説明

クリーム状氷菓入り菓子パン

【課題】クリーム状氷菓を充填したパン全体が比較的柔らかい食感が得られるようにし、凍結状態でもパンとクリーム状氷菓を同時に違和感なく食することができるクリーム状氷菓入り菓子パンとする。クリーム状氷菓入り菓子パンの製造方法について、迅速に充填する時にもパンの表皮が膨らまず変形せず、パン内部(中央部)に確実に充填されるようにする。
【解決手段】ブリオッシュ生地を焼成したパン1の内部に、ソフトクリームなどのクリーム状氷菓2が充填されたクリーム状氷菓入り菓子パンとする。ブリオッシュ生地を焼成し、次いで焼成したパン1の内部にクリーム状氷菓2を充填し、その後にパン全体を凍結する工程からなり、前記充填は筒形の先端に障壁を有し側壁に複数の押出穴を有する分流ノズルを用いて充填するクリーム状氷菓入り菓子パンの製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ソフトクリームなどのクリーム状氷菓が充填されたクリーム状氷菓入り菓子パンおよびその製造方法、並びにその製造に用いるクリーム充填用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、小麦粉を生地として焼成されたシューや最中皮の内部に、アイスクリームを入れた氷菓が周知である。
【0003】
また、小麦粉を生地として焼成されたパンの内部にアイスクリーム、ソフトクリーム、粒状の氷などの氷菓を挟んだり充填したりすることが知られている(特許文献1)。
【0004】
さらに、クリームパン、ジャムパンなどのペーストパンの製造においては、焼成パンに外部から機械的手段によりノズルを挿入し、ペースト食材をノズル注入する際、適当な圧力でパン組織を表皮側に圧して広げながら充填し、前記ノズルは筒型の側面を一平面が交差するように切り欠いた太目の注射針形のノズルが知られている(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−303893号公報
【特許文献2】特開平7−236409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した従来技術のようにパンの内部にアイスクリーム、ソフトクリーム、粒状氷などの氷菓を挟んだり充填したりする場合、氷菓(冷菓に同じ)を冷凍状態で流通、保存または食する際に、それを包むパン全体が凍結した状態では、柔らかな食感が得られず、すなわち水分の凍結したパンは硬くなってしまい、一方のクリーム状の氷菓の柔らかく口解けの良い食感と一体感が得られないという問題点がある。
【0007】
このような問題は、パンに充填するアイスクリームが、気泡を多く含んで低温でも柔らかい食感であるソフトクリームである場合には、そのような低温のクリームに接する周囲のパンが凍結状態で硬ければより一体感はなくなり、食感が悪くなる。
【0008】
また、図5に示す従来技術のように、ペーストパンなどの製造と同様に焼成されたパン8に外部からノズル9を挿入し、アイスクリームなどの高い粘度のクリーム状氷菓10を迅速に圧入しようとすると、充填圧でパン8の表皮の一部が膨らんで変形し、またはクリーム状氷菓10がパンの表面近くに偏って充填されてしまい、パン8の全体に均質な食感が得られないという問題点がある。
【0009】
そこで、この発明の先ず第1の課題は、上記した問題点を解決して、クリーム状氷菓を充填したパン全体が比較的柔らかい食感が得られるようにし、凍結状態でもパンとクリーム状氷菓を同時に違和感なく食することができるクリーム状氷菓入り菓子パンとすることである。
【0010】
また、製造方法についての第2の課題は、焼成したパンの内部にクリーム状氷菓を充填した後に全体を凍結するクリーム状氷菓入り菓子パンの製造方法について、迅速に充填する時にもパンの表皮が膨らまず変形せず、パン内部(中央部)に確実に充填されるようにし、これによりクリーム状氷菓入り菓子パンが全体に均質で良好な食感が得られるように製造することである。
【0011】
さらにまた、クリーム状氷菓入り菓子パンの製造に用いる充填用ノズルについての第3の課題は、充填を迅速に行なう時にも注入されるクリーム状氷菓の圧力が偏らず均等に及んでパンの表皮が膨らむなどの変形がなく、特にパン内部に均等にクリーム状氷菓が広がるように充填でき、これによって全体に均質な食感が得られるように充填できるクリーム状氷菓のパン充填用ノズルとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の第1の課題を解決するために、この発明においてはブリオッシュ生地を焼成したパンの内部に、クリーム状氷菓が充填されたクリーム状氷菓入り菓子パンとしたのである。
【0013】
上記したように構成されるこの発明のクリーム状氷菓入り菓子パンは、油脂分を通常のパンより比較的多く含んだブリオッシュ生地を焼成したパンを用いることにより、通常のパンが凍結により硬くなるような低温でも、すなわち冷凍状態、または凍結保存後に解凍したパンが速やかに比較的柔らかい状態を保つようになり、そのためにクリーム状氷菓と同じようにパンも柔らかく口当たりがよく、パンとクリーム状氷菓が低温で違和感なく一体感をもって感触よく食することができる。
【0014】
このような好ましい作用は、クリーム状氷菓が、ソフトクリームである場合に特に有利に奏される。
また、このような好ましい食感は、ブリオッシュ生地が、小麦粉100重量部に対して食用油脂を20重量部以上含有するブリオッシュ生地である場合において充分に奏される。
【0015】
製造方法の発明においては、上記同様の課題を解決すると共に焼成パンにアイスクリームをノズルから注入する際の課題として、パンの表皮が膨らんで変形し、またはパンの中央部からアイスクリームが逸れて偏って充填される問題を解決するために、ブリオッシュなどの生地を焼成し、次いで焼成したパンの内部にクリーム状氷菓を充填し、その後に凍結する工程からなり、前記充填は筒形の先端に障壁を有し側壁には複数の押出穴を有する分流ノズルを用いて充填するクリーム状氷菓入り菓子パンの製造方法としたのである。
【0016】
上記したような工程からなるこの発明の製造方法では、分流ノズルから押し出されるクリーム状氷菓が、ノズル先端の障壁に当たって前方へ直接に押し出されることなく、側壁からノズルの周囲に向かって複数の方向へ広がるように押し出される。
【0017】
このことにより、焼成パンの内部に押し出されたクリーム状氷菓は丸くまとまった状態で体積を増やすことができ、パンの表皮が一方向からの圧力で膨らんで変形することなく、またはパンの内部中央にクリーム状氷菓が纏まって菓子パン全体に均質な食感が得られるようになる。
【0018】
このような好ましい作用が得られるように、ブリオッシュなどのパンにノズルを突き刺してクリーム状氷菓を充填する際に用いる前記ノズルとして、このノズルは筒形の先端に障壁を有して側壁には複数の押出穴を有する分流ノズルを採用する。
【0019】
前述したように、分流ノズルから押し出されるクリーム状氷菓は、ノズル先端の障壁に当たってから、側壁に形成された複数の押出穴からノズルの周囲に向かって複数の方向へ広がるように押し出される。
【0020】
ノズルの押出穴の大きさと配置により、押出圧力の周囲への緩和効果を調整できる。充填対象がパンであり、かつ充填物がクリーム状冷菓である場合には、ノズルの径方向対称位置に少なくとも2箇所にできるだけ大きな押出穴を形成することが好ましい。それにより、ノズルの押出穴の周囲にクリーム状氷菓の球状塊を形成し、その形状を崩さず体積を増加させ、菓子パン全体に均質な食感が得られるようにクリーム状氷菓の充填が可能である。
【発明の効果】
【0021】
この発明は、ブリオッシュ生地を焼成したパンの内部にクリーム状氷菓が充填されかつ凍結されているので、パン全体に比較的柔らかい食感が得られるようになり、クリーム状氷菓入り菓子パンが凍結状態または凍結保存状態から解凍された際に、速やかにパンとクリーム状氷菓とをマッチさせて違和感なく美味しく食することができるという利点がある。
【0022】
また、焼成したパンの内部にクリーム状氷菓を充填した後に全体を凍結するクリーム状氷菓入り菓子パンの製造方法に係る発明では、上記の利点のある菓子パンが製造できることに加えて、所定形状の分流ノズルを使用したことにより、充填時にパンの表皮が膨らまずその他の変形もなく、クリーム状氷菓がパン内部(中央部)に確実に充填され、これによりクリーム状氷菓入り菓子パンが全体に均質で良好な食感が得られるように製造できるという利点がある。
【0023】
また、この発明のノズルは、筒形の先端に障壁を有して側壁には複数の押出穴を有する分流ノズルであることにより、充填圧がパンの特性に応じて周囲に均等に及んでパンの表皮が膨らむなどの変形がなく、特にパン内部にクリーム状氷菓が均等に広がるように充填でき、これによって全体に均質な食感が得られるようにクリーム状氷菓が充填できる分流ノズルとなる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明の実施形態を以下に添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、クリーム状氷菓入り菓子パンに係る発明の実施形態は、ブリオッシュ生地を焼成したパン1の内部に、ソフトクリームからなるクリーム状氷菓2を充填し、その状態でパン全体を凍結して保存可能または流通可能なものである。
【0025】
この発明に用いるブリオッシュ生地は、家庭用にも知られる一般的なレシピに基づいて調整したものを採用することができ、例えば、中力粉1kg、砂糖100g、塩20g、脱脂粉乳40g、油脂(バターまたはマーガリン)500g、生イースト40g、卵黄250g、水500gを材料として用いる例が挙げられる。
【0026】
油脂は、通常、ブリオッシュ生地に用いられるものから選択すればよいが、ブリオッシュ生地の場合は、バターが特に好ましい。
そして、ねり器に、小麦粉、イースト、卵、牛乳、少なくとも1種類の香料および塩、甘味料を入れ、フラッサージュ(最初の混ぜ合わせ)を行ってから、最初の捏ね上げを行い、残りの甘味料を入れ、2度目の捏ね上げを行い、油脂分を入れ、3度目の捏ね上げを行い、第1次発酵させる。
【0027】
そして、分割、および生地を10℃以下に冷却して1〜24時間寝かしたのち、丸型などを用いて成形する。
【0028】
二次発酵のホイロは、28℃程度で約75〜80分程度行なって発酵させ、焼成前に卵を塗布する。その後の焼成は8〜9分程度で行う。
このようにして、丸型のブリオッシュ生地を焼成し、図1に示したような丸型形状の焼成パンが得られる。
【0029】
このようなブリオッシュ生地は、少なくとも小麦粉100重量部に対してバターやマーガリンなどの食用油脂を20重量部以上、より好ましくは40重量部以上含有するブリオッシュ生地であることが好ましい。上記所定量未満の食用油脂の配合量では、クリーム状氷菓入り菓子パンが凍結状態または凍結保存状態から解凍された際に、気温が比較的低い季節ではあまり速やかにパンとクリーム状氷菓とをマッチさせることができず、違和感なく美味しく食することができるまでに相当に時間を要し、またはソフトクリームなどの氷菓の凍結温度でパンが柔らかくならないからである。
【0030】
次に、この発明に用いるクリーム状氷菓は、低温でも比較的柔らかな半流動状態を保てるクリーム状氷菓を採用するものであり、代表例としては、気泡含有量の多いアイスクリームであるソフトクリームを選択的に採用することが好ましい。通常、空気の気泡含有量が35%程度のソフトクリームを採用して好ましい食感が得られることが判明している。
なお、このようなソフトクリームについての気泡含有量は、特に上記の数値を目安に適宜に調整することができるのは当然である。
【0031】
次に、図2に示すように、クリーム状氷菓2をブリオッシュ生地などが焼成されたパン1の内部に充填する。上記したような好ましい食感を考慮しない場合には、ブリオッシュ生地以外の周知のパンを使用することも可能である。
図示した充填機3は、ソフトクリーム材料および空気の混合(ブレンド)および冷却が可能なソフトクリームフリーザーから得られたソフトクリームを一時的にホッパーに貯め、これを分流ノズル4から定量ずつ充填可能な機能を有するものであり、市販の食品機械を利用して構成されるものである。
【0032】
但し、図3に示すように、分流ノズル4は、例えば口径4〜10mm程度の筒形の先端にアーチ状の障壁5を設け、この障壁5により流体の軸方向への進行を積極的に妨げて流体を側方へ分散させており、障壁5の側方には側壁6に押出穴7を対称位置に形成し、パンの中央部から周囲に均等で好ましい充填ができるという結果を得ている。このような分流ノズル4は、通常、食品には用いられることのなかったものであるが、比較的高粘度の液体からなる工業材料を空容器の内部へ効率よく注入する際に用いられるものを利用することができる。
【0033】
他の形態の分流ノズルの例として、その先端形状が図示した形状以外であってもよく、例えば先端の一部がキャップ状の障壁で覆われたもの、さらにキャップの周囲に複数の押出穴をできるだけ大きく形成した物であっても良い。押出穴の形状は、円形、楕円形、半円形、半楕円形、多角形穴などの形状を採用することもでき、圧入したクリーム状氷菓が球体状に纏まりやすい円形、楕円形などの形状が好ましく、また穴径をできるだけ大きくして迅速に充填できるように、ノズルの軸方向に長い楕円形または半楕円形のものなどを採用することがより好ましい。
【0034】
図4に示すように、このような分流ノズル4を用いてブリオッシュなどのパンの内部にクリーム状氷菓を充填すると、クリーム状氷菓2は丸くまとまった状態を維持しながら、その体積を増やすことができ、パン1の表皮が一方向からの圧力で膨らんで変形することはなく、すなわち、パン1の内部中央にクリーム状氷菓2が纏まって、鎖線の示すように体積を増しながら充填され、菓子パン全体に均質な食感が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態のクリーム状氷菓入り菓子パンの一部を切り欠いて示す斜視図
【図2】充填機および分流ノズルの使用状態を説明する斜視図
【図3】分流ノズルの正面図
【図4】分流ノズルの使用状態の説明図
【図5】従来のノズルの使用状態を示す説明図
【符号の説明】
【0036】
1、8 パン
2、10 クリーム状氷菓
3 充填機
4 分流ノズル
5 障壁
6 側壁
7 押出穴
9 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリオッシュ生地を焼成したパンの内部に、クリーム状氷菓が充填されたクリーム状氷菓入り菓子パン。
【請求項2】
クリーム状氷菓が、ソフトクリームである請求項1に記載のクリーム状氷菓入り菓子パン。
【請求項3】
ブリオッシュ生地が、小麦粉100重量部に対して食用油脂を20重量部以上含有するブリオッシュ生地である請求項1に記載のクリーム状氷菓入り菓子パン。
【請求項4】
生地を焼成したパンの内部にクリーム状氷菓を充填し、その後にパン全体を凍結する工程からなり、前記充填は筒形の先端に障壁を有し側壁には複数の押出穴を有する分流ノズルをパンに突き刺して充填するクリーム状氷菓入り菓子パンの製造方法。
【請求項5】
パンにノズルを突き刺してクリーム状氷菓を充填する際に用いる前記ノズルにおいて、このノズルは筒形の先端に障壁を有して側壁には複数の押出穴を有する分流ノズルであることを特徴とするクリーム状氷菓のパン充填用ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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