クリーニング装置及び画像形成装置
【課題】クリーニング装置10のクリーニング部材の交換頻度を低下させる。
【解決手段】自らの表面にトナー像を担持する中間転写ベルト8と、中間転写ベルト8の表面にクリーニング部材のエッジを当接させて、同表面に付着しているトナーを除去するクリーニング装置10とを備える画像形成装置において、クリーニング部材として、互いに異なる回転角度で異なるエッジをベルトに当接させる正多角柱の形状のクリーニング回転体551を用いるとともに、クリーニング回転体551の回転停止位置を変化させることで、クリーニング回転体551のベルトに対する当接エッジを切り替える姿勢変更手段とを設けた。
【解決手段】自らの表面にトナー像を担持する中間転写ベルト8と、中間転写ベルト8の表面にクリーニング部材のエッジを当接させて、同表面に付着しているトナーを除去するクリーニング装置10とを備える画像形成装置において、クリーニング部材として、互いに異なる回転角度で異なるエッジをベルトに当接させる正多角柱の形状のクリーニング回転体551を用いるとともに、クリーニング回転体551の回転停止位置を変化させることで、クリーニング回転体551のベルトに対する当接エッジを切り替える姿勢変更手段とを設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自らの表面にトナー像を担持する像担持体、あるいは画像形成対象となる記録部材を自らの表面に伴って搬送する搬送体、の表面に付着しているトナーを除去するクリーニング装置、及びこれを用いる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のクリーニング装置として、クリーニングブレードなどのクリーニング部材のエッジを像担持体や搬送体に当接させて、像担持体や搬送体の表面からトナーを掻き取る方式のものが知られている(例えば特許文献1に記載のもの)。この方式では、回転駆動などといった、クリーニング部材に対してトナーを掻き取るための駆動動作を行わせることなく、像担持体や搬送体からトナーを掻き取ることができる。
【0003】
一方、画像形成に用いられるトナーは、近年の高画質化に伴い、粉砕法によるものよりも、重合法によるものが主流になってきている。重合法によるトナー粒子は、粉砕法によるトナー粒子に比べて球形に近く、且つ小径であることから、高解像度に対応する小さなドットでも優れた再現性を発揮することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、クリーニング部材のエッジを当接させてクリーニングを行う方式において、重合法によるトナーを良好にクリーニングしようとすると、クリーニング部材を頻繁に交換しなければならなくなり、装置の維持コストを高めてしまう。具体的には、重合法によるトナーは、球形に近く且つ小径であることから、クリーニング部材のエッジと、像担持体や搬送体との間に形成される僅かな隙間をすり抜け易い。このため、重合法によるトナーを用いる場合には、粉砕法によるトナーを用いる場合に比べて、クリーニング部材を像担持体や搬送体に強く押圧して、前述の隙間をできるだけ無くす必要がある。すると、クリーニング部材のエッジを短期間に摩耗してすぐにトナーのすり抜けを引き起こしてしまうため、クリーニング部材を頻繁に交換しなければならなくなるのである。
【0005】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、クリーニング部材の交換頻度を低下させることができるクリーニング装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、自らの表面にトナー像を担持する像担持体と、画像形成対象となる記録部材を自らの表面に保持して搬送する搬送体とを備える画像形成装置に搭載され、該像担持体又は搬送体の表面にクリーニング部材のエッジを当接させて、該表面に付着しているトナーを除去するクリーニング装置において、上記クリーニング部材として、クリーニング部材が互いに異なる姿勢をとった際にそれぞれ像担持体表面又は搬送体表面に当接する複数のエッジを具備するものを用いるとともに、該クリーニング部材の姿勢を変更する姿勢変更手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のクリーニング装置において、上記姿勢変更手段として、回転軸を中心に上記クリーニング部材を回転させるものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2のクリーニング装置において、上記姿勢変更手段として、駆動源の発する駆動力を利用して上記クリーニング部材の姿勢を変更するものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかのクリーニング装置において、上記クリーニング部材に付着しているトナーを清掃する清掃部材を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかのクリーニング装置において、電源からの電圧を受け入れて上記クリーニング部材に導く第1電圧受入手段と、該クリーニング部材によるクリーニング工程を経由した後の像担持体表面又は搬送体表面に当接しながら該像担持体表面又は搬送体表面に付着しているトナーを掻き取るブラシ部材と、電源からの電圧を受け入れて該ブラシ部材に導く第2電圧受入手段とを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、自らの表面にトナー像を担持する像担持体と、画像形成対象となる記録部材を自らの表面に保持して搬送する搬送体と、該像担持体又は搬送体の表面にクリーニング部材のエッジを当接させて、該表面に付着しているトナーを除去するクリーニング手段とを備える画像形成装置において、上記クリーニング手段として、請求項1乃至5の何れかのクリーニング装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の画像形成装置において、上記クリーニング装置として、請求項3のクリーニング装置を用いるとともに、所定の定期的なタイミングで上記姿勢変更手段を駆動して上記クリーニング部材の当接エッジを切り替える制御手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項6又は7の画像形成装置であって、上記クリーニング装置が、上記像担持体としての無端状の像担持ベルト、又は上記搬送体としての無端状の搬送ベルト、に付着している転写残トナーを除去するものであり、且つ、該像担持ベルト又は搬送ベルトが、0.07〜0.30[mm]以下の弾性層を具備するものであることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項6乃至8の何れかの画像形成装置であって、トナーとして、体積平均粒径が3〜8[μm]であり、且つ体積平均粒径を個数平均粒径で除算した値が1.00〜1.40であるものを用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
これらの発明においては、クリーニング部材の使用中のエッジが摩耗してクリーニング性能が低下した場合に、姿勢変更手段によってクリーニング部材の姿勢を変更して、像担持体又は搬送体に対して別のエッジを当接させることで、クリーニング部材を交換することなくクリーニング性能を復帰させる。よって、従来に比べて、クリーニング部材の交換頻度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るプリンタの全体を示す概略構成図。
【図2】同プリンタにおける画像形成部を示す拡大構成図。
【図3】トナー粒子の2次元平面に対する投影像の最大径MXLNGと平面積AREAとを説明する模式図。
【図4】トナー粒子の2次元平面に対する投影像の周長PERIと平面積AREAとを説明する模式図。
【図5】(a)、(b)、(c)はそれぞれトナーの形状を模式的に示す図。
【図6】従来のベルトクリーニング装置を示す拡大構成図。
【図7】(a)、(b)、(c)は、中間転写ベルトに残留した転写残トナーの帯電量分布と、クリーニング部材との接触位置を通過した後の転写残トナーの帯電量分布との関係の第1例、第2例、第3例を示すグラフ。
【図8】電気抵抗が、1×105Ω・cm、1×107Ω・cm、1×109Ω・cmであるクリーニングブラシのクリーニング性を示すグラフ。
【図9】実施形態に係るプリンタのベルトクリーニング装置を中間転写ベルトとともに示す拡大構成図。
【図10】同ベルトクリーニング装置におけるクリーニング回転体の周囲構成を中間転写ベルトとともに示す拡大構成図。
【図11】同周囲構成を鉛直方向の上方から眺めた平面図。
【図12】クリーニング回転体を中間転写ベルトから離間させた状態の同周囲構成を中間転写ベルトとともに示す拡大構成図。
【図13】クリーニング回転体を中間転写ベルトから離間させ、且つモータ駆動によって回転させている状態の同周囲構成を中間転写ベルトとともに示す拡大構成図。
【図14】実施例に係るプリンタの同周囲構成を中間転写ベルトとともに示す拡大構成図。
【図15】第1変形例に係るプリンタの同周囲構成を中間転写ベルトとともに示す拡大構成図。
【図16】第2変形例に係るプリンタの同周囲構成を中間転写ベルトとともに示す拡大構成図。
【図17】第3変形例に係るプリンタの同周囲構成を中間転写ベルトとともに示す拡大構成図。
【図18】第4変形例に係るプリンタの要部構成を示す要部構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した画像形成装置の実施形態として、電子写真方式のいわゆるタンデム型中間転写方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)について説明する。まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタの全体を示す概略構成図である。また、図2は、本プリンタにおける画像形成部を拡大して示す拡大構成図である。このプリンタは、イエロー,マゼンタ,シアン,黒(以下、Y,M,C,Kと記す)のトナー像を生成するための4つのプロセスユニット6Y,M,C,Kを備えている。4つのプロセスユニット6Y,M,C,Kはドラム状の感光体1Y,M,C,Kをそれぞれ有している。各感光体1Y,M,C,Kの回りにはそれぞれ帯電装置2Y,M,C,K、現像装置5Y,C,M,K、クリーニング装置4Y,M,C,K、除電装置(不図示)等を有している。プロセスユニット6Y,M,C,Kは、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。また、プロセスユニット6Y,M,C,Kの下方には、感光体1Y,M,C,K上に静電潜像を形成するためにレーザー光による光書き込みをおこなう露光装置7を有している。
【0010】
なお、本プリンタでは、プロセスユニット6Y,M,C,Kは、一体的に構成され装置本体に脱着可能で寿命到達時に交換されるプロセスカートリッジの形態をなしており、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0011】
プロセスユニット6Y,M,C,Kの上方には、像担持ベルトたる中間転写ベルト8を備えた転写ユニット17が配設されている。中間転写ベルト8は、テンションローラ14、駆動ローラ12、支持ローラ13、15,16等の複数のローラに掛け回されており、図中反時計回り方向に回転駆動される。中間転写ベルト8を挟んで感光体1Y,M,C,Kに対向する位置には、感光体1Y,M,C,K上に形成されたトナー像を中間転写ベルト8上に転写するために1次転写ローラ9Y,M,C,Kが配設されている。また、中間転写ベルト8の回転方向に関して1次転写ローラ9Y,M,C,Kより下流部には、中間転写ベルト8の周面に当接し、中間転写ベルト8上のトナー像を記録紙に転写する2次転写ローラ19を有する2次転写装置を有している。なお、2次転写装置は、2次転写ローラ19に限るものではなく、数本の支持ローラと駆動ローラにより掛け渡される2次転写ベルトであっても良い。
【0012】
2次転写ローラ19よりも下流には、2次転写ローラ19による転写後に中間転写ベルト8上に残留する残留トナーを除去するベルトクリーニング装置10が、中間転写ベルト8を介してテンションローラ14に対向するよう設けられている。このベルトクリーニング装置10は中間転写体8と一体的に交換可能であるが、中間転写ベルト8と寿命設定が異なる場合は単独で脱着が可能としてもよい。
【0013】
中間転写ベルト8の材質について詳しく説明する。
近年、記録紙として従来広く用いられてきた普通紙に加え、デザインとして表面に凹凸を有する特殊紙やアイロンプリントなどの熱転写に用いる特殊な記録紙が用いられることが増えている。このような特殊紙を用いると、従来の普通紙の場合よりもカラートナーを重ね合わせた中間転写ベルト8上のトナー像を紙に2次転写する際に転写不良が発生し易くなる。そこで、中間転写ベルト8に弾性をもたせることにより、記録紙との接触性を高めている。
【0014】
中間転写ベルト8としては、多層構造のものが用いられる。ベース層としては、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン等の合成樹脂又は各種のゴムに、カーボンブラック等の導電剤を適当量含有させて、その体積抵抗率が106〜1014Ω・cmとなるものが用いられている。また、弾性を持たせた導電性弾性層の主基材としては、シリコーンゴム、NBR、H−NBR、CR、EPDM、ウレタンゴム等が用いられる。また、導電性保護層の材料は、摩擦抵抗の低減、電気特性の環境に対する安定性、表面粗さ低減による残留トナークリーニング性能の向上といった目的を達成できるものであれば、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、PVDFなどのフッ素樹脂系ポリマーを、アルコール可溶性ナイロン系、シリコーン樹脂系、シランカプラー、ウレタン樹脂系のエマルジョンや有機溶媒に、溶解・分散した塗料を使用することができる。これら保護層は、上記の塗料をディップコート、スプレーコート、静電塗装、ロールコートなどにより設けることができる。さらに、保護層に表面処理または研磨を施すことにより離型性、導電性、耐磨耗性、表面クリーニング性等を改善することができる。 弾性を有する中間転写ベルト8とドラム状の感光体1とは比較的広い接触領域にて接触配置されており、しかも、中間転写ベルト8により弾性押圧されているため、ドラム状の感光体1と中間転写8との間のタック面圧はそれほど高くなく、しかも、中間転写ベルト8によるトナー像の包み込み動作が行われ、感光体1Y,M,C,K上のトナー像が中間転写ベルト8側に一次転写される。このとき、中間転写ベルト8への転写画像には、大きなタック面圧によるホロキャラクタなどの画像欠陥はなく、高い転写効率で転写されるため、記録材(特に凹凸を有する特殊紙など)上のカラー画像品質はきわめて良好に保たれる。
【0015】
図1において、プリンタの下方には、記録紙Pを収容する給紙カセット26と、給紙カセット26から記録紙Pを給紙する給紙ローラ27とを有する給紙部が設けられている。また、記録紙の搬送方向に関して2次転写ローラ19の上流側には、給紙カセット26から給紙された記録紙を一端停止させて、2次転写位置に向かって送り出すレジストローラ28が設けられている。一方、2次転写位置より記録紙の搬送方向に下流側には、定着装置20が設けられている。また、現像装置5Y,M,C,Kに補給する新しいトナーが充填されたトナーボトル32Y,M,C,Kがプリンタの上方にあり、ここから図示しない搬送経路によって、所定の補給量だけ各色の現像装置5Y,M,C,Kに補給する。
【0016】
次に、プリンタの動作について説明する。パーソナルコンピュータ等から画像情報が送られてくると、中間転写ユニット17では、不図示の駆動モータで駆動ローラ12を回転駆動して、他のローラ13,14,15,16を従動回転し、中間転写ベルト8を回転する。同時に、各プロセスユニット6Y,M,C,Kで各感光体1Y,M,C,Kを回転して、それぞれ帯電ローラ2Y,M,C,Kにより一様に帯電し、ついで、露光装置7により露光して静電潜像を形成する。各静電潜像は、それぞれ各色の現像装置5Y,M,C,Kにより現像され、感光体1Y,M,C,K上にイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの単色画像を形成する。中間転写ベルト8の回転とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写ベルト8上に合成カラー画像を形成する。
【0017】
一方、給紙部では、給紙ローラ27が給紙カセット26から記録紙Pを1枚づつ繰り出して給紙路に入れ、レジストローラ28に突き当てて止める。そして、中間転写ベルト8上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ28を回転し、中間転写ベルト8と2次転写ローラ19との当接による2次転写ニップに記録部材としての記録紙を送り込む。そして、2次転写ニップにおいて、中間転写ベルト8上の合成カラー画像を記録紙上に一括2次転写する。転写後の記録紙は、定着装置20へと送り込まれ、定着装置20により熱と圧力とを加えて画像を定着した後排出される。一方、1次転写後の感光体1Y,M,C,Kは、それぞれのクリーニング装置4Y,M,C,Kで残留トナーが除去され、その後除電され、次の作像に備える。また、2次転写後の中間転写ベルト8は、ベルトクリーニング装置10によって残留トナーが除去され、タンデム画像形成装置による再度の画像形成に備える。
【0018】
本プリンタにおいては、トナーとして、体積平均粒径が3〜8[μm]であり、且つ体積平均粒径(Dv)を個数平均粒径(Dn)で除算した値が1.00〜1.40であるものを用いるように指定されている。この指定は、次のようにして行われる。即ち、前述の条件を満たすトナーをセットした状態でプリンタを出荷することによって行うことができる。また例えば、前述の条件を満たすトナーを、プリンタとともに梱包して出荷することによって行ってもよい。また例えば、前述の条件を満たすトナーの製品番号や商品名などを、プリンタ本体や、これの取扱説明書などに明記することによって行ってもよい。また例えば、ユーザーに対して書面や電子データ等をもって前述の条件、製品番号、商品名などを通知することによって行ってもよい。近年においては、より高精度および高精細な画像が形成できるよう、高解像度を有することが要求されており、その達成手段の1つとして前述の条件を満たすトナーを指定している。また、転写率向上のためにトナーの形状を不定形からより球に近い形状のものを用いている。
【0019】
粒径分布の範囲が狭い粒径均一性に優れたトナーほど、(Dv/Dn)が1.00に近くなる。このような小粒径で粒径分布の狭いトナーでは、トナーの帯電量分布が均一になり、地肌かぶりの少ない高品位な画像を得ることができ、静電転写方式では転写率を高くすることができる。
【0020】
トナーの形状係数SF−1は100〜180、形状係数SF−2は100〜180の範囲にあることが好ましい。図3は、トナー粒子の2次元平面に対する投影像の最大径MXLNGと平面積AREAとを説明する模式図である。形状係数SF−1は、トナー形状の丸さの割合を示すものであり、「SF−1={(MXLNG)2/AREA}×(100π)/4」という式で求められる。トナー粒子の2次元平面に対する投影像の最大径MXLNGの二乗を平面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。SF−1の値が100の場合トナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。
【0021】
図4は、トナー粒子の2次元平面に対する投影像の周長PERIと平面積AREAとを説明する模式図である。形状係数SF−2は、トナー粒子の形状の凹凸の割合を示すものであり、「SF−2={(PERI)2/AREA}×100/(4π)」という式で求められる。トナー粒子を2次元平面に投影してできる図形の周長PERIの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。SF−2の値が100の場合トナー表面に凹凸が存在しなくなり、SF−2の値が大きくなるほどトナー表面の凹凸が顕著になる。
【0022】
形状係数の測定は、具体的には、トナーの中から100個のトナー粒子を無作為に選出してその写真を走査型電子顕微鏡(S−800:日立製作所製)で撮影し、その撮影像を画像解析装置(LUSEX3:ニレコ社製)に導入し、個々のトナー粒子の形状係数を解析した後、それらの平均値を最終的な形状係数とした。トナーの形状が球形に近くなると、トナーとトナーあるいはトナーと感光体との接触状態が点接触になるために、トナー同士の吸着力は弱くなり従って流動性が高くなり、また、トナーと感光体との吸着力も弱く なって、転写率は高くなる。形状係数SF−1、SF−2のいずれかが180を超えると、転写率が低下するため好ましくない。
【0023】
また、トナーは少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマーと、ポリエステルと、着色剤と、離型剤とを有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系溶媒中で架橋及び/又は伸長反応させて得られるトナーである。以下に、トナーの構成材料及び製造方法について説明する。
【0024】
(ポリエステル)
ポリエステルは、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物との重縮合反応によって得られる。 多価アルコール化合物(PO)としては、2価アルコール(DIO)および3価以上の多価アルコール(TO)が挙げられ、(DIO)単独、または(DIO)と少量の(TO)との混合物が好ましい。2価アルコール(DIO)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上の多価アルコール(TO)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0025】
多価カルボン酸(PC)としては、2価カルボン酸(DIC)および3価以上の多価カルボン酸(TC)が挙げられ、(DIC)単独、および(DIC)と少量の(TC)との混合物が好ましい。2価カルボン酸(DIC)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上の多価カルボン酸(TC)としては、炭素数9〜20の芳香族多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、多価カルボン酸(PC)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いて多価アルコール(PO)と反応させてもよい。
【0026】
多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の重縮合反応は、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを 得る。ポリエステルの水酸基価は5以上であることが好ましく、ポリエステルの酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすく、さらには記録紙への定着時、記録紙とトナーの親和性がよく低温定着性が向上する。しかし、酸価が30を超えると帯電の安定性、特に環境変動に対し悪化傾向がある。また、重量平均分子量1万〜40万、好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量が1万未満では、耐オフセット性が悪化するため好ましくない。また、40万を超えると低温定着性が悪化するため好ましくない。
【0027】
ポリエステルには、上記の重縮合反応で得られる未変性ポリエステルの他に、ウレア変性のポリエステルが好ましく含有される。ウレア変性のポリエステルは、上記の重縮合反応で得られるポリエステルの末端のカルボキシル基や水酸基等と多価イソシアネート化合物(PIC)とを反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得、これとアミン類との反応により分子鎖が架橋及び/又は伸長されて得られるものである。多価イソシアネート化合物(PIC)としては、脂肪族多価イソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−イソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアネート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。多価イソシアネート化合物(PIC)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、ウレア変性ポリエステルを用いる場合、そのエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の多価イソシアネート化合物(PIC)構成成分の含有量は、通常0.5〜40wt%、好ましくは1〜30wt%、さらに好ましくは2〜20wt%である。0.5wt%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40wt%を超えると低温定着性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有されるイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0028】
次に、ポリエステルプレポリマー(A)と反応させるアミン類(B)としては、2価アミン化合物(B1)、3価以上の多価アミン化合物(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。 2価アミン化合物(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上の多価アミン化合物(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたも の(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0029】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2や、1/2未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。また、ウレア変性ポリエステル中には、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0030】
ウレア変性ポリエステルは、ワンショット法、などにより製造される。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これに多価イソシアネート(PIC)を反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得る。さらにこの(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア変性ポリエステルを得る。
【0031】
(PIC)を反応させる際、及び(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(PIC)に対して不活性なものが挙げられる。 また、ポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との架橋及び/又は伸長反応には、必要により反応停止剤を用い、得られるウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0032】
ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステル等の数平均分子量は、先の未変性ポリエステルを用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。ウレア変性ポリエステルを単独で使用する場合は、その数平均分子量は、通常2000〜15000、好ましくは2000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0033】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを併用することで、低温定着性およびフルカラー画像形成装置100に用いた場合の光沢性が向上するので、ウレア変性ポリエステルを単独で使用するよりも好ましい。尚、未変性ポリエステルはウレア結合以外の化学結合で変性されたポリエステルを含んでも良い。未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは、少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは類似の組成であることが好ましい。
【0034】
また、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとの重量比は、通常20/80〜95/5、好ましくは70/30〜95/5、さらに好ましくは75/25〜95/5、特に好ましくは80/20〜93/7である。ウレア変性ポリエステルの重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを含むバインダー樹脂のガラス転移点(Tg)は、通常45〜65℃、好ましくは45〜60℃である。45℃未満ではトナーの耐熱性が悪化し、65℃を超えると低温定着性が不十分となる。また、ウレア変性ポリエステルは、得られるトナー母体粒子の表面に存在しやすいため、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
【0035】
(着色剤)
着色剤としては、公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
【0036】
着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造、またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体、あるいはこれらとビニル化合物との共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド 、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
【0037】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては公知のものが使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSYVP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージNEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。このうち、特にトナーを負極性に制御する物質が好ましく使用される。
【0038】
荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を超える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、荷電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。
【0039】
(離型剤)
離型剤としては、融点が50〜120℃の低融点のワックスが、バインダー樹脂との分散の中でより離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これにより定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布することなく高温オフセットに対し効果を示す。このようなワックス成分としては、以下のものが挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス、及びおよびパラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス等が挙げられる。また、これら天然ワックスの外に、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス等が挙げられる。さらに、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド及び、低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等も用いることができる。
【0040】
荷電制御剤、離型剤はマスターバッチ、バインダー樹脂とともに溶融混練することもできるし、もちろん有機溶剤に溶解、分散する際に加えても良い。
【0041】
(外添剤)
トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤として、無機微粒子が好ましく用いられる。この無機微粒子の一次粒子径は、5×10−3〜2μmであることが 好ましく、特に5×10−3〜0.5μmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5wt%であることが好ましく、特に0.01〜2.0wt%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。中でも、流動性付与剤としては、疎水性シリカ微粒子と疎水性酸化チタン微粒子を併用するのが好ましい。特に両微粒子の平均粒径が5×10−4μm以下のものを使用して攪拌混合を行った場合、トナーとの静電力、ファンデルワールス力は格段に向上することより、所望の帯電レベルを得るために行われる現像装置内部の攪拌混合によっても、トナーから流動性付与剤が脱離することなく、ホタルなどが発生しない良好な画像品質が得られて、さらに転写残トナーの低減が図られる。酸化チタン微粒子は、環境安定性、画像濃度安定性に優れている反面、帯電立ち上がり特性の悪化傾向にあることより、酸化チタン微粒子添加量がシリカ微粒子添加量よりも多くなると、この副作用の影響が大きくなることが考えられる。しかし、疎水性シリカ微粒子及び疎水性酸化チタン微粒子の添加量が0.3〜1.5wt%の範囲では、帯電立ち上がり特性が大きく損なわれず、所望の帯電立ち上がり特性が得られ、すなわち、コピーの繰り返しを行っても、安定した画像品質が得られる。
【0042】
次に、トナーの製造方法について説明する。ここでは、好ましい製造方法について示すが、これに限られるものではない。
【0043】
(トナーの製造方法)
1)着色剤、未変性ポリエステル、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー、離型剤を有機溶媒中に分散させトナー材料液を作る。
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、トナー母体粒子形成後の除去が容易である点から好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。有機溶媒の使用量は、ポリエステルプレポリマー100重量部に対し、通常0〜300重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは25〜70重量部である。
【0044】
2)トナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。
水系媒体は、水単独でも良いし、アルコール(メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などの有機溶媒を含むものであってもよい。
トナー材料液100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー材料液の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。
【0045】
また、水系媒体中の分散を良好にするために、界面活性剤、樹脂微粒子等の分散剤を適宜加える。 界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪 酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0046】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0047】
また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0048】
樹脂微粒子は、水系媒体中で形成されるトナー母体粒子を安定化させるために加えられる。このために、トナー母体粒子の表面上に存在する被覆率が10〜90%の範囲になるように加えられることが好ましい。例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子1μm、及び3μm、ポリスチレン微粒子0.5μm、及び、2μm、ポリ(スチレン―アクリロニトリル)微粒子1μm、商品名では、PB−200H(花王社製)、SGP(総研社製)、テクノポリマーSB(積水化成品工業社製)、SGP−3G(総研社製)、ミクロパール(積水ファインケミカル社製)等がある。また、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等の無機化合物分散剤も用いることができる。
【0049】
上記樹脂微粒子や無機化合物分散剤などと併用可能な分散剤として、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α −シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸−β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−β−ヒドロキシエチル、アクリル酸−β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの含窒素化合物、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0050】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。この中でも、分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。
【0051】
3)乳化液の作製と同時に、アミン類(B)を添加し、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)との反応を行わせる。 この反応は、分子鎖の架橋及び/又は伸長を伴う。反応時間は、ポリエステルプレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)との反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0052】
4)反応終了後、乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。 有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に層流の攪拌状態で昇温し、一定の温度域で強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うことで紡錘形のトナー母体粒子が作製できる。また、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、トナー母体粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
【0053】
5)上記で得られたトナー母体粒子に、荷電制御剤を打ち込み、ついで、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機微粒子を外添させ、トナーを得る。荷電制御剤の打ち込み、及び無機微粒子の外添は、ミキサー等を用いた公知の方法によって行われる。 これにより、小粒径であって、粒径分布のシャープなトナーを容易に得ることができる。さらに、有機溶媒を除去する工程で強い攪拌を与えることで、真球状からラクビーボール状の間の形状を制御することができ、さらに、表面のモフォロジーも滑らかなものから梅干形状の間で制御することができる。
【0054】
またトナーの形状は略球形状であり、以下の形状規定によって表すことができる。即ち、図5(a)、(b)、(c)に示すように、略球形状のトナーを長軸r1、短軸r2、厚さr3(但し、r1≧r2≧r3とする。)で規定する。そして、トナーは、長軸と短軸との比(r2/r1)(図5(b)参照)が0.5〜1.0で、厚さと短軸との比(r3/r2)(図5(c)参照)が0.7〜1.0の範囲にあることが好ましい。長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5未満では、真球形状から離れるためにドット再現性及び転写効率が劣り、高品位な画質が得られなくなる。また、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7未満では、扁平形状に近くなり、球形トナーのような高転写率は得られなくなる。特に、厚さと短軸との比(r3/r2)が1.0では、長軸を回転軸とする回転体となり、トナーの流動性を向上させることができる。なお、r1、r2、r3は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、視野の角度を変えて写真を撮り、観察しながら測定した。
【0055】
次に、実施形態に係るベルトクリーニング装置の説明をする前に、従来のベルトクリーニング装置について詳しく説明する。図6は、従来のベルトクリーニング装置10’を中間転写ベルト8とともに示す拡大構成図である。このベルトクリーニング装置10’は、ブレード方式のクリーニングと、ブラシ方式のクリーニングとを併用したものである。
【0056】
近年、高画質化の要望が高まり、トナーは小粒径化の傾向にある。また、トナー製造コスト低減および転写率向上の要望から粉砕トナーではなく重合法等により球形化トナーを採用する傾向にある。小粒径化や球形化の進んだトナーの使用に伴い、像担持体上に残留したトナーを除去する手段として主に用いられてきたブレードクリーニング方式では、ブレードと像担持体表面の密着の精度が低いとトナーがすり抜けてしまいクリーニング性が低下しやすい。これを防ぐため、ブレードを強い当接圧で押しつけると、ブレードのめくれが発生し、いわゆるスジ状あるいは帯状のクリーニング不良を引き起こす原因となり、安定したクリーニング性能を保ちつづけることが困難である。また、球形トナーでも線圧を極端に高くすれば(具体的には、線圧100gf/cm以上)クリーニングできるが、その分クリーニングブレードの磨耗やベルトのキズ等により寿命が極端に短くなる。通常の線圧20gf/cmでのクリーニングブレード寿命(削れてクリーニング不良が発生する時の寿命)は、約120K枚である。線圧100gf/cmの時は、クリーニングブレードの寿命は約20K枚程度である。また、転写性が良いとされている球形トナーに対して、ブレードクリーニング性は、粉砕(異型)トナーに対するクリーニング性より劣ることは良く知られていることである。
【0057】
そこで、図示のベルトクリーニング装置10’は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード520の他に、クリーニングブラシローラ521と、回収ローラ522と、掻き取りブレード523とを設けている。
【0058】
クリーニングブラシローラ521は、クリーニングブレード520よりも、クリーニング対象となる中間転写ベルト8の表面移動方向の下流側で、中間転写ベルト8に当接してながら、クリーニングブレード520のエッジとベルトとの隙間をすり抜けてしまったトナーをベルト表面から掻き取るものである。金属製の回転軸と、これの周面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシローラ部とを具備しており、ブラシ用電源531よって回転軸(芯金)に対してクリーニング電圧が印加される。
【0059】
回収ローラ522は、クリーニングブラシローラ521に付着したトナーを回収するものである。また、掻き取りブレード523は、回収部材としての回収ローラ522に当接して回収ローラ522上のトナーを掻き取ると共に、回収ローラ522表面に電荷を付与するものである。回収ローラ522表面からトナーを掻き取り掻き取り部材としての機能と、回収ローラ522表面に電荷を付与する電荷供給手段としての機能を兼ね備えている。
【0060】
クリーニングブレード520やクリーニングブラシローラ521によってベルト表面から除去されたトナーは、トナー搬送コイル524によってベルトクリーニング装置10の外部に排出されて、プリンタ本体に備えられた廃トナータンク(不図示)に収容される。
【0061】
回収ローラ522には回収電源532よって回転軸(芯金)を介して回収電圧が印加される。また、掻き取りブレード523に対しては、ブレード用電源533より支持基板を介して掻き取り電圧が印加される。また、クリーニングブレード520には、極性制御用電源530によって極性制御電圧が印加される。
【0062】
なお、クリーニングブラシローラ521の表面に電荷を付与するブラシ表面電荷付与部材(不図示)を備えていてもよい。このブラシ表面電荷付与部材は、クリーニングブラシローラ521にトナーが多く回収された場合、ブラシ先端の電位が低下してしまうことを補うために、クリーニングブラシローラ521表面に電荷を付与する電圧が印加された導電性部材であり、具体的には金属の丸棒や板状部材がよい。
【0063】
また、中間転写ベルト8表面には、クリーニングブレード520が常時摺擦していることによる中間転写ベルト8表面保護のために、潤滑剤を塗布するようになっている。具体的には、クリーニングブラシローラ521のブラシ先端のうち、回収ローラ522との当接位置を通過してから、中間転写ベルト8との当接位置に進入する前の箇所には、バネ542によって付勢される固形潤滑剤541が当接している。クリーニングブラシローラ521は、ステアリン酸亜鉛等からなる固形潤滑剤541を引っ掻いてブラシ内に潤滑剤を捕捉しながら、中間転写ベルト8に塗布する。なお、リーニングブラシローラ521とは別に潤滑剤塗布用のブラシを設けてもよい。これは、クリーニングブラシローラ521にはトナーが常時回収されているため、トナーと潤滑剤とが交じり合い、潤滑剤塗布時にいったん回収したトナーを再度中間転写ベルト8上に付着させることを防ぐためである。
【0064】
このような構成のベルトクリーニング装置10’では、次の4つの工程で中間転写ベルト8上のトナーを除去する。
1.クリーニングブレード520が、自らのエッジで中間転写ベルト8上のトナーを掻き取るとともに、トナーの正規帯電極性(ここでは、負極性)と同極性の極性制御電圧が印加されることで、自らのエッジとベルトとの隙間をすり抜けてしまうトナーの極性を正規帯電極性に揃える。
2.トナーの正規帯電極性とは逆極性(ここでは、正極性)のクリーニング電圧が印加されるクリーニングブラシローラ521は、中間転写ベルト8上のトナーを自らのブラシ内に静電的に移動させる。
3.クリーニング電圧と同極性で且つクリーニング電圧よりも絶対値が大きい回収電圧を印加される回収ローラ522は、クリーニングブラシローラ521上のトナーを自らの表面に静電的に移動させる。
4.回収電圧と同極性で絶対値が回収電圧以上である掻き取り電圧が印加される掻き取りブレード523は、回収ローラ522上のトナーを掻き落とす。
以下、これらの工程について詳しく説明する。
【0065】
まず、中間転写ベルト8に付着してベルトクリーニング装置10’との対向位置に到達したトナーの帯電量と、クリーニングブレード520通過後のトナーの帯電量とについて説明する。転写前の中間転写ベルト8上のトナーは、そのほとんどが正規帯電極性である負極性に帯電している。転写時には、中間転写ベルト8上のトナーは、2次転写ローラ19に印加された正極性の転写バイアスにより記録紙に転写するが、転写前から正極性に帯電していたトナーのほとんどはそのまま中間転写ベルト8に付着する。さらに、転写前に負極性に帯電していたトナーでも2次転写ローラ19に印加された正極性の電荷注入を受けるなどして、帯電極性が正極性側にシフトし、その一部は正極性に反転することがある。
【0066】
図7(a)、(b)、(c)は、中間転写ベルト8上に残留した転写残トナーの帯電量分布と、クリーニングブレード520との接触位置を通過した後の転写残トナーの帯電量分布との関係の第1例、第2例、第3例を示すグラフである。なお、帯電量分布はホソカワミクロン製 E−スパートアナライザ(EST−3)で、トナー1個ずつの電荷量Qとそのトナーの粒径dを測定したデータをもとに、本プリンタで作像した時の中間転写ベルト上転写残トナー数百個をサンプリングした時のQ/d(単位はfc/μm)分布を表したものである。図7(a)に示した第1例では、正極性のトナーと負極性のトナーとが半分づつの状態で混在したブロードな分布(以下、転写残トナーAという)になっている。また、図7(b)に示した第2例では、正極性のトナーが負極性トナーよりも多い状態で混在したブロードな分布(以下、転写残トナーBという)になっている。また、図7(c)に示した第3例では、ほとんどが負極性トナーでシャープな分布になっている。
【0067】
転写残トナーA、転写残トナーBが中間転写ベルト8の回転により、クリーニングブレード520の位置まで達すると、ほとんどのトナーがクリーニングブレード520により機械的に掻き落されるが、いわゆるスティックスリップが発生して一部がクリーニングブレード520をすり抜けて行く。機械的に掻き落とされたトナーは、クリーニングブレード520から自然に落下しベルトクリーニング装置10’の下方回収部に収容され、トナー搬送コイル部材524によって廃トナー回収部(不図示)に回収される。クリーニングブレード520には、トナーの帯電極性と同極性(負極性)の極性制御電圧が印加されており、トナーがクリーニングブレード520をすり抜けて行く際、トナーを正規の帯電極性(負極性)に帯電させる。図7(a)、(b)に示したように、クリーニングブレード520通過前の帯電量分布により、通過後の帯電量分布も異なるが、クリーニングブレード520に極性制御電圧を印加することで、ブレード通過後のトナーの極性を負極性側に揃えることができる。
【0068】
次に、トナーがクリーニングブレード520をすり抜けて行く際の帯電量変化について、詳細に説明する。クリーニングブレード520は、支持板金上に接着された板状の導電性弾性体であり、中間転写ベルト8に対してカウンター方向において当接圧20〜40[g/cm]で当接している。導電性弾性体は、例えばポリウレタンゴムを素材と、カーボンブラックやイオン系の導電剤を混練することで導電性を付与するもので、電気抵抗は、2×106Ω・cm〜5×107Ω・cmが好ましい。厚みは1〜3mmの範囲内とするのが良い。厚さが薄すぎると、中間転写ベルト8表面及びクリーニングブレード520自体のうねり等によって中間転写ベルト8への押しつけ量が確保しにくくなる。硬度はJIS−A硬度計で40〜85の範囲内であれば良い。クリーニングブレード520は中間転写ベルト8上のトナーを100%クリーニングするものでなく、すり抜け量が増減しても問題ない。
【0069】
クリーニングブレード520は、例えば、電気抵抗1×106Ω・cm、1×108Ω・cm、厚み2.4〜2.8mm、自由長が7mm〜9mm、JIS−A硬度60〜80、ブレード反発弾性係数45%という条件を具備するものである。このようなクリーニングブレード520と中間転写ベルト8との間にトナーが挟まれた時、クリーニングブレード520に印加された電圧によりトナーに電流が流れ込みトナーは印加電圧と同極性に帯電してクリーニングブレード520を通過する。また、中間転写ベルト8とクリーニングブレード520とで形成された楔部の入り口と出口の微小ギャップ部の放電あるいは電荷注入により印加電圧と同極性に帯電する。この結果、トナーは図7(a)、(b)の「ブレード通過後(電圧−500V印加)」に示すような負極性の帯電量分布となる。
【0070】
次に、クリーニングブレード520を通過した後のトナーの静電クリーニング動作について説明する。クリーニングブレード520のエッジとベルトとの隙間をすり抜けてしまった転写残トナーは、負極性に帯電した状態でクリーニングブラシローラ521の位置まで搬送される。クリーニングブラシローラ521には、ブラシ用電源531よりトナーの帯電極性とは逆極性(正極性)のクリーニング電圧が印加されている。前述の隙間をすり抜けてしまった負極性の転写残トナーは、中間転写ベルト8とクリーニングブラシローラ521表面電位との電位差で形成される電界により、ベルト表面からブラシ内に転移する。
【0071】
回収ローラ522は、クリーニングブラシローラ521に当接するよう設けられ、回収電源532よりクリーニング電圧よりも更に高い正極性の電圧が印加されている。クリーニングブラシローラ521のブラシ内の転写残トナーは、クリーニングブラシローラ521表面電位と回収ローラ522表面電位との電位差で形成される電界により、ブラシ内から回収ローラ522表面上に転移する。
【0072】
掻き取りブレード523は、回収ローラ522に当接するように設けられ、回収ローラ522上のトナーを掻き落とす。掻き落とされたトナーは、トナー搬送コイル524で機外に排出される又は現像装置5に戻される。また、掻き取りブレード523は、回収ローラ522の表面電位を維持するよう回収ローラ522表面へ電荷を供給する電荷供給手段としての機能を有しており、ブレード用電源533より支持基板を介して、回収ローラ522の芯金へ印加されている電圧と同じかさらに高い正極性の電圧が印加されている。これにより、回収ローラ523表面電位は安定化する。
【0073】
クリーニングブレード520やクリーニングブラシローラ521との対向位置で中間転写ベルト8を自らの表面上に掛け回しているテンションローラ14の表面には、中間転写ベルト8の体積抵抗値と同等かそれ以上の体積抵抗値を発揮する抵抗層が被覆されている。この体積抵抗値は絶縁に近いものであると、テンションローラ14に対して電極としての役割を担わせることができなくなる。このため、抵抗層の抵抗を極端に高くすることは避けなければならない。クリーニング電界が維持でき、かつ導電性ブラシ電流が低くなるように抵抗値を設定する必要があり、LogΩ=6〜8程度が好適である。
【0074】
図6に示したクリーニング装置10’では、テンションローラ14に対して、クリーニングブレード520に対向する電極と、クリーニングブラシローラ521に対応する電極との両方の役割を担わせている。このように共通の電極としての役割を担わせることで、部品点数を削減し、省スペース化を実現することができる。
【0075】
図6に示したベルトクリーニング装置10’の具体的な構成条件は、通常環境(高温高湿環境以外)での以下のとおりである。
<クリーニングブラシローラ521の条件>
起毛の材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面・ポリエステル、いわゆる芯鞘構造)
・ブラシ抵抗:1×107Ω・cm(100〜600Vの電圧印加条件で測定)
・ブラシ軸印加電圧(クリーニング電圧):+1000V
・ブラシ植毛密度:10万本/inch2、繊維径約25〜35μm、ブラシ先端の毛倒れ処理あり。
・ブラシ先端部の中間転写ベルト8への喰い込み量:1[mm]
【0076】
ブラシ繊維は繊維全体としては導電性であるが、繊維表面は絶縁層で覆われているものを用いる。繊維表面に絶縁層を有することで、クリーニングブラシローラ521と中間転写ベルト8とが接触する際に電流が流れ難くなり、ブラシ繊維が中間転写ベルト8からトナーを静電吸引する際に余分な電流が流れに難くなるためトナーに逆極性の電荷を与えてしまうことがなく、いったんブラシに捕捉したトナーを逆に中間転写ベルト8上に付着させる恐れが少なくなる。ただし、このようなブラシを使用しても、繊維表面の絶縁を破壊して電流を流すほどの電圧を回転軸に印加すると、結果として中間転写ベルト8にトナーを戻してしまうことになるので、電圧値の設定には注意を要する。
【0077】
図8は、電気抵抗が、1×105Ω・cm、1×107Ω・cm、1×109Ω・cmであるクリーニングブラシローラ521のクリーニング性を示すグラフである。電気抵抗が1×109Ω・cmの時は、印加電圧が大きいため、電源コストがアップする。一方、電気抵抗が1×105Ω・cmの時は中間転写ベルト8に電流を流し易いため、1×107Ω・cmのときより低い電圧でトナーが正極性に帯電して中間転写ベルト8に再付着するため、クリーニング性の余裕度が小さい。したがって、1×107Ω・cmの条件がもっとも適している。
【0078】
<回収ローラ522の条件>
回収ローラ芯金材質:SUS
回収ローラ表面材質:PVDF(厚み100μm)の表層にアクリル系UV硬化樹脂層(厚み3〜5μm)
回収ローラ体積抵抗:1×1012〜13Ω・cm(25℃50%にて測定)
ローラ直径:14mm
回収ローラへのブラシ繊維喰い込み量:1mm
回収ローラ芯金印加電圧(回収電圧):+1400V
【0079】
回収ローラ522はSUSの芯金(直径16mm)の表面にPVDFを100μmの厚みで有し、さらにその表面にアクリル系のUV硬化樹脂層を有するもの(以下、高抵抗ローラと称する)を用いた。回収ローラ522のみならず、導電性芯金に数μm〜100μm程度の高抵抗弾性チューブを被せる、あるいはさらに絶縁コーティングしたものでも同じ性能を得られる。ローラ抵抗については、10℃15%環境下と32℃80%環境下でそれぞれ電圧1000V印加して電流を測定して算出した。回収ローラ522の材料としては、PVDFチューブ、PFAチューブ、PIチューブ、アクリルコート、シリコーンコート(例えばシリコーン粒子を含有したPC(ポリカーボネート)をコート)、セラミックス、フッ素コーティングなどがある。
【0080】
通常環境での掻き取りブレード523の具体的な構成条件は以下のとおりである。
<掻き取りブレード523の条件>
導電性カーボン含有ポリウレタンゴム体積抵抗:1×106Ω・cm(25℃50%にて測定)
ブレード当接角度:20°
ブレード厚み:2.8mm
回収ローラへのブレード喰い込み量:0.6mm
掻き取りブレードへの印加電圧(掻き取り電圧):+2400V
【0081】
以上の構成のベルトクリーニング装置10’において、クリーニングブレード520が摩耗していない状態では、2次転写ニップ通過後の中間転写ベルト8表面に残留してしまった転写残トナーの殆どが、クリーニングブレード520によってベルト表面から除去される。クリーニングブレード520が摩耗してくると、クリーニングブレード520のエッジと、中間転写ベルト8表面との間に微妙の間隙が形成されるようになり、ブレードの摩耗とともにその間隙が徐々に大きくなっていく。すると、やがてその間隙をすり抜ける転写残トナーが発生するが、それはクリーニングブラシローラ521によってベルト表面から除去される。このように、クリーニングブレード520が摩耗によってクリーニング性能を低下させてクリーニング不良を発生させても、ブレードよりも下流側のクリーニングブラシローラ521により、クリーニング不良となったトナーを除去することが可能である。よって、本発明者らは、良好なクリーニング性能を長期間に渡って維持することができると考えていた。
【0082】
ところが、発明者らは、定期的なタイミングでテストパターン画像を形成する構成では、良好なクリーニング性能を長期間に渡って維持することができなくなることを実験によって見出した。テストパターン画像とは、プリンタの作像性能をテストしたり、調整したりするために、形成対象となる画像とは別に形成する所定の大きさ且つ形状の画像である。実施形態に係るプリンタでは、必要に応じて実施するプロセスコントロール処理、色ズレ補正処理、トナーリフレッシュ処理でそれぞれ所定のテストパターン画像を形成する。
【0083】
プロセスコントロール処理とは、環境変動に伴うトナーの帯電量や流動性などの変動により、現像γが変化しても、目標の画像濃度が得られるように作像条件を調整する処理である。このプロセスコントロール処理では、主電源がONされる毎、所定時間経過毎、所定枚数のプリント毎などの定期的なタイミングで、数cm×数cm程度の大きさのパッチ状のトナー像を複数並べたテストパターン画像を形成する。このテストパターン画像については、Y,M,C,Kの各色のものをそれぞれ個別に形成する。テストパターン画像中に含まれる複数のトナー像は、互いに異なる現像ポテンシャル(現像装置の現像スリーブと感光体の潜像との電位差)の条件下で現像されたものであり、互いに単位面積あたりのトナー付着量が異なっている。Y,M,C,K用の感光体(1Y,M,C,K)上から、Y,M,C,Kテストパターン画像がそれぞれ個別に中間転写ベルト8上に転写される。それらテストパターン画像は、中間転写ベルト8の無端移動に伴って2次転写ニップに進入するが、この際、2次転写バイアスを停止させるか、本来とは逆極性の非転写バイアスの印加により、テストパターン画像の2次転写ローラ19への転移が防止される。よって、2次転写ニップを通過した中間転写ベルト8の表面上には、Y,M,C,Kのテストパターン画像が付着したままとなる。先に示した図1において、2次転写ニップの近傍には、2次転写ニップ通過後の中間転写ベルト8の表面上に存在するテストパターン画像における各トナー像に対する単位面積あたりのトナー付着量を検知する反射型フォトセンサからなるトナー付着量検知センサ99が配設されている。これにより、Y,M,C,Kのテストパターン画像において、それぞれそれに含まれる複数のトナー像に対するトナー付着量が検知される。演算手段たるCPU(Central Processing Unit)、データ記憶手段たるRAM(Random Access Memory)、データ記憶手段たるROM(Read Onry Memory)等からなる制御部は、その検知結果に基づいて、各色についての現像γ(現像ポテンシャルとトナー付着量との関係を示すグラフの傾き)を算出した後、その現像γに基づいて、次回からの現像ポテンシャルを調整することで、画像濃度の安定化を図る。
【0084】
また、上述した色ズレ補正処理とは、温度変化などに伴う感光体に対するレーザー書込位置の微妙な変化などによって生じてしまうY,M,C,Kの各色間でのトナー像の相対的な位置ズレを補正するための処理である。各色についてそれぞれテストパターン画像を形成して、それぞれのテストパターン画像内のトナー像をトナー付着量検知センサ99によって検知するタイミングに基づいて、各色トナー像の相対的な位置ズレを把握する。そして、その結果に基づいて、光学系の反射ミラーの角度などを調整して感光体に対するレーザー書込位置を補正することで、各色の色ズレを補正する。
【0085】
また、上述したトナーリフレッシュ処理とは、低画像面積率の画像が連続してプリントされる際のトナーの過剰帯電による画像濃度の低下を防止する目的で、中間転写ベルト8の紙間領域にテストパターン画像を形成する処理である。具体的には、連続プリント動作中において、個々のプリントにおける出力画像面積率がある程度高ければ、現像装置内に収容されたトナーと磁性キャリアとを含有する現像剤のトナー濃度が、プリントとともに低下する。そして、その低下が透磁率センサ等からなるトナー濃度センサによって検知されて、現像装置内に対して適量のトナーが補給される。このようなトナー濃度の低下とトナー補給との繰り返しにより、現像剤中のトナーは活発に入れ替えられる。ところが、白紙に近いような低画像面積率の画像が連続してプリントされると、現像装置内のトナーと磁性キャリアとを含有する現像剤のトナーが殆ど消費されないまま、現像装置内で現像剤が繰り返し撹拌される。すると、トナーが過剰に帯電して、磁性キャリアとの付着力を高めることで、画像濃度の低下を引き起こしてしまう。そこで、連続プリント中において、出力枚数に対する出力画像面積の比率がある程度低くなった場合には、トナーリフレッシュ処理を実施して、中間転写ベルト8の紙間領域に大面積のベタ画像からなるテストパターン画像を形成する。これにより、現像装置内の現像剤に対するトナーの入れ替わりを促すことで、画像濃度の低下を抑えるのである。なお、トナーリフレッシュ処理を実施しているときには、2次転写ニップに対して中間転写ベルト8の紙間領域を進入させる際に、2次転写バイアスを停止させるか、本来とは逆極性の非転写バイアスを印加するかして、テストパターン画像の2次転写ローラ19への転移を防止する。
【0086】
プロセスコントロール処理などで形成されるテストパターン画像において、トナー付着量は0.1〜0.5[mg/cm2]ほどあり、またトナー帯電量も十分高い。このようなテストパターン画像を構成するトナーは、記録紙や2次転写ローラ19に転移することなく、ほぼ全量がそのままベルトクリーニング装置10’に進入する。すると、クリーニングブレード520のエッジがある程度摩耗した状態(数十μm、例えば40[μm]以上摩耗した状態)では、多量のトナーがブレードのエッジとベルト表面との隙間をすり抜けてクリーニングブラシローラ521に捕捉される。テストパターン画像は、ベルト移動方向にある程度の大きさで形成されるため、このように多量のトナーがクリーニングブラシローラ521に捕捉される状態が数秒間続くことになる。すると、回収ローラ522によるブラシ内からのトナーの回収が間に合わずに、ブラシからベルトへのトナーの逆流が発生してしまう。以上の理由から、テストパターン画像を形成する構成においては、クリーニングブレード520の下流側にクリーニングブラシローラ521を設けても、安定したクリーニング性能が長期間に渡って得られる効果を奏さないことがわかった。なお、テストパターン画像を形成しない構成では、クリーニングブレード520の下流側にクリーニングブラシローラ521を設けることで、設けない場合に比べて、安定したクリーニング性能が長期間に渡って得られる効果を顕著に奏した。
【0087】
クリーニングブラシローラ521や回収ローラ522の径を大きくすれば、テストパターン画像をクリーニングする際のクリーニング不良の発生を抑えることが可能である。しかしながら、部品コストの増大、トルクの増大、スペースの拡大などを余儀なくされるため、装置小型化や低価格化に不利である。そこで、実施形態に係るプリンタにおいては、後述する特徴的な構成により、装置小型化や低価格化を阻害することなく、安定したクリーニング性能を長期間に渡って維持するようになっている。
【0088】
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
実施形態に係るプリンタのベルトクリーニング装置は、以下に説明する点の他が、図6に示したベルトクリーニング装置10’と同様の構成になっている。
【0089】
図9は、実施形態に係るプリンタのベルトクリーニング装置10を中間転写ベルト8とともに示す拡大構成図である。同図において、ベルトクリーニング装置10は、クリーニング部材として、クリーニングブレードの代わりに、クリーニング回転体551を備えている。このクリーニング回転体551は、金属製の回転軸部材551aと、これの周面上に形成されたゴム等の導電性弾性材料からなる弾性部551bとを具備しており、全体として正八角柱の形状をしている。
【0090】
図10は、ベルトクリーニング装置10におけるクリーニング回転体51の周囲構成を中間転写ベルト8とともに示す拡大構成図である。また、図11は、同周囲構成を鉛直方向の上方から眺めた平面図である。図9では便宜を図るために図示を省略していたが、ベルトクリーニング装置10は、図10や図11に示すように、回転体ホルダー556や偏心カム557等も備えている。
【0091】
正八角柱の形状のクリーニング回転体551における金属製の回転軸部材551aは、その軸線方向の両端部が、回転体ホルダー556に設けられた図示しない軸受けに回転可能に受けられている。クリーニング回転体551の回転軸部材551aの一端部には、駆動受入ギヤ552が固定されており、この駆動受入ギヤ552には駆動伝達ギヤ554が噛み合っている。そして、この駆動伝達ギヤ554は回転軸553に固定されている。
【0092】
回転軸553には、その軸線方向の一端部が回転体ホルダー556に設けられた図示しない軸受けに回転自在に受けられているとともに、他端部が図示しない駆動源としてのクリーニング回転モータのモータ軸に連結されている。そして、このクリーニング回転モータも、回転体ホルダー556に保持されている。
【0093】
クリーニング回転体551、駆動受入ギヤ552、回転体553、駆動伝達ギヤ554、クリーニング回転モータ等を保持する回転体ホルダー556は、図示しないホルダー付勢バネによって図10の矢印A方向に付勢されている。この矢印A方向は、回転体ホルダー556をテンションローラ14の法線方向に沿ってテンションローラ14から遠ざける方向である。
【0094】
回転体ホルダー556の図中左側方には、偏心カム557が回転可能にプリンタ本体側板に支持されている。そして、この偏心カム557は、プリンタ本体に固定された図示しないカムモータの駆動によって回転する。図10では、この偏心カム557がカム面を回転体ホルダー556に突き当てる回転角度位置で回転駆動を停止させた状態を示している。この状態では、偏心カム557のカム面が、上述したホルダー付勢バネの図中矢印A方向の付勢力に抗して、回転体ホルダー556をテンションローラ14の法線方向に沿ってテンションローラ14に向けて押し返す。これにより、回転体ホルダー556に保持されているクリーニング回転体551の弾性部551bのエッジが中間転写ベルト8におけるテンションローラ14に対する掛け回し箇所に当接せしめられている。
【0095】
正八角柱の形状のクリーニング回転体551における弾性部551bは、中間転写ベルト8に当接することが可能な8つのエッジを具備している。図10では、弾性部551bにおける8つのエッジのうち、第1エッジEg1〜第6エッジEg6だけが示されている。残りの第7エッジ及び第8エッジは、図中の駆動伝達ギヤ554の奧に隠れているため、図10には図示されていない。
【0096】
図10の状態において、クリーニング回転体551は、弾性部551bにおける8つのエッジのうち、第1エッジEg1を中間転写ベルト8に当接させる姿勢で、回転を停止させている。第2エッジEg2〜第8エッジは、何れも中間転写ベルト8には当接していない。8つのエッジは、それぞれクリーニング回転体551が回転角度位置で停止することで、中間転写ベルト8に当接する。つまり、互いにクリーニング回転体551が異なる姿勢をとった際に、像担持体としての中間転写ベルトに当接するのである。
【0097】
なお、図11では、便宜上、回転体ホルダー556の実際よりも小さいサイズで示しているが、回転体ホルダー556は、実際には、クリーニング回転体551の両端部を回転自在に支持し得る程度に図示の状態よりも大きなサイズになっている。
【0098】
クリーニング回転体551の弾性部551bとしては、中間転写ベルト8との摺動性を向上させるために、フッ素系やアクリル系やシリコン系材料などからなる表面層をコーティングすることが望ましい。
【0099】
上述した制御部は、駆動源としてのカムモータやクリーニング回転モータの制御により、クリーニング回転体551bの姿勢を変化させてクリーニング回転体551bのベルトに対する当接エッジを切り替えるエッジ切り換え処理を定期的に実施するようになっている。エッジ切り換え処理を実施するタイミングは、当接エッジを寿命直前まで摩耗させたと予測されるエッジ寿命値の直前の値に、プリント枚数、中間転写ベルト8の周回数、中間転写ベルト8の駆動時間などが達する毎である。そのタイミングが到来すると、制御部は、カムモータを所定時間だけ正転駆動する。これにより、図12に示すように、偏心カム557のカム面を回転体ホルダー556に突き当てない位置まで、偏心カム557を所定角度だけ正転させる。すると、回転体ホルダー556が図示しないホルダー付勢バネの付勢力によって図中矢印A方向に少し移動して、クリーニング回転体551が中間転写ベルト8から離間する。制御部は、このようにしてクリーニング回転体551を中間転写ベルト8から離間させると、次に、クリーニング回転モータを所定時間だけ正転させる。すると、図13に示すようにクリーニング回転体551が所定角度だけ回転する。これにより、クリーニング回転体551の姿勢が、第1エッジEg1を中間転写ベルト8に当接させる姿勢から、第2エッジEg2を中間転写ベルト8に当接させる姿勢に変化する。制御部は、このようにしてクリーニング回転体551の姿勢を変化させると、偏心カム557を所定の回転角度だけ逆転させて、クリーニング回転体551の新たな当接エッジ(図13の例では第2エッジEg2)を中間転写ベルト8に当接させる。
【0100】
かかる構成の本プリンタにおいては、駆動受入ギヤ552、回転体553、駆動伝達ギヤ554、回転体ホルダー556、偏心カム557、駆動源たるカムモータ、駆動源たるクリーニング回転モータなどが、クリーニング回転体551の姿勢を変化させる姿勢変更手段として機能している。そして、制御手段としての制御部が、定期的なタイミングでカムモータやクリーニング回転モータを駆動してクリーニング回転体551の当接エッジを切り替える。これにより、使用中の当接エッジが寿命近くまで摩耗した場合に、当接エッジを新たなものに切り替えることで、クリーニング回転体551を交換することなくクリーニング性能を復帰させる。よって、従来に比べて、クリーニング部材の交換頻度を低下させることができる。
【0101】
クリーニング回転体551の弾性部551bとして、エッジ数の多いものを用いるほど、クリーニング回転体551全体の寿命を延ばすことが可能になるが、エッジ数を多くし過ぎると、エッジの角度を鈍角にしすぎて、トナー掻き取り能力を低下させてしまう。よって、エッジ数については、適度な数にする必要がある。
【0102】
なお、クリーニング回転体551には、従来装置と同様に、極性制御用電源530によって極性制御電圧が印加されているので、クリーニング回転体551のエッジとベルトとの隙間をすり抜けてしまったトナーの極性を負極性に揃えることができる。また、極性制御電圧の印加により、中間転写ベルト8とクリーニング回転体551との静電引力を働かせるので、エッジとベルトとの密着力を高めてクリーニング性能を向上させることもできる。
【0103】
また、先に示した図9において、極性制御用電源530、ブラシ用電源531、回収電源532、ブレード用電源533は、何れもベルトクリーニング装置10ではなく、プリンタ本体に固定されている。ベルトクリーニング装置10はプリンタ本体に対して着脱可能になっているが、プリンタ本体に装着された際に、それら電源からの出力をそれぞれ個別に受け入れるための複数の金属接点を筐体外壁に有している。それら金属接点のうち、極性制御用電源530からの本体側接点と接触する金属接点は、その金属接点をクリーニング回転体551に導通させるための導通路とともに、第1電圧受入手段を構成している。また、ブラシ用電源531からの本体側接点と接触する金属接点は、その金属接点をクリーニングブラシローラ521に導通させるための導通路とともに、第2電圧受入手段を構成している。
【0104】
図14は、実施形態に係るプリンタに対してより特徴的な構成を付加した実施例に係るプリンタにおけるクリーニング回転体の周囲構成を中間転写ベルト8とともに示す拡大構成図である。実施例に係るプリンタでは、クリーニング回転体551のエッジを清掃するための清掃部材たる清掃ブラシ558を設けている。この清掃ブラシ558は、クリーニング回転体551が当接エッジ切り換えのために回転駆動される際に、それまで当接エッジとなっていたエッジに摺擦して、そのエッジに付着しているトナーを清掃する。
【0105】
上述した制御部は、実施形態よりも早いタイミングでエッジ切り換え処理を実施するようになっている。即ち、実施例において、エッジ切り換え処理を実施するタイミングは、当接エッジを寿命直前まで摩耗させたと予測されるタイミングではなく、もっと早いタイミングになっている。より詳しくは、当接エッジの入口付近に付着したトナー量がある程度まで増加したタイミングで、エッジ切り換え処理を実施する。その際、それまで当接エッジとなっていたエッジに対して清掃ブラシ558を摺擦させてそのエッジを清掃することで、エッジに対するトナー固着を抑える。清掃後のエッジについては、まだ寿命に到達させていないので、その後の8回目のエッジ切り換え処理の際に、中間転写ベルト8に当接させて再利用する。この再利用については、エッジを寿命直前に摩耗させるまで繰り返し行われる。
【0106】
次に、実施形態に係るプリンタの各変形例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
[第1変形例]
図15は、第1変形例に係るプリンタにおけるクリーニング回転体551の周囲構成を中間転写ベルト8とともに示す拡大構成図である。第1変形例に係るプリンタでは、クリーニング回転体551として、正四角柱の形状のものであって、エッジを4つ有するものを用いている。このように、クリーニング回転体551のエッジの数は、実施形態の8つに限定されるものではない。少なくとも2つあればよい。
【0107】
[第2変形例]
図16は、第2変形例に係るプリンタにおけるクリーニング回転体551の周囲構成を中間転写ベルト8とともに示す拡大構成図である。第2変形例に係るプリンタのクリーニング装置10においては、クリーニング部材として、クリーニング回転体551及びクリーニングブラシローラの両方を設けておらず、図示のように、クリーニング回転体551だけを設けている。このように、クリーニング回転体551だけで中間転写ベルト8の表面上のトナーをクリーニングする構成にも、本発明の適用が可能である。
【0108】
なお、このプリンタの場合には、下流側のクリーニングブラシローラを設けていないので、クリーニング回転体551に対してトナーの正規帯電極性と同極性の極性制御電圧を印加して、ブレードすり抜け後のトナーの極性を正規極性に揃える必要はない。但し、極性制御とは別の目的から、クリーニング回転体551に対して電圧を印加することが望ましい。詳しくは、クリーニング回転体551とベルトとの間に静電引力を発生させる目的からである。この目的の場合には、トナーの正規帯電極性とは逆極性の電圧をクリーニング回転体551に印加してもよい。
【0109】
[第3変形例]
図17は、第3変形例に係るプリンタにおけるクリーニング回転体551の周囲構成を中間転写ベルト8とともに示す拡大構成図である。第3変形例に係るプリンタのクリーニング装置10においては、クリーニング部材として、クリーニング回転体551及びクリーニングブラシローラ521の両方を設けているが、クリーニングブラシローラ521からトナーを回収するための回収ローラ等を設けていない。このような構成にも、本発明の適用が可能である。
【0110】
[第4変形例]
図18は、第4変形例に係るプリンタの要部構成を示す要部構成図である。このプリンタは、転写ユニットの代わりに、紙搬送ベルト31を複数のローラによって張架しながら図中時計回り方向に無端移動せしめる転写搬送ユニット30を備えている。搬送体としての紙搬送ベルト31は、感光体1Y,M,C,Kにそれぞれ接触してY,M,C,K用の一次転写ニップを形成している。そして、記録部材としての記録紙Pを自らの表面に保持しながら、自らの無端移動に伴って図中左側から右側に向けて搬送する過程で、記録紙PをY,M,C,K用の一次転写ニップに順次送り込む。これにより、記録紙Pには、Y,M,C,Kトナー像が重ね合わせて一次転写される。その後、記録紙Pは、紙搬送ベルト31から分離されて、図示しない定着装置に送られる。
【0111】
K用の一次転写ニップを通過した後の紙搬送ベルト31に付着しているトナー汚れは、搬送ベルトクリーニング装置10Aによって除去される。この搬送ベルトクリーニング装置10の構成は、実施形態に係るプリンタのベルトクリーニング装置10と同様である。また、各色プロセスユニットにおける感光体1Y,M,C,Kをクリーニングするクリーニング装置4Y,M,C,Kの構成は、実施形態に係るプリンタと同様である。このように、像担持体としての中間転写ベルトではなく、搬送体としての紙搬送ベルト31をクリーニングするクリーニング装置10にも、本発明の適用が可能である。なお、中間転写ベルト8とは異なる像担持体(例えば感光体)や、紙搬送ベルト31とは異なる搬送体(例えば搬送ローラ)をクリーニングするクリーニング装置にも、本発明の適用が可能である。
【0112】
以上、実施形態に係るプリンタにおいては、姿勢変更手段として、回転軸たる回転軸部材551aを中心にクリーニング回転体551を回転させるものを用いている。かかる構成では、回転駆動機構という簡素な構成により、クリーニング回転体551の姿勢を変化させることができる。
【0113】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、姿勢変更手段として、駆動源たるカムモータやクリーニング回転モータの発する駆動力を利用してクリーニング回転体551の姿勢を変化させるものを用いている。かかる構成では、作業者の手作業によらずに、クリーニング回転体551の姿勢を変化させることができる。
【0114】
また、実施例に係るプリンタにおいては、クリーニング回転体551のエッジに付着しているトナーを清掃する清掃ブラシ558を設けている。かかる構成では、エッジに付着したトナーを定期的に清掃ブラシ558で清掃することで、エッジに対するトナー固着を抑えて、クリーニング回転体551の長寿命化を図ることができる。
【0115】
また、実施形態に係るプリンタのクリーニング装置10においては、極性制御用電源530からの極性制御電圧を受け入れてクリーニング回転体551に導く第1電圧受入手段と、クリーニング回転体551によるクリーニング工程を経由した後のベルト表面に当接しながら同ベルト表面に付着しているトナーを掻き取るブラシ部材たるクリーニングブラシローラ521と、ブラシ用電源531からのクリーニング電圧を受け入れてクリーニングブラシローラ521に導く第2電圧受入手段とを設けている。かかる構成では、クリーニング回転体551のエッジとベルトとの隙間をすり抜けてしまったトナーの極性を、クリーニング回転体551に対する電圧印加によって正規帯電極性に揃えた後、クリーニングブラシローラ521に対する電圧印加により、そのトナーをブラシ内に静電転移させて、クリーニング性能を高めることができる。
【0116】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、所定の定期的なタイミングで姿勢変更手段を駆動してクリーニング回転体551の当接エッジを切り替えるエッジ切り換え処理を実施する制御部を設けている。かかる構成では、エッジ切り換え処理により、当接エッジを寿命到達前に自動で新たなエッジに切り替えることができる。
【0117】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、像担持ベルトたる中間転写ベルト8として、0.07〜0.30[mm]以下の弾性層を具備するものを用いている。かかる構成では、記録紙とベルトとの接触性を高めて、デザインとして表面に凹凸を有する特殊紙やアイロンプリントなどの熱転写に用いる特殊な記録紙であっても転写不良の発生を抑えることができる。
【0118】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、トナーとして、体積平均粒径が3〜8[μm]であり、且つ体積平均粒径を個数平均粒径で除算した値が1.00〜1.40であるものを用いるようになっている。かかる構成では、トナーの帯電量の均一性により、地肌汚れの少ない高品位な画像を得ることができ、また転写率を高くすることができる。
【符号の説明】
【0119】
8:中間転写ベルト(像担持ベルト)
10:クリーニング装置
31:紙搬送ベルト(搬送ベルト)
551:クリーニング回転体(クリーニング部材)
551a:回転軸部材(回転軸)
552:駆動受入ギヤ552(姿勢変更手段の一部)
553:回転体(姿勢変更手段の一部)
554:駆動伝達ギヤ(姿勢変更手段の一部)
556:回転体ホルダー(姿勢変更手段の一部)
557:偏心カム(姿勢変更手段の一部)
558:清掃ブラシ(清掃部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0120】
【特許文献1】特開2005−265907号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、自らの表面にトナー像を担持する像担持体、あるいは画像形成対象となる記録部材を自らの表面に伴って搬送する搬送体、の表面に付着しているトナーを除去するクリーニング装置、及びこれを用いる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のクリーニング装置として、クリーニングブレードなどのクリーニング部材のエッジを像担持体や搬送体に当接させて、像担持体や搬送体の表面からトナーを掻き取る方式のものが知られている(例えば特許文献1に記載のもの)。この方式では、回転駆動などといった、クリーニング部材に対してトナーを掻き取るための駆動動作を行わせることなく、像担持体や搬送体からトナーを掻き取ることができる。
【0003】
一方、画像形成に用いられるトナーは、近年の高画質化に伴い、粉砕法によるものよりも、重合法によるものが主流になってきている。重合法によるトナー粒子は、粉砕法によるトナー粒子に比べて球形に近く、且つ小径であることから、高解像度に対応する小さなドットでも優れた再現性を発揮することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、クリーニング部材のエッジを当接させてクリーニングを行う方式において、重合法によるトナーを良好にクリーニングしようとすると、クリーニング部材を頻繁に交換しなければならなくなり、装置の維持コストを高めてしまう。具体的には、重合法によるトナーは、球形に近く且つ小径であることから、クリーニング部材のエッジと、像担持体や搬送体との間に形成される僅かな隙間をすり抜け易い。このため、重合法によるトナーを用いる場合には、粉砕法によるトナーを用いる場合に比べて、クリーニング部材を像担持体や搬送体に強く押圧して、前述の隙間をできるだけ無くす必要がある。すると、クリーニング部材のエッジを短期間に摩耗してすぐにトナーのすり抜けを引き起こしてしまうため、クリーニング部材を頻繁に交換しなければならなくなるのである。
【0005】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、クリーニング部材の交換頻度を低下させることができるクリーニング装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、自らの表面にトナー像を担持する像担持体と、画像形成対象となる記録部材を自らの表面に保持して搬送する搬送体とを備える画像形成装置に搭載され、該像担持体又は搬送体の表面にクリーニング部材のエッジを当接させて、該表面に付着しているトナーを除去するクリーニング装置において、上記クリーニング部材として、クリーニング部材が互いに異なる姿勢をとった際にそれぞれ像担持体表面又は搬送体表面に当接する複数のエッジを具備するものを用いるとともに、該クリーニング部材の姿勢を変更する姿勢変更手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のクリーニング装置において、上記姿勢変更手段として、回転軸を中心に上記クリーニング部材を回転させるものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2のクリーニング装置において、上記姿勢変更手段として、駆動源の発する駆動力を利用して上記クリーニング部材の姿勢を変更するものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかのクリーニング装置において、上記クリーニング部材に付着しているトナーを清掃する清掃部材を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかのクリーニング装置において、電源からの電圧を受け入れて上記クリーニング部材に導く第1電圧受入手段と、該クリーニング部材によるクリーニング工程を経由した後の像担持体表面又は搬送体表面に当接しながら該像担持体表面又は搬送体表面に付着しているトナーを掻き取るブラシ部材と、電源からの電圧を受け入れて該ブラシ部材に導く第2電圧受入手段とを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、自らの表面にトナー像を担持する像担持体と、画像形成対象となる記録部材を自らの表面に保持して搬送する搬送体と、該像担持体又は搬送体の表面にクリーニング部材のエッジを当接させて、該表面に付着しているトナーを除去するクリーニング手段とを備える画像形成装置において、上記クリーニング手段として、請求項1乃至5の何れかのクリーニング装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の画像形成装置において、上記クリーニング装置として、請求項3のクリーニング装置を用いるとともに、所定の定期的なタイミングで上記姿勢変更手段を駆動して上記クリーニング部材の当接エッジを切り替える制御手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項6又は7の画像形成装置であって、上記クリーニング装置が、上記像担持体としての無端状の像担持ベルト、又は上記搬送体としての無端状の搬送ベルト、に付着している転写残トナーを除去するものであり、且つ、該像担持ベルト又は搬送ベルトが、0.07〜0.30[mm]以下の弾性層を具備するものであることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項6乃至8の何れかの画像形成装置であって、トナーとして、体積平均粒径が3〜8[μm]であり、且つ体積平均粒径を個数平均粒径で除算した値が1.00〜1.40であるものを用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
これらの発明においては、クリーニング部材の使用中のエッジが摩耗してクリーニング性能が低下した場合に、姿勢変更手段によってクリーニング部材の姿勢を変更して、像担持体又は搬送体に対して別のエッジを当接させることで、クリーニング部材を交換することなくクリーニング性能を復帰させる。よって、従来に比べて、クリーニング部材の交換頻度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るプリンタの全体を示す概略構成図。
【図2】同プリンタにおける画像形成部を示す拡大構成図。
【図3】トナー粒子の2次元平面に対する投影像の最大径MXLNGと平面積AREAとを説明する模式図。
【図4】トナー粒子の2次元平面に対する投影像の周長PERIと平面積AREAとを説明する模式図。
【図5】(a)、(b)、(c)はそれぞれトナーの形状を模式的に示す図。
【図6】従来のベルトクリーニング装置を示す拡大構成図。
【図7】(a)、(b)、(c)は、中間転写ベルトに残留した転写残トナーの帯電量分布と、クリーニング部材との接触位置を通過した後の転写残トナーの帯電量分布との関係の第1例、第2例、第3例を示すグラフ。
【図8】電気抵抗が、1×105Ω・cm、1×107Ω・cm、1×109Ω・cmであるクリーニングブラシのクリーニング性を示すグラフ。
【図9】実施形態に係るプリンタのベルトクリーニング装置を中間転写ベルトとともに示す拡大構成図。
【図10】同ベルトクリーニング装置におけるクリーニング回転体の周囲構成を中間転写ベルトとともに示す拡大構成図。
【図11】同周囲構成を鉛直方向の上方から眺めた平面図。
【図12】クリーニング回転体を中間転写ベルトから離間させた状態の同周囲構成を中間転写ベルトとともに示す拡大構成図。
【図13】クリーニング回転体を中間転写ベルトから離間させ、且つモータ駆動によって回転させている状態の同周囲構成を中間転写ベルトとともに示す拡大構成図。
【図14】実施例に係るプリンタの同周囲構成を中間転写ベルトとともに示す拡大構成図。
【図15】第1変形例に係るプリンタの同周囲構成を中間転写ベルトとともに示す拡大構成図。
【図16】第2変形例に係るプリンタの同周囲構成を中間転写ベルトとともに示す拡大構成図。
【図17】第3変形例に係るプリンタの同周囲構成を中間転写ベルトとともに示す拡大構成図。
【図18】第4変形例に係るプリンタの要部構成を示す要部構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した画像形成装置の実施形態として、電子写真方式のいわゆるタンデム型中間転写方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)について説明する。まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタの全体を示す概略構成図である。また、図2は、本プリンタにおける画像形成部を拡大して示す拡大構成図である。このプリンタは、イエロー,マゼンタ,シアン,黒(以下、Y,M,C,Kと記す)のトナー像を生成するための4つのプロセスユニット6Y,M,C,Kを備えている。4つのプロセスユニット6Y,M,C,Kはドラム状の感光体1Y,M,C,Kをそれぞれ有している。各感光体1Y,M,C,Kの回りにはそれぞれ帯電装置2Y,M,C,K、現像装置5Y,C,M,K、クリーニング装置4Y,M,C,K、除電装置(不図示)等を有している。プロセスユニット6Y,M,C,Kは、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。また、プロセスユニット6Y,M,C,Kの下方には、感光体1Y,M,C,K上に静電潜像を形成するためにレーザー光による光書き込みをおこなう露光装置7を有している。
【0010】
なお、本プリンタでは、プロセスユニット6Y,M,C,Kは、一体的に構成され装置本体に脱着可能で寿命到達時に交換されるプロセスカートリッジの形態をなしており、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0011】
プロセスユニット6Y,M,C,Kの上方には、像担持ベルトたる中間転写ベルト8を備えた転写ユニット17が配設されている。中間転写ベルト8は、テンションローラ14、駆動ローラ12、支持ローラ13、15,16等の複数のローラに掛け回されており、図中反時計回り方向に回転駆動される。中間転写ベルト8を挟んで感光体1Y,M,C,Kに対向する位置には、感光体1Y,M,C,K上に形成されたトナー像を中間転写ベルト8上に転写するために1次転写ローラ9Y,M,C,Kが配設されている。また、中間転写ベルト8の回転方向に関して1次転写ローラ9Y,M,C,Kより下流部には、中間転写ベルト8の周面に当接し、中間転写ベルト8上のトナー像を記録紙に転写する2次転写ローラ19を有する2次転写装置を有している。なお、2次転写装置は、2次転写ローラ19に限るものではなく、数本の支持ローラと駆動ローラにより掛け渡される2次転写ベルトであっても良い。
【0012】
2次転写ローラ19よりも下流には、2次転写ローラ19による転写後に中間転写ベルト8上に残留する残留トナーを除去するベルトクリーニング装置10が、中間転写ベルト8を介してテンションローラ14に対向するよう設けられている。このベルトクリーニング装置10は中間転写体8と一体的に交換可能であるが、中間転写ベルト8と寿命設定が異なる場合は単独で脱着が可能としてもよい。
【0013】
中間転写ベルト8の材質について詳しく説明する。
近年、記録紙として従来広く用いられてきた普通紙に加え、デザインとして表面に凹凸を有する特殊紙やアイロンプリントなどの熱転写に用いる特殊な記録紙が用いられることが増えている。このような特殊紙を用いると、従来の普通紙の場合よりもカラートナーを重ね合わせた中間転写ベルト8上のトナー像を紙に2次転写する際に転写不良が発生し易くなる。そこで、中間転写ベルト8に弾性をもたせることにより、記録紙との接触性を高めている。
【0014】
中間転写ベルト8としては、多層構造のものが用いられる。ベース層としては、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン等の合成樹脂又は各種のゴムに、カーボンブラック等の導電剤を適当量含有させて、その体積抵抗率が106〜1014Ω・cmとなるものが用いられている。また、弾性を持たせた導電性弾性層の主基材としては、シリコーンゴム、NBR、H−NBR、CR、EPDM、ウレタンゴム等が用いられる。また、導電性保護層の材料は、摩擦抵抗の低減、電気特性の環境に対する安定性、表面粗さ低減による残留トナークリーニング性能の向上といった目的を達成できるものであれば、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、PVDFなどのフッ素樹脂系ポリマーを、アルコール可溶性ナイロン系、シリコーン樹脂系、シランカプラー、ウレタン樹脂系のエマルジョンや有機溶媒に、溶解・分散した塗料を使用することができる。これら保護層は、上記の塗料をディップコート、スプレーコート、静電塗装、ロールコートなどにより設けることができる。さらに、保護層に表面処理または研磨を施すことにより離型性、導電性、耐磨耗性、表面クリーニング性等を改善することができる。 弾性を有する中間転写ベルト8とドラム状の感光体1とは比較的広い接触領域にて接触配置されており、しかも、中間転写ベルト8により弾性押圧されているため、ドラム状の感光体1と中間転写8との間のタック面圧はそれほど高くなく、しかも、中間転写ベルト8によるトナー像の包み込み動作が行われ、感光体1Y,M,C,K上のトナー像が中間転写ベルト8側に一次転写される。このとき、中間転写ベルト8への転写画像には、大きなタック面圧によるホロキャラクタなどの画像欠陥はなく、高い転写効率で転写されるため、記録材(特に凹凸を有する特殊紙など)上のカラー画像品質はきわめて良好に保たれる。
【0015】
図1において、プリンタの下方には、記録紙Pを収容する給紙カセット26と、給紙カセット26から記録紙Pを給紙する給紙ローラ27とを有する給紙部が設けられている。また、記録紙の搬送方向に関して2次転写ローラ19の上流側には、給紙カセット26から給紙された記録紙を一端停止させて、2次転写位置に向かって送り出すレジストローラ28が設けられている。一方、2次転写位置より記録紙の搬送方向に下流側には、定着装置20が設けられている。また、現像装置5Y,M,C,Kに補給する新しいトナーが充填されたトナーボトル32Y,M,C,Kがプリンタの上方にあり、ここから図示しない搬送経路によって、所定の補給量だけ各色の現像装置5Y,M,C,Kに補給する。
【0016】
次に、プリンタの動作について説明する。パーソナルコンピュータ等から画像情報が送られてくると、中間転写ユニット17では、不図示の駆動モータで駆動ローラ12を回転駆動して、他のローラ13,14,15,16を従動回転し、中間転写ベルト8を回転する。同時に、各プロセスユニット6Y,M,C,Kで各感光体1Y,M,C,Kを回転して、それぞれ帯電ローラ2Y,M,C,Kにより一様に帯電し、ついで、露光装置7により露光して静電潜像を形成する。各静電潜像は、それぞれ各色の現像装置5Y,M,C,Kにより現像され、感光体1Y,M,C,K上にイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの単色画像を形成する。中間転写ベルト8の回転とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写ベルト8上に合成カラー画像を形成する。
【0017】
一方、給紙部では、給紙ローラ27が給紙カセット26から記録紙Pを1枚づつ繰り出して給紙路に入れ、レジストローラ28に突き当てて止める。そして、中間転写ベルト8上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ28を回転し、中間転写ベルト8と2次転写ローラ19との当接による2次転写ニップに記録部材としての記録紙を送り込む。そして、2次転写ニップにおいて、中間転写ベルト8上の合成カラー画像を記録紙上に一括2次転写する。転写後の記録紙は、定着装置20へと送り込まれ、定着装置20により熱と圧力とを加えて画像を定着した後排出される。一方、1次転写後の感光体1Y,M,C,Kは、それぞれのクリーニング装置4Y,M,C,Kで残留トナーが除去され、その後除電され、次の作像に備える。また、2次転写後の中間転写ベルト8は、ベルトクリーニング装置10によって残留トナーが除去され、タンデム画像形成装置による再度の画像形成に備える。
【0018】
本プリンタにおいては、トナーとして、体積平均粒径が3〜8[μm]であり、且つ体積平均粒径(Dv)を個数平均粒径(Dn)で除算した値が1.00〜1.40であるものを用いるように指定されている。この指定は、次のようにして行われる。即ち、前述の条件を満たすトナーをセットした状態でプリンタを出荷することによって行うことができる。また例えば、前述の条件を満たすトナーを、プリンタとともに梱包して出荷することによって行ってもよい。また例えば、前述の条件を満たすトナーの製品番号や商品名などを、プリンタ本体や、これの取扱説明書などに明記することによって行ってもよい。また例えば、ユーザーに対して書面や電子データ等をもって前述の条件、製品番号、商品名などを通知することによって行ってもよい。近年においては、より高精度および高精細な画像が形成できるよう、高解像度を有することが要求されており、その達成手段の1つとして前述の条件を満たすトナーを指定している。また、転写率向上のためにトナーの形状を不定形からより球に近い形状のものを用いている。
【0019】
粒径分布の範囲が狭い粒径均一性に優れたトナーほど、(Dv/Dn)が1.00に近くなる。このような小粒径で粒径分布の狭いトナーでは、トナーの帯電量分布が均一になり、地肌かぶりの少ない高品位な画像を得ることができ、静電転写方式では転写率を高くすることができる。
【0020】
トナーの形状係数SF−1は100〜180、形状係数SF−2は100〜180の範囲にあることが好ましい。図3は、トナー粒子の2次元平面に対する投影像の最大径MXLNGと平面積AREAとを説明する模式図である。形状係数SF−1は、トナー形状の丸さの割合を示すものであり、「SF−1={(MXLNG)2/AREA}×(100π)/4」という式で求められる。トナー粒子の2次元平面に対する投影像の最大径MXLNGの二乗を平面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。SF−1の値が100の場合トナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。
【0021】
図4は、トナー粒子の2次元平面に対する投影像の周長PERIと平面積AREAとを説明する模式図である。形状係数SF−2は、トナー粒子の形状の凹凸の割合を示すものであり、「SF−2={(PERI)2/AREA}×100/(4π)」という式で求められる。トナー粒子を2次元平面に投影してできる図形の周長PERIの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。SF−2の値が100の場合トナー表面に凹凸が存在しなくなり、SF−2の値が大きくなるほどトナー表面の凹凸が顕著になる。
【0022】
形状係数の測定は、具体的には、トナーの中から100個のトナー粒子を無作為に選出してその写真を走査型電子顕微鏡(S−800:日立製作所製)で撮影し、その撮影像を画像解析装置(LUSEX3:ニレコ社製)に導入し、個々のトナー粒子の形状係数を解析した後、それらの平均値を最終的な形状係数とした。トナーの形状が球形に近くなると、トナーとトナーあるいはトナーと感光体との接触状態が点接触になるために、トナー同士の吸着力は弱くなり従って流動性が高くなり、また、トナーと感光体との吸着力も弱く なって、転写率は高くなる。形状係数SF−1、SF−2のいずれかが180を超えると、転写率が低下するため好ましくない。
【0023】
また、トナーは少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマーと、ポリエステルと、着色剤と、離型剤とを有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系溶媒中で架橋及び/又は伸長反応させて得られるトナーである。以下に、トナーの構成材料及び製造方法について説明する。
【0024】
(ポリエステル)
ポリエステルは、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物との重縮合反応によって得られる。 多価アルコール化合物(PO)としては、2価アルコール(DIO)および3価以上の多価アルコール(TO)が挙げられ、(DIO)単独、または(DIO)と少量の(TO)との混合物が好ましい。2価アルコール(DIO)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上の多価アルコール(TO)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0025】
多価カルボン酸(PC)としては、2価カルボン酸(DIC)および3価以上の多価カルボン酸(TC)が挙げられ、(DIC)単独、および(DIC)と少量の(TC)との混合物が好ましい。2価カルボン酸(DIC)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上の多価カルボン酸(TC)としては、炭素数9〜20の芳香族多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、多価カルボン酸(PC)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いて多価アルコール(PO)と反応させてもよい。
【0026】
多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の重縮合反応は、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを 得る。ポリエステルの水酸基価は5以上であることが好ましく、ポリエステルの酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすく、さらには記録紙への定着時、記録紙とトナーの親和性がよく低温定着性が向上する。しかし、酸価が30を超えると帯電の安定性、特に環境変動に対し悪化傾向がある。また、重量平均分子量1万〜40万、好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量が1万未満では、耐オフセット性が悪化するため好ましくない。また、40万を超えると低温定着性が悪化するため好ましくない。
【0027】
ポリエステルには、上記の重縮合反応で得られる未変性ポリエステルの他に、ウレア変性のポリエステルが好ましく含有される。ウレア変性のポリエステルは、上記の重縮合反応で得られるポリエステルの末端のカルボキシル基や水酸基等と多価イソシアネート化合物(PIC)とを反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得、これとアミン類との反応により分子鎖が架橋及び/又は伸長されて得られるものである。多価イソシアネート化合物(PIC)としては、脂肪族多価イソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−イソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアネート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。多価イソシアネート化合物(PIC)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、ウレア変性ポリエステルを用いる場合、そのエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の多価イソシアネート化合物(PIC)構成成分の含有量は、通常0.5〜40wt%、好ましくは1〜30wt%、さらに好ましくは2〜20wt%である。0.5wt%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40wt%を超えると低温定着性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有されるイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0028】
次に、ポリエステルプレポリマー(A)と反応させるアミン類(B)としては、2価アミン化合物(B1)、3価以上の多価アミン化合物(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。 2価アミン化合物(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上の多価アミン化合物(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたも の(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0029】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2や、1/2未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。また、ウレア変性ポリエステル中には、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0030】
ウレア変性ポリエステルは、ワンショット法、などにより製造される。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これに多価イソシアネート(PIC)を反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得る。さらにこの(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア変性ポリエステルを得る。
【0031】
(PIC)を反応させる際、及び(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(PIC)に対して不活性なものが挙げられる。 また、ポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との架橋及び/又は伸長反応には、必要により反応停止剤を用い、得られるウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0032】
ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステル等の数平均分子量は、先の未変性ポリエステルを用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。ウレア変性ポリエステルを単独で使用する場合は、その数平均分子量は、通常2000〜15000、好ましくは2000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0033】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを併用することで、低温定着性およびフルカラー画像形成装置100に用いた場合の光沢性が向上するので、ウレア変性ポリエステルを単独で使用するよりも好ましい。尚、未変性ポリエステルはウレア結合以外の化学結合で変性されたポリエステルを含んでも良い。未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは、少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは類似の組成であることが好ましい。
【0034】
また、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとの重量比は、通常20/80〜95/5、好ましくは70/30〜95/5、さらに好ましくは75/25〜95/5、特に好ましくは80/20〜93/7である。ウレア変性ポリエステルの重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを含むバインダー樹脂のガラス転移点(Tg)は、通常45〜65℃、好ましくは45〜60℃である。45℃未満ではトナーの耐熱性が悪化し、65℃を超えると低温定着性が不十分となる。また、ウレア変性ポリエステルは、得られるトナー母体粒子の表面に存在しやすいため、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
【0035】
(着色剤)
着色剤としては、公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
【0036】
着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造、またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体、あるいはこれらとビニル化合物との共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド 、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
【0037】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては公知のものが使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSYVP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージNEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。このうち、特にトナーを負極性に制御する物質が好ましく使用される。
【0038】
荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を超える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、荷電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。
【0039】
(離型剤)
離型剤としては、融点が50〜120℃の低融点のワックスが、バインダー樹脂との分散の中でより離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これにより定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布することなく高温オフセットに対し効果を示す。このようなワックス成分としては、以下のものが挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス、及びおよびパラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス等が挙げられる。また、これら天然ワックスの外に、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス等が挙げられる。さらに、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド及び、低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等も用いることができる。
【0040】
荷電制御剤、離型剤はマスターバッチ、バインダー樹脂とともに溶融混練することもできるし、もちろん有機溶剤に溶解、分散する際に加えても良い。
【0041】
(外添剤)
トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤として、無機微粒子が好ましく用いられる。この無機微粒子の一次粒子径は、5×10−3〜2μmであることが 好ましく、特に5×10−3〜0.5μmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5wt%であることが好ましく、特に0.01〜2.0wt%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。中でも、流動性付与剤としては、疎水性シリカ微粒子と疎水性酸化チタン微粒子を併用するのが好ましい。特に両微粒子の平均粒径が5×10−4μm以下のものを使用して攪拌混合を行った場合、トナーとの静電力、ファンデルワールス力は格段に向上することより、所望の帯電レベルを得るために行われる現像装置内部の攪拌混合によっても、トナーから流動性付与剤が脱離することなく、ホタルなどが発生しない良好な画像品質が得られて、さらに転写残トナーの低減が図られる。酸化チタン微粒子は、環境安定性、画像濃度安定性に優れている反面、帯電立ち上がり特性の悪化傾向にあることより、酸化チタン微粒子添加量がシリカ微粒子添加量よりも多くなると、この副作用の影響が大きくなることが考えられる。しかし、疎水性シリカ微粒子及び疎水性酸化チタン微粒子の添加量が0.3〜1.5wt%の範囲では、帯電立ち上がり特性が大きく損なわれず、所望の帯電立ち上がり特性が得られ、すなわち、コピーの繰り返しを行っても、安定した画像品質が得られる。
【0042】
次に、トナーの製造方法について説明する。ここでは、好ましい製造方法について示すが、これに限られるものではない。
【0043】
(トナーの製造方法)
1)着色剤、未変性ポリエステル、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー、離型剤を有機溶媒中に分散させトナー材料液を作る。
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、トナー母体粒子形成後の除去が容易である点から好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。有機溶媒の使用量は、ポリエステルプレポリマー100重量部に対し、通常0〜300重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは25〜70重量部である。
【0044】
2)トナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。
水系媒体は、水単独でも良いし、アルコール(メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などの有機溶媒を含むものであってもよい。
トナー材料液100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー材料液の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。
【0045】
また、水系媒体中の分散を良好にするために、界面活性剤、樹脂微粒子等の分散剤を適宜加える。 界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪 酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0046】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0047】
また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0048】
樹脂微粒子は、水系媒体中で形成されるトナー母体粒子を安定化させるために加えられる。このために、トナー母体粒子の表面上に存在する被覆率が10〜90%の範囲になるように加えられることが好ましい。例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子1μm、及び3μm、ポリスチレン微粒子0.5μm、及び、2μm、ポリ(スチレン―アクリロニトリル)微粒子1μm、商品名では、PB−200H(花王社製)、SGP(総研社製)、テクノポリマーSB(積水化成品工業社製)、SGP−3G(総研社製)、ミクロパール(積水ファインケミカル社製)等がある。また、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等の無機化合物分散剤も用いることができる。
【0049】
上記樹脂微粒子や無機化合物分散剤などと併用可能な分散剤として、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α −シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸−β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−β−ヒドロキシエチル、アクリル酸−β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの含窒素化合物、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0050】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。この中でも、分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。
【0051】
3)乳化液の作製と同時に、アミン類(B)を添加し、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)との反応を行わせる。 この反応は、分子鎖の架橋及び/又は伸長を伴う。反応時間は、ポリエステルプレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)との反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0052】
4)反応終了後、乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。 有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に層流の攪拌状態で昇温し、一定の温度域で強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うことで紡錘形のトナー母体粒子が作製できる。また、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、トナー母体粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
【0053】
5)上記で得られたトナー母体粒子に、荷電制御剤を打ち込み、ついで、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機微粒子を外添させ、トナーを得る。荷電制御剤の打ち込み、及び無機微粒子の外添は、ミキサー等を用いた公知の方法によって行われる。 これにより、小粒径であって、粒径分布のシャープなトナーを容易に得ることができる。さらに、有機溶媒を除去する工程で強い攪拌を与えることで、真球状からラクビーボール状の間の形状を制御することができ、さらに、表面のモフォロジーも滑らかなものから梅干形状の間で制御することができる。
【0054】
またトナーの形状は略球形状であり、以下の形状規定によって表すことができる。即ち、図5(a)、(b)、(c)に示すように、略球形状のトナーを長軸r1、短軸r2、厚さr3(但し、r1≧r2≧r3とする。)で規定する。そして、トナーは、長軸と短軸との比(r2/r1)(図5(b)参照)が0.5〜1.0で、厚さと短軸との比(r3/r2)(図5(c)参照)が0.7〜1.0の範囲にあることが好ましい。長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5未満では、真球形状から離れるためにドット再現性及び転写効率が劣り、高品位な画質が得られなくなる。また、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7未満では、扁平形状に近くなり、球形トナーのような高転写率は得られなくなる。特に、厚さと短軸との比(r3/r2)が1.0では、長軸を回転軸とする回転体となり、トナーの流動性を向上させることができる。なお、r1、r2、r3は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、視野の角度を変えて写真を撮り、観察しながら測定した。
【0055】
次に、実施形態に係るベルトクリーニング装置の説明をする前に、従来のベルトクリーニング装置について詳しく説明する。図6は、従来のベルトクリーニング装置10’を中間転写ベルト8とともに示す拡大構成図である。このベルトクリーニング装置10’は、ブレード方式のクリーニングと、ブラシ方式のクリーニングとを併用したものである。
【0056】
近年、高画質化の要望が高まり、トナーは小粒径化の傾向にある。また、トナー製造コスト低減および転写率向上の要望から粉砕トナーではなく重合法等により球形化トナーを採用する傾向にある。小粒径化や球形化の進んだトナーの使用に伴い、像担持体上に残留したトナーを除去する手段として主に用いられてきたブレードクリーニング方式では、ブレードと像担持体表面の密着の精度が低いとトナーがすり抜けてしまいクリーニング性が低下しやすい。これを防ぐため、ブレードを強い当接圧で押しつけると、ブレードのめくれが発生し、いわゆるスジ状あるいは帯状のクリーニング不良を引き起こす原因となり、安定したクリーニング性能を保ちつづけることが困難である。また、球形トナーでも線圧を極端に高くすれば(具体的には、線圧100gf/cm以上)クリーニングできるが、その分クリーニングブレードの磨耗やベルトのキズ等により寿命が極端に短くなる。通常の線圧20gf/cmでのクリーニングブレード寿命(削れてクリーニング不良が発生する時の寿命)は、約120K枚である。線圧100gf/cmの時は、クリーニングブレードの寿命は約20K枚程度である。また、転写性が良いとされている球形トナーに対して、ブレードクリーニング性は、粉砕(異型)トナーに対するクリーニング性より劣ることは良く知られていることである。
【0057】
そこで、図示のベルトクリーニング装置10’は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード520の他に、クリーニングブラシローラ521と、回収ローラ522と、掻き取りブレード523とを設けている。
【0058】
クリーニングブラシローラ521は、クリーニングブレード520よりも、クリーニング対象となる中間転写ベルト8の表面移動方向の下流側で、中間転写ベルト8に当接してながら、クリーニングブレード520のエッジとベルトとの隙間をすり抜けてしまったトナーをベルト表面から掻き取るものである。金属製の回転軸と、これの周面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシローラ部とを具備しており、ブラシ用電源531よって回転軸(芯金)に対してクリーニング電圧が印加される。
【0059】
回収ローラ522は、クリーニングブラシローラ521に付着したトナーを回収するものである。また、掻き取りブレード523は、回収部材としての回収ローラ522に当接して回収ローラ522上のトナーを掻き取ると共に、回収ローラ522表面に電荷を付与するものである。回収ローラ522表面からトナーを掻き取り掻き取り部材としての機能と、回収ローラ522表面に電荷を付与する電荷供給手段としての機能を兼ね備えている。
【0060】
クリーニングブレード520やクリーニングブラシローラ521によってベルト表面から除去されたトナーは、トナー搬送コイル524によってベルトクリーニング装置10の外部に排出されて、プリンタ本体に備えられた廃トナータンク(不図示)に収容される。
【0061】
回収ローラ522には回収電源532よって回転軸(芯金)を介して回収電圧が印加される。また、掻き取りブレード523に対しては、ブレード用電源533より支持基板を介して掻き取り電圧が印加される。また、クリーニングブレード520には、極性制御用電源530によって極性制御電圧が印加される。
【0062】
なお、クリーニングブラシローラ521の表面に電荷を付与するブラシ表面電荷付与部材(不図示)を備えていてもよい。このブラシ表面電荷付与部材は、クリーニングブラシローラ521にトナーが多く回収された場合、ブラシ先端の電位が低下してしまうことを補うために、クリーニングブラシローラ521表面に電荷を付与する電圧が印加された導電性部材であり、具体的には金属の丸棒や板状部材がよい。
【0063】
また、中間転写ベルト8表面には、クリーニングブレード520が常時摺擦していることによる中間転写ベルト8表面保護のために、潤滑剤を塗布するようになっている。具体的には、クリーニングブラシローラ521のブラシ先端のうち、回収ローラ522との当接位置を通過してから、中間転写ベルト8との当接位置に進入する前の箇所には、バネ542によって付勢される固形潤滑剤541が当接している。クリーニングブラシローラ521は、ステアリン酸亜鉛等からなる固形潤滑剤541を引っ掻いてブラシ内に潤滑剤を捕捉しながら、中間転写ベルト8に塗布する。なお、リーニングブラシローラ521とは別に潤滑剤塗布用のブラシを設けてもよい。これは、クリーニングブラシローラ521にはトナーが常時回収されているため、トナーと潤滑剤とが交じり合い、潤滑剤塗布時にいったん回収したトナーを再度中間転写ベルト8上に付着させることを防ぐためである。
【0064】
このような構成のベルトクリーニング装置10’では、次の4つの工程で中間転写ベルト8上のトナーを除去する。
1.クリーニングブレード520が、自らのエッジで中間転写ベルト8上のトナーを掻き取るとともに、トナーの正規帯電極性(ここでは、負極性)と同極性の極性制御電圧が印加されることで、自らのエッジとベルトとの隙間をすり抜けてしまうトナーの極性を正規帯電極性に揃える。
2.トナーの正規帯電極性とは逆極性(ここでは、正極性)のクリーニング電圧が印加されるクリーニングブラシローラ521は、中間転写ベルト8上のトナーを自らのブラシ内に静電的に移動させる。
3.クリーニング電圧と同極性で且つクリーニング電圧よりも絶対値が大きい回収電圧を印加される回収ローラ522は、クリーニングブラシローラ521上のトナーを自らの表面に静電的に移動させる。
4.回収電圧と同極性で絶対値が回収電圧以上である掻き取り電圧が印加される掻き取りブレード523は、回収ローラ522上のトナーを掻き落とす。
以下、これらの工程について詳しく説明する。
【0065】
まず、中間転写ベルト8に付着してベルトクリーニング装置10’との対向位置に到達したトナーの帯電量と、クリーニングブレード520通過後のトナーの帯電量とについて説明する。転写前の中間転写ベルト8上のトナーは、そのほとんどが正規帯電極性である負極性に帯電している。転写時には、中間転写ベルト8上のトナーは、2次転写ローラ19に印加された正極性の転写バイアスにより記録紙に転写するが、転写前から正極性に帯電していたトナーのほとんどはそのまま中間転写ベルト8に付着する。さらに、転写前に負極性に帯電していたトナーでも2次転写ローラ19に印加された正極性の電荷注入を受けるなどして、帯電極性が正極性側にシフトし、その一部は正極性に反転することがある。
【0066】
図7(a)、(b)、(c)は、中間転写ベルト8上に残留した転写残トナーの帯電量分布と、クリーニングブレード520との接触位置を通過した後の転写残トナーの帯電量分布との関係の第1例、第2例、第3例を示すグラフである。なお、帯電量分布はホソカワミクロン製 E−スパートアナライザ(EST−3)で、トナー1個ずつの電荷量Qとそのトナーの粒径dを測定したデータをもとに、本プリンタで作像した時の中間転写ベルト上転写残トナー数百個をサンプリングした時のQ/d(単位はfc/μm)分布を表したものである。図7(a)に示した第1例では、正極性のトナーと負極性のトナーとが半分づつの状態で混在したブロードな分布(以下、転写残トナーAという)になっている。また、図7(b)に示した第2例では、正極性のトナーが負極性トナーよりも多い状態で混在したブロードな分布(以下、転写残トナーBという)になっている。また、図7(c)に示した第3例では、ほとんどが負極性トナーでシャープな分布になっている。
【0067】
転写残トナーA、転写残トナーBが中間転写ベルト8の回転により、クリーニングブレード520の位置まで達すると、ほとんどのトナーがクリーニングブレード520により機械的に掻き落されるが、いわゆるスティックスリップが発生して一部がクリーニングブレード520をすり抜けて行く。機械的に掻き落とされたトナーは、クリーニングブレード520から自然に落下しベルトクリーニング装置10’の下方回収部に収容され、トナー搬送コイル部材524によって廃トナー回収部(不図示)に回収される。クリーニングブレード520には、トナーの帯電極性と同極性(負極性)の極性制御電圧が印加されており、トナーがクリーニングブレード520をすり抜けて行く際、トナーを正規の帯電極性(負極性)に帯電させる。図7(a)、(b)に示したように、クリーニングブレード520通過前の帯電量分布により、通過後の帯電量分布も異なるが、クリーニングブレード520に極性制御電圧を印加することで、ブレード通過後のトナーの極性を負極性側に揃えることができる。
【0068】
次に、トナーがクリーニングブレード520をすり抜けて行く際の帯電量変化について、詳細に説明する。クリーニングブレード520は、支持板金上に接着された板状の導電性弾性体であり、中間転写ベルト8に対してカウンター方向において当接圧20〜40[g/cm]で当接している。導電性弾性体は、例えばポリウレタンゴムを素材と、カーボンブラックやイオン系の導電剤を混練することで導電性を付与するもので、電気抵抗は、2×106Ω・cm〜5×107Ω・cmが好ましい。厚みは1〜3mmの範囲内とするのが良い。厚さが薄すぎると、中間転写ベルト8表面及びクリーニングブレード520自体のうねり等によって中間転写ベルト8への押しつけ量が確保しにくくなる。硬度はJIS−A硬度計で40〜85の範囲内であれば良い。クリーニングブレード520は中間転写ベルト8上のトナーを100%クリーニングするものでなく、すり抜け量が増減しても問題ない。
【0069】
クリーニングブレード520は、例えば、電気抵抗1×106Ω・cm、1×108Ω・cm、厚み2.4〜2.8mm、自由長が7mm〜9mm、JIS−A硬度60〜80、ブレード反発弾性係数45%という条件を具備するものである。このようなクリーニングブレード520と中間転写ベルト8との間にトナーが挟まれた時、クリーニングブレード520に印加された電圧によりトナーに電流が流れ込みトナーは印加電圧と同極性に帯電してクリーニングブレード520を通過する。また、中間転写ベルト8とクリーニングブレード520とで形成された楔部の入り口と出口の微小ギャップ部の放電あるいは電荷注入により印加電圧と同極性に帯電する。この結果、トナーは図7(a)、(b)の「ブレード通過後(電圧−500V印加)」に示すような負極性の帯電量分布となる。
【0070】
次に、クリーニングブレード520を通過した後のトナーの静電クリーニング動作について説明する。クリーニングブレード520のエッジとベルトとの隙間をすり抜けてしまった転写残トナーは、負極性に帯電した状態でクリーニングブラシローラ521の位置まで搬送される。クリーニングブラシローラ521には、ブラシ用電源531よりトナーの帯電極性とは逆極性(正極性)のクリーニング電圧が印加されている。前述の隙間をすり抜けてしまった負極性の転写残トナーは、中間転写ベルト8とクリーニングブラシローラ521表面電位との電位差で形成される電界により、ベルト表面からブラシ内に転移する。
【0071】
回収ローラ522は、クリーニングブラシローラ521に当接するよう設けられ、回収電源532よりクリーニング電圧よりも更に高い正極性の電圧が印加されている。クリーニングブラシローラ521のブラシ内の転写残トナーは、クリーニングブラシローラ521表面電位と回収ローラ522表面電位との電位差で形成される電界により、ブラシ内から回収ローラ522表面上に転移する。
【0072】
掻き取りブレード523は、回収ローラ522に当接するように設けられ、回収ローラ522上のトナーを掻き落とす。掻き落とされたトナーは、トナー搬送コイル524で機外に排出される又は現像装置5に戻される。また、掻き取りブレード523は、回収ローラ522の表面電位を維持するよう回収ローラ522表面へ電荷を供給する電荷供給手段としての機能を有しており、ブレード用電源533より支持基板を介して、回収ローラ522の芯金へ印加されている電圧と同じかさらに高い正極性の電圧が印加されている。これにより、回収ローラ523表面電位は安定化する。
【0073】
クリーニングブレード520やクリーニングブラシローラ521との対向位置で中間転写ベルト8を自らの表面上に掛け回しているテンションローラ14の表面には、中間転写ベルト8の体積抵抗値と同等かそれ以上の体積抵抗値を発揮する抵抗層が被覆されている。この体積抵抗値は絶縁に近いものであると、テンションローラ14に対して電極としての役割を担わせることができなくなる。このため、抵抗層の抵抗を極端に高くすることは避けなければならない。クリーニング電界が維持でき、かつ導電性ブラシ電流が低くなるように抵抗値を設定する必要があり、LogΩ=6〜8程度が好適である。
【0074】
図6に示したクリーニング装置10’では、テンションローラ14に対して、クリーニングブレード520に対向する電極と、クリーニングブラシローラ521に対応する電極との両方の役割を担わせている。このように共通の電極としての役割を担わせることで、部品点数を削減し、省スペース化を実現することができる。
【0075】
図6に示したベルトクリーニング装置10’の具体的な構成条件は、通常環境(高温高湿環境以外)での以下のとおりである。
<クリーニングブラシローラ521の条件>
起毛の材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面・ポリエステル、いわゆる芯鞘構造)
・ブラシ抵抗:1×107Ω・cm(100〜600Vの電圧印加条件で測定)
・ブラシ軸印加電圧(クリーニング電圧):+1000V
・ブラシ植毛密度:10万本/inch2、繊維径約25〜35μm、ブラシ先端の毛倒れ処理あり。
・ブラシ先端部の中間転写ベルト8への喰い込み量:1[mm]
【0076】
ブラシ繊維は繊維全体としては導電性であるが、繊維表面は絶縁層で覆われているものを用いる。繊維表面に絶縁層を有することで、クリーニングブラシローラ521と中間転写ベルト8とが接触する際に電流が流れ難くなり、ブラシ繊維が中間転写ベルト8からトナーを静電吸引する際に余分な電流が流れに難くなるためトナーに逆極性の電荷を与えてしまうことがなく、いったんブラシに捕捉したトナーを逆に中間転写ベルト8上に付着させる恐れが少なくなる。ただし、このようなブラシを使用しても、繊維表面の絶縁を破壊して電流を流すほどの電圧を回転軸に印加すると、結果として中間転写ベルト8にトナーを戻してしまうことになるので、電圧値の設定には注意を要する。
【0077】
図8は、電気抵抗が、1×105Ω・cm、1×107Ω・cm、1×109Ω・cmであるクリーニングブラシローラ521のクリーニング性を示すグラフである。電気抵抗が1×109Ω・cmの時は、印加電圧が大きいため、電源コストがアップする。一方、電気抵抗が1×105Ω・cmの時は中間転写ベルト8に電流を流し易いため、1×107Ω・cmのときより低い電圧でトナーが正極性に帯電して中間転写ベルト8に再付着するため、クリーニング性の余裕度が小さい。したがって、1×107Ω・cmの条件がもっとも適している。
【0078】
<回収ローラ522の条件>
回収ローラ芯金材質:SUS
回収ローラ表面材質:PVDF(厚み100μm)の表層にアクリル系UV硬化樹脂層(厚み3〜5μm)
回収ローラ体積抵抗:1×1012〜13Ω・cm(25℃50%にて測定)
ローラ直径:14mm
回収ローラへのブラシ繊維喰い込み量:1mm
回収ローラ芯金印加電圧(回収電圧):+1400V
【0079】
回収ローラ522はSUSの芯金(直径16mm)の表面にPVDFを100μmの厚みで有し、さらにその表面にアクリル系のUV硬化樹脂層を有するもの(以下、高抵抗ローラと称する)を用いた。回収ローラ522のみならず、導電性芯金に数μm〜100μm程度の高抵抗弾性チューブを被せる、あるいはさらに絶縁コーティングしたものでも同じ性能を得られる。ローラ抵抗については、10℃15%環境下と32℃80%環境下でそれぞれ電圧1000V印加して電流を測定して算出した。回収ローラ522の材料としては、PVDFチューブ、PFAチューブ、PIチューブ、アクリルコート、シリコーンコート(例えばシリコーン粒子を含有したPC(ポリカーボネート)をコート)、セラミックス、フッ素コーティングなどがある。
【0080】
通常環境での掻き取りブレード523の具体的な構成条件は以下のとおりである。
<掻き取りブレード523の条件>
導電性カーボン含有ポリウレタンゴム体積抵抗:1×106Ω・cm(25℃50%にて測定)
ブレード当接角度:20°
ブレード厚み:2.8mm
回収ローラへのブレード喰い込み量:0.6mm
掻き取りブレードへの印加電圧(掻き取り電圧):+2400V
【0081】
以上の構成のベルトクリーニング装置10’において、クリーニングブレード520が摩耗していない状態では、2次転写ニップ通過後の中間転写ベルト8表面に残留してしまった転写残トナーの殆どが、クリーニングブレード520によってベルト表面から除去される。クリーニングブレード520が摩耗してくると、クリーニングブレード520のエッジと、中間転写ベルト8表面との間に微妙の間隙が形成されるようになり、ブレードの摩耗とともにその間隙が徐々に大きくなっていく。すると、やがてその間隙をすり抜ける転写残トナーが発生するが、それはクリーニングブラシローラ521によってベルト表面から除去される。このように、クリーニングブレード520が摩耗によってクリーニング性能を低下させてクリーニング不良を発生させても、ブレードよりも下流側のクリーニングブラシローラ521により、クリーニング不良となったトナーを除去することが可能である。よって、本発明者らは、良好なクリーニング性能を長期間に渡って維持することができると考えていた。
【0082】
ところが、発明者らは、定期的なタイミングでテストパターン画像を形成する構成では、良好なクリーニング性能を長期間に渡って維持することができなくなることを実験によって見出した。テストパターン画像とは、プリンタの作像性能をテストしたり、調整したりするために、形成対象となる画像とは別に形成する所定の大きさ且つ形状の画像である。実施形態に係るプリンタでは、必要に応じて実施するプロセスコントロール処理、色ズレ補正処理、トナーリフレッシュ処理でそれぞれ所定のテストパターン画像を形成する。
【0083】
プロセスコントロール処理とは、環境変動に伴うトナーの帯電量や流動性などの変動により、現像γが変化しても、目標の画像濃度が得られるように作像条件を調整する処理である。このプロセスコントロール処理では、主電源がONされる毎、所定時間経過毎、所定枚数のプリント毎などの定期的なタイミングで、数cm×数cm程度の大きさのパッチ状のトナー像を複数並べたテストパターン画像を形成する。このテストパターン画像については、Y,M,C,Kの各色のものをそれぞれ個別に形成する。テストパターン画像中に含まれる複数のトナー像は、互いに異なる現像ポテンシャル(現像装置の現像スリーブと感光体の潜像との電位差)の条件下で現像されたものであり、互いに単位面積あたりのトナー付着量が異なっている。Y,M,C,K用の感光体(1Y,M,C,K)上から、Y,M,C,Kテストパターン画像がそれぞれ個別に中間転写ベルト8上に転写される。それらテストパターン画像は、中間転写ベルト8の無端移動に伴って2次転写ニップに進入するが、この際、2次転写バイアスを停止させるか、本来とは逆極性の非転写バイアスの印加により、テストパターン画像の2次転写ローラ19への転移が防止される。よって、2次転写ニップを通過した中間転写ベルト8の表面上には、Y,M,C,Kのテストパターン画像が付着したままとなる。先に示した図1において、2次転写ニップの近傍には、2次転写ニップ通過後の中間転写ベルト8の表面上に存在するテストパターン画像における各トナー像に対する単位面積あたりのトナー付着量を検知する反射型フォトセンサからなるトナー付着量検知センサ99が配設されている。これにより、Y,M,C,Kのテストパターン画像において、それぞれそれに含まれる複数のトナー像に対するトナー付着量が検知される。演算手段たるCPU(Central Processing Unit)、データ記憶手段たるRAM(Random Access Memory)、データ記憶手段たるROM(Read Onry Memory)等からなる制御部は、その検知結果に基づいて、各色についての現像γ(現像ポテンシャルとトナー付着量との関係を示すグラフの傾き)を算出した後、その現像γに基づいて、次回からの現像ポテンシャルを調整することで、画像濃度の安定化を図る。
【0084】
また、上述した色ズレ補正処理とは、温度変化などに伴う感光体に対するレーザー書込位置の微妙な変化などによって生じてしまうY,M,C,Kの各色間でのトナー像の相対的な位置ズレを補正するための処理である。各色についてそれぞれテストパターン画像を形成して、それぞれのテストパターン画像内のトナー像をトナー付着量検知センサ99によって検知するタイミングに基づいて、各色トナー像の相対的な位置ズレを把握する。そして、その結果に基づいて、光学系の反射ミラーの角度などを調整して感光体に対するレーザー書込位置を補正することで、各色の色ズレを補正する。
【0085】
また、上述したトナーリフレッシュ処理とは、低画像面積率の画像が連続してプリントされる際のトナーの過剰帯電による画像濃度の低下を防止する目的で、中間転写ベルト8の紙間領域にテストパターン画像を形成する処理である。具体的には、連続プリント動作中において、個々のプリントにおける出力画像面積率がある程度高ければ、現像装置内に収容されたトナーと磁性キャリアとを含有する現像剤のトナー濃度が、プリントとともに低下する。そして、その低下が透磁率センサ等からなるトナー濃度センサによって検知されて、現像装置内に対して適量のトナーが補給される。このようなトナー濃度の低下とトナー補給との繰り返しにより、現像剤中のトナーは活発に入れ替えられる。ところが、白紙に近いような低画像面積率の画像が連続してプリントされると、現像装置内のトナーと磁性キャリアとを含有する現像剤のトナーが殆ど消費されないまま、現像装置内で現像剤が繰り返し撹拌される。すると、トナーが過剰に帯電して、磁性キャリアとの付着力を高めることで、画像濃度の低下を引き起こしてしまう。そこで、連続プリント中において、出力枚数に対する出力画像面積の比率がある程度低くなった場合には、トナーリフレッシュ処理を実施して、中間転写ベルト8の紙間領域に大面積のベタ画像からなるテストパターン画像を形成する。これにより、現像装置内の現像剤に対するトナーの入れ替わりを促すことで、画像濃度の低下を抑えるのである。なお、トナーリフレッシュ処理を実施しているときには、2次転写ニップに対して中間転写ベルト8の紙間領域を進入させる際に、2次転写バイアスを停止させるか、本来とは逆極性の非転写バイアスを印加するかして、テストパターン画像の2次転写ローラ19への転移を防止する。
【0086】
プロセスコントロール処理などで形成されるテストパターン画像において、トナー付着量は0.1〜0.5[mg/cm2]ほどあり、またトナー帯電量も十分高い。このようなテストパターン画像を構成するトナーは、記録紙や2次転写ローラ19に転移することなく、ほぼ全量がそのままベルトクリーニング装置10’に進入する。すると、クリーニングブレード520のエッジがある程度摩耗した状態(数十μm、例えば40[μm]以上摩耗した状態)では、多量のトナーがブレードのエッジとベルト表面との隙間をすり抜けてクリーニングブラシローラ521に捕捉される。テストパターン画像は、ベルト移動方向にある程度の大きさで形成されるため、このように多量のトナーがクリーニングブラシローラ521に捕捉される状態が数秒間続くことになる。すると、回収ローラ522によるブラシ内からのトナーの回収が間に合わずに、ブラシからベルトへのトナーの逆流が発生してしまう。以上の理由から、テストパターン画像を形成する構成においては、クリーニングブレード520の下流側にクリーニングブラシローラ521を設けても、安定したクリーニング性能が長期間に渡って得られる効果を奏さないことがわかった。なお、テストパターン画像を形成しない構成では、クリーニングブレード520の下流側にクリーニングブラシローラ521を設けることで、設けない場合に比べて、安定したクリーニング性能が長期間に渡って得られる効果を顕著に奏した。
【0087】
クリーニングブラシローラ521や回収ローラ522の径を大きくすれば、テストパターン画像をクリーニングする際のクリーニング不良の発生を抑えることが可能である。しかしながら、部品コストの増大、トルクの増大、スペースの拡大などを余儀なくされるため、装置小型化や低価格化に不利である。そこで、実施形態に係るプリンタにおいては、後述する特徴的な構成により、装置小型化や低価格化を阻害することなく、安定したクリーニング性能を長期間に渡って維持するようになっている。
【0088】
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
実施形態に係るプリンタのベルトクリーニング装置は、以下に説明する点の他が、図6に示したベルトクリーニング装置10’と同様の構成になっている。
【0089】
図9は、実施形態に係るプリンタのベルトクリーニング装置10を中間転写ベルト8とともに示す拡大構成図である。同図において、ベルトクリーニング装置10は、クリーニング部材として、クリーニングブレードの代わりに、クリーニング回転体551を備えている。このクリーニング回転体551は、金属製の回転軸部材551aと、これの周面上に形成されたゴム等の導電性弾性材料からなる弾性部551bとを具備しており、全体として正八角柱の形状をしている。
【0090】
図10は、ベルトクリーニング装置10におけるクリーニング回転体51の周囲構成を中間転写ベルト8とともに示す拡大構成図である。また、図11は、同周囲構成を鉛直方向の上方から眺めた平面図である。図9では便宜を図るために図示を省略していたが、ベルトクリーニング装置10は、図10や図11に示すように、回転体ホルダー556や偏心カム557等も備えている。
【0091】
正八角柱の形状のクリーニング回転体551における金属製の回転軸部材551aは、その軸線方向の両端部が、回転体ホルダー556に設けられた図示しない軸受けに回転可能に受けられている。クリーニング回転体551の回転軸部材551aの一端部には、駆動受入ギヤ552が固定されており、この駆動受入ギヤ552には駆動伝達ギヤ554が噛み合っている。そして、この駆動伝達ギヤ554は回転軸553に固定されている。
【0092】
回転軸553には、その軸線方向の一端部が回転体ホルダー556に設けられた図示しない軸受けに回転自在に受けられているとともに、他端部が図示しない駆動源としてのクリーニング回転モータのモータ軸に連結されている。そして、このクリーニング回転モータも、回転体ホルダー556に保持されている。
【0093】
クリーニング回転体551、駆動受入ギヤ552、回転体553、駆動伝達ギヤ554、クリーニング回転モータ等を保持する回転体ホルダー556は、図示しないホルダー付勢バネによって図10の矢印A方向に付勢されている。この矢印A方向は、回転体ホルダー556をテンションローラ14の法線方向に沿ってテンションローラ14から遠ざける方向である。
【0094】
回転体ホルダー556の図中左側方には、偏心カム557が回転可能にプリンタ本体側板に支持されている。そして、この偏心カム557は、プリンタ本体に固定された図示しないカムモータの駆動によって回転する。図10では、この偏心カム557がカム面を回転体ホルダー556に突き当てる回転角度位置で回転駆動を停止させた状態を示している。この状態では、偏心カム557のカム面が、上述したホルダー付勢バネの図中矢印A方向の付勢力に抗して、回転体ホルダー556をテンションローラ14の法線方向に沿ってテンションローラ14に向けて押し返す。これにより、回転体ホルダー556に保持されているクリーニング回転体551の弾性部551bのエッジが中間転写ベルト8におけるテンションローラ14に対する掛け回し箇所に当接せしめられている。
【0095】
正八角柱の形状のクリーニング回転体551における弾性部551bは、中間転写ベルト8に当接することが可能な8つのエッジを具備している。図10では、弾性部551bにおける8つのエッジのうち、第1エッジEg1〜第6エッジEg6だけが示されている。残りの第7エッジ及び第8エッジは、図中の駆動伝達ギヤ554の奧に隠れているため、図10には図示されていない。
【0096】
図10の状態において、クリーニング回転体551は、弾性部551bにおける8つのエッジのうち、第1エッジEg1を中間転写ベルト8に当接させる姿勢で、回転を停止させている。第2エッジEg2〜第8エッジは、何れも中間転写ベルト8には当接していない。8つのエッジは、それぞれクリーニング回転体551が回転角度位置で停止することで、中間転写ベルト8に当接する。つまり、互いにクリーニング回転体551が異なる姿勢をとった際に、像担持体としての中間転写ベルトに当接するのである。
【0097】
なお、図11では、便宜上、回転体ホルダー556の実際よりも小さいサイズで示しているが、回転体ホルダー556は、実際には、クリーニング回転体551の両端部を回転自在に支持し得る程度に図示の状態よりも大きなサイズになっている。
【0098】
クリーニング回転体551の弾性部551bとしては、中間転写ベルト8との摺動性を向上させるために、フッ素系やアクリル系やシリコン系材料などからなる表面層をコーティングすることが望ましい。
【0099】
上述した制御部は、駆動源としてのカムモータやクリーニング回転モータの制御により、クリーニング回転体551bの姿勢を変化させてクリーニング回転体551bのベルトに対する当接エッジを切り替えるエッジ切り換え処理を定期的に実施するようになっている。エッジ切り換え処理を実施するタイミングは、当接エッジを寿命直前まで摩耗させたと予測されるエッジ寿命値の直前の値に、プリント枚数、中間転写ベルト8の周回数、中間転写ベルト8の駆動時間などが達する毎である。そのタイミングが到来すると、制御部は、カムモータを所定時間だけ正転駆動する。これにより、図12に示すように、偏心カム557のカム面を回転体ホルダー556に突き当てない位置まで、偏心カム557を所定角度だけ正転させる。すると、回転体ホルダー556が図示しないホルダー付勢バネの付勢力によって図中矢印A方向に少し移動して、クリーニング回転体551が中間転写ベルト8から離間する。制御部は、このようにしてクリーニング回転体551を中間転写ベルト8から離間させると、次に、クリーニング回転モータを所定時間だけ正転させる。すると、図13に示すようにクリーニング回転体551が所定角度だけ回転する。これにより、クリーニング回転体551の姿勢が、第1エッジEg1を中間転写ベルト8に当接させる姿勢から、第2エッジEg2を中間転写ベルト8に当接させる姿勢に変化する。制御部は、このようにしてクリーニング回転体551の姿勢を変化させると、偏心カム557を所定の回転角度だけ逆転させて、クリーニング回転体551の新たな当接エッジ(図13の例では第2エッジEg2)を中間転写ベルト8に当接させる。
【0100】
かかる構成の本プリンタにおいては、駆動受入ギヤ552、回転体553、駆動伝達ギヤ554、回転体ホルダー556、偏心カム557、駆動源たるカムモータ、駆動源たるクリーニング回転モータなどが、クリーニング回転体551の姿勢を変化させる姿勢変更手段として機能している。そして、制御手段としての制御部が、定期的なタイミングでカムモータやクリーニング回転モータを駆動してクリーニング回転体551の当接エッジを切り替える。これにより、使用中の当接エッジが寿命近くまで摩耗した場合に、当接エッジを新たなものに切り替えることで、クリーニング回転体551を交換することなくクリーニング性能を復帰させる。よって、従来に比べて、クリーニング部材の交換頻度を低下させることができる。
【0101】
クリーニング回転体551の弾性部551bとして、エッジ数の多いものを用いるほど、クリーニング回転体551全体の寿命を延ばすことが可能になるが、エッジ数を多くし過ぎると、エッジの角度を鈍角にしすぎて、トナー掻き取り能力を低下させてしまう。よって、エッジ数については、適度な数にする必要がある。
【0102】
なお、クリーニング回転体551には、従来装置と同様に、極性制御用電源530によって極性制御電圧が印加されているので、クリーニング回転体551のエッジとベルトとの隙間をすり抜けてしまったトナーの極性を負極性に揃えることができる。また、極性制御電圧の印加により、中間転写ベルト8とクリーニング回転体551との静電引力を働かせるので、エッジとベルトとの密着力を高めてクリーニング性能を向上させることもできる。
【0103】
また、先に示した図9において、極性制御用電源530、ブラシ用電源531、回収電源532、ブレード用電源533は、何れもベルトクリーニング装置10ではなく、プリンタ本体に固定されている。ベルトクリーニング装置10はプリンタ本体に対して着脱可能になっているが、プリンタ本体に装着された際に、それら電源からの出力をそれぞれ個別に受け入れるための複数の金属接点を筐体外壁に有している。それら金属接点のうち、極性制御用電源530からの本体側接点と接触する金属接点は、その金属接点をクリーニング回転体551に導通させるための導通路とともに、第1電圧受入手段を構成している。また、ブラシ用電源531からの本体側接点と接触する金属接点は、その金属接点をクリーニングブラシローラ521に導通させるための導通路とともに、第2電圧受入手段を構成している。
【0104】
図14は、実施形態に係るプリンタに対してより特徴的な構成を付加した実施例に係るプリンタにおけるクリーニング回転体の周囲構成を中間転写ベルト8とともに示す拡大構成図である。実施例に係るプリンタでは、クリーニング回転体551のエッジを清掃するための清掃部材たる清掃ブラシ558を設けている。この清掃ブラシ558は、クリーニング回転体551が当接エッジ切り換えのために回転駆動される際に、それまで当接エッジとなっていたエッジに摺擦して、そのエッジに付着しているトナーを清掃する。
【0105】
上述した制御部は、実施形態よりも早いタイミングでエッジ切り換え処理を実施するようになっている。即ち、実施例において、エッジ切り換え処理を実施するタイミングは、当接エッジを寿命直前まで摩耗させたと予測されるタイミングではなく、もっと早いタイミングになっている。より詳しくは、当接エッジの入口付近に付着したトナー量がある程度まで増加したタイミングで、エッジ切り換え処理を実施する。その際、それまで当接エッジとなっていたエッジに対して清掃ブラシ558を摺擦させてそのエッジを清掃することで、エッジに対するトナー固着を抑える。清掃後のエッジについては、まだ寿命に到達させていないので、その後の8回目のエッジ切り換え処理の際に、中間転写ベルト8に当接させて再利用する。この再利用については、エッジを寿命直前に摩耗させるまで繰り返し行われる。
【0106】
次に、実施形態に係るプリンタの各変形例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
[第1変形例]
図15は、第1変形例に係るプリンタにおけるクリーニング回転体551の周囲構成を中間転写ベルト8とともに示す拡大構成図である。第1変形例に係るプリンタでは、クリーニング回転体551として、正四角柱の形状のものであって、エッジを4つ有するものを用いている。このように、クリーニング回転体551のエッジの数は、実施形態の8つに限定されるものではない。少なくとも2つあればよい。
【0107】
[第2変形例]
図16は、第2変形例に係るプリンタにおけるクリーニング回転体551の周囲構成を中間転写ベルト8とともに示す拡大構成図である。第2変形例に係るプリンタのクリーニング装置10においては、クリーニング部材として、クリーニング回転体551及びクリーニングブラシローラの両方を設けておらず、図示のように、クリーニング回転体551だけを設けている。このように、クリーニング回転体551だけで中間転写ベルト8の表面上のトナーをクリーニングする構成にも、本発明の適用が可能である。
【0108】
なお、このプリンタの場合には、下流側のクリーニングブラシローラを設けていないので、クリーニング回転体551に対してトナーの正規帯電極性と同極性の極性制御電圧を印加して、ブレードすり抜け後のトナーの極性を正規極性に揃える必要はない。但し、極性制御とは別の目的から、クリーニング回転体551に対して電圧を印加することが望ましい。詳しくは、クリーニング回転体551とベルトとの間に静電引力を発生させる目的からである。この目的の場合には、トナーの正規帯電極性とは逆極性の電圧をクリーニング回転体551に印加してもよい。
【0109】
[第3変形例]
図17は、第3変形例に係るプリンタにおけるクリーニング回転体551の周囲構成を中間転写ベルト8とともに示す拡大構成図である。第3変形例に係るプリンタのクリーニング装置10においては、クリーニング部材として、クリーニング回転体551及びクリーニングブラシローラ521の両方を設けているが、クリーニングブラシローラ521からトナーを回収するための回収ローラ等を設けていない。このような構成にも、本発明の適用が可能である。
【0110】
[第4変形例]
図18は、第4変形例に係るプリンタの要部構成を示す要部構成図である。このプリンタは、転写ユニットの代わりに、紙搬送ベルト31を複数のローラによって張架しながら図中時計回り方向に無端移動せしめる転写搬送ユニット30を備えている。搬送体としての紙搬送ベルト31は、感光体1Y,M,C,Kにそれぞれ接触してY,M,C,K用の一次転写ニップを形成している。そして、記録部材としての記録紙Pを自らの表面に保持しながら、自らの無端移動に伴って図中左側から右側に向けて搬送する過程で、記録紙PをY,M,C,K用の一次転写ニップに順次送り込む。これにより、記録紙Pには、Y,M,C,Kトナー像が重ね合わせて一次転写される。その後、記録紙Pは、紙搬送ベルト31から分離されて、図示しない定着装置に送られる。
【0111】
K用の一次転写ニップを通過した後の紙搬送ベルト31に付着しているトナー汚れは、搬送ベルトクリーニング装置10Aによって除去される。この搬送ベルトクリーニング装置10の構成は、実施形態に係るプリンタのベルトクリーニング装置10と同様である。また、各色プロセスユニットにおける感光体1Y,M,C,Kをクリーニングするクリーニング装置4Y,M,C,Kの構成は、実施形態に係るプリンタと同様である。このように、像担持体としての中間転写ベルトではなく、搬送体としての紙搬送ベルト31をクリーニングするクリーニング装置10にも、本発明の適用が可能である。なお、中間転写ベルト8とは異なる像担持体(例えば感光体)や、紙搬送ベルト31とは異なる搬送体(例えば搬送ローラ)をクリーニングするクリーニング装置にも、本発明の適用が可能である。
【0112】
以上、実施形態に係るプリンタにおいては、姿勢変更手段として、回転軸たる回転軸部材551aを中心にクリーニング回転体551を回転させるものを用いている。かかる構成では、回転駆動機構という簡素な構成により、クリーニング回転体551の姿勢を変化させることができる。
【0113】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、姿勢変更手段として、駆動源たるカムモータやクリーニング回転モータの発する駆動力を利用してクリーニング回転体551の姿勢を変化させるものを用いている。かかる構成では、作業者の手作業によらずに、クリーニング回転体551の姿勢を変化させることができる。
【0114】
また、実施例に係るプリンタにおいては、クリーニング回転体551のエッジに付着しているトナーを清掃する清掃ブラシ558を設けている。かかる構成では、エッジに付着したトナーを定期的に清掃ブラシ558で清掃することで、エッジに対するトナー固着を抑えて、クリーニング回転体551の長寿命化を図ることができる。
【0115】
また、実施形態に係るプリンタのクリーニング装置10においては、極性制御用電源530からの極性制御電圧を受け入れてクリーニング回転体551に導く第1電圧受入手段と、クリーニング回転体551によるクリーニング工程を経由した後のベルト表面に当接しながら同ベルト表面に付着しているトナーを掻き取るブラシ部材たるクリーニングブラシローラ521と、ブラシ用電源531からのクリーニング電圧を受け入れてクリーニングブラシローラ521に導く第2電圧受入手段とを設けている。かかる構成では、クリーニング回転体551のエッジとベルトとの隙間をすり抜けてしまったトナーの極性を、クリーニング回転体551に対する電圧印加によって正規帯電極性に揃えた後、クリーニングブラシローラ521に対する電圧印加により、そのトナーをブラシ内に静電転移させて、クリーニング性能を高めることができる。
【0116】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、所定の定期的なタイミングで姿勢変更手段を駆動してクリーニング回転体551の当接エッジを切り替えるエッジ切り換え処理を実施する制御部を設けている。かかる構成では、エッジ切り換え処理により、当接エッジを寿命到達前に自動で新たなエッジに切り替えることができる。
【0117】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、像担持ベルトたる中間転写ベルト8として、0.07〜0.30[mm]以下の弾性層を具備するものを用いている。かかる構成では、記録紙とベルトとの接触性を高めて、デザインとして表面に凹凸を有する特殊紙やアイロンプリントなどの熱転写に用いる特殊な記録紙であっても転写不良の発生を抑えることができる。
【0118】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、トナーとして、体積平均粒径が3〜8[μm]であり、且つ体積平均粒径を個数平均粒径で除算した値が1.00〜1.40であるものを用いるようになっている。かかる構成では、トナーの帯電量の均一性により、地肌汚れの少ない高品位な画像を得ることができ、また転写率を高くすることができる。
【符号の説明】
【0119】
8:中間転写ベルト(像担持ベルト)
10:クリーニング装置
31:紙搬送ベルト(搬送ベルト)
551:クリーニング回転体(クリーニング部材)
551a:回転軸部材(回転軸)
552:駆動受入ギヤ552(姿勢変更手段の一部)
553:回転体(姿勢変更手段の一部)
554:駆動伝達ギヤ(姿勢変更手段の一部)
556:回転体ホルダー(姿勢変更手段の一部)
557:偏心カム(姿勢変更手段の一部)
558:清掃ブラシ(清掃部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0120】
【特許文献1】特開2005−265907号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自らの表面にトナー像を担持する像担持体と、画像形成対象となる記録部材を自らの表面に保持して搬送する搬送体とを備える画像形成装置に搭載され、該像担持体又は搬送体の表面にクリーニング部材のエッジを当接させて、該表面に付着しているトナーを除去するクリーニング装置において、
上記クリーニング部材として、クリーニング部材が互いに異なる姿勢をとった際にそれぞれ像担持体表面又は搬送体表面に当接する複数のエッジを具備するものを用いるとともに、
該クリーニング部材の姿勢を変更する姿勢変更手段を設けたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1のクリーニング装置において、
上記姿勢変更手段として、回転軸を中心に上記クリーニング部材を回転させるものを用いたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項3】
請求項1又は2のクリーニング装置において、
上記姿勢変更手段として、駆動源の発する駆動力を利用して上記クリーニング部材の姿勢を変更するものを用いたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかのクリーニング装置において、
上記クリーニング部材に付着しているトナーを清掃する清掃部材を設けたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかのクリーニング装置において、
電源からの電圧を受け入れて上記クリーニング部材に導く第1電圧受入手段と、該クリーニング部材によるクリーニング工程を経由した後の像担持体表面又は搬送体表面に当接しながら該像担持体表面又は搬送体表面に付着しているトナーを掻き取るブラシ部材と、電源からの電圧を受け入れて該ブラシ部材に導く第2電圧受入手段とを設けたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項6】
自らの表面にトナー像を担持する像担持体と、画像形成対象となる記録部材を自らの表面に保持して搬送する搬送体と、該像担持体又は搬送体の表面にクリーニング部材のエッジを当接させて、該表面に付着しているトナーを除去するクリーニング手段とを備える画像形成装置において、
上記クリーニング手段として、請求項1乃至5の何れかのクリーニング装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6の画像形成装置において、
上記クリーニング装置として、請求項3のクリーニング装置を用いるとともに、
所定の定期的なタイミングで上記姿勢変更手段を駆動して上記クリーニング部材の当接エッジを切り替える制御手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項6又は7の画像形成装置であって、
上記クリーニング装置が、上記像担持体としての無端状の像担持ベルト、又は上記搬送体としての無端状の搬送ベルト、に付着している転写残トナーを除去するものであり、
且つ、該像担持ベルト又は搬送ベルトが、0.07〜0.30[mm]以下の弾性層を具備するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れかの画像形成装置であって、
トナーとして、体積平均粒径が3〜8[μm]であり、且つ体積平均粒径を個数平均粒径で除算した値が1.00〜1.40であるものを用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
自らの表面にトナー像を担持する像担持体と、画像形成対象となる記録部材を自らの表面に保持して搬送する搬送体とを備える画像形成装置に搭載され、該像担持体又は搬送体の表面にクリーニング部材のエッジを当接させて、該表面に付着しているトナーを除去するクリーニング装置において、
上記クリーニング部材として、クリーニング部材が互いに異なる姿勢をとった際にそれぞれ像担持体表面又は搬送体表面に当接する複数のエッジを具備するものを用いるとともに、
該クリーニング部材の姿勢を変更する姿勢変更手段を設けたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1のクリーニング装置において、
上記姿勢変更手段として、回転軸を中心に上記クリーニング部材を回転させるものを用いたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項3】
請求項1又は2のクリーニング装置において、
上記姿勢変更手段として、駆動源の発する駆動力を利用して上記クリーニング部材の姿勢を変更するものを用いたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかのクリーニング装置において、
上記クリーニング部材に付着しているトナーを清掃する清掃部材を設けたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかのクリーニング装置において、
電源からの電圧を受け入れて上記クリーニング部材に導く第1電圧受入手段と、該クリーニング部材によるクリーニング工程を経由した後の像担持体表面又は搬送体表面に当接しながら該像担持体表面又は搬送体表面に付着しているトナーを掻き取るブラシ部材と、電源からの電圧を受け入れて該ブラシ部材に導く第2電圧受入手段とを設けたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項6】
自らの表面にトナー像を担持する像担持体と、画像形成対象となる記録部材を自らの表面に保持して搬送する搬送体と、該像担持体又は搬送体の表面にクリーニング部材のエッジを当接させて、該表面に付着しているトナーを除去するクリーニング手段とを備える画像形成装置において、
上記クリーニング手段として、請求項1乃至5の何れかのクリーニング装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6の画像形成装置において、
上記クリーニング装置として、請求項3のクリーニング装置を用いるとともに、
所定の定期的なタイミングで上記姿勢変更手段を駆動して上記クリーニング部材の当接エッジを切り替える制御手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項6又は7の画像形成装置であって、
上記クリーニング装置が、上記像担持体としての無端状の像担持ベルト、又は上記搬送体としての無端状の搬送ベルト、に付着している転写残トナーを除去するものであり、
且つ、該像担持ベルト又は搬送ベルトが、0.07〜0.30[mm]以下の弾性層を具備するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れかの画像形成装置であって、
トナーとして、体積平均粒径が3〜8[μm]であり、且つ体積平均粒径を個数平均粒径で除算した値が1.00〜1.40であるものを用いることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−197564(P2010−197564A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40525(P2009−40525)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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