雌牛(G418及びM26)、及び搾乳2回目で異常値(搾乳1回目=0.055、搾乳2回目=0.296、搾乳3回目=0.055)を示す雌牛J54を含むことが示された。非応答雌牛はいずれも非常に低い全IgGレベルを有することにも留意されたい。非応答動物に対応する値、及び異常値をこの分析から除外すると、His−P21群の群平均は、GST−P21群と非常に類似するものとなる。
【0168】
CP15/60に対する初乳抗体
CP15/60抗原を含むすべての群でCP15/60に特異的な抗体応答が検出された(図15)。それとは対照的に、P21を接種した群、又はプラセボ群では、Cp15/60に対する抗体応答は検出できなかった。His−CP15/60群、及び0.25mgのGST−P21を0.25mgのGST−CP15/60(混合群)と組み合わせて含む群は、非常に類似する応答を示した。GST−CP15/60単価の群は、そのGST−CP15/60抗原の量が混合群の2倍(0.5mg対0.25mg)であるが、その応答は混合群よりも常に低かった。単価のGST−CP15/60を接種した雌牛は混合群と比べて質の低い初乳を産生するが、この予想外の結果はこうした2群間の遺伝的な差が原因であると想定される。
【0169】
P21に対する血清抗体
0日目ではすべての群は血清陰性であった。P21をワクチン接種した群は、14日目に抗体レベルがGST−P21群よりも有意に低くなるHis−P21群を除きすべて、P21に特異的な類似の抗体応答を示した(図16参照)。それとは対照的に、CP15/60を接種した群、及びプラセボ群では、P21に対する抗体応答は検出できなかった。初乳の場合に見られたのと同様に、0.25mgのGST−P21を含む混合ワクチンは、0.5mgのGST−P21を含むGST−P21単価のワクチンとちょうど同じような結果を示した。各GST−P21ワクチンを投与したそれらの各群は、最初の注射の後、14日目と28日目の値が非常に類似しており安定状態に達した。しかし、His−P21群は28日目までその最高値に達しなかった。初乳の場合に見られたのと同様に、個々の値をさらに分析すると、雌牛G418及びM24は低応答動物であることが示された。対応するその値をこの分析から除外すると、His−P21群の群平均は、GST−P21群と非常に類似するものとなる。最後に、すべてのP21群の出産時に抗体価の類似の減少が観察された。これは、初乳中の免疫グロブリンの活発な移出、及び周産期の免疫抑制が原因である可能性が高い。
【0170】
Cp15/60に対する血清抗体
0日目ではすべての群は血清陰性であった。プラセボ対照はこの試験を通じて陰性のままであった。P21をワクチン接種した群は14日目及び28日目で弱い陽性であった。これは、実験の誤差を反映している可能性が高い(非特異的なバックグラウンド)。Cp15/60をワクチン接種した群は、1回目のワクチン接種後セロコンバージョンを起こした(図17)。第2の注射により抗体応答を高めた。His−Cp15/60群は類似の抗体応答を示した。最後に、すべてのCp15/60群の出産時に抗体価の類似の減少が観察された。これは、初乳中の免疫グロブリンの活発な移出、及び周産期の免疫抑制が原因である可能性が高い。
【実施例14】
【0171】
新生子牛におけるクリプトスポリジウム・パルブムの実験的チャレンジ
分娩を誘発することによって得られた、初乳を与えなかった8頭の肉用子牛を2群に均等に分割し、6日間の試験中各群を隔離室に入れた。各子牛はそれぞれ1つの代謝枠箱に住まわせた。各群に2パイント(約960ml)の初乳を出産の3時間後と12〜15時間後に哺乳瓶で与えた。出産24時間後、子牛はすべて、RIDA(放射免疫拡散法)によって検出された血中IgGレベルが1000mg/dLより大きくなった。チャレンジ群の各子牛にクリプトスポリジウム・パルブムの10個のオーシストを経口投与した。血液試料を毎日採取し、クリプトスポリジウム・パルブムP21及びCp15/60抗原に対する血清抗体、ヘマトクリット、及び全タンパク質について試験した。糞便を1日3回(直腸より)採取し、乾物含有率を測定した。ELISAキットProSpecTにより、糞便中のオーシスト排泄を毎日測定した。体温、全身状態(機能低下など)、食欲不振、脱水状態、糞便の硬さ(下痢など)、及び死亡を含めた臨床症状を毎日評価した(臨床症状のスコアの付け方については実施例12参照)。死亡した、又は安楽死させた子牛はすべて、検死、腸管の分析、並びに腸管のウシロタウイルス、ウシコロナウイルス、大腸菌、サルモネラ属菌(Salmonella spp.)、及びクリプトスポリジウム・パルブムの含有量の分析にかけた。
【0172】
オーシスト排泄
表1は、全オーシストのELISAによるクリプトスポリジウム・パルブムオーシストの排泄の検出を示す。
【0173】
【表4】

【0174】
臨床症状
未処置の対照はすべて、試験期間中健常のままであった。チャレンジ群の子牛はすべて、チャレンジ後4日目までにクリプトスポリジウム症と一致する臨床症状を示した。チャレンジ群中の3頭の子牛が試験の終わる前に死亡した(4日目に1頭、5日目に2頭)。チャレンジ群中の4頭目の子牛は、以前に確立された安楽死の基準を満たしたため試験の最後に(6日目)安楽死させた。体温、機能低下、下痢、食欲不振、及び脱水をモニターし、実施例15に記載の通り特徴付けた。
【0175】
各群の平均体温は、その差がどの時点でも1°F未満であり、チャレンジ群では101.57〜103.5°F、未処置群では101.53〜102.78°Fの範囲にあり、すべて臨床的に正常の範囲内であった。
【0176】
未処置の子牛はすべて、元気で機敏なままであった。チャレンジした子牛は2日目(2/4)に機能低下を示し始め、チャレンジ群中の残りの3頭の子牛が2〜5日目の間機能低下を示し続けた。残りの1頭の子牛が試験の終わりである6日目にまだ機能低下を示していた。
【0177】
チャレンジ群の子牛はすべて、クリプトスポリジウム症と一致する下痢の症状、即ち糞便が黄色がかり、泡立っており、水分が多く、大量であるなどの症状を示した。この群の下痢は2日目に始まり、この実験が終わるまで続いた。未処置の子牛のうち1頭が、一時的な下痢を3日目と、5日目に再び起こしたが、これは試験が終わるまでに解決した。この子牛はクリプトスポリジウム症の他の症状を示さなかったため、この下痢は栄養摂取の結果であった可能性が高かった。
【0178】
3日目の1頭を除き、未処置群の子牛はすべて、食欲旺盛であり、積極的に授乳していた(哺乳瓶)。3日目(その下痢の初日に相当する)に食欲不振となった子牛に、その日だけ食道管付き哺乳瓶(esophageal feeder)を用いて授乳し、次いで通常の哺乳瓶による授乳に戻した。チャレンジ群の子牛はすべて、3日目までに食欲不振となり、試験が終わるまで食欲不振であり続けた。
【0179】
未処置群の子牛はいずれも臨床的脱水を示さなかった。チャレンジ群の1頭の子牛が2日目に臨床的脱水を示し始め、3日目までにこの群の子牛はすべて臨床的脱水となり、試験が終わるまでその状態のままであった。脱水を示す血液パラメータ(ヘマトクリット)の結果を図18に示す。
【0180】
未処置の子牛のヘマトクリットレベルは、1日目の後一定のままであったが、チャレンジした子牛のヘマトクリットは2日目に増加し、4日目、5日目、及び6日目では対照子牛よりも高いままであった。誕生した日(−1日目)における未処置の子牛の平均ヘマトクリットは41.0%であった。それは0日目に低下し、試験の残りの期間では32.0〜37.5%のレベルを維持した。チャレンジした子牛は、誕生した日(−1日目)の平均ヘマトクリットが37.8%であり、次いで0〜3日目に29.5〜35.0%に低下した。チャレンジ後4日目に、平均ヘマトクリットが臨床的に有意な41.7%まで増加した。図18は、ヘマトクリットの毎日の群間の違いを示す。5日目と6日目の値は1頭の子牛についての結果を表す。
【0181】
未処置の子牛の全血漿タンパク質(TP)は、試験を通じて一定のままであり、−1日目(プレチャレンジ)の平均6.45から0日目(チャレンジ24時間後の時点)の5.85の低い値までの範囲であった。チャレンジした子牛では、−1日目の6.4に始まり、2日目(7.0)で最高レベルに達し、試験期間を通じて対照子牛よりも高いままであった。
【0182】
容量パーセント濃度(% of volume)として表した、糞便の乾物含有率は、対照子牛でほぼ一定のままであったが、チャレンジした子牛では2日目に低下傾向(下痢に匹敵するより低い乾物含有率)が始まり、それは試験が終わるまで続いた。チャレンジした子牛は、対照の子牛よりも乾物含有率が6〜39%常に低かった。未処置の子牛の糞便の平均乾物含有率は、出産24時間後の時点での39.9%から2日目朝の試料回収時での51.7%までの範囲であった。チャレンジした子牛の糞便の平均乾物含有率は、出産24時間後の時点での28.4%から2日目朝の試料回収時での41.0%までの範囲であり、その後4日目夕方の試料回収時での9.6%という低い平均値まで徐々に低下した。図19は、糞便乾物含有率の毎日の群間の違いを示す。
【0183】
対照の子牛は、試験期間を通じてクリプトスポリジウム・パルブムの感染に対して陰性のままであった。チャレンジした子牛は、クリプトスポリジウム・パルブムのオーシストを排泄し、クリプトスポリジウム・パルブムをチャレンジした子牛は、クリプトスポリジウム症の臨床症状を示した。未処置の対照は健常のままであった。
【実施例15】
【0184】
子牛へのチャレンジによる様々なクリプトスポリジウム・パルブムのサブユニットタンパク質ワクチンの有効性の実証
対照の雌牛の初乳を与えた子牛に対する、接種した雌牛の初乳を与えた子牛において観察される臨床症状の重篤度の有意な低下に基づいて、6つの群、即ちGST−P21(第1群)、His−P21(第2群)、GST−15/60(第3群)、His−15/60(第4群)、GST−C&+GST−C15/60(第5群)、プラセボワクチン(第6群)の子牛を選択した。各処置群におよそ8頭の動物を割り当てた。第1の初乳摂取の前に、血清を得るために新生子牛の血液を採取し、体重、体温、糞便、及びその他の臨床観察項目(即ち、食欲不振、機能低下、下痢など)を観察した。およそ3時齢で第1の初乳を哺乳瓶又は食道管によって与えた。約12時間後に第2の初乳を投与した。約24時齢でクリプトスポリジウム・パルブム(10個のオーシスト)をチャレンジした。子牛の観察を1日4回行い、その間に血液試料を採取し、体温及び臨床観察項目をモニターし、また糞便の回収を行った。
【0185】
生後24時間後のすべての子牛にクリプトスポリジウム・パルブムの10個のオーシストを経口投与によりチャレンジした。チャレンジの直前に、清潔な哺乳瓶、又は清潔な食道管を用いて子牛に60〜100mlの子牛用ミルクリプレイサーを投与した。これに続いて、チャレンジ材料を投与し、次いでその後40〜100mlの水又は子牛用ミルクリプレイサーで濯いだ。
【0186】
チャレンジの直前に、次いでチャレンジ後の6日間は毎日ほぼ同じ時間に4回、子牛の臨床症状を観察した。臨床観察項目には直腸温、全身状態、食欲不振、下痢、脱水、及び死亡が含まれた。
【0187】
血清
図20に示すグラフのデータを生成するのに使用する、P21抗体を検出するためのELISAは、間接競合ELISAであり、これはOD値が高くなるほど抗体レベルは低くなり、OD値が低くなるほど抗体レベルが高くなる。この試験の子牛は、−1日目は未感作であったが、P21抗体(GST−P21、His−P21、及び混合ワクチン)を含む試験初乳を授乳した後でセロコンバージョンを示した。GST−15/60、His−15/60、及びプラセボ抗体をすべて含む初乳を授乳した子牛では、6日の観察期間を通じてP21抗体に陽性のままであった。
【0188】
Cp15/60抗体を検出するためのELISAは、直接ELISAであり、これは高いOD値は高い抗体レベルに対応し、低いOD値は低い抗体レベルに対応する(図21)。すべての子牛は−1日目では未感作であった。15/60抗体(GST−15/60、His−15/60、及び混合ワクチン)をすべて含む初乳を授乳した子牛は、急速なセロコンバージョンを示した。P21及びプラセボ抗体を含む初乳を授乳したウシの値のわずかな上昇は、よく起こるが、交差反応によるバックグラウンドと想定され、ELISAの限界である。それにかかわらず、P21及びプラセボ抗体を含む初乳を授乳した子牛は、6日の観察期間を通じて陰性のままであった。
【0189】
総疾患スコアのグラフ
総疾患スコアは、この試験で6日間にわたって観察される(1日4回の観察)あらゆる臨床症状(下痢、食欲不振、及び機能低下)の累計である。他のデータと併せると、このグラフからGST−P21ワクチン及びHis−P21ワクチンは防御効果がないことが示された。しかし、GST−15/60ワクチンでは、わずかではあるが臨床症状の有意な減少が示される。この防御は、図22でより明確に分かる。他のワクチンのデータを除外すると、6日の観察期間のほとんどを通じて、GST−15/60抗体を含む初乳を授乳した子牛は、常に疾患に罹りにくい(即ち臨床症状がより少ない)ことが明らかである(図23)。
【0190】
下痢
子牛で観察される下痢の種類に関するスコアを1日に4回つけた。観察時点10では、下痢スコアが1のプラセボ群の子牛が4頭いたため、この観察の全スコアは4となった。どの群の子牛であるかにかかわらず、すべての子牛が下痢の症状を示したが、6日間の試験のほとんどの間で、GST−15/60群では、プラセボ群よりも小さいスコアとなった。群間の差は、特に観察時点6〜11で明らかであった。
【0191】
図24は、この試験のすべての子牛に関する下痢の相対分布を示すクラウドダイヤグラム(cloud diagram)である。このクラウドダイヤグラムは、すべての子牛の相対分布を示し、各子牛の24個の疾患スコアを平均し(各黒塗りの丸は処置群中の1頭の子牛を表す)、次いでそれらの値を平均して処置群の平均を得る(紫塗りの四角で表す)ことによって作成した。複数のデータポイントが同じスペースを占める場合、重なるデータポイントの数を上付き数字によって表す。GST−15/60の平均はプラセボよりも低く、GST−15/60値はより密に集まっている(4個のデータポイントがその群の平均と重なっている)。また、His−15/60群は、その値のすべての集まりがGST−15/60ほど密ではないが、平均がプラセボ群又は他の群よりもずっと低く良い成績であった。
【0192】
食欲不振
試験の2日目の後、2リットル未満のミルクしか授乳せず、食道管を必要とした子牛はいずれも、食欲不振としてスコアを付けた(生後最初の2日間に食欲不振の観察が記録されたが分析せず)。GST−15/60群の子牛は、2頭又は3頭の食欲不振の子牛を含むことが多いプラセボ群と対照的に、試験のほとんどを通じて食欲不振を示さなかった。図25は、すべてのワクチンについてすべての子牛の総食欲不振スコアの相対分布を示すクラウドダイヤグラムを示す。GST−15/60は、最も密な集まり、並びにこの試験におけるすべての群の中で最も低い平均を有する。
【0193】
機能低下
子牛を1日4回観察し、その状態に関するスコアをつけた。GST−15/60群中の健常な子牛の数はプラセボ群よりも多かった。いずれの群の子牛もどの観察においても状態スコア1(無感心)より高いスコアを示さなかったことに留意されたい。即ち、プラセボ群の観察時点21におけるスコア3は、スコア3の子牛1頭ではなく、スコア1の子牛3頭を示す。図26は、各子牛についての総全身状態スコアの分布を示す。GST−15/60群は、その他のワクチン群よりもずっと接近した集合を示し、またプラセボと比べて非常に低い平均を有する。興味深いことに、GST−P21ワクチンのみの結果はプラセボと類似しているが、混合ワクチン群(GST−P21及びGST−15/60からなる)は良い成績であった。この結果から、GST−15/60ワクチンは全身状態を改善することが示唆される。
【0194】
糞便の乾物
全糞便を採取し(毎日4回)、溜め、その日の間に乾燥させた。GST−15/60群の糞便の乾物量は、試験のほとんどの間プラセボ群よりもわずかに多く、すべての動物で症状が現れたが、GST−15/60群で下痢の発生が減少することが示された。図27は、すべてのワクチンについての各子牛の平均糞便乾物スコアを示すクラウドダイヤグラムである。15/60を含むワクチン群はすべて、密な集まり、及びプラセボ群よりも多い平均量を示す。
【0195】
オーシスト排泄
図28は、ELISAキットProSpectによって判定したオーシスト排泄を示す(顕微鏡で直接観察したオーシスト数ではない)。これまでの他の臨床症状(下痢など)において見られたのと同様に、この試験におけるすべての動物で症状が現れた。ただし、His−15/60群のオーシスト排泄はプラセボ群と比べて遅れるように思われる。
【実施例16】
【0196】
ロタウイルス、コロナウイルス、並びに大腸菌K99及びF41を含み、またクリプトスポリジウム・パルブムのGST−CP15/60抗原を含むワクチンの免疫原性及び安全性
この試験の目的は、感染を受けやすい子牛におけるその安全性、及び2種の混合ワクチンによって誘発される抗体応答を評価することであった。この試験の具体的な目的は、クリプトスポリジウム・パルブムのサブユニット抗原の追加により、ウシロタウイルス、ウシコロナウイルス、並びに大腸菌抗原K99及びF41などの他の抗原に対する免疫応答が干渉されるかどうかを判定することであった。こうした疑問に答えるため、2種のワクチンを試験した。両方ともに、アルミニウム/サポニンアジュバントを含め、不活化抗原、即ちウシロタウイルス、ウシコロナウイルス、大腸菌K99及び大腸菌F41を含めた。さらに、ワクチンのうちの1つに、大腸菌中で産生させた、生のクリプトスポリジウム・パルブムのGST−CP15/60サブユニット抗原を含めた。子牛の2つの群にそれらのワクチンをそれぞれ5ml処置するワクチン接種を28日間隔で2回行った。別の2頭の子牛は環境対照として役立った。
【0197】
直腸温
図29は、ワクチン接種群及び対照群における1回目及び2回目のワクチン接種に続いて起こる平均直腸温の変化を示す。2つのワクチン接種群で高体温の遷移相が観察され、これは1回目及び2回目のワクチン接種後24時間以内のピークを有する。1回目のワクチン接種後の直腸温の平均最大上昇(Δmax1=ピーク1のT°−D0のT°)は、混合+クリプトスポリジウム、及び混合のみでそれぞれ1.4℃及び1.3℃であった。Δmax≧2.0℃の子牛はいなかった。2回目のワクチン接種後の直腸温の平均最大上昇(Δmax2=ピーク2のT°−D28のT°)は1.4℃及び1.1℃であった。Δmax≧2.0℃の子牛はいなかった。
【0198】
興味深いことに、対照の子牛もワクチン接種に続いて体温が上昇した。この上昇は限定的であり(平均0.4〜0.5℃)、動物の取り扱いが原因である可能性が高かった。このことから、特にワクチンに帰される最大高体温はおよそ1.0℃であった。
【0199】
局所反応(in vivo)
図30は、1回目のワクチン接種に続いて起こる局所反応の平均サイズの変化を示す。図31は、2回目のワクチン接種に続いて起こる局所反応の平均サイズの変化を示す。混合+クリプトスポリジウムを投与した子牛の1回目のワクチン接種を除いて、すべてのワクチン接種において両方の注射の直後に局所反応が見られた。局所反応は、ワクチン接種後およそ24〜48時間で最大となり、1週間強いままであった。次いで、応答サイズの急速な縮小が観察された。すべての場合において、局所反応は、ワクチン接種後3週間で消失し、又は非常に限定的になった。局所反応は、排出したリンパ節の一時的でわずかな増大を伴うことがあった。ANOVAにより異なる時点での局所反応についてワクチン接種群を比較した(1回目の注射D1、D21;2回目の注射D29、D49)。有意な差は見られなかった。
【0200】
血清
クリプトスポリジウム・パルブムの平均抗体価を図32で示す。予想されるように、クリプトスポリジウムではないワクチンを接種した子牛はすべて、クリプトスポリジウム・パルブムに対する抗体に対して陰性のままであった。1回目のワクチン接種後に、クリプトスポリジウムを接種した6頭のうち3頭でセロコンバージョンが観察された。2回目のワクチン接種後14日目に、ワクチン接種したすべての子牛で強いセロコンバージョンが観察された。Cp15/60の平均抗体価は、D42で2.66であった。1頭の子牛は抗体価1.4の弱応答動物であった。
【0201】
ウシコロナウイルス(BCV)に対する抗体応答のELISA結果を図33に示す。1回目のワクチン接種後14日目に、ワクチン接種したすべての子牛でセロコンバージョンが観察された。ワクチン接種したすべての子牛で、D42(追加のワクチン接種後14日目)のELISA抗体価が非常に高かった。血清中和試験では、ほとんどすべての子牛の血清により、試験したすべての希釈液でウイルスが中和された(抗体価>3.84(log CCID50/ml)(図34)。BCVに対するELISA平均抗体価は、混合+クリプトスポリジウムワクチンのほうが混合ワクチンのみと比べて各時点でおよそ10%低かった。D49でのこの差は有意(p=0.01)であった。
【0202】
ウシロタウイルス(BRV)に対する抗体応答のELISA結果を図35に示す。D28で、混合+クリプトスポリジウム群及び混合群のワクチン接種したものにおいてそれぞれ4/6及び5/5でセロコンバージョンを検出することができた。ワクチン接種したすべての子牛で、D49のELISA抗体価が高かった。D49のELISA抗体価は、混合群(StD=0.12)の方が混合+クリプトスポリジウム群(StD=0.46)よりも均一であり、平均ELISA抗体価はおよそ15%高かった。群間の差(ANOVAを繰り返して測定)は有意であった(p=0.05)。BRVについての中和抗体価の変化を図36に示す。ワクチン接種したすべての子牛で、D14で抗体価が異常に上昇した。これらの抗体価は、D28でより正常な値に低下したが、その時すべての子牛がセロコンバージョンを起こした。D49の平均抗体価(log CCID50/ml)は、混合+クリプトスポリジウム群で1.9であり、混合群のみで2.2であった。このおよそ18%の差は有意であった(p=0.01)。
【0203】
大腸菌F5−K99についてのELISA抗体価の変化を図37に示す。D28で、混合+クリプトスポリジウム群及び混合群のワクチン接種したものにおいてそれぞれ4/6及び3/5でセロコンバージョンを検出することができた。しかし、セロコンバージョンを起こした子牛のELISA抗体価は、混合群よりもずっと高かった。D49の平均抗体価(log OD50%)は、混合+クリプトスポリジウム群で2.56であり、混合群のみで3.91であった。このおよそ40%の差は非常に有意であった(p=0.002)。
【0204】
大腸菌F41についてのELISA抗体価の変化を図38に示す。D28で、両群のワクチン接種したものすべてにおいてセロコンバージョンを検出することができた。D49の抗体価は、混合群のみでさらに均一となり高くなった。D49の平均抗体価(log OD50%)は、混合+クリプトスポリジウム群で2.57であり、混合群のみで3.67であった。このおよそ40%の差は非常に有意であった(p=0.005)。
【0205】
平均して、両方のワクチンは、そのそれぞれの注射後、一時的で、中程度の高体温を誘発した。他に観察された全身反応はなかった。両方のワクチンは、強い局所反応を誘発したが、2週間以内にかなり許容されるサイズにまで縮小した。ワクチンの性質と関係なく、2回目のワクチン接種の後に反応がより顕著であった。
【0206】
両方のワクチンは、それぞれのすべての抗原成分に対する抗体の産生を誘発した。クリプトスポリジウム・パルブムに対する抗体を除いて、抗体応答は常に、混合ワクチンのみのほうが混合+クリプトスポリジウムワクチンよりも高くなった。特に、大腸菌K99及び大腸菌F41に対する抗体をみるとこの差は明確であり、したがって、ワクチン中へのクリプトスポリジウム抗原の添加は、抗体応答が40%(log)低下することに関係している。
【0207】
こうした結果から、クリプトスポリジウム抗原の干渉(特に、大腸菌K99及びF41、場合によってはBRV抗体応答に対する)は重要で、防御に影響を与える恐れがあることが明確に示唆される。したがって、この添加は、大腸菌K99、F41及びBRV画分の抗原用量の再定義を必要とするかもしれない。
【0208】
上記の発明は、例示及び実施例により明確にし且つ理解する目的で詳細に説明したものであり、いくつかの変形形態及び変更形態を実施することができることは当分野の技術者には明らかであろう。したがって、説明及び実施例は、添付の特許請求の範囲によって記述された本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
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【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】プラスミドpJCA155の物理的制限地図を示す図である。
【図2】プラスミドpJCA156の物理的制限地図を示す図である。
【図3】プラスミドpJCA157の物理的制限地図を示す図である。
【図4】プラスミドpJCA158の物理的制限地図を示す図である。
【図5】プラスミドpJCA159の物理的制限地図を示す図である。
【図6】プラスミドpJCA160の物理的制限地図を示す図である。
【図7】クリプトスポリジウム・パルブム若しくはウシロタウイルスのいずれか、又は両方をチャレンジした、或いは未処置の子ウシの糞便中オーシスト数の比較(実施例12)を示す図である。
【図8】実施例12による、子ウシの糞便中のロタウイルス排泄の比較を示す図である。
【図9】実施例12による、子ウシの全身状態の比較を示す図である。
【図10】実施例12による、子ウシの脱水状態の比較を示す図である。
【図11】実施例12による、子ウシの液状糞便の回数の比較を示す図である。
【図12】実施例12による、子ウシの食欲不振状態の比較を示す図である。
【図13】実施例12による、子ウシの直腸温変化の比較を示す図である。
【図14】ワクチン群毎の平均P21(P21)初乳抗体レベルを示す図である。
【図15】ワクチン群毎の平均CP15/60初乳抗体レベルを示す図である。
【図16】ワクチン群毎の平均P21(P21)血清抗体レベルを示す図である。
【図17】ワクチン群毎の平均CP15/60抗体レベルを示す図である。
【図18】チャレンジした動物と未処置の動物とを比較したヘマトクリットレベルを示す図である。
【図19】群間及び毎日の採取時毎の糞便の乾物含有率の毎日の違いを示す図である。
【図20】間接ELISAによるP21の抗体検出アッセイの結果を示すグラフである。
【図21】ELISAによるCP15/60の抗体検出アッセイの結果を示す図である。
【図22】すべてのワクチンについての長期間の動物の総疾患を示すスコアグラフである。
【図23】GST−15/60及びプラセボワクチンのみについての動物の総疾患を示すグラフである。
【図24】すべてのワクチンについての下痢スコアを示すクラウドダイヤグラムである。
【図25】すべてのワクチンについての食欲不振スコアを示すクラウドダイヤグラムである。
【図26】すべてのワクチンについての機能低下スコアを示すクラウドダイヤグラムである。
【図27】すべてのワクチンについての糞便の乾物を示すクラウドダイヤグラムである。
【図28】この試験で使用するすべてのワクチンについてのオーシスト排泄を示す図である。
【図29】直腸温の変化の平均を示すグラフである。
【図30】1回目のワクチン接種に対する平均局所反応(クリプトスポリジウム+混合、混合のみ)を示す図である。
【図31】2回目のワクチン接種に対する平均局所反応(クリプトスポリジウム+混合、混合のみ)を示す図である。
【図32】CP15/60の平均ELISA抗体価を示すグラフである。
【図33】ウシコロナウイルスに対するELISA抗体価を示す図である。
【図34】ウシコロナウイルスに対するウイルス中和抗体価を示す図である。
【図35】ウシロタウイルス対するELISA抗体価を示す図である。
【図36】ウシロタウイルスに対するウイルス中和抗体価を示す図である。
【図37】大腸菌K99抗原に対するELISA抗体価を示す図である。
【図38】大腸菌F41抗原に対するELISA抗体価を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)由来の第1抗原若しくはエピトープ及び/又は第1抗原若しくはエピトープを発現する第1ベクターと、他の腸管病原体由来の第2抗原若しくはエピトープ、及び/又は第1抗原若しくはエピトープを発現し第2抗原若しくはエピトープも発現する第1ベクター、及び/又は第2抗原若しくはエピトープを発現する第2ベクターと、製薬上許容されるビヒクルとを含む、腸管の混合免疫組成物、混合免疫原性組成物、又は混合ワクチン組成物。
【請求項2】
クリプトスポリジウム・パルブム(Cryptosporidium parvum)由来の抗原と、他の腸管病原体由来の抗原とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
クリプトスポリジウム由来の抗原と、ウシ種の他の腸管病原体由来の抗原とを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
クリプトスポリジウム由来の抗原と、イヌ種の腸管病原体由来の抗原とを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
クリプトスポリジウム由来の抗原と、ネコ種の腸管病原体由来の抗原とを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
クリプトスポリジウム由来の抗原と、ウマ種の腸管病原体由来の抗原とを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
腸管病原体由来の抗原が、大腸菌、ロタウイルス、コロナウイルス、クロストリジウム属菌、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
腸管病原体が大腸菌を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
大腸菌由来の抗原が、K99抗原を有する不活化大腸菌、F41抗原を有する不活化大腸菌、Y抗原を有する不活化大腸菌、31A抗原を有する不活化大腸菌、K99抗原、F41抗原、Y抗原、31A抗原、及びそれらの混合物からなる群から選択される抗原を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
大腸菌抗原が、K99抗原を有する不活化大腸菌、K99抗原、及びそれらの混合物からなる群から選択されるK99抗原;及び/又はF41抗原を有する不活化大腸菌、F41抗原、及びそれらの混合物からなる群から選択されるF41抗原を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
腸管病原体がウシコロナウイルスを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項12】
腸管病原体がウシロタウイルスを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項13】
腸管病原体がウェルシュ菌を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項14】
腸管病原体の抗原が、ウェルシュ菌C型及び/又はD型のトキソイドを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
腸管病原体が、大腸菌と、ウシロタウイルスと、ウシコロナウイルスと、ウェルシュ菌とを含む、或いは大腸菌と、ウシロタウイルスと、ウシコロナウイルスとを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項16】
腸管病原体の抗原が、K99抗原を有する不活化大腸菌、F41抗原を有する不活化大腸菌、Y抗原を有する不活化大腸菌、31A抗原を有する不活化大腸菌、K99抗原、F41抗原、Y抗原、31A抗原、及びそれらの混合物からなる群から選択される大腸菌抗原と、ウシ不活化コロナウイルスと、ウシ不活化ロタウイルスと、ウェルシュ菌C型及び/又はD型のトキソイドとを含み、或いはK99抗原を有する不活化大腸菌、F41抗原を有する不活化大腸菌、Y抗原を有する不活化大腸菌、31A抗原を有する不活化大腸菌、K99抗原、F41抗原、Y抗原、31A抗原、及びそれらの混合物からなる群から選択される大腸菌抗原と、ウシ不活化コロナウイルスと、ウシ不活化ロタウイルスとを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
大腸菌抗原が、K99抗原を有する不活化大腸菌、K99抗原、及びそれらの混合物からなる群から選択されるK99抗原、並びに/或いはF41抗原を有する不活化大腸菌、F41抗原、及びそれらの混合物からなる群から選択されるF41抗原を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
P21、Cp23、Cp15/60、CP41、及びそれらの混合物からなる群から選択される、サブユニットのクリプトスポリジウム・パルブム抗原を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項19】
P21、Cp23、Cp15/60、CP41、及びそれらの混合物からなる群から選択される、サブユニットのクリプトスポリジウム・パルブム抗原を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
P21、Cp23、Cp15/60、CP41、及びそれらの混合物からなる群から選択される、サブユニットのクリプトスポリジウム・パルブム抗原を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
Cp23とCp15/60を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
Cp23とCp15/60を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
Cp23とCp15/60を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
P21とCp15/60を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項25】
アジュバントをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
アジュバントをさらに含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項27】
アジュバントがサポニンを含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
アジュバントが水酸化アルミニウムを含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
組成物が水中油型エマルジョンの形である、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
P21若しくはCp23抗原又はそれらのエピトープ、又は第1抗原を発現する第1ベクターを含む第1抗原と、Cp15/60抗原又はそのエピトープ、又は第1抗原及び第2抗原の両方を発現する第1ベクター、又は第2抗原を発現する第2ベクターを含む第2抗原と、製薬上許容されるビヒクルとを含む、クリプトスポリジウム・パルブムに対する免疫組成物、免疫原性組成物、又はワクチン組成物。
【請求項31】
P21若しくはCp23抗原とCp15/60抗原とが、別々の融合タンパク質の形である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
P21とCp15/60を発現するベクターを含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項33】
P21発現する組換えベクターと、Cp15/60を発現する組換えベクターとを含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項34】
Cp23とCp15/60を含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項35】
アジュバントをさらに含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項36】
P21、Cp23、Cp15/60若しくはCP41抗原又はそれらのエピトープ或いはこの第1抗原を発現する第1ベクターを含む第1抗原と、クリプトスポリジウム・パルブム由来の第2抗原又はそのエピトープ或いは第1抗原及び第2抗原を両方発現する第1ベクター又は第2抗原を発現する第2ベクターを含む第2抗原と、製薬上許容されるビヒクルとを含み、第1抗原と第2抗原は互いに異なる抗原である、クリプトスポリジウム・パルブムに対する免疫組成物、免疫原性組成物、又はワクチン組成物。
【請求項37】
腸管疾患に対する新生子牛のウシ免疫化方法であって、新生子牛がクリプトスポリジウム・パルブムに対する移行抗体を有するように、請求項1に記載の組成物を出産前の妊娠中の雌牛に投与することを含む方法。
【請求項38】
組成物を妊娠中に投与された雌牛の初乳及び/又はミルクを新生子牛に与えることをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
成牛及び新生子牛の能動免疫方法であって、該ウシに請求項1に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項40】
組成物を新生子牛に投与することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
組成物を新生子牛に投与することをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
雌牛に投与する前記組成物が抗原若しくはそのエピトープを含み、子牛に投与する前記組成物がベクターを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
雌牛に投与する前記組成物が抗原若しくはそのエピトープを含み、子牛に投与する前記組成物がベクターを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
請求項1に記載の組成物を調製する方法であって、抗原若しくはエピトープ又はベクター、及び担体を混合することを含む方法。
【請求項45】
請求項1に記載の組成物を調製するためのキットであって、それぞれ別々の容器(1種又は複数)に入れた、抗原、エピトープ、又はベクターを含み、場合によっては一緒にパッケージに入れ、さらに場合によっては混合及び/又は投与に関する説明書を含むキット。
【請求項46】
請求項1に記載の組成物を妊娠中の雌牛に投与し、その後前記雌牛から初乳及び/又はミルクを採取することによって得られる高度免疫初乳及び/又はミルク組成物。
【請求項47】
組成物が、初乳及び/又はミルクを凝固させ免疫グロブリンを回収することによって得られる濃縮免疫グロブリンを含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
腸管疾患、腸管症状(1種又は複数)、及び/又は腸管の状態(1種又は複数)、及び/又はこのような疾患、症状(1種又は複数)及び/又は状態(1種又は複数)の原因となっている腸管病原体(1種又は複数)及び/又はクリプトスポリジウム・パルブムを予防し、治療し、且つ/又は制御するための方法であって、請求項46に記載の組成物を新生子牛に投与することを含む方法。
【請求項49】
腸管疾患、腸管症状(1種又は複数)、及び/又は腸管の状態(1種又は複数)、及び/又はこのような疾患、症状(1種又は複数)及び/又は状態(1種又は複数)の原因となっている腸管病原体(1種又は複数)及び/又はクリプトスポリジウム・パルブムを予防し、治療し、且つ/又は制御するための方法であって、請求項47に記載の組成物を新生子牛に投与することを含む方法。
【請求項50】
投与が経口投与である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
投与が経口投与である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
経口投与が、雌牛から新生子牛への授乳によるものである、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
高度免疫初乳及び/又はミルク組成物を調製する方法であって、請求項1に記載の組成物を妊娠中の雌牛に投与すること、及びその後前記雌牛から初乳及び/又はミルクを採取することを含む方法。
【請求項54】
初乳及び/又はミルクを凝固させ免疫グロブリンを回収することにより雌牛から得られるミルク及び/又は初乳中の免疫グロブリンを濃縮することをさらに含み、この濃縮により組成物が前記免疫グロブリンを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
クリプトスポリジウム由来の第1抗原若しくはエピトープ及び/又はこのような抗原若しくはエピトープを発現するベクターと、他の腸管病原体由来の第2抗原若しくはエピトープ及び/又はこのような抗原若しくはエピトープを発現するベクターとを使用して、腸管感染症に対する免疫原性組成物又はワクチン組成物を調製する方法であって、第1抗原若しくはエピトープ及び/又はベクターと、第2抗原若しくはエピトープ及び/又はベクターとを混合することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公表番号】特表2007−502292(P2007−502292A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523366(P2006−523366)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/026146
【国際公開番号】WO2005/016383
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(304040692)メリアル リミテッド (73)
【Fターム(参考)】