説明

クレ―ンのワイヤロ―プの端末固定装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、クレーンのフックをブームトップから吊り下げているワイヤロープの端末をブームトップに固定する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ワイヤロープを使用して荷を吊り上げるクレーンにおいては、図1に示すように、ワイヤロープ1の端末をクレーンブーム2の先端部に固定する手段としてブームトップのシーブ収納体3の外側面にブラケット4を突設し、このブラケット4にロープ端末固定用ソケット5をピン6により回動自在に枢支連結し、ロープ端末固定用ソケット5にワイヤロープ端末を挿入してウエッジ片7によって固定している。このロープ端末固定用ソケット5は、ブームトップの側面及び下面に突起物となっており、クレーンオペレーターが図2に示すようにブーム2を起こしてフック9を上限一杯まで巻き上げた場合、ワイヤロープ端末及びフック9のシーブが損傷されるという問題が生じていた。
【0003】また、図1に示す従来例において、ワイヤロープの張力を利用して吊荷の荷重測定を行う場合、ブームトップのロープ端末固定用ソケット取付用のブラケット4とロープ端末固定用ソケット5との間に荷重測定用センサー11を取付けている。この結果としてブームトップ下面からの突起物の長さが荷重測定用センサー11の分だけ長くなり、図4に示すように、ブームを起こし、フックをブームトップ下面一杯まで巻き上げた場合に、荷重測定用センサー、フックのシーブ、ウィンチ用ワイヤロープの端末等が損傷される問題がより大きくなっていた。
【0004】したがって、上述した従来構造のワイヤロープ端末固定装置を具えるクレーンでは、フックをブームトップ下面一杯まで巻き上げることができず、その分クレーンの揚程が低くなっていた。
【0005】上述した問題を解決するために、実公平3−44789 号公報に開示されているように、ロープ案内及びロープ端末固定用のソケットをブーム先端部シーブ収納体の外側に取付けた例もあるが、ロープ案内及びロープ端末固定用ソケットをそれぞれ個別に設けていたため、その取扱いが面倒であり、コスト高にもなっていた。また、この例では、負荷計測用センサーを取付けることができなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した従来のワイヤロープ端末固定装置の欠点をなくし、クレーンの揚程に悪影響を及ぼすことがなく、さらに、構造がコンパクトで、取付けが容易であるとともに、負荷計測用センサーの取付けも容易に可能なワイヤロープ端末固定装置を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、ブームトップに設けられたブームトップシーブにより案内されるワイヤロープによってフックがブームトップから吊り下げられ、ブームトップにワイヤロープ端末固定装置が設けられたクレーンにおいて、ワイヤロープ端末固定装置がブームトップのシーブ収納体内にトップシーブと並設してトップシーブの固定支持ピン上に設けられたワイヤロープ案内用弧状案内溝を有するワイヤロープ端末取付部材とこのワイヤロープ端末取付部材に前記案内溝の終端部で固着されたロープ端末固定用ソケットとを具えることを特徴とする。
【0008】また、本発明によれば、ワイヤロープ端末取付部材がトップシーブと実質的に同じ形状のシーブにソケット取付用切欠き部を設けて構成するのがよい。
【0009】本発明を実施するに当っては、ワイヤロープ端末取付部材がトップシーブの支持ピン上に回動自在に取付けられ、ワイヤロープ端末取付部材の適所にストッパが設けられ、ブームトップシーブ収納体内側適所にストッパ受けが設けられて、ワイヤロープ端末取付部材の回動を阻止するよう構成し、ストッパー受けを負荷計測用センサーで構成するのが有利である。
【0010】
【作用】本発明によれば、上述した構成としたことによって、ロープ端末固定用ソケットが外部に突出して位置することがないので、フックを上限一杯まで巻上げてもワイヤロープ端末、フックのシーブおよび荷重計測用センサー等を損傷することがなく、クレーンの揚程を上げることができ、また、外的要因により荷重計測センサーを損傷することがない。
【0011】
【実施例】図5〜図7は本発明の第1実施例を示す。図示の例では、ブームトップのシーブ収納体3内に固定支持ピン10によって回動自在に取付けられているブームトップシーブ12,13と同様のシーブでワイヤロープ端末取付部材14を構成する。このシーブ状ワイヤロープ端末取付部材14の一部を切欠き、この切欠き15内にロープ端末固定用ソケット5を固着し、シーブ状ワイヤロープ端末取付部材14をシーブ収納体3内にトップシーブ12,13と並設して固定支持ピン10上に回動自在に取付ける。しかし、シーブ状ワイヤロープ端末取付部材14は図5に示す位置で固定支持ピン10に連結固定してもよい。
【0012】図示の例では、ワイヤロープ端末部材14として、シーブを利用することにより、ワイヤロープ案内用円弧状案内溝16を別途作製する必要がなく、安価に製造することができる。
【0013】ウィンチ(図示せず)からのワイヤロープ1は、シーブ収納体内のシーブ12、フック9側のシーブ17、シーブ収納体内のシーブ13、フツク9側のシーブ18と掛回して、ワイヤロープ端末取付部材14の案内溝16を通してワイヤロープ取付部材14に固設されたロープ端末固定用ソケット5にウエッジ7により連結されている。
【0014】固定支持ピン10に回動自在に取付けられたワイヤロープ端末取付部材14の適所にストッパ20を設け、このストッパ20と対応するストッパ受け21をブームトップシーブ収納体内側に設け、これによりワイヤロープ端末取付部材14が図5において時計方向に回転するのを阻止するようにする。
【0015】図5および図6に示す本発明の実施例によれば、図7に示すようにブームを起こしてフック9を上限一杯まで巻上げても、フックのシーブがワイヤロープ端末に打ち当ることがなく、クレーンの揚程を上げることができる。
【0016】図8は上述した実施例におけるストッパー受け21を荷重計測用センサー22で構成した例を示す。かように構成することによって、図9に示すようにブームを起こしてフック9をブームトップ下面一杯まで安全に巻上げることができる。
【0017】
【発明の効果】上述した構成としたことによってロープ端末固定用ソケットが外部に突出して位置することがないので、フックを上限一杯まで巻上げてもワイヤロープ端末、フックのシーブおよび荷重計測用センサーを損傷することがなく、クレーンの揚程を上げることができ、また、外的要因により荷重計測センサーを損傷することがない。さらに、ロープ端末固定用ソケットを固定するための部品が不要であるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のクレーンのワイヤロープの端末固定装置を示すクレーントップ部分の線図的側面図である。
【図2】図1に示す端末固定装置を具えるクレーンブームを起こしてフックを上限一杯まで巻上げた状態を示す側面図である。
【図3】図1に示す従来の端末固定装置に荷重測定用センサーを取付けた実施例を示す側面図である。
【図4】図3に示す端末固定装置を具えるクレーンブームを起こしてフックを上限一杯まで巻上げた状態を示す側面図である。
【図5】本発明によるクレーンのワイヤロープの端末固定装置を示すクレーントップ部分の線図的側面図である。
【図6】図5に示すクレーントップ部分の線図的正面図である。
【図7】図5に示す端末固定装置を具えるクレーンブームを起こしてフックを上限一杯まで巻上げた状態を示す側面図である。
【図8】図5に示す端末固定装置に荷重測定用センサーを取付けた実施例を示す側面図である。
【図9】図8に示す端末固定装置を具えるクレーンブームを起こしてフックを上限一杯まで巻上げた状態を示す側面図である。
【符号の説明】
1 ワイヤロープ
2 クレーンブーム
3 ブームトップのシーブ収納体
5 ロープ端末固定用ソケット
7 ウェッジ
9 フック
10 固定支持ピン
12, 13 ブームトップシーブ
14 ワイヤロープ端末取付部材
15 切欠き
16 ワイヤロープ案内用弧状案内溝
17, 18 フックシーブ
20 ストッパ
21 ストッパ受け
22 荷重計測用センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ブームトップに設けられたブームトップシーブにより案内されるワイヤロープによってフックがブームトップから吊り下げられ、ブームトップにワイヤロープ端末固定装置が設けられたクレーンにおいて、ワイヤロープ端末固定装置がブームトップのシーブ収納体内にトップシーブと並設してトップシーブの固定支持ピン上に設けられたワイヤロープ案内用弧状案内溝を有するワイヤロープ端末取付部材とこのワイヤロープ端末取付部材に前記案内溝の終端部で固着されたロープ端末固定用ソケットとを具えることを特徴とするクレーンのワイヤロープの端末固定装置。
【請求項2】 前記ワイヤロープ端末取付部材がトップシーブと実質的に同じ形状のシーブにソケット取付用切欠き部を設けて構成されている請求項1記載の装置。
【請求項3】 前記ワイヤロープ端末取付部材がトップシーブの支持ピン上に回動自在に取付けられ、ワイヤロープ端末取付部材の適所にストッパが設けられ、ブームトップシーブ収納体内側適所にストッパ受けが設けられて、ワイヤロープ端末取付部材の回動を阻止するよう構成した請求項2記載の装置。
【請求項4】 前記ストッパ受けを負荷計測用センサーとした請求項3記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【特許番号】第2503141号
【登録日】平成8年(1996)3月13日
【発行日】平成8年(1996)6月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−346746
【出願日】平成3年(1991)12月27日
【公開番号】特開平5−178575
【公開日】平成5年(1993)7月20日
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【参考文献】
【文献】実公平3−44789(JP,Y2)
【文献】実公昭61−36894(JP,Y2)