説明

クリーニングパッド

クリーニング器具と共に硬質表面を清浄するためのクリーニングパッドが提供される。クリーニングパッドは、明確な高摩擦領域と低摩擦とを有し得る。クリーニングパッドはまた、明確な親水性領域と疎水性領域とを有し得る。
クリーニング器具及びクリーニングパッドを用いて、器具及びパッドが床面と接触していないときに洗浄溶液を床面に適用し、次いで床面をパッドで拭くことによって、床面を清浄する方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面から汚れ/ごみを除去するのに有用であって、多様なクリーニング器具と共に使用可能な、クリーニングパッドに関する。クリーニングパッドは、高摩擦領域(単数又は複数)と低摩擦領域(単数又は複数)を有する「機能性」表面を持つ下部層を含む。本発明はさらに、硬質表面を清浄するためにクリーニングパッドをクリーニング器具と共に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
文献には、セラミックタイル床、硬木質床、カウンター上面などの硬質表面を清浄可能な製品が多数存在する。床面を清浄することに対して、また特に洗浄溶液を用いて床面を清浄することに対して、清浄作業中にクリーニングパッドの取付けを維持するための保持手段を有するモップヘッドに回転可能に接続されたハンドル、及び洗浄溶液を床表面に分配するための、ハンドルに接続された液体放出機構を含む、多数の装置が説明されている。
【0003】
これらの装置と共に使用される典型的な使い捨てクリーニングパッドは、下部層(フロアシート又は磨き層とも称される)及び吸収性コアを含む。この下部層は、清浄作業中、硬質表面と接触する表面(通常は下面)である、「機能性」表面を含む。
【0004】
「湿潤」クリーニング装置の一例は、プロクター・アンド・ギャンブル社(The Procter & Gample Company)が販売している、スウィファー・ウェットジェット(SWIFFER WETJET)(登録商標)クリーニング器具であり、これは、約0.3m2の範囲に送達される微細な液滴のスプレーを生成する。スウィファー・ウェットジェット(SWIFFER WETJET)(登録商標)器具は、好ましくは、硬質表面から除去した汚れた溶液を吸収して閉じ込めるための高い吸収能力を有する、非水溶性かつ水膨潤性の超吸収性ゲル化ポリマーを含む吸収性コアを有する、スウィファー・ウェットジェット(SWIFFER WETJET)(登録商標)クリーニングパッドなどの、使い捨て吸収性クリーニングパッドと共に使用される。この種のパッドの前述の器具との組み合わせは、洗浄溶液を広い面積に広げるという意味で最適化され、パッドは、パッドから絞り出され、硬質表面に再び放出される汚れた溶液が最小限の量だけになるように設計される。
【0005】
このようなクリーニング器具の別の例は、クロロックス社(The Clorox Company)が販売している、保存容器に脱着可能に取り付けられる液体放出機構を備える、クロロックス(CLOROX)(登録商標)レディモップ(READY-MOP)(登録商標)クリーニング器具である。この液体放出機構は、保存容器内の液体のカラムによるポテンシャルエネルギーのみを用いて、溶液のたまりを器具の前にある硬質表面上に分配する。この器具は、主にセルロース性材料で作製された吸収性コアを有する、レディモップ(READY-MOP)(登録商標)クリーニングパッドなどの使い捨てクリーニングパッドと共に使用できる。このパッドは、比較的低い吸収能力を有し、ウェットジェット(WETJET)(登録商標)クリーニングパッドと比較して、より多くの汚れた溶液を硬質表面上に放出する傾向がある。
【0006】
スウィファー・ウェットジェット(SWIFFER WETJET)(登録商標)タイプのクリーニングパッドは、クロロックス(CLOROX)(登録商標)レディモップ(READY-MOP)(登録商標)器具などの、洗浄溶液を小さい面積に送達する器具と共に使用した場合、このパッドをウェットジェット(WETJET)(登録商標)器具と共に使用した場合と同じ利益を提供すると考えられる。しかしながら、この器具は洗浄溶液を比較的小さい面積に分配するためにこのパッドの清浄効果が十分に最適化されないことが見出されている。
【0007】
したがって、本発明の一目的は、溶液を比較的小さい面積に送達するクリーニング器具と共に使用できる、最適化されたクリーニングパッドを提供することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の別の目的は、清浄すべき表面の比較的小さい面積内に洗浄溶液を送達すると考えられるクリーニング器具を、前述のいずれかの負の影響(例えば、低い吸収能力、及び液体の放出)を及ぼすことなく前述の超吸収型クリーニングパッドと同じ利益をもたらすクリーニングパッドと共に使用して、硬質表面を清浄する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、多様なクリーニング器具と共に使用可能な使い捨てクリーニングパッドに関する。
一実施形態では、使い捨てクリーニングパッドは、下部層及び下部層の上に配置された吸収性層を有する。下部層の下面は、高摩擦領域と低摩擦領域とを有する機能性表面を含む。
別の実施形態では、使い捨てクリーニングパッドの下部層は、親水性材料から作製される第1層と、疎水性材料から作製され、第1層の上に配置された第2層を含む。
別の実施形態では、下部層の下面は、高摩擦領域及び低摩擦領域を有する機能性表面を含み、高摩擦領域は、少なくとも約0.35の「低適用量動摩擦係数」を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書で引用されるすべての文献は、その関連部分において本明細書に参考として組み込まれており、いずれの文献の引用も、それが本発明に関連する先行技術であるとの容認として解釈すべきでない。
【0011】
本明細書全体にわたって記載されるあらゆる最大数値限定は、それより小さいあらゆる数値限定も、本明細書に明示的に記載されたものとして包含されると理解すべきである。本明細書全体を通じて記載されるあらゆる最小数値限定は、それより大きいあらゆる数値限定を、それらが本明細書に明確に記載されているかのように含む。本明細書全体を通じて記載されるあらゆる数値範囲は、そのような広い数値範囲内に入るそれよりも狭いあらゆる数値範囲を、それらがすべて本明細書に明確に記載されているかのように含む。
【0012】
他に指定がない限り、本明細書の明細、実施例、及び請求の範囲におけるすべての割合、比率及び百分率は重量基準であり、すべての数値限定は、当該技術分野において許容可能な通常の程度の精度で使用される。
本発明の好ましい実施形態についてここから詳細に説明するが、その例は添付図により例示し、添付図において、同じ数字は全ての図において同じ数字を示し、下二桁が同じ参照番号(例えば、20と120)は類似の要素を意味する。
【0013】
I.定義
本明細書で使用する「直接流体連通」という用語は、中間に入れられた層による実質的な蓄積、輸送、又は制限なしに、流体が2つのクリーニングパッドの構成要素又は層(例えば、フロアシート及び吸収層)の間を容易に移動できることを意味する。例えば、ティッシュ、不織布ウェブ、構築接着剤などは、流体が1つの構成要素又は層から他の構成要素又は層まで流体が通るのを実質的に妨げないか又は制限しない限り、「直接流体連通」を維持しながら、別個の2つの構成要素の間に存在できる。
【0014】
本明細書で使用する「x−y寸法」という用語は、クリーニングパッドの厚さ(通常、z寸法)に直交する平面、又はその構成要素を指す。x寸法及びy寸法は、クリーニングパッド又はパッド構成要素の長さ及び幅にそれぞれ相当する。一般的に、クリーニングパッドをハンドルと関連して使用するとき、器具は、パッドのy寸法(すなわち、幅)に平行な方向に動く。
【0015】
もちろん、本発明は、四辺を有するクリーニングパッドに限定されない。円形、楕円形など、他の形状を使用することもできる。z寸法のいずれかの点でパッドの幅を決定するとき、パッドはその所期の用途に従って評価されることが理解される。
【0016】
本明細書で使用する「層」という用語は、その主要寸法がx−y、すなわち、長さ及び幅に沿うクリーニングパッドの部材又は構成要素を指す。層という用語は、必ずしも材料の単一の層又は単一のシートに限定されないことを理解する必要がある。したがって、層は、必要な種類の材料のいくつかのシート又はウェブの、積層体又は組み合わせを含むことができる。それ故に、用語「層」は、用語「複数層」及び「層状の」を含む。
【0017】
本明細書で使用する「親水性」という用語は、上に置かれた水性流体によって湿潤性である表面を指すために使用される。親水性及び湿潤性は、通常、関わる流体及び固体表面の接触角及び表面張力によって定義される。この点については、ロバート・F・ゴールド(Robert F.Gould)によって編集された「接触角、濡れ性と付着(Contact Angle,Wettability,and Adhesion)」という名称のアメリカ化学会の出版物(1964年版権)にて詳細に説明されており、その文献を参考として本明細書に組み入れる。表面は、水と表面の接触角が90°未満である、又は流体が自然に表面全体に広がる傾向にあるときに(この両方の条件は通常共存している)、脱イオン水で濡れた状態(すなわち、親水性)になると考えられる。反対に、接触角が90°超過であり、水が自然に表面全体に広がらないときに、表面は「疎水性」であると見なされる。用語「生来親水性の」は、セルロースパルプ、綿、大麻、黄麻などの自然発生のポリマーを基にした組成物、並びにレーヨン、アセテート、トリアセテートなどの自然発生のポリマーを基にした組成物を指す。さらに、用語「生来疎水性の」は、典型的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、及びこれらの混合物などの合成ポリマーを基にした組成物を指す。
【0018】
本明細書で使用する「過渡的」という用語は、材料の特性を指す場合、汚れ及び液体を、材料上又はその内部に実質的に吸収又は「引き止める」ことなく、容易に通過させる材料の能力を指す。通常、高い過渡特性を有する材料は、高レベル(約60%超過)の合成ポリマーからなっており、通常は低い坪量(約40g/m2未満)と低い密度(約0.09g/cm3未満)を有する。より高い坪量及び/又は合成物を多く含有する(約90%超過)材料は、孔あきポリエチレンフィルムなどのように材料に孔を形成することで、より過渡的にすることができる。
【0019】
本明細書で使用する「上面」という用語は、クリーニングパッドの層を指すとき、又はモップヘッドを指すとき、通常の清浄状態では床面から最も離れている表面を意味する。反対に、「下面」は、通常の清浄状態で床面に最も近い表面を意味する。
【0020】
本発明の目的において、クリーニングパッドの「上側」層は、清浄すべき表面から比較的離れた(すなわち、器具に関して言えば、使用中の器具のハンドルに比較的近い)層である。用語「下側」層は反対に、清浄すべき表面に比較的近い(すなわち、器具に関して言えば、使用中の器具のハンドルから比較的離れている)クリーニングパッドの層を意味する。用語「上側」及び「下側」は、多プライである層を指すとき(例えば、下側層が2プライ材料であるとき)、同様に使用される。層の順番(例えば、第1層、第2層、及び第3層)では、第1層は、第2層に関して「下側」層である。反対に、第3層は、第2層の上に配置される層である。用語「上」及び「下」は、クリーニングパッドの厚さの中で2つ又はそれ以上の材料の相対的な位置を説明するために使用される。実例として、通常の清浄状態において、材料Bが、材料Aよりも床面に近く配置されるとき、材料Aは材料Bの「上」にある。同様に、この例では材料Bは材料Aより「下」にある。
【0021】
II.クリーニング器具及びクリーニングパッド
本明細書におけるクリーニングの有用性を制限することを意図しないが、最新のモップ器具と関連しての使用に関する簡単な説明が、本発明の理解を助けると考えられる。
【0022】
従来の湿式モップの操作においては、モップのユーザは、モップヘッドが洗浄する面に注がれるための洗浄液体の供給源を必要とする。かつての行なわれ方は、モップヘッドをバケツなど、外部の液体供給源に浸し、任意に過度の液体を絞り、次に、十分な力でモップヘッドを洗浄面に当てて、そこから汚れを取り除くものであった。残念なことに、繰り返し使用した後、モップヘッド自体が汚れ、不衛生で汚らしくなるので、取り外して洗わなければならない。
【0023】
最新のクリーニング器具は、モップ器具のヘッドに裏返して取り付けることができ、汚れた後簡便に廃棄又は交換することができる使い捨てのシート又は吸収性パッドを用いる。さらに最新の器具(以下、「湿式クリーニング器具」と称する)は、それ自体の洗浄性液体の保存容器を有し、それによって有用性及び利便性を大幅に向上している。使用中、液体は液体放出機構により、洗浄される面上に放出される。これらの湿式クリーニング器具は、モップヘッドに回転可能に接続されたハンドルを有する。これらの器具のモップヘッドは、吸収性クリーニングパッドと機械的に嵌合し、これを保持するために、モップヘッドの上面又は下面に位置する保持手段を有し得る。洗浄溶液は、典型的には、液体放出機構に脱着可能に取り付けることができる保存容器内に保存される。「最新の」クリーニング器具の非限定的な例としては、プロクター・アンド・ギャンブル社(The Procter & Gamble Company)から販売されているスウィファー・ウェットジェット(SWIFFER WETJET)(登録商標)及びスウィファー・スプレー&クリーン(SWIFFER SPRAY&CLEAN)(登録商標)クリーニング器具、クロロックス社(The Clorox Company)から販売されているクロロックス・レディモップ(CLOROX READY-MOP)(登録商標)、並びにS.C.ジョンソン社(The S.C.Johnson Company)から販売されているグラブ・イット・ゴー・モップ(GRAB-IT GO-MOP)(商標)が挙げられる。
【0024】
図1は、電動液体放出機構(図示せず)を備える、そのような「最新の」湿式クリーニング器具10の一例を示している。一実施形態では、電動放出機構は、保存容器20と流体連通しているギアポンプを含む。ギアポンプは、少なくとも1つのバッテリーを動力源とする電動モータに接続される。前記ギアポンプは、モップヘッドに接続されたノズル110と流体連通している。ユーザは、ハンドル210に配置されたトリガー機構(図示せず)を介して、この電動放出機構を作動させることができる。この器具は、ユーザによって作動されると、約1ml/秒〜約10ml/秒の流速で微細液滴のスプレーを生成し、これが、モップヘッド前側の約0.1m2〜約1m2の範囲に放出される。使用中の器具の総重量、結果としてパッドにかかる圧力は、器具を形成する個々の器具それぞれの重量、並びに保存容器の容量及び保存容器内に残っている洗浄溶液の量によって決まる。結果として、本例の器具の総重量は、約950グラム〜約2000グラムの範囲である。このクリーニング器具はまた、クリーニングパッドの上面に配置されたループ式締結具を機械的に係合して保持するのに好適な、モップヘッドの下面に取り付けられたフック式締結具(図示せず)も具備する。このような電動クリーニング器具の一例は、プロクター・アンド・ギャンブル社(The Procter & Gamble Company)が販売しているスウィファー・ウェットジェット(SWIFFER WETJET)(登録商標)器具であり、これは、すべてプロクター・アンド・ギャンブル社(The Procter & Gamble Company)に譲渡されたPCT国際公開WO00/22861(カンクラー(Kunkler)ら、2001年4月5日発行)、同WO00/27271(ポリチッチオ(Policicchio)ら、2000年5月18日発行)に記載されている。
【0025】
図1に示したクリーニング器具は、典型的には、図2及び3に示した、器具のモップヘッドの下面に取り外し可能に接合できる、使い捨て吸収性クリーニングパッドと共に使用される。このパッド30は、下側層40、上側層50、及び下側層と上側層の間の吸収性コア60を含む。個のパッドは、モップヘッドの下面に配置された対応するフック式締結具(図示せず)にパッドを取り付けるための、ループ式締結具70を具備する。このパッドの下側層40は、ポリエチレン製の孔あき成形フィルムから作製され、吸収性コアに向かって延在する「ろうと」状の複数の開口を有する。ろうとのより小さい直径はコアに近接し、ろうとのより大きい直径は硬質表面に近接しているため、これら「ろうと」状の開口はそれぞれ、吸収性コアに向かう液体の流れを促進するが、液体が硬質表面に再び放出されることを制限する「小型の」一方向バルブとして作用する。このパッドの下側層の成形フィルムは、すべてプロクター・アンド・ギャンブル社(The Procter & Gamble Company)に譲渡された米国特許第4,463,045号、同4,342,314号及び同4,041,951号により詳細に記載されている。この下側層は、合成ポリマーからなっているため、その特性は「生来疎水性」であり、従って、表面にごみ及び水を保持することに関して親和性が低い。しかしながら、この材料は本質的に平滑な合成ポリマーからなっているため、結果としてパッドは、濡れた表面を拭いたときに比較的低い摩擦を有する。加えて、これらのパッドの吸収性コアは、文献において周知であり、PCT国際公開WO00/27271(ポリチッチオ(Policicchio)ら)により詳細に記載される、水溶性かつ水膨潤性の超吸収性ゲル化ポリマーを含む。このような超吸収性ゲル化ポリマーは、硬質表面から除去した汚れた溶液を吸収し閉じ込めるための、高い吸収能力を有する加えて、このクリーニングパッドは、モップ作業中に前後に折り返すことができる機能性「カフ」130を含む。これらの機能性カフは、洗浄溶液で容易に保持されず、またろうと状の開口中を流通することができない、毛髪及び/又は大きい粒子などを捕捉するのに有用である。これらの機能性カフは、プロクター・アンド・ギャンブル社(The Procter & Gamble Company)に譲渡されたPCT国際公開WO00/27271(ポリチッチオ(Policicchio)ら)、及び同WO02/41743(ポリチッチオ(Policicchio)、2002年5月30日発行)に、より詳細に記載されている。この種のパッドの前述の器具との組み合わせは、洗浄溶液が電動液体放出機構によって比較的大きい面積に分配されるという意味で最適化され、パッドは、ごみが吸収性コア内に閉じ込められ、硬質表面に再び放出される汚れた溶液が最小限の量だけになるように設計される。加えて、器具の重量が比較的重いために、パッドと濡れた表面との間の低摩擦が補なわれる。電動クリーニング器具と共に使用するのに好適なクリーニングパッドの一例は、スウィファー・ウェットジェット(SWIFFER WETJET)(登録商標)クリーニングパッドであり、これは、プロクター・アンド・ギャンブル社(The Procter & Gamble Company)に譲渡されたPCT国際公開WO98/11812(ホルト(Holt)ら、1998年3月26日発行)により詳細に記載されている。当業者であれば、他の液体放出機構が、比較的大きい面積に同様の微細液滴のスプレーを適用することが可能であることを理解するであろう。好適な液体放出機構の非限定的な例としては、手動式のポンプを介して容器内に保存された液体に加圧できる機構、エアゾール容器などの予め加圧された容器、又は中に保存された液体に圧力を印加できる変形可能な弾性容器が挙げられる。
【0026】
図4は、クロロックス社(The Clorox Company)から販売されており、クロロックス社(The Clorox Company)に譲渡されたPCT国際公開WO01/72185(ホール(Hall)ら、2001年10月4日発行)に記載されている、クロロックス(CLOROX)(登録商標)レディモップ(READY-MOP)(登録商標)クリーニング器具などの、最新の湿式クリーニング器具の別例を示している。このクリーニング器具は、モップヘッドに接続されたハンドル、保存容器に脱着可能に取り付けることができる液体放出機構を有している。この器具と共に使用される液体放出機構は、重力送り機構であり、保存容器内の液体のカラムによる潜在的エネルギーのみを用いて、溶液を硬質表面上に放出する。この重力送り放出機構は、モップヘッドに接続されたノズルと流体連通しており、放出機構が数秒間作動すると、約25.4μm/s(1ミル/秒)〜約76.2μm/s(3ミル/秒)の流速を生成し、約0.01m2〜約0.05m2の範囲内に洗浄溶液を放出する。使用中の器具の総重量はまた、700グラム〜1450グラムの範囲の、保存容器内に残っている溶液の量によって決まる。
【0027】
製造元の使用説明書では、このクリーニング器具を、器具のモップヘッドに配置された把持具に脱着可能に取り付けることができる、レディモップ(READY-MOP)(登録商標)クリーニングパッドと共に使用することを推奨している。このクリーニングパッドは、下側層、上側層、及び下側層と上側層との間にある吸収性コアを含む。下側層は、このパッドの下側層の幅がモップヘッドの幅より大きいため、この器具のモップヘッドの上面に配置された「つまみ具」又は「把持具」の中に入れて保持されることができる。このパッドの下側層は、生来親水性のレーヨン(推定レベル約60〜70%)と生来疎水性の繊維(ポリエステル又はポリプロピレン)(推定レベル約30〜40%)の均質なブレンドから作製される。下側層を形成する繊維は網状になっており、比較的大きい開口を形成するので、粒子が吸収性コアに到達できる。開口は約3mm離間しており、約2〜3mm2のX−Y寸法で表面を覆い、約0.75mmの深さを有する。このパッドの下側層は、全体的に「生来親水性」であるので、ごみ及び水に対して親和性が高く、パッドが濡れた表面を擦ったとき比較的摩擦が大きい。通常の清浄作業中、ごみはこの下側層の下面に堆積する傾向がある。このパッドの吸収性コアは、主に、セルロース性材料と超吸収性ゲル化ポリマーとを組み合わせたスウィファー・ウェットジェット(SWIFFER WETJET)(登録商標)パッドと比較して、相対的に低い吸収能力を有するセルロース性材料から作製される。通常の清浄作業中などに、クロロックス(CLOROX)(登録商標)タイプのパッドに圧力が印加されると、パッドは、汚れた溶液をいくらか硬質表面上に再び放出する傾向がある。ユーザがこの器具の液体放出機構を作動させると、洗浄溶液のたまりがモップヘッドの前側にできる。ユーザが硬質表面を清浄すると、このパッドは液体で飽和し、その結果、ユーザが硬質表面を拭いている間に余分な溶液がより大きい面積に広がる。パッドが飽和することは、重力送り機構で生成された比較的小さい適用面積を補うという意味において有用であり得る。加えて、下側層の親水性により、パッドで濡れた表面を拭くときに、下面(すなわち、境界面)に存在する強い水素結合によって、より高い摩擦が得られる。このより高い摩擦が、器具が比較的軽量であることを補う。下側層の網状の設計によって得られる開口が、ごみがいくらか吸収性コア内に入り込むようにチャンネルを提供する一方で、これらの「大きく深い開口」は、パッドが硬質表面上に塗布された洗浄溶液を拭くときに線を「描く」ことができる、全体的な質感を作り出す。これらの線によって、溶液が不均一に乾燥するため、望ましくない縞が硬質表面上にできる。さらに、下側層が親水性で吸収性コアが低い吸収能力を有するため、パッドが急速に飽和すると余分な汚れた溶液がパッドから絞り出され、その結果、望ましくないくすんだ外観を溶液が乾燥した後表面にもたらす。このくすんだ外観は、溶液の不揮発性活性物質が、パッドに終結して再び床に分配された不溶性及び可溶性の汚れの粒子と組み合わされたことによるものである。このパッドと器具との組み合わせは、本質的に、スウィファー・ウェット(SWIFFER WET)(登録商標)クリーニングパッド(プロクター・アンド・ギャンブル社(The Procter & Gamble Company)より販売)又はプレッジ・グラブイット(PLEDGE GRAB-IT)(登録商標)クリーニングパッド(S.Cジョンソン社(The S.C.Johnson Company)より販売)などのウェットタイプのクリーニングパッドと機能的に同等な、湿式パッドを作り出す。しかしながら、床を湿らさなくなれば交換されるウェットタオルと異なり、この種のパッドはより長時間使用されるので、定期的に交換しなければ最終的なクリーニング性能は劣ったものになり得る。
【0028】
上述のような超吸収性材料及び孔あき成形フィルムの下側層を含む吸収性コアを有するクリーニングパッドを、集中した小さい面積に洗浄溶液を分配するクリーニング器具と共に使用した場合、次のことが観察される。このパッドは、モップヘッドの前側にある洗浄溶液のたまりを急速に吸収し、その結果、ユーザはより多量の洗浄溶液を適用することが必要になる。拭取り作業中、ユーザは、摩擦の増大と表面が視覚的に濡れていることを、直感的により多くの洗浄溶液を適用する必要と結びつける。パッドが急速に溶液を吸収し、その溶液を硬質表面に最小限しか戻さないので、本質的に乾燥したパッドが乾燥した汚れた表面に擦られ、より多くの溶液が適用されるまで清浄が不均一になる。加えて、ユーザが過度に頻繁に溶液を適用する必要があるとき、ユーザは、必要量よりも多い溶液が硬質表面に適用されていると考える場合がある。
【0029】
スウィファー・ウェットジェット(SWIFFER WETJET)(登録商標)などの電動器具と比較して相対的に軽量な、クロロックス・レディモップ(CLOROX READYMOP)(登録商標)などの器具は、パッドが濡れた表面を拭くときに、成形フィルム層の低い摩擦を補償しない。この低い摩擦によって、ユーザは、パッドが硬質表面に対して過度に「滑っている」という感覚を受ける。この感覚は、摩擦又は滑り抵抗が有効な清浄に必要であるというユーザの直感を妨げる。より高い抵抗を得るため、ユーザは器具のハンドルにより大きい力を掛けなければならず、その結果、器具の多様な部分(例えば、ユニバーサルジョイント)及びパッドに不要な機械的制約が与えられる。その結果、ユーザはクリーニングシステムが不便であると考える可能性がある。
【0030】
親水性及び疎水性繊維の均質なブレンドから作製され、上述の大きな開口を有する下側層を持つクリーニングパッドの吸収性コアに、超吸収性材料が包含されている場合、並びにこのパッドが洗浄溶液を集中した面積に分配するクリーニング器具と共に使用される場合、以下のことが観察される。下側層は、吸収性コアから出て硬質表面に向かう溶液の流れを有効に制限しないため、パッドに圧力がかかったときに、汚れた溶液がいくらか硬質表面に再び放出される。加えて、クロロックス(CLOROX)(登録商標)レディモップ(READY-MOP)(登録商標)パッドの下側層は、清浄された表面に線を作り、その結果望ましくない被膜及び縞ができる。
【0031】
前記の考察が本発明によって取り扱われ、それは次の詳細な開示から明らかである。
明瞭にするため、クリーニングパッドの以下の実施形態の下側層及び吸収性コアのみが、概略的に示される。いずれにしても、当業者であれば、以下のクリーニングパッドが、上側層(吸収性層の上に配置される)、上述した1又はそれ以上の機能性カフなどの追加の特徴を含むことができること、また、モップヘッドの上面又は下面に配置された保持手段など、当該技術分野において既知のいずれかの機構を介して、パッドをクリーニング器具のモップヘッドに脱着可能に取り付けられることを理解するであろう。
【0032】
図5及び6に示した一実施形態では、クリーニングパッド31は、吸収性コア51と直接流体連通した下側層41を含む。
【0033】
吸収性コアに使用するのに好適な材料の非限定的な例が、PCT国際公開WO00/27271(ポリチッチオ(Policicchio)ら)に詳細に記載されている。
【0034】
下側層は、少なくとも1つの低摩擦領域1141と少なくとも1つの高摩擦領域2141を有する「機能性」表面141を持つ(例示目的のため、高摩擦領域は斜線で概略的に示され、低摩擦領域と区別されている)。
【0035】
「機能性表面」により、クリーニング器具での清浄作業中に、硬質表面と接触する下側層の表面を意味する。
【0036】
「高摩擦領域」及び「低摩擦領域」により、これら両方が同じ硬質表面を拭くときに、高摩擦領域は低摩擦領域よりも大きな摩擦量を生成することを意味する(すなわち、1つの領域が他の領域よりも大きな摩擦を提供する)。
【0037】
一実施形態では、X−Y寸法での高摩擦領域の下面全体は、パッドの「機能性」表面の約5%〜約50%、好ましくは約10%〜約40%、より好ましくは約15%〜約35%、さらにより好ましくは約20%〜約30%である。このような実施形態では、X−Y寸法での低摩擦領域の下面の総面積は、パッドの「機能性」表面の約50%〜約95%、好ましくは約60%〜約90%、より好ましくは約65%〜約85%、さらにより好ましくは約70%〜約80%である。
【0038】
図7及び8に示した一実施形態では、パッドの下側層41は、下側層41の中央部分に配置された長手方向の高摩擦領域2141と、下側層41の前縁部及び後縁部にそれぞれ隣接する第1及び第2の長手方向低摩擦領域1141A及び1141Bとを含む。
【0039】
図9に示した一実施形態では、長手方向の高摩擦領域2141の長さは、パッドの「機能性」表面の長さより短い。一実施形態では、高摩擦領域2141の長さ(すなわち、X軸に沿って)は、「機能性」表面の長さよりも、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約30%短い。一実施形態では、高摩擦領域2141の幅(すなわち、Y軸に沿って)は、「機能性」表面の幅よりも、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約60%短い。
【0040】
図10及び11に示した一実施形態では、下側層41の「機能性」表面141は、複数の高摩擦領域2141を含む。一実施形態では、「機能性」表面は、「機能性」領域141の前側進行方向縁部3141に隣接した第1の高摩擦領域2141A、「機能性」領域141の後縁部4141に隣接した第2の高摩擦領域2141B、並びに第1及び第2の高摩擦領域2141A及び2141Bの間に配置された第3の高摩擦領域2141Cを含む。一実施形態では、高摩擦領域2141A、2141B、及び2141Cはすべて、同じ材料から作製され、及び/又は、親水性、坪量、厚さ、長さ及び/又は幅など、同じ物理的特性を有する。別の実施形態では、高摩擦領域は、異なる材料から作製でき、及び/又は、異なるレベルの摩擦及び/又は表面濡れ性能など異なる物理的特性を有することができる。
【0041】
一実施形態では、高摩擦領域及び低摩擦領域は、実質的に同じ平面又は面に配置される。高摩擦領域は、当該技術分野において既知のいずれかのプロセスを介して、低摩擦領域に接合及び/又は結合させることができる。好適な結合プロセスの非限定的な例としては、接着剤結合、熱結合、超音波結合、ニードルパンチング、縫製又は縫い合わせ、及びこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0042】
図12に示した別の実施形態では、高摩擦領域と低摩擦領域が、異なる平面又は面に配置されている。例えば、下側層は、親水性領域及び疎水性領域両方の少なくとも一部分が床面と接触できるように、親水性層を疎水性層の下面に接合することによって作製することができる。
【0043】
当業者であれば、「機能性」表面における親水性領域及び疎水性領域の位置は逆にすることができること、また、X−Y寸法でのこれら領域の形状は、多角形、正弦波形状、弓状(放物線又は双曲線)、三角形、V字形、円盤状、十字又はX字形、及びこれらのいずれかの組み合わせなど、当該技術分野において既知のいずれの幾何学形状でもあり得ることを理解するであろう。
【0044】
一実施形態では、高摩擦領域は、天然由来の親水性繊維を含む基材材料から作製される。親水性繊維の非限定的な例としては、セルロースパルプ、綿、大麻、黄麻などの天然素材、並びにレーヨン、アセテート、トリアセテートなどの天然ポリマーをベースとする合成繊維が挙げられる。
【0045】
一実施形態では、低摩擦領域は、疎水性繊維を含む基材材料から作製される。疎水性繊維の非限定的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリル及びこれらの組み合わせ(2成分として形成されたものなど)などの合成ポリマーから作製された繊維が挙げられる。
好ましい実施形態では、低摩擦領域は、疎水性不織布材料を含み、高摩擦領域は、親水性不織布材料を含む。
【0046】
いかなる理論によっても拘束されることを意図しないが、高い摩擦は、天然由来の親水性繊維がその繊維中にヒドロキシル基を有するため、水に対して高い親和性を持つことに起因すると考えられている。これらのヒドロキシル基は、収着部位として作用する。さらに、これらの収着部位は水を吸収するため、表面に対して「把持」又は摩擦も提供する。
【0047】
摩擦は、部分的には接触表面の平滑度にも依存し、2つの表面が平滑である場合よりも起伏がある場合に、互いに対して動かすのにより大きい力が必要になる。しかしながら、摩擦は平滑度によってある程度しか低減されない。実際には、2つの非常に平滑な表面間では、それらの原子間の誘引的な静電気力が増大するために摩擦が増大する。摩擦は、動いている本体間の接触している表面積の大きさ、又は(ある程度の制限内での)本体の相対速度には依存しない。しかしながら、本体を共に保持している抵抗力の大きさには依存する。本体が水平面上を動いているときには、その重量、すなわちそれにかかる重力の引張力に等しい抵抗力で表面に押しつけられる。本体の重量が増加すると、接触している表面の相対的な動きにもたらされる抵抗も増加する。
【0048】
濡れた親水性、例えばセルロース性基材が表面に押しつけられ、押すことによって動かされると、(セルロース性基材のヒドロキシル基と水との間の)大きな水素結合によって、乾燥しているときよりも摩擦が大きくなる。この水素結合は、2つの独立した極性分子間、すなわち電荷が不均一に分配され、通常は酸素、窒素、又はフッ素を含有する分子間に、強い静電気引力を作り出す。これらの元素は、強い電気求引力を有し、水素原子はこれらの間のブリッジとして作用する。水素結合は、イオン結合又は共有結合よりはるかに弱い。濡れた基材の表面上での摩擦は、水素結合の程度と直接比例する。天然由来の親水性ポリマーからなる材料は、水素結合に利用できる多数のヒドロキシル基を有するため、水素結合のための遊離ヒドロキシル基を有さない合成基材と比較して、より強い把持又は摩擦を提供する。
【0049】
当業者であれば、合成繊維ではなく天然由来の親水性繊維からなる材料、特に不織布材料は、より大きな総吸収性、圧力を掛けられたときのより大きな液体保持力(水性の液体が繊維中によりしっかり保持されるため)、並びにより強い濡れ表面摩擦を有することを理解するであろう。これらの観察結果は、生来親水性の繊維のレベルが合成繊維のレベルよりも高い、生来親水性の繊維と合成繊維の均質なブレンドからなる繊維性材料にも該当する。
【0050】
当業者であれば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリルなどの、合成繊維ベースであり、従って生来疎水性である繊維をより親水性になるように化学物質で処理できることも理解されるであろう。例えば、繊維が不織布に形成された後、繊維の外側表面に界面活性剤を適用することができるし、押出成形プロセス中に合成ポリマーに界面活性剤を添加することもできる。これらの工程で、合成疎水性繊維の表面張力を低減させることによって、より親水性の組成物を作製できるものの、こうした繊維は、レーヨン、綿、アセテートなど生来親水性の繊維が含有する機能性収着部位を依然として有さない。したがって、これらの処理された合成疎水性繊維は、未処理の合成疎水性繊維と比較して、より多量の液体を吸収する能力を有するものの、水に強く結合する能力や水素結合によって高い濡れ表面摩擦を作り出す能力は依然として有さない。反対に、生来親水性の繊維を処理して疎水性にできることを当業者であれば理解するであろう。レーヨン繊維からなる不織布の外側表面は、シリコーンでコーティングされることができる。この処理により、生来親水性の繊維は水に対するより低い親和性とより低い濡れ表面摩擦とを有する。
【0051】
天然ベースの親水性繊維がクリーニングパッドの下側層に包含される場合、清浄される表面の濡れは向上する。ヒドロキシル基の収着部位が存在するために汚れの保持も向上する。このことにより、ごみは、パッドの吸収性コアに到達せずに下側層の下面に収集される。しかしながら、下側層の下面に捕捉されたごみは最終的にはパッドからかき落とされ、その結果汚れが再分配されて、余分な溶液が蒸発したときに床に被膜を残すことが観察されている。
【0052】
いずれも下側層の「機能性」表面に配置される、特定の過渡的領域(好ましくは、遷移特性を最大にするために低摩擦領域)並びに特定の高摩擦領域を含む下側層は、クリーニングパッドの一般的な清浄効果、特に超吸収性材料を含むパッドの効果を向上させる。高摩擦領域と低摩擦の過渡的領域が近接しているため、高摩擦領域に捕捉された汚れがいくらか放出された場合に、低摩擦の過渡的領域を「流す」ことによって、この汚れがパッドに再捕捉されるとも考えられている。
【0053】
図13及び14に示した一実施形態では、クリーニングパッド32は、「機能性」表面142を有し、吸収性コア52と流体連通している下側層42を含む。「機能性」表面142は、低摩擦領域1142を形成する疎水性材料の第1層と、第1層1142と直接流体連通するストリップの形状で高摩擦領域2142を形成する、親水性材料の第2層を有する。清浄作業中、パッドの「機能性」表面内に配置された高摩擦領域及び低摩擦領域は、いずれも床面と接触する。
【0054】
過渡的領域がパッドの吸収性コアに向かう汚れ及び溶液の流れを促進する一方で、天然ベースの親水性ポリマーからなる明確な高摩擦領域を有することで、パッドの下側層もまた、清浄作業中に洗浄溶液をより大きい表面に広げるパッドの能力を向上させることが見出されている。
【0055】
パッドの下側層が、特定の低摩擦領域に加えて特定の高摩擦領域を包含する場合、パッドと床(濡れた又は乾いた)との間の全体的な摩擦が増大するが、床面が乾燥し始めると収着部位によって形成された水素結合がより「壊れ」にくくなるため、摩擦がさらに増大することも見出されている。
【0056】
上述したように、ユーザは、パッドと床の摩擦を清浄効果、並びに洗浄溶液をさらに適用する必要性と直感的に結びつける。その結果、ユーザはさらに洗浄溶液を適用し、それによってクリーニング器具が高吸収性パッドと組み合わせて使用されている場合により良好な清浄を提供する。
【0057】
濡れた環境で親水性繊維が摩擦に与える影響を評価するために、次の「摩擦係数」試験を異なる基材材料に対して実施する。
【0058】
(「摩擦係数」試験方法)
「摩擦係数」試験方法は、摩擦/剥離試験機モデル225−1(トウィングアルバート・インスツルメント社(Thwing-Albert Instrument Company)、米国ペンシルベニア州フィラデルフィア、から入手)を使用する。この機器は、材料の静摩擦係数及び動摩擦係数の両方を測定するのに使用できる。材料の摩擦係数は、摩擦Frを、物体を共に押す法線力又は垂直力Fnで除した抵抗力に等しい数値Uとして観察できる。
【0059】
当業者であれば、実質的に平らな平滑面と接触している物体(又は固体)に抵抗力を加えた場合にこの固体は、静摩擦による抵抗力が克服されるまで動かないことを理解するであろう。動摩擦(又は抵抗力)は、静摩擦が一旦克服された後の一定した動きを制御する力である。
【0060】
静摩擦と動摩擦の両方、ただしより具体的には動摩擦は、特に表面が濡れている場合に硬質表面を拭くパッドの能力に影響を持つ。
「摩擦係数」試験は、図15に概略的に示されている。
【0061】
(試験されるサンプル材料の準備)
摩擦は、200gのスレッド(sled)を用いて測定される。試験される基材材料の、10cm×10cmの3つのサンプルが切断される。第1のサンプル80は、試験に用いられる200gのスレッドに巻きつけられる(装置の試験アームに取り付けられた、スレッドに取り付けられたフック82用の隙間を作るために、基材の進行方向縁部に切込みを入れてスリットが作られる)。スレッドは金属製であり、その上面及び下面に厚さ2mmの高密度発泡体を有し、耐水のためにさらにプラスチック積層体材料で覆われている。スレッドの寸法は、6.5cm×6.5cm×1.5cmである。試験サンプル80は、スコッチ(SCOTCH)(登録商標)粘着テープで所定位置に保持される。スレッドによって作られる単位面積当りの圧力は、約4.7g/cm2である。この圧力は、床を清浄している軽量モップ(モップ700g+洗浄溶液を充填したボトル及び約300cm2を覆うモップヘッドの下面)によってパッドに印加される典型的な圧力量を模している。
【0062】
(試験表面の準備)
試験表面86は、平滑で光沢のない黒色セラミックタイル(インターセラミック(Interceramic)からコード番号30301212として入手可能、メキシコ、チワワ(Chihuahua)製)であり、幅30cm、長さ30cm、厚さ10mmである。
【0063】
試験手順:
1.表示されるスレッド重量が200g(試験に使用されるスレッドの重量に対応)になるまで、試験機の「スレッド」ボタンを繰り返し押す。
2.20秒が表示されるまで、「試験時間」ボタンを繰り返し押す。
3.「試験速度」ボタンを押して、スレッドの速度を1cm/秒に設定する(押圧速度、押圧試験、押圧戻りを確認するため)。
4.「戻る」スイッチを使用して、ロードセル88を試験の開始位置に配置する。
5.第1のサンプルとスレッドを、セラミックタイル試験表面86の後側縁部から約5mmの位置でセラミックタイル上に置き、スレッド上のフック82がロードセル88ののぞき穴90と一列に並んでいる進路中央に、スレッドが並ぶようにする(のぞき穴は、スレッドの前進移動方向に平行なタイルの側縁部から約1cm、スレッドが移動する方向に垂直なタイルの後側縁部から8.5cmの位置になければならない)。次いで、「ゼロ」スイッチを押して、ロードセルをゼロに合わせる。
6.クランプを用いてスレッドをロードセルに取り付ける。
7.「試験」スイッチを押して試験を開始する。ロードセルが、スレッド及び試験サンプルを引き摺って左から右に移動する。開始位置にあるスレッドの後側縁部から終了位置にあるスレッドの前側縁部を計測した、スレッドの移動距離は、約25cmである。
8.試験が終了すると、ロードセルが停止して、機器が静摩擦係数(ST)及び動摩擦係数(KI)の測定値を表示する。乾燥サンプルに対する動摩擦係数の測定値を記録する。
9.「戻る」スイッチを押して、スレッド及びサンプルを開始位置まで戻す。慎重にスレッドをロードセルから外す。ピペットを用いて、スウィファー・ウェットジェット(SWIFFER WETJET)(登録商標)アドバンスト・クリーナー(ADVANCED CLEANER)溶液(プロクター・アンド・ギャンブル社(The Procter & Gamble Company)から入手可能)1mlを、セラミックタイル上に直接適用する。洗浄溶液は、スレッド及びサンプル基材が実験の開始時に配置される、タイル面積の中央に適用しなければならない。洗浄溶液は、幅約50mm(スレッド方向に垂直な長手方向の寸法として画定される)、長さ約20mm(スレッドの進行方向に平行な寸法として画定される)の範囲に適用しなければならない。スレッド及び試験サンプルを、洗浄溶液上に直接配置する。次いで、「試験」スイッチを押して試験を開始する。
10.試験が終了すると、ロードセルが停止して、機器が静摩擦及び動摩擦係数の測定値を表示する。溶液1mlによる「湿潤」サンプルに対する動摩擦係数の測定値を記録する。
11.再び「戻る」スイッチを押して、スレッドを開始位置に戻す。
12.試験サンプルをタイル表面から取り除き、第2の洗浄溶液1mlを前述したようにタイルに適用し、スレッド及び基材サンプルを再び洗浄溶液上に置く。
13.試験を開始し、洗浄溶液2mlでの「湿潤」動摩擦係数の測定値を記録する。
14.第3の洗浄溶液1mlを用いてこの手順をもう一度繰り返し、洗浄溶液3mlでの動摩擦係数を記録する。溶液2.54μm(1ミル)の装填と試験走行との間の時間が1分間を超えないように留意する。
15.スレッドから基材を取り除き、タイルの上面をきれいにするためにセラミック試験タイルを取り除く。イソプロピルアルコール(以下、IPA)20%を含む溶液を用いて、タイルに残っている可能性のある余分な溶液の残留物をペーパータオルで完全に拭い取る。この手順を3度繰り返す。脱イオン水を用いて、タイルの上面を最後にもう一度拭取り、乾燥するまで磨く。
16.タイルを試験機器に再配置する。スレッドを取り、拭き取って先の試験で残っている湿気を取り除く。基材の第2のサンプルを取り付ける。
17.工程4〜16を繰り返し、第1のサンプル基材の2度目の反復データとして結果を記録する。
18.工程4〜16をもう一度繰り返し、第1のサンプル基材の3度目の反復データとして結果を記録する。各結果(すなわち、「乾燥」サンプル、1mlでの「湿潤」サンプル、2mlでの「湿潤」サンプル、及び3mlでの「湿潤」サンプル)の平均値を算出して記録する。
19.タイルの上面及びスレッドを、工程15及び16で上述した手順を用いてきれいにする。
20.別の材料の3つのサンプルを取り、材料の各タイプに対して手順全体を繰り返す。
【0064】
多様な種類の材料(異なる不織布材料を含む)が、上述の手順にしたがって試験される。試験される異なる材料の疎水性又は親水性の程度が異なるため、クリーニングパッドが硬質表面上を「滑る」能力に対する、これらの材料の影響又は「挙動」を評価することが可能である。試験される異なるサンプルはまた、表面特性の観点でも異なっている。これらの材料のいくつかは、非常に平滑な外側表面を有しており、他の材料は、(「大きな」開口が存在するために)非常に非平滑である。平滑な外側表面を有する基材材料により、材料のより広い表面が硬質表面と接触することから、より高い摩擦が生じると考えられている。
【0065】
表1は、異なる種類の基材に対して測定された異なる動摩擦係数の概要を示している。4つの動摩擦係数が、「乾燥」「低適用量」(洗浄溶液1mlを適用した場合に測定された)、及び「高適用量」(洗浄溶液3mlを適用した場合に測定された)として報告されている。当業者であれば、上記試験における「低適用量」及び「高適用量」は、1平方センチメートルの基材当り、それぞれ溶液0.025ml及び0.075mlであることを、理解するであろう。
【0066】
【表1】

表1に報告された結果は、孔あき成形フィルムで作製された基材(実施例10)を例外として、基材材料の「低適用量及び高適用量」動摩擦係数(以下、「KCF」)は、「乾燥」KCFよりも大きい。
【0067】
上述したように、疎水性材料から作製され、硬質表面から離れて延在する「ろうと」形状の開口を有する孔あき成形フィルムは、乾燥表面に対して比較的高いKCFを有するが、湿潤表面に対して比較的低いKCFを有する(「乾燥」と「湿潤」のKCFでは70%もの低減がある)。この種の材料は、「汚れ、ごみ、及び液体を、実質的に材料に吸収又は閉じ込めることなく、材料の層を通過させる能力」として上記に画定した「過渡的」特性が高いため、クリーニングパッドの下側層として有利に使用できる。
【0068】
良好な「過渡的」特性を有する繊維性材料もまた、クリーニングパッドの下側層として有利に使用できる。好適な繊維性材料(織布又は不織布のいずれか)は、100%合成ポリマー(ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)から作製でき、あるいは、親水性繊維性材料(例えば、セルロース、レーヨン、綿など)のレベルが約50%未満、好ましくは約40%未満、より好ましくは約35%未満である、生来親水性の合成繊維性材料のブレンドから作製できる。これらの材料が、約60g/m2未満、好ましくは約50g/m2未満、より好ましくは約40g/m2未満、よりさらに好ましくは約30g/m2未満の坪量を有するときに、「過渡的」特性がさらに向上することも、観察されている。これらの特性を有する不織布基材は、実施例1〜3及び11〜13に示されている。いかなる理論にも束縛されることを意図しないが、基材材料の坪量が低いほど、液体はその材料から作製された下側層を容易に通過して、吸収性コアに到達する。結果として、実施例11〜13の基材は、優れた「過渡的」特性を提供する。しかしながら、基材の坪量が30g/m2未満の場合、又は親水性繊維のレベルが50%未満の場合、それらの材料は、濡れた表面に対して比較的低いKCF(乾燥表面又は溶液の低適用量に対して約40未満)を有することが観察されている。さらに、より多い量の洗浄溶液が硬質表面に適用された場合に、これらの材料のKCFが低下(約30未満のKCF)し、乾燥表面に対するKCFのレベルに戻る傾向があることも観察されている。
【0069】
さらに、実施例4〜9及び14などの、少なくとも約50%の親水性材料を含む繊維性材料は、乾燥表面に対して比較的低いKCF(約0.35未満)を有するものの、低レベルの溶液を有する濡れた表面上を拭った場合にKCFの増大(約0.35超過)を示すことも観察されている。加えて、より多くの洗浄溶液が硬質表面上に適用されたとき、特にこれらの材料の坪量が約20g/m2超過、好ましくは約30g/m2超過、より好ましくは約40g/m2超過、よりさらに好ましくは約50g/m2超過の場合に、これらの材料のKCFは比較的高レベルで維持される。
【0070】
一実施形態では、高摩擦領域2242は、親水性繊維を少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約55%、より好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約65%、最も好ましくは少なくとも約70%包含する材料、好ましくは不織布材料を含む。一実施形態では、高摩擦領域2242は、少なくとも約20g/m2、好ましくは少なくとも約30g/m2、より好ましくは少なくとも約40g/m2、さらにより好ましくは少なくとも約50g/m2、最も好ましくは少なくとも約60g/m2の坪量を有する材料、好ましくは不織布材料を含む。高摩擦領域2242は、約250g/m2未満、好ましくは約200g/m2未満、より好ましくは約150g/m2未満、さらにより好ましくは約125g/m2未満の坪量を有する材料、好ましくは不織布材料を含む。
【0071】
一実施形態では、高摩擦領域2242は、「摩擦係数」試験で測定したときに、約0.5未満、好ましくは約0.45未満、より好ましくは約0.4未満、さらにより好ましくは約0.35未満の「乾燥」KCFを有する材料、好ましくは不織布材料を含む。
【0072】
一実施形態では、「摩擦係数」試験で測定したときの、高摩擦領域2242の「低適用量」KCFは、少なくとも約0.35、好ましくは少なくとも約0.45、より好ましくは少なくとも約0.55、さらにより好ましくは少なくとも約0.6である。「摩擦係数」試験で測定したときの、高摩擦領域2242の「高適用量」KCFは、少なくとも約0.35、好ましくは少なくとも約0.45、より好ましくは少なくとも約0.5、さらにより好ましくは少なくとも約0.55である。
【0073】
当業者であれば、クリーニングパッドと清浄される硬質表面との摩擦量を低減又は増大させるために、高摩擦領域の寸法を調整可能であることを理解するであろう。一例として、高いKCFを有する材料を含む比較的小さい高摩擦領域は、低いKCFを有する材料を含む比較的大きい高摩擦領域と同程度の摩擦を提供することができる。
当業者であれば、基材と硬質表面の総接触面積を減少させることによっても、基材と硬質表面の全体的な摩擦を低減できることを理解するであろう。したがって、比較的高いKCFを有する基材の全体的な摩擦を低減し得る解決法は、この基材の少なくとも下面に質感をつけるか、又は基材全体に開口を設けることである。
【0074】
一実施形態では、低摩擦の過渡的領域1142は、疎水性繊維を少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約55%、より好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約65%、最も好ましくは少なくとも約70%含む材料、好ましくは不織布材料を含む。一実施形態では、低摩擦領域1142は、少なくとも約10g/m2、好ましくは少なくとも約15g/m2、より好ましくは少なくとも約20g/m2の坪量を有する材料、好ましくは不織布材料を含む。低摩擦領域1142は、約100g/m2未満、好ましくは約80g/m2未満、より好ましくは約70g/m2未満、さらにより好ましくは約60g/m2未満の坪量と、約0.1g/cm3、好ましくは約0.09g/cm3未満、より好ましくは約0.08g/cm3未満、さらにより好ましくは約0.07g/cm3未満の密度を有する材料、好ましくは不織布材料を含む。
【0075】
一実施形態では、低摩擦領域1142は、「摩擦係数」試験で測定したときに、少なくとも約0.2、好ましくは少なくとも約0.25、より好ましくは少なくとも約0.3、さらにより好ましくは少なくとも約0.5の「乾燥」KCFを有する材料、好ましくは不織布材料を含む。
【0076】
一実施形態では、「摩擦係数」試験で測定したときの、低摩擦領域1142の「低適用量」KCFは、約0.5未満、好ましくは約0.4未満、より好ましくは約0.35未満、さらにより好ましくは約0.3未満である。「摩擦係数」試験で測定したときの、低摩擦領域1142の「高適用量」KCFは、約0.45未満、好ましくは約0.4未満、より好ましくは約0.35未満、さらにより好ましくは約0.3未満である。
【0077】
好ましい実施形態では、低摩擦領域1142は、ポリオレフィン、好ましくはポリエチレンから作製される孔あき成形フィルムを含む。フィルムの成形中に開口を作ることが好ましいものの、フィルムの成形後に開口を作製しても、同様の特性が得られることが理解されている。換言すれば、既に成形されたフィルムを取り、抜型、針及び同等の開口プロセスを用いて開口を作製することによって、開口が作られる。
【0078】
高摩擦親水性領域又は低摩擦の過渡的領域のいずれかに、不織布材料が存在する場合、当該技術分野において既知のいずれかのプロセスを介して不織布を作製することができる。好適なプロセスの非限定的な例としては、スパンレーシング、スパンボンディング、メルトブローイング、エアレイイング、熱接着及びこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0079】
高摩擦も得られる親水性繊維性材料の非限定的な例としては、レーヨン、セルロースパルプ、綿など、及びこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0080】
クリーニングパッドの下側層全体に「非常に」質感があり及び/又は比較的大きい開口を有している(すなわち、各開口がX−Y寸法で約0.5mm2超過の突出表面を有している)場合、下側層は濡れた床面に線を「描き」、その結果、余分な溶液が床面から蒸発したときに望ましくない被膜及び縞ができる。
【0081】
図16及び17に示す一実施形態では、クリーニングパッド33は、「非常に」質感がある及び/又は「大きい」開口243を含む第1の部分1143と比較的平滑な第2の部分2143を含む、「機能性」表面143を有する下側層43を含む。好ましい実施形態では、パッドの下側層は、高摩擦領域と低摩擦領域を含み、疎水性又は高摩擦領域の1つは、「非常に」質感がある、及び/又は「大きい」開口を含み、他の親水性又は疎水性領域は、実質的に平滑である、及び/又は実質的に柔軟である。
【0082】
「非常に質感がある」によって、基材がその外側表面に頂点及び谷部分を有し、2つの連続する頂点間の距離は約1mm超過であり、頂点によって画定される面積は約300mm2であり、谷部分の底部から頂点の頂部までのz寸法の高さは、約0.3mm超過であることを意味する。当業者であれば、頂点の頂部に頂点がある実施形態では、z寸法の高さは谷部分の最下部から頂点の最上部までで測定されることに気付くであろう。
【0083】
「大きい開口」によって、各開口の突出表面がX−Y寸法で、少なくとも約0.5mm2、好ましくは少なくとも約1mm2、より好ましくは少なくとも約2mm2であることを意味する。
【0084】
「実質的に平滑な」によって、質感がわずかであり、及び/又は開口が小さい(約0.5mm2未満)ことを意味する。
【0085】
「実質的に柔軟な」によって、圧力下で構造が変形可能であることを意味する。換言すれば、質感のある基材が柔軟である場合、通常のモップ作業プロセス中に基材に圧力(約4.7g/cm2)がかけられたときに、質感が最小化されるか除去されることができる。
【0086】
特に、非常に質感のある及び/又は大きい開口を有する部分又は領域は、下側層の清浄効率を向上させる一方で、平滑な部分又は表面は、質感のある材料で描かれた線を取り除くスキージのように作用することにより、硬質表面に線が形成されるのを防ぐ。
【0087】
上述したように、高摩擦領域は、低摩擦領域と比較してより容易に汚れで飽和する傾向がある。結果として、床面をモップ掛けした後にパッドの下面を見た場合、ユーザはパッドが不均一に清浄しているという印象を持つ場合がある。
【0088】
図18及び19に示す一実施形態では、パッド34の「機能性」表面144は、少なくとも半透明、好ましくは透明な少なくとも1つの領域1144を含む。「半透明な」によって、この領域が半透明であって、半透明材料の向こうにある濃淡を有する表面が、裸眼で視認できることを意味する。好ましい実施形態では、半透明領域は、標準ASTM D2457試験方法を用いて60度の設定で測定値を計測したときに、約70%超過、好ましくは約80%超過、より好ましくは約90%超過の光透過率を有する。一実施形態では、半透明領域は、標準ASTM方法ASTM D1003を用いて計測したときに、約80%未満、好ましくは約60%未満、より好ましくは約40%未満の曇りを有する。好ましい実施形態では、「機能性」表面144は、少なくとも半透明であるが好ましくは透明な、少なくとも1つの低摩擦領域1144と、実質的に不透明な少なくとも1つの高摩擦領域2144とを含む。半透明又は透明領域により、ユーザが、クリーニングパッドの下面を視覚的に点検して、吸収性コアに捕捉された汚れの量を判断することができる。当業者であれば、吸収性コアにより多量の汚れが捕捉されるほど、半透明又は透明領域が暗く見えることが、理解されるであろう。したがって、ユーザは、使用済みのパッドを交換及び廃棄する必要性を、より良好に判断することができる。
【0089】
半透明領域は、孔あき成形フィルム又は不織布基材の製造プロセス中に、低レベルの着色剤(例えば、二酸化チタンなどの白色化剤)をポリマーに添加することで得られる。透明領域は、製造プロセス中に、孔あき成形フィルム又は不織布基材を作製するのに使用されるポリマーに着色剤が添加されていない場合に得られる。
【0090】
当業者であれば、上述したいずれのクリーニングパッドも、洗浄溶液に予め含浸させることで、このパッドを、洗浄溶液の供給源をそれ自体に有さないいわゆる「乾式」クリーニング器具と共に使用できることが、理解されるであろう。洗浄溶液は、当該技術分野において既知のいずれの洗浄性溶液であることもできる。好適な洗浄溶液の非限定的な例としては、水、1又はそれ以上の界面活性剤、任意に溶媒、任意に泡抑制剤、任意に1又はそれ以上の抗菌剤、任意に1又はそれ以上のポリマー、及びこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
上記に開示したクリーニングパッドに加えて、クリーニングパッドを改質する必要なく、いずれのクリーニングパッドの清浄効率も向上できることが見出されている。
【0091】
典型的には、洗浄溶液を小さい面積に放出する(すなわち、0.1m2未満の範囲に3ml)、1秒間作動する液体放出機構を有するクリーニング器具のユーザは、器具が固定した位置にあり、パッドが床に接触しているときに、機構を作動させて溶液を硬質表面に分配するように指導される。一旦数ミリリットルの溶液が適用されると、ユーザは次に所定の範囲(通常は幅約0.5m、長さ約1mの範囲)を拭くように指導される。この第1の範囲を拭いた後、ユーザは典型的には、器具のモップヘッドを床の乾いた範囲に隣接して配置し、再び洗浄溶液をいくらか分配して、表面全体が清浄されるまでこのプロセスを繰り返す。
【0092】
モップヘッドが床面と接触しないようにクリーニング器具を保持しながら、液体放出機構を作動させるように、ユーザが指導された場合に、湿式クリーニング器具の清浄効率が向上すると考えられている。液体放出機構を作動させて、洗浄溶液を床面の少なくとも約0.5m2、好ましくは約1m2、より好ましくは約1.5m2に適用するように、ユーザを指導することもできる。比較的大きい面積が「濡らされる」と(好ましくは少なくとも約5ml/m2、より好ましくは少なくとも約10ml/m2、さらにより好ましくは少なくとも15ml/m2)、ユーザはクリーニングパッドを用いて「濡れた」表面を拭くように指導される。
【0093】
別の実施形態では、クリーニングパッドが床面と接触しているときに液体放出機構を作動させ、床面を前後に拭いている間液体放出機構を作動させたままにするように、ユーザを指導することもできる。表面を清浄するこれらの方法はどちらも、クリーニング器具が上述したような吸収性の高いパッドと共に使用される場合に特に有用な、より良好でより均一な床面の濡れを提供する。
【0094】
上述の方法は、あらゆる種類のクリーニング器具の清浄効率を向上させるが、特に洗浄溶液を比較的小さい面積に放出するクリーニング器具の清浄効率を向上させる。これらの器具が、超吸収性材料を含むクリーニングパッドと共に使用された場合に、後者の清浄効率はさらに高くなる。
【0095】
一実施形態では、超吸収性コアを有し、包装内に入れられる少なくとも1つのクリーニングパッドが、クリーニングキットとして消費者に販売されることができる。包装は、文字、図面又は絵の形態で、上述の表面清浄方法の1つの工程にしたがうように、ユーザに指示する使用説明書を含むことができる。使用説明書はまた、クリーニングパッド、保存容器に直接印刷することもでき、あるいは視聴覚的な記録物を介して消費者に伝達することもできることが、理解されるであろう。一実施形態では、クリーニングキットはさらに、洗浄溶液を充填した保存容器、及び溶液を硬質表面に分配する手段を含む。好適な分配手段の非限定的な例としては、ハンドスプレー又は噴射用ボトルが挙げられる。
【0096】
上述のクリーニングキットは、特に既に「乾式」クリーニング器具(例えば、スウィファー(SWIFFER)(登録商標)クリーニング器具又はプレッジ・グラブイット(PLEDGE GRAB-IT)(登録商標)クリーニング器具)を所有しているが、上述の湿式クリーニング器具のような追加の用具を購入しようとしない消費者に、クリーニングパッドを試用させるのに、特に有利であり得る。また、クリーニングキットにより、比較的小さい面積に洗浄溶液を放出可能なクリーニング器具を既に所有している消費者に、超吸収性材料を有するクリーニングパッドを試用させることもできる。これらのクリーニングキットは、既に「乾式」クリーニング器具又は「湿式」クリーニング器具のいずれかを所有している消費者を対象としているが、これらの消費者は、電話調査、郵便又は電子メールによって送付されるか、あるいは消費者が直接インターネット上でウェブサイトからダウンロードするクーポンを介して特定することができる。消費者がこのようなクリーニングパッドを試用する機会を与えられた場合、その製品効用に対する認識が向上することが示されている。
【0097】
主題発明の特定の実施形態について説明してきたが、主題発明の様々な変形及び変更が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく実施可能であることは当業者に明らかである。さらに、本発明をある特定の実施形態と関連させて説明したが、限られた手段によるものであり、本発明の範囲は添付の請求項によって定義され、従来技術で認められるのと同様に広範に解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】「湿式」クリーニング器具の一例の等角図。
【図2】図1の器具と共に使用可能なクリーニングパッドの断面図。
【図3】図2のクリーニングパッドの等角図。
【図4】「湿式」クリーニング器具の別の例の等角図。
【図5】クリーニングパッドの一実施形態の断面図。
【図6】図5のクリーニングパッドの底面図。
【図7】クリーニングパッドの別の実施形態の断面図。
【図8】図7のクリーニングパッドの底面図。
【図9】クリーニングパッドの別の実施形態の底面図。
【図10】クリーニングパッドの別の実施形態の断面図。
【図11】図10のクリーニングパッドの底面図。
【図12】クリーニングパッドの別の実施形態の断面図。
【図13】クリーニングパッドの別の実施形態の断面図。
【図14】図13のクリーニングパッドの底面図。
【図15】「摩擦係数」試験の概略図。
【図16】クリーニングパッドの別の実施形態の断面図。
【図17】図16のクリーニングパッドの底面図。
【図18】クリーニングパッドの別の実施形態の断面図。
【図19】図18のクリーニングパッドの底面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面を有する下部層;及び前記下部層と直接流体連通している吸収性層を含む使い捨てクリーニング基材であって、
前記使い捨てクリーニングパッドは、前記下部層の前記下面が、高摩擦領域と低摩擦領域とを含む機能性クリーニング表面を画定することを特徴とする、使い捨てクリーニング基材。
【請求項2】
前記高摩擦領域の前記下面が前記機能性表面の約5%〜約50%である、請求項1に記載の使い捨てクリーニング基材。
【請求項3】
前記高摩擦領域の前記下面が前記機能性表面の約10%〜約40%である、請求項2に記載の使い捨て基材。
【請求項4】
前記低摩擦領域の前記下面が前記機能性表面の約50%〜約95%である、請求項1に記載の使い捨てクリーニング基材。
【請求項5】
前記低摩擦領域の前記下面が前記機能性表面の約60%〜約90%である、請求項4に記載の使い捨て基材。
【請求項6】
高摩擦領域が実質的に長手方向にあり、第1の低摩擦領域と第2の低摩擦領域との間に配置される、請求項1に記載の使い捨て基材。
【請求項7】
前記高摩擦領域が不織布材料から作製される、請求項1に記載の使い捨て基材。
【請求項8】
前記低摩擦領域が半透明である、請求項1に記載の使い捨て基材。
【請求項9】
前記吸収性層が超吸収性材料を含む、請求項1に記載の使い捨て基材。
【請求項10】
下面を有する下部層;及び前記下部層と直接流体連通している吸収性層を含む使い捨てクリーニング基材であって、
前記使い捨てクリーニングパッドは、前記下部層が、親水性材料から作製される第1層と疎水性材料から作製される第2層とを含むことを特徴とする、使い捨てクリーニング基材。
【請求項11】
前記第1層が不織布材料から作製される、請求項10に記載の使い捨てクリーニング基材。
【請求項12】
前記不織布材料が、約30g/m2〜約100g/m2の坪量を有する、請求項11に記載の使い捨てクリーニング基材。
【請求項13】
前記第1層が、少なくとも約0.35の「低適用量動摩擦係数」を有する、請求項10に記載の使い捨てクリーニング基材。
【請求項14】
前記第1層が、少なくとも約0.35の「高適用量動摩擦係数」を有する、請求項10に記載の使い捨てクリーニング基材。
【請求項15】
前記第2層が、約0.5未満の「低適用量動摩擦係数」を有する、請求項10に記載の使い捨てクリーニング基材。
【請求項16】
前記第2層が、約0.45未満の「高適用量動摩擦係数」を有する、請求項10に記載の使い捨てクリーニング基材。
【請求項17】
下面を有する下部層、及び前記下部層と直接流体連通している吸収性層を含む使い捨てクリーニング基材であって、
前記使い捨てクリーニングパッドは、前記下部層の前記下面が、親水性材料から作製される高摩擦領域と、低摩擦領域とを含む機能性表面を画定し、前記高摩擦領域が少なくとも約0.35の「低適用量動摩擦係数」を有することを特徴とする、使い捨てクリーニング基材。
【請求項18】
前記高摩擦領域が、少なくとも約0.35の「高適用量動摩擦係数」を有する、請求項17に記載の使い捨てクリーニング基材。
【請求項19】
前記低摩擦領域が、約0.5未満の「低適用量動摩擦係数」を有する、請求項17に記載の使い捨てクリーニング基材。
【請求項20】
前記低摩擦領域が、約0.45未満の「高適用量動摩擦係数」を有する、請求高19に記載の使い捨てクリーニング基材。
【請求項21】
下部層及び前記下部層と直接流体連通している下面を有する吸収性層を含む、硬質表面からごみ及び汚れを除去するための使い捨てクリーニング基材であって、
前記使い捨てクリーニングパッドは、前記下部層の少なくとも一部分が半透明であり、前記吸収性層の前記下面上に堆積するごみ及び汚れが、前記下部層の前記半透明部分を通して目に見えることを特徴とする、使い捨てクリーニング基材。
【請求項22】
前記半透明部分が約70%超過の光透過率を有する、請求項21に記載の使い捨てクリーニング基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2006−526463(P2006−526463A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509099(P2006−509099)
【出願日】平成16年6月11日(2004.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2004/018699
【国際公開番号】WO2004/110239
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】