説明

クリーナー

【課題】水切れや水はけに優れ、適度な厚みとクッション性があり、歪み難く耐久性に優れたクリーナーを提供する。
【解決手段】多数の織目によって3.5mm四方以下の多数の開口部分が形成された1又は複数の織地Aと、多数の織目を有する1又は複数の織地Bと、織地A及び織地Bの少なくとも一方に連結されて、織地Aと織地Bとの間に空間部Fを形成する空間形成糸Eとを有し、織地Aと織地Bとの間に、中間空隙層部を有する1又は複数の立体多重織地Dを備え、1又は複数の立体多重織地Dは、織地Aの端部と織地Bの端部とが固着一体化されているクリーナー1とした。このクリーナー1によれば、水切れや水はけに優れ、適度な厚みとクッション性があり、歪み難く耐久性を高くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器用、浴室用及び身体洗浄用等に適したクリーナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クリーナーはポリウレタンフォーム単体や、ポリウレタンフォームと嵩高い不織布を貼り合せ、持ちやすい大きさに打ち抜いたり、裁断したりしたものが使用されている。しかしながら、この種のクリーナーでは、ポリウレタンフォーム単体に汚れ落とし性能がないといった問題があった。また、不織布と貼り合せたタイプでは、固くてコップやグラスなど狭くラウンドした食器は洗い難く、しかも、嵩高い不織布が、使用途中で剥離したり毛羽立ちが発生したりして、耐久性がないといった問題があった。
【0003】
そこで、コップやグラスなど狭くラウンドした食器を洗いやすくするために、嵩高い不織布との貼り合せをせず、ポリウレタンフォーム単体を布地で被覆したクリーナーが開発された。しかしながら、いずれの場合においても、水を含み易い軟らかなポリウレタンフォームが使われているため、洗浄後の水切れや水はけが悪く、しばらく放置すると雑菌が繁殖しやすい状態になり、変色するなどの衛生面の問題があり、更には、使用しているうちにポリウレタンフォーム単体が歪んでしまい易く耐久性が悪いといった問題があった。
【0004】
そこで、ポリウレタンフォームを使用せず、例えば、表裏二層のメッシュ状編地を積層したたわしによって水切れ性及び耐空性を向上させたクリーナー(特許文献1参照)が知られている。しかしながら、この種のクリーナーでは、メッシュの開口部分が4mmと大きく、ゴミが付着したり、内部に入り込んだりして衛生的で無いという問題があった。
【0005】
一方で、特許文献2または特許文献3には、表裏の地組織が連結糸で連結された編地を縫製や接着しない状態で使う事によって、水切れ性や耐久性を向上させた布または洗浄具が記載されている。
【特許文献1】実開平4−21359号公報
【特許文献2】特開平5−148736号公報
【特許文献3】特開2002−61056号公報
【特許文献4】特開平08−10468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2または3に記載の布または洗浄具では、布地の端部(周辺部、周囲)に加工処理が施されておらず、洗浄の際に、端部から突き出した連結糸が邪魔になって使い難かった。また、編地を連結している連結糸がつぶれてクッション性が損なわれたり、歪みやすく使用途中で厚みが減少したりするため、使い勝手が悪いという問題があった。さらに、開口部分を大きくして水切れ性を向上させているので、その開口部分から布地の中にゴミが入り、連結糸の部分に細かいゴミが付着して不衛生な状態になり易く、さらに、泡持ち、泡立ちが悪いといったこともあり、このままではクリーナーとして使用できないという問題があった。
【0007】
一方、特許文献4には、立体多重組織のクッション構造体が記載されている。しかしながら、特許文献4に記載のクッション構造体は、凹凸が大きすぎるため、ゴミがクリーナーの表面に溜まりやすいという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、水切れや水はけに優れ、適度な厚みとクッション性があり、歪み難く耐久性に優れたクリーナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記した従来技術における課題を解決するため、鋭意研究に取り組んだ結果、本発明の目的を達成するクリーナーを発明するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係るクリーナーは、数の織目によって3.5mm四方以下の多数の開口部分が形成された1又は複数の第1の織地と、1又は複数の第2の織地と、第1の織地及び第2の織地に連結されて第1の織地と第2の織地との間に空間部を形成する空間形成糸と、を有する1又は複数の立体多重織地を備え、1又は複数の立体多重織地は、第1の織地の端部と第2の織地の端部とが固着一体化されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第1の織地および第2の織地が、空間形成糸に連結された立体多重織地を備えているため、第1の織地と第2の織地との間に空間部が形成される。この空間部によって、クリーナーに必要な機能である泡立ちを生じさせることが出来る。さらに、この空間部が第1の織地および第2の織地を介して外部と連通されているため、水切れ、水はけがよく、衛生的な使用を可能とする。また、この空間部があることによって、適度な厚みやクッション性を得る事もできる。さらに、クリーナーは、立体多重織地の第1の織地の端部と第2の織地の端部とが固着一体化されてなるため、厚みや硬さをコントロールし易くなり、使い勝手が向上し、長期の使用においても変形を起こし難く、耐久性が高くなる。さらに、立体多重織地の第1の織地の端部と第2の織地の端部とが固着一体化されているので、空間形成糸が、第1の織地及び第2の織地の端部から突き出して作業の邪魔になることを防ぎ、利便性を向上できる。また、織地は、繊維素材を選択したり、柄を変えることによって、被洗浄物に応じた剛軟性などをコントロールすることができ、汚れの除去性能を高めたりすることが可能である。
【0012】
特に、本発明では、多数の織目によって3.5mm四方以下の多数の開口部分が形成された第1の織地を用いた立体多重織地を備えるため、水切れや水はけに優れ、適度な厚みとクッション性があり、歪み難く耐久性を高くすることができる。
【0013】
さらに、空間形成糸は、収縮により、第1の織地及び第2の織地を空間形成糸に対して凸状に膨らませて、第1の織地と第2の織地との間に空間部を形成すると好適である。
【0014】
さらに、第1の織地と第2の織地との間に、中間空隙層部が形成されていると好適である。このクリーナーによれば、第1の織地と第2の織地との間に中間空隙層部が形成されているため、クリーナーは、第1の織地と第2の織地との間の中間空隙層部の厚み分の空隙が存在している。この空隙によって、クリーナーに必要な機能である泡立ちを生じさせることが出来る。さらに、この中間空隙層部が第1の織地および第2の織地を介して外部と連通されているため、水切れ、水はけがよく、衛生的な使用を可能とする。また、この中間空隙層部があることによって、適度な厚みやクッション性を得る事もできる。この中間空隙層部では、繊維素材を選択し、連結の間隔や連結の仕方を変えることによって、厚み、水切れ性能、クッション性等をコントロールすることが可能である。
【0015】
さらに、第1の織地は、繊維被覆面積と開口部分との面積比が、1:0.1〜1.5であると好適である。
【0016】
さらに、複数の立体多重織地を備え、第1の織地が表層に配置されるように、複数の立体多重織地により複数層が形成されていると好適である。厚みやクッション性をコントロールしやすくなり、使い勝手が向上し、長期の使用においても変形を生じさせ難く耐久性が高くなる。
【0017】
さらに、単数の立体多重織地を備え、立体多重織地により単層が形成されていると好適である。
【0018】
さらに、第1の織地は、空間形成糸に対して20〜70度の角度で連結されていると好適である。
【0019】
さらに、第1の織地及び第2の織地は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維もしくはポリトリメチレンテレフタレートを主成分とした繊維で構成されていると好適である。
【0020】
さらに、空間形成糸は、20%以上収縮する繊維が10〜50wt%含まれていると好適である。
【0021】
さらに、第1の織地の端部と第2の織地の端部とが、縫製により固着一体化されていると好適である。
【0022】
さらに、第1の織地の端部と第2の織地の端部とが、融着により固着一体化されていると好適である。
【0023】
さらに、4〜50mmの厚みを有すると好適である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、水切れや水はけに優れ、適度な厚みとクッション性があり、歪み難く耐久性に優れたクリーナーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るクリーナーの一例を模式的に示す断面図である。図2は、本発明の実施形態に係るクリーナーの一例を模式的に示す断面図である。図3は、本発明の実施形態に係るクリーナーの一例を模式的に示す断面図である。図4は、立体多重織地の構造を説明するための断面図である。
【0026】
図1及び図2に示されるように、本実施形態に係るクリーナー1は、多数の織目によって多数の開口部分が形成された表面の織地(第1の織地)Aと、多数の織目を有する裏面の織地(第2の織地)Bと、織地A及び織地Bに連結されて織地Aと織地Bとの間の中間空隙層Gに配置される織地Cと、織地A,織地B及び織地Cに連結されて織地Aと織地Bとの間に空間部を形成する空間形成糸Eと、を有する立体多重織地Dを備える。図において、白丸(○)は、織地の緯糸を示しており、この白丸(○)を囲む線は、織地の経糸を示している。そして、空間形成糸Eは、経糸として各織地に連結されている。
【0027】
図1に示されるクリーナー1aは、織地Aと織地Cとが、所定の間隔で設けられた連結部X1において連結されており、織地Cと織地Bとが、所定の間隔で設けられた連結部X2において連結されている。また、クリーナー1は、織地Aと織地Cとの間に空間形成糸E1が配置されており、織地Cと織地Bとの間に空間形成糸E2が配置されている。そして、空間形成糸E1は、連結部X1において織地Aおよび織地Cに連結されており、空間形成糸E2は、連結部X2において織地Cおよび織地Bに連結されている。
【0028】
この空間形成糸E1及び空間形成糸E2は、高収縮の繊維で形成されている。そして、空間形成糸E1及び空間形成糸E2が、織地A,織地B,織地Cに連結された状態で収縮され、隣接する連結部X1の間隔が狭まることで、織地Aと織地Cとの間に空間部F1が形成されている。同様に、隣接する連結部X2の間隔が狭まることで、織地Cと織地Bとの間に空間部F2が形成されている。また、空間形成糸E1及び空間形成糸E2により、織地Aと織地Bとの間に、1層の中間空隙層部G1が形成されている。
【0029】
図2に示されるクリーナー1bは、織地Aと織地C1とが、所定の間隔で設けられた連結部X3において連結されており、織地C1と織地C2とが、所定の間隔で設けられた連結部X4において連結されており、織地C2と織地Bとが、所定の間隔で設けられた連結部X5において連結されている。また、クリーナー1は、織地Aと織地C1との間に空間形成糸E3が配置されており、織地C1と織地C2との間に空間形成糸E4が配置されており、織地C2と織地Bとの間に空間形成糸E5が配置されている。そして、空間形成糸E3は、連結部X3において織地Aおよび織地C1に連結されており、空間形成糸E4は、連結部X4において織地C1および織地C2に連結されており、空間形成糸E5は、連結部X5において織地C2および織地Bに連結されている。
【0030】
この空間形成糸E3,空間形成糸E4及び空間形成糸E5は、高収縮の繊維で形成されている。そして、空間形成糸E3,空間形成糸E4及び空間形成糸E5が、織地A,織地B,織地C1,織地C2に連結された状態で収縮され、隣接する連結部X3の間隔が狭まることで、織地Aと織地C1との間に空間部F3が形成されている。同様に、隣接する連結部X4の間隔が狭まることで、織地C1と織地C2との間に空間部F4が形成されており、隣接する連結部X5の間隔が狭まることで、織地C2と織地Bとの間に空間部F5が形成されている。なお、図4は、空間形成糸E4及び空間形成糸E5が収縮される前の状態を示したクリーナーの断面図である。また、空間形成糸E3,空間形成糸E4及び空間形成糸E5により、織地Aと織地Bとの間に、2層の中間空隙層部G2が形成されている。なお、図2では、クリーナー1bの最外層が、袋状の織地で覆われた状態を示している。
【0031】
図3に示されるクリーナー1cは、図1のクリーナー1aや図2のクリーナー1bとは異なり、中間空隙層部、及び中間空隙層部に配置される織地を備えないクリーナーを示している。このクリーナー1cは、織地Aと織地Bとが、所定の間隔で設けられた連結部X6において連結されている。また、クリーナー1は、織地Aの表面側に空間形成糸E6が配置されており、織地Bの裏面側に空間形成糸E7が配置されている。そして、空間形成糸E6は、所定の間隔で設けられた連結部X7において織地Aに連結されており、空間形成糸E7は、所定の間隔で設けられた連結部X8において織地Bに連結されている。
【0032】
この空間形成糸E7及び空間形成糸E8は、高収縮の繊維で形成されている。そして、空間形成糸E7及び空間形成糸E8が、織地A及び織地Bに連結された状態で収縮され、隣接する連結部X7及び連結部X8の間隔が狭まることで、織地Aと織地Bとの間に空間部F6が形成されている。
【0033】
なお、クリーナー1は、立体多重織地Dが単体で構成されてもよく、立体多重織地Dが複数に積層されて構成されてもよい。そして、クリーナー1の端部、すなわち、立体多重織地Dの端部では、1または複数の織地Aの端部と、1または複数の織地Bの端部とが、固着一体化されている。
【0034】
ここで、図4を参照して、図1に示したクリーナー1aの立体多重織地Dを例に、立体多重織地Dの製造方法について説明する。図4に示すように、まず、織地Aと織地C、及び、織地Cと織地Bとに、それぞれ高収縮繊維が含まれた空間形成糸E1及び空間形成糸E2を連結させる。その後、熱を加えるなどして空間形成糸E1及び空間形成糸E2を収縮させると、図1に示すように、隣接する連結部X1及び連結部X2の間隔が狭まり、織地A、織地C及び織地Bが、それぞれ空間形成糸E1及び空間形成糸E2に対して凸状に膨らむ。そして、織地Aと織地Cとの間に空間部F1が形成され、織地Cと織地Bとの間に空間部F2が形成され、織地Aと織地Cとの間に、中間空隙層部G1が形成される。このようにして、立体多重織地Dが製造される。
【0035】
なお、本実施形態では、一種類の立体多重織地Dが単層で形成される態様で説明するが、本発明は、立体多重織地Dが1種類もしくは2種類以上で複数層に積層された態様であってもよい。更に、本実施形態では、立体多重織地Dに用いられる織地A、織地B及び空間形成糸Eは、何重に形成されてもよく、二重や、適度な厚みやクッション性が得られる三重や四重以上に形成されてもよい。
【0036】
クリーナー1は、織地Aが表面になるようにして形成される。織地Aの繊維素材は、特に限定されるものではなく、被洗浄物等に応じて選択することができる。例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ビニロン等の合成繊維や再生繊維、絹、ウール、木綿といった天然繊維のいずれでもよい。
【0037】
織地Aの開口部分は、衛生面の点から、水切れ性がよく、食物や髪の毛などが中に入り難くする為に、3.5mm四方以下、すなわち、略菱形の開口部分の一辺の寸法が3.5mm以下とすると好ましい。更に、水切れ性を良くし、食物や髪の毛などが中に入り難くする為に、開口部分は0.1〜3.0mm四方とすると更に好ましい。また、クリーナー1の表面に汚れが溜まり難く、しかも、凹凸による汚れ落と性能を付与するには、織地Aの凹凸を0.1〜2.0mmにすると更に好ましい。
【0038】
空間形成糸Eは、20%以上収縮する繊維が10〜50wt%含まれた繊維で構成される。そして、クリーナーとしてのクッション性や弾力性の観点から、空間形成糸Eが収縮することにより、好ましくは、空間形成糸Eに対して織地A、織地C及び織地Bが、それぞれ20〜70度の角度で斜めに連結されることが好ましい。
【0039】
中間空隙層部Gに配置される織地Cの繊維素材は、クッション性を良くし、歪み難くするために、例えば、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、塩化ビニリデン、ビニロン等の合成繊維のモノフィラメントが好ましい。特に、長期間使用するためには、弾性率が低く、適度な弾性回復率を有するポリトリメチレンテレフタレート繊維もしくはポリトリメチレンテレフタレートを主成分とした繊維が更に好ましい。そして、弾性率が低く、適度な弾性回復率を有するためには、主成分であるポリトリメチレンテレフタレートを20%以上含有することが好ましい。また、織地Cは、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、もしくはポリトリメチレンテレフタレートを主成分とした繊維が30%以上含まれて構成されていることが好ましい。
【0040】
このように立体多重織地Dの織地Aや織地Cをコントロールすることによって、クリーナーに適した厚みやクッション性を得ることができる。
【0041】
織地A、織地B及び織地Cを単層もしくは積層させて得られるクリーナー1の厚みは4〜50mmが好ましい。さらに、コップやグラスのような細長い形態の被洗浄物をさらに洗いやすくし、手になじみやすくするために、5〜40mmの厚みとするのがより好ましく、6〜30mmの厚みとするのが更に好ましい。
【0042】
表裏面を構成する織地A及び織地Bの織組織は特に限定されない。表面を起毛して肌触り及び泡立ち性を良好にする等の改良を行う事が出来る。
【0043】
裏面の織地Bの繊維素材は、特に限定はしないが、クリーナーの泡立ち性、泡持ち性を向上させる為には、仮撚加工糸等の捲縮を有する嵩高な糸を用いる事が好ましい。加えて、更に泡持ち性を向上させるには、立体多重織地Dを積層する間(立体多重織地Dと立体多重織地Dの間)に、布、不織布、スポンジ等を挟み製品として使用する事も望ましい。
【0044】
表面の織地Aの繊維素材は、特に限定しないが、クリーナーとして使用時の水切れ性を良好とする為には、100デシテックスから700デシテックスのマルチフィラメントを使用する方が紡績糸や嵩高仮撚加工糸を使用するよりも水切れ性は良く、汚れ落ち性能が高い。このような、多重織りは、豊田自動織機社製JAT710やソメット社製テーマIIなどで製造可能である。
【0045】
立体多重織地Dは、織地Cや空間形成糸Eが立体多重織地Dのカットした断面から出ないように、かつ、織地A、織地B及び織地Cを積層させた立体多重織地Dを固着一体化するため、その周縁部(端部)を加工する必要がある。好ましい態様とするために、積層した織地A、織地B及び織地Cの周縁部の加工方法としては、縫製、高周波、超音波もしくは熱などによって融着することが好ましい。固着一体化とは、立体多重織地D同士及び織地A、織地B及び織地Cを縫製もしくは融着によって密着及び固定させた状態をいう。また、固着一体化は、織地C及び空間形成糸Eが立体多重織地Dのカットした断面から出ないような形態にすることや、立体多重織地D同士及び織地Aと織地Bとの間に細かなゴミが入り込まないような形態にすることをいう。縫製により固着一体化する場合は、本縫い1本針にて2〜8針/cmピッチで縫製する事が好ましく、更に、端部のはがれ等が発生しないようにするために、本縫い1本針にて3〜7針/cmピッチで縫製することが更に好ましい。更に、クリーナーの形状を安定化させるために、クリーナーの中央部等において、積層させた織地のうち表裏面の織地の一部を、糸等で縫製したり、熱融着したりしてもよい。
【0046】
また、二枚以上積層する方法としては、得られた立体多重織地Dの表面同士、裏面同士、表面と裏面の組み合わせ等適宜選定して製品化すればよい。例えば、得られた立体多重織地Dを折り畳んで端部を縫製することにより得られる製品は、表面側が織地Aで、折り畳まれる側が織地Bとなるように構成されることが好ましい。また、表裏面を構成する各織地のどちらか一方又は両方に、練り込みタイプの抗菌糸を用いる事が好ましい。練り込みタイプの抗菌剤は、安全性の高いものが好ましく、例えば銀化合物(酸化銀など)などが好ましく、練り込み濃度は、0.01〜3.0wt%が好ましい。また、抗菌糸を用いるか否かに拘らず、表裏面を構成する各織地のどちらか一方又は両方に、抗菌加工処理を施す事も好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0048】
[実施例1]
クリーナー1の織地は、高収縮繊維である帝人(株)製パラドックス(登録商標) 500T/48fを経糸とした空間形成糸Eを2層、ポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント390Tの織地(織地A、織地C、織地B)を3層として4重織りとして、緯糸に4層全てにポリエチレンテレフタレートモノフィラメント400T/180fで織り上げた。得られた織物を150℃2分の乾熱でセットし、経糸の高収縮繊維(空間形成糸E)を30%収縮させて厚みが20mm、織地(織地A、織地C、織地B)の経糸が空間形成糸Eに対して60度になるような立体多重織地Dを得た。得られた立体多重織地Dを15cm×8cmにカットし、端部を縫製した。
【0049】
得られたクリーナー1の表面の凹凸は、1.8mmあり、マイクロスコープでランダムに5箇所を選定し測定した開口部分の平均は0.3mmであった。
【0050】
[実施例2]
クリーナー1の織地は、高収縮繊維である帝人(株)製パラドックス(登録商標) 500T/48fを経糸とした空間形成糸Eを3層、ポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント200Tの織地(織地A、織地C、織地B)を4層、最外層にポリエチレンテレフタレートの仮撚り加工糸360t/96fとして、各層36本/インチで、5重織りとして、緯糸に4層全てにポリエチレンテレフタレートモノフィラメント400Tで織り上げた。得られた立体多重織地Dを150℃乾熱でセットし、経糸の高収縮繊維(空間形成糸E)を30%収縮させて厚みが25mm、織地(織地A、織地C、織地B)の経糸が空間形成糸Eに対して50度になるような立体多重織地Dを得た。得られた立体多重織地Dを15cm×8cmにカットし、端部を縫製した。
【0051】
得られたクリーナー1の表面の凹凸は、1.0mmあり、マイクロスコープでランダムに5箇所を選定し測定した開口部分の平均は0.1mmであった。
【0052】
[実施例3]
クリーナー1の織地は、高収縮繊維である帝人(株)製パラドックス(登録商標) 500T/48fを経糸とした空間形成糸Eを3層、ポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント200Tの織地(織地A、織地C、織地B)を4層、最外層に倦縮率75%のアクリル紡績糸20綿番手として、各層36本/インチで、5重織りとして、緯糸に4層全てにポリエチレンテレフタレートモノフィラメント400Tで織り上げた。得られた立体多重織地Dを140℃乾熱でセットし、経糸の高収縮繊維(空間形成糸E)を30%収縮させて厚みが18mm、織地(織地A、織地C、織地B)の経糸が空間形成糸Eに対して45度になるような立体多重織地Dを得た。得られた立体多重織地Dを15cm×8cmにカットし、端部を縫製した。
【0053】
得られたクリーナー1の表面の凹凸は、0.7mmあり、マイクロスコープでランダムに5箇所を選定し測定した開口部分の平均は0.1mmであった。
【0054】
[比較例1]
クリーナーは、ウレタン発砲体をポリエステル製の織地で被覆してある15cm×8cm 厚み 2.5cmのスポンジ(市販品)。
【0055】
[比較例2]
クリーナーは、ウレタン発砲体とナイロン不織布で貼りあわせてあるスポンジ(市販品)。
【0056】
[比較例3]
18ゲージの二列の針列を有するダブルラッセル機を使用して、表裏二層のメッシュ編地を形成する繊維に360d/3fのポリ塩化ビニリデン繊維を使用し、経糸に110dのナイロンモノフィラメント繊維を使用して目付け370g/m2の編地が得られた。この編地を20cm×15cmに裁断し、二つ折りにし、周囲を縫製する。これによって作製されたクリーナーの厚さは8mm、開口部分は4mm四方、繊維被覆面積と開口部分の面積比が繊維被覆面積1に対して1.7となった。
【0057】
以上の実施例1〜3および比較例1〜3について、以下に説明する水切れ、繰返し圧縮ひずみ試験、使用中の剥がれ、使用中のゴミの付着、使用中の汚れのかきとり性、泡立ち姓、洗剤保持性の各観点について測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0058】
<水切れ>
水温25℃の水に5分浸漬させた後、取り出し、手で軽く絞った後 20℃、40%RH環境下でつるした状態で乾燥させ、完全に乾燥するまでの時間を測定した。表1中の評価は以下の通りである。
◎・・・4時間以内に乾燥した
○・・・4〜8時間の間に乾燥した
×・・・8時間を超えて乾燥した
【0059】
表1に示されるように、比較例3では、乾燥時間が4時間以内であったが、比較例1及び比較例2では、乾燥時間が8時間より長かった。これに対し、実施例1〜3では、何れも、乾燥時間が4時間以内と、比較的短い時間で乾燥することが分かった。
【0060】
<繰返し圧縮ひずみ試験>
JIS K 6400 第4部:圧縮残留ひずみ及び繰返し圧縮ひずみB法に準拠して、繰返し圧縮ひずみを測定した。表1中の評価は以下の通りである。
◎・・・0.1〜8.0%
○・・・8.1〜12.0%
×・・・12.1%以上
【0061】
表1に示されるように、比較例2及び比較例3では、繰返し圧縮ひずみが8.1〜12.0%であり、比較例1では、繰返し圧縮ひずみが12.1%以上となった。これに対し、実施例1〜3では、何れも、繰返し圧縮ひずみが0.1〜8.0%と、歪み難いことが分かった。
【0062】
<使用中の剥がれ>
クリーナーとして1ヶ月間使用後にほつれや剥がれがあるかどうかを目視で確認した。表1中の評価は以下の通りである。
◎・・・ほつれや剥がれは確認されなかった
×・・・ほつれや剥がれが確認された
【0063】
表1に示されるように、比較例1及び比較例3では、ほつれや剥がれは確認されなかったが、比較例2では、ほつれや剥がれが確認された。これに対し、実施例1〜3では、何れも、ほつれや剥がれは確認されなかった。
【0064】
<使用中のゴミの付着>
クリーナーとして1ヶ月間使用後にご飯粒等ゴミの付着があるかどうかを目視で確認した。表1中の評価は以下の通りである。
◎・・・ゴミの付着は、ほとんど確認されなかった
○・・・ゴミの付着が確認されたが、微量であった
×・・・ゴミの付着が確認された
【0065】
表1に示されるように、比較例1では、ゴミの付着がほとんど確認されなかったが、比較例2では、微量のゴミの付着が確認され、比較例3では、ゴミの付着が確認された。これに対し、実施例1〜3では、何れも、ゴミの付着がほとんど確認されなかった。
【0066】
<使用中の汚れのかきとり性>
ガラス板にご飯粒2gとサラダオイル2gを約4cm2に均一に200℃20分で固めたものを濡らしたクリーナーで掻き落した回数を確認した。表1中の評価は以下の通りである。
◎・・・ゴミは、1〜2回の繰り返し洗いにより掻き取れた
○・・・ゴミは、3〜5回程度の繰り返し洗いにより掻き取れた
×・・・ゴミは、5回以上の繰り返し洗いでも掻き取れなかった
【0067】
表1に示されるように、比較例2では、1〜2回の繰返し洗いによりゴミを掻き取ることができたが、比較例1及び比較例3では、5回以上の繰返し洗いでもゴミを掻き取ることができなかった。これに対し、実施例1〜3では、何れも、1〜2回の繰返し洗いによりゴミを掻き取ることができた。
【0068】
<泡立ち性>
市販の中性洗剤を1cc濡らしたクリーナーに滴下し、片手で10回揉んだ。表1中の評価は以下の通りである。
◎・・・泡立ちが、クリーナー上で高さ3mm以上の泡の高さにて観察された
○・・・泡立ちが、クリーナー上に高さ1〜3mmの泡の高さにて観察された
×・・・泡立ちが、クリーナー上に高さ1mmより低い泡の高さにて観察された
【0069】
表1に示されるように、比較例1〜3及び実施例1〜3の全てにおいて、クリーナー上で泡の高さが3mm以上の泡立ちを観察することができた。
【0070】
<洗剤保持性>
市販の中性洗剤を1cc濡らしたクリーナーに滴下し、サラダオイル2ccで汚した直径約15cmの平皿を連続にて洗った枚数を数えた。表1中の評価は以下の通りである。
◎・・・平皿を連続8枚以上洗えた
○・・・平皿を連続4枚以上洗えた
×・・・平皿を連続4枚洗えなかった
【0071】
表1に示されるように、比較例1及び比較例2では、平皿を連続して8枚以上洗うことができたが、比較例3では、平皿を連続して8枚以上洗うことができなかった。これに対し、実施例1〜3では、何れも、平皿を連続して8枚以上洗うことができた。
【0072】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、食器用クリーナー、浴室用クリーナー及び身体洗浄用具に関する製品として広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に係るクリーナーの一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るクリーナーの一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るクリーナーの一例を模式的に示す断面図である。
【図4】空間形成糸E4及び空間形成糸E5が収縮される前の状態を示したクリーナーの断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1…クリーナー、A…織地(第1の織地)、B…織地(第2の織地)、C…織地、D…立体多重織地、E…空間形成糸、F…空間部、G…中間空隙層部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の織目によって3.5mm四方以下の多数の開口部分が形成された1又は複数の第1の織地と、1又は複数の第2の織地と、前記第1の織地及び前記第2の織地に連結されて前記第1の織地と前記第2の織地との間に空間部を形成する空間形成糸と、を有する1又は複数の立体多重織地を備え、
1又は複数の前記立体多重織地は、前記第1の織地の端部と前記第2の織地の端部とが固着一体化されていることを特徴とするクリーナー。
【請求項2】
前記空間形成糸は、収縮により、前記第1の織地及び前記第2の織地を前記空間形成糸に対して凸状に膨らませて、前記第1の織地と前記第2の織地との間に空間部を形成することを特徴とする請求項1に記載のクリーナー。
【請求項3】
前記第1の織地と前記第2の織地との間に、中間空隙層部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクリーナー。
【請求項4】
前記第1の織地は、繊維被覆面積と前記開口部分との面積比が、1:0.1〜1.5であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のクリーナー。
【請求項5】
複数の前記立体多重織地を備え、
前記第1の織地が表層に配置されるように、複数の前記立体多重織地により複数層が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のクリーナー。
【請求項6】
単数の前記立体多重織地を備え、
前記立体多重織地により単層が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のクリーナー。
【請求項7】
前記第1の織地は、前記空間形成糸に対して20〜70度の角度で連結されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のクリーナー。
【請求項8】
前記第1の織地及び前記第2の織地は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維もしくはポリトリメチレンテレフタレートを主成分とした繊維で構成されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のクリーナー。
【請求項9】
前記空間形成糸は、20%以上収縮する繊維が10〜50wt%含まれていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のクリーナー。
【請求項10】
前記第1の織地の端部と前記第2の織地の端部とが、縫製により固着一体化されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のクリーナー。
【請求項11】
前記第1の織地の端部と前記第2の織地の端部とが、融着により固着一体化されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のクリーナー。
【請求項12】
4〜50mmの厚みを有することを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載のクリーナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−247789(P2009−247789A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102601(P2008−102601)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】