説明

クリーニング方法、これを用いた照明器具のクリーニング方法、セルフクリーニング式器具およびセルフクリーニング式照明器具

【課題】汚れ、特に物体表面に付着した油膜などの汚れを、とりたてて清掃作業などを行うことなく、簡便に除去することができる方法を提供する。
【解決手段】基材1表面に付着する油膜層2あるいは前記油膜層2上に付着する埃3などの汚染物を除去するクリーニング方法であって、前記基材1表面に、前記基材1表面と前記油膜層2との間に空隙Cを形成する程度の寸法変化または形状変化を与え、接触面積を減少させる空隙生成工程と、前記空隙から、前記油膜層に亀裂を発生させ、前記基材表面から前記油膜層を剥離除去する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング方法、これを用いた照明器具のクリーニング方法、セルフクリーニング式器具およびセルフクリーニング式照明器具にかかり、特にキッチン用照明器具など、表面に油汚れの生じやすい照明器具のクリーニングに関する。
【背景技術】
【0002】
生活様式の変化に伴い、油脂類の使用が増え、照明器具などにおいても、表面に付着した油膜や、油膜を接着層として油膜上に積層した埃(汚れ)が増大している。このため、このような汚れを除去する方法として、
1)表面をウェスなどで拭取る。
2)水や洗浄水で洗い流す。
3)掃除機などで吸い取る。
などの方法が挙げられる。
また、物体を構成する表面に、パラフィン,シリコーン、フッ素樹脂などの撥水性物質を塗布する、あるいは化学結合させるなどの手法により、汚れが付着しにくくなることが知られている(たとえば特許文献1)。
【0003】
また、物体表面に撥水性物質を塗布した上で、塗布面に微小な凹凸を形成するなどの方法により、さらに汚れが付着しにくくなることが総説として報告されている(たとえば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−248095号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】徳海昭雄ほか、塗料と塗装、N0571,P37,1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、物体表面に汚れが付着するのをある程度抑制することはできるものの、まったく付着しないようにすることは不可能である。
【0007】
更にまた、パネルに付着する埃対策としては、パネル材料に帯電防止剤を練りこむ方法、パネルに帯電防止剤を塗布する方法などが実行されてはいるが、この場合も以下のような問題点があった。
A)油汚れの付着には効果が少ない。
B)長期間継続した帯電防止効果は望めない。
このため、わずかであっても物体表面に付着した汚れを除去するためには、清掃作業などを伴い、この作業が煩雑である。
そこで物体表面に付着した汚れを、改めて清掃作業などを行ったりすることなく、簡単に除去する方法が求められている。
【0008】
また、光源と、光源から出射される光を制御するカバーなどの透光性部材、反射鏡などの光学部材と筐体とで構成される照明器具は、さまざまな環境において使用される。
たとえば住宅におけるキッチン、ダイニングなどにおいては、調理などの作業により油分などが飛沫となって飛散し、光学部材表面に付着して、光源からの光の出射効率や、反射効率を低下させ、照明器具としての効率を低下させることとなる。
【0009】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、汚れ、特に物体表面に付着した油膜などの汚れを、とりたてて清掃作業などを行うことなく、簡便に除去することができる方法を提供することを目的とする。
また、とりたてて清掃作業などを行うことなく、簡便に汚れを除去することができるセルフクリーニング式器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明は、基材表面に付着する油膜層あるいは前記油膜層上に付着する埃などの汚染物を除去するクリーニング方法であって、前記基材表面に、前記基材表面と前記油膜層との間に空隙を形成する程度の寸法変化または形状変化を与え、接触面積を減少させる空隙生成工程と、前記空隙から、前記油膜層に亀裂を発生させ、前記基材表面から前記油膜層を剥離除去する工程とを含む。
この構成により、基材表面に対する寸法変化または形状変化により、油膜層に亀裂を生じさせるため、例えば基材に対する加熱や振動のみで油膜層を破壊し、空隙を生成して剥がれ易くすることができる。
【0011】
また、本発明は、上記クリーニング方法において、前記空隙生成工程が、前記基材表面と前記油膜層との熱膨張率の変化により空隙を生成する加熱工程を含む。
この構成により、加熱によって容易に空隙を生成することができ、セルフクリーニングが容易となる。
【0012】
また、本発明は、上記クリーニング方法において、前記空隙生成工程が、前記基材表面に機械的変動を生成し得る程度の機械的変位を付与する工程を含む。
この構成により、振動や、加圧などによって容易に空隙を生成することができ、セルフクリーニングが容易となる。
【0013】
また、本発明は、上記クリーニング方法において、前記機械的変位を付与する工程が、前記基材表面を振動させる振動工程を含む。
この構成により、振動などによって容易に空隙を生成することができ、セルフクリーニングが容易となる。
【0014】
また、本発明の照明器具のクリーニング方法は、熱源が、照明器具のランプ本体であって、前記空隙生成工程が、前記ランプ本体を加熱する工程であるものを含む。
この構成により、ランプ本体を加熱することで容易にセルフクリーニングが可能となる。望ましくは、通常の点灯で空隙が生成しうるような熱膨張率差を得ることができるような基材表面を用いることで、セルフクリーニングが可能となる。また、別途、クリーニングモードとしてオンオフを繰り返すような加熱方式も容易となる。
【0015】
また、本発明は、基材表面に付着する油膜層あるいは前記油膜層上に付着する埃などの汚染物を除去するクリーニング機能を備えたセルフクリーニング式器具であって、前記基材表面に、前記基材表面と前記油膜層との間に空隙を形成する程度の寸法変化または形状変化を与え、接触面積を減少させる空隙生成エネルギー付与部と、前記空隙から、前記油膜層に亀裂を発生させ、前記基材表面から前記油膜層を剥離除去する除去部とを備えている。
この構成により、基材表面に対する寸法変化または形状変化により、油膜層に亀裂を生じさせるように構成されているため、空隙を生成して剥がれ易くすることができる。ここで空隙生成エネルギー付与部とは、圧力を印加して空隙を生成する加圧部、熱膨張により空隙を生成する加熱部など、適宜選択可能である。
【0016】
また、本発明は、上記セルフクリーニング式器具において、前記基材表面が、付着する油膜層との間に空隙を生成しうる程度のピッチおよび深さをもつ凹部および凸部とを備えたものを含む。
この構成により、凹部と凸部とを有する基材表面の少なくとも凹部底面以外に形成される油膜層とが形成された状態で、基材表面に対する寸法変化または形状変化により油膜層に亀裂を生じさせるので、例えば基材に対する加熱や振動のみで油膜層を破壊し、剥がれやすくすることができる。特に油膜層が基材表面部の少なくとも凹部底面を除く領域に形成されるように基材表面部に凹凸を設けたので、油膜層との接点の変位変形により、非接点との境界に応力集中するため、全面接触している場合よりも応力集中するポイントが増加し、より亀裂を生じさせやすい。
【0017】
また、本発明は、上記セルフクリーニング式器具において、前記凹部または凸部の少なくとも一部がコーティング層で構成されたものを含む。
この構成により、凹部と凸部とを有する基材表面部の凹部または凸部の少なくとも一部がコーティング層で形成し、油膜層と基材の接点を減らし、基材の変形による剥離をより促進させることができる。
【0018】
また、本発明は、上記セルフクリーニング式器具において、前記基材の少なくとも一部が形状記憶合金で形成されたものを含む。
この構成により、形状記憶合金に変位力をかけることで容易に空隙を形成することができる。
【0019】
また、本発明は、上記セルフクリーニング式器具において、前記基材表面がランプ本体表面であって、点灯モードのほかにお掃除モードに切り替え可能な切り替え部を具備し、所定の点灯時間ごとにお掃除モードに切替えられるように構成されたものを含む。
この構成により、容易にセルフクリーニングを行なうことができる。
【0020】
また、本発明は、上記セルフクリーニング式器具において、ランプ本体に振動を与える加振手段を具備したものを含む。
この構成により、加振手段により、剥離した油膜層が容易に引き剥がされるため、セルフクリーニングが確実となる。なお、加振手段は、ランプ本体だけでなく、透光性部材や反射部材のいずれかに設けてもよい。さらにまた、ランプ本体に加えることで、透光性部材や反射部材に振動を与えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上説明してきたように、本発明によれば、油膜層および油膜層上に付着した埃を、熱あるいは機械的破壊により、基材表面と油膜層との間に空隙を生成することで、剥離しやすくすることができ、容易にセルフクリーニングを行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1のクリーニング方法を示す概要図
【図2】本発明の実施の形態1のクリーニング方法に用いられるシーリングライトの外観図
【図3】本発明の実施の形態1のクリーニング方法に用いられるシーリングライトを示す説明図、(a)はシーリングライトの断面説明図、(b)は同要部断面説明図
【図4】本発明の実施の形態2のクリーニング方法を示す概要図
【図5】本発明の実施の形態2のクリーニング方法に用いられるシーリングライトを示す説明図、(a)はシーリングライトの断面説明図、(b)は同要部断面説明図
【図6】本発明の実施の形態3のクリーニング方法を示す概要図
【図7】本発明の実施の形態3のクリーニング方法に用いられるシーリングライトを示す説明図、(a)はシーリングライトの断面説明図、(b)は同要部断面説明図
【図8】本発明の実施の形態4のクリーニング方法を示す概要図
【図9】本発明の実施の形態4のクリーニング方法に用いられるシーリングライトを示す説明図、(a)はシーリングライトの断面説明図、(b)は同要部断面説明図
【図10】本発明の実施の形態5のセルフクリーニング式のシーリングライトを示す概要図
【図11】ベースライトを示す図
【図12】ダウンライトを示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
説明に先立ち、まず本発明の適用範囲について説明する。
【0024】
〈基材〉について
なお、「基材」としては、特に制限されるものではないが、プラスチックや金属、ガラス、またこれらの物質上に着色などの目的で塗装などが施されたものが含まれる。また、基材は、変形を容易にするため、肉厚のものより薄肉のほうが好ましい。
また、基材に使用する材質として好ましくは、熱により所定の形状に変形する形状記憶性を有する物質が好ましい。具体的にはチタンとニッケルの合金、鉄とマンガン、ケイ素で構成される形状記憶合金がある。また形状記憶プラスチックスとしては、ポリウレタン系形状記憶樹脂(三菱重工業(株)製)などがある。
【0025】
さらにまた、基材を任意の形状に形成する方法としては、特に限定されるものではないが、プラスチックであれば射出成形、圧縮成形、トランスファー成形、真空成形、圧空成形などが挙げられる。
さらに、金属を基材として用いる場合には、一般的にはAl基合金、Mg基合金、Fe基合金などが挙げられ、成形方法としてはスピニング加工、プレス加工、液圧成形、ダイキャスト、チクソモールディングなどが挙げられる。
ガラスを基材として用いる場合には、プレス加工やブロー加工などが代表的である。
【0026】
〈凹凸形状〉について
「凹凸形状」の形態としては、幅(ピッチ)、高さなどの寸法、形状など特に限定されるものではないが、好ましくは、
1)凸が鋭角状ではないこと (凸部の先端が、断面積(平坦部)を持つこと)
2)凸部の断面積が、凹部の断面積より大きいこと
が大切である。
【0027】
また、基材表面が、付着する油膜層との間に空隙を生成しうる程度のピッチおよび深さをもつ凹部および凸部とするのが有効である。
「凹凸形状」の加工方法としては、
1)基材を任意形状に加工する際に、金型表面に設けた凹凸形状を基材に転写する方法
: 金属、プラスチック、ガラス
2)物体表面をエッチングすることにより、基材表面に微細な凹凸を形成する方法
: 金属、プラスチック
3)エンボス加工、エンドミルを用いた切削加工などの機械加工により、基材表面に凹凸を形成する方法
: 金属、プラスチック、ガラス
などがある。
【0028】
〈汚れ(油膜)〉について
本発明で定義する油膜とは、原料別には
1)植物性油 : ひまし油、サラダ油、コーン油、大豆油、菜種油、サフラワー油、ひまわり油、パーム油、オリーブ油など
2)動物性油 : ラード、牛脂、魚油、バターなど
3)鉱物性油 : 石油、パラフィン、鉱物油、シリコンオイル、石油ワックスなど
【0029】
また、目的別には、
1)料理用(食用) : てんぷら油、サラダ油、ラー油
2)燃料用 : 石油
3)工業用 : 切削油、潤滑油、スピンドル油、グリース、タービン油
などの目的別など多岐に渡る油分が直接、または揮発(ミスト化)して、物体表面(基材)に付着して固着したものを示す。
また、上記油分と水分などの混合物質が固着した物質も、油膜とする。
また、前記油膜上に、油膜を接着層として付着した、大気中に飛散している物質(毛髪、塵、粉塵、切削片、砂、綿埃、繊維物質などの物質も含む。
油膜の膜厚や外観(色調)、物体表面(基材)との接触状態や面積などは特に限定しない。
【0030】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1の基材1表面に付着する油膜層2あるいは前記油膜層2上に付着する埃3などの汚染物を除去するためのクリーニング方法を示す概要図を図1(a)および(b)に示す。ここではシーリングライトのカバー100のクリーニング方法について説明する。図2はこのシーリングライトの外観図、図3(a)は同シーリングライトの断面説明図、図3(b)は同要部断面説明図である。
【0031】
本実施の形態では、図1(a)および(b)にクリーニング工程を示すように、シーリングライトのカバー100を構成する基材1の表面に、凹凸を形成したものを用いており、1aは凹部、1bは凸部である。ここでは、図1(a)に示すように、基材1の表面を、凹部1aと凸部1bとを有する形状とし、かつ、基材表面の変形による形状変化により、図1(b)に示すように、汚れである油膜層2と基材1間に亀裂を生じさせ、空隙Cを形成させて接触面積を減らして、剥離させるようにしたものである。
本実施の形態1のシーリングライトは、カバー100を、表面に凹凸のある透光性樹脂で形成している。図3(b)に示すように、カバー100を構成する基材1は凹部1aと凸部1bとが規則的に配列されている点が特徴であり、その他の構成については通例の構成をとるものとする。この基材表面は、付着する油膜層との間に空隙を生成しうる程度のピッチおよび深さをもつように構成されている。
シーリングライトは種々の汚れが生じ、カバー100の表面にも油膜層2、そしてその上には埃3が付着している。この状態で、カバー100を周囲から力Pで押すとカバー100に形状変化が生じる。
【0032】
なお、この基材表面において、凸部1bの寸法は、10μmから500μmとするのが好ましい。500μmより大きいと、カバー100から出射する光にパターンが形成される可能性がある。一方、10μmより小さいと回折現象によりカバー100が着色し、外観品位の低下を招くという問題がある。
【0033】
本実施の形態のシーリングライトは、通例の構造をとるものであるが、器具本体101に直管蛍光灯102が装着され、基板103に実装された点灯回路104によって点灯制御がなされるように構成されている。
【0034】
本実施の形態では、図1(b)に示すようにシーリングライトのカバー100を構成する基材1表面と油膜層2との間に空隙Cを形成する程度の形状変化を与え、接触面積を減少させる、この空隙Cから、油膜層2に亀裂を発生させ、基材1表面から油膜層2を剥離除去するようにしたものである。
この構成により、基材表面に対する形状変化により、油膜層に亀裂を生じさせるため、基材に対する応力Pの印加のみで油膜層を破壊し、空隙を生成して剥がれ易くすることができる。
【0035】
このように、基材表面部に対する寸法変化または形状変化により油膜層2に亀裂を生じさせるので、基材1に対する加熱や振動のみで油膜層を破壊し、剥がれやすくすることができる。特に基材表面部に凹凸を設けているため、油膜層2との接点の変位変形によりお、非接点との境界に応力集中するため、全面接触している場合よりも応力集中するポイントが増加し、より亀裂を生じ易い。
なお前記実施の形態1では、応力Pの印加のみで油膜層を破壊する場合について説明したが、応力の印加に代えて、加熱およびまたは振動を付与するようにしても同様に、油膜層の破壊を実現することができる。
【0036】
(実施の形態2)
次に本発明の実施の形態2について説明する。
前記実施の形態1では、応力Pの印加により油膜層を破壊する場合について説明したが、本実施の形態では加熱により、基材10に熱膨張を生ぜしめ、油膜層2の破壊を引き起こす例について説明する。
本発明の実施の形態2の基材10表面に付着する油膜層12あるいは前記油膜層12上に付着する埃13などの汚染物を除去するためのクリーニング方法を示す概要図を図4(a)および(b)に示す。ここでも実施の形態1と同様、シーリングライトのカバー100のクリーニング方法について説明する。図5(a)は同シーリングライトの断面説明図、図5(b)は同要部断面説明図である。
【0037】
本実施の形態では図4(a)および(b)にクリーニング工程を示すように、シーリングライトのカバー100を構成する基材10の表面に、凸部10Tを形成したものを用いている。ここでは、図4(a)に示すように、基材10の表面を、凸部10Tを有する形状とし、かつ、基材表面の膨張による寸法変化により、図4(b)に示すように、汚れである油膜層12と基材10間に亀裂を生じさせ、油膜層12と基材10間に空隙Cを形成して接触面積を減らして、剥離させるようにしたものである。
【0038】
本実施の形態2のシーリングライトは、カバー100を、表面に凸部10Tのある透光性樹脂で形成している。図5(b)に示すように、カバー100を構成する基材10は凸部10Tが所定のピッチで規則的に配列されている点が特徴であり、その他の構成については通例の構成をとるものとする。この基材表面は、付着する油膜層との間に小空隙11を生成しうる程度の凸部のピッチおよび高さをもつように構成されている。
ここでも凸部10Tの寸法は、10μmから500μmとするのが好ましい。500μmより大きいと、カバー100から出射する光にパターンが形成される可能性がある。一方、10μmより小さいと回折現象によりカバー100が着色し、外観品位の低下を招くという問題がある
シーリングライトは種々の汚れが生じ、カバー100の表面にも油膜層12、そしてその上には埃13が付着している。この状態で、カバー100を加熱することによりカバー100に寸法変化が生じる。
【0039】
本実施の形態のシーリングライトも実施の形態1と同様であるためここでは説明を省略する。
【0040】
本実施の形態では、図4(b)に示すようにシーリングライトのカバー100を構成する基材10表面と油膜層12との間に空隙Cを形成する程度の寸法変化を与え、接触面積を減少させる、この空隙Cから、油膜層12に亀裂を発生させ、基材10表面から油膜層2を剥離除去するようにしたものである。
この構成により、基材表面の熱膨張による寸法変化により、小空隙11が増大して油膜層12との間の空隙に成長し、この空隙が油膜層に亀裂を生じさせるため、基材に対する加熱のみで油膜層を破壊し、空隙を生成して剥がれ易くすることができる。
なお前記実施の形態2では、加熱のみで油膜層を破壊する場合について説明したが、加熱および振動を付与するようにしても同様に、油膜層の破壊を実現することができる。
【0041】
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3について説明する。
前記実施の形態1および2では、基材自体に凹凸を形成した例について説明したが、本実施の形態では、基材に凹部1aおよび凸部1bを形成すると共に凸部1b上にコーティング層4を形成したものである。応力Pの印加により油膜層を破壊する場合について説明する。
本発明の実施の形態3の基材表面に付着する油膜層あるいは前記油膜層上に付着する埃などの汚染物を除去するためのクリーニング方法を示す概要図を図6(a)および(b)に示す。ここでも実施の形態1と同様、シーリングライトのカバー100のクリーニング方法であるものとする。図7(a)は同シーリングライトの断面説明図、図7(b)は同要部断面説明図である。
【0042】
本実施の形態では図6(a)および(b)にクリーニング工程を示すように、シーリングライトのカバー100を構成する基材1の表面に、凹部1aおよび凸部1bを形成すると共に凸部1bにコーティング層4を形成したものを用いている。ここでは、図6(a)に示すように、基材1の表面を、凹部1a、凸部1b、コーティング層4を有する形状としており、基材表面の膨張による寸法変化により、図6(b)に示すように、汚れである油膜層2と基材1間に亀裂を生じさせ、油膜層2と基材1間に空隙Cを形成して接触面積を減らして、剥離させるようにしたものである。
【0043】
本実施の形態3のシーリングライトは、カバー100を、図7(b)に示すように、表面に凹部1aおよび凸部1bのある透光性樹脂で形成し、凸部1bをコーティング層4で被覆している。図7(a)および図7(b)に示すように、カバー100を構成する基材1は凹部1aおよび凸部1bが所定のピッチで規則的に配列され、凸部1b上にコーティング層4を形成している点が特徴であり、その他の構成については通例の構成をとるものとする。
ここでも、凸部1bの寸法は、10μmから500μmとするのが好ましい。500μmより大きいと、カバー100から出射する光にパターンが形成される。一方、10μmより小さいと回折現象によりカバー100が着色し、外観品位の低下を招くという問題がある
シーリングライトは種々の汚れが生じ、カバー100の表面にも油膜層2、そしてその上には埃3が付着している。この状態で、カバー100を加熱することによりカバー100に寸法変化が生じる。
【0044】
本実施の形態のシーリングライトも実施の形態1と同様であるためここでは説明を省略する。
この構成によれば、コーティング層の介在により、より剥離し易くなっており、空隙Cを生成し易くして剥がれ易くすることができるようになっている。また、凹部と凸部とを有する基材表面部の凹部または凸部の少なくとも一部がコーティング層で被覆されていることで、油膜層と基材の接点を減らし、基材の変形による剥離をより促進させることができる。
なお前記実施の形態3では、加熱のみで油膜層を破壊する場合について説明したが、加熱および振動を付与するようにしても同様に、油膜層の破壊を実現することができる。
【0045】
なおこのコーティング層は、防汚コート層であり、シリコーン、フッ素、パラフィンなどの撥水撥油成分を含有する組成物、あるいはこれらの化合物を基材表面にコーティングして用いられる。
ここでコーティングする組成物は、特に限定されるものではないが、基材表面固有の水接触角、あるいは対象とする油成分の接触角と比較して、高い値を有する物質を選択することが好ましい。
【0046】
また、コーティング組成物には、既知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、レベリング剤、カップリング剤、消泡剤、艶消し剤などの添加物を加えてもよい。また、溶剤としてトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチル、エチセロ、メチセロ、セルソルブアセテートなどのエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサンなどのケトン類などが挙げられる。これら溶剤は1種を単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
またこの防汚コート層を構成するコーティング層の膜厚は、特に限定されるものではない。また、基材表面に形成する凸部全体を防汚コート層で形成してもよく、あるいはあらかじめ物体表面に形成した凸部のうち、油膜と接触する凸部のうち一部に形成してもよい。
また、コーティング層の形成方法としては、スプレー塗装法、浸漬法、静電塗装法などが用いられる。
【0047】
(実施の形態4)
次に本発明の実施の形態4について説明する。
前記実施の形態2の構造において凸部10T上にコーティング層14を形成したものである。加熱により油膜層を破壊する場合について説明する。
本発明の実施の形態4の基材表面に付着する油膜層あるいは前記油膜層上に付着する埃などの汚染物を除去するためのクリーニング方法を示す概要図を図8(a)および(b)に示す。ここでも実施の形態1乃至3と同様、シーリングライトのカバー100のクリーニング方法であるものとする。図9(a)は同シーリングライトの断面説明図、図9(b)は同要部断面説明図である。
【0048】
本実施の形態では図8(a)および(b)にクリーニング工程を示すように、シーリングライトのカバー100を構成する基材10の表面に、凸部10Tを形成したものを用いている。ここでは、図8(a)に示すように、基材1の表面を、凸部10Tを有する形状とし、かつ、基材表面の膨張による寸法変化により、図8(b)に示すように、汚れである油膜層12と基材10間に亀裂を生じさせ、油膜層12と基材10間に空隙を形成して接触面積を減らして、剥離させるようにしたものである。
【0049】
本実施の形態4のシーリングライトは、カバー100を、図9(b)に示すように、表面に凸部10Tのある透光性樹脂で形成している。カバー100を構成する基材10は凸部10Tが所定のピッチで規則的に配列され、この凸部10Tがコーティング層14で被覆されている点が特徴であり、その他の構成については通例の構成をとるものとする。この基材表面は、付着する油膜層との間に小空隙11を生成しうる程度の凸部10Tのピッチおよび高さをもつように構成されている。
ここでも、凸部10Tの寸法は、10μmから500μmとするのが好ましい。500μmより大きいと、カバー100から出射する光にパターンが形成される可能性がある。一方、10μmより小さいと回折現象によりカバー100が着色し、外観品位の低下を招くという問題がある
【0050】
シーリングライトは種々の汚れが生じ、カバー100の表面にも油膜層12、そしてその上には埃13が付着している。この状態で、カバー100を加熱することによりカバー100に寸法変化が生じる。
【0051】
この構成により、加熱によって容易に空隙を生成することができ、セルフクリーニングが容易となり、実施の形態2に比べて更に剥離性が向上する。
この構成により、ランプ本体を加熱することで容易にセルフクリーニングが可能となる。望ましくは、通常の点灯で空隙が生成しうるような熱膨張率差を得ることができるような基材表面を用いることで、セルフクリーニングが可能となる。また、別途、クリーニングモードとしてオンオフを繰り返すような加熱方式も容易となる。
【0052】
なお、前記実施の形態1乃至4において、機械的変位を付与する工程が、基材表面を振動させる振動工程を含むようにしてもよい。
この構成により、振動などによって容易に空隙を生成することができ、セルフクリーニングが容易となる。
【0053】
また、前記基材の少なくとも一部を形状記憶合金で形成してもよい。これにより、形状記憶合金に変位力をかけることで容易に空隙を形成することができる。
【0054】
また、照明器具などにおいて、点灯モードのほかにお掃除モードに切り替え可能な切り替え部を具備し、所定の点灯時間ごとにお掃除モードに切替えられるように構成し、自動的あるいは手動で、容易にセルフクリーニングを行なうことができる。
【0055】
(実施の形態5)
次に本発明の実施の形態5のシーリングライトについて説明する。このシーリングライトは、図10に示すように、ランプ本体に振動を与える加振手段106を具備した点で、前記実施の形態1のシーリングライトと異なる。他部については前記実施の形態1のシーリングライトと同様であるため、ここでは説明を省略する。
この構成により、加振手段により、剥離した油膜層が容易に引き剥がされるため、セルフクリーニングが確実となる。またこの加振手段の駆動を間欠的に実施するようにしてもよい。
【0056】
前記実施の形態では、照明器具に用いる光源として、直管蛍光灯を用いたシーリングライトについて説明したが、白熱球、蛍光灯、コンパクト蛍光灯、水銀灯、EL、LED等を用いることができ、特に制限されるものではない。しかしながら、物体表面(基材)の変位変形量を大きくするためには、電気エネルギーが熱エネルギーに変換されやすい、白熱球や蛍光灯、水銀灯などが好ましい。
【0057】
また、照明器具の形態としては、シーリングライトのほか、図11に示すベースライト、図12に示すダウンライト、スポットライトなど、特に限定されるものではない。ここでベースライトは図11に示すように、光源201、反射板202を担持する器具本体203で構成されるが、これらのいずれの部材の表面に、本発明を適用してもよい。また、ダウンライトは図12に示すように、透光部材301を枠体303で支持し、取り付けばね302で天井などに装着するものであるが、これらのいずれの部材の表面に、本発明を適用してもよい。ここで器具本体304は、端子台305とともに天井裏に収納されるものであるが、前述したような露出する部材のみならず、これらについても同様の表面加工を施したセルフクリーニング機構を具備したものとしてもよい。また、照明器具が設置される場所についても屋内、屋外を問わず適用可能である。また、空間についても屋内であればリビング、キッチン、浴室など、適用場所についても、特に限定されるものではない。
【0058】
さらにまた、照明器具は天井面や壁面上の一部に配設されるが、配設位置は部屋の中央、壁際など特に限定されるものではなく、さらに、固定されていてもよいし、移動可能な構造としてもよい。
【0059】
望ましくは、キッチン用照明器具など長期間、使用することにより油膜などの付着が発生し、光源から出射する光を効率よく利用できなくなる部材に使用することが好ましい。
また、光の有効利用に関係なく、油膜などの汚れが気になる部位に使用しても、何ら問題は無く、特に限定されるものではない。
【0060】
照明器具の光源を、通常点灯することにより、物体表面(基材)の膨張が十分得られず、油膜が剥離しない場合には、
1)光源の点灯、消灯をある時間周期により繰返し行い、基材の膨張/収縮を繰返し発生させて、基材と油膜の層間を剥離させる。
2)光源の通常点灯時より、ランプが破壊しない程度、例えば1.1倍程度の電力を加え、基材の膨張をより大きくする
などの、通常点灯時とは異なる、「お掃除(油膜剥離)モード」を設定してもよい。
【0061】
以上説明してきたように、本発明によれば、セルフクリーニングが可能であるため、汚れの生じ易いキッチン用照明器具、高い天井に設置されるシーリングライトをはじめとする種々の照明器具、冷蔵庫、天井パネルなどにも適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 基材
1a 凹部
1b 凸部
2 油膜層
3 埃
10 基材
10T 凸部
11 小空隙
12 油膜層
13 埃
C 空隙
100 カバー
101 器具本体
102 直管蛍光灯
103 基板
104 点灯回路
106 加振手段
201 光源
202 反射板
203 器具本体
301 透光部材
302 取り付けばね
303 枠体
304 器具本体
305 端子台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に付着する油膜層あるいは前記油膜層上に付着する埃などの汚染物を除去するクリーニング方法であって、
前記基材表面に、前記基材表面と前記油膜層との間に空隙を形成する程度の寸法変化または形状変化を与え、接触面積を減少させる空隙生成工程と、
前記空隙から、前記油膜層に亀裂を発生させ、前記基材表面から前記油膜層を剥離除去する工程とを含むクリーニング方法。
【請求項2】
請求項1に記載のクリーニング方法であって、
前記空隙生成工程は、前記基材表面と前記油膜層との熱膨張率の変化により空隙を生成する加熱工程を含むクリーニング方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のクリーニング方法であって、
前記空隙生成工程は、前記基材表面に機械的変動を生成し得る程度の機械的変位を付与する工程を含むクリーニング方法。
【請求項4】
請求項3に記載のクリーニング方法であって、
前記機械的変位を付与する工程は、前記基材表面を振動させる振動工程を含むクリーニング方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のクリーニング方法を用いた照明器具のクリーニング方法であって、
前記基材が、照明器具のランプ本体であって、
前記空隙生成工程が、前記ランプ本体を加熱する加熱工程を含む照明器具のクリーニング方法。
【請求項6】
基材表面に付着する油膜層あるいは前記油膜層上に付着する埃などの汚染物を除去するクリーニング機能を備えたセルフクリーニング式器具であって、
前記基材表面に、前記基材表面と前記油膜層との間に空隙を形成する程度の寸法変化または形状変化を与え、接触面積を減少させる空隙生成エネルギー付与部と、
前記空隙から、前記油膜層に亀裂を発生させ、前記基材表面から前記油膜層を剥離除去する除去部とを備えたセルフクリーニング式器具。
【請求項7】
請求項6に記載のセルフクリーニング式器具であって、
前記基材表面が、付着する油膜層との間に空隙を生成しうる程度のピッチおよび深さをもつ凹部および凸部とを備えたセルフクリーニング式器具。
【請求項8】
請求項7に記載のセルフクリーニング式器具であって、
前記凹部または凸部の少なくとも一部がコーティング層で構成されたセルフクリーニング式器具。
【請求項9】
請求項6に記載のセルフクリーニング式器具であって、
前記基材の少なくとも一部が形状記憶合金で形成されたセルフクリーニング式器具。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれかに記載のセルフクリーニング式器具を用いた照明器具であって、
前記基材表面がランプ本体表面であって、
点灯モードのほかにお掃除モードに切り替え可能な切り替え部を具備し、
所定の点灯時間ごとにお掃除モードに切替えられるように構成されたセルフクリーニング式器具。
【請求項11】
請求項10のいずれかに記載のセルフクリーニング式器具を用いた照明器具であって、
ランプ本体に振動を与える加振手段を具備したセルフクリーニング式照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−227852(P2010−227852A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79337(P2009−79337)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】