説明

クリーニング基板及びクリーニング方法

【課題】基板処理装置の稼働率の低下を防止することができるクリーニング基板及びクリーニング方法を提供する。
【解決手段】プロセスモジュール11のチャンバ17内に、円板状のシリコン基材43と、該シリコン基材43上に設けられた不織布44とを有するクリーニング基板45を搬入し、チャンバ17内を排気する排気システムによりチャンバ17内を真空引きすると共に、チャンバ17の壁面や構成部品の表面に付着しているパーティクルを剥離させて、チャンバ17内のパーティクルをクリーニング基板45の不織布44に入射させ、その後、不織布44内にパーティクルを捕捉したクリーニング基板45をチャンバ17内から搬出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング基板及びクリーニング方法に関し、特に、基板処理装置の処理室内をクリーニングするクリーニング基板、及び該クリーニング基板を使用したクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置、例えば、プラズマ処理装置は処理室(チャンバ)を備え、基板としてのウエハをチャンバ内に収容し、該チャンバ内に処理ガスを供給して、当該ウエハにプラズマ処理、例えば、エッチング処理を施す。このチャンバ内では、プラズマ処理を行うと、処理ガスの反応に起因する反応生成物が発生し、該反応生成物の一部がパーティクル(異物)として浮遊する。この浮遊しているパーティクルがウエハ表面に付着すると、該ウエハから製造される製品、例えば、半導体デバイスにおいて配線短絡が発生し、半導体デバイスの歩留まりが低下する。
【0003】
また、チャンバ内では、プラズマ処理を繰り返し行うと、チャンバの壁面や構成部品の表面にデポが付着する。このデポは、ドライクリーニングでは完全に除去することができないため、定期的にウェットクリーニングで除去される。このウェットクリーニングでは、チャンバは大気開放される。チャンバが大気開放されると、大気中の水分が壁面や構成部品の表面に付着する。チャンバの壁面や構成部品の表面に付着した水分(異物)は徐々に蒸発してチャンバ内に拡散するため、プラズマ処理に悪影響を及ぼす。
【0004】
従来、これら異物(パーティクルや水分)をチャンバ内から除去するために、チャンバ内のガスを排気する排気システムによってチャンバ内を真空引きする等のチャンバのメンテナンスを行う(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特願2007−092380号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基板処理装置のチャンバ内は高い洗浄度が要求されるため、上述したメンテナンスを長時間に亘って行う必要がある。そのため、基板処理装置の稼働を長時間に亘って停止させる必要があり、基板処理装置の稼働率が低下するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、基板処理装置の稼働率の低下を防止することができるクリーニング基板及びクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載のクリーニング基板は、基板処理装置の処理室内をクリーニングするクリーニング基板であって、前記処理室内の異物を除去する除去機構を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載のクリーニング基板は、請求項1記載のクリーニング基板において、前記除去機構はパーティクルを捕捉するパーティクル捕捉材からなることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載のクリーニング基板は、請求項1記載のクリーニング基板において、前記除去機構は水分を吸収する水分吸収材からなることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載のクリーニング基板は、請求項3記載のクリーニング基板において、前記水分吸収材は防水膜によって覆われることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載のクリーニング基板は、請求項1記載のクリーニング基板において、前記除去機構は、前記処理室内の付着物を洗浄する洗浄剤を被包する袋と、該袋を担持し、前記クリーニング基板が前記処理室内に配置された載置台に載置される際に当該クリーニング基板と当該載置台との間隙に供給されるガスの圧力を前記袋に伝達させるための複数の貫通孔が形成された基材とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載のクリーニング基板は、請求項1記載のクリーニング基板において、前記除去機構は、前記処理室内の付着物を洗浄する洗浄剤を被包する袋と、該袋を担持する基材と、前記袋に被装された金属薄膜とを有することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載のクリーニング基板は、請求項1記載のクリーニング基板において、前記除去機構は、表面に前記処理室内の付着物を洗浄する揮発性の洗浄剤が塗布された基材と、該基材の表面を覆う樹脂膜とを有することを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項8記載のクリーニング方法は、基板処理装置の処理室内のクリーニング方法であって、パーティクルを捕捉するパーティクル捕捉材を有するクリーニング基板を前記処理室内に搬入する搬入ステップと、前記処理室内を真空引きして当該処理室内のパーティクルを排出する排出ステップと、前記クリーニング基板を前記処理室内から搬出する搬出ステップとを有することを特徴とする。
【0015】
請求項9記載のクリーニング方法は、請求項8記載のクリーニング方法において、前記排出ステップでは、前記処理室内においてパーティクルの飛散を促進することを特徴とする。
【0016】
請求項10記載のクリーニング方法は、請求項8又は9記載のクリーニング方法において、前記搬出されたクリーニング基板におけるパーティクル捕捉材に捕捉されたパーティクルを除去する除去ステップを有することを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するために、請求項11記載のクリーニング方法は、基板処理装置の処理室内のクリーニング方法であって、水分を吸収する水分吸収材を有するクリーニング基板を高温状態で前記処理室内に搬入する搬入ステップと、前記搬入されたクリーニング基板を冷却すると共に前記処理室を加熱する温度調節ステップと、当該クリーニング基板を前記処理室内から搬出する搬出ステップとを有することを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成するために、請求項12記載のクリーニング方法は、基板処理装置の処理室内のクリーニング方法であって、防水膜に覆われた、水分を吸収する水分吸収材を有するクリーニング基板を前記処理室内に搬入する搬入ステップと、前記搬入されたクリーニング基板の防水膜をエッチングするエッチングステップと、当該クリーニング基板を冷却すると共に前記処理室を加熱する温度調節ステップと、当該クリーニング基板を前記処理室内から搬出する搬出ステップとを有することを特徴とする。
【0019】
請求項13記載のクリーニング方法は、請求項11又は12記載のクリーニング方法において、前記搬出されたクリーニング基板における水分吸収材に吸収された水分を除去する除去ステップを有することを特徴とする。
【0020】
上記目的を達成するために、請求項14記載のクリーニング方法は、基板を収容する処理室と、該処理室内に配置されて前記基板を載置する載置台とを備え、前記載置台の上面には複数のガス供給孔が開口している基板処理装置における前記処理室内のクリーニング方法であって、前記処理室内の付着物を洗浄する洗浄剤を被包する袋と、該袋を担持し、複数の貫通孔が形成された基材とを有するクリーニング基板を前記処理室内に搬入して前記載置台に載置する載置ステップと、当該クリーニング基板と前記載置台との間隙にガスを高圧供給する高圧供給ステップと、当該クリーニング基板を前記処理室内から搬出する搬出ステップとを有することを特徴とする。
【0021】
請求項15記載のクリーニング方法は、請求項14記載のクリーニング方法において、前記洗浄剤を中和する中和剤を被包する袋と、該袋を担持し、複数の貫通孔が形成された基材とを有する他のクリーニング基板を前記処理室内に搬入して前記載置台に載置する他の載置ステップと、当該クリーニング基板と前記載置台との間隙にガスを高圧供給する他の高圧供給ステップと、当該クリーニング基板を前記処理室内から搬出する他の搬出ステップとを有することを特徴とする。
【0022】
上記目的を達成するために、請求項16記載のクリーニング方法は、基板を収容する処理室と、該処理室内に配置されて前記基板を載置する載置台とを備え、前記載置台は内部に直流電源に接続された電極板を有する基板処理装置における前記処理室内のクリーニング方法であって、前記処理室内の付着物を洗浄する洗浄剤を被包する袋と、該袋を担持する基材と、前記袋に被装された金属薄膜とを有するクリーニング基板を前記処理室内に搬入して前記載置台に載置する載置ステップと、前記電極板に直流電圧を印加する印加ステップと、当該クリーニング基板を前記処理室内から搬出する搬出ステップとを有することを特徴とする。
【0023】
上記目的を達成するために、請求項17記載のクリーニング方法は、基板処理装置の処理室内のクリーニング方法であって、表面に前記処理室内の付着物を洗浄する揮発性の洗浄剤が塗布された基材と、該基材の表面を覆う樹脂膜とを有するクリーニング基板を前記処理室内に搬入する搬入ステップと、前記処理室内にプラズマを発生させる発生ステップと、当該クリーニング基板を前記処理室内から搬出する搬出ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載のクリーニング基板によれば、クリーニング基板が処理室内の異物を除去する除去機構を備える。処理室内の異物を除去する際、処理室内を真空引きする等の処理室のメンテナンスを行うが、除去機構を備えるクリーニング基板を処理室内に搬入して真空引きを行うと、当該クリーニング基板によっても処理室内の異物が除去される。これにより、処理室内を所望の洗浄度に容易に到達させることができるため、メンテナンスの時間を短縮させることができる。したがって、基板処理装置の稼働の停止時間を短縮させることができ、もって基板処理装置の稼働率の低下を防止することができる。
【0025】
請求項2記載のクリーニング基板によれば、除去機構がパーティクル捕捉材からなる。処理室内の異物としてのパーティクルを除去する際、処理室内を真空引きする等の処理室のメンテナンスを行うが、パーティクル捕捉材を有するクリーニング基板を処理室内に搬入して真空引きを行うと、当該パーティクル捕捉材に入射したパーティクルは当該パーティクル捕捉材に捕捉されて処理室内から除去される。したがって、処理室内のパーティクルを効率的に除去することができる。
【0026】
請求項3記載のクリーニング基板によれば、除去機構が水分吸収材からなる。処理室内の異物としての水分を除去する際、処理室内を真空引きする等の処理室のメンテナンスを行うが、水分吸収材を有するクリーニング基板を処理室内に搬入して真空引きを行うと、処理室内の水分は当該水分吸収材に吸収されて処理室内から除去される。したがって、処理室内の水分を効率的に除去することができる。
【0027】
請求項4記載のクリーニング基板によれば、水分吸収材が防水膜によって覆われる。これにより、クリーニング基板の処理室内への搬送経路において水分吸収材が水分吸収するのを防止することができる。
【0028】
請求項5記載のクリーニング基板によれば、除去機構が処理室内の付着物を洗浄する洗浄剤を被包する袋と、該袋を担持し、クリーニング基板が処理室内に配置された載置台に載置される際に当該クリーニング基板と当該載置台との間隙に供給されるガスの圧力を袋に伝達させるための複数の貫通孔が形成された基材とを有する。クリーニング基板が載置台に載置された後、当該クリーニング基板と当該載置台との間隙にガスが高圧供給されると、基材に形成された複数の貫通孔を介して袋にガスの圧力が伝達されて袋が破れる。袋が破れると袋の中の洗浄剤が処理室内に飛散して処理室内の付着物に付着する。付着物に付着した洗浄剤は当該付着物を洗浄するため、これにより、処理室内において定期的に行うウェットクリーニングの回数を減少させることができる。さらに、処理室内の付着物に起因するパーティクルの発生を抑制することができるため、メンテナンスの時間をさらに短縮させることができる。
【0029】
請求項6記載のクリーニング基板によれば、除去機構が処理室内の付着物を洗浄する洗浄剤を被包する袋と、該袋を担持する基材と、当該袋に被装された金属薄膜とを有する。クリーニング基板が載置台に載置された後、当該載置台の内部の電極板に直流電圧が印加されると、金属薄膜が帯電して電極板との間に静電気力が発生し、この静電気力に起因する圧力によって金属薄膜と載置台の間に介在する袋が破れる。袋が破れると袋の中の洗浄剤が処理室内に飛散するため、上述した請求項5記載のクリーニング基板と同様の効果を実現することができる。
【0030】
請求項7記載のクリーニング基板によれば、除去機構が表面に処理室内の付着物を洗浄する揮発性の洗浄剤が塗布された基材と、該基材の表面を覆う樹脂膜とを有する。クリーニング基板が処理室内に搬入された後、処理室内にプラズマが発生すると、エッチングによって樹脂膜が破れる。樹脂膜が破れると基材に塗布された洗浄剤が揮発して処理室内に飛散するため、上述した請求項5記載のクリーニング基板と同様の効果を実現することができる。
【0031】
請求項8記載のクリーニング方法によれば、パーティクル捕捉材を有するクリーニング基板を処理室内に搬入してから、処理室内を真空引きしてパーティクルを排出する。このとき、パーティクル捕捉材に入射したパーティクルは当該パーティクル捕捉材に捕捉されて処理室内から除去される。したがって、処理室内のパーティクルを効率的に除去することができる。これにより、処理室内を所望の洗浄度に容易に到達させることができるため、メンテナンスの時間を短縮させることができる。その結果、基板処理装置の稼働の停止時間を短縮させることができ、もって基板処理装置の稼働率の低下を防止することができる。
【0032】
請求項9記載のクリーニング方法によれば、処理室内においてパーティクルの飛散が促進される。パーティクルの飛散が促進されると、該パーティクルがパーティクル捕捉材に捕捉される機会が増えるため、処理室内のパーティクルを迅速に除去することができる。
【0033】
請求項10記載のクリーニング方法によれば、パーティクル捕捉材に捕捉されたパーティクルが除去される。すなわち、クリーニング基板がほぼ新品の状態で、再び収容容器に収容される。したがって、クリーニング基板を容易に再利用することができる。
【0034】
請求項11記載のクリーニング方法によれば、水分を吸収する水分吸収材を有するクリーニング基板を高温状態で処理室内に搬入してから、当該クリーニング基板を冷却すると共に処理室を加熱する。クリーニング基板は高温状態で処理室内に搬入されるため、クリーニング基板の処理室内への搬送経路における水分吸収材による水分吸収は防止される。また、水分は低温の部材に集まりやすいため、処理室内に搬入されたクリーニング基板の水分吸収材への水分の吸収が促進されて処理室内の水分を効率的に除去することができる。これにより、処理室内を所望の洗浄度に容易に到達させることができるため、上述した請求項8記載のクリーニング方法と同様の効果を実現することができる。
【0035】
請求項12記載のクリーニング方法によれば、防水膜に覆われた、水分を吸収する水分吸収材を有するクリーニング基板を処理室内に搬入して、当該クリーニング基板の防水膜をエッチングしてから、当該クリーニング基板を冷却すると共に処理室を加熱する。クリーニング基板は水分吸収材が防水膜によって覆われて処理室内に搬入されるため、クリーニング基板の処理室内への搬送経路における水分吸収材による水分吸収は防止される。また、水分は低温の部材に集まりやすいため、処理室内に搬入されたクリーニング基板の水分吸収材への水分の吸収が促進されて処理室内の水分を効率的に除去することができ、これにより、上述した請求項8記載のクリーニング方法と同様の効果を実現することができる。
【0036】
請求項13記載のクリーニング方法によれば、水分吸収材に吸収された水分が除去される。すなわち、クリーニング基板がほぼ新品の状態で、再び収容容器に収容されている。したがって、クリーニング基板を容易に再利用することができる。
【0037】
請求項14記載のクリーニング方法によれば、処理室内の付着物を洗浄する洗浄剤を被包する袋と、該袋を担持し、複数の貫通孔が形成された基材とを有するクリーニング基板を処理室内に搬入して載置台に載置してから、当該クリーニング基板と当該載置台との間隙にガスを高圧供給する。このとき、基材に形成された複数の貫通孔を介して袋にガスの圧力が伝達されて袋が破れる。袋が破れると袋の中の洗浄剤が処理室内に飛散して処理室内の付着物に付着する。付着物に付着した洗浄剤は当該付着物を洗浄するため、これにより、処理室内において定期的に行うウェットクリーニングの回数を減少させることができる。さらに、処理室内の付着物に起因するパーティクルの発生を抑制することができるため、メンテナンスの時間を短縮させることができ、上述した請求項8記載のクリーニング方法と同様の効果を実現することができる。
【0038】
請求項15記載のクリーニング方法によれば、洗浄剤を中和する中和剤を被包する袋と、該袋を担持し、複数の貫通孔が形成された基材とを有するクリーニング基板を処理室内に搬入して載置台に載置してから、当該クリーニング基板と当該載置台との間隙にガスを高圧供給する。このとき、基材に形成された複数の貫通孔を介して袋にガスの圧力が伝達されて袋が破れる。袋が破れると袋の中の中和剤が処理室内に飛散して処理室内に残留した洗浄剤に付着する。洗浄剤に付着した中和剤は当該洗浄剤を中和するため、これにより、処理室内の付着物を安全に洗浄することができる。
【0039】
請求項16記載のクリーニング方法によれば、処理室内の付着物を洗浄する洗浄剤を被包する袋と、該袋を担持する基材と、当該袋に被装された金属薄膜とを有するクリーニング基板を処理室内に搬入して載置台に載置する載置してから、載置台内部の電極板に直流電圧を印加する。このとき、金属薄膜が帯電して電極板との間に静電気力が発生し、この静電気力に起因する圧力によって金属薄膜と載置台の間に介在する袋が破れる。袋が破れると袋の中の洗浄剤が処理室内に飛散するため、上述した請求項14記載のクリーニング方法と同様の効果を実現することができる。
【0040】
請求項17記載のクリーニング方法によれば、表面に処理室内の付着物を洗浄する揮発性の洗浄剤が塗布された基材と、該基材の表面を覆う樹脂膜とを有するクリーニング基板を処理室内に搬入してから、処理室内にプラズマを発生させる。このとき、エッチングによって樹脂膜が破れる。樹脂膜が破れると基材に塗布された洗浄剤が揮発して処理室内に飛散するため、上述した請求項13記載のクリーニング方法と同様の効果を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0042】
まず、本発明の実施の形態に係るクリーニング方法が適用される基板処理システムについて説明する。
【0043】
図1は、本実施の形態に係るクリーニング方法が適用される基板処理システムの構成を概略的に示す断面図である。
【0044】
図1において、基板処理システム10は、基板としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)Wに対して枚葉毎に成膜処理、拡散処理、エッチング処理等の各種プラズマ処理を施すプロセスモジュール11と、所定枚数のウエハWを収容するフープ(Front Opening Unified Pod)12からウエハWを取り出すローダーモジュール13と、該ローダーモジュール13及びプロセスモジュール11の間に配置され、ローダーモジュール13からプロセスモジュール11、若しくはプロセスモジュール11からローダーモジュール13へウエハWを搬送するロード・ロックモジュール14とを備える。
【0045】
プロセスモジュール11及びロード・ロックモジュール14はゲートバルブ15を介して接続され、ロード・ロックモジュール14及びローダーモジュール13はゲートバルブ16を介して接続される。
【0046】
プロセスモジュール11は、金属製、例えば、アルミニウム又はステンレス鋼製の円筒型チャンバ17を有し、該チャンバ17内には、例えば、直径が300mmのウエハWを載置する載置台としての円柱状のサセプタ18が配置されている。
【0047】
チャンバ17の側壁とサセプタ18との間には、後述の処理空間Sのガスをチャンバ17の外へ排出する流路として機能する排気路19が形成される。この排気路19の途中には環状の排気プレート20が配置され、排気路19の排気プレート20より下流の空間であるマニホールド21は、可変式バタフライバルブである自動圧力制御弁(Adaptive Pressure Control Valve)(以下、「APCバルブ」という。)22に連通する。APCバルブ22は真空引き用の排気ポンプであるターボ分子ポンプ(以下、「TMP」という。)23に接続される。ここで、排気プレート20は処理空間Sにおいて発生したプラズマがマニホールド21に流出するのを防止する。APCバルブ22はチャンバ17内の圧力制御を行い、TMP23はチャンバ17内をほぼ真空状態になるまで減圧する。これら排気路19、排気プレート20、マニホールド21、APCバルブ22及びTMP23は排気システムを構成する。
【0048】
サセプタ18には高周波電源24が整合器25を介して接続されており、高周波電源24は高周波電力をサセプタ18に供給する。これにより、サセプタ18は下部電極として機能する。また、整合器25は、サセプタ18からの高周波電力の反射を低減して該高周波電力のサセプタ18への供給効率を最大にする。
【0049】
サセプタ18の上部には、静電電極板26を内部に有する静電チャック27が配置されている。静電電極板26には直流電源28が電気的に接続されている。静電電極板26に正の直流電圧が印加されると、ウエハWにおける静電チャック27側の面(以下、「裏面」という。)には負電位が発生して静電電極板26及びウエハWの裏面の間に電位差が生じ、該電位差に起因するクーロン力又はジョンソン・ラーベック力により、ウエハWは静電チャック27の上において吸着保持される。また、静電チャック27には、吸着保持されたウエハWを囲うように、円環状のフォーカスリング29が載置され、該フォーカスリング29はサセプタ18及び後述のシャワーヘッド30の間の処理空間Sにおいて発生したプラズマをウエハWに向けて収束させる。
【0050】
また、サセプタ18の内部には、環状の冷媒室(図示しない)が設けられている。この冷媒室には、所定温度の冷媒、例えば、冷却水が循環供給され、当該冷媒の温度によってサセプタ18上のウエハWの処理温度が調整される。なお、ウエハW及びサセプタ18の間にはヘリウムガスが供給され、該ヘリウムガスはウエハWの熱をサセプタ18へ伝熱する。
【0051】
チャンバ17の天井部には円板状のシャワーヘッド30が配置されている。シャワーヘッド30には高周波電源31が整合器32を介して接続されており、高周波電源31は高周波電力をシャワーヘッド30に供給する。これにより、シャワーヘッド30は上部電極として機能する。なお、整合器32の機能は整合器25の機能と同じである。
【0052】
また、シャワーヘッド30には処理ガスを供給する処理ガス導入管33が接続され、シャワーヘッド30は処理ガス導入管33から供給された処理ガスを処理空間Sに導入する。
【0053】
このプロセスモジュール11のチャンバ17内における処理空間Sでは、高周波電力を供給されたサセプタ18及びシャワーヘッド30が処理空間Sに高周波電力を印加し、処理空間Sおいて処理ガスから高密度のプラズマを発生させる。発生したプラズマは、フォーカスリング29によってウエハWの表面に収束され、例えば、ウエハWの表面を物理的又は化学的にエッチングする。
【0054】
ローダーモジュール13は、フープ12を載置するフープ載置台34及び搬送室35を有する。フープ12は、例えば、25枚のウエハWを等ピッチで多段に載置して収容する。搬送室35は、直方体状の箱状物であり、内部においてウエハWを搬送するスカラタイプの搬送アーム36を有する。
【0055】
搬送アーム36は、屈伸可能に構成された多関節状の搬送アーム腕部37と、該搬送アーム腕部37の先端に取り付けられたピック38とを有し、該ピック38はウエハWを直接的に載置するように構成されている。搬送アーム36は旋回自在に構成され、且つ搬送アーム腕部37によって屈曲自在であるため、ピック38に載置したウエハWを、フープ12及びロード・ロックモジュール14の間において自在に搬送することができる。
【0056】
ロード・ロックモジュール14は、屈伸及び旋回自在に構成された移載アーム39が配置されたチャンバ40と、チャンバ40内を真空排気するロード・ロックモジュール排気系41とを有する。ここで、移載アーム39は複数の腕部からなるスカラタイプの搬送アームであり、その先端に取り付けられたピック42を有する。該ピック42はウエハWを直接的に載置するように構成されている。
【0057】
ウエハWがローダーモジュール13からプロセスモジュール11へ搬送される場合、ゲートバルブ16が開いたとき、移載アーム39は搬送室35内の搬送アーム36からウエハWを大気圧下で受け取り、ゲートバルブ16を閉めてチャンバ40内を所定の圧力まで真空排気した後、ゲートバルブ15が開いたとき、移載アーム39はプロセスモジュール11のチャンバ17内へ進入し、サセプタ18上にウエハWを載置する。また、ウエハWがプロセスモジュール11からローダーモジュール13へ搬送される場合、ゲートバルブ15が開いたとき、移載アーム39はプロセスモジュール11のチャンバ17内へ進入し、サセプタ18からウエハWを受け取り、ゲートバルブ15を閉めてチャンバ40内を大気圧に戻した後、ゲートバルブ16が開いたとき、移載アーム39は搬送室35内の搬送アーム36へウエハWを引き渡す。
【0058】
なお、基板処理システム10を構成するプロセスモジュール11、ローダーモジュール13及びロード・ロックモジュール14の各構成要素の動作は、基板処理システム10が備える制御装置としてのコンピュータ(図示しない)や、基板処理システム10に接続された制御装置としての外部サーバ(図示しない)等によって制御される。
【0059】
ところで、プロセスモジュール11のチャンバ17内では、プラズマ処理を行うため、処理ガスの反応に起因する反応生成物が発生し、この反応生成物の一部はパーティクル(異物)としてチャンバ17内に浮遊すると共にチャンバ17の壁面や構成部品の表面(以下、「チャンバ17の壁面等」という。)に付着する。また、このチャンバ17内では、プラズマ処理を繰り返し行うため、チャンバ17の壁面等にデポが付着する。このデポ(付着物)は、定期的にウェットクリーニングで除去する必要があるため、チャンバ17はウェットクリーニング時に大気開放される。このとき、チャンバ17の壁面等に大気中の水分(異物)が付着する。
【0060】
本実施の形態における基板処理システム10は、後述するクリーニング方法としてのクリーニング処理を実行して、これら異物(パーティクルや水分)をチャンバ17内から除去する。
【0061】
以下、本発明の実施の形態に係るクリーニング方法について説明する。
【0062】
図2は、本実施の形態に係るクリーニング方法としてのクリーニング処理を示す工程図である。なお、本処理は、基板処理システム10の立ち上げ時や、所定の枚数のウエハWにプラズマ処理を施す、或る生産ロットとこれに続く生産ロットとの間や、基板処理システム10の改造後等に実行される。
【0063】
まず、図2のクリーニング処理を実行する前に、図3(A)に示すように、円板状のシリコン基材43と、該シリコン基材43上に設けられた不織布44(パーティクル捕捉材)とを有するクリーニング基板45を準備する。そして、図4に示すように、複数枚のクリーニング基板45を収容したクリーニング用フープ46をフープ12の代わりにフープ載置台34上に載置する。
【0064】
次いで、ウエハWをプロセスモジュール11のチャンバ17内に搬入する場合と同様に、クリーニング基板45をチャンバ17内に搬入して、クリーニング基板45をサセプタ18上に載置する(図2(A))。
【0065】
次いで、上述した排気システムによりチャンバ17内を真空引きする。そして、チャンバ17の壁面等に付着しているパーティクルを剥離させる。具体的には、チャンバ17の壁面等の温度変化に起因して発生する熱応力や、チャンバ17内に大量導入したガスの粘性力や、高真空状態のチャンバ17内にガスを大量導入した際に発生するガス衝撃波の衝撃力や、プロセスモジュール11駆動時の振動や、外部から、例えばチャンバ17に接続された超音波振動子から付与された振動によって当該パーティクルを剥離させる。このとき、チャンバ17内に浮遊していたパーティクルやチャンバ17の壁面等から剥離したパーティクルは、チャンバ17内において飛散し、これらパーティクルの一部はチャンバ17の壁面等と衝突を繰り返しながらチャンバ17内のガスと共にチャンバ17内から排出される。また、飛散したパーティクルの一部はチャンバ17内に露出する、サセプタ18上に載置されたクリーニング基板45の不織布44に入射する。不織布44は繊維をランダムに絡め合わせたものであるため、不織布44に入射したパーティクル47は不織布44内で乱反射を繰り返して、その後、不織布44内に捕捉される(図2(B))。
【0066】
次いで、ウエハWをチャンバ17内から搬出する場合と同様に、不織布44内にパーティクル47を捕捉したクリーニング基板45をチャンバ17内から搬出して(図2(C))、本処理を終了する。
【0067】
図2のクリーニング処理によれば、不織布44を有するクリーニング基板45をチャンバ17内に搬入してから、チャンバ17内を真空引きしてチャンバ内のパーティクルを排出する。このとき、不織布44に入射したパーティクル47は不織布44内に捕捉されてチャンバ17内から除去される。したがって、チャンバ17内のパーティクルを効率的に除去することができる。これにより、チャンバ17内を所望の洗浄度に容易に到達させることができるため、チャンバ17のメンテナンスの時間を短縮させることができる。その結果、プロセスモジュール11の稼働の停止時間を短縮させることができ、もってプロセスモジュール11の稼働率の低下を防止することができる。
【0068】
上述したクリーニング基板45は、シリコン基材43上に不織布44を設けたが、図3(B)に示すように、不織布44の代わりに多孔質セラミックス48を設けてもよい。多孔質セラミックス48には無数の微細な孔が形成されているため、多孔質セラミックス48に入射したパーティクルはパーティクル47と同様に、多孔質セラミックス48内に捕捉される。また、多孔質セラミックス48は耐プラズマ性を有するため、上述したチャンバ17内を真空引きすると共に、チャンバ17内にプラズマを発生させて、それに起因して発生する電磁応力によってチャンバ17の壁面等に付着しているパーティクルを剥離させてもよい。
【0069】
また、上述した不織布44や多孔質セラミックス48には微量の金属を含有させてもよい。この場合、クリーニング基板45がサセプタ18上に載置されて静電チャック27により吸着保持されると、静電電極板26に印加された直流電圧により当該金属が帯電する。チャンバ17内には反対の極に帯電したパーティクルも存在するため、当該金属及び当該パーティクルの間に働く静電気力によって当該パーティクルを不織布44や多孔質セラミックス48内に捕捉しやすくすることができる。
【0070】
また、上述したクリーニング基板45は、シリコン基材43上にパーティクル捕捉性を有する不織布44や多孔質セラミックス48を設けたが、これらに代えて粘着性を有する部材を設けてもよい。さらに、上述したクリーニング基板45では、不織布44等がシリコン基材43上に設けられたが、ガラス基材上に設けられてもよい。
【0071】
また、上述したクリーニング基板45は、シリコン基材43上、すなわち表面側にのみパーティクル捕捉性を有する不織布44や多孔質セラミックス48を設けたが、これらをシリコン基材43の裏面側にも設けてもよい。この場合、クリーニング基板45が載置される、すなわちクリーニング基板45の裏面側が接触するサセプタ18上に付着しているパーティクルを捕捉して除去することができる。
【0072】
なお、図2のクリーニング処理では、クリーニング基板45をチャンバ17内に搬入してから、チャンバ17内を真空引きしたが、始めからチャンバ17内の真空引きを行い、真空引きの最中にクリーニング基板45をチャンバ17内に搬入してもよい。この場合、チャンバ17内のパーティクルを迅速に除去することができる。
【0073】
また、図2のクリーニング処理では、図4に示すように、不織布44内にパーティクル47を捕捉したクリーニング基板45をクリーニング用フープ46に収容する前に、ローダーモジュール13の搬送室35内に配設されたパーティクル除去装置49によってパーティクル47を不織布44内から除去してもよい。具体的には、パーティクル除去装置49は不織布44内のパーティクル47を帯電させて、パーティクル除去装置49及びパーティクル47の間に働く静電気力によってパーティクル47を不織布44内から除去する。この場合、クリーニング基板45をほぼ新品の状態で、再びクリーニング用フープ46に収容することができ、もってクリーニング基板45を容易に再利用することができる。
【0074】
また、クリーニング用フープ46は、収容したクリーニング基板45を純水によって水洗するウエット洗浄機構(図示しない)を備えてもよい。この場合、不織布44内のパーティクル47を確実に除去することができる。
【0075】
次に、本発明の実施の形態に係るクリーニング方法の変形例について説明する。
【0076】
図5は、本実施の形態に係るクリーニング方法としてのクリーニング処理の第1の変形例を示す工程図である。
【0077】
まず、図5のクリーニング処理を実行する前に、図7(A)に示すように、円板状のシリコン基材50と、該シリコン基材50上に設けられた多孔質セラミックス51(水分吸収材)とを有するクリーニング基板52を準備する。そして、図8に示すように、複数枚のクリーニング基板52を収容したクリーニング用フープ53をフープ12の代わりにフープ載置台34上に載置する。このクリーニング用フープ53は、加熱・除湿器54、空気ポンプ55及び通気管56で構成された加熱・除湿機構57を備え、クリーニング用フープ53に収容されたクリーニング基板52は加熱・除湿機構57により加熱された空気によってクリーニング基板52の温度が高温、例えば100度に調整される。
【0078】
次いで、ウエハWをプロセスモジュール11のチャンバ17内に搬入する場合と異なり、クリーニング基板52の温度を100度に維持して、クリーニング基板52をチャンバ17内に搬入し、クリーニング基板52をサセプタ18上に載置する(図5(A))。
【0079】
次いで、上述した排気システムによりチャンバ17内を真空引きする。そして、クリーニング基板52を冷却すると共にチャンバ17を加熱する。具体的には、サセプタ18の内部の冷媒室に冷媒を供給して、その冷媒の温度によってサセプタ18上のクリーニング基板52の温度が低温、例えば20度に調整され、チャンバ17の壁や構成部品に埋め込まれたヒータ(図示しない)等によってチャンバ17の温度が高温、例えば60度に調整される。このとき、チャンバ17の壁面等に付着していた水分は徐々に蒸発してチャンバ17内に拡散し、これら水分の一部はチャンバ17内のガスと共にチャンバ17内から排出される。また、これら水分の一部はチャンバ17内に露出する、サセプタ18上に載置されたクリーニング基板52の多孔質セラミックス51に接触する。多孔質セラミックス51は吸水性を有するため、多孔質セラミックス51に接触した水分58は多孔質セラミックス51に吸収される(図5(B))。
【0080】
そして、ウエハWをチャンバ17内から搬出する場合と同様に、多孔質セラミックス51に水分58を吸収したクリーニング基板52をチャンバ17内から搬出して(図5(C))、本処理を終了する。
【0081】
図5のクリーニング処理によれば、多孔質セラミックス51を有するクリーニング基板52を高温に維持してチャンバ17内に搬入してから、クリーニング基板52を冷却すると共にチャンバ17を加熱する。クリーニング基板52は高温状態でチャンバ17内に搬入されるため、クリーニング基板52のチャンバ17内への搬送経路における多孔質セラミックス51による水分吸収は防止される。また、水分は低温の部材に集まりやすいため、チャンバ17内に搬入されたクリーニング基板52の多孔質セラミックス51への水分の吸収が促進されてチャンバ17内の水分を効率的に除去することができる。これにより、チャンバ17内を所望の洗浄度に容易に到達させることができるため、上述した図2のクリーニング処理と同様の効果を実現することができる。
【0082】
なお、図5のクリーニング処理では、クリーニング基板52のチャンバ17内への搬送において、チャンバ17内が真空状態であるときは、ロード・ロックモジュール14のチャンバ40内で真空引きを行うが、クリーニング基板52の温度を高温に維持するために、チャンバ40内での真空引きは時間をかけて行う。これにより、クリーニング基板52が急速に冷却されて多孔質セラミックス51が水分吸収するのを防止することができる。
【0083】
上述したクリーニング基板52は、多孔質セラミックス51が露出していたが、図7(B)に示すように、露出する多孔質セラミックス51を防水膜59で覆ってもよい。この場合、クリーニング基板52のチャンバ17内への搬送経路において、多孔質セラミックス51が水分を吸収する虞がないため、クリーニング基板52の温度を高温に維持する必要をなくすことができる。なお、多孔質セラミックス51が防水膜59によって覆われるため、クリーニング基板52をチャンバ17内へ搬入した後に、図6(A)に示すように、チャンバ17内にプラズマを発生させる。防水膜59はプラズマによってエッチングされるため、多孔質セラミックス51をチャンバ17内に露出させることができる(図6(B))。さらに、チャンバ17内でプラズマを発生させる場合、プラズマがチャンバ17の壁面等の近傍に広がるように制御するのがよい。この場合、チャンバ17の壁面等の温度を上昇させやすくすることができる。
【0084】
また、図5のクリーニング処理では、図8に示すように、多孔質セラミックス51に水分58を吸収したクリーニング基板52をクリーニング用フープ53に収容した後に、加熱・除湿機構57によって水分58を多孔質セラミックス51から除去してもよい。具体的には、加熱・除湿機構57はクリーニング用フープ53内の空気を加熱・除湿して多孔質セラミックス51から水分58を除去する。この場合、一度使用したクリーニング基板52をクリーニング用フープ53内でほぼ新品の状態にすることができ、もってクリーニング基板52を容易に再利用することができる。
【0085】
図9は、本実施の形態に係るクリーニング方法としてのクリーニング処理の第2の変形例を示す工程図である。
【0086】
まず、図9のクリーニング処理を実行する前に、図12(A)に示すように、チャンバ17内のデポを洗浄する洗浄剤60を被包する袋61と、該袋61を担持し、複数の貫通孔62が形成されたシリコン基材63とを有するクリーニング基板64を準備する。そして、複数枚のクリーニング基板64を収容したクリーニング用フープ(図示しない)をフープ12の代わりにフープ載置台34上に載置する。
【0087】
次いで、ウエハWをプロセスモジュール11のチャンバ17内に搬入する場合と同様に、クリーニング基板64をチャンバ17内に搬入して、クリーニング基板64をサセプタ18上に載置して、サセプタ18上に吸着保持する(図9(A))。
【0088】
次いで、上述した排気システムによりチャンバ17内を真空引きする。そして、クリーニング基板64とサセプタ18との間隙にヘリウムガスを高圧供給する。このとき、シリコン基材63に形成された複数の貫通孔62を介して袋61にヘリウムガスの圧力が伝達されて袋61が破れる。袋61が破れると袋61の中の洗浄剤60がチャンバ17内に飛散する。チャンバ内に飛散した洗浄剤60はチャンバ17内のデポに付着して当該デポを洗浄する(図9(B))。
【0089】
次いで、ウエハWをチャンバ17内から搬出する場合と同様に、袋61が破れたクリーニング基板64をチャンバ17内から搬出して、本処理を終了する。
【0090】
図9のクリーニング処理によれば、チャンバ17内のデポを洗浄する洗浄剤60を被包する袋61と、該袋61を担持し、複数の貫通孔62が形成された基材63とを有するクリーニング基板64をチャンバ17内に搬入してサセプタ18上に載置してから、クリーニング基板64とサセプタ18との間隙にヘリウムガスを高圧供給する。このとき、ヘリウムガスの圧力が袋61に伝達されて袋61が破れ、袋61の中の洗浄剤60がチャンバ17内に飛散する。チャンバ17内に飛散した洗浄剤60はチャンバ17内のデポに付着して当該デポを洗浄する。これにより、チャンバ17内において定期的に行うウェットクリーニングの回数を減少させることができる。さらに、チャンバ17内のデポに起因するパーティクルの発生を抑制することができるため、チャンバ17のメンテナンスの時間を短縮させることができ、上述した図2のクリーニング処理と同様の効果を実現することができる。
【0091】
また、図9のクリーニング処理を実行した後に、洗浄剤60に代えて洗浄剤60を中和する中和剤(図示しない)を被包する袋61を有するクリーニング基板64を準備して、このクリーニング基板64をチャンバ17内に搬入して、同様にチャンバ17内に中和剤を飛散させてもよい。チャンバ17内のデポを洗浄した洗浄剤60はチャンバ17内に残留する虞があるため、中和剤をチャンバ17内に飛散させることにより、チャンバ17内に残留した洗浄剤60を中和することができ、これにより、チャンバ17内のデポを安全に洗浄することができる。
【0092】
また、上述したクリーニング基板64におけるシリコン基材63の貫通孔62は、クリーニング基板64がサセプタ18上に載置された際に、サセプタ18の上面に開口する伝熱ガス供給孔65と継合するように形成されているのがよい。この場合、伝熱ガス供給孔65から供給されたヘリウムガスの圧力を効率的に袋61に伝達させることができ、袋61を確実に破ることができる。
【0093】
また、上述したクリーニング基板64は、シリコン基材63に貫通孔62が形成されていたが、貫通孔62を形成することなく、図12(B)に示すように、シリコン基材66上に袋61を設け、袋61上に金属薄膜67を被装してもよい。この場合、クリーニング基板64をチャンバ17内へ搬入した後に、図10(A)に示すように、サセプタ18内部の静電電極板26に直流電圧を印加する。このとき、金属薄膜67は帯電する。これにより、金属薄膜67と静電電極板26との間に静電気力を発生させることができ、この静電気力に起因する圧力によって金属薄膜67とサセプタ18の間に介在する袋61を破ることができる(図10(B))。
【0094】
また、上述したクリーニング基板64における袋61は、上述したヘリウムガスの圧力や静電気力に起因する圧力によって破れやすくしてもよい。具体的には、ヘリウムガスの圧力が伝達される部分や、静電気力に起因する圧力が働く部分において、袋61の厚みを薄くする。
【0095】
また、上述したクリーニング基板64は、洗浄剤60を被包する袋61を有したが、図12(C)に示すように、シリコン基材66上に揮発性の洗浄剤68を塗布して、洗浄剤68を樹脂膜69で覆ってもよい。この場合、クリーニング基板64をチャンバ17内へ搬入した後に、図11(A)に示すように、チャンバ17内にプラズマを発生させる。樹脂膜69はプラズマによってエッチングされる、又はプラズマからの入熱によって破れるため、シリコン基材66上に塗布された洗浄剤68をチャンバ17内に飛散させることができる(図11(B))。
【0096】
なお、上述した洗浄剤60,68は、チャンバ17内にデポとして有機膜が付着している場合は、洗浄剤としてNHOH:H:HOの混合物質を用いるのがよく、デポとして金属が付着している場合は、洗浄剤としてHCl:H:HOの混合物質を用いるのがよく、デポとしてSiOが付着している場合は、洗浄剤としてHFを用いるのがよい。
【0097】
なお、上述した実施の形態では、プラズマエッチング処理が施される基板は半導体ウエハWであったが、プラズマエッチング処理が施される基板はこれに限られず、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やFPD(Flat Panel Display)等のガラス基板であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施の形態に係るクリーニング方法が適用される基板処理システムの構成を概略的に示す断面図である。
【図2】本実施の形態に係るクリーニング方法としてのクリーニング処理を示す工程図である。
【図3】本実施の形態に係るクリーニング方法としてのクリーニング処理で使用するクリーニング基板の断面構造を概略的に示す断面図であり、図3(A)は、シリコン基材上に不織布を設けた場合を示し、図3(B)は、シリコン基材上に多孔質セラミックスを設けた場合を示す。
【図4】パーティクル除去装置によるクリーニング基板上に捕捉されたパーティクルの除去を説明するための図である。
【図5】本実施の形態に係るクリーニング方法としてのクリーニング処理の第1の変形例を示す工程図である。
【図6】図5のクリーニング処理において、クリーニング基板における多孔質セラミックスが防水膜によって覆われる場合の工程図である。
【図7】本実施の形態に係るクリーニング方法としてのクリーニング処理の第1の変形例で使用するクリーニング基板の断面構造を概略的に示す断面図であり、図7(A)は、シリコン基材上に多孔質セラミックスを設けた場合を示し、図7(B)は、多孔質セラミックスを防水膜で覆った場合を示す。
【図8】加熱・除湿機構によるクリーニング基板上に吸収された水分の除去を説明するための図である。
【図9】本実施の形態に係るクリーニング方法としてのクリーニング処理の第2の変形例を示す工程図である。
【図10】図9のクリーニング処理において、クリーニング基板において貫通孔を形成する代わりに、金属薄膜を袋に被装した場合の工程図である。
【図11】図9のクリーニング処理において、クリーニング基板において洗浄剤を被包する袋を設ける代わりに、シリコン基材上に洗浄剤を塗布した場合の工程図である。
【図12】本実施の形態に係るクリーニング方法としてのクリーニング処理の第2の変形例で使用するクリーニング基板の断面構造を概略的に示す断面図であり、図12(A)は、貫通孔が形成されたシリコン基材上に洗浄剤を被包する袋を設けた場合を示し、図12(B)は、シリコン基材上に洗浄剤を被包する袋を設け、袋上に金属薄膜を設けた場合を示し、図12(C)は、シリコン基材上に洗浄剤を塗布して、洗浄剤を樹脂膜で覆った場合を示す。
【符号の説明】
【0099】
W ウエハ
10 基板処理システム
11 プロセスモジュール
17 チャンバ
18 サセプタ
44 不織布
45,52,64 クリーニング基板
48,51 多孔質セラミックス
59 防水膜
60,68 洗浄剤
61 袋
67 金属薄膜
69 樹脂膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置の処理室内をクリーニングするクリーニング基板であって、
前記処理室内の異物を除去する除去機構を備えることを特徴とするクリーニング基板。
【請求項2】
前記除去機構はパーティクルを捕捉するパーティクル捕捉材からなることを特徴とする請求項1記載のクリーニング基板。
【請求項3】
前記除去機構は水分を吸収する水分吸収材からなることを特徴とする請求項1記載のクリーニング基板。
【請求項4】
前記水分吸収材は防水膜によって覆われることを特徴とする請求項3記載のクリーニング基板。
【請求項5】
前記除去機構は、前記処理室内の付着物を洗浄する洗浄剤を被包する袋と、該袋を担持し、前記クリーニング基板が前記処理室内に配置された載置台に載置される際に当該クリーニング基板と当該載置台との間隙に供給されるガスの圧力を前記袋に伝達させるための複数の貫通孔が形成された基材とを有することを特徴とする請求項1記載のクリーニング基板。
【請求項6】
前記除去機構は、前記処理室内の付着物を洗浄する洗浄剤を被包する袋と、該袋を担持する基材と、前記袋に被装された金属薄膜とを有することを特徴とする請求項1記載のクリーニング基板。
【請求項7】
前記除去機構は、表面に前記処理室内の付着物を洗浄する揮発性の洗浄剤が塗布された基材と、該基材の表面を覆う樹脂膜とを有することを特徴とする請求項1記載のクリーニング基板。
【請求項8】
基板処理装置の処理室内のクリーニング方法であって、
パーティクルを捕捉するパーティクル捕捉材を有するクリーニング基板を前記処理室内に搬入する搬入ステップと、
前記処理室内を真空引きして当該処理室内のパーティクルを排出する排出ステップと、
前記クリーニング基板を前記処理室内から搬出する搬出ステップとを有することを特徴とするクリーニング方法。
【請求項9】
前記排出ステップでは、前記処理室内においてパーティクルの飛散を促進することを特徴とする請求項8記載のクリーニング方法。
【請求項10】
前記搬出されたクリーニング基板におけるパーティクル捕捉材に捕捉されたパーティクルを除去する除去ステップを有することを特徴とする請求項8又は9記載のクリーニング方法。
【請求項11】
基板処理装置の処理室内のクリーニング方法であって、
水分を吸収する水分吸収材を有するクリーニング基板を高温状態で前記処理室内に搬入する搬入ステップと、
前記搬入されたクリーニング基板を冷却すると共に前記処理室を加熱する温度調節ステップと、
当該クリーニング基板を前記処理室内から搬出する搬出ステップとを有することを特徴とするクリーニング方法。
【請求項12】
基板処理装置の処理室内のクリーニング方法であって、
防水膜に覆われた、水分を吸収する水分吸収材を有するクリーニング基板を前記処理室内に搬入する搬入ステップと、
前記搬入されたクリーニング基板の防水膜をエッチングするエッチングステップと、
当該クリーニング基板を冷却すると共に前記処理室を加熱する温度調節ステップと、
当該クリーニング基板を前記処理室内から搬出する搬出ステップとを有することを特徴とするクリーニング方法。
【請求項13】
前記搬出されたクリーニング基板における水分吸収材に吸収された水分を除去する除去ステップを有することを特徴とする請求項11又は12記載のクリーニング方法。
【請求項14】
基板を収容する処理室と、該処理室内に配置されて前記基板を載置する載置台とを備え、前記載置台の上面には複数のガス供給孔が開口している基板処理装置における前記処理室内のクリーニング方法であって、
前記処理室内の付着物を洗浄する洗浄剤を被包する袋と、該袋を担持し、複数の貫通孔が形成された基材とを有するクリーニング基板を前記処理室内に搬入して前記載置台に載置する載置ステップと、
当該クリーニング基板と前記載置台との間隙にガスを高圧供給する高圧供給ステップと、
当該クリーニング基板を前記処理室内から搬出する搬出ステップとを有することを特徴とするクリーニング方法。
【請求項15】
前記洗浄剤を中和する中和剤を被包する袋と、該袋を担持し、複数の貫通孔が形成された基材とを有する他のクリーニング基板を前記処理室内に搬入して前記載置台に載置する他の載置ステップと、
当該クリーニング基板と前記載置台との間隙にガスを高圧供給する他の高圧供給ステップと、
当該クリーニング基板を前記処理室内から搬出する他の搬出ステップとを有することを特徴とする請求項14記載のクリーニング方法。
【請求項16】
基板を収容する処理室と、該処理室内に配置されて前記基板を載置する載置台とを備え、前記載置台は内部に直流電源に接続された電極板を有する基板処理装置における前記処理室内のクリーニング方法であって、
前記処理室内の付着物を洗浄する洗浄剤を被包する袋と、該袋を担持する基材と、前記袋に被装された金属薄膜とを有するクリーニング基板を前記処理室内に搬入して前記載置台に載置する載置ステップと、
前記電極板に直流電圧を印加する印加ステップと、
当該クリーニング基板を前記処理室内から搬出する搬出ステップとを有することを特徴とするクリーニング方法。
【請求項17】
基板処理装置の処理室内のクリーニング方法であって、
表面に前記処理室内の付着物を洗浄する揮発性の洗浄剤が塗布された基材と、該基材の表面を覆う樹脂膜とを有するクリーニング基板を前記処理室内に搬入する搬入ステップと、
前記処理室内にプラズマを発生させる発生ステップと、
当該クリーニング基板を前記処理室内から搬出する搬出ステップとを有することを特徴とするクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−239013(P2009−239013A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83045(P2008−83045)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】