説明

クリーニングローラ及びクリーニングローラの製造方法

【課題】 その表面が均一で耐磨耗性に優れていると共に、数少ない手順で安価に製造が可能となるクリーニングローラ及びクリーニングローラの製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明のクリーニングローラ10は、円柱状の芯金本体22を備える芯金20と、芯金本体22の外周面を覆うように螺旋状(スパイラル状)に巻き付けられた帯状多孔質弾性体32からなるクリーニング層30とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の電画像形成装置等の感光体や定着ローラ等のようなクリーニングを必要とする被清掃部材を清掃し回復させるために用いられるクリーニングローラ及びクリーニングローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真技術の進歩に伴い、複写機、プリンタ等の画像形成装置におけるクリーニングローラにおいては、高速化に伴い、高いクリーニング特性が要求されるようになっている。
【0003】
クリーニング材料としては、一般的にウレタン樹脂が多く用いられているが、ウレタン樹脂から形成されるローラは、十分なクリーニング特性が得られないといった問題がある。
【0004】
そこで、ウレタン樹脂に代わるクリーニング特性の高い材料として、メラミン樹脂が注目されている。しかしながら、メラミン樹脂は、耐熱性に優れ、熱的には安定であるといった優れた特性を有している反面、形成される発泡体のセル(気泡)が不均一でしかもその中に大きな径のセルが含まれるため、均一な圧接力が得られず、しかも強度が小さく、耐磨耗性に欠け、脆いといった欠点を有している。
【0005】
そのため、画像形成装置における感光体ドラムや定着ローラ等の被清掃部材の表面を清掃するとき、清掃ムラが生じたり、また、被清掃部材の表面と摺擦されるとき、表面からセル部分が粒子の状態で表面からはがれたりするといった問題が生じ、これによって十分なクリーニング特性が得られないといった成形状の問題を有していた。
【0006】
このようなメラミン樹脂を利用したクリーニングローラの欠点を解決するために、特許文献1乃至特許文献3にメラミン樹脂の脆さを改善しようとしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 特開平7−26054号公報
【特許文献2】 特開平7−157590号公報
【特許文献3】 特開2005−195709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1および2に開示されたメラミン樹脂を利用したクリーニングローラは、画像形成装置に使用する上ではいまだ十分に欠点を解決してはいなかった。
【0009】
また、特許文献3に開示されたメラミン樹脂を利用したクリーニングローラにおいては、メラミン樹脂をシャフト(芯金)に接着してからモールドを使用して径方向に圧縮するため、製造工程が煩雑で製造装置が複雑かつ高価となるばかりでなく、充分な圧縮率が得られないという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の目的は、上述した事情に鑑みなされたもので、この発明の主たる目的は、クリーニングローラの表面が均一でしかも耐磨耗性に優れ、剥がれにくいクリーニングローラであるとともに、数少ない手順で安価に製造が可能となるクリーニングローラ及びクリーニングローラの製造方法を提供するものである。
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明に係わるクリーニングローラは、請求項1の記載によれば、芯金と、前記芯金の外周面を覆うように形成された多孔質弾性体からなるクリーニング層とを備え、前記多孔質弾性体は、前記芯金の径方向に30%以上の圧縮率で圧縮されて前記芯金に固定されていることを特徴とする。
【0012】
また、この発明に係わるクリーニングローラは、請求項2の記載によれば、前記多孔質弾性体が、多孔質メラミン樹脂からなることを特徴とする。
【0013】
また、この発明に係わるクリーニングローラは、請求項3の記載によれば、前記多孔質弾性体は、帯状に形成されており、前記芯金へ螺旋状に巻き付け固定されていることを特徴とする。
【0014】
また、この発明に係わるクリーニングローラは、請求項4の記載によれば、前記芯金へ螺旋状に巻き付け固定されている前記多孔質弾性体は、前記多孔質弾性体の長手方向で隣り合う位置に所定の間隔を有する隙間が設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明に係わるクリーニングローラの製造方法は、請求項5の記載によれば、芯金と、前記芯金の外周面を覆うように形成されたクリーニング層とを備えるクリーニングローラを製造するクリーニングローラの製造方法であって、所定の長さと幅と厚みを有する多孔質弾性体を前記厚みの方向に30%以上の圧縮率で圧縮し、前記多孔質弾性体を前記長さの方向に平行に切断して帯状多孔質弾性体とし、前記帯状多孔質弾性体を前記厚みの方向が前記芯金の径方向となるように前記芯金へ螺旋状に巻き付け固定し、前記帯状多孔質弾性体の表面を研磨して前記帯状多孔質弾性体を前記クリーニング層とすることを特徴とする。
【0016】
また、この発明に係わるクリーニングローラの製造方法は、請求項6の記載によれば、前記多孔質弾性体は、多孔質メラミン樹脂からなることを特徴とする。
【0017】
また、この発明に係わるクリーニングローラの製造方法は、請求項7の記載によれば、前記帯状多孔質弾性体の長手方向で隣り合う位置に所定の間隔を有する隙間を設けて前記帯状多孔質弾性体を前記芯金へ螺旋状に巻き付け固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明により得られるクリーニングローラは、表面状態が均質で耐磨耗性及び耐久性が向上し、画像形成装置等におけるクリーニング部材として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 本発明のクリーニングローラ10の概略斜視図である。
【図2】 本発明のクリーニングローラ10に使用する帯状多孔質弾性体の製造工程の一例を示す概略図である。
【図3】 帯状多孔質弾性体を本発明のクリーニングローラ10に巻き付ける製造工程の一例を示す概略図である。
【図4】 多孔質弾性体の圧縮率を変化させてクリーニング特性と耐久性等の良否の試験を行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0020】
以下に図1乃至図3を用いて、本発明のクリーニングローラを説明する。図1は、本発明のクリーニングローラ10の概略斜視図である。図2は、本発明のクリーニングローラ10に使用する帯状多孔質弾性体の製造工程の一例を示す概略図である。図3は、帯状多孔質弾性体を本発明のクリーニングローラ10に巻き付ける製造工程の一例を示す概略図である。
【0021】
図1に示すように、本発明のクリーニングローラ10は、芯金20と、芯金20の外周面に設けられたクリーニング層30とを備えている。
【0022】
芯金20は、円柱状の芯金本体22と、この芯金本体22の両端に設けられ、画像形成装置に設けられたクリーニングローラ10を取り付ける軸受けに嵌め込まれる円柱状の2個の軸部24とから構成されている。なお、芯金20は鉄等の金属で作製することができる。
【0023】
また、図1におけるLは、画像形成装置内の感光体や定着ローラ等をクリーニングするために必要なクリーニングローラ10のローラ面の幅を示している。
【0024】
また、クリーニング層30は、芯金本体22を構成する円柱の外周面を覆うように形成された連続気泡型の多孔質弾性体から構成されている。また、この多孔質弾性体は、帯状に形成された帯状多孔質弾性体32であり、芯金本体22へ螺旋状(スパイラル状)に巻き付けられて固定されている。なお、この多孔質弾性体は、JISハンドブック19ゴム1997の第29頁に定義されているゴム状弾性を有する弾性体である。
【0025】
また、図1におけるWは、芯金本体22へ螺旋状に巻き付けられて固定されている帯状多孔質弾性体32の幅を示している。
【0026】
なお、クリーニング層30を構成する多孔質弾性体としては、多孔質メラミン樹脂が特に好ましい。多孔質メラミン樹脂は、例えば、BASF社からBASOTECT(登録商標)という商品名で製造され、市販されており、またジュラロン(株)からジュラミンという商品名で市販されている。
【0027】
この多孔質メラミン樹脂は、一般に、表面に形成される複数のセルの大きさが不均一で、かつ、その複数のセルの中には、特に大きなセルが散在して形成されるため、このままクリーニングローラとして使用した場合は、圧接力にムラが生じる。また、多孔質メラミン樹脂は、耐磨耗性及び耐久性に欠けるという特性を有しているため、クリーニングローラとしてそのまま利用することは困難である。
【0028】
このような多孔質メラミン樹脂の特性を鑑み、本発明においてクリーニング層30を構成する多孔質弾性体は、芯金本体22の径方向に30%以上の圧縮率で圧縮されている。ここで、圧縮率(CR)は、式:
CR={(t−t)/t}×100 (1)
(式(1)において、tは圧縮前多孔質弾性体の厚み;tは圧縮後多孔質弾性体の厚み)により算出される値である。
【0029】
このような多孔質弾性体を芯金20に圧縮状態で取り付ける手順について、図2及び図3を用いて以下に説明する。
【0030】
図2は、本発明のクリーニングローラ10に使用する帯状多孔質弾性体の製造工程の一例を示す概略図であり、図2(a)は、所定の長さ(L)と幅(W)と厚み(t)を有する圧縮前多孔質弾性体31、図2(b)は厚みがtとなるように圧縮した後の多孔質弾性体を長さLの方向に平行に幅Wで切断した複数の帯状多孔質弾性体32を示している。なお、圧縮前多孔質弾性体31の厚みtと圧縮後の帯状多孔質弾性体32の厚みtの関係は、t>tとなっている。
【0031】
また、図2におけるLは、帯状多孔質弾性体32の製造直後の長さを示している。また、Lの長さはL>Lとなっているとともに、帯状多孔質弾性体32を芯金20の外周面に螺旋状に巻き付けた際に1本で該外周面を全て覆うことが可能となるようにその長さが設定されている。
【0032】
本発明のクリーニングローラ10のクリーニング層30を構成する帯状多孔質弾性体32は、市販されている多孔質メラミン樹脂からなる圧縮前多孔質弾性体31を、厚みがtからtになるように予め圧縮した後に幅Wで切断して製造するため、多数の帯状多孔質弾性体32を同時に製造することが可能である。また、この圧縮には、例えば汎用的な熱プレス機を使用することが可能であり、特許文献3に示すクリーニングローラのような径方向に圧縮するために特別に準備されたモールドを使用する必要が無い。
【0033】
図3は、上記のようにして製造された幅W、厚みt、長さLの帯状多孔質弾性体32を芯金20の外周面に螺旋状に巻き付ける製造工程の一例を示す概略図である。
【0034】
図3(a)は、芯金本体22を構成する円柱の外周面に両面テープを貼り付け、該両面テープの該外周面とは反対の面に帯状多孔質弾性体32を螺旋状に巻き付けて固定した状態を示す図である。また、図3(b)は、芯金本体22を構成する円柱の外周面に螺旋状に巻き付けた帯状多孔質弾性体32を、画像形成装置内の感光体や定着ローラ等をクリーニングするために必要なクリーニングローラ10のローラ面の幅Lとなるように、芯金本体22の軸方向における両端を切断した状態を示す図である。
【0035】
なお、帯状多孔質弾性体32を芯金本体22の外周面に螺旋状に巻き付ける際に、帯状多孔質弾性体32の長手方向(長さLの方向)で隣り合う位置には、所定の間隔を有する隙間33が設けられている。この隙間33は、帯状多孔質弾性体32を芯金本体22の外周面で隙間無く巻き付けると隣り合う2つの帯状多孔質弾性体32同士で押圧力が発生する箇所ができることがあり、当該押圧力に対する応力(押圧力の作用する箇所に生じる抵抗力)で帯状多孔質弾性体32の長手方向の角が盛り上がることを防止するためである。
【0036】
また、図3(a)において、芯金本体22を構成する円柱の外周面に貼り付ける両面テープの芯金本体22の軸方向における長さは、帯状多孔質弾性体32の両端を切断した際に両面テープが芯金本体22から露出しないようにLとしてある。
【0037】
なお、上記の説明において、帯状多孔質弾性体32を芯金20の外周面に貼り付けるために両面テープを使用するとしたが、例えば、該外周面に予めホットメルトなどの接着剤を塗布したり、ホットメルトからなる接着シートを貼り付けたりした後に、例えば電熱炉等で加熱して芯金本体22に固定するようにしても良い。
【0038】
また、図3(b)において、帯状多孔質弾性体32を幅Lとなるように両端を切断した後に、帯状多孔質弾性体32の表面を図示しない研磨機等で研磨して、所定の形状、外径、及び表面の均質さを有するクリーニング層30を完成する。
【0039】
なお、略直方体の形状を有する帯状多孔質弾性体32を芯金本体22の外周面である円柱へ隙間33を設けながら螺旋状に巻き付けると、隣り合う2つの帯状多孔質弾性体32同士による押圧力は発生しないが、略直方体を円柱に巻き付けたことによる帯状多孔質弾性体32の変形は発生する。この変形は、帯状多孔質弾性体32の長手方向の角で発生し、結果として、隙間33を構成する隣り合う2つの帯状多孔質弾性体32の各々の角に凸部が発生する。しかしながら、帯状多孔質弾性体32が円柱の外周面に螺旋状、即ち斜めに設けられているので、該凸部はさほど大きくならないこと、また、上述した研磨により取り除かれることにより、本発明のクリーニングローラ10の圧接力が不均一となることはない。
【0040】
このようにして製造したクリーニングローラ10は、クリーニング層30を構成する帯状多孔質弾性体32が芯金20の径方向に30%以上の圧縮率で圧縮されているので、帯状多孔質弾性体32としての多孔質メラミン樹脂のセルが全体に均一且つ凝縮した緻密な状態となって圧接力が均一化されることによりクリーニング特性が向上する。また、この圧縮により、多孔質メラミン樹脂の耐磨耗性及び耐久性も向上し、本発明のクリーニングローラ10は、画像形成装置等におけるクリーニング部材として適したものとなる。
【0041】
また、本発明のクリーニングローラ10における帯状多孔質弾性体32は、帯状に切断する前の圧縮前多孔質弾性体31をそのまま圧縮するため、特許文献3の径方向の圧縮での円筒状モールドのような、その圧縮のために特別に準備した治具等を必要とすることもなく、圧縮の作業が非常に簡便である。
【0042】
また、特許文献3の径方向の圧縮において、圧縮率を変更するためには、その都度円筒状モールドを準備する必要がある。これに対して、本発明のクリーニングローラ10では、芯金20の外周面を覆うように貼り付けられることでその表面が曲面となっている状態で圧縮するのではなく、表面が平面の状態である圧縮前多孔質弾性体31を圧縮するので、圧縮率の変更が簡便で、仕様変更にも容易に対応できる。
【0043】
さらに、多孔質メラミン樹脂の耐磨耗性が低くて脆いという欠点は、圧縮率を高くするほど補うことができるが、特許文献3では多孔質メラミン樹脂の長手方向を円筒状モールドに圧入することで径方向の圧縮を行うため、高い圧縮率とすることが難しい。
【0044】
これに対して、本発明のクリーニングローラ10では、芯金20の外周面を覆うように貼り付けられることでその表面が曲面となっている状態で圧縮するのではなく、表面が平面の状態である圧縮前多孔質弾性体31を圧縮するので、高い圧縮率を選択することが可能である。即ち、本発明のクリーニングローラ10は、クリーニング層30を緻密な状態とすることが可能であり、この結果、均一な圧接力によりクリーニング特性が高くすることと耐磨耗性及び耐久性を向上させることが可能である。
【0045】
また、帯状多孔質弾性体32としての多孔質メラミン樹脂に形成されている発泡体のセルは、不均一でしかもその中に大きな径のセルが含まれている。このようなセルは、クリーニングローラ10の表面にも存在するため、圧縮の方向によっては影響することがあった。
【0046】
即ち、クリーニング層を芯金の軸方向へ圧縮した場合に、特にその圧縮率が小さい場合に、クリーニングローラ10の表面に存在するセルが深い窪み状となる。この深い窪み状となったセルは、クリーニング層30の表面に不規則かつ不均一に存在するため均一な圧接力が得られなくなり、その結果、クリーニング特性が劣化することがある。
【0047】
これに対して、本発明のクリーニングローラ10では、クリーニング層30は厚みの方向に圧縮された帯状多孔質弾性体32をその厚みの方向(即ち圧縮の方向)が芯金20の径方向となるように芯金本体22の円柱の外周面に巻き付けて製造するため、圧縮された帯状多孔質弾性体32のセルは、深さ方向(帯状多孔質弾性体32の厚み方向)に圧縮されてその深さが浅くなる。即ち、本発明のクリーニングローラ10は、その表面に存在するセルが深い窪み状とならずに表面の凹凸が非常に少なくすることが可能であり、この結果、均一な圧接力により従来のクリーニングローラと比べてクリーニング特性が高い。
【0048】
なお、本発明の特徴として、圧縮前多孔質弾性体31を予め圧縮してからクリーニング層30として用いることにより、圧縮率の変更を簡便とする、また、高い圧縮率を実現することがあげられる。このために、本発明では、予め圧縮するのに都合が良い、表面が平面の状態である圧縮前多孔質弾性体31を圧縮し、これを帯状に切断して帯状多孔質弾性体32として利用している。
【0049】
さらに、本発明では、この略直方体の形状を有する帯状多孔質弾性体32を芯金本体22の外周面に配置する(即ち、平面体を曲面体に取り付ける)方法として、帯状多孔質弾性体32を芯金本体22の円柱の外周面に所定の間隔を有する隙間33を設けて螺旋状に巻き付ける方法を採用している。なお、隙間33は、隣り合う2つの帯状多孔質弾性体32の向かい合った面(帯状多孔質弾性体32の厚みtの方向に平行な面であり、芯金20の径方向に平行な面)と隣り合う2つの帯状多孔質弾性体32の各々の角とで構成されており、その深さはtとなる。また、この隙間33を構成する隣り合う2つの帯状多孔質弾性体32の各々の角が被清掃部材の表面を摺擦することにより、クリーニング特性が向上する。なお、隙間33の間隔は、このクリーニング特性の向上を最適とするために、例えば1mm未満等と任意に設定することが可能となっている。
【0050】
これに対して、例えば、芯金本体22の円柱の外周面に芯金20の軸方向と平行になるように複数の帯状多孔質弾性体32を取り付けることにより、略直方体の形状を有する帯状多孔質弾性体32を芯金本体22の外周面に配置する方法がある。しかしながら、該方法では、隣り合う2つの帯状多孔質弾性体32の隙間はV字形状(谷間状)であるため、クリーニング層30を所定の形状及び外径にするための研磨により隙間の間隔が変化してしまい、クリーニング特性の向上を最適にする隙間の間隔を設定することが難しいという欠点があった。
【0051】
この欠点に対して、本発明では、隙間33は、円柱の外周面に螺旋状、即ち斜めに設けられているので、隣り合う2つの帯状多孔質弾性体32の向かい合った面が略平行となっている。このため、隙間33の所定の間隔は、クリーニング層30を所定の形状及び外径にするための研磨が行われても変わらないので、予定された間隔に設定することが容易である。
【0052】
また、略直方体の形状を有する帯状多孔質弾性体32を芯金本体22の外周面に配置する別の方法として、例えば、芯金本体22の円柱の外周面に芯金20の軸方向と直角になるように複数の帯状多孔質弾性体32を巻き付ける方法がある。しかしながら、該方法では、多数の帯状多孔質弾性体32を取り付けなければならずその作業が煩雑となる。また、芯金の径は通常6mm〜10mmと小さいため、略直方体の形状となっている帯状多孔質弾性体32を芯金に巻き付けると変形が大きくなり、結果として帯状多孔質弾性体32の長手方向の角で発生する凸部が大きくなる。さらには、被清掃部材の表面を清掃する際に、帯状多孔質弾性体32の角が被清掃部材の表面に対していつも同じ位置となる、等の欠点がある。
【0053】
この欠点に対して、本発明では1本の帯状多孔質弾性体32で巻き付けられるため作業が煩雑となることがない。また、帯状多孔質弾性体32が螺旋状に巻き付けられるため変形も小さく、表面に発生する凸部は研磨により容易に取り除くことができる程度となる。さらには、隙間33を構成する隣り合う2つの帯状多孔質弾性体32の各々の角は、クリーニング層30の表面に螺旋状、即ち斜めに配置されているので、被清掃部材の表面に対していつも同じ位置となることがなく、被清掃部材の表面全体に対して十分なクリーニング特性を得ることができる。
【0054】
また、略直方体の形状を有する帯状多孔質弾性体32を芯金本体22の外周面に配置する、さらに別の方法として、例えば、帯状多孔質弾性体32の長手方向(長さLの方向)に貫通穴を設けて芯金本体22を挿通する方法がある。しかしながら、該方法では、帯状多孔質弾性体32が圧縮されている方向が、芯金20の径方向の圧縮となっている箇所と、芯金20の径方向と角度(例えば径方向と直角の角度)を持って圧縮されている箇所とが混在することになる。この結果、芯金20の径方向の圧縮となっている箇所と、芯金20の径方向と角度を持って圧縮されている箇所での圧接力が均一とはならず、被清掃部材の表面を清掃するとき、清掃ムラが生じる、また、被清掃部材の表面と摺擦されるとき、表面からセル部分が粒子の状態で表面からはがれたりする、等の欠点がある。
【0055】
この欠点に対して、本発明では、厚みの方向に圧縮された帯状多孔質弾性体32を芯金本体22の円柱の外周面へ螺旋状に巻き付けているので、その表面の全てにおいて芯金20の径方向の圧縮となるため、その表面全体において圧接力が均一化されており、クリーニング特性が非常に高い。
【0056】
以上のように、本発明のクリーニングローラ10は、電子写真式ファクシミリ装置、電子写真式プリンタ等の電子写真式画像形成装置におけるクリーニングローラとして好適に使用し得るものである。
【0057】
以下、本発明を具体的な例により説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。図4は、多孔質弾性体の圧縮率を変化させてクリーニング特性と耐久性等の良否の試験を行った結果である。
【0058】
試料作製のために、長さLが500mm、幅Wが300mmの圧縮前多孔質弾性体としての多孔質メラミン樹脂(BASF社製BASOTECT(登録商標))を厚みtが3.7mm、4.0mm、4.3mm、4.6mm、5.0mm、6.0mm、7.0mm、8.0mm、9.0mm、10.0mm、11.0mm、12.0mmの12種類準備し、圧縮後の厚みtが3.0mmとなるように各々圧縮した後に幅Wが30mmとなるように長さLの方向に平行に切断して帯状多孔質弾性体とした。
【0059】
次に、芯金本体22の軸方向の長さが360mmの芯金を準備し、この芯金本体22の外周面に両面テープを350mmの長さで貼り付けて上記の12種類の帯状多孔質弾性体を螺旋状に巻き付けて固定し、芯金本体22の軸方向における両端を切断し、その表面を研磨することで試料A〜Lを得た。
【0060】
具体的には、圧縮前多孔質弾性体の厚みtが3.7mmを用いた試料が試料Aである。なお、その圧縮率は、上述した式(1)によると19%となる。
【0061】
同様に、試料Bは圧縮前多孔質弾性体の厚みtが4.0mmを用いた試料で、その圧縮率は25%、試料Cは圧縮前多孔質弾性体の厚みtが4.3mmを用いた試料で、その圧縮率は30%、試料Dは圧縮前多孔質弾性体の厚みtが4.6mmを用いた試料で、その圧縮率は35%、試料Eは圧縮前多孔質弾性体の厚みtが5.0mmを用いた試料で、その圧縮率は40%である。
【0062】
また、試料Fは圧縮前多孔質弾性体の厚みtが6.0mmを用いた試料で、その圧縮率は50%、試料Gは圧縮前多孔質弾性体の厚みtが7.0mmを用いた試料で、その圧縮率は57%、試料Hは圧縮前多孔質弾性体の厚みtが8.0mmを用いた試料で、その圧縮率は63%、試料Iは圧縮前多孔質弾性体の厚みtが9.0mmを用いた試料で、その圧縮率は67%、試料Jは圧縮前多孔質弾性体の厚みtが10.0mmを用いた試料で、その圧縮率は70%、試料Kは圧縮前多孔質弾性体の厚みtが11.0mmを用いた試料で、その圧縮率は73%、試料Lは圧縮前多孔質弾性体の厚みtが12.0mmを用いた試料で、その圧縮率は75%となっている。
【0063】
このようにして得られた試料A〜Lのクリーニングローラ10を電子写真複写機の感光体ドラム表面をクリーニングするクリーニングローラとして取り付け、画像形成を行ったところ、試料C〜Lのクリーニングローラでは、感光体ドラム表面に均一に圧接してクリーニングムラもなく、また、クリーニングローラの表面の剥がれもなかった。
【0064】
しかしながら、試料Aはクリーニングムラとクリーニングローラの表面の剥がれが発生し、試料Bはクリーニングムラは発生しなかったがクリーニングローラの表面の剥がれが発生した。
【0065】
この図4に示す試験結果からわかるように、多孔質メラミン樹脂の圧縮率が30%以上であると、多孔質メラミン樹脂の強度が有意に向上し、多孔質メラミン樹脂をクリーニングローラに使用した際の表面の剥がれの問題を解決し、多孔質メラミン樹脂をクリーニングローラとして使用した際の高いクリーニング特性を損なうことがなくなった。
【符号の説明】
【0066】
10・・クリーニングローラ、 20・・芯金、 22・・芯金本体、 24・・軸部、 30・・クリーニング層、 31・・圧縮前多孔質弾性体、 32・・帯状多孔質弾性体、 33・・・隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と、前記芯金の外周面を覆うように形成された多孔質弾性体からなるクリーニング層とを備え、前記多孔質弾性体は、前記芯金の径方向に30%以上の圧縮率で圧縮されて前記芯金に固定されていることを特徴とするクリーニングローラ。
【請求項2】
前記多孔質弾性体が、多孔質メラミン樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載のクリーニングローラ。
【請求項3】
前記多孔質弾性体は、帯状に形成されており、前記芯金へ螺旋状に巻き付け固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクリーニングローラ。
【請求項4】
前記芯金へ螺旋状に巻き付け固定されている前記多孔質弾性体は、前記多孔質弾性体の長手方向で隣り合う位置に所定の間隔を有する隙間が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のクリーニングローラ。
【請求項5】
芯金と、前記芯金の外周面を覆うように形成されたクリーニング層とを備えるクリーニングローラを製造するクリーニングローラの製造方法であって、
所定の長さと幅と厚みを有する多孔質弾性体を前記厚みの方向に30%以上の圧縮率で圧縮し、
前記多孔質弾性体を前記長さの方向に平行に切断して帯状多孔質弾性体とし、
前記帯状多孔質弾性体を前記厚みの方向が前記芯金の径方向となるように前記芯金へ螺旋状に巻き付け固定し、
前記帯状多孔質弾性体の表面を研磨して前記帯状多孔質弾性体を前記クリーニング層とすることを特徴とするクリーニングローラの製造方法。
【請求項6】
前記多孔質弾性体は、多孔質メラミン樹脂からなることを特徴とする請求項5に記載のクリーニングローラの製造方法。
【請求項7】
前記帯状多孔質弾性体の長手方向で隣り合う位置に所定の間隔を有する隙間を設けて前記帯状多孔質弾性体を前記芯金へ螺旋状に巻き付け固定することを特徴とする請求項5または請求項6に記載のクリーニングローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−231165(P2010−231165A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102419(P2009−102419)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(593108255)穂高工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】