説明

クリーンルームの天井構造およびその施工方法

【課題】 梁部材の上方に形成された上部空間における清掃を、クリーン清掃でない通常の清掃で済ませるとともに、足場を組むなどして行う高所作業とすることなく行うことができるようにし、清掃の手間を小さくすることができるクリーンルームの天井構造およびその施工方法を提供する。
【解決手段】トラス構造3における下弦鉄骨11の上には、デッキプレート4が載置されている。デッキプレート4は断面凹凸形状を有する折板形状をなしており、デッキプレート4のエンドクローズ部における凸部22は、凹部21の高さ位置まで押し潰されている。また、デッキプレート4のエンドクローズ部の側方には、Z型金物5が配設されており、下弦鉄骨11とZ型金物5の天板5Bとの間には、端縁シール部材6が設けられている。端縁シール部材6により、下弦鉄骨11とデッキプレート4との間の気密性を確保している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームの天井構造およびクリーンルームにおける天井の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルームの天井には、一般的に、天井チャンバが形成されるとともに、室内に空気を循環供給するための送風機やHEPAフィルタが設けられる。このようなクリーンルームの天井構造として、従来、室内側天井と屋根側天井とを設け、これらの室内側天井と屋根側天井の間に天井チャンバを形成したものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このクリーンルームの天井構造では、屋根側天井を、屋根部材に吊ボルトを介して接続された下地材で支持し、下地材に吊ボルトを介して室内側天井の支持部材を接続している。また、室内側天井に送風機やHEPAフィルタなどが設けられており、室内に対してHEPAフィルタを通した空気を供給している。あるいは、屋根面の気密性を高め、屋根を直接チャンバとすることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭64−2810号(実願昭62−94405号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示されたクリーンルームの天井構造では、建屋における鉄骨梁に屋根側天井および室内側天井を設ける構造となっているため、構造が複雑となる問題がある。このような天井構造に対して、屋根側天井を省略し、建屋の屋根などに送風機やHEPAフィルタを吊す構造の天井構造がある。このような天井構造では、たとえば梁部材の上方に上部空間を形成し、この上部空間を天井チャンバとして利用するとともに、梁部材などに送風機やHEPAフィルタを吊す構造とされている。
【0006】
このようなクリーンルームにおける上部空間の清掃は、高所作業となることから、たとえば清掃作業用の足場を組み、作業員がその足場に乗って清掃作業を行う必要がある。このため、清掃作業に手間がかかるという問題があった。特に、天井チャンバの清掃を行う際には、通常の清掃よりも清浄度を高めたクリーン清掃が行われる。このような天井チャンバとなる上部空間について、足場を組んでクリーン清掃を行おうとすると、その手間が非常に大きくなるという問題があった。
【0007】
さらに、梁部材の上方における上部空間には、トラス構造が形成されることが多い。このようなトラス構造が形成された上部空間では、トラス部材となる縦部材や斜部材が多数配設されており、クリーン清掃を行う際には、その清掃の手間がより一層大きくなるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、梁部材の上方に形成された上部空間における清掃を、クリーン清掃でない通常の清掃で済ませるとともに、足場を組むなどして行う高所作業とすることなく行うことができるようにし、清掃の手間を小さくすることができるクリーンルームの天井構造およびその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明に係るクリーンルームの天井構造は、略水平面上に配置された複数の梁部材を備えるとともに、梁部材の上方に上部空間が形成されたクリーンルームの天井構造であって、梁部材の上面にプレート部材の端縁部が配置され、複数の梁部材の間にプレート部材が掛け渡されて、上部空間と、上部空間の下方におけるクリーンルーム室内とがプレート部材によって仕切られており、梁部材の上面におけるプレート部材の端縁部に沿って、断面が折曲形状をなす長尺状の折曲部材が配設されており、梁部材の上面におけるプレート部材の端縁部を覆う端縁シール部材が、梁部材と折曲部材との間に設けられ、梁部材とプレート部材との間が、端縁シール部材によって気密状態にシールされていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るクリーンルームの天井構造においては、梁部材の上面におけるプレート部材の端縁部に沿って断面が折曲形状をなす長尺状の折曲部材が配設されている。また、梁部材と折曲部材との間には、梁部材の上面におけるプレート部材の端縁部を覆う端縁シール部材が設けられ、梁部材とプレート部材との間が、端縁シール部材によって気密状態にシールされている。この端縁シール部材が設けられていることにより、梁部材とプレート部材との間の気密性を高めることができる。したがって、梁部材の上方における上部空間においては、クリーン清掃などの清浄度の高い清掃でなく、通常の清掃で済ませることができ、清掃の手間を小さくすることができる。また、梁部材の上面にプレート部材を設けることにより、プレート部材の上に作業員が乗って上部空間の清掃作業を行うことができる。したがって、梁部材の上方に形成された上部空間における清掃を、足場を組むなどして行う高所作業とすることなく行うことができるようにし、清掃の手間を小さくすることができる。なお、本発明における「折曲形状」には、Z字形状、L字形状などの折曲部を有する形状が含まれる。
【0011】
ここで、プレート部材が、長尺の凹部および凸部が交互に配置された断面凹凸形状を有する折板形状をなし、プレート部材の端縁部における凸部が、プレート部材の端縁部における凹部の高さ位置まで押し潰されているようにすることができる。
【0012】
プレート部材として強度が高い断面凹凸形状を有する折板形状のものを用いる場合、プレート部材における凸部と梁部材との間に隙間が形成されてしまい、この隙間から空気が漏れて気密性が低くなることが考えられる。この点、プレート部材の端縁部における凸部が、プレート部材の端縁部における凹部の高さ位置まで押し潰されていることにより、プレート部材の端縁部を端縁シール部材で確実に覆うことができる。したがって、その分梁部材とプレート部材との間の気密性を高めることができる。
【0013】
また、プレート部材における凸部の側面に折り返し部が形成されており、折り返し部が側面シール部材によって気密状態にシールされているようにすることができる。
【0014】
折板形状のプレート部材の端縁部における凸部が押し潰されると、その凸部の側面に折り返し部が形成される。この折り返し部を通してプレート部材の下方に空気が漏れてしまうことがある。そこで、折り返し部が側面シール部材によって気密状態にシールされていることにより、梁部材とプレート部材との間の気密性をさらに高めることができる。
【0015】
さらに、斜部材を含むトラス部材を備えるトラス構造が上部空間に形成され、梁部材にガセットプレートが立設され、ガセットプレートに対して、トラス部材がピン接合されており、ガセットプレートの側方位置に、プレート部材の端縁が配置されているようにすることができる。
【0016】
このように、トラス構造におけるトラス部材がピン接合されていることにより、ガセットプレートの側方位置に、プレート部材の端縁が配置される領域を容易に確保することができる。したがって、梁部材にプレート部材の取り付ける際に、トラス部材が邪魔にならないようにすることができ、プレート部材の取り付けを容易に行うことができる。
【0017】
また、上記課題を解決した本発明に係るクリーンルームにおける天井の施工方法は、上記クリーンルームの天井構造を施工するにあたり、梁部材を施工した後、梁部材の上面にプレート部材を配設し、プレート部材の端縁部に沿って折曲部材を配置した後、梁部材と折曲部材との間にシール部材を設け、梁部材とプレート部材との間を端縁シール部材によって気密状態にシールすることを特徴とする。
【0018】
また、梁部材の上方からプレート部材を設けた後、プレート部材上で、折曲部材の配置を行い、さらに端縁シール部材を設けるようにすることができる。この場合、足場を組むことなく、梁上からの作業のみで施工することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るクリーンルームの天井構造およびその施工方法によれば、梁部材の上方に形成された上部空間における清掃を、クリーン清掃でない通常の清掃で済ませるとともに、足場を組むなどして行う高所作業とすることなく行うことができるようにし、清掃の手間を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係るクリーンルームの天井構造の概要を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るクリーンルームの天井構造の概要を示す側面図である。
【図3】デッキプレートの斜視図である。
【図4】下弦材とデッキプレートの接続部分の拡大側断面図である。
【図5】デッキプレートにおけるエンドクローズ部の製造工程を示す斜視図である。
【図6】下弦材とデッキプレートとの接続工程を示す側断面図である。
【図7】ピン接合されたトラス構造の側面図である。
【図8】(a)は、図7のX−X線断面図、(b)は(a)の下方要部拡大側面図、(c)は、(a)の下方要部拡大正面図である。
【図9】(a)は、剛接合されたトラス構造の側面図、(b)は(a)の下方要部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るクリーンルームの天井構造の概要を示す斜視図、図2はその側面図である。図1および図2に示すように、本実施形態に係るクリーンルームMは、建屋における屋根部材1および柱部材2に囲まれて形成されている。屋根部材1の下側には、トラス構造3が形成されている。
【0023】
トラス構造3は、複数のトラス部材を備えて構成されている。トラス構造3は、トラス部材として、略水平面上に形成された複数の梁部材である下弦鉄骨11および下弦鉄骨11が配置される略水平面と平行である略水平面上に形成された複数の上弦鉄骨12を備えている。
【0024】
図1および図2においては、下弦鉄骨11および上弦鉄骨12は、手前側の1本のみが図示されている。また、トラス部材として、高さ方向に延在する縦部材13および斜め方向に延在する斜部材14を備えている。このうち、下弦鉄骨11および上弦鉄骨12は、いずれもH形鋼によって構成されている。
【0025】
下弦鉄骨11の上面および上弦鉄骨12の下面には、複数のガセットプレート15が所定の間隔を置いてそれぞれ取り付けられている。縦部材13および斜部材14は、下弦鉄骨11および上弦鉄骨12にそれぞれ取り付けられたガセットプレート15に対してピン接合されている。
【0026】
さらに、下弦鉄骨11の上面には、本発明のプレート部材であるデッキプレート4が配設されている。デッキプレート4は、折板形状をなしており、図3に示すように、長尺の凹部21および凸部22が交互に配置された断面凹凸形状を有する板材である。このデッキプレート4は、2サイクル分の凹部21および凸部22を備えており、下弦鉄骨11上には、複数のデッキプレート4が並設されている。
【0027】
デッキプレート4の両側部には、図示しない嵌合部が形成されており、並設されたデッキプレート4の嵌合部同士の嵌合によって、並設されたデッキプレート4同士が接合されている。このデッキプレート4が設けられた面よりも上方に上部空間が形成されており、この上部空間にはトラス構造3における縦部材13および斜部材14が配設されている。デッキプレート4は、単体では、凹凸形状に沿った幅が3〜4m程度である。また、凹凸形状を横断する方向の長さが0.6m程度であり、3m〜4程度の梁部材間に対して複数枚のデッキプレート4を並設することにより、全面にデッキプレート4が設けられた状態となる。
【0028】
また、デッキプレート4の端縁部における凸部22は、デッキプレート4の端縁部における凹部21の高さ位置まで押し潰されている。このため、デッキプレート4の端縁部では、凹部21と凸部22との高さの差が、デッキプレート4の肉厚分程度しか無い状態となっている。
【0029】
デッキプレート4における凸部22が押し潰される際、凸部22の側面には、折り返し部である折曲部23が形成される。折曲部23では、折り曲げられた部分が完全に密接することもあるが、完全には密接しない状態となることもある。この折曲部には、側面シール部材24が設けられている。この側面シール部材24により、デッキプレート4における凸部22の側面の折曲部23が気密状態にシールされている。
【0030】
さらに、デッキプレート4は、複数の下弦鉄骨11間に掛け渡されており、その端縁部は、下弦鉄骨11の上に配置されている。また、図4にも示すように、下弦鉄骨11におけるデッキプレート4の端縁部に沿って、本発明の折曲部材であるZ型金物5が配設されている。
【0031】
Z型金物5は、断面が略Z字形状をなす長尺状の部材である。Z型金物5は、座板5Aと、天板5Bと、座板5Aおよび天板5Bを接続する接続板5Cとを備えて構成されている。座板5Aは、下弦鉄骨11に溶接固定または接着固定されている。また、天板5Bは、デッキプレート4のエンドクローズ部の上方に配置されている。なお、折曲部材としては、Z型金物5のほか、断面L型のL型金物(L型鋼)、あるいは金属以外の素材からなる断面Z型、断面L型のものを用いることもできる。
【0032】
下弦鉄骨11とZ型金物5の天板5Bとの間には、端縁シール部材6が設けられている。端縁シール部材6は、下弦鉄骨11の上面におけるデッキプレートの端縁部を覆ってシールするものであり、下弦鉄骨11とデッキプレート4との間が、端縁シール部材6によって気密状態にシールされている。
【0033】
下弦鉄骨11の下方位置には、図2に示すように、天井パネル7が設けられている。下弦鉄骨11と天井パネル7との間には、下弦鉄骨11に取り付けられた吊り材8が設けられている。さらに、天井パネル7は、吊り材8に支持されており、天井パネル7には、フィルタ付送風機9が取り付けられている。フィルタ付送風機9は、吊り材8によって下弦鉄骨11に吊持されている。また、下弦鉄骨11上に設けられたデッキプレート4と天井パネル7との間の空間が天井チャンバCとして機能している。なお、空調方式によっては、デッキプレート4の下に天井パネル7を敷設しない場合もある。この場合の空調は、床置き式空調機とするか、下弦鉄骨11にフィルタ付送風機9を吊り下げるようにすることができる。
【0034】
次に、本実施形態に係るクリーンルームの天井構造の施工手順について説明する。クリーンルームの天井を施工する際には、施工済の建屋におけるトラス構造3に、デッキプレート4を設置する。デッキプレート4は、建屋に搬入される前段階の工場で成形加工が行われる。
【0035】
デッキプレート4を成形する手順としては、まず、鋼板を折板形状に折曲成形した後、エンドクローズ部の密閉処理を行う。図5(a)に示すように、エンドクローズ部の密閉処理が行われる前の折板4Aに対して、エンドクローズ部の密閉処理を行う。エンドクローズ部の処理では、折板4Aにおける凸部22の側面に対して、第1折曲辺23Aを設定する。
【0036】
続いて、図5(b)に示すように、凸部22における第1折曲辺23Aよりも端部側を押し潰す。すると、凸部22における第1折曲辺23Aよりも上方に第2折曲辺23Bが発生する。そのまま凸部22を押し潰すと、第1折曲辺23Aおよび第2折曲辺23Bに沿って凸部22が折曲し、図5(c)に示すように、エンドクローズ部に密閉処理が施されたデッキプレート4となる。こうして製造されたデッキプレート4をクリーンルームが施工される建屋に搬入する。
【0037】
クリーンルームが施工される建屋では、デッキプレート4が搬入されると、図6(a)に示すように、搬入されたデッキプレート4をトラス構造3における下弦鉄骨11上に載置する。このとき、デッキプレート4におけるエンドクローズ部が下弦鉄骨11の長手方向に沿うようにデッキプレート4が配置され、エンドクローズ部は下弦鉄骨11上に完全に載る状態で載置される。
【0038】
デッキプレート4を下弦鉄骨11の上に載置したら、並設されたデッキプレート4における嵌合部同士を嵌合させる。それから、嵌合させた嵌合部にビス留めを行い、並設されたデッキプレート4同士を接合する。さらには、デッキプレート4におけるエンドクローズ部の凹部21を下弦鉄骨11の上面に対して溶接して固定する。
【0039】
それから、下弦鉄骨11の上面におけるデッキプレート4の側方にZ型金物5を設ける。Z型金物5は、その接続板5Cがデッキプレート4のエンドクローズ部の側方に位置し、その天板5Bがデッキプレート4のエンドクローズ部の上方に位置するように設けられる。また、下弦鉄骨11の上面に座板5Aを溶接することによってZ型金物5が下弦鉄骨11に固定される。
【0040】
その後、図6(b)に示すように、デッキプレート4の凸部22の側面に形成された折曲部23の側方に側面シール部材24を設けるとともに、Z型金物5と下弦鉄骨11との間に端縁シール部材6を設ける。側面シール部材24および端縁シール部材6は、いずれも流動性シール材が所定時間を経過した後に固化して形成されるものである。
【0041】
デッキプレート4における折曲部23に側面シール部材24を設ける際には、デッキプレート4における折曲部23に沿って流動性シール材を塗布して、所定時間養生して固化させる。こうして、デッキプレート4における折曲部23が側面シール部材24によって気密状態にシールされる。
【0042】
また、端縁シール部材6を設ける際には、Z型金物5の天板5B、接続板5Cおよび下弦鉄骨11の間に流動性シール材を充填する。このとき、デッキプレート4におけるエンドクローズ部は、流動性シール材によって完全に覆われた状態となる。そのまま流動性シール材を所定時間養生することによって、端縁シール部材6を設ける。こうして、デッキプレート4のエンドクローズ部が端縁シール部材6によって気密状態にシールされる。
【0043】
また、天井パネル7を設置する場合、下弦鉄骨11の下方では、天井パネル7の施工が行われ、下弦鉄骨11を挟んだデッキプレート4と天井パネル7との間に図2に示す天井チャンバCが形成される。それから、下弦鉄骨11に対して吊り材8を取り付け、天井パネル7を敷設した後、天井パネル7の上に吊り材8にフィルタ付送風機9を取り付ける。こうして、クリーンルームの天井の施工が行われる。
【0044】
このように、本実施形態に係るクリーンルームの天井構造においては、下弦鉄骨11にデッキプレート4を設け、このデッキプレート4によってトラス構造3をクリーンルームの室内に対して気密状態としている。このため、トラス構造3が設けられた空間に対して通常の清掃よりも清浄度を高めたクリーン清掃を行わずに済ませることができる。したがって、トラス構造が形成された空間の清掃の手間を小さくすることができる。
【0045】
ところで、トラス構造3をクリーンルームに対して気密状態とするためには、デッキプレート4と下弦鉄骨11との間の気密性を非常に高くする必要がある。デッキプレート4と下弦鉄骨11との気密性を確保するためには、両者が接触する位置に溶接を施すことが考えられる。しかし、デッキプレート4が凹凸形状を有することから、凸部22と下弦鉄骨11との間の気密性の確保が問題となる。
【0046】
この点、本実施形態では、デッキプレート4のエンドクローズ部において、密閉処理を行っている。密閉処理では、デッキプレート4のエンドクローズ部における凸部22を凹部21の高さ位置まで押し潰し、Z型金物5の天板5Bの下方に形成した端縁シール部材6でシールすることにより、気密性を確保している。
【0047】
ところが、端縁シール部材6を設けた後に、デッキプレート4の上下における気密性について調べたところ、気密性が十分でないことが分かった。そこで、デッキプレート4における空気の流路について検討したところ、デッキプレート4における折曲部23において、完全に気密状態を確保することが困難であることを知見した。
【0048】
そこで、デッキプレート4における折曲部23に側面シール部材24を設け、折曲部23をシールしてしる。側面シール部材24によって折曲部23をシールすることにより、デッキプレート4における上下の気密性をより高めることができた。したがって、デッキプレート4によってトラス構造3をクリーンルームの室内に対して高い気密状態とすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、トラス構造3にデッキプレート4を設けて、施工作業を行っている。このため、デッキプレート4の上に作業員が乗って上部空間の清掃作業を行うことができる。したがって、下弦鉄骨11の上方に形成された上部空間における清掃を、足場を組むなどして行う高所作業とすることなく行うことができるようにし、清掃の手間を小さくすることができる。しかも、作業員は、Z型金物5の配置、側面シール部材24や端縁シール部材6の塗布といった作業についても、デッキプレート4に乗って行うことができる。したがって、これらの作業についても、足場を組むなどして行う高所作業を行わずに済ませることができる。
【0050】
さらに、トラス構造3としては、下弦鉄骨11にガセットプレート15を立設し、縦部材13および斜部材14をピン接合した構造を用いている。ここで、トラス構造3における縦部材13および斜部材14は、図7に示すように、下弦鉄骨11の上面に立設されたガセットプレート15にピン接合されて取り付けられている。デッキプレート4におけるエンドクローズ部は、ガセットプレート15の側方位置に配置されている。
【0051】
また、図7におけるX−X線断面図を図8(a)に示す。トラス構造3における縦部材13および斜部材14が下弦鉄骨11の上面に立設されたガセットプレート15にピン接合されていることにより、図8(b)に示すように、トラス構造3における縦部材13は、下弦鉄骨11に対して上方に離間した位置に配置される。同様に、図8(c)に示すように、斜部材14は、下弦鉄骨11に対して上方に離間した位置に配置される。
【0052】
一方、図9(a)に示すように、トラス構造40として、剛接合によるものとすることがある。このトラス構造40は、下弦鉄骨41と上弦鉄骨42とを備え、下弦鉄骨41と上弦鉄骨42との間に縦部材43および斜部材44が設けられている。また、下弦鉄骨41および上弦鉄骨42には、ガセットプレート45が設けられている。
【0053】
このような剛接合によるトラス構造40では、縦部材43が下弦鉄骨41と上弦鉄骨42との間に立設され、その下端部が下弦鉄骨41に、上端部が上弦鉄骨42にそれぞれ接合されている。このため、図9(b)に示すように、下弦鉄骨41と縦部材43との間に隙間がなく、デッキプレート4を下弦鉄骨41上に載置するにあたって、縦部材43が邪魔となってしまう。
【0054】
これに対して、本実施形態では、図7に示すように、トラス構造3における縦部材13および斜部材14が下弦鉄骨11から上方に離間した位置に配置されている。このため、図8(b)(c)に破線で示すように、デッキプレート4のエンドクローズ部およびZ型金物5を載置する領域を下弦鉄骨11上に確保することができる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、プレート部材として断面凹凸形状を有するデッキプレート4を用いているが、いわゆるIデッキやLデッキなどのフラットデッキ、さらには平板状のものを用いることもできるし、断面が曲線状の波形を有するプレートを用いることもできる。
【符号の説明】
【0056】
1…屋根部材
2…柱部材
3,40…トラス構造
4…デッキプレート
4A…折板
5…Z型金物
5A…座板
5B…天板
5C… 接続板
6…端縁シール部材
7…天井パネル
8…吊り材
9…フィルタ付送風機
11,41…下弦鉄骨
12,42…上弦鉄骨
13,43…縦部材
14,44…斜部材
15,45…ガセットプレート
21…凹部
22…凸部
23…折曲部
23A…折曲辺
23B…折曲辺
24…側面シール部材
C…天井チャンバ
M…クリーンルーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平面上に配置された複数の梁部材を備えるとともに、前記梁部材の上方に上部空間が形成されたクリーンルームの天井構造であって、
前記梁部材の上面にプレート部材の端縁部が配置され、複数の前記梁部材の間に前記プレート部材が掛け渡されて、前記上部空間と、前記上部空間の下方におけるクリーンルーム室内とが前記プレート部材によって仕切られており、
前記梁部材の上面における前記プレート部材の端縁部に沿って、断面が折曲形状をなす長尺状の折曲部材が配設されており、
前記梁部材の上面における前記プレート部材の端縁部を覆う端縁シール部材が、前記梁部材と前記折曲部材との間に設けられ、前記梁部材と前記プレート部材との間が、前記端縁シール部材によって気密状態にシールされていることを特徴とするクリーンルームの天井構造。
【請求項2】
前記プレート部材が、長尺の凹部および凸部が交互に配置された断面凹凸形状を有する折板形状をなし、
前記プレート部材の端縁部における凸部が、前記プレート部材の端縁部における凹部の高さ位置まで押し潰されている請求項1に記載のクリーンルームの天井構造。
【請求項3】
前記プレート部材における凸部の側面に折り返し部が形成されており、
前記折り返し部が側面シール部材によって気密状態にシールされている請求項2に記載のクリーンルームの天井構造。
【請求項4】
斜部材を含むトラス部材を備えるトラス構造が前記上部空間に形成され、
前記梁部材にガセットプレートが立設され、
前記ガセットプレートに対して、前記トラス部材がピン接合されており、
前記ガセットプレートの側方位置に、前記プレート部材の端縁が配置されている請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のクリーンルームの天井構造。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載のクリーンルームの天井構造を施工するにあたり、
前記梁部材を施工した後、
前記梁部材の上面に前記プレート部材を配設し、
前記プレート部材の端縁部に沿って前記折曲部材を配置した後、
前記梁部材と前記折曲部材との間に端縁シール部材を設け、前記梁部材と前記プレート部材との間を前記端縁シール部材によって気密状態にシールすることを特徴とするクリーンルームにおける天井の施工方法。
【請求項6】
前記梁部材の上方から前記プレート部材を設けた後、
前記プレート部材上で、前記折曲部材の配置を行い、さらに前記端縁シール部材を設ける請求項5に記載のクリーンルームにおける天井の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−108283(P2013−108283A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254203(P2011−254203)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】