説明

クリーム用添加材

【課題】口溶けが良好であるにもかかわらず、常温(15〜35℃)での流通、保管及び摂取にも対応できる耐熱保形性や耐熱離水耐性を有し、風味が良好で、食感が軽いホイップドクリームやバタークリーム等のクリーム類を得ることのできるクリーム用添加材を提供すること。
【解決手段】クリーム用添加材は、構成脂肪酸組成において炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が30〜60質量%であり炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が25〜60質量%である油脂配合物を、ランダムエステル交換したエステル交換油脂、アルギン酸類、カルシウム及び水を含有する水中油型乳化物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起泡性水中油型乳化物や可塑性油脂組成物に添加するクリーム用添加材に関する。
【背景技術】
【0002】
美味しいクリームの条件に口溶けの良いことが挙げられる。
このクリームの口溶けを良くするには、クリームで使用する油脂の融点を下げる、水分を増やす、増粘安定剤を削減する等の手法が考えられるが、これらの方法によりクリームの耐熱保形性や耐熱離水耐性が悪くなるという問題があった。
このクリームの口溶けと、クリームの耐熱保形性や耐熱離水耐性を改善するために、アルギン酸類に着目した先行技術として特許文献1や特許文献2を挙げることができる。
特許文献1には、無脂乳固形分、乳化剤、有機酸、炭酸塩を特定量含有し、安定剤としてアルギン酸やアルギン酸ナトリウムを含有する水中油型乳化物が記載されている。
特許文献2には、水、油脂、乳蛋白質、カルシウム、並びに低粘性アルギン酸、低粘性アルギン酸塩、中粘性アルギン酸及び中粘性アルギン酸塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有し、pHが特定範囲である可塑性水中油型乳化組成物が記載されている。
【0003】
上記のアルギン酸、アルギン酸塩、アルギン酸エステル等のアルギン酸類は、カルシウム等の二価金属イオンと反応して熱不可逆性の硬いゲルを形成する。またアルギン酸類と二価金属イオンの反応は極めて速く、瞬時にゲルを生成する。
アルギン酸類は上記のような性質を有するため、特許文献1で得られる水中油型乳化物は、アルギン酸やアルギン酸ナトリウムが無脂乳固形分に含まれるカルシウムと瞬時に反応するため、均一に水中油型乳化物に分散できず、ダマになったり、アルギン酸やアルギン酸ナトリウムを少量しか配合できないという欠点があった。
特許文献2では、2段階に分けて乳化させることにより、アルギン酸類がダマになるのを防いでいる。しかし、特許文献2で得られたクリームは起泡させても若干比重が軽くなる程度で、ホイップドクリームのような軽い食感とすることはできなかった。
【0004】
更に、ホイップドクリームの口溶けと耐熱保形性や耐熱離水耐性を改善するために起泡性クリームに添加材を添加する方法に着目した先行技術として特許文献3〜5を挙げることができる。
特許文献3には、起泡性クリームに、油脂中にSUS型トリグリセリドを特定量含む乳化物を混合し、起泡させる方法が記載されている。
しかし、特許文献3で得られたホイップドクリームは、SUS型油脂を多量に含むため、モドリ(経日的に液状化する現象)が生じやすいという欠点があった。
特許文献4には、油分、水分、無脂固形分が特定量であるO/W乳化物が記載され、これを起泡性クリームと混合し、起泡させる方法が記載されている。
特許文献5には、油分、水分、無脂乳固形分が特定量であり、HLBが5〜16の乳化剤を用いたO/W型乳化物が記載され、これを起泡性クリームと混合し、起泡させる方法が記載されている。
しかし、特許文献4や5のO/W型乳化物は、SUSで表されるトリグリセリドを多く使用するため、起泡性クリームにおいてモドリ現象(経時的に液状化する現象)が生じやすいという欠点があった。また、特許文献4に記載のO/W乳化物により得られたホイップドクリームは、耐熱保形性や耐熱離水耐性において満足できるものではなかった。
【0005】
一方、食感が良好で、耐熱性に優れたバタークリームを提供することを目的とした先行技術として特許文献6を挙げることができる。
特許文献6には、糖類と脂質―蛋白質複合体を特定量含有する乳化シロップ剤が記載され、これをバター、マーガリン、ショートニング等の可塑性油脂組成物に混合し、バタークリームを製造することが記載されている。しかし特許文献6に記載の乳化シロップ剤を用いたバタークリームは、耐熱保形性や耐熱離水耐性において満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−37416号公報
【特許文献2】特開2004−357699号公報
【特許文献3】特開平8−205号公報
【特許文献4】WO2004/062384号公報
【特許文献5】特開2006−25690号公報
【特許文献6】特開2003−180267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、口溶けが良好であるにもかかわらず、常温(15〜35℃)での流通、保管及び摂取にも対応できる耐熱保形性や耐熱離水耐性を有し、風味が良好で、食感が軽いホイップドクリームやバタークリーム等のクリーム類を得ることのできるクリーム用添加材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的を達成すべく種々検討した結果、起泡性水中油型乳化物や可塑性油脂組成物の原料としてアルギン酸類を用い、含気泡してホイップドクリームやバタークリームを製造するのではなく、起泡性水中油型乳化物や可塑性油脂組成物に、特定のエステル交換油脂、アルギン酸類、カルシウム及び水を含有する水中油型乳化物であるクリーム用添加材を混合し、含気泡したところ、得られたホイップドクリームやバタークリームの品質が著しく改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、構成脂肪酸組成において炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が30〜60質量%であり炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が25〜60質量%である油脂配合物を、ランダムエステル交換したエステル交換油脂、アルギン酸類、カルシウム及び水を含有する水中油型乳化物であることを特徴とするクリーム用添加材を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のクリーム用添加材により、口溶けが良好であるにもかかわらず、常温での流通、保管及び摂取に対応できる耐熱保形性や耐熱離水耐性を有するホイップドクリームやバタークリーム等のクリーム類を提供することができる。また本発明のクリーム用添加材により、乳風味が良好で、食感が軽いホイップドクリームやバタークリーム等のクリーム類を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のクリーム用添加材について詳細に説明する。
先ず、本発明のクリーム用添加材に用いるエステル交換油脂について述べる。
上記エステル交換油脂は、油脂配合物をランダムエステル交換して得られる油脂である。該油脂配合物は、構成脂肪酸組成において、炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が30〜60質量%、好ましくは32〜55質量%であり、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が25〜60質量%、好ましくは30〜58質量%である。
上記のエステル交換油脂を用いることにより、口溶けが良好なホイップドクリームやバタークリームを製造することができる。
【0011】
尚、上記油脂配合物の構成脂肪酸組成において、炭素数4以下の飽和脂肪酸は1質量%以下とすることが好ましい。
また、上記油脂配合物の構成脂肪酸組成において、炭素数20以上の飽和脂肪酸は2質量%以下とすることが好ましい。2質量%よりも多いと、得られるクリーム類の口溶けが悪化してしまうおそれがある。
【0012】
上記油脂配合物は、その構成脂肪酸中に炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂、及びその構成脂肪酸中に炭素数16以上の飽和脂肪酸を含有する油脂を用いて、上記構成脂肪酸組成となるように配合することにより得ることができる。上記の炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂において、炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は、その構成脂肪酸中に好ましくは30〜100質量%、更に好ましくは65〜100質量%である。上記の炭素数16以上の飽和脂肪酸を含有する油脂において、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量は、その構成脂肪酸中に好ましくは30〜100質量%、更に好ましくは70〜100質量%である。
【0013】
上記の炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂としては、例えば、パーム核油、ヤシ油、ババス油、並びにこれらに対し硬化、分別及びエステル交換のうちの1種又は2種以上の操作を施した油脂を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、好ましくはパーム核油及び/又はヤシ油を用いる。
また、上記の炭素数16以上の飽和脂肪酸を含有する油脂としては、例えば、パーム油、米油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油(キャノーラ油)、ハイエルシンナタネ油、カカオ脂、ラード、牛脂、豚脂、魚油並びにこれらに対し硬化、分別及びエステル交換のうちの1種又は2種以上の操作を施した油脂を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、好ましくは、パーム硬化油、大豆硬化油、米硬化油及びコーン硬化油の中から選ばれた1種又は2種以上、更に好ましくはこれらの中でも飽和脂肪酸含量を最大限に高めた極度硬化油、即ちパーム極度硬化油、大豆極度硬化油、米極度硬化油及びコーン極度硬化油の中から選ばれた1種又は2種以上、最も好ましくはパーム極度硬化油を用いる。
【0014】
上記油脂配合物において、上記の炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂は、上記油脂配合物の構成脂肪酸組成において、炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が30〜60質量%、好ましくは32〜55質量%となるように配合される。ここで、炭素数14以下の飽和脂肪酸が30質量%よりも少ないと、クリーム類の口溶けが悪くなる。また、炭素数14以下の飽和脂肪酸が60質量%より多いと、含気泡後、造花性と耐熱性の悪い物性となる。
また、上記油脂配合物において、上記の炭素数16以上の飽和脂肪酸を含有する油脂は、上記油脂配合物の構成脂肪酸組成において、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が25〜60質量%、好ましくは30〜58質量%となるように配合される。ここで、炭素数16以上の飽和脂肪酸が25質量%より少ないと、含気泡後に造花性と耐熱性の悪い物性となる。また、炭素数16以上の飽和脂肪酸が60質量%より多いと、クリーム類の口溶けが悪くなる。
尚、上記油脂配合物には、その構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含量及び炭素数16以上の飽和脂肪酸の含量が上記の範囲であれば、その他の油脂を加えてもよい。
【0015】
そして、上述した油脂配合物に対し、ランダムエステル交換を行なうことにより、本発明のクリーム用添加材で用いるエステル交換油脂が得られる。該ランダムエステル交換の方法は、常法によればよく、例えばリパーゼ等の酵素による方法でも、ナトリウムメチラート等のアルカリ触媒による方法でもよく、特に制限されるものではない。上記エステル交換油脂の融点は、25〜50℃であることが好ましく、更に好ましくは、30〜45℃である。
本発明のクリーム用添加材は、上記エステル交換油脂を1種又は2種以上用いることができる。
【0016】
更に必要により、上記エステル交換油脂以外のその他の油脂を用いることができ、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ババス油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、キャノーラ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、落花生油、カポック油、胡麻油、月見草油、カカオ脂、シア脂、サル脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明ではこれらの油脂の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記その他の油脂として本発明ではパーム核極度硬化油、ヤシ極度硬化油、パーム核ステアリン、ヤシステアリンの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることが好ましい。
上記のエステル交換油脂と上記のその他の油脂の配合割合は、質量比率にて、エステル交換油脂:その他の油脂が好ましくは50〜100:50〜0、更に好ましくは60〜100:40〜0、一層好ましくは70〜100:30〜0、最も好ましくはエステル交換油脂のみを使用することが望ましい。
【0017】
上記のエステル交換油脂や上記のその他の油脂は、実質的にトランス酸を含まないことが好ましい。
ここでいう「実質的にトランス酸を含まない」とは、上記のエステル交換油脂や上記のその他の油脂の構成脂肪酸中、トランス酸の含有量が好ましくは10質量%未満、更に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは1質量%以下であることを意味する。
水素添加は油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、水素添加油脂は極度硬化油脂(完全水素添加油脂)を除いて、通常、構成脂肪酸中にトランス酸が10〜50質量%程度含まれている。そのため本発明では水素添加油脂を用いないことが好ましい。
【0018】
本発明のクリーム用添加材において、油脂の含有量は好ましくは10〜50質量%、更に好ましくは10〜40質量%、一層好ましく20〜40質量%、最も好ましくは25〜35質量%である。
上記の油脂の含有量には、上記のエステル交換油脂や上記のその他の油脂以外に、本発明のクリーム用添加材で含有させる原料に由来する油分も含めるものとする。
尚、上記の油脂の含有量における本発明のクリーム用添加材で含有させる原料に由来する油分は、上記の油脂の含有量中、好ましくは10質量%以下である。
【0019】
次に、本発明のクリーム用添加材に用いるアルギン酸類について述べる。
ここで、上記アルギン酸類とはアルギン酸及び/又はアルギン酸塩を指す。上記アルギン酸としては、コンブやワカメに代表される褐藻類から抽出された多糖類が挙げられ、上記アルギン酸塩としては、カルシウム塩以外の該アルギン酸の塩であって、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、更には鉄、スズ等の金属塩等を用いることが可能であるが、食品に用いることから食品添加物である塩を選んで使用することが好ましく、水への溶解度が高いことからナトリウム塩が好ましい。
上記のアルギン酸は、分子量の違いにより、低粘性アルギン酸、中粘性アルギン酸、高粘性アルギン酸に分類され、上記のアルギン酸塩は、分子量の違いにより低粘性アルギン酸塩、中粘性アルギン酸塩、高粘性アルギン酸塩に分類される。
【0020】
アルギン酸はコンブ等の褐藻類から抽出、精製されるが、精製されたアルギン酸は上記の高粘性アルギン酸にあたり、この高粘性アルギン酸を常圧下により酸処理加水分解し、低分子化した分子量の違いにより低粘性アルギン酸と中粘性アルギン酸を得ることができる。
上記の低粘性アルギン酸及び/又は低粘性アルギン酸塩(低粘性アルギン酸類ともいう)は、B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したとき、上記低粘性アルギン酸類の10質量%水溶液の粘度が、好ましくは1〜700mPa・s、更に好ましくは1〜100mPa・s、最も好ましくは1〜60mPa・sのものである。
また上記低粘性アルギン酸類は、上記と同じ条件下で粘度を測定したとき、該低粘性アルギン酸類の1質量%水溶液の粘度が、好ましくは1mPa・s以上10mPa・s未満、更に好ましくは1mPa・s以上8mPa・s以下、最も好ましくは1mPa・s以上7mPa・s以下のものである。
上記中粘性アルギン酸及び/又は中粘性アルギン酸塩(中粘性アルギン酸類ともいう)は、上記と同じ条件下で粘度を測定したとき、上記中粘性アルギン酸類の1質量%水溶液の粘度が、好ましくは10〜100mPa・s、更に好ましくは10〜70mPa・s、最も好ましくは10〜50mPa・sのものである。
上記高粘性アルギン酸及び/又は高粘性アルギン酸塩(高粘性アルギン酸類ともいう)は、上記と同じ条件下で粘度を測定したとき、上記高粘性アルギン酸類の1質量%水溶液の粘度が、好ましくは100mPa・sを超えるものである。
【0021】
本発明のクリーム用添加材では、上記のアルギン酸類のうち、上記中粘性アルギン酸類を用いることがクリーム類に耐熱保形性や耐熱離水耐性を付与することができる点で好ましい。
本発明のクリーム用添加材における上記中粘性アルギン酸類の含有量は、本発明のクリーム用添加材の水の含有量に対し、特定の範囲となるように含有させることが好ましい。
即ち、(中粘性アルギン酸類の含有量)×100/(中粘性アルギン酸類の含有量+水の含有量)が、好ましくは0.3〜10質量%、更に好ましくは0.4〜9質量%、一層好ましくは0.5〜8質量%、最も好ましくは0.8〜8質量%となるように中粘性アルギン酸類を含有させる。0.3質量%よりも少ないと耐熱保形性や耐熱離水耐性を有するクリーム類が得られにくく、10質量%よりも多いとクリーム類の食感が重くなりやすく、また口溶けが悪くなりやすい。
【0022】
本発明のクリーム用添加材において、低粘性アルギン酸類を含有させても良い。
本発明のクリーム用添加材における上記低粘性アルギン酸類の含有量は、本発明のクリーム用添加材の水の含有量に対し、特定の範囲となるように含有させることが好ましい。
即ち、(低粘性アルギン酸類の含有量)×100/(低粘性アルギン酸類の含有量+水の含有量)が、好ましくは0.1〜6質量%、更に好ましくは0.2〜5質量%、最も好ましくは0.2〜3質量%となるように低粘性アルギン酸類を含有させる。
【0023】
本発明のクリーム用添加材において、高粘性アルギン酸類を含有させても良い。
本発明のクリーム用添加材における上記高粘性アルギン酸類の含有量は、本発明のクリーム用添加材の水の含有量に対し、特定の範囲となるように含有させることができる。
即ち、(高粘性アルギン酸類の含有量)×100/(高粘性アルギン酸類の含有量+水の含有量)が、好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.05〜3質量%、最も好ましくは0.1〜2質量%となるように高粘性アルギン酸類を含有させる。
【0024】
本発明のクリーム用添加材は、中粘性アルギン酸類と低粘性アルギン酸類を併用することが好ましい。本発明のクリーム用添加材において、中粘性アルギン酸類と低粘性アルギン酸類を併用する場合、中粘性アルギン酸類の含有量が低粘性アルギン酸類の含有量よりも多いことが好ましい。更に中粘性アルギン酸類と低粘性アルギン酸類は質量比率で、好ましくは1:0.05〜0.99、更に好ましくは1:0.05〜0.5、最も好ましくは1:0.05〜0.3の割合で含有させることが望ましい。
本発明のクリーム用添加材における上記アルギン酸類の含有量としては、好ましくは
0.075〜8.9質量%、更に好ましくは0.075〜7.5質量%である。
【0025】
本発明のクリーム用添加材は、水を含有する。上記の水としては、水道水、天然水等の水や、本発明のクリーム用添加材で含有させる原料に由来する水分も含めたものとする。
本発明のクリーム用添加材において、上記の水の含有量は、好ましくは25〜89質量%、更に好ましくは25〜75質量%、一層好ましくは25〜50質量%、最も好ましくは25〜35質量%である。本発明のクリーム用添加材において水の含有量が25質量%よりも少ないと、口溶けが悪いクリーム類となりやすく、89質量%よりも多いと、クリーム類の耐熱保形性や耐熱離水耐性が悪くなりやすい。
【0026】
本発明のクリーム用添加材は、カルシウムを含有する。
本発明のクリーム用添加材にカルシウムを含有させるには、その給源として、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム及びグルタミン酸カルシウム等の各種カルシウム製剤のほか、牛乳、脱脂乳、脱脂粉乳、全粉乳、カゼイン、ホエイ、ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物、蛋白質濃縮ホエイパウダー、ミルクカルシウム、乳清カルシウム及び乳清ミネラル等のカルシウムを含有する乳製品中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
本発明のクリーム用添加材では、上記の中でも、カルシウムの徐放性の点から、クリーム用添加材製造時の混合液の増粘を考慮することなく、安定して製造可能な点において、カルシウムを含有する食品を使用することが好ましく、特に、風味が良好である点で、牛乳、脱脂乳、脱脂粉乳、全粉乳、カゼイン、ホエイ、ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物、蛋白質濃縮ホエイパウダー、ミルクカルシウム、乳清カルシウム及び乳清ミネラル等の、カルシウムを含有する乳製品を使用することが好ましい。
【0027】
本発明のクリーム用添加材において、カルシウムの含有量は、好ましくは0.001〜0.09質量%、更に好ましくは0.01〜0.07質量%、最も好ましくは0.02〜0.05質量%である。0.001質量%よりも少ないと、起泡性水中油型乳化物や可塑性油脂組成物に含まれるカルシウムと本発明のクリーム用添加材に含まれるアルギン酸類が瞬時に反応しやすく、そのためダマができやすいため好ましくなく、0.09質量%よりも多いと、耐熱保形性や耐熱離水耐性が良好なクリーム類を得られないため好ましくない。
尚、上記のカルシウムの含有量には、後述の「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料」又はその他の材料として、カルシウムを含有するものを用いた場合は、それらに含まれるカルシウム分も含める。
【0028】
本発明のクリーム用添加材は水中油型乳化物とする。水中油型乳化物とすることにより、起泡性水中油型乳化物や可塑性油脂組成物に本発明のクリーム用添加材を添加し、ホイップやクリーミング処理をしても、食感が軽いホイップドクリームやバタークリームを得ることができる。
本発明のクリーム用添加材は、ペースト状とすることが好ましい。ペースト状とすることにより、起泡性水中油型乳化物や可塑性油脂組成物と均一に混合しやすい。
本発明のクリーム用添加材の水相と油相の割合は質量比率で、好ましくは水相:油相が50〜90:50〜10、更に好ましくは水相:油相が60〜90:40〜10、一層好ましくは水相:油相が60〜80:40〜20、最も好ましくは水相:油相が65〜75:35〜25である。
【0029】
本発明のクリーム用添加材は、「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料」(以下、乳原料ともいう)を使用すると、クリーム類に良好な風味を付与することができたり、離水を防止することができるため好ましい。該乳原料としては、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、該固形分を基準として、3質量%以上である乳原料を使用することが好ましく、更に好ましくは4質量%以上、最も好ましくは5〜40質量%である乳原料を使用する。
上記乳由来の固形分中のリン脂質とは、乳由来の固形分中に含まれる乳由来のリン脂質のことを指す。また、上記乳原料は、液体状でも、粉末状でも、濃縮物でも構わない。但し、溶剤を用いて乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上となるように濃縮した乳原料は、風味上の問題から、本発明においては、上記乳原料として用いないことが好ましい。
【0030】
乳由来のリン脂質を含有する乳原料の固形分中のリン脂質の定量方法としては、例えば下記の定量方法が挙げられる。但し、抽出方法等については乳原料の形態等によって適正な方法が異なるため、下記の定量方法に限定されるものではない。
先ず、乳由来のリン脂質を含有する乳原料の脂質を、Folch法を用いて抽出する。次いで、抽出した脂質溶液を湿式分解法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000.2.1食品成分試験法に記載の湿式分解法に準じる)にて分解した後、モリブデンブルー吸光度法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000.2.1食品成分試験法に記載のリンのモリブデン酸による定量に準じる)によりリン量を求める。求められたリン量から、以下の計算式を用いて、乳由来のリン脂質を含有する乳原料の固形分100g中のリン脂質の含有量(g)を求める。
リン脂質(g/100g)=〔リン量(μg)/(乳由来のリン脂質を含有する乳原料−乳由来のリン脂質を含有する乳原料の水分(g))〕×25.4×(0.1/1000)
【0031】
上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料」としては、例えば、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分が挙げられる。該クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分は、通常のクリームからバターを製造する際に生じるいわゆるバターミルクとは組成が大きく異なり、リン脂質を多量に含有しているという特徴がある。バターミルクは、その製法の違いによって大きく異なるが、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、通常0.5〜1.5質量%程度であるのに対して、上記クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分は、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、大凡2〜15質量%であり、多量のリン脂質を含有している。
本発明のクリーム用添加材において、上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料」として、通常のクリームからバターを製造する際に生じるいわゆるバターミルクそのものを用いることはできないが、バターミルクを乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上となるように濃縮した濃縮物、あるいはその乾燥物を用いることは可能である。
【0032】
クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる上記水相成分の製造方法の一例を以下に説明する。
上記クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。
先ず、牛乳を遠心分離して得られる脂肪濃度30〜40質量%のクリームをプレートで加温し、遠心分離機によってクリームの脂肪濃度を70〜95質量%まで高める。次いで、乳化破壊機で乳化を破壊し、再び遠心分離機で処理することによってバターオイルが得られる。本発明のクリーム用添加材で用いることができる上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。
【0033】
一方、上記バターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。
先ず、バターを溶解機で溶解し、熱交換機で加温する。これを遠心分離機で分離することによってバターオイルが得られる。本発明のクリーム用添加材で用いることができる上記水相成分は、遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。該バターオイルの製造に用いられるバターとしては、通常のものが用いられる。
【0034】
クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる上記水相成分としては、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上であれば、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分をそのまま用いてもよく、また、噴霧乾燥、濃縮、冷凍等の処理を施したものを用いてもよい。
但し、乳由来のリン脂質は、高温加熱するとその機能が低下するため、上記加温処理や上記濃縮処理中あるいは殺菌等により加熱する際の温度は、100℃未満であることが好ましい。
本発明のクリーム用添加材は、上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料」を、固形分として、好ましくは0.1〜8質量%、更に好ましくは0.5〜7質量%、最も好ましくは1〜4質量%含有する。
上記乳原料の起源となる乳としては、牛乳、ヤギ乳、ヒツジ乳、人乳等の乳を例示することができるが、特に牛乳が好ましい。
【0035】
本発明のクリーム用添加材は、糖類を含有することが好ましい。糖類を含有させることにより、保存性が改善され、またクリーム類に甘味を付与できる。
上記の糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。本発明ではこれらの糖類の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のクリーム用添加材において、上記糖類の含有量は固形分として好ましくは3〜70質量%、更に好ましくは10〜60質量%、最も好ましくは20〜50質量%である。
【0036】
本発明のクリーム用添加材は、更に必要により、その他の材料として乳化剤、澱粉類、金属イオン封鎖剤、アルギン酸類以外のゲル化剤や増粘剤、穀粉、無機塩、有機酸塩、スクラロース・ステビア・アスパルテーム・ソーマチン・サッカリン・ネオテーム・アセスルファムカリウム・甘草・羅漢果等の甘味料、上記カルシウムを含有する乳製品及び上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料」以外の乳や乳製品、キモシン等の蛋白質分解酵素、ラクターゼ(β−ガラクトシダーゼ)・グルコアミラーゼ等の糖質分解酵素、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、卵類、食塩、岩塩、海塩、調味料、甘味料、果汁、果肉、野菜、野菜汁、香辛料、香辛料抽出物、ハーブ、直鎖デキストリン・分枝デキストリン・環状デキストリン等のデキストリン類、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他の各種食品素材全般、着香料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、酸化防止剤等を配合してもよい。上記のその他の材料の配合量は、本発明のクリーム用添加材中、好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0037】
上記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄等の合成乳化剤でない乳化剤の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のクリーム用添加材において、上記の乳化剤の含有量は好ましくは15質量%以下、更に好ましくは0.05〜12質量%、最も好ましくは0.05〜10質量%である。
【0038】
上記澱粉類としては、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、モチ米澱粉等の澱粉や、これらの澱粉をアミラーゼ等の酵素で処理したものや、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理、グラフト化処理等の中から選ばれた1種又は2種以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられる。本発明ではこれらの澱粉類の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のクリーム用添加材において、上記の澱粉類の含有量は好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、一層好ましくは0.1質量%以下であるが、口溶けの良好な食感とするためには澱粉類を含有しないことが最も好ましい。
【0039】
上記金属イオン封鎖剤は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン等を封鎖するものであり、例えば、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、ウルトラポリリン酸塩、メタリン酸塩等のリン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩類、また、炭酸塩等の無機塩類が挙げられる。また、これらの金属イオン封鎖剤を含有する食品素材の形として含有させても良い。本発明ではこれらの金属イオン封鎖剤の中から選ばれた1種又は2種以上を、目的に応じて用いることができるが、本発明においては風味上の問題及び、消費者の間に広まっている天然志向に応える意味で、上記の金属イオン封鎖剤を用いないことが好ましい。
【0040】
本発明のクリーム用添加材において、上記のアルギン酸類以外のゲル化剤や増粘剤としては、LMペクチン・HMペクチン、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガントガム、微小繊維状セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、コンニャクマンナン、大豆多糖類、ゼラチン等が挙げられる。本発明ではこれらのアルギン酸類以外のゲル化剤や増粘剤の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のクリーム用添加材において、上記のアルギン酸類以外のゲル化剤や増粘剤の含有量は、好ましくは1質量%以下である。
【0041】
以上説明したように、本発明のクリーム用添加材は、上記エステル交換油脂を含む油脂を好ましくは10〜50質量%、上記アルギン酸類を好ましくは0.075〜8.9質量%、上記カルシウムを好ましくは0.001〜0.09質量%、上記水を好ましくは25〜89質量%含有する。
【0042】
次に、本発明のクリーム用添加材の製造方法について説明する。
先ず、構成脂肪酸組成において炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が30〜60質量%であり炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が25〜60質量%である油脂配合物を、ランダムエステル交換したエステル交換油脂を含む油脂にアルギン酸類、必要によりその他の材料を混合した油相と、水にカルシウム、必要によりその他の材料を混合した水相を、水中油型に乳化し、乳化物とする。この場合、アルギン酸類は、油相中に分散させてから水相に添加することが、ダマにならず均一に分散する点で好ましい。上記水中油型とは水中油中水型を含むものである。
更に、上記乳化物は、均質化前に必要に応じて加熱殺菌を行なうことができる。該加熱殺菌の方法としては、インジェクション式、インフュージョン式、マイクロ波等の直接加熱方式、又は、バッチ式、プレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式があり、UHT、HTST、LTLT等の60〜160℃の加熱処理を行なえば良い。
【0043】
上記均質化は均質化機を用いて行なうことができ、該均質化機としては、例えば、ケトル型チーズ乳化釜、ステファンミキサーの様な高速せん断乳化釜、スタティックミキサー、インラインミキサー、ホモゲナイザー、コロイドミル、ディスパーミル等が挙げられ、好ましくは1〜200MPa、更に好ましくは5〜150MPa、最も好ましくは10〜100MPaの均質化圧力にて均質化を行なう。この均質化処理は、2段バルブ式ホモゲナイザーを用いて、例えば、1段目10〜100MPa、2段目0〜10MPaの均質化圧力にて行なっても良い。
そして、必要に応じて冷却し、本発明のクリーム用添加材を得る。上記冷却の方法は、例えば、適当な容器に充填した後に、水浴、氷浴、冷蔵庫、冷凍庫等で冷却する方法が挙げられる。
【0044】
本発明のクリーム用添加材は、起泡性水中油型乳化物に添加してホイップすることで、口溶けが良好であるにもかかわらず、常温(15〜35℃)での流通、保管及び摂取にも対応できる耐熱保形性や耐熱離水耐性を有し、風味が良好で、食感が軽いホイップドクリームを製造することができる。
上記の起泡性水中油型乳化物としては、ホイップクリーム、生クリーム、植物性クリーム、コンパウンドクリーム、ガナッシュクリーム等を挙げることができる。
本発明のクリーム用添加材を添加するタイミングは、起泡性水中油型乳化物に本発明のクリーム用添加材を添加し、ホイップしてもよいし、起泡性水中油型乳化物をホイップし、これに本発明のクリーム用添加材を添加し、再びホイップしてもよい。
本発明のクリーム用添加材と起泡性水中油型乳化物の混合割合は、起泡性水中油型乳化組成物100質量部に対し、本発明のクリーム用添加材を好ましくは1〜100質量部、更に好ましくは1〜60質量部、最も好ましくは3〜50質量部添加する。
【0045】
また、本発明のクリーム用添加材は、可塑性油脂組成物に添加してクリーミングすることで、口溶けが良好であるにもかかわらず、常温(15〜35℃)での流通、保管及び摂取にも対応できる耐熱保形性や耐熱離水耐性を有し、風味が良好で、食感が軽いバタークリームを製造することができる。
上記の可塑性油脂組成物としては、バター、マーガリン、ショートニング等を挙げることができる。
本発明のクリーム用添加材を添加するタイミングは、可塑性油脂組成物に本発明のクリーム用添加材を添加し、クリーミングしてもよいし、可塑性油脂組成物をクリーミングし、これに本発明のクリーム用添加材を添加し、再びクリーミングしてもよい。
本発明のクリーム用添加材と可塑性油脂組成物の混合割合は、可塑性油脂組成物100質量部に対し、本発明のクリーム用添加材を好ましくは1〜100質量部、更に好ましくは1〜75質量部、最も好ましくは3〜60質量部添加する。
【実施例】
【0046】
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0047】
<エステル交換油脂>
(エステル交換油脂A)
パーム核油及びパーム極度硬化油を75対25の質量比率で混合した油脂配合物を、化学触媒を用いてランダムエステル交換し、エステル交換油脂A(融点32℃、トランス酸 0.3質量%)を得た。上記油脂配合物は、構成脂肪酸組成において炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が35.6質量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が53.6質量%であった。
【0048】
(エステル交換油脂B)
パーム核油及びパーム極度硬化油を50対50の質量比率で混合した油脂配合物を、化学触媒を用いてランダムエステル交換し、エステル交換油脂B(融点43℃、トランス酸 0.3質量%)を得た。上記油脂配合物は、構成脂肪酸組成において炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が50.3質量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が34.5質量%であった。
【0049】
(パーム核ステアリン)
パーム核油を20〜25℃で分別して得た高融点部(即ち溶融していない固形部分)として、ケンパス社製 マレーシアMEOMA規格パーム核ステアリン(融点32℃)を用いた。
【0050】
(実施例1)
水道水19.1質量部、砂糖10質量部、水あめ33質量部、ホエイパウダー2質量部、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(固形分29質量%、固形分中のリン脂質の含有量4.89質量%)6質量部、及びショ糖脂肪酸エステル0.1質量部を混合し、55℃に加熱し、水相部を調製した。
この水相部に、エステル交換油脂A25質量部、及びエステル交換油脂B3質量部に中粘性アルギン酸ナトリウム(1質量%水溶液の粘度が30mPa・s)1.5質量部、低粘性アルギン酸ナトリウム(10質量%水溶液の粘度が30mPa・s、1質量%水溶液の粘度が3mPa・s)0.3質量部を分散させた油相部を混合し、水中油型乳化物を調製した。
これを掻き取り式熱交換器にて60℃で10分間加熱殺菌し、掻き取り式熱交換器にて55℃に冷却した。次いでイズミフードマシナリ製2段式ホモゲナイザーにて1段目20MPa、2段目0MPaの均質化圧力にて均質化後、ポリエチレン袋に密封し、5℃に冷却し、実施例1のペースト状のクリーム用添加材を得た。
得られた実施例1のクリーム用添加材の配合と組成を表1に示す。
【0051】
(実施例2〜5)
表1に記載の配合としたほかは、実施例1と同様の製造方法にて実施例2〜5のペースト状のクリーム用添加材を得た。尚、高粘性アルギン酸ナトリウム(1質量%水溶液の粘度が200mPa・s)は油相部に分散・混合した。
得られた実施例2〜5のクリーム用添加材の配合と組成を表1に示す。
【0052】
(実施例6)
水道水23.3質量部、砂糖10質量部、水あめ33質量部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.1質量部及びショ糖脂肪酸エステル0.15質量部を混合し、55℃に加熱し、水相部を調製した。
この水相部に、エステル交換油脂A25質量部、及びエステル交換油脂B3質量部に中粘性アルギン酸ナトリウム(1質量%水溶液の粘度が30mPa・s)1.5質量部、脱脂粉乳3.5質量部、低粘性アルギン酸ナトリウム(10質量%水溶液の粘度が30mPa・s、1質量%水溶液の粘度が3mPa・s)0.3質量部、グリセリン脂肪酸エステル0.05質量部、レシチン0.1質量部を分散させた油相部を混合し、水中油型乳化物を調製した。
これを掻き取り式熱交換器にて60℃で10分間加熱殺菌し、掻き取り式熱交換器にて55℃に冷却した。次いでイズミフードマシナリ製2段式ホモゲナイザーにて1段目20MPa、2段目0MPaの均質化圧力にて均質化後、ポリエチレン袋に密封し、5℃に冷却し、実施例6のペースト状のクリーム用添加材を得た。
得られた実施例6のクリーム用添加材の配合と組成を表1に示す。
【0053】
(実施例7)
実施例1においてエステル交換油脂Aを28質量部、エステル交換油脂Bを0質量部としたほかは実施例1と同様の配合と製法にて実施例7のペースト状のクリーム用添加材を得た。
得られた実施例7のクリーム用添加材の配合と組成を表1に示す。
【0054】
(実施例8)
実施例1においてエステル交換油脂Aを0質量部、エステル交換油脂Bを28質量部としたほかは実施例1と同様の配合と製法にて実施例8のペースト状のクリーム用添加材を得た。
得られた実施例8のクリーム用添加材の配合と組成を表1に示す。
【0055】
(実施例9)
実施例1においてエステル交換油脂Aを0質量部、エステル交換油脂Bを22質量部、パーム核ステアリンを6質量部としたほかは実施例1と同様の配合と製法にて実施例9のペースト状のクリーム用添加材を得た。
得られた実施例9のクリーム用添加材の配合と組成を表1に示す。
【0056】
(比較例1)
実施例1においてエステル交換油脂Aとエステル交換油脂Bを用いず、大豆油を28質量部としたほかは実施例1と同様の配合と製法にて比較例1のクリーム用添加材を得た。
得られた比較例1のクリーム用添加材の配合と組成を表2に示す。
【0057】
(比較例2)
実施例1において中粘性アルギン酸ナトリウムと低粘性アルギン酸ナトリウムを用いず、水道水を20.9質量部としたほかは実施例1と同様の配合と製法にて比較例2のクリーム用添加材を得た。
得られた比較例2のクリーム用添加材の配合と組成を表2に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
<起泡性水中油型乳化物の調製>
水20.9質量部、砂糖10質量部、水あめ33質量部、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(固形分29質量%、固形分中のリン脂質の含有量4.89質量%)6質量部、及びショ糖脂肪酸エステル0.1質量部を混合し、55℃に加熱し、水相部を調製した。この水相部に、ホエイパウダー2質量部、パーム核油21質量部、及びエステル交換油B7質量部を分散・混合することで得られた油相部を混合し、水中油型乳化物を調製した。これを5MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で142℃、4秒間殺菌し、再度30MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却した。その後、冷蔵庫で24時間エージングを行い、起泡性水中油型乳化物を得た。
【0061】
(実施例10〜20)
上記の起泡性水中油型乳化物と実施例1〜9で得られたクリーム用添加材を用い、表3又は表4に記載の配合にて起泡性水中油型乳化物とクリーム用添加材を混合し、縦型ミキサー(「ホバートミキサーN−50」ホバートジャパン社製)を用いてホイップし、ホイップドクリームを得た。得られたホイップドクリームを下記の基準に従い評価した。結果を表3と表4に示す。
【0062】
(比較例3、4)
上記の起泡性水中油型乳化物と比較例1及び2で得られたクリーム用添加材を用い、表4に記載の配合にて起泡性水中油型乳化物とクリーム用添加材を混合し、縦型ミキサー(「ホバートミキサーN−50」ホバートジャパン社製)を用いてホイップし、ホイップドクリームを得た。得られたホイップドクリームを下記の基準に従い評価した。結果を表4に示す。
【0063】
(比較例5)クリーム用添加材を用いない場合
水20.9質量部、砂糖10質量部、水あめ33質量部、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(固形分29質量%、固形分中のリン脂質の含有量4.89質量%)6質量部、及びショ糖脂肪酸エステル0.1質量部を混合し、55℃に加熱し、水相部を調製した。この水相部に、パーム核油20.5質量部、エステル交換油B7質量部に、ホエイパウダー2質量部、中粘性アルギン酸ナトリウム(1質量%水溶液の粘度が30mPa・s)0.4質量部、低粘性アルギン酸ナトリウム(10質量%水溶液の粘度が30mPa・s、1質量%水溶液の粘度が3mPa・s)0.1質量部を分散した油相部を混合し、水中油型乳化物を調製した。これを5MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で142℃、4秒間殺菌し、再度30MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却した。その後、冷蔵庫で24時間エージングを行い、水中油型乳化組成物を得た。
得られた水中油型乳化組成物を用い、縦型ミキサー(「ホバートミキサーN−50」ホバートジャパン社製)を用いてホイップした。しかし、ホイップ前の比重とホイップ後の比重に変化がなかった。
【0064】
<可塑性油脂組成物の調整>
パーム核油40質量部、パーム油12.5質量部、エステル交換油A40質量部、エステル交換油B7.5質量部を配合した配合油を調製した。本配合油49質量部に乳化剤0.5質量部を配合し、油相を調製した。一方、水あめ23.9質量部、液糖14.5質量部、クリームチーズ1.4質量部、ホエイミネラル0.1質量部、加工デンプン1質量部、香料0.8質量部、水8.8質量部を混合し、水相を調製した。上記の油相と水相を混合し、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。
次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化し、可塑性油脂組成物を得た。
【0065】
(実施例21〜31)
上記の可塑性油脂組成物と実施例1〜9で得られたクリーム用添加材を用い、表5又は表6に記載の配合にて可塑性油脂組成物とクリーム用添加材を混合し、縦型ミキサー(「ホバートミキサーN−50」ホバートジャパン社製)にて低速30秒、高速2分でクリーミングし、バタークリームを得た。得られたバタークリームを下記の基準に従い評価した。結果を表5と表6に示す。
【0066】
(比較例6、7)
上記の可塑性油脂組成物と比較例1及び2で得られたクリーム用添加材を用い、表6に記載の配合にて可塑性油脂組成物とクリーム用添加材を混合し、縦型ミキサー(「ホバートミキサーN−50」ホバートジャパン社製)にて低速30秒、高速2分でクリーミングし、バタークリームを得た。得られたバタークリームを下記の基準に従い評価した。結果を表6に示す。
【0067】
(比較例8)クリーム用添加材を用いない場合
パーム核油40質量部、パーム油12.5質量部、エステル交換油A40質量部、エステル交換油B7.5質量部を配合した配合油を調製した。本配合油48.5質量部に乳化剤0.5質量部、中粘性アルギン酸ナトリウム(1質量%水溶液の粘度が30mPa・s)0.4質量部、低粘性アルギン酸ナトリウム(10質量%水溶液の粘度が30mPa・s、1質量%水溶液の粘度が3mPa・s)0.1質量部を配合し、油相を調製した。一方、水あめ23.9質量部、液糖14.5質量部、クリームチーズ1.4質量部、ホエイミネラル0.1質量部、加工デンプン1質量部、香料0.8質量部、水8.8質量部を混合し、水相を調製した。上記の油相と水相を混合し、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却し、可塑性油脂組成物を得た。
得られた可塑性油脂組成物を縦型ミキサー(「ホバートミキサーN−50」ホバートジャパン社製)にて低速30秒、高速2分でクリーミングし、バタークリームを得た。得られたバタークリームを下記の基準に従い評価した。結果を表6に示す。
【0068】
<評価>
(耐熱保型性)
耐熱保型性:ホイップドクリーム又はバタークリームを絞り袋で造花し、30℃の恒温槽中で24時間放置した場合の形状保持の程度について評価した。
◎:形状保持
○:やや形状保持
△:形状不良
×:完全に溶解し、形状不良
【0069】
(耐熱離水耐性)
耐熱離水耐性:ホイップドクリーム又はバタークリームを絞り袋で造花し、30℃の恒温槽中で24時間放置したときの状態について評価した。
(ホイップドクリーム)
5:離水なく、形状維持
4:離水なく、やや形状不良
3:離水なく、形状不良
2:やや離水し、形状不良
1:離水多く、形状不良
(バタークリーム)
5:分離なく、形状維持
4:分離なく、やや形状不良
3:分離なく、形状不良
2:やや分離、形状不良
1:分離がひどく、形状不良
【0070】
(口溶け)
ホイップドクリーム又はバタークリームを口に含んだ時の口溶けについて評価した。
5:極めて良好な口溶け
4:良好な口溶け
3:やや良好な口溶け
2:やや油っぽさを感じる
1:油っぽく、キレが悪い
【0071】
(乳風味)
ホイップドクリーム又はバタークリームを口に含んだ時の乳風味について評価した。
◎:極めて良好な乳風味を感じる
○:良好な乳風味を感じる
△:やや乳風味を感じる
×:乳風味をあまり感じない
【0072】
(ホイップ時間と比重)
ホイップドクリームの最適のホイップ時間と比重を示す。
(作業性)
バタークリームについては、比重を以下の基準で評価した。
◎:比重0.6〜0.65であり、極めて作業性に優れる
○:比重0.7〜0.75であり、作業性に優れる
△:比重0.8〜0.85であり、やや作業性に劣る
×:比重0.9〜1.0であり、極めて作業性に劣る
【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

【0076】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成脂肪酸組成において炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が30〜60質量%であり炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が25〜60質量%である油脂配合物を、ランダムエステル交換したエステル交換油脂、アルギン酸類、カルシウム及び水を含有する水中油型乳化物であることを特徴とするクリーム用添加材。
【請求項2】
ペースト状である請求項1に記載のクリーム用添加材。
【請求項3】
上記エステル交換油脂を含む油脂を10〜50質量%、上記アルギン酸類を0.075〜8.9質量%、上記カルシウムを0.001〜0.09質量%、上記水を25〜89質量%含有する請求項1又は2に記載のクリーム用添加材。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のクリーム用添加材を起泡性水中油型乳化物に添加してホイップしてなるホイップドクリーム。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか一項に記載のクリーム用添加材を可塑性油脂組成物に添加し、クリーミングしてなるバタークリーム。

【公開番号】特開2013−99289(P2013−99289A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245249(P2011−245249)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】