説明

クルクマキサンソリザから分離された免疫増強多糖類及びその製造方法

本発明は(S1)クルクマキサンソリザの根(Curcuma xanthorrhiza Roxb.)の粉末を準備する段階;(S2)前記粉末を有機溶媒で抽出した後、ろ過または遠心分離して残渣を得る段階;(S3)前記残渣を抽出して多糖類が含有された溶液を製造する段階;(S4)前記多糖類が含有された溶液に澱粉加水分解酵素を加えて澱粉を除去する段階;(S5)前記(S4)段階後に多糖類を沈殿させる段階;及び(S6)前記(S5)段階後に多糖類を精製する段階を含むことを特徴とする多糖類の製造方法、このような製造方法により得られた多糖類、このような多糖類を有効成分として含む薬学組成物を提供する。本発明に伴う多糖類はマクロファージを活性化させ、癌を含む免疫関連疾患の予防、治療及び治療後の免疫増強のための薬品及び機能性食品に極めて有用に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクルクマキサンソリザ(Curcuma xanthorrhiza)から分離された有用な多糖類、その製造方法及び分離された多糖類の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
マクロファージ活性化能を有する多糖類は、細菌、真菌及びウィルスにより生体が感染された場合、誘発される生体防御メカニズムにおいて重要な役割をするマクロファージを活性化させる能力を有することである。この際、前記マクロファージは細胞性免疫に分類され、マクロファージ活性化により補体、NK細胞等の免疫細胞と反応して免疫系の根幹をなす(Plafair, J,H,L : Immunology at a Glance 5th ed. Blackwell Scientific Publications. London, 1992)。
【0003】
マクロファージは細菌や外部刺戟物質に露出されると活性化され、活性化されたマクロファージとなる。活性化されたマクロファージは食細胞作用、プロスタグランジン分泌増加等の多様な酵素の蛋白質合成能増加の機能的変化を示し、細胞の大きさと細胞分泌物が増加するようになる。特に、癌細胞に対する細胞毒性作用のメカニズムにおいて活性化されたマクロファージにより分泌されたサイトカイン(IL−1β,IL−6,TNF−α)、過酸化水素(H22)、亜硝酸(NO)、細胞毒性蛋白分解酵素(cytolytic protease)等が癌細胞に細胞毒性を示す物質として知られている(Hibbs J. B. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 157: 87-94, 1998)。
【0004】
活性化されたマクロファージは抗微生物作用、抗癌作用をなし得る能力を有するようになるものの、実際に癌患者において生体内の抗癌作用は単独では有効でなく、既存の化学療法、放射線療法等を通じた抗癌療法が甚だしい高熱、発汗、頭痛及び嘔吐等の全身副作用を誘発することから、免疫増強活性を通じた抗癌治療の開発は極めて重要な意味があるものと言い得る。
【0005】
免疫調節には多様な生化学的な現象が関与しており、特に、酸化窒素(NO)を発生させる酵素である酸化窒素シンターゼ(NOS)と、プロスタグランジンの生合成と関連した酵素等が重要な役割をしているものと知られている。従って、L−アルギニンからNOを生成する酵素であるNOS、またはアラキドン酸からプロスタグランジン類の合成に関連した酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)が免疫調節の重要な指標と見なされている(Chihara G. et al., Immunology, 34:695-711, 1978)。NOS及びCOX−2の発現は複雑な細胞伝達過程を通じてなされ、外部の信号を細胞内に伝達する多様なキナーゼ等が関与するようになるものの、その内でニュークリア・ファクター・カッパーB(nuclear factor-kappa B;NF−κB)、iNOS及びCOX−2の発現に主な影響を及ぼす。LPSやTNF−α等の刺戟により、チロシンやセリン/スレオニン・キナーゼがリン酸化及び活性化され、細胞質に存在するNF−κB複合体の抑制構成要素であるインヒビター−カッパーB(inhibitor-kappa B;I−κB)がI−κBキナーゼにより、リン酸化及び活性化され、蛋白分解されることにより、NF−κBが活性化される(D'Acquisto F. et al., Mol. Interv. 2: 22-35, 2002)。転写因子であるNF−κBは配列特異的なDNA結合蛋白質として細胞成長、分化及び免疫反応に関与する多様な遺伝子転写を誘発させる重要な因子である。
【0006】
従って、副作用を示さないながらマクロファージを活性化させ得る天然物に対する研究が活発に進行されていて、主に、低分子よりは高分子分画でその活性を示すものとして知られている。天然物質から由来した免疫増強剤は、免疫反応を強化させるか、または低下された免疫機能を回復させることにより、癌治療、免疫欠乏症治療、さらに慢性感染等の治療に使用できる。従来天然物質において免疫活性調節物質を得るために担子菌類、真菌類、さらに薬用植物等に対する研究がなされてきたものの、特にこれらの高分子分画成分としては多糖類等が多く報告されていて、抗癌活性、抗補体活性、さらにリンパ球分裂誘導等の免疫調節活性が見出されてきた。今までは主に茸類から免疫調節活性があるレンチナン(lentinan)、シゾフィラン(schzophyllan)、ベスタチン(bestatin)、クレスチン(krestin)、さらにペプチドピーエスケー(peptide PSK)等のグルカン(glucan)類多糖が抗癌治療に利用されている。
【0007】
一方、クルクマキサンソリザは生姜科植物として一般的にトゥムラワッ(temulawak)またはジャワターメリック(Javanese turmeric)として知られたインドネシアの伝統薬用植物であり、主成分としてはアルトゥメノン(artumenone)、α−クルクメン(α-curcumene)、β−クルクメン(β-curcumene)、クルゼレノン(curzerenone)、ゲルマクロン(germacrone)、β−セスキフェランドレン(β-sesquiphellandrene)、α−トゥルメノン(α-turmerone)、β−トゥルメノン(β-turmerone)、キサンスロヒゾール(xanthorrhizo)等のテルペノイド(terpenoid)系列化合物と7〜30%の精油、30〜40%の炭水化物、さらに0.02〜2.0%の芳香性色素であるクルクミノイド等を含んでいる(Lin S. C. et al., Am. J. Chin. Med., 23:243-254, 1995)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明がなそうとする技術的課題は天然物から分離され、安全でありながら免疫増強効果及び/または抗癌効果が優れた物質、このような物質の製造方法及びこのような物質を利用する用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題を達成するために、本発明は(S1)クルクマキサンソリザの根(Curcuma xanthorrhiza Roxb.)の粉末を準備する段階;(S2)前記粉末を有機溶媒で抽出した後でろ過または遠心分離して残渣(residue)を得る段階;(S3)前記残渣を抽出して多糖類が含有された溶液を製造する段階;(S4)前記多糖類が含有された溶液に澱粉加水分解酵素を加えて澱粉を除去する段階;(S5)前記(S4)段階後に多糖類を沈殿させる段階;及び(S6)前記(S5)段階後に多糖類を精製する段階を含むことを特徴とするクルクマキサンソリザから分離された多糖類の製造方法を提供する。
【0010】
本発明はさらに、前記製造方法により得られたクルクマキサンソリザから分離された多糖類及びこのような多糖類を含むことを特徴とする免疫増強剤組成物を提供する。
【0011】
本発明者等は、多様な種類の天然物を対象として免疫増強活性剤を探索した結果、クルクマキサンソリザの根から分離した多糖類が免疫増強活性を示すことを究明して本発明を完成した。
【0012】
以下、本発明のクルクマキサンソリザから分離された免疫増強多糖類、その製造方法、このような多糖類を含む免疫増強または抗癌補助剤組成物についてより具体的に説明する。
【0013】
本発明は(S1)クルクマキサンソリザの根の粉末を準備する段階;(S2)前記粉末を有機溶媒で抽出して、ろ過または遠心分離して残渣を得る段階;(S3)前記残渣を抽出して多糖類が含有された溶液を製造する段階;(S4)前記多糖類が含有された溶液に澱粉加水分解酵素を加えて澱粉を除去する段階;(S5)前記(S4)段階後に多糖類を沈殿させる段階;及び(S6)前記(S5)段階後に多糖類を精製する段階を含むことを特徴とするクルクマキサンソリザから分離された多糖類の製造方法を提供する。
【0014】
本発明の製造方法は(S1)クルクマキサンソリザの根の粉末を準備する段階を含む。クルクマキサンソリザの根の粉末は本発明が属する分野で通常的に使用される粉末化方法により準備できる。
本発明の製造方法は(S2)前記粉末を有機溶媒で抽出した後で、ろ過または遠心分離して不溶性残渣を得る段階を含む。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、エーテル、ベンゼン、クロロホルム、酢酸エチル、塩化メチレン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等単独であるいは混合して使用できるものの、これに限定されるものではない。より好ましくは、エタノール、メタノール、ヘキサンまたはこれらの混合物が使用できる。
【0015】
本発明の製造方法は(S3)前記残渣を抽出して多糖類が含有された溶液を製造する段階を含む。好ましくは、前記残渣に含有されている多糖類成分は、残渣を熱水、酸溶液またはアルカリ溶液で抽出して得られる。
【0016】
熱水としては多糖類が溶解し得る程度の温度を有する精製水を利用することができ、より好ましくは、約70〜100℃の精製水が使用できる。
【0017】
酸溶液としては本発明が属する分野で通常的に知られている多糖類を溶解できる程度の酸性を有する溶液であれば、どのようなものでも使用することができ、例えば、クエン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、パルミチン酸、プロピオン酸、アスコルビン酸、キト酸、馬尿酸、アルギン酸、コリン酸、ビュチリック酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、サリチル酸、グルコン酸、グリコール酸、マンデル酸、桂皮酸等の有機酸溶液及び塩酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、臭化水素酸、硫酸等の無機酸溶液が1種以上使用できるものの、これに限定されるものではない。ただ、製造費用等多角的な面で0.005〜10NのHCl溶液が好ましく、0.1〜5NのHCl溶液がより好ましい。
【0018】
アルカリ溶液としては本発明が属する分野で通常的に知られている多糖類を溶解し得る程度のアルカリ性を有する溶液であれば、いずれのものでも使用することができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン等の溶液が1種以上使用できるものの、これに限定されるものではない。ただ、製造費用等多角的な面で0.005〜10NのNaOH溶液が好ましく、0.1〜5NのNaOH溶液がより好ましい。
【0019】
本発明の製造方法は(S4)前記多糖類が含有された溶液に澱粉加水分解酵素を加えて澱粉を除去する段階を含む。好ましくは、澱粉加水分解酵素にはα−アミラーゼ、グルコアミラーゼ等が使用できる。
【0020】
本発明の製造方法は(S5)前記(S4)段階後に多糖類を沈殿させる段階を含む。より好ましくは、澱粉が除去された多糖類が含有された溶液は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチレングリコール等の低級アルコールが添加されることにより、溶液中に含有された多糖類が沈殿することもあり得る。
【0021】
本発明の製造方法は(S6)前記(S5)段階後に多糖類を精製する段階を含む。沈殿された多糖類の分画は透析、限外ろ過等の分子量分画システムを利用して低分子量の成分を除去することにより、多糖類が精製できる。透析、限外ろ過等において分画分子量基準が500〜10,000、好ましくは500〜5,000、より好ましくは1,000〜5,000である膜(membrane)を使用することもできる。
【0022】
本発明はさらに、前記製造方法により得られたクルクマキサンソリザから分離された多糖類を提供し、さらに、このような多糖類が有効成分として含まれた薬学組成物を提供する。前記過程によりクルクマキサンソリザから分離精製した多糖類の免疫増強活性実験を実施した結果、免疫増強指標であるNO、H22及びPGE2生成量と、飽食作用能、iNOS、TNF−α、COX−2 mRNA及び蛋白質発現を増加させた。さらに、癌細胞殺害能及び抗癌効果も示した。このような活性はクルクマキサンソリザから分離精製した多糖類が、免疫増強剤組成物及び抗癌補助剤組成物として有用に使用できることを意味する。つまり、本発明に伴う多糖類はマクロファージを活性化させ、癌を含む免疫関連疾患の予防、治療及び治療後の免疫増強のための薬品及び機能性食品に極めて有用に使用できる。
【0023】
さらに、本発明に伴う免疫増強剤組成物は免疫低下による疾病、つまり、臨床免疫学上の難治性疾患、慢性疾患、糖尿病、癌、男性不妊症、後天性免疫欠乏症(AIDS)、病原性ウィルス性疾患、日和見感染及び放射線被曝による疾患治療に有効成分として使用できるであろう。
【0024】
本発明の製造方法により得られた多糖類を含む組成物は、本発明が属する分野で通常の知識を有する者に周知されている方法により医薬品及び機能性食品の形態で製造できる。このような医薬品及び機能性食品は薬学的に許容される賦形剤または添加剤を含み得る。本発明の多糖類を含む組成物は単独で、あるいは、何らかの便利な運搬体、賦形剤等と共に混合して投与することができ、そのような投与剤形は単回投与または繰返し投与剤形でもあり得る。
【0025】
本発明の組成物を含む医薬品または機能性食品は、固形製剤または液状製剤の場合もあり得る。固形製剤は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、座剤等があるものの、これに限定されるものではない。固形製剤には賦形剤、着香剤、結合剤、防腐剤、崩壊剤、滑沢剤、充填剤等が含まれ得るものの、これに限定されるものではない。液状製剤には水、プロピレングリコール溶液のような溶液剤、懸濁液剤、乳剤等があるものの、これに限定されるものではなく、適宜な着色剤、着香剤、安定化剤、粘性化剤等を添加して製造できる。
【0026】
例えば、散剤は本発明の多糖類と乳糖、澱粉、微結晶セルロース等の薬剤学的に許容される適宜な賦形剤を単純混合することにより製造できる。顆粒剤は本発明の多糖類;薬剤学的に許容される適宜な賦形剤;及びポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等の薬剤学的に許容される適宜な結合剤を混合した後、水、エタノール、イソプロパノール等の溶媒を利用した湿式顆粒法または圧縮力を利用した乾式顆粒法を利用して製造することができる。さらに、錠剤は前記顆粒剤をマグネシウムステアレート等の薬剤学的に許容される適宜な滑沢剤と混合した後、打錠機を利用して打錠することにより製造できる。
【0027】
本発明の組成物は治療すべき疾患及び個体の状態によって経口剤、注射剤、吸入剤、鼻腔投与剤、腟剤、直腸投与剤、舌下剤等で投与できるものの、これに限定されるものではない。投与経路により通常的に使用され非毒性である、薬剤学的に許容される運搬体、添加剤、ビヒクル(vehicle)を含む適宜な投与ユニット剤形で製剤化ができる。
本発明の多糖類は、毎日約0.2〜200mg/kgを投与することができ、約2〜約50mg/kgの1日投与容量が好ましく、約5〜約30mg/kgの1日投与容量がより好ましい。しかしながら、前記投与量は患者の状態(年齢、性別、体重等)、治療している状態の深刻性、使用された有効成分、食餌等により多様でもあり得る。必要に応じて便利性のために1日の総投与量が分けられ、1日に複数回投与できる。
【0028】
本発明は本発明に伴う多糖類を有効成分として投与することを特徴とする抗癌補助用法及び免疫増強方法を提供する。
【0029】
本発明の多糖類をラットに経口投与して毒性実験を行った結果、経口毒性試験による50%致死量(LD50)は2,000mg/kg以上として示され、本発明に伴う多糖類が極めて安全であることが確認できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明をより具体的に説明するために、下記実施例等を挙げて説明する。しかしながら、本発明に伴う実施例等は多様な異なる形態で変更することができ、本発明の範囲が下記にて詳述する実施例等に限定されるものとして解釈されてはならない。本発明の実施例等は本発明の具体的な理解に供するために例示的に提供されるものである。
【0031】
以下の全ての試験結果において、活性分析は3回以上繰返して行い、その結果は、平均±標準偏差で表示した。統計分析はダンカンテスト(Duncan test、SPSS 12.0)を利用して行い、*p値は0.05、**p値は0.01以下の場合に統計的に有意なものと判定した。
【0032】
<実施例1>クルクマキサンソリザから多糖類の分離
クルクマキサンソリザの根の粉末15gに100%エタノール750mlを添加して2時間78℃で2回抽出した。これより得られた抽出物をワットマン(Whatman)ろ過紙(No.2)を利用して上澄液と残渣を分離した。残渣に抽出溶媒として750mlの0.1NのNaOHを加えた後で97℃で2時間の間に2回抽出した。前記にて得られた0.1NのNaOH抽出物に含まれている澱粉を加水分解するために、酵素最適条件でα−アミラーゼ(Termamyl 120L, NOVO Nordisk A/S, Denmark)とグルコアミラーゼ(AMG 300L, NOVO Nordisk A/S, Denmark)を処理した後で中和した。前記ろ液に4倍容量のイソプロピルアルコールを加え、4℃で24時間放置して多糖類を沈殿させた後、6500rpmで15分間遠心分離して上澄液と分離した。分離された沈殿物を1%溶液になるように蒸留水に溶解させ、分画分子量(molecular weight cut off;MWCO)が1000の膜を利用して限外ろ過(thin channel ultrafiltration system, Amicon TCF-10; Amicon Co., U.S.A.)した。限外ろ過後分子量1000以上の溶液を集めて凍結乾燥して多糖類が得られ、この際、収率は6%であり、このように分離された多糖類を“クルクマン−エックス”と命名した。本発明の一実施例に伴う全体的な抽出及び分離工程図を図1に示した。
【0033】
<実験例1>分子量測定
前記実施例1でクルクマキサンソリザから分離された多糖類のクルクマン−エックスの分子量はゲル透過クロマトグラフィーを利用して測定した。カラムはウルトラハイドロゲル・リニア・カラム(Ultrahydrogel linear column)とウルトラハイドロゲル・500カラム(Ultrahydrogel 500column)を使用し、移動相としては0.1NのNaNO2を使用した。分析の際、移動相の速度は1ml/minであり、標準物質としてはプルラン(pullulan)を使用した。実験結果を図2に示した。図2に示した通り、クルクマン−エックスの数平均分子量が33000Daであるものと確認された。
【0034】
<実験例2>構成糖測定
前記実施例1でクルクマキサンソリザから分離された多糖類、クルクマン−エックスの構成糖の含量はBio−LC(Dionex DX-500, USA)を利用して測定した。多糖類10mgに100μlの24N硫酸を添加して1時間反応させた後窒素充填して100℃で3時間加水分解した。室温で冷却させた後冷却された反応物に12N水酸化アンモニウムを反応させて中和させ、蒸留水で希釈した。希釈液をろ過紙でろ過させ、Bio−LCで糖含量を測定した。Bio−LCの分析条件でカラムはカボパックPA1(CarboPac(登録商標)PA1)を使用し、定組成溶離液(isocratic eluent)としては22.6mMのNaOHを使用し、再生緩衝液(regeneration buffer)としては200mMのNaOHを使用した。溶出液の流速は0.3ml/minであり、試料注入量は50μlで窒素ガス下で行った。糖標準品としてはグルコース(glucose)、ガラクトース(galactose)、アラビノース(arabinose)、マンノース(mannose)、キシロース(xylose)、ラムノース(rhamnose)を用いて保持時間(retention time)により各糖を確認した。
【0035】
多糖類の糖含量測定結果は図3に示し、構成糖の含量は下記表1に示した。表1に示した通り、クルクマキサンソリザから分離された多糖類は主にグルコース、アラビノース、ガラクトース及びマンノースにより構成されている。
【0036】
【表1】

【0037】
<実験例3>NO生成測定
前記実施例1で分離された多糖類の免疫調節効果とNO分泌との相関関係を究明するために、NO生成能をRAW264.7マクロファージを利用して観察した。鼠のマクロファージ細胞株(murine macrophage cell line)であるRAW264.7細胞を10%ウシ胎仔血清(fetal bovine serum)、100ユニット/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(streptomycin)を含有したダルベッコ変法のイーグル培地(Dulbecco's modified eagles medium、Gibco, USA)である完全培地を用いて37℃のCO2培養器で培養した。
【0038】
各RAW264.7マクロファージを2×105細胞/mlの濃度で分取し、37℃のCO2培養器で4時間培養した後、クルクマン−エックスを濃度別(5,10,30,50ug/ml)に処理し、対照群としては、リポポリサッカライド(lipopolysaccharide)10μg/mlを処理して24時間培養した。培養終了後培養上澄液中の亜硝酸塩(NOの安定した水化合物)の濃度をグリース・アッセイ(Griess assay)方法(Griess. P., Chem. Ber. 12:426-428, 1897)で測定した。つまり、NaNO2を標準物質としてグリース試薬(Griess reagent:0.5%スルファニルアミド,0.05%N−(1−ナフチル)エチレンジアミン二塩酸/2.5%H3PO4)を利用して540nmで試料の吸光度を測定した。
【0039】
実験結果、図4に示した通り、試料未処理群に比べてクルクマン−エックスを処理した群において、はるかに高いNO生成量を示し、その数値は濃度依存的に増加することが確認できた。これはクルクマキサンソリザより分離した多糖類がマクロファージのNO生成能を大きく増加させることを意味する。
【0040】
<実験例4>H22生成測定
前記実施例1で分離された多糖類の免疫調節効果とH22分泌との相関関係を究明するために、H22生成能をRAW264.7マクロファージを利用して観察した。鼠のマクロファージ細胞株であるRAW264.7細胞を10%のウシ胎仔血清、100ユニット/mlペニシリン、100ug/mlストレプトマイシンを含有するダルベッコ変法のイーグル培地(Gibco, USA)である完全培地を用いて37℃のCO2培養器で培養した。
【0041】
過酸化水素生成はフェノールレッドの西洋ワサビペルオキシダーゼ(horseradish peroxcidase;HRP)依存的酸化過程による発色反応をアンプレックス・レッド・リージェント(Amplex Red reagent)(10−アセチル−3,7−ジヒドロキシフェノキサジン)を利用して測定した。
【0042】
各RAW264.7マクロファージを2×104細胞/mlの濃度で分取して50mMアンプレックス・レッド・リージェント(Amplex Red reagent)とクレブスリンガーホスフェート(Krebs-Ringer phosphate;KRPG:145mM NaCl,5.7mM リン酸ナトリウム,4.86mM KCl,0.54mM CaCl2,1.22mM MgSO4,5.5mM グルコース,pH7.35)中の0.1U/ml HRPで処理した後、クルクマン−エックスを濃度別(5,10,30,50μg/ml)に処理し、対照群としては、リポポリサッカライド10μg/mlを処理して20時間培養した。培養終了後培養上澄液中のH22の濃度を590nmで吸光度を測定した。
【0043】
実験結果、図5に示した通り、試料未処理群に比べてクルクマン−エックスを処理した群において、はるかに高いH22生成量を示し、その数値は濃度依存的に増加することが確認できた。多糖類50μg/mlを処理した時は試料未処理群に比べて12倍以上のH22の生成量を示し、その結果は対照群として用いたLPSよりも優れたものとして示された。これはクルクマキサンソリザから分離した多糖類がマクロファージのH22生成能を大きく増加させるマイトジェン(mitogen)としての活性を有する物質であることが確認され、多糖類によるマクロファージのH22の増加効果は、外部侵入バクテリアの破壊作用以外にも隣の細胞に極めて重要な役割をすることを意味する。
【0044】
<実験例5>マクロファージの飽食作用能測定
前記実施例1において分離された多糖類の飽食作用能をRAW264.7マクロファージを利用して観察し、飽食作用能は熱的に殺菌したフルオレセインイソチオシアネートでラベルした(heat-killed fluorescein isothiocyanate (FITC)-labeled)大腸菌(Escherichia coli)である生体粒子(BioParticles)(K-12 strain, Molecular Probes, Eugene, OR, US)を利用して測定した。鼠のマクロファージ細胞株であるRAW264.7マクロファージを10%のウシ胎仔血清、100ユニット/mlペニシリン(penicillin)、100μg/mlストレプトマイシンを含有するダルベッコ変法のイーグル培地である完全培地を用いて37℃のCO2培養器で培養した。
【0045】
各RAW264.7マクロファージを2×105細胞/mlの濃度で96−ウェルプレートに分取し、クルクマン−エックスを濃度別(5,10,30,50μg/ml)に処理して、37℃のCO2培養器で培養した。4時間後熱的に殺菌したフルオレセインイソチオシアネートでラベルした大腸菌である生体粒子を100μlずつ分取後2時間培養した。培養終了後マクロファージとバクテリアをPBSで洗浄した後、トリパン・ブルー(trypan blue)を100μlずつ分取して常温で1分放置後除去し、蛍光発光器を通じて飽食作用能を測定した。
【0046】
さらに、クルクマン−エックスが活性化されたマクロファージの食作用活性(phagocytic activity)に及ぼす効果を共焦点顕微鏡(confocal microscope)(×1890)を用いて観察した。
【0047】
実験結果、図6に示した通り、試料未処理群に比べてクルクマン−エックスを処理した群において、はるかに高い飽食作用能を示し、その数値は濃度依存的に増加することが確認できた。図6のグラフにおいてAは試料未処理群、Bは30μg/ml濃度のクルクマン−エックスを示したものである。マクロファージは異物質が認識できる相異するレセプター等を有していることから、食品や天然物がマクロファージの活性化に対して直接的に関与することもできるものの、補体や他のリンパ球の活性を通じた2次的作用によるものの場合もあり得る。そこで、クルクマキサンソリザから分離した多糖類がマクロファージを活性化させる正確なメカニズムの把握はできないものの、活性化されたマクロファージを通じて飽食作用能を多く増加させ、先天性免疫、後天性免疫を含む全体的な免疫システムを強化させることができる。
【0048】
<実験例6>PGE2生成測定
前記実施例1において分離された多糖類、クルクマン−エックスのPGE2生成に及ぼす影響をRAW264.7マクロファージを利用して観察し、PGE2生成はR&Dキッド(R&D systems, USA)を利用して定量した。鼠のマクロファージ細胞株であるRAW264.7マクロファージを10%のウシ胎仔血清、100ユニット/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを含有するダルベッコ変法のイーグル培地である完全培地を用いて37℃のCO2培養器で培養した。
【0049】
各RAW264.7マクロファージを2×105細胞/mlの濃度で96−ウェルプレートに分取し、37℃のCO2培養器で4時間安定化させ、クルクマン−エックスを濃度別(5,10,30,50μg/ml)に処理し、対照群としては、リポポリサッカライド10μg/mlを処理して24時間培養した。培養終了後上澄液を新たなウェルプレートに移して、各ウェルに100μlアッセイ・バッファ(assay buffer)、50μlのPGE2コンジュゲート・バッファ(conjugate buffer)及びPGE2抗体溶液を添加した。このように処理されたプレートを2時間常温で反応させた。プレートの反応試薬を全て除去し、洗浄液で各ウェルを洗浄した後50μlのPGE2コンジュゲート・バッファと200μlのpNPP基質を添加して常温で1時間反応させた。50μl反応終了液を各ウェルに添加して反応を終結させ、405nmで吸光度を測定した。
【0050】
PGE2生成量測定結果、表2に示した通り、クルクマン−エックスを処理した際、試料未処理群に比べてはるかに高いPGE2生成量を示し、その数値は濃度依存的に増加した。多糖類50μg/mlを処理した時は、試料未処理群に比べて300%以上のPGE2生成量を示し、その効果は対照群として用いたLPSよりも優れたものとして表れた。これはクルクマキサンソリザで分離した多糖類であるクルクマン−エックスがマクロファージのPGE2生成能を大きく増加させることを意味する。
【0051】
【表2】

【0052】
<実験例7>iNOS、TNF−αとCOX−2分泌に及ぼす影響
前記実施例1で分離されたクルクマン−エックスがiNOS、TNF−α及びCOX−2蛋白質及びmRNA発現に及ぼす影響を調べるために、ウェスタンブロット(Western blot)及びRT−PCRを実施した。鼠のマクロファージ細胞株であるRAW264.7細胞(韓国細胞株銀行)を10%のウシ胎仔血清、100ユニット/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを含有するダルベッコ変法のイーグル培地である完全培地を用いて37℃のCO2培養器で培養した。
【0053】
RAW264.7細胞数を2×106細胞/mlに調整して60mm培養器に移し、6時間培養してウェスタンブロットのための細胞を準備した。培養された細胞にDPBS(ダルベッコ変法のイーグル培地)に溶解させたクルクマン−エックスを濃度別(5,10,30,50μg/ml)に処理し、対照群では、リポポリサッカライド10μg/mlを処理した。各試料処理24時間後培養器の培地を抜き、DPBS溶液で2回洗浄した後、1mlのDPBSを入れ、細胞等を集めて遠心分離(1500rpm,3分)して細胞を回収した。回収した細胞の蛋白質を得るために、溶解緩衝液(lysis buffer, 200mM tris, 150mM NaCl, 1mM EDTA, 1mM EGTA, 1% triton, 1mM PMSF, protease inhibitor cocktail)100μlを入れ、細胞を破壊して蛋白質を回収した。回収された蛋白質はブラッドフォード・アッセイ(Bradford assay)を利用して定量化し、この際、標準品はウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)を利用した。抽出された蛋白質は10%SDS−ポリアリルアミドゲルに電気泳動させ、ニトロセルロース膜(nitrocellulose membrane)でゲルの蛋白質を転移させた。その膜がこれ以上他の未知の蛋白質により汚染されないように5%脱脂粉乳を利用して1時間常温で遮断し、iNOS、TNF−αとCOX−2の1次抗体をブロッキング溶液(blocking solution)に1:1000の比率で希釈し、2時間常温で反応させた。1次抗体反応後、10分ずつ3回にかけてTBST(Tris-buffer Saline Tween 20)で揺さぶりながら洗浄した。iNOS、TNF−αとCOX−2の1次抗体を認知する2次抗体を5%脱脂粉乳に1:2000になるように希釈して1時間常温で反応させ、1次抗体の時と同様に10分ずつ3回にかけてTBST(tris-buffer saline Tween 20)で揺さぶりながら洗浄して化学発光法(chemiluminescence)により現像した。
【0054】
RT−PCRのためのRAW264.7細胞は60mm細胞培養皿に2×106細胞/mlに分株して1夜安定化させた。この細胞に試料を処理した後、細胞を集めてPBSで洗浄し、トリゾル(Invitrogen, USA)1mlを加えて室温で撹拌させた。クロロホルム200μlを入れ、再度撹拌して12000rpm、4℃で15分間遠心分離し、上澄液にイソプロピルアルコールを加えて、再度遠心分離してRNAペレットを得た。ここで得られたRNAにMMLV逆転写酵素を利用してcDNAを作った。これにiNOS(sense 5'-CAACCAGTATTATGGCTCCT-3', antisense 5'-GTGACAGCCCGGTCTTTCCA-3'),TNF−α(sense: 5-CCTGTAGCCCACGTCGTAGC-3, antisense: 5-TTGACCTCAGCGCTGAGTTG-3),COX−2(sense 5'-CCGTGGTAATGTA TGAGCA, antisense 5'-CTCGCTTCTGATATGTCTT-3')及びβ−アクチン(sense 5'-TGGAATCCTGTGGCATCCATGAAAC-3', antisense 5'-TAAAACGCAGCTCAGTAACAGTCCG-3')のプライマーを入れ、タックポリメラーゼ(taq polymerase)を利用して各遺伝子を増幅させた。この際、遺伝子増幅環境は95℃で30秒、55℃で1分、72℃で1分の過程を総30回繰返し、最後に72℃で5分を反応させた。作られたRNAを1%アガロスゲルに電気泳動させて、UV検出器で確認した。
【0055】
実験結果、図7、図9及び図11に示した通り、クルクマン−エックスによりiNOS、TNF−αとCOX−2蛋白質がはっきりと増加し、さらに、蛋白質水準と類似した傾向でmRNAが増加することを図8、図10及び図12で確認することができた。このような結果は、前記の実験例で記述したNO及びPGE2の増加がクルクマン−エックスによるmRNA及び蛋白質発現の調節に起因することを意味する。
【0056】
<実験例8>IκBαのリン酸化測定
前記実施例1で分離されたクルクマン−エックスがIκBαのリン酸化に及ぼす影響を調べるために、ウェスタンブロット(Western blot)を実施した。鼠のマクロファージ細胞株であるRAW264.7細胞(韓国細胞株銀行)を10%のウシ胎仔血清、100ユニット/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを含有するダルベッコ変法のイーグル培地である完全培地を用いて37℃のCO2培養器で培養した。
【0057】
RAW264.7細胞数を2×106細胞/mlに調整して60mm培養器に移し、6時間培養してウェスタンブロットのための細胞を準備する。培養された細胞にDPBS(ダルベッコ変法のイーグル培地)に溶解させたクルクマン−エックスを濃度別(5,10,30,50μg/ml)に処理し、対照群ではリポポリサッカライド10μg/mlを処理した。各試料処理24時間後、培養容器の培地を抜き、DPBS溶液で2回洗浄した後、1mlのDPBSを入れ、細胞等を集めて遠心分離(1500rpm,3分)して細胞を回収した。回収した細胞の蛋白質を得るために、溶解緩衝液(lysis buffer, 200mM tris, 150mM NaCl, 1mM EDTA, 1mM EGTA, 1% triton, 1mM PMSF, protease inhibitor cocktail)100μlを入れ、細胞を破壊して蛋白質を回収した。回収された蛋白質はブラッドフォード・アッセイ(Bradford assay)を利用して定量化し、この際、標準品はウシ血清アルブミンを利用した。抽出された蛋白質は10%SDS−ポリアリルアミドゲルに電気泳動させ、ニトロセルロース膜でゲルの蛋白質を転移させた。その膜がこれ以上他の未知の蛋白質により汚染されないように5%脱脂粉乳を利用して1時間常温で遮断し、pIκBαの1次抗体をブロッキング溶液に1:1000の比率で希釈し、2時間常温で反応させた。1次抗体反応後、10分ずつ3回かけてTBST(Tris-buffer Saline Tween 20)で揺さぶりながら洗浄した。1次抗体を認知する2次抗体を5%脱脂粉乳に1:2000になるように希釈して1時間常温で反応させ、1次抗体の時と同様に10分ずつ3回にかけてTBST(tris-buffer saline Tween 20)で揺さぶりながら洗浄して化学発光法により現像した。
【0058】
実験結果、図13に示した通り、クルクマン−エックスによりIκBα蛋白質がはっきりとリン酸化されたことを確認することができた。このような結果は、前記の実験例で記述したiNOS、TNF−α及びCOX−2の増加がNF−κB活性によるものであることを間接的に意味する。
【0059】
<実験例10>クルクマン−エックスの経口投与によるNO生成測定(in vivo)
前記実施例1で分離されたクルクマン−エックスの免疫調節効果と、NO分泌との相関関係を究明するために、NO生成能を動物実験を通じて観察した。
【0060】
C57BL/6マウス(17〜18g,雌)を各群当り12匹とし、クルクマン−エックスを10、50及び100mg/kg濃度で21日間毎日1回ずつ投与した。3%チオグリコレート培地を2ml腹腔に注入し、3日後RPMI完全培地(10%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン含有)8mlで腹腔内膜を洗浄して腹腔マクロファージを収集し、FBS−コーティングされた皿に4時間付着させ、浮遊細胞を除去して純粋なマクロファージのみを得て細胞数を測定した。
【0061】
各マクロファージを5×105細胞/mlの濃度で分取して、37℃のCO2培養器で24時間培養した。培養終了後、培養上澄液中の亜硝酸塩をグリース試薬(Griess reagent, 0.5% sulfanilyamide, 0.05% N-(1-naphthyl)ethylene diamine dihydrochloride/2.5% H3PO4)を利用して540nmでマイクロプレートリーダーを利用して試料の吸光度を測定した。
【0062】
実験結果、図14に示した通り、実施例1で得たクルクマン−エックスを投与した時、NO生成を増加させ、これは多糖類がマウスに吸収され、免疫調節効果を示したことを意味する。
【0063】
<実験例11>クルクマン−エックスの経口投与が飽食作用能に及ぼす影響(in vivo)
C57BL/6マウス(17〜18g,雌)を各群当り12匹として、クルクマン−エックスを10、50及び100mg/kg濃度で21日間毎日1回ずつ経口投与した。3%チオグリコレート培地を2ml腹腔に注入して、3日後RPMI完全培地(10%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン含有)8mlで腹腔内膜を洗浄して腹腔マクロファージを収集し、FBS−コーティングされた皿に4時間付着させ、浮遊細胞を除去して純粋なマクロファージのみを得て、細胞数を測定した。
【0064】
各マクロファージを5×105細胞/mlの濃度で分取し、37℃のCO2培養器で24時間培養した。4時間後、熱的に殺菌したフルオレセインイソチオシアネートでラベルした大腸菌である生体粒子を100μlずつ分取した後、2時間培養した。培養終了後マクロファージとバクテリアをPBSで洗浄した後、トリパンブルーを100μlずつ分取して常温で1分間放置後除去し、蛍光発光器を通じて飽食作用能を測定した。
【0065】
実験結果、図15に示した通り、実施例1で得たクルクマン−エックスを投与した時、飽食作用能を大きく増加させ、その数値は濃度依存的に増加することが確認できる。これはクルクマキサンソリザで分離した多糖類が生体内でもマクロファージの飽食作用能を大きく増加させることを意味する。
【0066】
<実験例12>クルクマン−エックスの経口投与による脾臓細胞増殖誘導試験(in vivo)
C57BL/6マウス(17〜18g,雌)を各群当り12匹にしてクルクマン−エックスを10、50及び100mg/kg濃度で21日間毎日1回ずつ経口投与した。21日後脾臓細胞の増殖を確認するために、マウスを犠牲させ、脾臓を取出し、RPMI完全培地(10%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン含有)でスライドガラスを利用して細胞が流出するようにし、流出された細胞は37℃のCO2培養器で2×107細胞/mlの濃度で分取し、72時間培養した。培養終了後MTT溶液(3-[4,5-dimethylthiazol-2-yl]-2,5-diphenyl-tetrazolium bromide)を添加した後、4時間培養した。MTT−フォルマザン(formazan)生成物は同一な容量の溶解緩衝液(DMSO)を添加することにより溶解させた。フォルマザンの量はマイクロプレートリーダーを利用して570nmで吸収される量を測定した。
【0067】
実験結果は、クルクマン−エックスが投与されないマウスの、脾臓細胞に対するクルクマン−エックスが投与されたマウスの脾臓細胞比率で下記表3に示した。
【0068】
【表3】

【0069】
前記表3に示した通り、本発明のクルクマン−エックスは脾臓細胞の数を依存的に増加させ、脾臓細胞の増加は免疫増強の指標となれるものであるため、実験結果、本発明のクルクマン−エックスが免疫増強効果を有していることを示した。
【0070】
<実験例13>クルクマン−エックスの経口投与による脾臓細胞の癌細胞殺害能測定(in vivo)
抗癌効果抗癌剤を利用した癌治療は副作用が甚だしく、最近では免疫増強剤を利用した癌治療法が多く利用されており、持続的に開発されている。
免疫増強剤の利用は抗癌剤の副作用を減少させ、さらに、抗癌治療効果が増加できる。 前記の実施例においてクルクマン−エックスが生体内及び生体外で免疫増強効果があることを証明した。本実施例ではクルクマン−エックスによる免疫増強が抗癌効果として現れるか否かを検証した。
【0071】
C57BL/6マウス(17〜18g,雌)を各群当り12匹とし、多糖類を10、50及び100mg/kg濃度で21日間毎日1回ずつ経口投与した。21日後脾臓細胞の増殖を確認するために、マウスを犠牲にし脾臓を取出し、RPMI完全培地(10%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン含有)で、スライドガラスを利用して細胞が流出されるようにし、流出された細胞は37℃のCO2培養器で2×106細胞/mlの濃度で分取後72時間培養した。癌細胞であるYAC−1細胞は緑色蛍光を表すDiOC18(3,3'-dioctadecyl oxacarbocyanine perchlorate, Molecular Probes, Eugene, U.S.A.)でラベル(label)した。培養した脾臓細胞とラベルされたターゲット細胞(YAC-1細胞)は50:1の比率で24時間培養し、培養終了後、プロピリジウムアイオダイド(propidium iodide)(PI, Sigma, U.S.A.)10μlを入れて脾臓細胞の癌細胞殺害能をフローサイトメーターFACScan(Becton Dickinson, Heidelberg, German)を利用して測定した。
実験結果、図16に示した通り、クルクマン−エックスの経口投与により活性化された脾臓細胞の癌細胞殺害能は濃度依存的に高く、これはクルクマン−エックスが細胞毒性でない生体の免疫を増加させ、抗癌効果を表す抗癌免疫増強剤であることを証明する。
【0072】
<実験例14>クルクマン−エックスの経口投与がサイトカイン分泌に及ぼす影響(in vivo)
C57BL/6マウス(17〜18g,雌)を各群当り12匹とし、多糖類を10、50及び100mg/kg濃度で21日間毎日1回ずつ経口投与した。3%チオグリコレート培地を2ml腹腔に注入し、3日後、RPMI完全培地(10%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン含有)8mlで腹腔内膜を洗浄して腹腔マクロファージを収集し、FBS−コーティングされた皿に4時間付着させ、浮遊細胞を除去し、純粋なマクロファージのみを得て細胞数を測定した。
各マクロファージを5×105細胞/mlの濃度で分取し、37℃のCO2培養器で24時間培養した。培養終了後細胞を集めてPBSで洗浄し、トリゾル(Invitrogen, USA)1mlを加えて室温で撹拌させた。クロロホルム200μlを入れ、再度撹拌して12000rpm、4℃で15分間遠心分離した後、上澄液にイソプロピルアルコールを加え再度遠心分離してRNAペレットを得た。ここで得られたRNAにMMLV逆転写酵素を利用してcDNAを作った。これにiNOS(sense 5'-CAACCAGTATTATGGCTCCT-3', antisense 5'-GTGACAGCCCGGTCTTTCCA-3')、TNF−α(sense: 5-CCTGTAGCCCACGTCGTAGC-3, antisense:5-TTGACCTCAGCGCTGAGTTG-3)、IL−1(sense: 5-TGCAGAGTTCCCCAACTGGTACATC-3, antisense: 5-GTGCTGCCTAATGTCCCCTTGAATC-3)、IL−6(sense:5-GATGCTACCAAACTGGATATAATC-3, antisense:5-GGTCCTTAGCCACTCCTTCTGTG-3)及びβ−アクチン(sense: 5'-TGGAATCCTGTGGCATCCATGAAAC-3', antisense: 5'-TAAAACGCAGCT CAGTAACAGTCCG-3')のプライマーを入れ、タックポリメラーゼ(taq polymerase)を利用して各遺伝子を増幅させた。この際、遺伝子増幅環境は95℃で30秒、55℃で1分、72℃で1分の過程を総30回繰返し、最後に72℃で5分を反応させた。作られたRNAを1%アガロスゲルに電気泳動させ、UV検出器で確認した。
【0073】
実験結果、図17、図18、図19及び図20に示した通り、多糖類によりiNOS、TNF−α、IL−1βとIL−6のmRNAが増加することが確認できた。このような結果は、前記の実験例で記述したクルクマン−エックスによる免疫増強効果がmRNA発現の調節に起因することを意味する。
【0074】
<実施例2〜13>クルクマキサンソリザから抽出条件に伴う多糖類分離
クルクマキサンソリザに多糖類抽出溶媒として熱水、0.01〜5NのNaOH、0.01〜5NのHClを使用して、実施例1と同一の方法で多糖類を抽出及び分離精製した。次に多糖類10μg/mlの濃度で前記実験例3と実験例5と同一な方法で測定したNO生成能とマクロファージの飽食作用能を表4に示し、この結果は、試料未処理群に対する%で示した。表5に示した通り、抽出条件により抽出収率が2.1〜8.5%、数平均分子量が11,000〜82,000の免疫増強多糖類が抽出され、全ての抽出条件でNO生成能を呈した。
【0075】
【表4】

【0076】
<実験例15>クルクマン−エックスの抗癌効果(in vivo)
BDF1マウス(17〜18g,雌)を各群当り10匹とし、B16F10癌細胞(5×105)をマウス腹腔に移植して癌を誘発し、投与翌日から多糖類を生理食塩水に希釈して10、50及び100mg/kg濃度で毎日1回ずつ経口投与した。それぞれの試験群等の毒性を調べるために、試料を処理する間にマウスの体重を測定し、体重の減少が観察されなかった。これは全ての試験群において毒性がないことを意味する。実験結果は癌細胞移植後60日目に生きているマウスの数で生存率を求め、クルクマン−エックスを処理していないマウスの生存率に対する比率で算定した。
【0077】
実験結果、下記表5に示した通り、クルクマン−エックスの処理により濃度依存的に生存率が増加した。これはクルクマン−エックスが生体内で抗癌効果を提供することを意味する。
【0078】
【表5】

【0079】
<実験例16>クルクマン−エックスの癌細胞に対する抗腫瘍効果(in vivo)
ICRマウス(20〜23g,雌)を各群当り10匹とし、その腹腔に癌細胞(sarcoma-180,肉腫癌)を生理食塩水に希釈した200μlの細胞溶液(1×106細胞)を皮下注射した固形癌モデルを利用して測定した。24時間後、クルクマン−エックス10、50及び100mg/kg濃度で毎日1回ずつ経口投与した。試料投与20日経過後生成された固形癌を抽出して重さを測定した。抽出された固形癌の重さから固形癌の生成抑制率を計算し、その結果を下記表6に整理した。
【0080】
【表6】

【0081】
前記表6に示した通り、試料無処理群で固形癌重量が449±98mgであって、クルクマン−エックス50と100mgの場合には、それぞれ固形癌重量が276±90mgと199±81mgで、対照群対比38.6と62.1%で固形癌生成抑制率を呈した。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明はクルクマキサンソリザから有用な多糖類を製造する方法、このような製造方法により得られた多糖類及びこのような多糖類を有効成分として含む薬学組成物を提供する。本発明に伴う多糖類及び薬学組成物は免疫増強効果及び抗癌効果が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】クルクマキサンソリザから免疫増強多糖類を分離する工程図である。
【図2】クルクマキサンソリザから分離された多糖類の分子量を測定するために、ゲル透過クロマトグラフィーを行った結果である。 A:標準物質として使用されたプルランのゲル透過クロマトグラフィー(分子量=788000,112000,22800,5900,360) B:クルクマキサンソリザから分離された多糖類のゲル透過クロマトグラフィー
【図3】本発明のクルクマキサンソリザから分離された多糖類の糖含量を測定するためにBio−LCを行った結果である。 A:標準物質として使用されたグルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース、ラムノース及びキシロースのクロマトグラフィー。 B:クルクマキサンソリザから分離された多糖類の糖含量クロマトグラフィー。
【図4】クルクマキサンソリザから分離された多糖類のNO生成増加効果を示したグラフである。
【図5】クルクマキサンソリザから分離された多糖類のH22生成増加効果を示したグラフである。
【図6】クルクマキサンソリザから分離された多糖類の飽食作用能増加効果を示したグラフである。 A:試料無処理群 B:30μg/ml濃度の試料処理群
【図7】クルクマキサンソリザから分離された多糖類のTNF−α蛋白質発現増加効果を示したグラフである。
【図8】クルクマキサンソリザから分離された多糖類のTNF−αmRNA発現増加効果を示したグラフである。
【図9】クルクマキサンソリザから分離された多糖類のiNOS蛋白質発現増加効果を示したグラフである。
【図10】クルクマキサンソリザから分離された多糖類のiNOS mRNA発現増加効果を示したグラフである。
【図11】クルクマキサンソリザから分離された多糖類のCOX−2蛋白質発現増加効果を示したグラフである。
【図12】クルクマキサンソリザから分離された多糖類のCOX−2 mRNA発現増加効果を示したグラフである。
【図13】クルクマキサンソリザから分離された多糖類のIκBαリン酸化を示したグラフである。
【図14】クルクマキサンソリザから分離された多糖類の生体内でのNO生成増加効果を示したグラフである。
【図15】クルクマキサンソリザから分離された多糖類の生体内での飽食作用能増加効果を示したグラフである。
【図16】クルクマキサンソリザから分離された多糖類の生体内での癌細胞殺害能増加効果を示したグラフである。
【図17】はクルクマキサンソリザから分離された多糖類の生体内でのiNOS mRNA発現増加効果を示したグラフである。
【図18】クルクマキサンソリザから分離された多糖類の生体内でのTNF−α mRNA発現増加効果を示したグラフである。
【図19】クルクマキサンソリザから分離された多糖類の生体内でのIL−1β mRNA発現増加効果を示したグラフである。
【図20】クルクマキサンソリザから分離された多糖類の生体内でのIL−6 mRNA発現増加効果を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S1)クルクマキサンソリザの根(Curcuma xanthorrhiza Roxb.)の粉末を準備する段階;
(S2)前記粉末を有機溶媒で抽出した後でろ過または遠心分離して残渣(residue)を得る段階;
(S3)前記残渣を抽出して多糖類が含有された溶液を製造する段階;
(S4)前記多糖類が含有された溶液に澱粉加水分解酵素を加えて澱粉を除去する段階;
(S5)前記(S4)段階後に多糖類を沈殿させる段階;及び
(S6)前記(S5)段階後に多糖類を精製する段階を含むことを特徴とするクルクマキサンソリザから分離された多糖類の製造方法。
【請求項2】
前記(S3)段階の抽出は熱水、酸溶液またはアルカリ溶液を利用する請求項1記載のクルクマキサンソリザから分離された多糖類の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ溶液は0.005〜10NのNaOH溶液である請求項2記載のクルクマキサンソリザから分離された多糖類の製造方法。
【請求項4】
前記酸溶液は0.005〜10NのHCl溶液である請求項2記載のクルクマキサンソリザから分離された多糖類の製造方法。
【請求項5】
前記(S5)段階は(S4)段階後に低級アルコールを加えることである請求項1記載のクルクマキサンソリザから分離された多糖類の製造方法。
【請求項6】
前記(S6)段階は低分子成分を透析または限外ろ過により除去することである請求項1記載のクルクマキサンソリザから分離された多糖類の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項の製造方法により得られたクルクマキサンソリザから分離された多糖類。
【請求項8】
請求項7記載の多糖類を有効成分として含むことを特徴とする薬学組成物。
【請求項9】
請求項7記載の多糖類を有効成分として含むことを特徴とする抗癌補助剤組成物。
【請求項10】
請求項7記載の多糖類を有効成分として含むことを特徴とする免疫増強剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−544017(P2008−544017A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516751(P2008−516751)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/KR2006/002282
【国際公開番号】WO2006/135197
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(507410892)
【Fターム(参考)】